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中央教育審議会

 1998/3 答申等 
今後の地方教育行政の在り方について (中間報告の要旨) 


第1章  今後の地方教育行政の在り方

1  基本的考え方

○  昭和23年に発足した教育委員会制度を中核とする地方教育行政制度は、国、都道府県及び市町村の連携協力の下、教育の機会均等や教育水準の維持向上など地域における教育、文化、スポーツの振興に極めて大きな役割を果たしてきた。

○  しかし、一人一人の個性を尊重した教育の実現を目指して教育改革の推進が求められる中、次のような考え方から、地方教育行政制度について改善を図ることが必要。
  i) 各地方公共団体や各学校において、地域の特色を生かし、創意工夫を凝らした様々な施策・取組を主体的に推進することが不可欠であること
  ii) 学校・家庭・地域社会の連携を充実強化するとともに、地域に開かれた自主的・自律的な学校運営を進めることが求められていること
  iii)地域コミュニティの育成や地域振興を図るため生涯学習、学校教育、社会教育、文化、スポーツ等に関する施策を主体的かつ積極的に展開することが求められていること

2  見直しの視点

(1)教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方
  教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担については、教育改革の推進と地方分権の推進の2つの観点から見直しを行うことが必要。
  なお、義務教育に係る行財政制度の見直しに当たっては、国民の教育を受ける権利と義務を保障するため、国、都道府県・市町村が連携協力する必要があることを十分に考慮。

(2)教育委員会制度の在り方
  教育委員会は、教育行政の中立性や継続性を確保する観点から、首長から独立した合議制の機関として設置されており、今後とも、次のような考え方から教育委員会制度を維持していくことが必要。
  i)学校教育及び社会教育において中立性、継続性を確保すること
  ii)様々な分野についての識見を有する教育委員の合議によって、住民の多様な価値観等を尊重しつつ生涯学習や文化等の振興を図っていくこと
  しかし、教育委員会制度の在り方については、特色ある学校づくりなどこれからの学校の在り方や地域コミュニティの育成、地域の振興への対応も踏まえながら検討が必要。

(3)学校の自主性・自律性の確立
  学校が地域の教育機関として、地域住民や保護者の信頼を確保し、創意工夫を凝らした学校づくりに取り組むことができるよう、教育委員会や校長の学校運営に関する権限と責任の明確化を図るなど、学校の自主性・自律性を確立する方策について検討が必要。

(4)地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割
  教育委員会が地域コミュニティの育成や地域振興に積極的に寄与することができるよう、生涯学習を核とした取組の推進、教育委員会と首長部局等との関係の在り方、民間の団体・事業者等との連携の推進方策について検討が必要。

(5)学校以外の教育機関の運営の在り方
  住民の立場に立った弾力的な施設運営の推進、施設運営への住民参加の促進、他部局の機関・民間事業者等との連携方策の推進について検討が必要。


第2章  教育行政における国、都道府県及び市町村の役割分担の在り方について

1  現行制度の概要

  地域における教育、文化、スポーツ等については、地方公共団体が実施主体となり、国は全国的な視点に立った制度の枠組みの制定や各種基準の設定等により、教育水準の維持向上を図る役割を担っている。

