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中央教育審議会

 1953/7 答申等 
義務教育に関する答申 (第1回答申(昭和28年7月25日)) 

  
1  義務教育に関する答申

(答  申)
昭和28年7月25日
文部大臣  大  達  茂  雄  殿
中央教育審議会会長
亀  山  直  人

義務教育に関する答申
  
  終戦後行われた教育の改革は,民主主義をその基本理念とし,過去の教育の欠陥を是正することを目的として新しい制度のもとに関係各方面の多大の努力が払われたにもかかわらず,一般にいまだ習熟を欠くものがあり,所期の効果をあげるに至っていないものが多く,その目的を達成するにはなおいっそうの努力を要する。またその改革のうちには必ずしもわが国の実状に適するとは言いがたい点も認められる。
  これらの諸点に関し,民主主義の根本観念にもとらない限り,実情に即してこれに適当な是正を行うことは現下の急務であると信ずる。しかし,これと同時に教育,ことにその制度の改革は,その及ぼす影響が大であるから,特に慎重を期して行わなければならない。
  本審議会は,昭和28年1月21日第1回総会開催以来終戦後の特殊事情のもとに実施されてきた教育制度の再検討を行ってきたが,まず,義務教育について慎重に検討を加えた結果,今日までに下記の事項については次の結論に到達した。

  
I  学校制度
  6・3の制度は堅持する。
  6・3制については,ただにこの制度を堅持するにとどまらず,その施設および内容をも整備充実することに努めるとともに,(たとえば,老朽校舎の改築,2部授業の解消,施設・設備の適正な基準までの整備等)就学前教育および盲,ろう,精神薄弱,し体不自由,身体虚弱な者等のための特殊教育を一段と振興することが望ましい。
  
II  教育委員会制度
  教育委員会は,その設置以来,日がきわめて浅く,その実績の良否については相当論議の余地がある。
  しかし,この制度は,終戦後の教育の民主的改革の顕著な一要項であり,その意図するところがひたすら教育の中立性と自主性とを樹立するにあるという趣旨を尊重し,できるだけその長所を発揮せしめるよう努めたい。
  
1.性    格
  教育委員会の性格は,現行法どおりとする。都道府県および5大市以外の市町村教育委員会については,多少の疑念なしとしないが,現行法による性格をただちに改変する積極的根拠は認められない。
  
2.設置単位
  現行法どおりとする。ただし,町村については,次のような点について検討する必要がある。
(1)  設置義務の緩和−規模・財政力等の現状にかんがみるとき,弱小町村にまで設置義務を負わせることは無理と考える。
(2)  上記の場合における町村教育委員会の設置・廃止については,地方自治体の選択に任せることも一策である。
(3)  教育委員会不設置の町村の措置−諮問機関のようなものを置くこと。
  
3.委員の選任方法
  教育委員の選任は,現行法どおり公選とする。ただし,選挙の方法については次のような点について検討を要する。
(1)  都道府県等の大地域においては,選挙区を設定すること。
(2)  教職員の立候補については,離職後一定期間の経過を必要とすること。
  
III  教    員
  
1.身    分
  市町村の義務教育学校の教員の身分は,給与・福利・厚生・配置等の関係をも考慮し,都道府県の公務員とすることが望ましい。
  
2.養    成
  教員の養成は4年課程を原則とする。ただし,当分の間需要供給等の関係から2年課程を設けることもやむを得ない。



(大臣官房政策課)

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