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中央教育審議会

 1998/5 議事録 
中央教育審議会第218回総会 (議事録) 

   中央教育審議会  第218回総会

議  事  録

  平成10年5月25日(月)10:00〜12:00
  霞が関東京會舘    35階    ゴールドスタールーム


    1.開    会
    2.議    題
          幼児期からの心の教育の在り方について
    3.閉    会


    出    席    者

    委  員              専門委員                    事務局
      木村座長            青木専門委員                狩野政務次官        
      河野座長            明石専門委員                佐藤事務次官        
      川口委員            油井専門委員                富岡生涯学習局長    
      坂元委員            安藤専門委員                辻村初等中等教育局長
        木委員            猪股専門委員                御手洗教育助成局長  
      田村委員            衣笠専門委員                佐々木高等教育局長  
      俵  委員            佐々木(光)専門委員        高  総務審議官      
      土田委員            佐野専門委員                杉浦政策課長        
      永井委員            佐保田専門委員              その他関係官        
      根本委員            末吉専門委員  
      横山委員            那須原専門委員
                            平山専門委員  
                            牟田専門委員  
                            山折専門委員  
                            和田専門委員  


○  おはようございます。それでは、ただいまから中央教育審議会総会第218回会議を開催させていただきます。
  委員の皆様方、新聞等で御存じかと思いますが、有馬会長が5月20日付で委員を退任されまして、現在、会長が空席となっております。また、鳥居副会長も本日は御欠席でございます。会議の議事進行役については、会長、副会長が欠席の場合は、あらかじめ会長が指名した者がこれを行うことになっており、現在、会長の職務を代行しておられます鳥居副会長のほうから、本日の議事進行については、私に御指名をいただきましたので、私のほうで進行させていただきます。よろしくお願いいたします。
  なお、会長選任の件につきましては、副会長とも御相談の上、人事案件でもございますので、副会長が御出席の際に行いたいと思います。本日はお諮りいたしませんので、あらかじめお断りさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  それでは、議事に入ります前に、配付資料の確認をお願いいたします。

  <事務局より説明>

○  それでは、まず最初に、去る5月20日に新潟で行われました「小学校の子ども、保護者、先生と語り合う会」の概要につきまして、5人の委員の方に御出席いただきましたが、その状況につきまして、参加された委員のほうから御報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○  それでは、当日の概要を御報告申し上げます。当日は私も含め5名の委員が参加し、10時半から3時40分までじっくりとお話し合いをさせていただく時間を持ちまして、大変参考になりました。
  新潟小学校というのは、すぐ隣が知事公舎でございます。その隣が日銀の新潟支店ということで、まさに学校は新潟市の中心街に位置している大変いい場所でございます。そのためにグラウンドがちょっと手狭でございますが、落ちついたとてもいい雰囲気の学校でございました。ただ、街中の過疎という状況の中で、統合が始まっておりまして、小学校の統合は子ども同士は大して問題ないようですが、親御さんがなかなかうまく統合しないということで、その点の悩みをこもごも語っておられました。その問題はあるんだろうなという気がしましたが、子どもが問題ないのに、なぜ大人ができないのか不思議でしたが、どうもそういうことがあるようでございます。
  それでは、20日にお伺いいたしましたときの、先生方、保護者の皆さん、そして子どもたちの意見を簡単に印象的なことを申し上げさせていただこうと思います。
  まず最初に、午前10時45分から12時15分までの間、保護者の方16名との懇談を持ちました。そういった会に慣れているようでございまして、16人もいらっしゃるので、この時間で全員が発言できるかなという心配があったんですが、全員が過不足なくバッチリと発言されまして、その後も簡単でしたが懇談できるくらいの時間がとれました。
  全体的な印象では、確かに家庭教育について、保護者の皆さんは、率直に言って自信を喪失しているというか、非常に心配しているということがうかがわれました。幾つか申し上げますと、「子どもたちの乱れは、大人社会の乱れの反映である。子どもたちを憂える前に大人社会を考え直すことが必要ではないか」という意見が、二、三の方から出ました。それから、「子育てについて本音で語り合えるような集まりが必要ではないか」。これはPTAの役割という関連から出てきたわけですが、子育てというのはどうも家庭のことということで、PTAといえども口が出せないということで、何となくみんな構えて、自分の家のことはそういう場には出せないし、また悩みがあっても相談ができないということで、率直にそういった話し合いができる場になってもらいたいんですけれども、なかなか難しいんだという悩みが話されました。
  それから、「子どもが父親の職業を通じて社会を知っていくことが非常に大事だ」という、御自身の経験から、御自分のうちで  ―その地域の特色かもしれませんが、自営業の方がかなりいらっしゃいまして、朝から晩まで子どもと一緒にいられるんだという話の中から、そういう率直な意見が出まして、そのことは意味があり、役に立っているんだという感想が出ましたのが印象的でございました。
  午後になりまして、1時から2時半までの間、新潟小学校の先生10名の方と懇談を持ちました。率直なフリートーキングという形での意見交換をさせていただきました。
  全体的な印象では、全員の先生が、とにかく忙しいと。忙しくてかなわない。このままではどうしようもないということが、異口同音という感じで出てきました。ただ、その際に、私どものほうから「忙しい原因は何ですか」と聞くと、「よくわからない」というのが一般的な返事なんです。さらによくいろいろ聞いていくと、例えばこれは一つの例ですけれども、新潟祭りがあって、その祭りは土・日に行われて長期間になるので、結局、それは子どもが全部出るから、教員が手伝う。そうすると、土曜日・日曜日もないので、休みが全くなくなるというようなことが話されているわけです。それは学校ができないならできないとはっきり言う必要があることなのではないですか、地域にお任せしていいことではないですかと言うと、できないと言えないようなものだと思い込んでおられるというのが非常に印象的でした。やれることとやれないことをはっきりして、外部に発信していかないと、逆に全体的にマイナスになってしまうことが起きてしまうことがあるんだという話をしたんですけれども、その点については、これから地方教育行政の関係もかかわることかなという感じを持った次第でございます。
  御意見としては、それ以外には、「子ども自身の体験を通した道徳教育が重要」だと。そのため、学校だけではなくて、地域、家庭、それぞれの場所で道徳教育を担うことを積極的にこれから広げていくことが何よりも大事だという御意見、あるいは家庭におけるしつけが基本でありまして、まさに心の教育で述べておられるように、人格形成の最大の責任者は家庭だということで、すべての人が子育てに関心を持ち、取り組んでいくことが基本ですけれども、その中心は家庭なんだということを実感として持っていると。お弁当をつくってもらった子どもは教室に行くんだけれども、お金を持たされて、あるいは朝御飯を食べないで出されている子どもの場合は、直接保健室に来ることが多いというような保健室の先生の意見が非常に印象的でした。
  それから、子どもたちにとっての遊びの時間と場所をいろいろ大人の社会では考えて、確保するということを意識的にやっていかなければいけない  ―これは地域が地域ですから、そういう意見が出たのも大変印象的でした。
  最後に、児童18名、6年生がほとんどでございました、あと5年生が数名入っておりましたが、その懇談を2時40分から3時40分、約1時間させていただきました。今の子どもさんたちは自分の意見を整理して言うことが身についておりまして、全員が発言し、全員との懇談がうまくできたと感ぜられるような会が持てました。子どもさんの意見の中には、家事や仕事について、一生懸命働いている姿を見たり感じたりするということで、お母さんを尊敬している。あるいは、自分のためにしかってくれるから、お母さんは偉いと思うという意見が出まして、なかなか父親の意見が出てこなかったものですから、「お父さんについてはどう思う」ということを聞き直しましたら、「そういえば、お父さんも大変偉い。私のために一生懸命やってくれる」という意見が出まして、小学校5、6年ですと、やっぱりお母さんということなんだなという感じがしました。
  しかし、中・高になると、父親の出番があるわけでありまして、そういう意味では、あまりお父さんはがっかりすることはないと思いますけれども、お母さんが偉いということで話が出たので、大変よかったなという感じでございました。
  なお、地域の街中の本当に中心地ですから、そういう意見が出るのはしょうがないと思いますが、公園とか、グラウンドとか、遊び場、それからちょっと気になったのは学校開放の内容が、子どもですから隠さずに全部言うんですけれども、実際あまり使えない時間が開放されているんです。しかも、ボールを使ったり、道具を使うことは一切禁止ということですから、やっているだけという学校開放になっているとするとまずいなと。時間で言いますと、第2、第4土曜日の午前中というのが開放の時間なんです。しかも、ただ鬼ごっことか、そういうことをするだけで、ボール遊び等は一切禁止ということになるわけでありますので、どういうふうにやったらいいか、いろいろ事情があるとは思うんですけれども、さらにこの辺については工夫をする必要があるのかなという感想を持ちました。もっともこれは学校側の説明を聞いていませんので、子どもの意見だけですから、片一方だけの意見だということで、割り引いて聞いていただきたいと思います。
  以上、当日の感想、状況の御報告でございます。なお、当日お出ましになられました委員の方々がお見えになっていますので、ぜひ補足をしていただければと思います。

