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中央教育審議会

 1998/6 議事録 
今後の地方教育行政に関する小委員会 (第21回)議事録 

 地方教育行政に関する小委員会(第21回)

  議  事  録

  平成10年6月15日(月)   13:00〜15:30
  東海大学校友会館  33階  阿蘇の間


    1.開    会
    2.議    題
        今後の地方教育行政の在り方について
    3.閉    会


    出    席    者

委員 専門委員 事務局
河野座長 安藤専門委員 梶野生涯学習官
市川委員 石原専門委員 御手洗教育助成局長
薄田委員 岡田専門委員 早田主任体育官
小林委員 小川専門委員 高   総務審議官
坂元委員 尾木専門委員 杉浦政策課長
永井委員 佐々木(初)専門委員 その他関係官
横山委員 蓮見専門委員
堀内専門委員
森元専門委員
山極専門委員
和田専門委員


    意見発表者(◎)
      1  全国公立小中学校事務職員研究会
          ◎加藤善久(会長、市川市立養護学校事務長)
             神谷敏明(副会長、横浜市立北綱島養護学校総括事務主査)
      2  全国公立高等学校事務職員協会
          ◎栗田  久 (会長、東京都立新宿高等学校事務長)
             湯田省三(副会長、東京都立戸山高等学校事務長)
      3  全国公立学校事務長会
          ◎金子博隆(会長、東京都立九段高等学校事務長)
             牛丸宗尚(副会長、東京都立光明養護学校事務室長)
      4  全国養護教諭連絡協議会
          ◎佐藤紀久栄(会長、東京都立小平高等学校養護教諭)
             林   典子(副会長、磐田市立磐田西小学校養護教諭)
      5  全国学校栄養士協議会
          ◎田中  信 (名誉会長)
      6  全日本教職員連盟
          ◎天羽文也(事務局長)
             塚原  孝 (委員長)
      7  全日本教職員組合
          ◎松村忠臣(中央執行副委員長)
             工藤  毅 (中央執行委員)
      8  日本高等学校教職員組合
          ◎平井昭夫(書記長)
             飯塚信良(中央執行委員長)
      9  日本教職員組合
          ◎樋口  浩 (中央執行副委員長)
             前田  武 (中央執行委員)


○  ただいまから第21回地方教育行政に関する小委員会を始めますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、初めに配付資料の確認を事務局からお願いします。

