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中央教育審議会

 1998/2 議事録 
幼児期からの心の教育に関する小委員会 (第14回)議事録 

 幼児期からの心の教育に関する小委員会(第14回)

    議  事  録

    平成10年2月27日(金)  13:00〜15:30
    霞が関東京會舘  34階    ロイヤルルーム


    1.開    会
    2.議    題
        幼児期からの心の教育の在り方について(ヒアリング及び討議)
    3.閉    会

    出  席  者

委員 専門委員 事務局
有馬会長 油井専門委員 長谷川生涯学習局長
沖原委員 安藤専門委員 御手洗教育助成局長
河合委員 猪股専門委員 尾山青少年教育課長
河野委員 佐々木(光)専門委員 富岡総務審議官
高木委員 里中専門委員 杉浦政策課長
佐野専門委員 その他関係官
佐保田専門委員
末吉専門委員
那須原専門委員
山折専門委員
和田専門委員


    意見発表者
      1  酒  井     昭    氏((社)日本民間放送連盟専務理事)
      2  後  藤  功  一  氏(日本ビデオ倫理協会理事長)
      3  清  水  英  夫  氏(出版倫理協議会議長)


○  それでは、ただいまから、中央教育審議会、幼児期からの心の教育に関する小委員会、第14回会議を開催します。本日は、御多忙な中、本会合に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
  本日は、3名の方からヒアリングを行い、その後、中間報告の文案について審議を行います。
  それでは、この後行いますヒアリングのテーマにも関係しますけれども、青少年に有害なメディアに関する取組などについて、事務局から簡単に御説明をお願いいたします。
(事務局から説明)

○  それでは、ヒアリングに入らせていただきます。
  本日は、青少年保護対策の取り組みの現状と課題について、テレビ、ビデオ、出版のメディア関係団体の方からヒアリングなどを行うこととしております。ヒアリングに際しては、意見発表者から御提出いただいた意見の要旨を記した資料をお配りしておりますので、適宜参照してください。
  まず初めに、酒井昭さんを御紹介いたします。酒井さんは社団法人日本民間放送連盟の専務理事でいらっしゃいます。本日は、「テレビ放送に関する青少年保護対策の取組の現状と課題」について、御意見を伺いまして、その後質疑応答を行いたいと思います。
  それでは、よろしくお願いいたします。

◎酒井意見発表者    ただいま御紹介を受けました民放連の酒井でございます。それでは、座って説明させていただきます。
  お手元の資料の2、3、4ページでございますが、はじめに4ページのほうから御説明させていただきます。
  民放連の放送基準は、昭和26年に制定されまして、そのころはラジオだけですけれども、テレビが昭和28年に放送を開始いたしましたので、何回か改正はしておりますけれども、民放は今、ラジオを含めまして190社がこの放送基準に照らし合わせて番組制作、放送しております。ラジオ・テレビの兼営社がございますから、テレビだけですと126社という勘定になります。これはWOWOWも含めてございますけれども、この放送基準が民法のスタンダードでございます。
  実は昨年、NHKと協力いたしまして、放送倫理基本綱領というのを制定いたしました。その中でも、子ども、児童・青少年に対する配慮という項目をつくっておりますが、お手元の資料の「日本民間放送連盟/放送基準」の中で、前文といたしまして「民間放送は、……」云々とございますが、その中で「1」「2」「3」「4」「5」とありますが、「児童および青少年に与える影響」を十分把握しなければいけないと、これは項目だけでございますが、このように書いてございます。
  「児童および青少年への配慮」として第3章がありまして、それに関連いたしまして「表現上の配慮」、これが第8章でございます。それから、第9章「暴力表現」、さらには次のページに「犯罪表現」という条文がございまして、制作・演出に当たっての注意事項がここに網羅されております。
  さらに、民間放送の場合には、コマーシャルが重要な営業上の、経営上の基本的なものになりますので、コマーシャルについても子どもに対する配慮を、これは放送基準とは別に附帯項目といいますか、そういう形でつくられております。
  この中で、3章の「児童および青少年への配慮」の第17条では、「児童向け番組で、悪徳行為・残忍・陰惨などの場面を取り扱う時は、児童の気持ちを過度に刺激したり傷つけたりしないように配慮する。」、あるいは第18条で「武力や暴力を表現する時は、青少年に対する影響を考慮しなければならない。」と、はっきりきつくうたっているわけでございます。
  5ページの「暴力表現」には、さらに第59条として「暴力行為は、その目的のいかんを問わず、否定的に取り扱う。」、第60条として「暴力行為の表現は、最小限にとどめる。」という条文がございますし、第61条には「殺人・拷問・暴力・私刑などの残虐な感じを与える行為、その他、精神的・肉体的苦痛を、誇大または刺激的に表現しない。」という条文を自主的に設定しているわけでございます。
  先ほど事務局の方から、条文は自主規制として確立されているけれども、問題はそれが実行に移されているかどうかということではなかろうかという御説明がございまして、その辺は私どもも十分注意、配慮しながら、現実に行っているわけでございます。
  2ページにございますように、「民放連の“放送倫理向上活動”・概要」といたしまして、各種団体との連携強化ということで、いろいろ情報交換しながら、あるいは各種団体の御意見を参考にしながら、番組制作に携わっているのが現状でございます。
  ここでは項目のみを御説明いたしますが、最初に放送基準の遵守・徹底のための研究と情報交換ということで、これは各社の考査責任者を集めまして、その1年間に起こった事例などを紹介しながら、それに対する対処の仕方などを報告し合って、自分のところの番組を制作する際の参考にしているということが1点ございます。
  「考査情報」というのは、大体月に1回程度、これはそれぞれの局がどういう問題についてどう対応したかという情報でございまして、これは各社に配付しております。
  それから、視聴者からの意見も、各社には視聴者センターとか、あるいは考査部がございますので、その意見を反映したものを民放連に上げてくる。その資料を配付する。
  あとは箇条書き的に申し上げますと、実際に番組を制作している全日本テレビ番組製作者連盟、これは略称「ATP」といいますけれども、ここで放送倫理セミナーを開催して情報交換する。制作に当たってのいわゆる志といいますか、番組制作上の良心といいますか、そういうものを徹底的に訴えるようにしてございます。
  3番目の日本弁護士連合会とは、これは通算で七、八回やっておりますが、特に「報道と人権に関する懇談会」ということで、人権、プライバシーを侵害しないようにという配慮を重点に意見交換している。
  あとは視聴者との懇談会とか、私どもで『放送倫理ブックレット』というのをつくりまして、これは「公正・公平」編、それから「表現手法」編等ですが、この「表現手法」が現在のところ一番重要かと思いますが、既につくっております。
  それから、各社にあります番組審議機関の運営に関しまして、各社と情報交換。また、私ども内部だけの情報交換では足りませんので、有識者である5人の委員の先生方と各社の編成担当の常務との会合(放送番組調査会)を開いておりまして、これは隔月でございますが、ここで情報交換をしているということで、それぞれ人権の問題とか、犯罪行為とか、その時々のテーマにつきまして意見交換してございます。
  あと関係団体との協力ということで放送番組向上協議会というのがございます。これはNHKと民放連と協力して出資した任意団体でございますが、ここでは番組向上への問題といいますか、委員の先生方が8人ということで、現在進めております。
  そのほか、私どもとしては絶えずNHKさんと連携をとって、共通の問題を処理していこうということで、現在、対応策を問われております「ポケットモンスター」の問題につきまして、これは昨年の12月16日に発生した問題でございますが、光のぐあい、照度の問題、回数の問題ということで、イギリスのITC(独立放送委員会)の条文を参考にしながら、これからアニメの光の度合いについて規制していこうということで、現在、NHKと意見交換しておりまして、3月末にガイドラインを出すということでございます。これは昨年の12月24、25日、衆議院の逓信委員会、参議院の逓信委員会にテレビ東京さんも呼ばれましたし、私も呼ばれて、そこで、現在こういうふうに対処しているということを申し上げております。これに基づいて、「ポケットモンスター」の番組を再開するかどうかということは、テレビ東京さんが今考えているところでございますので、3月中には完成の予定でございます。
  そのほか、マスコミ倫理懇談会の運営への参加。これは映画、出版、新聞、放送のすべての団体が入っておりまして、ここは月例で会議を開いておりますが、ここでも倫理向上のためのテーマを選びながら意見交換しているということでございます。
  以上が私どもの民放連の倫理向上活動の概要でございますが、内部的には、資料の3ページにございますが、放送基準審議会というのがございます。この図表を御覧になれば大体のことはわかると思いますが、先ほど申し上げました放送番組調査会というのが横にございます。縦のラインとしては、放送基準審議会の下に放送倫理小委員会がある。その下にいろんな専門部会がございますが、左のほうに番組考査専門部会、それから放送音楽事例研究懇談会があります。
  右二つにございます「アニメーション番組の映像表現に関する特別部会」と「アニメーション番組の映像表現に関する顧問会議」というのが、今回、新しくできたものでございます。私ども放送の現場だけでなくて、医者、心理学者、さらにはアニメーションを制作しているディレクター、5人の方を集めまして、この方々の意見を聞きながら、先ほど申し上げましたようにアニメーション番組の映像のつくり方について、いろいろ御教授を願っているところでございます。
  私ども民放連の放送基準審議会といたしましては、青少年への配慮ということが一つの重点課題で、これは年々そうなんでございますが、バタフライナイフの問題などもございますので、審議会で検討し、さらには下の専門部会でも検討していきたいと考えております。これが現状とこれからの課題でございます。