○  どうもありがとうございました。時間の関係で、御出席の委員の中で新潟へ行っていただいた方には、後ほどまとめて討議のときにお願いできればと思います。
  次へまいりたいと存じます。我々のこの中間報告について、いろいろな団体に意見を聞いております。それがまとまってきておりますので、事務局のほうから関係団体の意見並びに次代を担う青少年について考える有識者会議の報告について、少し詳しく御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

  <事務局より説明>

○  ありがとうございました。「次代を担う青少年について考える有識者会議」の報告につきましては、これを各審議会の審議に反映することが求められておりますので、答申の取りまとめに当たりましては、本審議会としてもこの報告を参考にするという線で進みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、残りの時間を使いまして御議論をいただきたいと思います。「幼児期からの心の教育の在り方について」の答申を6月中に取りまとめるということになっておりますので、御議論をいただきたいと思います。

○  最初にお話し申し上げたいんですが、「次代を担う青少年について考える有識者会議」報告にしっかりと書いてございますけれども、これからこれをいかに国民運動化するかということについて、相当にいろいろな工夫が必要ではないか。特に政府が全体的にこれをとらえまして、総理自ら陣頭に立つようなくらいの思いでぜひともやっていただきたい。今回、有馬先生が参議院議員にお入りになられましたら、十分に国会の場を通して有馬先生に御活躍賜りたいということでございます。
  それから、私ども日経連では、このパンフレットをとりあえず3,000部、地方の経営者団体に全部配布いたしまして、それなりに徹底させる努力はしております。
  それから、何らかの規範というものを子どもたちに教える必要があるということで、これを拝見いたしますと、平成10年の夏をめどに新しい道徳教育の在り方について、教育課程審議会でやるようなふうになっておりますね。結局、こういった問題を取り扱うときの手順としては、基本に戻ることが私は一番大事だと思いますが、その際に、事態の認識をどうするか。これはたくさんの論議の過程で、今の事態がどうであるかという認識作業はほとんど終わったと思うんです。そういたしますと、その認識の上に立って、どういう価値を実現させるのかという価値の論議がまずあって、その価値を実現させるための処方せん及び行動計画ということになるのだと思うんです。
  事態の認識と処方せん、行動計画については、かなり徹底しておりますけれども、そこの価値のところの論議が十分になされたのかどうかということを私は思っております。特に我が国の場合は、東と西の価値の両義性を常に持ちながらやってきたという、宿命的な文明の一つのパターンをなしているわけでありまして、これから21世紀に向かって、西側の価値と我々が古来から持っております伝統的な価値をどういうふうに融合させていくかという問題意識を教育の場においても持つ必要があるのではないか。
  私はそれと関連いたしまして、自由と規律とか、あるいは人権とか、公共の福祉といったようなことがこの中にいろいろ出ておりますけれども、やっぱり大事なのは自由と道徳的な規律と、さらに調和といいますか、協調といいますか、そういったようなものが必要ではないかということを、私は経済界では申し上げております。そういった中で、愛という問題ですね。人を愛するという愛ということについて、教育の場でどういうふうに教えておるのか。これが非常に大事なことではないかと思っております。
  そういったことを考えますと、教育の中で古典というものを学ばせるということと、ここにも書いてありますが、自然に学ぶということ、そして働くということの価値ですね。これが学校教育でどういうスタイルをとるのか、園芸をやらせるとか、あるいは物をつくらせるとか。労働と言うとやや古い概念のように思われますけれども、人間というものは働くことによって生きているわけでありますので、働くことの価値を子どもたちに教えるようなことを配慮すべきではないかと思っております。
  最後に、これは経済界の問題でもございますけれども、結局、今、グローバルな市場主義経済ということになって、社会主義経済の国でも市場主義というものを強調せざるを得なくなってきているわけです。ところが、市場主義というのは明らかに人間の欲望と欲望の交換によってマーケットが成り立つわけでありまして、ここに何らの社会的規制がなければ、欲望が正義だという考え方にどうしてもなってしまう。大人の社会がもしそういうことになっていけば、子どもはそれを見ているわけですから。
  同時に、情報通信というものが革命的な影響をこれから持ってくると思いますが、これはバーチャルな世界と現実の世界とのボーダーがなくなっていくような影響を子どもたちに与えるのではないか。つまり、バーチャルリアリティーが人間性を疎外していく可能性が非常に強い。
  ですから、市場主義と情報通信革命という、21世紀に必然的な一つのシステムのマイナスの面ですね。これはマルクスが明治維新の1年前に、『資本論』の中で人間疎外の問題を書いておりますけれども、それとまたやや違った視点で人間が疎外されていくというようなことが、心の教育の上に非常に大きな問題としてのしかかってくるだろうと私は思っておりますので、そういったことについても、ぜひとも配慮をしていただきたいということでございます。