  <事務局から説明>

○  それでは、きょうはヒアリングをお願いいたします。関係団体の方にはお忙しいところをありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  本日は、学校事務職員関係団体、養護教諭・学校栄養職員関係団体及び教職員団体からヒアリングを行いたいと思います。
  初めに、全国公立小中学校事務職員研究会会長の加藤善久さん、市川市立養護学校事務長でございます。それから、全国公立高等学校事務職員協会会長の栗田久さん、東京都立新宿高等学校事務長でございます。そして、全国公立学校事務長会会長の金子博隆さん、東京都立九段高等学校の事務長でございます。3人の方から、それぞれ御意見をいただいて、その後、全体で質疑応答を行いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○加藤意見発表者  全国公立小中学校事務職員研究会の会長の加藤です。
  私ども義務制教育諸学校に勤務する事務職員は、事務職員制度発足50年にして初めてその職務内容や事務職員の学校教育に果たす役割について論議されているという感想を持っています。各委員の皆様には、全事研として厚く御礼申し上げます。
  新しい学校づくりや今日学校が抱える諸課題に対し、教員だけでなく、すべての教職員がそれぞれの専門性を発揮し、協力・共同することが不可欠であります。学校が抱える今日的課題の解決のためには、教育内容・方法等の改善とあわせて、教育活動を円滑に推進するための、「人」「もの」「かね」「情報」等の諸条件について、より子ども、保護者、地域の実情に合わせ、学校で迅速に判断し、処理できる体制が必要です。開かれた学校や特色ある学校づくり、学校の活性化の観点から、具体的改善案について述べさせていただきます。
  第一に教育委員会と学校の事務の再配分、学校経営部門の確立、事務職員の職務内容の確立を図るという点について。
  教育委員会と学校の関係を抜本的に見直し、具体的事務の再配分としては、諸手当の認定事務や就学援助費該当児童生徒の認定、備品の廃棄・保管転換、学校施設の一時使用の許認可等々、学校で専決処理したほうが合理的・効率的な事務は、起案から決裁までの学校完結で終わる必要があります。
  児童生徒の教育活動を円滑に実施するためには、教員が教育に専念できる環境づくりが必要です。そのためには、教育指導部門と学校経営部門の2系統の組織体制を確立し、事務職員を経営部門の長として校長を補佐する体制が必要です。その前提としては、事務職員の配置を高校並みのスタッフにすることも必要です。事務主任を実効ある制度とすることや、事務長や新たな職の整備も必要だと考えます。
  また、庶務、文書管理、財務事務など、個別業務についても、要綱や要領等の整備が必要と考えています。すでに実施している都市もございます。
  2番目、学校間連携による学校事務・業務の共同実施という点について。
  現在、学校事務の領域としては、学校で固有に処理・完結しなければならない事務と、ブロック内の事務職員が拠点校に定期的に集まり、集中処理することが可能な事務とがあります。このことが一定地域内の学校事務を処理・支援・協議・連絡調整・連携することにつながり、研修(OJT)の意味でも有効であります。
  しかし、ここで申し上げたいのは、現在の標準定数法による学校配置をそのまま生かすことを前提に考えております。実施形態としては、各県の状況や地域の状況が大きく異なることから、実施できるところから実施するという考えでおります。あくまでも学校間連携が主であり、そのための幾つかの方法の選択肢の一つであると考えております。
  校長の権限を有効に機能させるために、学校財務取扱要綱や運営費標準の制定を図り、学校からの予算要求制度を確立するという点について。
  教育活動を円滑に推進するためには、その裏づけとなる学校予算をどう執行するかが重要であります。教育目標、計画のみならず、学校予算全般について、地域、保護者へのアカウンタビリティー(説明責任)や評価を学校でできるシステム、すなわち「内部牽制組織を確立することが必要であります。現在のあてがいぶち予算配当方式ではなく、特色ある学校づくりのためにも、予算編成にもかかわる権限も学校におろす必要があると考えております。このことは学校教育予算の透明性を確立することにもつながります。
  学校経営は総合的な事務機能が発揮できるマネジメントの視点が必要であるという点について。
  校長の任用資格については、人材確保の面から、学校教育法施行規則第9条「私立学校長の資格の特例」を適用し、教員以外からも校長に適用される道を確保するなどの工夫が必要であります。私たち事務職員も総合的な事務機能が発揮できる経営管理職員(アドミニストレーティブ・スタッフ)として、専門性をさらに高める努力をしていきたいと考えています。
  学校事務の識見と経験を有する事務職員を指導主事に登用し、教育委員会としての学校の支援体制を確立する観点から。
  既に全国では、いくつかの地域で事務職員の指導主事が大きな実績を上げている例があります。学校経営のマネジメントや学校の支援、OJTの充実のためにも有効であります。
  最後に、今日のように教育困難の状況にあって、事務職員は同じ学校事務職員として同じ悩みを抱えながら、日々職務に精励しております。その能力ややる気を十分に活用していただきたいと考えています。事務職員が生き生きと自信を持って仕事ができる条件を整えること、そのことは学校を変えると言わせていただきます。広く子どもたちのために、学校で働くすべての職種が明るく、気持ちよく、それぞれの役割をきっちり果たすことなしに、学校教育の活性化はないと申し上げまして、私の提言を終わります。

○栗田意見発表者  全国公立高等学校事務職員を代表いたしまして、意見を発表させていただきます。
  国の機関であります中央教育審議会が、学校の事務自体につきまして答申の内容とするというのはいまだかつてありませんでしたので、非常に関心を持って審議の推移を見守っているところでございます。私どもは、高齢化・少子化の進展する中で、まさしく今、教育委員会制度が50周年を迎えるに当たって、21世紀を見据えた学校像を描いているということでございます。
  学校の自主性・自律性の確立について、4点に絞って意見表明をいたしたいと思います。
  まず、学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大についてでありますが、子どもの個性を生かした教育を目指す特色ある学校づくりを推し進める観点から、校長が学校経営の責任者としてその職責を全うするためには、校長の補助機関として事務長制度を確立し、学校経営事務組織を整備することが必要であります。
  具体的には、学校教育法第50条を見直していただいて、校長、教頭の次に事務長を置くよう法令の改正をするとともに、学校管理規則を見直して、校長が学校の経営方針とそれに基づく予算編成方針を明確に示し、事務長はその方針に従って、各教科や指導組織のヒアリングを実施して、事務長の責任で予算が編成できるよう明示することを求めるわけでございます。
  次に、校内組織の在り方の見直しでございます。
  学校の裁量の拡大に対応いたしまして、学校経営の責任者であります校長が、その責任を十分に果たすためには、校長のもとに教頭をライン組織に位置づけして、指導組織を整備し主任制度を確立して、教員を指揮命令できる機構としていただく。そして、校長は学校運営がより高い次元で判断を求められる場合には、教員組織からの意見や提言を生かすために、問題の状況に応じた対応ができる機動的な委員会組織を設定したり、学校経営事務では事務長をラインとする事務組織を整備し、予算、施設、人事、服務関連の業務を処理する組織に整備することなど、学校管理規則を整備する法令の見直しの必要性を提言いたします。
  この両組織が相互牽制によって緊張関係を高めることによって、校長がより高い次元で学校経営の職責を全うできる組織となり、市民の要望を的確に把握し、生涯学習に対応できる地域に開かれた学校となるものと確信いたします。
  次に、学校事務・業務の共同実施についてであります。
  児童生徒数の減少により、学校の小規模化が進行している状況から、学校の統廃合も考えられますが、地域によって廃校がかなわない地域も考えられます。その場合、複数の学校を地域に応じてくくるなどして、小規模校のグループ化を図り、財政的な面での効率化を図る観点から、一定の事務を共同で実施することや一定の業務を管理委託することも考えられるということで、提言いたしたいと思います。
  4番目であります。学校が保護者や地域住民の意向を把握・反映するための仕組みといたしまして。
  学校と保護者や地域住民との共通理解を図り、学校の経営責任を明らかにする観点から、学校、地域関係者、保護者を一定時期に一堂に会する機会を設けるなど、地域住民の意向を反映することや学校の評価などを協議する場とするため、学校運営協議会  ―仮称です  ―などの機関を設けることを提言いたします。
  その際、教育委員会は、予想される事態を超える緊急の事態が生じた場合や、法律の規定に従い専門的な対応が求められる事項等に関してのみ直接対応したり、学校を積極的に支援する体制を整備することが特に必要であると思います。
  以上、4点について、意見を申し上げました。

