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中央教育審議会

  


第3章  情報化と教育

[1]  情報化と教育

  情報化の進展は、今、新たな段階を迎えつつある。既に我が国では、企業活動、研究活動から教養文化活動、娯楽の世界まで、社会のあらゆる分野に情報化が浸透し、情報化社会と言われるにふさわしい社会を迎えているが、今日見られるインターネット、マルチメディアー体型のパソコン、携帯電話などの普及は、想像をはるかに超えて我々の生活様式をさらに急速に変えつつある。
  世界的規模での情報通信ネットワークを通じて、不特定多数の者が、双方向に文字・音声・画像等の情報を融合して交換することを可能とする高度情報通信社会が現実のものとなりつつあり、それはかつての産業革命にも匹敵するような変化を全地球的にもたらし、今後の社会の姿を大きく変え、21世紀へ向けて新たな展望を開くものとして大きな期待が寄せられている。高度情報通信社会の全体像については、今後の技術革新や基盤整備の動向によっても左右され、なお明確でないところがあるが、情報化が、さらに急速に進展することは確実である。

  情報化の進展は子供たちの教育にも様々な影響を与えている。
  まず挙げられるのは、子供たちが様々な情報手段から入手する情報量の膨大さと内容の多様さである。もちろん個人差や学校段階によって違いはあろうが、量的には学校教育を通して提供される情報を凌駕し、またその内容は学校の授業で学ぶものよりも子供たちの興味や関心を大いに引きつけるものが少なくない。
  情報の豊富さは、プラスに生かせば子供たちの発想を膨らませ、日常生活の幅を広げ、豊かにするものであることは間違いない。しかし、情報は常に正しいものとは限らないし、また意義のあるものとも限らない。興味本位のものも相当に含まれていると考えた方がよい。そうした懸念をよそに、子供たちが手にする情報は、パソコンや情報通信ネットワークの普及などによって今後増加の一途をたどるものと考えられる。このような溢れる情報の中で、子供たちが誤った情報や不要な情報に惑わされることなく、真に必要な情報を取捨選択し、自らの情報を発信し得る能力を身に付けることは、子供たちにとってこれからますます重要なこととなっていくと言わなければならない。

  次に、コンピュータの普及は、ソフトウェアの開発とあいまって、子供たちの個別的な学習をより可能とするとともに、多彩な教材を提供することなどによって、子供たちの学習の在り方により多くの可能性を与えることになる。
  様々な方法によるコンピュータの活用は、既に我が国の学校教育において広範に見られるものであるが、コンピュータの普及とソフトウェアの開発がさらに進めば、コンピュータが、教員の役割を補完して、一人一人の子供の特性等に合わせた個別指導を徹底して行っていくといった学習の在り方が、学校教育の中でさらに充実していくこととなろう。こうしたコンピュータの活用は子供たちの学習の改善・充実に大いに資するものと考えられる。
  しかし、コンピュータ等を活用した個別学習の徹底やコンピュータを用いた疑似体験の増大は、ゲームソフトに熱中する子供について問題点として指摘されているような、例えば、教員と子供、あるいは子供同士の人間関係の希薄化や子供たちの実際の生活体験・自然体験の不足などを引き起こしかねないといった問題を内包していることを我々は見逃してはならない。

  さらに、情報化の進展が教育に及ぼす影響の顕著なものとして、各学校が、学校外の様々な機関、組織、人々等との連携・協力の下に教育を進めていくことを可能にするという点がある。これによって、各学校はそれぞれの学校単独ではなしえない教育活動を展開し、全体としてその学校の指導力を高めることが可能となるのである。
  情報通信ネットワークの普及により、学校はその学校の置かれた地理的環境にかかわりなく、必要とする情報を迅速に入手して、指導の場面に生かしていくことができる。インターネットなどを活用すれば、その範囲は国内にとどまらず、一挙に世界に広げることができるのである。このことは、子供たちの学習素材を豊かにし、子供たちの興味や関心を広く豊かにすることに大いに資するであろう。また、情報通信ネットワークの活用によって、学校は必要な情報の収集、情報交換等を適時に行い、遅滞なく必要な措置を講ずるなど、学校運営の改善・充実にも寄与するところが非常に大きいものと考えられる。