○  幼児期からの心の教育ということで論議が始まったときに、たしかこれからの教育の在り方というものと、それから現在既に病んでいる子どもたちにどういう対応をすべきであるかという視点が語られたような気がするんです。ですから、現在病んでいる子どもたちに対してどうしたらいいんだろうかということがあまり論議されないままにきてしまって、私はそれがとても心配だったんです。
  この間の総務庁のアンケート調査で、いじめを受けた場合に、だれにも相談しないで我慢した子どもの数というのが、小・中平均で37.8%に達しているということで、親にも、先生にも、仲間にも相談できないでいるという意味では、孤立化した子どもたちがいるという今の現実ですよね。
  大人の側から言うと、そういう子どもに対しての関心がというか、危機感と言ったほうがいいと思いますが、それがいまいち欠けているような気がしてなりません。それはマスコミを含めて、一般社会が子どもに対してまだまだ楽観しているというか、そういう状況から抜け出せないでいるような気がしまして、その辺が私はとても心配でございます。
  昨年11月に、国際シンポジウムを国立オリンピック記念青少年総合センターと文部省と共催でやっていただきまして、チャイルドラインの方々を呼んで、そこで電話で子どもを11年受けとめている民間組織のやり方をいろいろ勉強しました。
  地域でそれを何とか実験してみようということで、地元で3月にやりまして、そこで見えてきたのは、そういう子どもたちがいかに多いかということです。電話ということに関してまだ皆さんあまり信用していない部分があるというか、「電話でどうなるの?」という部分があると思いますけれども、そこで見えてきたのは、電話の特性というか、これはかけ手と受け手と両者ともに匿名であるというやり方ですね。だから、かけ手が嫌だと思ったらそこで切ることができる。つまり、かけ手である子どもが主導権を持てるという状況の中での対応が、今、子どもたちにとってとても求められていることではないかと私は思います。
  今までの行政、公的相談機関の状況からいうと、相談を受けて、問題解決するということに主眼が置かれていて、これは大変な問題でありますし、そういうためには、相談の受け手のほうが子どもに指示を与えたりするわけです。そうすると、子どもたちはそれだけで拒否してしまうということで、現実に相談現場が、そういう意味で子どもたちにとって機能していない部分があったと思います。
  ですから、先ほどありましたように、国民的に子どもの問題を考えていこうということから考えていくと、つまり、今回やってとても感じたのは、受け手になった人たちが、そこで実にいろいろ気づきがあったり、子どもに対して今まで知らなかったことを理解できたりする状況があった。ですから、終わってからの反省会はすごく盛り上がりました。一人一人がいろんな思いを語ってくれまして、そういう意味でよかったと思いました。だからこれは、かけ手も、受け手も、そこでお互いにお互いを理解する場面をつくっていくことにつながると思います。
  これはどちらかというと民間が主導して、行政がそれを支えていくというシステムであるのが一番いいのではないか。相談現場の向こう側に学校が見えたりしたら、子どもはもう拒否してしまいます。そういうことでなくて、親や先生や大人たちに対してのいろいろな不信感を子どもは持っております。だけど、信頼できる大人がいるということを子どもが発見することがまず基本で、それによって大人と子どもの関係がもう少しよくなっていく可能性があるのではないかということの中で、どういうタイトルがいいかわかりませんけれども、「孤立化が進む子どもたちのために、24時間電話を開設しよう」みたいな項目をぜひ設けていただきたいと思っております。
  そして、先ほど市場の問題についてもご発言がありましたが、人間の本質的な問題を考えていくと、手間や時間をかけることの重みといいましょうか、これが人間にとって実に重要であろうと思うんです。それを味わう場面が実に少なくなっている。カットすること、省くことはとてもうまくなったけれど、逆に手間や時間をかけることによって得られるものに対して関心を持たないという状況が、子どもたちに既に生まれておりますから、そういうことが味わえるような状況をつくっていく。社会体験、自然体験がとりあえず基本になっていくと思いますけれども、それを具体的にどうするかということになってくると、それに対して国民全般の関心がもっともっと盛り上がらないと、なかなかそういう状況が生まれてこないのかなという気がいたします。
  そういう意味で、基本的なところもひとつ最終答申の中で、私は何回も言って恥ずかしいですけれども、文明による人間への影響、人間がどういうふうになっていくのか、先が心配であるというその辺について、文明の功罪の罪の部分をやはり書いていただきたいと考えております。

○  マスコミさんの協力が絶対に必要ではないか。テレビとラジオは、私どもの少年時代を考えると、結構いい番組がございましてね。ですから、子どもたちを対象にした良質な子ども番組を、しかもそれも、大人は今、「徳川慶喜」なんかは毎日曜日必ず見るようなことになっているわけですけれども、かつての「おしん」が、中近東や中国へ行きますと大変な好評だったんでございますが、今、それ的なものが行われているのかどうかわかりませんが、マスコミのグループが真剣になって、子ども番組をどうするのかというような運動を起こしていただきたい。特にマスコミ関係者にお願いしたいと私は思っております。