○  私は、3歳、4歳、5歳とか、小学校の低学年とか、小さい子どもとのかかわりが大変多いんですけれども、子どもというのはテレビが大好きであります。テレビが友達なんですね。ですから、「ポケモン」も大好きですし、最近は幼稚園なんかでコマーシャルのまねをして「入ろうか、やめようか、考えチュウ」なんていうことまでやっているんです。それだけテレビは影響力が大きいんです。
  さてそこで、それだけ子ども、幼児に与える影響が大きいものですから、場合によってはお父さんやお母さんよりも影響力があるので、アメリカで導入したと伝えられているVチップを、我が国で導入してみたらどうかというふうにも考えているんです。実施できないのかどうか。で、言論の自由、表現の自由ということもございましょうけれども、各家庭の価値観で選択するということを考えれば、表現の自由の問題との関係はないのではないか、クリアされているのではないかという気がするわけです。私ども、子どもをいつも見ているとそういうふうに考えるわけなんで、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  もう一つ、ある委員がおっしゃってましたが「民間放送にとって視聴率は大命題です。見る人が多いことと番組のよしあしは別だと思う。それを同時に発表することによって、よい番組を確保することをスポンサーに説得できる可能性があります。そこで、ベスト5、ワースト5ぐらいを同時に発表するようにすれば、視聴者の良心が番組に反映するようになると考えますが、いかがでしょうか。ワースト5を発表するというといろいろ問題があろうかと思いますので、せめてベスト10とか、ベスト5とか、この辺はどうなんだろうかと私も思うわけです。

◎酒井意見発表者    Vチップ制度の導入につきましては、郵政省の「多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会」で、かなり激しい議論が展開されましたけれども、最終的には日本の場合は時期尚早である、少し模様を眺めるという報告書になりました。それを私らは見ているわけですが、アメリカの通信法が改正になりまして、その格付けは進んでおりますけれども、Vチップの導入についてはアメリカもまだやっておりません。それとペアレンタルロックにつきましても、電機メーカーサイドがこれをどうやってやっていくのか。お金もかかることでありましょうし。ということで、日本の放送というのは、参考になるのはアメリカですから、アメリカの動向を見守りながら、どうなるかというのが現状かと思います。
  2点目の、ワースト5、ベスト5ですが、番組にはいいほうと悪いほうが両方入るんです。その辺は視聴者が最終的には番組の良否、いいか悪いかの価値判断をしていくのではないか。
  ベスト5は、視聴率とも連動しますけれども、果たしてベスト5をやることの意味があるのかどうか。年間を通じまして、いい番組の表彰というのは、芸術祭を初めといたしまして、日本民間放送連盟賞もありますし、特にドキュメンタリーについては、「地方の時代の映像賞」というのがございますし、そこを御覧いただければいい番組というのはわかるんですが、悪いほうは自然淘汰していくと私は考えております。ただ、テレビは昔の90社時代と現在の126社時代では、過当競争というのがありますので、その辺で視聴率を稼ぐためにいろんな手法を考え出していくディレクターもないわけではありません。それを表現の自由との兼ね合いからどう規制していくかということが、現在も課題ですし、これからも課題ではないかと思っております。

○  Vチップとも関係があるんですが、もう一つの方法で、子どもに不適当な番組であるということをあらかじめ警告する事前表示につきまして、イギリス、フランスのように、我が国でも制度化したほうがいいのではないかと思うわけですが、民放連ではどのようにお考えでしょうか。

◎酒井意見発表者    表示制度については、まだ本格的な論議はしておりませんが、これからの問題かなと思います。表示の問題は番組の格付けとも関連しますし、ペアレンタルロックとの問題にも関連してまいります。私ども、アメリカの事情を調べたし、それからカナダにも聞いたんです。カナダも現実的には行われていないということもありますので、テレビ先進国のアメリカの動向を見ながら、これから考えていきたい、そういう段階でございます。