  我々が情報化の進展と教育について考えたポイントは二つである。
  一つは、情報化が進展するこれからの社会に生きていく子供たちに、どのような教育が必要かということであり、もう一つは、子供たちの教育の改善・充実のために、コンピュータや情報通信ネットワーク等の力をどのようにしたら生かしていくことができるか、どのように生かしていくべきかということである。
  そして、我々は、これらについて特に次のような点に留意して、教育を進めていく必要があると考えた。
  (a) 初等中等教育においては、高度情報通信社会を生きる子供たちに、情報に埋没することなく、情報や情報機器を主体的に選択し、活用するとともに、情報を積極的に発信することができるようになるための基礎的な資質や能力、すなわち、「高度情報通信社会における情報リテラシー(情報活用能力)」の基礎的な資質や能力を育成していく必要があること。
  (b) 学校は、情報機器やネットワーク環境を整備し、これらの積極的な活用により、
    教育の質的な改善・充実を図っていく必要があること。
  (c) 情報機器やネットワーク環境の整備をはじめ、学校の施設・設備全体の高機能化・高度化を図り、学校自体を高度情報通信社会に対応する「新しい学校」にしていく必要があること。
  (d) 情報化の進展については、様々な可能性を広げるという「光」の部分と同時に、
    人間関係の希薄化、生活体験・自然体験の不足の招来、心身の健康に対する様々な影響等の「影」の部分が指摘されている。教育は、これらの点を克服しつつ、何よりも心身ともに調和のとれた人間形成を目指して進められなければならないこと。

[2]  情報教育の体系的な実施

  情報化がこれからますます進展していくことを踏まえるとき、子供たちに、広く情報の理解、選択、整理、創造、発信などの基礎的な能力の育成を図るとともに、コンピュータ等の情報機器を活用し得る基礎的な能力やコンピュータ等の持つ可能性と限界、さらには情報化社会の特質等についての正しい知識などを培っておくことは、今後一層重要なことになると考える。 
  情報教育 (情報についての全般的な教育)は既に我が国の初等中等教育においても取り組まれてきているが、子供たちの発達段階を十分に考慮しながら、小・中・高等学校の各段階における系統的・体系的な情報教育を一層充実させていく必要がある。特に、コンピュータを中心とした情報教育については次のような充実を図っていくべきである。
  各学校段階ごとには、まず、小学校では、各教科において、創作・表現活動、調べ学習、探究的な学習などにおいて、学習活動を豊かにする道具としてのコンピュータの活用を図りながら、コンピュータに慣れ親しませるようにしていくことが必要である。学校や地域の実態等に応じ、「総合的な学習の時間」を活用して、コンピュータに触れながら、どのように活用できるかを体験的に学習できるようにすることも意義のあることである。
  中学校では、コンピュータの扱い方を含め、情報を適切に活用する基礎的な能力を養うようにするとともに、生徒の興味や関心等に応じてさらに発展させた内容を学習することができるようにすることが必要である。これらの学習と併せて、学校や地域の実態等に応じ、「総合的な学習の時間」を活用して、情報通信ネットワークを活用した学習等ができるようにしたり、各教科において、課題の発見、情報の収集、調査結果の処理・発表など、学習内容を豊かにする道具としてのコンピュータの活用を図っていくことも意義のあることである。
  高等学校では、小・中学校での学習の基礎の上に立って、各教科でのコンピュータの活用を一層促すような配慮が必要である。専門高校や総合学科については、情報関連科目の充実を図ること、普通科については、学校や生徒の実態等に応じて情報に関する教科・科目が履修できるように配慮することが必要である。
  なお、初等中等教育段階におけるコンピュータに関する学習は、一般的にはコンピュータを「道具」として使いこなせるようにするということが基本である。そのためには、個に応じた指導に留意するとともに、学校や生徒の実態等に応じて、例えば、一定の期間に集中して指導することができるよう、教育課程の弾力化を図ることなども考えるべきであろう。