○  この場がこの議論にふさわしい場なのかあれですが、新潟の懇談の場でも、お父さんの存在といいますか、この中間報告にも、社会全体のモラルの低下とか、いろいろな指摘がありますが、これを掘り下げていったら、何が原因だという議論がいろいろあるんだろうと思うんです。今、特にサラリーマン社会といいますか、企業社会は、グローバルスタンダードとか、そういう議論の中に、どうも本質的でない議論も多く、平たく言うと悪乗りみたいな議論もたくさんあったりします。先ほど「疎外」という言葉を使われましたが、まさに疎外されつつあるお父さんというのが非常に増えている。そのお父さんたちは自分が疎外されつつあるということを、自分ではいろんな意味で嫌というほど感じさせられているんだけれども、その心中を子どもたちに見せたくないというジレンマを抱えているお父さんたちが非常に多いと私は最近つくづく思うことが多いんです。その辺の議論は、社会的にも整理がついていない、またつけようと思ってもつかない側面もあるのかもしれませんが、我々労働組合の内部でもこういった問題を時々議論してみるんですけれども、一方で要請される欲望と欲望の葛藤みたいな世界、それも経営理念としてそういうものを前面に打ち出す中で、それがないと企業はやっていけんのだという論理と、そのはざまに挟まっているお父さんたち、あるいはお母さんたちもそういう面もあるのかもしれませんが、この問題はこれから大きな議論として整理をしなければいかん課題かなと思います。ただし、中間報告を答申にする中で、その辺を書き込め得るのか、それについて私はまだ自信がありません。

○  マスコミ関係の話が出ておりましたので、一つお願いをしたいと思います。
  公共放送はいろいろな関係がありまして、子どもの番組にはかなり良質なものを出していると存じます。ドキュメンタリーなどでも子どもたちが見て非常に参考になるものが、視聴覚教育ということの中で責任を果たしているように思います。
  率直に申し上げて、民間放送の番組にもし問題があるとすればあるように思います。放送というのもいろいろな規制がございますけれども、やはり市場主義で動いております。視聴率競争の中で、衝撃度の強い企画に走るということがあると思います。視聴率の高いものが売れるという構造にあるわけでございます。この背景には公告会社とテレビ会社との関係、その背景に実はスポンサーというのがあるわけでございます。これは経済団体にもかかわりのあることかと思いますが、やはりスポンサーの良識を少し発揮していただきまして、子どもの番組については、視聴率はそう高くないけれども、良質な番組をつくるように公告会社のほうに働きかける、あるいは理解を示すということの中で、民間放送がそれだけのことを追求しているとは私は必ずしも思いませんけれども、公告会社はスポンサーをとりたいわけですから、そういうことに走る。そういう競争状態の悪循環の中に一矢報いていただければと、これは経済団体へのお願いでございます。
  それから、これは新潟に行きまして感じたことでございますけれども、父親がなぜ子育てに参加したがらないんだろうか。参加したい人もいるんだけれども、しにくい雰囲気というのが、企業社会の中に、あるいは社会全体の中にある。これはあえて言わさせていただきますと、やはり男女の役割分担の意識が日本では根強いと思います。例えば、PTAに参加するとなると、PTAなんかに行かなくていいだろう、それは母親の役割なんじゃないかという意識ですね。例えば、育児休業などでも、男性が取るというのは日本の社会ではめったにございません。スウェーデンでは、行政の事務次官が長い育児休業を取るということも実際問題としてあるわけでございます。こんなようなことも一つ、もう少しはっきり指摘してもいいかなと思います。
  もう一つ、地域社会の力を生かそうということの中で、幾つか既に中間報告の中に出ているわけでございますけれども、最初の母子保健の体制の中で追っかけるというのは、これはスウェーデンあたりでは20年ぐらい前からやられていることだと思いますが、これは大変いいことなんですね。これは例を引いて、もう少し具体的にわかるように書いたらどうか。
  小さい子どものときは、お母さんが心配ですので、保健ということで相談をなさる。それで地域のグループをつくるんです。そして、そのグループごとに対話が続いている。新潟の懇談でも出ておりましたが、本音で子どものことを語り合えるネットワークが欲しいというようなことにもつながるかと思います。
  また、子どもは自分の子どもであると同時に、社会の子、地域の子であるわけです。日本の今の状態、つまり団塊の世代ぐらいからと思いますけれども、どうも他人の子をしかるということがとてもできない。人とのあつれきを避けるという傾向があるんだと思います。他人の親からしかられるということがとても嫌なようですね、親も、子どもも。この辺は、やはり正しいことは正しい、いけないことはいけないということを教えるのに、「他人の子をしかる勇気」、ちょっと嫌な言い方ですけれども、そんなようなことももう少しはっきり書いてはどうかと思います。以上でございます。