2  国と都道府県、市町村との関係の見直し

(1)国の果たすべき役割とその見直し
  i)  国の果たすべき役割
    国は、基本的に次のような役割を担う。
    (a)学校教育制度など基本的な制度の制定
    (b)教育課程の基準など全国的な基準の設定
    (c)教職員の給与負担など地方公共団体における条件整備のための支援
    (d)地方公共団体に対する指導、助言、援助
○国がこれらの役割を担うことを明確にするため、学校の設置基準、教育課程の基準など全国的に統一して定めることが望ましい基準の設定に関する事務の監督庁を「当分の間」文部大臣と規定している学校教育法第106条の規定を見直す。
  ii)  国の行う事務・事業の見直し
    国が担うべき役割を踏まえた上で、地方分権を推進するとともに、国の事務等の簡素・効率化を図るため、国の事務等について以下のような取組が必要。
○地方や学校の裁量の幅を大きくして創意工夫を生かした教育課程を編成する観点から、教育課程の基準の大綱化・弾力化を推進。
○教育課程の基準以外の基準・規制等については、その性格、目的に応じて見直す。
○学校教育法第106条の規定等に基づく省令等の具体的内容について、地域における主体的な取組を推進する観点から見直す。
○国の教育課程に関する指導行政は、教育課程の基準の実施状況の調査分析を踏まえ、必要に応じて指導・助言等を行うような手法に重点を移し、文部省の業務を基本的なものに精選。これに伴い、行政改革の観点にも十分配慮しつつ、教科内容や教育方法などについて、より専門的立場から効果的な助言や支援を行うカリキュラムに関するナショナルセンターの設置について検討する。同センターの具体的な機能としては、カリキュラムの在り方について専門的立場から恒常的に検討するとともに、教育課程審議会に実証的な調査資料を提出して随時施策に反映させることなどが考えられる。
○生徒指導行政に係る業務について、文部省の業務を基本的なものに精選。これに伴い、行政改革の観点にも十分配慮しつつ、生徒指導に関してより専門的立場から効果的な助言や支援を行う生徒指導研究に関するセンターの設置について検討する。同センターの具体的な機能としては、生徒指導に関する専門的・実践的な検討を不断に行い、施策に反映させることなどが考えられる。
○国による指導資料の作成については、いじめ問題への対応等国としての取組が不可欠なものなど真に必要なものに限定。国による研究指定校についても同様に真に必要なものに限定し、指定する学校数を削減。
○学校の設置者として都道府県等が教育内容に関する研究開発を行うに際して、全国的な教育課程の基準の改善に資すると国が認める場合には、当該基準によることなく、都道府県等が研究課題を定めるなど主体的に実施することができるようにする。
○教職員に対して国が直接行う研修業務は、基本的なものに精選。
○国の行う調査統計は重複を避け、真に必要なものに精選。

(2)国の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し
  i)  指導、助言、援助の趣旨
    地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)の規定に基づき国は都道府県に対して指導、助言、援助を行うものとされている。これは、教育の機会均等、教育水準の維持向上を図るため、地方自治の本旨を踏まえつつ、法的拘束力のない指導等を通して都道府県における教育事務の適正な処理を確保しようとしたもの。
  ii) 指導等についての受け止め方や意識
    国の行う指導等は、あたかも法的拘束力があるかのように受け止められたり、国の指導等に従った方が不都合が少ないとの意識もあることなどから、特段の判断を加えることなく受け入れられてきた面もある。
  iii)指導等に係る法律上の規定とその在り方の見直し
    教育行政において、都道府県及び市町村の自主性・主体性をより一層尊重するため、指導等についての関係者の意識を変革するとともに、「必要な指導、助言又は援助を行うものとする」としている地教行法の規定の見直しが必要。
    また、都道府県に対する法令の解釈等に関する伝達が、都道府県等の判断を過度に制約することのないようにするとともに、国やその機関による実証的な研究の成果等の情報を提供する役割を重視。
  iv) 措置要求に係る法律上の規定の見直し
    国の地方公共団体に対する地教行法の措置要求の規定について、主体的な地方教育行政を展開する観点から国全体の動向を踏まえ、その要件、手続き等を見直す。

3  都道府県と市町村との関係の見直し

(1)都道府県の果たすべき役割の見直し
  今後、都道府県の役割は次のように再編成される予定。
  i) 広域にわたるものの処理
  ii) 一般の市町村を超える規模及び能力が必要とされるものの処理
  iii)市町村に関する連絡調整に関するものの処理
    現在都道府県教育委員会は、地教行法の規定に基づき県内の教育水準の維持向上のため基準を設定しているが、これは上記の役割のいずれにも直接該当しないため、この規定を見直す。

