1997/6 |
中央教育審議会第二次答申の概要 | ||||||||||||
中央教育審議会第二次答申の概要 <第二次答申の特色>
<第二次答申の内容> 1 一人一人の能力・適性に応じた教育の在り方 [1] 今後の教育は、「ゆとり」の中で「生きる力」を育むことを目指し、個性尊重を基本的な考え方とする。 [2] 形式的な平等の重視から、個性の尊重へ転換。 [3] 国際化、情報化、科学技術の発展、高齢化などの社会の変化に適切に対応し、個性的・創造的な人材の育成が不可欠。 [4] 同時に、思いやりや社会性、倫理観、正義感等の豊かな人間性や伝統・文化の尊重など、時代を超えて変わらない価値のあるもの(不易)を重視。 [5] 教育における子どもたちの選択の機会や、学校・地方公共団体等の裁量の範囲の拡大が必要。 2 大学・高等学校の入学者選抜の改善 過度の受験競争の緩和を図る観点から、大学・高等学校の入学者選抜について、選抜方法・尺度の多様化を推進するなど、具体的かつ実行可能な最大限の改善策を提言 (1) 大学入学者選抜の改善 [1] 学力試験の偏重を改め、選抜方法・尺度の多様化の推進 ア)総合的・多面的な評価など丁寧な選抜(調査書、小論文、面接等の活用) イ)ボランティアなど様々な活動経験の評価(学校外の団体からの推薦や自己推薦の活用等) ウ)専門高校等を対象に学校を指定した推薦入学の枠の設定 エ)地域を指定した枠の設定・拡大 オ)各大学・学部における複数の選抜基準の導入(影響力のある特定の国立大学について後期日程の定員を拡大すること等) カ)秋季入学の拡大 など [2] 「生きる力」の育成を目指す初等中等教育を尊重(高校の調査書の一層の活用 、思考力を問う出題、英語におけるリスニングの導入、推薦入学の拡大など) [3] 大学入試センター試験を改善(センター試験の問題作成に高校教員の協力。センター試験が一定水準に達していれば、各大学で学力試験以外の資料により選抜する取組の推進など) [4] 入学者選抜の改善のための条件整備(アドミッション・オフィスの整備、ゆったりとした入試日程の確保、入試に関する外部評価の導入など) [5] 高等教育を柔らかなシステムへ(単位互換の推進、社会人入学の拡大など) (2) 高等学校入学者選抜の改善 [1] 中・高等学校間のハードルを低く(入学定員の弾力的取り扱い、学力試験の実施教科の多様化など) [2] 選抜方法の多様化、評価尺度の多元化(同一高校での複数の選抜基準の導入、 子どもや保護者の自己申告書の活用など) [3] 「生きる力」の育成を目指す中学校以下の教育を尊重(調査書の活用、推薦入学の推進など) [4] 高校教育の多様化と柔らかなシステムの実現(総合学科の整備、転編入学の拡大など) (3) 学(校)歴偏重社会の問題 [1] 企業等の採用・昇進の在り方の改革(学校名にこだわらない採用の推進、新卒一括採用の見直し等) [2] 国民の意識(横並び意識、同質志向、過度に年齢にとらわれた価値観等)の改革 3 中高一貫教育 学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育の選択的導入を図ることを提言し、幾つかのモデルを示すことなどにより、その具体像を提示 [1] 子どもたちの個性を「ゆとり」ある教育の中で育むことを目指すとともに、学校制度の複線化構造を進める観点から、中高一貫教育を選択的に導入。 [2] 中高一貫校では、例えば、体験学習、地域に関する学習、国際化や情報化に対応する教育、環境に関する学習、伝統文化等の継承のための教育、じっくり学びたい子どもたちの希望に応える教育などを軸に据えた特色ある教育の展開を期待。 [3] 中高一貫教育の実施形態については、次のような類型を提示。 ア)同一の設置者が中・高を併設(一つの6年制の学校として設置する場合も含む) イ)市町村立中学校と都道府県立高等学校を連携 [4] 中高一貫教育の導入とその具体的な在り方(実施形態の選択を含む)については 、学校設置者の裁量。国においては、そのための所要の制度改革を推進。 [5] 受験競争の低年齢化を招かないよう、公立については学力試験は行わず、抽選、 面接、推薦など多様な方法を適切に組み合わせ。 4 教育上の例外措置 稀有な才能を持った子どもたちのための教育上の例外措置として、大学入学年齢の特例を設け、学校制度の弾力化を図ることや、同時に、学習の進度の遅い子どもたちに対して十分な配慮を行うことについて提言 [1] 個性尊重の考え方に立って、稀有な才能を有する者について、大学入学年齢制限を緩和。 [2] 対象分野は、当面、数学と物理に限定。対象者は17歳以上(高校在学2年間以上)のごく少数の者を想定(「受験エリート」は対象外) [3] 「飛び級」については、受験競争の激化を招くおそれが強いことなどから、実施せず。 [4] 例外措置以外に、優れた能力を持つ高校生のために多様な教育機会(大学公開講座等)を充実。 [5] 同時に、学校教育全体にわたって個に応じた指導を進め、学習の進度の遅い子どもに十分配慮。 5 高齢社会に対応する教育の在り方 高齢社会に対応し、学校・家庭・地域社会における教育の充実を図り、子どもたちに豊かな人間性をはぐくむとともに、子どもたちが高齢者と触れ合い、高齢者から学んでいくことの大切さを提言 [1] 高齢化に対応した教育について特に重要なこととして三点を提示。 ア)思いやりの心など豊かな人間性や、高齢者のために行動する意欲・態度の育成 イ)生涯を通じ学んでいく態度、基礎的な健康や体力の育成 ウ)高齢者が教育の営みに積極的に参加し、子どもたちが高齢者から生きた知識や生き方を学ぶこと [2] 学校においては、高齢者と触れ合い、交流する体験活動を重視。学校教育において高齢者を活用するため、人材バンク等を整備。教員養成段階での介護・福祉等 の体験活動も重要。学校施設と高齢者福祉施設の連携を進めるべき(施設の複合化の検討など)。 [3] 豊かな人間性を育む家庭教育の充実、地域社会における高齢者との触れ合いの機会の充実、ボランティア活動の促進が重要。 |
(大臣官房政策課)
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