○  中間報告が出まして、いろいろな人から意見を聞いたんですが、なかなかよくまとまっているという評価が大筋でありまして、私も大変うれしく思います。マスコミ等の論評を見ますと、今後具体的な取り組みをどうしていくのかというあたりの視点がもう少し必要だと指摘をされておりますが、私もそう思いますので、政策担当のほうで一層御検討していただきたいと思います。
  ついては、私は三つほど中間報告に付け加えるのがよいと考えるところを提案してみたいと思います。
  一つは、家庭のほうの問題ですが、全国の学校栄養士協議会のほうからも提案されておりますが、「食」と「心」の問題を家庭への提言の中に入れておく必要があると思います。しっかりした食生活が子どもたちの心の健康の源になるのではないかとかねがね思っていたわけです。特に最近の子どもたちの問題行動の背景などを見ますと、家庭の中で、朝御飯をしっかり食べたり、あるいは夕御飯を家族団らんでとるといったようなことが意外に欠けていることがあります。一人で御飯を食べていたり、簡易に売られているような食材をもって、自分の部屋でどの時間帯でも食べているといったようなけじめのない食生活が見られるわけです。親のほうでも意外にそこら辺を自覚しないまま、きちんと栄養等を考えたような取り組みがされていないという実情が見られるものですから、今のようなお話を申し上げるわけであります。特にいきなり暴力に至るような子どもたちの心の不安定さの生活背景には、今のような貧しい食生活を抜きにして語れないような気がします。
  そこで、やや項目が多過ぎるかなというふうに懸念するんですが、どうか家庭への提言の中に、孤食、すなわち一人で食べたりするようなことでなくて、親のほうも一緒に食べたり、栄養を考えて子どもを学校へ送ってやるというようなことの大切さを、どこかの項目に入れてほしいという気がします。
  第2点目は、地域のほうですけれども、非常によく書かれているんですが、中・高校生にアクセントを置いたものがもう一つ何か欲しいなと思いました。というのは、現在の子どもたちを見ますと、中学生、高校生の中には、学校にきちんと適応できないまま、繁華街等を浮遊化しているというか、ブラブラ歩いているというか、自分でもどういうふうに放課後の時間を持ったらいいのかよくわからないような子どもたちが、一定の数いるということは事実なわけです。そういう子どもたちがいろんなきっかけで問題行動をとるということが幾つか散見されるわけです。もったいない時間をむだに過ごしている子どもたちといえます。
  そこで、地域の中に、学校外の青少年の居場所づくりといいますか、有識者の会議のほうからも御提案されておりますので、御覧になっていただければわかると思いますけれども、中・高校生たちが適切な指導者や助言者のもとに、自律性というか、当事者意識を持って活動できるような居場所を地域につくろうという提案もよろしいのではないかと考えます。
  三つ目は、学校のほうの項目ですけれども、かねがねいろんな人から指摘されるように、学級定員を減らしていくといいますか、学校で教員と子どもたちがゆとりある信頼関係をつくり出していくためには、クラス規模の縮小あるいは弾力化について、財政当局あるいは担当当局に御努力いただくように提案してはいかがなものかと思います。

○  各団体の意見を見ますと、皆さんそれぞれかなり肯定的にとらえて、まじめに受けとめ、何とかしようという気持ちがうかがえるわけでありますけれども、これは本当にしっかりした団体の有識者の公式の反応なわけです。
  実はこの前に文部大臣が、子どもたちへの緊急アピールということで、ナイフを使った事件が続いていると。人を傷つけたり命を奪うことはよくない、ナイフを持ち歩くのはやめよう、明るく前を向いて行動してくれ、お母さんや先生たちにいろいろ相談しよう、私たちは君たちの言葉をきちんと受けとめるというようなアピールをいたしました。これは全学校に配られたはずなんですけれども、ある地方で一部の団体が調査しましたところ、半分の学校が配っていないということがわかったんです。その理由はいろいろあるわけですけれども、大臣の言っていることはわかるけれども、何かおかしい。もっとやるべきことをやらずして、子どもや家庭のせいにばかりするような感覚があるのはおかしいという、一部の教職員の反応があって、十分に配られなかったということがあるんです。これは調査結果が地方新聞に出ていたわけです。そういたしますと、今回、この中教審のすばらしい報告も、全体の層に本当にまじめに受けとめられるかというのが大事なわけであります。
  この意見の中にありますように、例えば民放のテレビ番組に対することですけれども、大部分の番組に過激な殺人場面や性的描写が含まれているかのような記述をしているとか、ほとんどがいい番組なんだとか、過剰反応とも思える反応が一部に感じられるわけです。それはテレビにしても何にしても、ほとんどがいいものだと思います。ただ、いいものの中に一つ二つ、「これは?」というのがあると、お米の中の小石ではありませんけれども、ガチンと歯にこたえ、脳に響くわけです。テレビの影響力というのは小石どころの騒ぎではありませんで、ものすごい効果というか、影響があるわけです、特に子どもたちには。したがって、そういうところを真剣に考えるのであるならば、放送がねらわれそうだという被害意識を持たずして、もうちょっと高いレベルの見地から考えていただかなければいけないと思うんです。その場合、公共放送的なところがリーダーシップをとって、今回の中教審の気持ち、国民の気持ち、大臣の気持ちをまじめに受けとめられるような風潮を少しつくっていただきたいと私は思うわけです。
  私もこの審議に参加させていただきましていろいろ考えまして、幼稚園をやっておりますので、早速5月から「親子交流すくすく教室」というのを、月、火、木、金と週4日間、ただでホールを使って、先生二人を出して半日やりましたら、園児募集のときはちっとも来ない親子が、無料でこういうふうにやるといったら、一遍に80人、親子で160人になるんです。お母さんたちがいかに孤立していて、親同士の交流、それからほかの人たちとの気軽な交流  ―相談を開くと来ませんけれども、そういうふうなことをやるとワーッと来て、親同士おしゃべりしたり、子ども同士の交流をしているところがあるわけです。
  今度の中教審の答申と、さらにそれを受けた教課審の動きの中でも、そういった親子交流の場を広げよう、子どもだけではなくて、親ごと丸ごとかかわっていこうという記述が見られるので、それはまさに私どもの現場でそういうふうな動きをすると、すぐ反応があったということで、今度の御報告というのは現実にはかなり大事なものである。これを有識者だけがいいと言うのではなくて、多くの人に理解してもらうようにしたらいいかなと思います。その手だてもいろいろやられているようですけれども、さらに一層それを考えたいと思います。

○  今のお話に関連性もあるかと思いますけれども、先ほど、87団体に意見を求めて34団体の回答があった、内容は以下のとおりであるというお話がありました。そうすると、約40%ですが、その他の団体はどうなのか。恐らく関係の深い、心の教育にとってとても大切な、力になっていただきたい団体に意見を求めたと思いますが、回答がないということは全面的に賛成と理解してよいのかどうか、どういうふうに考えたらいいのかということが一つです。
  もう一つは、87団体以外で、積極的に意見を出してきた方、あるいは団体はあったのかなかったのか。あったとすれば、どんな数で、どんな内容だったんだろうか。ということは、これらの内容をどうやって定着させていくかということが一番問題だと思うんです。そのときの力になっていただける、仲間になっていただける力がどれだけあるのか。そういう人たちとどんなふうに手を結んでいけばいいのかということが心配なものですから、もしわかりましたら教えていただきたいと思います。