○  私は非行の現場におる人間なものですから、そのような立場から2、3質問をします。テレビの番組内容が子どもストレートに子どもに影響を与えるということはないと思うんですが、子どもによっては個別的な受けとめ方をして、中には暴力表現や犯罪表現等でかなりな影響を受けて、直接・間接的な犯罪行為に至るケースもないわけではないのです。そんなところをふだん見ているものですから関心を持ってお尋ねするわけです。
  きょう、放送基準について大変詳しい資料をいただきまして勉強させてもらいましたけれども、実態としてこれが各放送局の番組編成上、どういうふうに役立って、守られておるのかということと、もし仮に守られていない場合にはどういう対応がとられているのかをお聞きします。
  二つ目は、厳格に守られれば大変結構なんですけれども、そうでない場合に、放送局内部でのチェック機能はどのようになっているのかということです。
  三つ目としては、特に暴力や犯罪表現をあらわすような番組については、外部の第三者の評価を取り入れて、番組向上、番組改善という意味でのシステムづくりを設けていく必要はないだろうかと思うのですが、その点でのお考えをお聞きしたいと思います。

◎酒井意見発表者    放送基準に違反した場合の罰則規定というのは特にございません。犯罪表現上ゆゆしき問題があるということであれば、これは各社に設置を義務づけられている放送番組審議機関のほうで、これはちょっと行き過ぎではないかと。そのことが制作者のほうに反映されまして、そこで改善されるというのが一つございますが、その前に、実際に放送される前、オンエア前には、考査部のセクションがプレビューします。そこで放送基準に違反していれば、改正させる。部分的に映像を修正するということをやっております。
  それから、プロデューサーへの徹底というのは、私どもでは先ほど申し上げたATPとの関連で、こういう形でやるべきであろうということを絶えず徹底しておりますが、各社の中には考査部が主体になりまして、それぞれ意見交換しながら、あれはおかしい、これはこうすべきだという形で、最終的な責任は編成局長にありますけれども、編成局長がプロデューサーに対して修正の指示をするということが行われております。
  ただ、現在、24時間放送ですから、全番組に目を通すというのは至難のわざではあるんですが、考査部ではプレビューの前に台本チェックというのがございます。そこで、おかしい、犯罪表現について行き過ぎた面があれば、ここは直せという形で進んでいるのが現状でございます。バタフライナイフにつきましては、私は凶器になるというふうにはこれまで思っていなかったわけですが、たまたま事件が発生したということで、この辺はちょっと問題かなと今考えております。

○  たしか青少年育成国民会議と懇談の機会をもっておられるだろうと思いますが、直接子どもたちと関係のあるPTAや、ボーイスカウト、ガールスカウト、子ども会等の団体の指導者等と放送各社の方との定期的な懇談をできないものでしょうか。このことに対してどんなお考えを持っていらっしゃるでしょうか。

◎酒井意見発表者    それはちょっと考えさせていただきたいと思います。むしろ前向きにですね。というのは、私も青少年育成国民会議の理事ですから、時たま会合には出ておりますし、視聴者との懇談会は年1回開催してきたわけですが、ここでは東京のこ   だ ま 会というのがございますけれども、その方とか、それからPTAの方、各種団体を集めますと10団体ぐらいになってしまうんです。そこで、1団体当たり10分ぐらいお話ししていただいても相当な時間になりますので、今お話しのように、児童生徒を守る青少年団体を中心にお話しする機会を持つということは必要でございますので、これは検討させていただきます。

○  私も同じような意見ですが、PTAの活動を通しまして、番組審議機関というところにもう少し親たちの意見を反映させられるような機会をつくっていただけないだろうかということと、それから発表する機会を設けていただき、それにどのように対処されたということを公表する取り組みなども積極的に行っていただけないだろうかと思っております。

◎酒井意見発表者    公表の仕方は、視聴者との懇談会のときには、私どもの「民間放送」という新聞がございますし、それから「番組調査会月報」に関連ということでニュースとしては伝えますし、組織的には青少年団体の方の御意見を放送基準審議会のほうに持ち上げまして、そこから各社へ通知するという形になっております。ですから、意見は尊重させていただいて、私どもとしては各社へフィードバックしている、それが現実でございます。

○  なかなか立派な放送基準があるのをきょうは勉強させていただいたんですけれども、これがあってもいろいろ問題があるということなんですね。ところが、番組だとか、内容をどうこう言うと、これは表現の自由などに、いろいろかかわってくる。そこで、一番簡単なのは、各家庭が選べるということなんだと私は思うんです。アメリカでやることが決まって、まだ現実には動き出していないそうですけれども、日本のテレビはアメリカ次第というのでなくて、我が国で今、重要な問題として青少年の心をどう育てるかという大変な時期にきていると思うんです。ですから、放送連盟の腹はどうなのか。つまり、やる気があるのかないのか、それとも近いうちにやろうとしているのか。それから、電機メーカー等との兼ね合いがもしあるとしたら、放送連盟では将来導入したいと思うから、何年か後にできるような準備もそろそろしたらどうかとか、そういった話し合いだとか、その辺のところをちょっとお聞かせいただければありがたいと思うんです。私は、アメリカがどうこうというよりも、日本でどうするのかということを心配しております。

◎酒井意見発表者    大変答えにくいんですね。私どもの民間放送は、最終的には理事会決定になりますので、理事会でこのテーマをどう扱うかということで、今の私の段階ではちょっと申し上げにくいということがございます。容赦いただきたいと思います。

○  実は、酒井さんも御指摘のように、これは1年以上、郵政省でも審議されました。結局、言論の自由というところで、特に民放関係が果敢なる抵抗をされました。酒井さんの言われるように、少しアメリカの様子を見てみようと。ヨーロッパもやっていないんです。イギリスは多少倫理規程が強いですけれども、フランスあたりはやっていないということがあって、酒井さんが言われるように少し待とうかということになりました。しかし、これは中央教育審議会として、ここでの考えを社会に訴えて結構だと思います。

○  どうも本日はありがとうございました。それでは、続いて後藤功一さんを御紹介いたします。後藤さんは、新東宝映画株式会社の代表取締役でいらっしゃいまして、日本ビデオ倫理協会の理事長をお務めです。本日は、「ビデオ制作に関する青少年保護対策の取組の現状と課題」につきまして、御意見を伺いまして、その後、質疑応答を行いたいと思います。
  それでは、後藤さん、よろしくお願いします。