  各学校で、情報教育が活発に展開されるためには、教育用コンピュータが十分に整備されることが必要である。現在、教育用コンピュータの計画的整備(平成6年度からおおむね6年間で小学校に22台〔児童2人に1台〕、中学校に42台〔生徒1人に1台〕、普通科高等学校に42台〔生徒1人に1台〕、特殊教育諸学校に8台〔児童・生徒1人に1台〕)が実施されているが、その円滑な実施が望まれる。また、その後の整備の基本的な考え方としては、各学校一律ではなく、児童生徒数等、その学校の規模などに応じた整備をさらに行って、児童生徒が、授業時間外も含めて日常的にコンピュータを使えるような環境を整備していくことが必要と考える。また、コンピュータ以外の多様な情報機器についても、整備を図っていくことが望まれる。
  各学校でコンピュータを有効に活用するためには、ハードウェアの整備だけでなく、教育の実践経験を通して作られた、良質で多様なソフトウェアが整備されることが必要である。現状は、授業で効果的に使用できるソフトウェアが十分に整備されておらず、また、研究開発の取組も必ずしも十分ではないと言わなければならない。教育関係者や情報処理技術者の両者が加わった研究グループに委託することなどによって、教育的観点に立ったソフトウェアの研究開発を一層進め、各学校に質の高い多様なソフトウェアの整備を図っていくことが急がれるところである。
  また、「教育用ソフトウェアライブラリセンター」の整備を進めるなどして、学校関係者がそれぞれの学習活動に最も適した教育用ソフトウェアを検索・試用することができる機会を充実すること、教育用ソフトウェアの評価システムについて研究を進めていくこと、さらに、情報通信ネットワークを通じて、ソフトウェアを提供する方法について研究開発を進めていくことなども重要なことである。

[3]  情報機器、情報通信ネットワークの活用による学校教育の質的改善

  我が国の初等中等教育における情報機器活用の歴史は、極めて浅いものであるが、各学校での様々な取組を通して、指導方法の改善・充実などに大いにその力を発揮してきたと言うことができる。しかし、[2] で述べたように、なお様々な課題が残されており、コンピュータ等の情報機器の扱いについては、今後さらに様々な角度から研究に取り組み、その成果を実際の指導の場に積極的に生かしていくべきであると考える。
  加えて、我々は、ここで情報通信ネットワークの活用について提言したい。
  高度情報通信社会は、コンピュータを単体で活用するのではなく、それらが情報通信ネットワークによって一体となって機能するところに、その本質があるのであり、我が国社会全体は、既にその方向に向かって急速に前進している。
  現在、初等中等教育の関係では、インターネットを活用した教育や光ファイバー網を活用した教育について、研究開発が進められているが、これらの研究成果や我が国における情報通信ネットワーク環境の整備状況などを踏まえつつ、初等中等教育段階での情報通信ネットワークの活用を本格的に進めるべきである。
  情報通信ネットワークの活用は、一つの学校の枠を越えて、様々な学校や地域との情報の共有・交流を可能にし、学校がそれらとの連携の下に教育活動を展開することを可能にするものであるから、子供たちに豊富な教材を提供する上で、また子供たちの学習の対象を広げ、興味や関心を高める上でその効果は極めて大きなものがあると考えられる。例えば、他の学校とネットワークを結ぶことによって、様々な情報交換を行うことなどは、日常のありふれた活動となるであろうし、時には合同授業を実施することも考えられるであろう。これらの試みによって、子供たちの世界は大きく広がっていく。社会教育施設や文化施設、大学、関係行政機関等とネットワークを形成することも意義のあることである。博物館、美術館、図書館、大学等は子供たちにとって魅力のある教育用素材の宝庫であり、これらの素材の情報データベース化を進めるとともに、これらを情報通信ネットワークを通して授業に活用することは、子供たちの学習に対する興味を大いに高めるであろう。国際理解教育や環境教育も情報通信ネットワークの対象を世界に広げることによってはるかに豊かな充実したものになっていくであろう。
  こうした学習を通して、子供たちは、自らの情報発信能力を高めることの必要性を実感するであろうし、教室の授業だけでは得られない感動を覚えるであろう。子供たちの興味や関心の対象は、意図すると否とにかかわらず、国内外の様々な社会や人々へと広がり、これにより子供たちの視野が大きく広がっていくものと考えられる。
  また、情報通信ネットワークの活用は、教育上の様々な制約を克服するうえで大きな効果を発揮するものである。例えば、ややもすると情報の不足しがちなへき地などにある学校は他校、他地域とのネットワークの形成によってその悪条件を相当に改善することが可能と考えられるし、また病気療養児の教科学習等を補完するために情報通信ネットワークを活用することも極めて有効な方法と考えられる。