○事務局  先ほど御説明いたしましたように、87団体に意見を求めまして、実際に御紹介しているのは34団体でございますが、そのほかに回答はございましたが、「特に意見はございません」というのも10団体ございます。したがいまして、何らかの回答が返ってきたのは44団体ということでございます。それでもまだ40団体ほど回答をいただいていないところがあるわけでございます。
  それから、このほかに意見を出してきているところはあるかということでございますが、現在、この幼児期からの心の教育の在り方について、それから今後の地方教育行政の在り方について、両方の中間報告に対しまして国民からの御意見を募集しておるところでございます。もう御説明しておると思いますが、来月の6日には中間報告につきましての公聴会を実施したいと思っておるところでございまして、これまで大体160人あるいは団体から中間報告につきましての御意見をいただいているところでございまして、個人の方から多数寄せられています。そして公聴会の後くらいにはこちらから意見を求めました以外の団体から意見が出てまいりましたら、それも含め取りまとめまして、こちらのほうに御紹介するなり、あるいは会長のほうなりと御相談をして必要な措置をとりたいと思っております。

○  今の御質問とも多少関係があるんですけれども、具体的な働きかけの方法についてです。今回の中間報告の目玉は、家庭と地域の育児機能の見直しということになるんだと思います。家庭、親たちへの働きかけは学校を通じてという機会も持たれますけれども、地域への働きかけというのは厚生省管轄の市町村の母子保健とか、児童福祉の担当者への働きかけ、あるいは巻き込みを図っていただくといいのではないか。この担当の人というと、例えば小児科の医者とか、保健婦、保育士それから地域住民のボランティア活動にも母親クラブとか、愛育班組織とか、母子保健推進員とか、いろいろなものがあって、例えば健康関係ですと保健婦あたりを中心にしてある程度組織ができたり、あるいは自然に集まりを持ったりしているところが、大都会でもございます。そういうことから、こういう人たちをもっと巻き込んでいって、地域に広げていくために、ぜひ文部省の担当課と厚生省の担当課あたりが、例えば共同の課長通知を出すような方法をとっていただくと、現場では有効で仕事がやりやすくなります。そんなこともぜひ積極的にお願いしたいと思います。

○事務局  今回、中間報告で、里中委員にパンフレットをつくっていただいて、約100万部刷りまして、今御指摘のように、保健所とか、教護院、あるいは児童館、保育所、そういったところにも行き渡るように配布はいたしております。さらに御指摘がありました出し方として、共同通知のような形はとっておりませんが、とりあえずそういう形で、厚生省、あるいは青少年の健全育成関係の文部省外の機関等にも十分行き渡るようにはいたしております。御指摘の、あとどういう形でできるかというのは、さらに検討させていただきたいと思います。とりあえず中間報告で、この6月までということなので、取り急ぎまして5月の初め、連休明けには今申し上げました学校とか、PTAとか、文部省の関係以外のところにも行き渡るようにいたしたところでございます。

○  きょうは、関係団体の御意見を伺わせていただきました。幅広く受け入れていただいている。注文も若干あるようですけれども、原案が大変よくできているので、ほとんど微調整で公表なさっていいのではないかという気がしております。
  私は地方教育行政に関する小委員会に属しておりますので、微調整されるときに、概要の中で、この辺を御検討賜りたいというところを具体的に申し上げさせていただきたいと思います。
  まず全国都道府県教育委員会連合会のほうでは、「高齢者活用」というところは、第二次答申でも高齢者のことを随分言っておりますので、もし御指摘のようにあまり入っていない  ―入っているような気がするんですが、入っていないとしたらお願いしたい。
  「法的規制」は、慎重に御配慮の上、いろいろお進め賜ればありがたいと思います。
  指定都市教育委員会教育長協議会のほうは、企業の配慮で、昔はGHQ運動、「ゴー・ホーム・クイックリー(家庭に早く帰りましょう)」なんてあって、立ち消えになったようですが、現在の経済情勢でプラスかマイナスかわかりませんが、企業のほうで「父親よ、うちに帰れ」「母親よ、うちに帰れ」という運動を起こしていただきたい。これはどなたかおっしゃったことをセコンドさせていただきたいと思います。
  日本私立小学校連合会のほうで、「乳児期」というのが入っておりまして、もし本文であまり強調されていないならば、胎教まではいかないにしても、赤ちゃん時代で大変かわいいし、親子あるいは兄弟等の触れ合いは後の精神発達のプラスになりますので、書き込むか、あるいは御検討いただければと思います。
  全国高等学校PTA連合会からのご意見については、「郷土の良さ」は入っているような気がするんですが、もし御指摘のところへ入っていなければ御検討をぜひいただきたい。
  全国社会福祉協議会の、民生委員、児童委員、児童福祉施設というところは、御指摘なさっているのだと、これは触れていないのだと思いますので、何らかの形での御検討を賜れればと思います。
  日本視聴覚教育協会の視聴覚でございますが、「放送番組ソフト」を「映像教材ソフト」へというのはもっともだと思うんですが、むしろこの辺は、視聴料でいろいろいい番組をつくっていらっしゃるものを、公共的な教育的な使い方をする場合に、著作権のコストダウンとか、そちらのほうへの勧告も検討していただければと思いました。
  日本医師会は大変強力でございますので、「臨床心理士」という言葉にこだわられるようですと、「スクールカウンセラー」という言葉をせっかく使っていますし、アメリカ、イギリス、世界では「スクールサイコロジスト」と言っているので、「学校心理士」とか、もし名称で済むならば、そうしたほうの御検討をしていただければと思います。
  全国学校栄養士協議会の、「食」については私も大賛成でございます。「同じ釜の飯を食う」とか、「きょうは一緒に飯を食おうや」というのは、生活、人間関係の糧だし、「食」というのは生きる基本でございますので、それはやはり心の育成に大変大きな影響があるということで、ぜひ御検討賜りたい。
  日本民間放送連盟のところですが、これは先ほどご意見がありましたように、スポンサーが悪い番組につかないように企業側で運動していただくと同時に、そういう番組のスポンサーになっている企業を我々がよくウォッチする。そうすると、そういうところへスポンサーになればかえってマイナスになるぞという事態が起こらなければ、これは国民運動としてはだめですので、そうしたことへの御勧告等も御検討賜れればと思います。ここは放送ばかりでなくて、インターネットのホームページについて、Vチップなど随分論じていらっしゃると思うので、放送番組だけターゲットにしているというわけではないような気がしますが、その辺、ホームページとかなんか上手にバランスをとって御検討を賜れればと思います。問題点だけを述べさせていただきました。よろしくお願いいたします。