◎後藤意見発表者    今御紹介にあずかりました後藤でございます。
  お手元の資料をご覧いただきたいと思います。ページでいいますと8ページからが日本ビデオ倫理協会の事項になると思います。日本ビデオ倫理協会というのは、略して「ビデ倫」と、かように申しておりますので、今後のお話はビデ倫と短く省略した名前でお話をさせていただきます。
  協会の設立と歩みというのは、皆様のお手元にいっております「ビデ倫ニュース」の2ページ、3ページに事細かく書いておりますので、これを見ていただいたらどうかと思います。設立されたのは1972年で、ことしで26年になるわけです。現在、会員社が158社ございます。そして、審査の対象というのはビデオ作品であり、劇場公開映画であり、もちろん劇場非公開のものをビデオ化するときにも審査を行っております。そして、ビデオCD、CD―ROM、DVD等も審査を行っております。
  「4」は省略しまして、審査の区分というのは、現在の映倫の審査基準と同じように、特に規制のない「一般」、それから15歳未満に販売とか貸し出しをしてはならないという「R指定」、そして18歳未満には販売、貸し出し等をしてはならないという「成人指定」、この3段階に分かれております。
  審査体制といいますのは、最後の11ページ、小さい字になっておりますが、これを見ていただいたらわかるのですが、現在、審査員は12名おります。そして、2名1組で審査を行っております。その12名は、元松竹であるとか、日活、東映、それから洋画のヘラルド、スポーツ日本、書籍のほうからは徳間書店、等々からの部長経験者の方を採用して審査に当たっております。
  審査基準というのは、あくまでも映倫の審査基準を基本にしながら、ビデ倫として審査員の意見で構成し、その足らないところを、「7」に書いております評議員制度で、評議員の方々の意見を入れまして、現在のビデ倫の審査基準というものがございます。
  きょう、皆様のお手元にはお渡ししていないんですが、ここに「ビデオ事業報告書」第21号というのがありますが、これは毎年発行しております。この中には、昨年度のビデオの審査本数とか、いろんなことがすべて載っております。そして、審査基準も載っております。これは都道府県の青少年課、各都道府県の警察へは毎年送付しております。もしこれを皆様のほうで御入用でございますなら、私のほうで送付するようにいたします。
  年間の審査本数ですが、「8」に書いてありますように、平成元年が3,000本、平成9年が5,174本ということでございます。
  現在、知事から審査団体として指定を受けておる県が8県ございます。そして進行中の県もございます。
  そういうような団体として、審査をしておるわけですが、何分ビデ倫というのは任意団体でございますので、退会とか、入会は自由でございます。そういう意味で、この書類には書いておりませんが、現在、すべてのビデオの量を100とした場合に、ビデ倫の審査を受けて市場に出ておるのが40%ぐらい。それから、全然無審査で、裏ビデオを含み審査をしていないものが、残りの60%の中の20%ではなかろうかと思っております。それから、自分の会社で勝手に自主規制をしておりますというのが約20%、あとの残りの20%は、2社とか3社、多いところで数社で「○○協会」とか、「○○倫理研究会」であるというような、ビデ倫によく似たような名前を使っていますが、はっきり言って審査員がゼロの審査機構が20%ぐらいというのが、現在のビデオが出ておる大体のパーセントではないかとビデ倫では考えております。
  審査に当たっては、1には表現の自由、2には青少年保護に対する配慮、社会通念ということを考慮してやっております。ただ、流通という形になった場合に、我々は審査をするのが目的であって、流通の中で、こういう流通の仕方をすれば青少年によくないのではないかとか、こういう仕方はまずいのではないかということは、審査をする立場上、そういうことをすれば、流通の保護というより、まずい部分が出てくると思いますので、そういうことに関しては全くやっておりません。
  「ビデ倫ニュース」の一番最後を見ていただいたらわかりますが、ここに「ビデオ倫理監視委員会」というのがございます。これはビデ倫が業務委託している任意の団体でありまして、そこでは流通の中で、成人ビデオに対しては、一般ビデオを借りにきた人にはわからないように区切りをしてくださいという指導だとか、それから青少年には貸し出してはいけないとか、海賊版の監視だとか、そういうことはすべてこのビデオ倫理監視委員会でやっております。
  現在のビデ倫と審査、流通という形の中の流れ、一般的な話をさせていただきました。

○  ビデオのレンタル店で、子どもたちにアダルトビデオあるいはホラービデオを貸し出す際に、どういうふうな配慮をされておるのかということと、それからカード作成の際に、当然、会員の年齢はわかるわけですけれども、実態としては必ずしもそこがきちっとチェックされないまま、子どもたちにふさわしくないものが貸し出されているような状況もないわけではないように思われますが、そこら辺はどのような御指導をされているのかお聞きしたいと思います。

◎後藤意見発表者    これは一番わかりやすく説明すれば、映画の世界を例にとって説明すれば、一番よくわかると思います。映画というのは映倫があります。映連があります。映連というのは映画をつくる会社の連盟。それから、興行する映画館の全興連がございます。そうすると、映倫で審査を受けたもの以外は、全興連加盟の劇場は上映しません。だから、「一般」とか、「成人」とか、映画の世界では非常に行き届いております。
  しかし、ビデオの世界というのは、ビデ倫であるとか、監視委員会であるとか、それから制作者の連盟はあるわけですが、販売、リースする全国組織はないわけです。そういう部分で、我々が教育をしよう、指導しようとしても、なかなかその指導が行き届かないわけです。そういうことで、ビデ倫から年間約4,000万円を監視委員会へ出して、監視委員会が全国のお店を回って、今、指導いたしておるような次第です。店の組合だとか何かがあれば、全国的に集まっていただいて、そこで指導するというのが非常にしやすいし、徹底もできると思います。しかし、そういうものははっきり言って皆無でございます。皆無の中で、放置するのはだめだという形の中で、年間、審査料だとか、シールを売るお金を省いて、4,000万円を監視委員会へ出して、個々に指導しておるというのが現状でございます。

○  先ほど御説明いただいた中で、「9」番の「審査団体指定」というお話がございました。「青少年保護育成条例に基づき審査機関として、知事が協会を指定している県は次のとおり」ということですが、「協会」というのは、これは日本ビデオ倫理の協会を指定しているわけですか。

◎後藤意見発表者    さようでございます。

○  指定していないところもあり、進行中というお話もありましたけれども、これは指定されるとどういう機能を持つのでしょうか。そして、青少年育成条例は、「1」にありますように、大部分の県にあるわけです。ところが、指定されていないということは、県のほうの考え方によるものでしょうか。どういう関係になっているのか、もしおわかりでしたら教えてください。。