○金子意見発表者  全国公立学校事務長会会長、金子でございます。
  本日は、2点にわたりまして意見を述べさせていただきたいと思います。
  まず1点目、教育委員会と学校との権限と責任の明確化でございますが、学校が校長のリーダーシップのもとに、創意工夫を凝らし、教育活動を展開することが、学校の自主性・自律性の確立であり、主体的で活力に満ちた教育の実践こそ、保護者・地域住民の期待するところであると思っております。
  そのためには、教育委員会の学校に対する指示・命令の範囲を明確にするとともに、指導・助言を縮小する必要があります。また、指導・助言は、学校の主体的取組を支援すべきものとの観点から、校長の求めに応じて初めて行うルールを確立する必要があると思っております。
  さらに、指導・助言は校長判断の参考であり、最終判断は校長の責任と権限において行われることを明確にする必要があると思っております。
  2点目でございますが、全国公立高等学校事務職員協会も一部触れておりますが、学校の管理運営組織の見直しと事務室機能の充実でございます。
  学校の事務組織については、義務制学校と高等学校  ―この場合は盲・聾・養護学校を含んだ高等学校でございますが  ―との差異はかなり大きくございます。また、学校の管理運営に果たす役割にも格差があると思っております。
  高等学校等では、学校教育法施行規則第56条の3項に規定する事務長のもとに、事務組織が設置され、学校における行財政面を管理し、校長を補佐する仕組みになっております。しかしながら、高等学校等における学校運営の実態は、校長の補助機関であるはずの職員会議等を中心とした教員主導のものとなっております。学校の行う行為の責任所在が極めて不明確となっております。その主たる原因は、学校の運営は教員が行うものという慣行と意識及び教員組織と事務組織が未確立だというところに起因すると思っております。
  今日の社会・経済の変化や時代の進展を踏まえ、今後の教育改革、地方分権の推進を考えるに当たり、高等学校等における管理業務は従来の業務に加え、情報開示・住民監査請求・訴訟等、社会教育・社会体育面での学校施設の利用要望の増加や、少子高齢化による福祉施設との複合利用等、行政的・管理的業務は増加の一途をたどっております。
  このような状況の中で、校長のリーダーシップのもとに、学校の自主性・自律性を確立して、公正・公平な、また透明性を保ち、教育諸課題の解決と地域社会のニーズにこたえて行うことが、今後、強く求められております。そのためには、高等学校等の管理運営組織を根本的に見直していただき、教育指導組織と経営管理組織を明確にする必要があると考えております。
  よって、以下のような法改正をぜひお願いしたいと考えております。
  第50条の第1項を「高等学校には、校長、教頭、事務長、教諭及び事務職員を置かなければならない」。「事務長」というアンダーラインのところを改正していただきたいと考えております。
  新たにまた第50条第2項を新設していただき、「事務長は、校長をたすけ、校務を整理し、教育条件整備その他の事務を監督する」をお加えいただきたいと思っております。
  高校等の事務長は、現在、学校教育法施行規則第56条3項に規定されておりますが、これを本法規定に改正することにより、各県教育委員会規則で事務長の専決権・代決権の拡大が進み、経営管理組織としての事務組織が確立していくと思っております。
  校長のリーダーシップを確立するために、教頭が教員組織を、事務長が事務組織を、おのおの指揮監督し、校長を補佐する体制が不可欠であると考えております。なぜならば、今後、校長の権限を拡大し、学校の自主性・自律性を確立していくためには、権限と責任の所在を明確にするとともに、学校自らが説明責任を果たさなければならないと考えております。ぜひお聞き届けいただければありがたいと思います。