○  私も地方教育行政に関する小委員会に属しているので、具体的な細かい点については必ずしも熟知しているわけではありませんが、二、三の意見を申し上げたいと思います。
  まず一つは、今の子どもをめぐる様々な問題状況というのは、もちろん学校教育なり教育そのものの病理から生じているものが多いわけですけれども、必ずしも教育だけの問題ではない。つまり、これまでも地域や家庭の教育力の低下ということを言ってきたわけでありまして、とりわけ日本が戦後、経済優先ということを唯一のある意味では価値観にしてきたようなことがありまして、その結果として豊かな社会に到達しているわけですけれども、従来のような家庭や地域の共同体的機能が変化してきている。
  ここで書かれているのは、ややもすると家庭でいえば標準的な家庭、夫婦・子ども二人とか、それにおじいちゃんとおばあちゃんという3世代ということが想定されているように、全体のトーンから言って感じるわけですけれども、最近発表された総理府の調査によっても、4,460万世帯の中で一世帯の平均が2.7ぐらいですから、親のいない家庭とか、ひとり親とか、最近は離婚の問題、その他も含めて、必ずしも標準的な家庭が全国的に存在しているわけでもないわけです。だからこそ子育てに対する非常な不安やなんかが大きくなっているということで、子育て、教育というのを社会全体のシステムで考えようということが基本になっていると思うんです。
  だとすれば、国や都道府県を含めた行政なり、あるいは家庭なり、企業なりに対して、私も提言自体には基本的には賛成なんですけれども、幾つかの団体から出されているように、もっと具体化についての道筋を示すインパクトを与えないと、いいことが提案されているけれども、本当にこれがそれぞれの家庭や地域で実行されるんだろうかという危惧を若干抱かざるを得ないという意味で、先ほどからそういう意見がたくさん出ておりますので、ぜひ国民的な大きな運動として展開できるように、もっと財政的な面、あるいは、厚生省と文部省が育児について共同の通達を出すとか、いろんなインパクトを具体的に出さないと、これが結果として作文に終わるということも若干危惧されるのではないかということを一つ意見として申し上げておきたいと思います。できるところから、そういうことで若干補強していただける部分があるとすれば、小委員会等で議論いただきたいと思っております。
  それから、具体的な点で、団体からも幾つか出ているんですけれども、また先ほどからもありましたけれども、学校における道徳教育の充実の上で、校長先生のリーダーシップの問題とか、校内の体制の強化ということが校長会等からも出されている。そのことについては異論を挟むものではありません。ただ、同時に、今、学校で教職員も孤立しかねないような状況がありますし、教師がもっと日常的に子どもに接することができるような、教職員自体がゆとりを持つように、先ほども出ましたけれども、学級規模の縮小なり、教職員の定数の問題ですね。そういう教育条件の整備についても、教員の養成・採用とあわせて重要だということ、さらに、一生懸命に努力している教職員を励まそうという一項が出ているのは、これまでの審議会の答申では見られない積極面でありますけれども、そういったところに先ほどから出ているような問題について、ぜひひとつ一項入れていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
  それから、前々からVチップの問題について、現場のほうではどう考えているかということを問われたことが、有馬前会長から名指しで私も受けたことがあるんですが、いろいろ議論してきたんですけれども、Vチップそのものについて絶対に反対という立場は私自身もとっていませんけれども、単にテレビのVチップだけに矮小化して規制をすることは果たしていかがなものかということで、もう少し慎重な議論と同時に、もっとほかにも週刊誌等、いろんなメディアの中で、テレビ以外にもたくさんの有害なそういう問題があるので、それらも含めて総合的に関係者で知恵を絞って慎重な検討をすることが必要なのではないかということを申し上げておきたいと思います。

○  既に出ている意見ですが、食生活と子どもの心の育ちということをぜひ申し上げたいと思いました。特に乳幼児の食生活の現状が、皆さんが想像していらっしゃる以上に貧弱で、危機的な状況にあるということに日々心を痛めていることを申し上げます。
  「食」を考えるときに、栄養学的な視点や、家族が集まるという環境としての視点も大事ですが、今、一番感じていることは、先ほどからお話がありますように、手間や時間をかけることの重みや、それを味わうことの大切さ、そのことによる心の充足感についてです。お母さんにはおにぎり1個でいいんです、お母さんがつくったおにぎりを、と言うのですが、握ってくださらないお母さんが増えています。そのうち子どもたちはおにぎりと言うとコンビニのおにぎりしかイメージできなくなるかと心配です。御飯を炊かない方もそろそろ出てきているという感じです。それから、乳幼児の心身の発達に欠かせない離乳食についても、とんちゃくないタイプの方と、凝り過ぎて子どもを忘れて離乳食作りに凝るタイプの方と割合極端に分かれているような気がします。おみそ汁やスープなど簡単なものでもいいから、お母さんがつくったという愛情を食べている。というあたりが、子どもの心と関係があるということを少し表現していただけたらありがたいと思います。

○  先ほどの御報告でちょっと落としたことがございまして、実は新潟小学校というのは重度の障害者の学級が併設されておりまして、そことの交流という重要なことが御報告に漏れておりましたので、申し上げたいと思います。
  現場の父母、先生方、子どもさんたちの意見でも、そのことについて率直にお聞きしました。まとめて申し上げますと、そういった障害を持っている子たちとの交流が非常にいい結果を生んでいるという印象がございました。子ども一人に先生が一人ないし1.何人ということできちんと配当されていまして、それだけ症状が重いのかもしれませんが、時々、健常者との子ども同士のけんかなんていうのは普通にあるんだそうですが、そのことがまたかえっていいということを言っている先生がおられました。これは非常に印象的でして、呼んでも返事しないからけんかになっちゃうらしいんですけれども、そういう経験の中で、いたわる気持ちとか、一緒に生活しているということの重みみたいなものを子どもが感じていることがすごく大事なんだということを、保護者の方の意見としても聞きましたし、担当の先生からも、また普通の先生方からもお話が出ましたので、これはすごく大事なことだなということを感じましたので、一言御報告いたします。