◎後藤意見発表者    知事の指定する審査団体について、少し詳しくお話ししたいと思います。青少年育成条例には、青少年の健全な育成を阻害するおそれのある図書類として、いくつかの基準を列挙しております。これに該当するものは知事が有害指定をするわけですが、この有害指定がなくてもビデ倫が審査し、18歳未満の者に対して販売、または貸出しを禁じたものは、指定された図書類と同様の取り扱いを受けるということであります。つまり県が行う審査と同じ審査と同じ効果を持たせようとするものであると思います。熊本県の場合は、「協会の審査に係る倫理規定、審査基準等が条例の目的達成上適切であり、かつ当該審査を確実に実施できる能力を有していると認められる」として指定されておりますので、他の指定県もその様な理由に基づくものと理解いたしております。
  それから指定していない県についてですが、条例の中で有害指定をする基準に該当するものは、自動的に全部有害指定の取り扱いを受けることになるので、特にビデ倫を指定しなくても目的を達成できるのでは、との理由のようであります。東京都について申し上げますと、去る25日に東京都青少年課の方とビデオ業界の会合がありました。これは年に2回、ずっと何年もやっているわけです。その中で、有害図書であるとか、有害ビデオであるとか、いろいろな形の中で我々と話し合いをしておるわけですけれども、私が理事長になってから、東京都に向けて3回ぐらい、「東京都が指定しないから、他の都道府県がしづらい。東京都が率先してすべきではないか」ということを絶えず言うわけですけれども、逆に都側から言いますと、自分のところが一番先にしてしまえば、他の県がという部分があるわけですね。そこいらが我々は非常にわかりづらい部分があるわけです。だから、あくまでも都道府県に向けては、こういうもの(「ビデオ事業報告書」)を送り、それから「ビデ倫ニュース」も送り、そしてこれを見ますと、1年間のビデ倫の動きは全部わかります。
  その中で、県によって積極的な県と、そうではない県とがあるのではなかろうかなと言い切ることはできませんけれども、そういうふうに我々は受けとめております。

○  私たち親が子どもにビデオを見せる基準は、どういう内容か、中身について表示されているのを読んで、子どもたちにこれは見せても大丈夫だろうということになると思うんです。そうしますと、年齢的にまだまだ小さい子どもたち、12歳から15歳の成長しきれていない子どもたちに、ホラービデオとか、そういうものを見せてよいかどうか、もう少し細かい基準審査を設けまして、子どもたちには貸し出ししない方向でできるように、ビデオそのものにもう少し細かい表示、暴力的な内容であるとか、性的にかなり露骨な表現がされているとか、ビデオにそういうランクづけというか、一目でわかるような表示はできないものでしょうか。

◎後藤意見発表者    現在、ビデ倫を通った作品は、全部ビデ倫のシールを貼っております。そのシールの中に、「一般」は「一般」、「R」は「R」、「成人」は「成人」と全部入っておって、それぞれ皆、色が違っております。一見してわかるようにはさせていただいているわけですけれども、今回、3段階方式を4段階に改めてはどうかという業界の動きもございます。現在は18歳以下となっておりますが、区分の中で12歳以下という部分が出てきておるわけで、この区分は今年の春以降に出てくるものと思います。現在の3段階というのはきちっとシールに明記しておりますし、シールそのものの色も違っております。だから、どなたが見られても、一見してわかるようにはしております。
  ただ、監視委員会からの報告でよくあるわけですけれども、先ほど申しましたように、リース店、小売店の全国組織がないわけですから、1ヵ店、1ヵ店を指導するわけです。その指導の中で、パッケージがやさしいものであっても、「成人」指定にしておるにもかかわらず、「一般」の商品を置いている棚へ入れられるわけです。ということは、「成人」コーナーが隅っこにあって、そこへ行けばいろいろたくさんあるわけですけれども、そこへ行くのには勇気が要って入れない。しかし、「一般」コーナーにうまく挟んであると、借りていける。これはリース店が、「成人」ビデオの回転率をよくしようと思ってやっておられる企業努力ですが、我々としてはその企業努力はやってもらってはいけないということを、監視委員会から指導しております。以上です。

○  それでは、続いて清水英夫さんを御紹介いたします。清水さんは青山学院大学の名誉教授でいらっしゃいまして、出版倫理協議会の議長をお務めです。本日は、「書籍・雑誌等の出版に関する青少年保護対策の取組の現状と課題」につきまして、御意見をお伺いし、その後度質疑応答を行いたいと思います。
  それでは、よろしくお願いいたします。