  情報通信ネットワーク環境の整備の在り方としては、近い将来、すべての学校がインターネットに接続することを目指しつつ、当面は、全国の幾つかの地域の学校にネットワーク環境を整備し、インターネット利用の実践研究を積極的に実施し、その成果等を踏まえながら全国に広げていく方法が適切と考える。
  現在、インターネットの使用言語の多くが英語であり、このことが我が国の学校でのインターネット利用を遅らせているという状況がある。この問題に対処するためには、もちろん、外国語教育の改善を図ることも重要であるが、日本語の情報データベースを格段に充実していくことも必要と考えられ、その具体的方途をどうするかといった問題についても対応を急がなければならない。このほか、ネットワーク環境を広げていくに際しては、インターネット上の好ましくない情報の取扱いの問題、情報モラルの問題など、様々な問題がある。このような問題の早急な研究・検討の重要性を改めて指摘しておきたい。
  また、21世紀には、光ファイバー網や衛星通信等の高度情報通信ネットワークが、一層普及していくとともに、さらなる技術革新によって、ネットワークの新たな形態での活用が展開されていくものと考えられる。このような点についても、今後の動向を見据えつつ、教育における活用の在り方について、さらに積極的に研究開発に取り組んでいく必要がある。

[4]  高度情報通信社会に対応する「新しい学校」の構築

  [2] 及び[3] では、高度情報通信社会が現実のものとなりつつある我が国において、それに適切に対応していくための初等中等教育段階での教育の在り方について述べた。
  ここでは、我々はそのような教育活動を展開していくためには、学校自体が高度情報通信社会にふさわしい施設・設備を備えた「新しい学校」になっていく必要があることを指摘したい。
  学校、とりわけ初等中等教育段階における学校の情報通信関連施設・設備の現状は、高度情報通信社会への対応という点で必ずしも十分とは思われない。そうした学校の状況を改善していくことが、子供たちの教育を充実させることにつながっていくのである。[2] や[3] で述べたコンピュータやネットワーク環境の整備等をはじめ、学校の施設・設備全体の高機能化・高度化を図り、学校全体を高度情報通信社会に対応した機関にしていかなければならない。学校、教育センター、大学等の教育関係機関はもとより、他の様々な機関、組織等とネットワークを形成し、情報収集の迅速化、学校運営や学校事務処理の合理化・迅速化等を図るとともに、適時、保護者、地域の人々、さらには広く社会に対し、自らの情報を積極的に発信していく開かれた学校となっていくことを強く望むものである。
  学校の施設の中で、特に学校図書館については、学校教育に欠くことのできない役割を果たしているとの認識に立って、図書資料の充実のほか、様々なソフトウェアや情報機器の整備を進め、高度情報通信社会における学習情報センターとしての機能の充実を図っていく必要があることを指摘しておきたい。また、学校図書館の運営の中心となることが期待される司書教諭の役割はますます重要になると考えられ、その養成について、情報化等の社会の変化に対応した改善・充実を図るとともに、司書教諭の設置を進めていくことが望まれる。

  学校が高度情報通信社会に対応した「新しい学校」となっていくために、教員の果たす役割の重要性は言うまでもないことである。
  学校段階、教科の別なく、教員が学校で何らかの形でコンピュータを活用する必要性が増しており、教員がコンピュータの活用に関する基礎的な知識・技術を習得できるよう、教員の養成・研修の充実を図るとともに、情報処理技術者等の専門家の活用を推進していくべきものと考える。
  教員養成については、現在教員免許状取得に当たって必修となっている「教育の方法及び技術(情報機器・機材の活用を含む。)に関する科目」における教育をはじめ、コンピュータの活用に関する教育の一層の充実を図っていく必要がある。
  研修については、初任者研修、経験年数に応じた教職経験者研修、校内研修など現在様々な形で行われているが、これらの機会を積極的に活用して、コンピュータに関する研修をさらに充実させることを望んでおきたい。
  また、各学校での実態を見ると、教員の中でも、コンピュータに関する専門的知識を持ち、意欲的にこれを活用する教員がその学校の情報教育の推進に指導的な役割を果たしている例が多い。このような実情を踏まえ、特定の教員に対する専門研修の充実を図って、各学校にそのような指導的な役割を果たす教員を複数確保し、学校全体の情報教育を継続的に推進していくような校内体制を整備していくことも望まれる。
  さらに、学校の情報化に対応した指導体制の充実を図るため、情報処理技術者や専修学校の教員等のコンピュータに関する指導の専門家を、授業や教員研修などの場に迎えることも積極的に推進されるべきものと考える。