(2)都道府県と市町村との関係の見直し
  市町村の主体的判断を尊重するため、次の都道府県の事務について見直しが必要。
○市町村立学校の学級編制について都道府県教育委員会の認可を必要とする「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」の規定を見直す。
○公立高等学校の設置は都道府県が行うものとする「公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律」の規定を見直す。
○都道府県教育委員会は公立高等学校の通学区域を設定できるとする地教行法の規定を見直す。

(3)都道府県の行う指導、助言、援助等の在り方の見直し
  都道府県教育委員会が市町村に対して行う指導・助言・援助については、関係者の意識を変革するとともに、国と同様、地教行法の規定の見直しが必要。また、指導等の運用についても、市町村の判断を過度に制約することのないようにするとともに、都道府県教育委員会やその研究研修機関の実証的な研究成果等の情報を提供する役割を重視。

4  市町村の規模に応じた権限の委譲と都道府県の関与の縮減

    市町村における主体的な教育行政を一層推進するため、次のような見直しが必要。
  i) 中核市教育委員会の事務処理体制を踏まえ、教職員の研修等に係る権限委譲を検討。
  ii)政令指定都市及び中核市に関し、高等学校及び幼稚園の設置廃止等について都道府県教育委員会の認可を必要とする学校教育法の規定の見直し。

5  国、都道府県、市町村、学校等の間の情報網の整備

  国、都道府県、市町村、学校、社会教育施設等の間の情報網を整備し、情報伝達の迅速化・同報化を図るとともに、学校等における各種の実証研究の成果をデータベースとして蓄積し、これを検索、利用できるシステムの構築を検討。


第3章  教育委員会制度の在り方について

1  現行制度の概要

○  教育委員会は、議会の同意を得て首長が任命する5人の教育委員から構成される合議制の行政委員会として設置され、教育、文化、スポーツの振興に係る各般の事務を管理執行。
○  教育委員会には、その指揮監督の下に、教育委員会のすべての事務をつかさどる教育長が置かれ、その任命に当たっては都道府県・政令指定都市教育委員会については文部大臣の承認が、市町村教育委員会については都道府県教育委員会の承認が必要。なお、市町村教育委員会の教育長は教育委員の中から選ばれ、教育委員を兼任。
○  学校教育や社会教育については、その中立性、継続性を確保する観点から、今後とも、地方公共団体の長から独立した執行機関である教育委員会が担当することが必要。

2  地域住民の意向の把握・反映や連携協力体制の充実

(1)基本的考え方
  教育行政が多様化する地域住民の要望に的確に応えるため、その意向を把握・反映する方策や地域住民との連携協力を推進する方策について一層の改善が必要。

(2)教育委員に係る見直し
  i)  教育委員に多様な人材を確保する観点からのその数の弾力化等
    教育委員の数は現行と同様原則5人とするが、より幅広い分野から人材を選考する観点から、都道府県及び市については、条例で定めるところにより、例えばその数を7人とできるなど弾力化。
  ii) 教育委員の選任の在り方
    教育委員の選任については、今後とも首長が議会の同意を得て任命することとするが、その際、各地方公共団体において、教育委員の構成分野を広範にする観点、学識経験者等の意見・推薦等を取り入れる観点、選任の基準や理由、経過等を地域住民に明らかにする観点などから、様々な工夫を講じることが必要。
  iii)新任教育委員に対する情報提供、研究協議の場の設定等
    新たに教育委員の職に就いた者を対象に、国や地方の教育政策の状況等について情報提供、研究協議を行う場の設定等を推進。