◎清水意見発表者    ただいま御紹介いただいた清水でございます。私は本日、「書籍・雑誌等の出版に関する青少年対策の取組の現状と課題」ということで報告するように求められたのでありますが、私は出版のほかに、幾つかのメディアの倫理関係の代表も務めておりまして、その一つは映倫の管理委員長を務めております。先ほど後藤さんから映倫に関連してもお話が出ましたが、各メディアごとにそれぞれいろいろの特徴がございまして、その自主規制の在り方は極めてさまざまであり、またさまざまな問題を考慮しながら行いませんと、効果が上がらないし、またある意味では悪い効果も出てくるというので、非常に苦心している次第であります。
  ついでに映倫のことを申し上げたので、恐縮ですけれども、映倫では現在、レイティング、格付けの種類を現在の3段階から4段階に増やす。4段階は「PG―12」というのでございまして、ペアレンタル・ガイダンス。映画館に、「この映画を観るときは親の指導が必要です」という「PG―12」という新しいレイティングを導入することをほぼ決めて、現在、各方面とその協議中ということでございますので、それをついでながら御報告しておきます。
  もう一つは、自主規制の在り方について非常に重要なことは、外国、特に先進国ではどうなっているのかということであります。そのことにつきましては、イギリスの映倫であるBBFCが、ほぼ2年ごとに世界の映像メディアに関する倫理問題を協議する国際会議を開いておりまして、私もここ3回ほど出席しておりますので、各国がどのような形でメディアの倫理、特に青少年対策をしているかということの実情をかなり把握しているつもりでおります。
  そこで、最近、非常に際立っていることはバイオレンスの問題であります。たまたま、最近、少年にかかわる事件が頻発し、そのために非常な注目を浴びておりますけれども、この問題は既に欧米の重立った国ではセクシャル・エクスプレッションよりも、むしろバイオレンス、あるいはクルエルティ(残虐)的な表現のほうがむしろ問題である。セクシャルな表現につきましても、単にそれがソフトなものであるならば、たとえ実際の性交シーンが映っているものであっても、それを上映したり観覧する場所を限定さえすれば、規制の必要はない。ただ、セクシャル・エクスプレッションであっても、それが暴力的なものとの文脈において悪い影響を及ぼすであろうという判断を多くの国では採用しております。先ほどのVチップの「V」もまさに「バイオレンス」であります。
  そういう点を考慮しながら、現在、出版物の在り方について指導的な立場で臨んでいるわけでありますけれども、大きな要素は、言論・出版の自由が憲法で非常に厚く保障されているということでありまして、それを前提として自主規制を考えていかなければならないということであります。この点については、また映倫の話に戻りますけれども、世界で日本のように自主的に映画の審査を行っているところは、世界で4ヵ国しかございません。それは日本のほかに、アメリカとイギリスとドイツであります。そのほかの国はすべて公的機関、あるいは国が直接それを実施しているということでありますが、この点については、憲法的な問題はもちろんのこと、そのような公的規制が果たして望ましいかどうかという哲学的な問題にもかかわるもので、大変難しいと思いますけれども、私は個人的には日本が公的な機関の規制によらずに、自主的な努力によってすべてのメディアが規制を行っているということは高く評価しなければならない点だろうと思っております。
  ただ、自主規制には自主規制の限界というのがあるんでありまして、それはなまぬるいとか、あるいは効果が薄いとか、いろいろな問題があります。出版物の問題についても、そのようなことがしばしば指摘されるわけであります。
  「出版倫理綱領」は昭和32年、それから「雑誌編集倫理綱領」というのは昭和38年に出版界が制定したものでありまして、出版倫理協議会というのはそのような倫理綱領をもって、特に青少年の保護という観点から、業界の4団体が組織したものであります。すなわち、日本雑誌協会、日本書籍出版協会、日本出版取次協会及び日本書店商業組合連合会、いわゆる書店の団体でありますが、その4団体によって設立されたのが出版倫理協議会、略称して「出倫協」であります。この出倫協が結成された直接の理由といいますのは、東京都に青少年保護条例、正式には「東京都青少年の健全な育成に関する条例」でありますが、それが制定される。その制定自体に出版界は反対したのでありますが、制定されるに至った。しかし、それを前提としながら、出版の倫理というのはいかにあるべきかということでつくられたのが出倫協でありました。
  出倫協は、現在の出版物の大半を生産しております出版社が加入しておりますけれども、それに入っていない出版社も数としては非常に多いんでございまして、レジュメに書きましたように、日本書籍出版協会は498社、日本雑誌協会は86社、この雑誌協会の中には新聞社の出版局も入っておりまして、日本書籍出版協会の大手のところは日本雑誌協会の会員でもあるという構成になっております。しかし、最大限に見ても約500社にすぎません。現在の日本全国における出版社の総数は4,500社を超えております。ですから、量的といいますか、出版社数的にいいますと、全国の出版社の約1割、そのくらいしか組織されていない。そういうことを御了解いただきたいと思います。したがいまして、出版倫理協議会の自主規制できる射程範囲というのは、出版倫理協議会加盟の団体に限られるということであります。
  ただ、出版物について特徴的なことは、出版流通機構にあります。出版流通機構というのは、取次店が真ん中にありまして、そして全国の書店に出版物が流れていくわけであります。したがって、青少年に有害な出版物を阻止するということはできませんけれども、両方すみ分けをするという形で、書店にいく流通過程においてチェックすることが可能であります。そういう意味で、チャートにございますように、これまで昭和38年の発足以来、いろいろな経験を積み重ねた結果、現在の自主規制システムができているわけであります。
  そして、出版倫理協議会加盟の各社については、東京都の青少年健全育成審議会におきましても、加盟出版社が指定されることは極めてまれであります。しかし、さっきも言いましたように、組織外の出版社が発行するポルノ的な出版物、特に雑誌については、毎月のように10点内外のものが指定されております。それにつきまして出版倫理協議会では、非会員社のものでありますけれども、それが書店で青少年の手に渡らないように幾つかの配慮をしておりまして、特に有効なのは、連続3回もしくは年通算5回の指定を受けた雑誌につきましては、次号から「青少年には売ることができません」という大きなシールを表紙に貼る措置を取っております。そのシールを貼ることになりますと、取次店は部数調整をしなければなりません。現在は、そういう帯紙のない雑誌については、自動的に書店に取次店は回すわけでありますけれども、一旦帯紙がつきますと、その雑誌が必要かどうか、書店からの注文がなければ、それは卸さないということであります。したがって、一旦帯紙措置をとりますと、発行部数は激減せざるを得ないという効果がありまして、帯紙措置をとった出版物は、非常に多くの場合廃刊に追い込まれるということがこれまで行われております。
  しかしながら、雑誌の題名を変えてまた発行すれば、同じような内容であっても、連続指定にはなりません。そういうようなことが繰り返されることもありますので、今度は18歳未満の者にふさわしくない雑誌については、表紙に「成年向け雑誌」というのを目立つところに刷り込むという措置を平成8年7月から採用いたしまして、それは現在かなり浸透をしてきております。そのような雑誌につきましては、今度は日書連といいますが、書店組合連合会のほうで指導いたしまして、各書店に成人向けのコーナーを設けてもらって、そこへ収納して、青少年がアクセスできないようにするという措置をとっております。
  イギリスではわいせつ物法という法律がありまして、いわゆるトップシェルフ条項という中で、青少年にふさわしくないポルノ出版物は、各書店あるいはスタンドの一番上の棚に置くということが法律上義務づけられておりまして、もしもそれを欲するお客があるならば、その書店の者に頼んで、棚から取り出してもらう。青少年は当然それにはアクセスできないというシステムを法律で規定しております。それは確かに有効なんでありますけれども、日本の場合、そのように法律で出版物の選別をすることが果たして望ましいかどうかということは非常に問題でありまして、それについては、現在のところは今言ったような形で、自主規制という手段で推し進めております。したがって、効果的には十分ではない点があるかもしれませんが、そのような努力を続けている次第であります。
  時間が限られておりますので、また御質問にお答えしたいと思いますけれども、私はかなり長い間、メディアと青少年の健全育成ということにかかわっておりまして、最近感じますことは、「健全育成」という言葉が既に手あかがついたといいますか、特に若い子にとっては嫌な言葉になっているんですね。なぜ嫌な言葉かといえば、例えば「財政の健全化」とか、何か「健全」という言葉が乱用されていることと、それからよく考えれば、「健全」でも「立派」でもない大人の社会が、青少年の「健全育成」に当たることが一体できるのかという、そういう皮肉な問題も抱えているわけであります。
  したがって、私は、これは個人的な意見ですけれども、「児童の権利に関する条約」に日本も加盟しております。したがって、むしろ積極的に青少年を励まし、自立を促すためには、「青少年の権利に関する条例」というような、ネーミングからしてそのようなアプローチをすべきときがきているのではないか。これまでのような「健全育成」というような題目でやっても、もう限界にきている、あるいは逆作用がきているとつくづく感じる次第であります。

