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審議会情報

第6章  学校教育と職業生活との接続

  新規学卒者のフリーター志向が広がり,高等学校卒業者では,進学も就職もしていないことが明らかな者の占める割合が約9%に達し,また,新規学卒者の就職後3年以内の離職も,労働省の調査によれば,新規高卒者で約47%,新規大卒者で約32%に達している。こうした現象は,経済的な状況や労働市場の変化なども深く関係するため,どう評価するかは難しい問題であるが,学校教育と職業生活との接続に課題があることも確かである。


第1節  学校教育と職業生活の接続の改善のための具体的方策

  学校と社会及び学校間の円滑な接続を図るためのキャリア教育(望ましい職業観・勤労観及び職業に関する知識や技能を身に付けさせるとともに,自己の個性を理解し,主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育)を小学校段階から発達段階に応じて実施する必要がある。キャリア教育の実施に当たっては家庭・地域と連携し,体験的な学習を重視するとともに,各学校ごとに目標を設定し,教育課程に位置付けて計画的に行う必要がある。また,その実施状況や成果について絶えず評価を行うことが重要である。

  同時に,学校教育において情報活用能力や外国語の運用能力の育成等,社会や企業から評価される付加価値を自ら育成するなど,職業生活に結び付く学習も重視していくべきである。

  こうした観点に立って,他省庁や関係団体の協力も得ながら,在学中のインターンシップの促進等による体験的活動を重視していくことや,企業経験者によるキャリアアドバイザーの配置,教員のカウンセリング能力の向上等による進路に関するガイダンス,カウンセリング機能の充実を初等中等教育及び高等教育において進めていく必要がある。その際,生徒等の職業適性や興味・関心を適切に測定する方法の研究・開発を進めていくことが求められる。

  また,専門高校,盲学校等の専攻科の整備充実,各大学・学部等の教育理念や専門分野等の特性に応じた専門高校・総合学科卒業生選抜やそれらの者を対象とする推薦入学の拡大など,専門高校・総合学科等における専門教育の基礎に立ち,一層進んだ学習を希望する者に対する進路の整備を更に進める必要がある。

  さらに,高度専門職業人の養成に特化した実践的な教育を行う大学院の設置の促進等,社会の要請に的確に対応した高度な専門的能力を有する職業人の養成機能の強化を進める必要がある。
   

第2節  企業等における採用の改善

  これまでの中央教育審議会答申や大学審議会答申では,採用側に採用に当たって形式的な学(校)歴にとらわれないよう呼び掛けてきた。大学名だけに着目した採用を行うことは,学(校)歴社会の弊害を助長するため,当然避けるべきことであるが,採用に当たっては,個人の能力・知識・技術や資質に加え,学生の属する大学(研究科,学部・学科)の教育目標,教育内容,教育方法の特色を考慮することが望まれる。

  採用側は,採用に当たって学生に求める能力・知識・技術を具体的に示し,大学において当該能力等をいかに身に付けさせ,付加価値を高めさせたかを適切に評価した上で採用等を行うべきである。このことが,大学の教育の質の改善に向けての努力を促すことになると考えられる。

  その前提として,大学においては,学生の能力・知識・技術を身に付けさせるための教育内容,方法等を充実するとともに,成績評価基準を明示した上で厳格な成績評価を実施すべきである。


第3節  生涯学習の視点に立った高等教育

  (1)社会人の学習機会の拡充


  急速に進む情報化や国際化の進展等に伴い,知識,技術の陳腐化が間断なく進み,人々は絶えず学習することが必要な状況に置かれ始めている。

  職業を持つ社会人のリカレント教育やリフレッシュ教育の需要の高まり等に対応し,例えば,大学においては社会人特別選抜や夜間部・昼夜開講制の実施,科目等履修生の受入れ,通信教育や公開講座の実施,編入学機会の拡大等アクセスの拡大に努めているところである。なお,大学入学資格検定について,従来,受検資格が与えられていなかった者の受検が可能となるよう,資格要件を緩和したところである。今後,雇用慣行の変化等により,他の職場でも通用する高い技術や能力を身に付ける必要性が増大し,このような社会人の学習機会に対する需要は一層高まることが予想されることから,高等教育機関においては,より一層積極的に社会人の受入れ体制の拡充を図る必要がある。

  具体的には,社会人を対象とする大学院の履修形態や修業年限等に係る制度的な弾力化や高度な専門職業人の養成を目的とする専門大学院の整備充実を図ること,及び専修学校のコミュニティ・カレッジ機能の充実を図ることなどが求められる。また,放送大学や専修学校において,キャリア開発のための学習機会を拡充することも重要である。なお,通信制大学院が制度化されたことに伴い,高度な専門性を持った職業人養成や社会人再教育のための機会提供の拡充を図るため,放送大学大学院の実現への取組が期待される。また,その際には,衛星通信や光ファイバー等のマルチメディアを幅広く活用した学習機会の拡充を図ることに留意する必要がある。


  (2)生涯学習の成果の活用

  生涯学習社会を築いていくためには,大学においても様々な学習活動の成果が適切に評価されるようにする必要がある。大学においては,専修学校で学んだ場合や文部省認定技能審査に合格した場合など,大学外での学習の成果のうち一定水準以上のものについて,大学の単位として認定することができることとされているが,今後は,ボランティア活動やインターンシップ等の学外の様々な学習成果を授業科目の中に位置付けること等によって単位認定がなされるよう,各大学における一層の取組が必要である。

  また,学校外における学習成果としての知識,技術に対する客観的評価やこれを証明するシステムが構築され,大学の単位として認定されることとなれば,企業等が学歴以外で人材を登用したり,活用したりする際の手掛かりになり,学(校)歴偏重と言われてきた風潮が是正されることが期待される。このため,生涯学習の成果についての様々な評価システムの促進を図り,各大学においてその活用の促進を図ることが重要である。