(3)教育委員会と地域住民との関係の在り方の見直し
  i)  地域住民の意見の申出や苦情に対する対応の充実
    多様化する地域住民の要望に的確に応えるため、以下のような取組を推進。
    ○  教育委員が地域住民等と直接意見交換を行う公聴会等を積極的に設定。
    ○  教育モニター、教育アドバイザー等の積極的な活用。
    ○  教育委員会独自の苦情処理窓口の設置。
  ii) 地域住民に対する情報提供の推進
    教育行政としての説明責任を果たすため、以下のような取組を推進。
    ○  学校教育の方針などに関する積極的な情報提供。
    ○  教育委員会の会議の議事内容に関する積極的な広報。
  iii)地域住民との連携協力の推進
    地域住民と連携協力した施策を実施するため、以下のような取組を推進。
    ○  地域教育連絡協議会や地域教育活性化センターの積極的活用に関し、施策を充実。
    ○  教育委員会等が行う事業への積極的なボランティアの受入れ
    ○  教職員等の採用選考や研修に際して、これまで以上に地域の有識者や企業等の協力を得ること。

3  任命承認制度の廃止とそれに代わる教育長の適材確保方策

(1)任命承認制度の廃止と議会同意の導入等
  地方分権推進委員会第一次勧告を踏まえ、教育長の任命承認制度を廃止し、各地方公共団体の責任において教育長に適材を確保するとともに、議会から直接信任を得ることにより、教育長のリーダーシップを高め住民に対する責任を明らかにする観点から、教育長の任命に際し議会の同意を得ることとする(特別職化、任期制)。

(2)市町村教育長の専任化
  市町村の教育長については、原則として教育委員との兼任をあらため、専任化。

(3)新任教育長に対する情報提供、研究協議の場の設定等
  新たに教育長の職に就いた者等を対象に、国や地方の教育政策の状況等について情報提供、研究協議を行う場の設定等を推進。

4  市町村教育委員会の事務処理体制の充実

(1)事務の広域化の促進や市町村教育委員会の規模の拡大
  市町村教育委員会の規模の拡大と機能の充実を図るため、事務の広域化や自主的合併による地方公共団体自体の規模の拡大を促進。

(2)専門的職員の充実と地域の多様な人材の活用
  指導主事や社会教育主事等の専門的職員の充実を図るとともに、各種の事業への地域住民の参加等により、教育委員会の事業を充実。

(3)小規模な市町村教育委員会における事務処理体制の在り方の見直し
  教育委員会の権限及び事務の一部を、学校、都道府県の教育事務所などに委託することについて検討。また、都道府県と市町村によって構成される広域連合にも教育委員会を設置できるよう、地教行法の規定を見直す。

5  教育委員会と私立学校との関係

(1)教育委員会と私立学校との連携
  私立学校は、その自主性・独自性を尊重する観点から、現行どおり首長が所管するが、教育委員会との以下のような連携を推進。
  ○  教育委員会の私立学校に対する積極的な情報提供
  ○  公私教育連絡協議会の活用等による私立学校と教育委員会との連携協力の推進

(2)教育委員会の専門的機能の利用
  教育委員会は種々の専門的機能を保有しており、私立学校がこのような専門的機能を利用できるようにする。


第4章  学校の自主性・自律性の確立について

1 現行制度の概要

○  地方公共団体が設置する学校は、公の施設として法令に基づき教育活動を展開する専門的な教育機関であり、教育委員会が所管。教育委員会は教育委員会規則(学校管理規則)を定め、学校が決定して処理する事務と教育委員会の判断により処理すべき事務とを区別し、学校運営の適正な管理を図りつつ、日常的な学校運営は校長の責任の下に実施。
○  学校においては、校長の下に、組織的に教育活動を実施する観点から、教職員がそれぞれ校務を分担し、各種の主任等を設置。

2  学校と教育委員会との関係の見直し

(1)教育委員会の学校に対する指示・命令、指導・助言の見直し
  教育委員会が学校に対して行う指示・命令と、法律上の強制力のない指導・助言との区別が必ずしも明確でなく、これらに基づく行為の責任の所在が不明確。このため、指示・命令と指導・助言とを明確に区別することが必要。