○  2点ほどお伺いします。「成年向け雑誌」という表示をつけてありますけれども、その効果はどれぐらい上がっているかというのが1点でございます。
  第2点としましては、12ページの最後のところに、「アウトサイダー発行の雑誌にまでは十分規制が及ばない」また、「18歳未満の子をモデルとしたいわゆる児童ポルノが出回っており、厳重に監視している。」と書かれていますが、この「厳重に監視して」いるのは、「出倫協が監視している」と理解してよろしいですか。

◎清水意見発表者    はい。

○  それと「十分規制が及ばない」というのとの関連はどのように理解したらよろしいでしょうか。

◎清水意見発表者    第1点の「成年向け雑誌」のマークの刷り込みの効果でありますけれども、これは何しろ自主規制ですから、そう速効があるわけではありませんが、現在は70誌が成年向け雑誌というマークを刷り込んでおりまして、これは徐々に増えております。
  それから、最後の点ですが、これが非常に頭の痛い点でございますけれども、まず児童ポルノについて言いますと、現在、国会でも立法が論議されている問題でありますが、世界各国でも法的な規制の対象になっているのはアグレッシブポルノ、つまり暴力的ポルノですね、レイプとか。そういう文脈でポルノがつくられる場合と、もう一つはチャイルドポルノです。チャイルドポルノについては、プロテクション・オブ・チャイルド・アクトという法律などで、アメリカでは連邦法よりむしろ州法で規制しておりますし、イギリスでもそういう法律があります。ほとんどの国でそれは犯罪になっております。ですから、幼いといっても、児童というのは児童に関する権利条約の定義によれば18歳未満でありますから、「日本ではなぜ18歳未満の者をモデルにしたポルノは犯罪にならないのか」ということを、私はしばしば外国で質問を受けております。これにはアニメも入ります。アニメも明らかに若い子がポルノの主人公になっている。そういうものについては、向こうでは「これは犯罪ですよ」という注意を受けたことがあります。今度法律ができればまた別の議論になると思いますけれども、現在では自主規制でいくしかない。
  さすがに出倫協加盟の出版社で児童ポルノを出しているところはございません。しかし、非会員社で出しているところがありまして、その非会員社の中でも大手の成人向け出版物を出している出版社が、出版問題懇話会という組織をつくっておりまして、これは東京都などにも連絡があるんですけれども、その代表に定期的に出倫協に来ていただきまして、そこで厳重に注意をして、この1月にも幹部に来てもらいまして、児童ポルノは絶対にいけない、やめてほしいということで、「会員によく徹底させます」ということになっております。

○  「成年向け雑誌」のマークを表示して御努力されている点は大変評価したいと思います。ところで、コンビニエンスストアが最近あちこちにあるんですが、「成人向け雑誌」とまでは言えないにしても、まだ未発達の子どもにあまり見てもらいたくないような雑誌と子ども向けのとが区分陳列がなされないまま一緒に置かれているような事例が幾つも見られるものですから、そこら辺はどのように御指導されているのかという点をお聞きしたいと思うんです。場合によっては、もう少しきちっと区分ができるように徹底するという点で、自主規制だけでは足りないのかなという御意見も出てくると思うんですが、そこら辺のところをどのようにお考えになっているかお話を伺いたいと思います。

◎清水意見発表者    CVSにつきましては、大手のところではかなり自主規制をして、そのような雑誌は売らない、置かないというのが徹底しております。ただ、CVSでもいろいろの組織がありまして、そういうことをしてくれないところもありますが、これは書店と違いまして、出倫協から直接指導をすることが非常に難しい状況になっております。

○  それでは、これから中間報告の文案についての討議に入りたいと思います。3月末の中間報告の取りまとめに向けて、本日も引き続き中間報告の文案についての審議を行いたいと考えています。

○  文案全体に「しつけ」という言葉が多く使われておりますが、「しつけ」の概念がさまざまにとらえられるのではないかと少し心配しています。特に身を美しくということで、表面的な形にとらわれたり、一番心配するのが着物のしつけという感じで、裏側がはみ出すことをおそれて糸で押さえる。そのようにとる方もあるのを見聞きしていますので、やはり基本的な概念をコラムかどこかで表現していただけないでしょうか。それは文章の中からくみ取るもので、一言で言えないとも思いますが、一言申し上げたいと思います。
  それから、学童保育、放課後児童クラブ等のことがまだここに出てきていません。両親が働いている場合ということが想定されて書かれていますが、このあたりに内容充実が今後の子どもたちにかなり大きな影響があることを表現いただけたらと思います。

◇事務局    学童保育はこの中にはなっていないですが、幼稚園と保育所の在り方を見直そうというのは、実は後で出てくる部分がありますので、そこでこなせるかどうかということを座長と相談してみます。
  それから、しつけにつきましては、恐らくコラムでも書けないと思うんです。「家庭の在り方を問い直そう」というところは、基本的にはほとんどしつけの内容を説明している部分ですので、全体がまさにしつけの在り方を言っているわけですので、そこで読み取っていただく以外にないのではないかと思うんです。とても1ページでは書けないと思いますので、それに関する資料のすべてが、まさに先生のおっしゃることの提言なんだと思うんです。

○  それぞれの親自身が能動的に手伝うということについては、「手伝う」という概念よりも、もっと積極的に「参加し」の方がよいと考えます。一部の人がやっていることを手伝うのでは困るので、主体的に取り組むという意味で、「参加し」にしていただけるといいのではないかと思います。

○  小学生が「ギャングエイジ」期を豊かに送れるように支援するという考えは、たぶん多くの国民に支持されるのではないかと思いまして、大変いい提案だと思います。そこで、私が思うには、ここはおおむね小学生を対象にしているようなニュアンスに感じましたので、さらに中学生、あるいは15歳以上の青年期の子どもたちをも対象に広げられたらよいと思います。  ―彼らは、コンビニや公園などに群れているわけです。学校が終わった後の高校生、中学生たちですが、一生懸命勉強している人や部活動をやっている人は別だけれども、ある一定の者は無目的で、ただ群れているような状況が見られるわけです。そういう人たちの群れをもう少し積極的な意味で開発、教育していくようなアプローチが必要なのではないかと私自身は日ごろから考えているわけです。ところで、中学生以降の子どもたちのための場所をつくるとなると、そういうメンバーの子どもたちをどう集めて、だれが指導するのか、どういう場所が必要なのかというあたりで、政策論としては非常に難しいなと思いながらも、中学生、高校生たちの群れを、もっと生産的な集団として地域の中へ組みかえていくようなことが必要だと思います。
  もう一つ、サラリーマン層の親を対象にしたニュアンスで、職場で働いている姿を、企業のほうも子どもたちが見られるように協力してほしいと、そういうスタンスで文章が流れていると思いますが、これは大変結構なことで、大多数の国民がそういう対象になると思うんです。
  さらに私が思うには、中小企業、零細企業の商家や工場とか、農家の人たちも一定の層いるわけですから、そのような身近なところで働いている親の姿をもう一度見直してほしいと思います。子どもたちに教育の場として、積極的に家業を手伝わせることで、生産というものを見詰めるように、親のほうでも努力してほしいと思います。今までは、「とにかく勉強さえしておればいいんだから」というような親が大多数であったと思うけれども、そうではないんだぞということをどこかに触れてもらえればありがたいなと感じました。