○  中間報告で、心を育てる場として学校を見直そうということで、学校に対してこれだけ書いていただいていることについて、私どもは緊張感を持ち、またこれからそうした使命を持って進んでいかなければならないと思ったところでございます。
  私どもの小学校長会のほうで、「道徳教育」というものと「道徳の時間」との区別の中で、学校では人間としての在り方、生き方ということを常に問いかけるという形で、すべての教育活動を行っていると考えているわけです。その中で、子どもたちが自分の行動や在り方について自問自答をする場として、「道徳の時間」を私たちはよりしっかり位置づけしていきたいと思っているわけであります。そのための自問自答を促す資料や、あるいはほかの方々のお話をこれからより豊富にしていきたいと思っておりまして、様々ないい資料を開発していただけるような手だて、あるいはお金をかけていただくことをぜひお願いしたいと思っております。
  また、中間報告に関する新聞報道の中で、自民党の幹事長の「教育には二つの潮流がある」というコメントを4月2日付の読売に書いていらっしゃいますが、「道徳の時間」の在り方について、そもそも誕生のときにちょっと不幸な経緯もあったわけで、これは正していかなきゃならないと思うわけで、国民的な運動に進んでいくという心の教育を支える「道徳の時間」を、学校関係者すべてが共通に理解をして進んでいけるような方向をぜひ示していただきたいと思っております。また、それを支えるための人材や、あるいは学校としてそろえるべき人的な条件、物的な条件について、ぜひ政策に反映をしていただきたいと思います。特に教員養成のカリキュラムの中で、道徳教育についてこれまで十分ではなかったのではないかと、自分自身の反省から、自分が学生のころから思っているわけでありまして、教員養成の中でも道徳教育を具体的にどう進めるか、またその重要性について反映をしていただきたいと思います。
  Vチップ等の意見もありますが、私としては有害なものを子どもたちに見せない一つの方法として、やはり考えていく必要がある一つのものと評価をしたいと思っております。

○  今進められている今後の地方教育行政の在り方についての審議と、言葉は適切ではないかもしれませんが、構造的な関連性を持ったものとしてまとめられているということを考えながら、御意見を伺っておりました。地方教育行政に関する小委員会でもかなり関連した意見が出ておりますので、提言されている心の教育をしっかりやるためにも、今後の地方教育行政の在り方を新しい視点から見直していかなければならない、この点では共通しているように思います。

○  どうもありがとうございました。それでは、大体御議論も出尽くしたようでございますので、議論は以上とさせていただきたいと存じます。
  今後のスケジュールについてお諮りいたします。心の教育についての答申は、先ほど申し上げましたとおり、6月中にまとめるということになっております。これは委員、専門委員の皆様方には御了承を得ております。今後の会議としては、20日の新潟県の会議に続きまして、5月28日に香川県の中学校で、「子ども、保護者、先生と語り合う会」  ―今度は中学校です  ―を、委員の先生方のうち御都合のよい方の御参加をいただきまして開催を予定いたしております。
  それから、6月6日でございますが、これも委員の皆様方に御参加をいただきまして、高崎市において、先ほど事務局から御紹介がございましたが、公聴会を開催することといたしております。また、現在、幼児期からの心の教育の在り方について、及び今後の地方教育行政の在り方について、それぞれの中間報告に対する国民から意見募集を行っているところでありますが、当日は御意見をいただいた方のうち数名の方から発表していただいて、その後、会場にお集まりの方々も交えて意見交換を行うこととしたいと考えております。それから、6月10日でありますが、本日と同様に委員及び幼児期からの心の教育の在り方に関するに小委員会の専門委員の皆様方に御出席をいただきまして、答申の文案について御審議をいただくことにしたいと考えております。
  なお、地方教育行政に関する審議につきましては、現在、地方教育行政に関する小委員会において、学校の自主性・自律性の確立等を中心に議論が行われており、これは少しおくれまして、夏ごろをめどに答申をまとめるということでございます。御了承いただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  それから、6月10日の総会にお出しする答申案につきましては、きょうたくさん御意見をいただきましたし、それから関係団体からも御意見をいただいておりますので、そういうものを取りまとめて、修正するかどうかというのはこれからですけれども、副会長と私に御一任いただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  それではそういうふうにさせていただきます。
  本日は、冒頭、御紹介をし損ないましたけれども、会議の冒頭から狩野政務次官に御出席を賜っております。ここで政務次官のほうから一言御挨拶をいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

○狩野政務次官    長時間御苦労さまでございます。委員の先生方におかれましては、お忙しい中にもかかわらず、こうして大変熱心な御論議をいただきまして、心から感謝申し上げます。
  幼児期からの心の教育の在り方についての取りまとめに対しても、今、皆さん方の御意見をお聞きしておりまして、私もいろいろと勉強をさせていただきました。また、中央教育審議会の中間報告が出てまいりましてから、多くの国民の皆さん方が心の教育について考え始めてきたような気もいたします。本日のたくさんの団体からの御意見をお聞きいたしましても、子どもたちの心の問題に対する関心の高さを改めて考えさせられました。私といたしましても、そして文部省といたしましても、この責任の重さもしっかりと受けとめていきたいと思っております。
  また、中間報告をいただきましてからも、文部省としてはその広報活動や中間報告の内容の実現にも努力をしております。例えば、中間報告を踏まえて、4月28日に改訂した「教育改革プログラム」においても、「心の教育」を重要事項4本の柱の一つに掲げたところであります。また、補正予算案でも心の教室の整備や相談員の配置、家庭教育手帳、家庭教育啓発パンフレットの作成、カウンセリング研修の充実、道徳教育用教材の充実なども計上しております。
  最後になりましたけれども、中央教育審議会の委員並びに専門委員の皆様に対し、6月の答申取りまとめに向けて、さらに審議を深めていただくことを心からお願い申し上げまして、私の挨拶といたします。本当に長時間御苦労さまでございます。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○  どうもありがとうございました。それでは、本日の会議はこれで終了させていただきます。次回は、6月10日、水曜日、午前10時でございます。階が変わりまして34階になりますので、よろしくお願いいたします。34階のロイヤルルームになります。答申の文案審議を行う予定でございます。
  それでは、どうもありがとうございました。

                                                       

(大臣官房政策課)

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