(2)学校管理規則の見直し等による許可・承認等の整理縮小
  学校管理規則において、学校の組織編制や教育課程、教材の取扱い等について教育委員会の許可・承認等を規定しているほか、通達等により許可等を求めている場合も多い。これらに関しては、学校の自主性・自律性を確立する観点から、地域や学校の実情等に応じて見直しが必要。

(3)学校の自主的な取組を支援する観点からの教育委員会の機能の見直し
  教育委員会は、地域全体の教育課題に対応した施策の推進や、学校ごとの教育課題に沿った指導・助言など、学校の自主的取組を支援する役割を重視。ただし、緊急の事態が生じた場合等については、学校を積極的に支援することについて検討。

(4)学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大
  特色ある学校づくりを進める観点から、校長が学校経営の責任者としてその職責を全うできるよう、学校の人事・予算等における校長の権限の拡大方策について検討。

(5)学校事務・業務等に係る負担軽減
  学校の事務・業務等に係る負担の軽減を図り、また、校長や教員が子どもと触れ合う時間を確保するため、調査統計事務や各種の業務の委嘱、研修研究活動等の精選が必要。

3  学校の管理運営組織の在り方等

(1)校内組織の在り方の見直し
  学校の裁量の拡大に対応し、学校経営の責任者である校長がその職責を十分に果たすことができるよう、校内組織及びその運営の在り方について見直すことが必要。

(2)校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直し
  校長・教頭に優れた人材を確保するため、教育に関する職に就いている経験や組織運営に関する経験、能力に着目して幅広く人材を確保できるよう、校長及び教頭の任用資格を見直す。

(3)教員以外の専門性を有する人材の活用
  個性を尊重した教育活動の展開、心の教育や生徒指導の充実などの諸課題に対応するため、教員以外の専門性を有する者を学校で活用するための方策について検討。

(4)学校事務・業務の共同実施
  校長の権限の拡大等に伴い学校の判断により処理する事務が増大する一方、学校の小規模化が進行していることから、事務や業務の共同実施を行うための方策について検討。

(5)関連する制度の見直し
  上記(1)〜(4)の事項を実現し、学校の管理運営組織の見直しを円滑に進めていくため、教職員の配置など関連する制度の在り方について幅広く検討、見直し。

4  地域住民の意向の把握・反映などの連携協力体制の充実
(1)学校の教育目標、教育計画の明確化と保護者や地域に対する説明、教育活動の自己評価等
  学校の経営責任を明らかにするため、学校が教育目標や教育計画を明確に策定し、その趣旨と実施状況及び校長による自己評価を保護者や地域に対して説明することが必要。

(2)学校の教育活動への地域の活力の導入・活用
  各学校が地域の活力を生かし豊かで多様な教育を行うため、次のような取組が必要。
  i)  学校の教育活動に、地域住民(地域におけるスポーツ指導者や伝統文化継承者など)の協力を得ること
  ii) 学校における体験的な教育活動等の実施について、地域の関係機関の教育力をより一層活用すること

(3)学校が保護者や地域住民の意向を把握、反映するための仕組み
  学校と保護者や地域住民との共通理解を図りその協力を得られるよう、現行の教育委員会と校長の権限を前提として、地域の実情に応じて設置者の定めるところにより校長が、保護者(PTA)や学校外の有識者の参加を得て、例えば、教育方針や生徒指導、道徳教育の進め方など様々な事項についてその意見を聞き、必要に応じ助言を求めるような制度の導入を含め、学校が保護者や地域住民の意向を的確に把握し、これを反映していく仕組みを検討。


第5章  地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割について

1  現行制度の概要

○  学校教育、社会教育、文化、スポーツを所管する教育委員会は、地域における生涯学習振興の中心的役割を果たしている。
○  生涯学習の振興については、教育委員会のみでなく首長部局においても様々な施策を実施しているが、教育委員会が中心となり相互の連携を図っている。

2  生涯学習を中核とした地域コミュニティの育成

(1)生涯学習を中核としたまちづくりの取組の推進
  生涯学習を中核としたまちづくりの取組を積極的に推進していくため、教育委員会が中心となり、広く地域コミュニティの育成、地域振興の観点から、首長部局等関係の行政機関とも連携して、総合的に施策を推進することが必要。