  以上[2] 及び[3] を通じて、情報化の進展に対応した教育の在り方について、主として学校で取り組むべきことを中心に述べてきた。情報化の進展は極めて著しく、また全国的な規模で進められるべき課題であることなどを踏まえ、ここに二つのことを提言しておきたい。

  一つは、教育における情報化に関する様々な施策を中長期的な視野に立って総合的に推進するため、文部省において関係省庁の協力を得つつ、コンピュータ等の情報機器やネットワーク環境の整備をはじめとしたマルチメディアに関する総合推進プログラムを策定することを提言したい。これからの情報化は、様々な点で、我々の予測を超えた形で進んで行くと考えられる。したがって、このプログラムは、社会における情報通信基盤の整備状況や技術革新の状況を踏まえつつ、適宜見直され、その時々において、関係者が学校の情報化の進展についての基本的な方向に関し、共通の認識を持つための指針を示すものとなることを望むものである。
  もう一つは、国立教育会館が、教育等に関する情報を収集し、データベース化し、それらを全国に提供するなどの機能を果たす教育情報のナショナルセンターとしての役割を担っていくことを提言したい。今日様々な教育課題に直面する中で、教育関係者が、広く全国レベルでの教育関係施策等に関する情報や教育関係の統計情報、教育関係の各種実践事例の情報等を必要に応じ、随時入手し得るような仕組みを整備することは、極めて重要なこととなっている。国立教育会館が、豊富な情報を必要に応じ、一括して提供できるような機能を持つことは、極めて有効なことと考える。

[5]  情報化の「影」の部分への対応

  情報化の進展に対応し、子供たちに様々な悪影響を与えるいわゆる情報化の「影」の部分の問題が指摘されている。[1] においても述べた通り、様々なマスメディアから流されるあまりにも多くの情報の中で、子供たちはどの情報を選択するか極めて難しい環境に置かれていること、また情報機器等の技術が進歩すればするほど増加する間接体験・疑似体験と実体験との混同を招くこと、さらには、テレビゲーム等に没頭する例に象徴されるように、あまりにも長時間にわたって情報機器等に向かい合うことが人間関係の希薄化や真の生活体験・自然体験の不足を招来させたり、子供たちの心身の健康に様々な影響を与えることなどの懸念が、問題点として指摘されている。
  情報化の進展に対応する教育を考えるに当たって、こうした情報化の「影」の部分の持つ問題に、学校のみならず、家庭、地域社会が相互に連携・協力し合って、真剣に取り組む必要がある。
  その際重要なこととして指摘しておきたいことの一つは、子供たちに、コンピュータ等の情報機器はあくまで自分を助ける「道具」であること、そして、自らの考えを持ち、自ら判断し、自らの責任において行動することが大切であることを十分理解させることである。
  さらに、情報機器はあくまで自分たちの行動を支援するためのものであり、より大切なことは人間同士の触れ合いであること、コンピュータ等を通して体験するものはあくまで間接体験や疑似体験であって、実際の生活体験・社会体験・自然体験などの直接体験こそが大切であることなどについて子供たちにしっかりと理解させるとともに、我々大人たちもこうしたことの大切さについて、さらに認識を深める必要がある。
  また、一人一人が情報の発信者となる高度情報通信社会においては、プライバシーの保護や著作権に対する正しい認識、「ハッカー」等は許されないといったコンピュータセキュリティーの必要性に対する理解等の情報モラルを、各人が身に付けることが必要であり、子供たちの発達段階に応じて、適切な指導を進める必要がある。そして、こうした点について子供たちに正しく理解させるための指導方法や指導内容等について研究を促進する必要がある。



(大臣官房  政策課)




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