○  最近の若いお母さん方を見ていまして、結局、自分について子どもに語れないという状況があるんですね。中ほどに「テレビは好きだが玩具で遊べない、母親に密着して集団の中で遊べない」、こういう密着した姿はあるんですけれども、母親が子どもと一緒に過ごして、子どもと一緒に遊ぶというんですかね、そういうことの大切さも言えるのではないかと思うんです。ただ密着しているのではなくて、子どもと一緒に遊ぶ。今のお母さんは遊びができないんですね。そんなことを感じました。

○  親と離れて子どもたちが集団生活を営むという経験は大変結構なことだと思っております。ただ、この構想が、文案を見ますと、夏休み等の長期休業期間に行われることになるということですが、ある意味では親が夏休みを取れるときには、なるべく親子一緒の活動のほうがいいのではないか。それならば、例えば学校が開かれている期間にでも、子どもが一時期離れていくというようなことも考えられないか。私が勤務している区で、私自身も経験があるんですけれども、健康学園というところに勤務して、1年間子どもが親から離れて、自立をするという生活が、精神的にも成長し、親も精神的に成長したという経験を持っているんですけれども、そのような柔軟な参加のできるようなものも今後考えられないか。感想でございます。

○  この小委員会でとりまとめようとしている中間報告は、国民に対する大変な量の勧告ですね。一つ一つは実にもっともだと思います。こういうことを言わなければならないような状況に、ひょっとすると日本の社会はあるのかもしれません。けれども私は、全体の印象として非常に気がかりなことを感じております。それは、この膨大な量の勧告文の中にしばしば出てくる言葉に、家庭における子どもたちに対する過干渉、親の子どもたちに対する過干渉というのがあります。その教育における弊害についての指摘が、繰り返し出てきたように思いますけれども、この膨大な量の勧告文自体が実は国民に対する過干渉になっているのではないかと思います。これは重大な問題ではないかという印象を持ちました。

○  簡単な提案ですけれども、ダブりがかなりあるのでないかと思います。例えば、さっきから問題になっている親の過度な干渉とか、子どもの自然体験が少ないとか、遊びの重要性というのは、何回も何回も繰り返し提案されているので、せめて2回ぐらい出てきたものは、あとは触れないで、「前述のとおり」とか、「さきに述べたように」として、精選したらどうかという気がしました。

◇事務局    今回のは提言という形ですので、家庭は家庭、それから地域は地域、それから次に出しますけれども、学校にお願いすることということになりますと、恐らくそこだけ読む人が随分多いでしょうから、そこはワンパックで終わるようにしたいということがありました。私どもも先生と一緒で、ダブりがあるなと思いますけれども、何ページも前を開いてくださるというのはちょっと考えられませんので、そういう整理の仕方をしました。多少くどいなと思う部分がありますので、最終的には少し整理させていただきますけれども、その辺はある程度やむを得ないかなと思っています。
  2点目ですけれども、膨大であるということですが、これを息が詰まるように各家庭で全部やらせるということを言うのではなくて、そういうことを問題提起して、その中からよく考えていただこう。重点を置くところがそれぞれの家庭によっても違うでしょうから、ということを前提にしてつくるということで、前回もお話が出たと思います。みんながすべて理想的になれと言ったってそれは多少無理ですから。そういう幅を持った形で、これは100ぐらいの提言をしているわけですが、これをみんな強制的にやれなんてどこにも書いてあるわけではなくて、むしろそういうことをお願いしていこうということで、トーンをまとめております。
  ただ、100ページなり200ページになるものですので、それを全部読んでいただけないと思われるということもありますので、この間もそういう意見が出ましたんですが、最終的にこれが出ますと、恐らくパンフレットといいますか、あるいは何か見やすいものにしていくということで、エッセンスをまとめてわかりやすいものにしていこうということは当然考えられていかなくてはいけないと思っております。それは何回も意見をいただいていることですので。
  それから、こういう問題を家庭の在り方に突っ込んでいくのは慎重であるべきだということは、50年続いてきた話でございます。しかし、それを乗り越えて、やっぱり問題提起していこうというのが今度の中教審だということで、ひとつ御理解いただきたいと思います。

○  地域の行事や様々な職業に関する体験の機会を広げようということですが、重要なことだなと思っております。私どもの地域でも、最近、地区の運動会に中学生を参加させようということで、町内会を通じて学校側のほうに要請をし、その日は部活動も休みにしていただいて、子どもたちを役員として地区の運動会に参加させる、そういう試みも本年度実現することができました。そのように、子どもたちを地域のいろんな催しに参加させていく、そういう取っかかりを大人たちがつくっていく、そういうことはもっともっと大事にしていきたいと思っております。
  もう1点は、かねがね私は何度も主張させていただいたことですが、今、文量をもっと少なくしろという御意見があったわけですけれども、それと逆のような話をしてしまうかもしれませんが、実は人間形成の発達特性にかかわるものが、例えば昭和56年の社会教育審議会の答申の中、あるいは平成3年の青少年問題審議会答申の中で、かなり打ち出されて書かれているわけです。私はやはり子どもの発達課題について、乳児期から青年期にかけての子どものありようを、どこかにまとめて書いていくことが大事ではないかと思うわけです。確かにこれを読ませていただきますと、発達にかかわる部分が至るところに具体的に出てくるわけですが、どこかにぜひ入れることができないか、そんなことを思います。以上です。

○  それでは、このあたりで本日は終わりにさせていただきますが、どうしても修正してもらいたいというところがありましたら、恐縮でございますが、メモの形で早目に事務局に御提出をいただければありがたいと思います。
  今後の審議スケジュールですが、次回、3月10日は、引き続き中間報告の文案について討議を行う予定です。
  これで本日の会議は終了いたします。
  次回は、3月10日、火曜日、13時から、霞が関東京會舘・ゴールドスタールーム、35階ですので、よろしくお願いいたします。

(大臣官房政策課)

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