(2)地域の教育機能の向上
  教育委員会は、地域の関係機関、団体による活動を振興するとともに学校・家庭・地域社会の連携を推進することが必要。特にPTA活動のより一層の活性化が重要。家庭教育については、行政として家庭への支援をより充実するため、地域社会が一体となった家庭教育の支援体制の整備が必要。

(3)地域コミュニティの拠点としての学校・公民館の活用
  学校や公民館等の教育機関は、地域コミュニティ形成の拠点として重要な役割を担う。教育委員会は、開かれた学校のための基盤整備を進めるとともに、学校の持つ様々な機能を公開講座等として提供することが必要。

3  地域振興において教育委員会が果たすべき役割

  生涯学習の振興について中心的役割を担っている教育委員会は、地域振興においても重要な役割を担うことが期待されており、文化、スポーツ施策等を通じ、地域振興や地域のアイデンティティの形成等に積極的に寄与していくことが必要。

4  教育委員会と首長部局等関係機関との関係

(1)教育委員会と首長部局等との連携の促進
  教育委員会は、地域コミュニティの育成、地域振興に積極的に寄与するため、教育委員会の施策と首長部局の関連施策を効果的に連携づけていくことが必要。

(2)教育委員会と大学等との連携の促進
  教育委員会は、大学、専修学校など地域の高等教育機関等との連携を強め、地域全体の人づくりの推進を図ることが必要。このため、恒常的に大学等との協議の場を設定することなどにより、積極的な連携協力体制を整えることが必要。

5  民間の団体・事業者等との連携

(1)教育委員会と民間団体等との連携の促進
  教育委員会は、住民の学習活動の活性化を図るため、民間の企業・団体、個人の活動も視野に入れ、その自主性を尊重しつつ支援していくことが必要。

(2)カルチャーセンター等民間教育事業者との連携の促進
  民間教育事業者と連携した施策の推進を図るため、民間教育事業者との協議の場の設定、民間教育事業者の活動も含めた総合的な学習情報の提供などの取組を積極的に推進。


第6章  学校以外の教育機関の運営の在り方について

1  現行制度の概要

○  公民館等の社会教育施設、体育・スポーツ施設、文化施設などの学校以外の教育機関は、教育委員会が所管。公民館、図書館及び博物館の目的等は、それぞれ関係の法律において規定されているが、体育・スポーツ施設、文化施設などの目的等は、各地方公共団体の条例により規定。

2  住民の立場に立った弾力的な施設運営

(1)弾力的な施設運営の推進
  公民館等の教育機関は、住民の自主的な教育・スポーツ・文化活動を支援するものであり、その運営は、住民の意向を的確に反映した弾力的なものとすることが必要。

(2)規制や基準の廃止、緩和
  公民館、図書館及び博物館については、教育委員会の自主的な判断の下、弾力的な施設運営ができるようにするために、各種の規制や基準をできるだけ廃止、緩和することが必要。

3  施設運営への住民参加の促進、ボランティアの受入れ

(1)施設運営への住民参加の促進
  施設運営に関し、一層積極的に住民の参加を求め、住民の意向を的確に反映するための仕組みについて検討。

(2)ボランティアの受入れの拡大
  ボランティア登録システムや研修体制の充実などにより、ボランティア受入れ体制の整備を積極的に推進。

4  学校その他の関係機関、民間の団体・事業者等との連携の推進

(1)学校と連携協力した事業展開
  学校の教育活動に沿ったプログラムの開発、施設の事業情報の学校への提供、施設・指導者の学校の教育活動への活用など学校と連携協力する取組を充実。

(2)関係機関や民間との連携の推進
  教育委員会所管の各施設、首長部局等所管の各施設、民間団体等の事業について、学習情報の提供を共同実施するなど相互の連携協力を進めることが必要。


(大臣官房政策課)

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