○  ありがとうございました。ただいまから3人の方へ全般にわたって委員との間で質疑応答をお願いしたいと思います。

○  全国公立小中学校事務職員研究会と全国公立高等学校事務職員協会のほうに質問なんですが、特に全事研に学校事務・業務の共同実施にかかわることで、どうしてもわからないことがありますので、お聞きしたいんです。
  私自身は、中学校区をベースとしたブロックを設定して、ブロックの中の拠点学校に学校事務職員を複数配置し、そこをベースにして共同実施するとか、様々な学校事務職員の研修の中核に位置づけるという構想自体は検討に値すると思っているんです。ただ、これから地方行革とか、子どもの数の減少に対応した学校の小規模化、それに連動する学校事務職員定数の見直しとか、いろいろ今の状況を考えますと、学校事務の共同実施については、もう一方の危惧をどうしてもぬぐい去ることができないんです。
  というのは、共同実施、そして拠点学校への複数配置を進めていくと、小規模学校に常時学校事務職員を配置することの必要性はどうしても後退せざるを得ないと思うんです。特に小規模の場合には、今ですら教頭先生と学校事務職員との間で、職務の分担についても様々な難しい問題がある中で、さらに小規模の学校において、ますます共同実施が全体として進められていく中では、学校事務職員を常時勤務させる、配置させることの必要性は、どうしても後退していくのではないかという感じがします。
  ですから、きょうのお話では、あくまで現行の標準法の配置基準を前提とするということは主張されていますけれども、今の状況を考えると、どうしても学校事務の共同実施ということを考えると、小規模学校からの学校事務職員の引き揚げは当然ついてくるのではないかという感じがしますけれども、その点については、全事研の方はどのようにお考えですか。
  あと高等学校のほうでは、むしろ小規模学校からの学校事務職員の引き揚げは当然のことであるというふうな印象を受けるのですが、その点はそのように理解してよろしいでしょうか。

○神谷意見発表者  それでは、全国公立小中学校事務職員研究会のほうからお答えをさせていただきます。私、全事研の副会長をやっております神谷と申します。よろしくお願いいたします。
  ただいま御指摘の部分でありますけれども、私どもが共同実施というふうに考えておりますのは、あくまで学校間連携というくくりの中で考えているのが一つと、それから学校には事務職員がいるという現場主義といいますか、直接児童や保護者に接するという場面で必要だろうという観点で考えております。
  御指摘の小規模校化がだんだん進んでいくということの中で、事務職員の配置がどうであろうかという御指摘でありますけれども、現在、平成9年度の学校基本調査の統計でも、確かに小規模校化が進んでおりまして、小学校で6学級、中学校で3学級の学校数が一番大きな数値を占めているというのは確かなことであります。ますます今後、小規模校化が進んでいくであろうというふうにはとらえておりますけれども、私どもの考えています学校間連携というのは、例えば中学校ブロックということで考えておりますが、中学校という単位の中に小学校が2校ないし3校設置されているという、同じ中学校の地域の中で小・中4学校がほぼ想定されるのではないかと思いますが、その中で事務職員が学校間連携を行うということで、例えば高校と同じような一定の地域で事務職員が事務の体制をそこでつくれるのではないかと考えております。
  それから、小規模校化が進んでということでありますけれども、それぞれの地域の実情を考えて、少なくとも現在、3学級の4分の3まで事務職員が配置されているわけですけれども、現実的には果たしてそこまで事務職員が機能するのかということも、私ども全事研でも考えております。最低、小学校でいえば6学級、中学校でいえば3学級の学校単位ということが、学校規模として事務職員の配置も含めて考えられるべきだろうと考えております。それ以下の学校規模については、地域の実情に応じて事務職員の配置についても、これは私どもからのお願いの部分でありますけれども、文部省を含めて御配慮とお考えをいただければと考えているところです。

○栗田意見発表者  高等学校において小規模化が進むと、定数削減を考えている
ような文面に受け取られるという御質問であります。
  私ども決して定数を削減してほしいとは夢にも思っておりません。ただ、現状の財政状況を考えますと、子どもたちが減っていくというのは確実に見えております。しかし、今の事務職員の定数を学級数で配当していく限りにおいては、職員の数が減っていくということは目に見えております。それは否定をすることはできません。しかしながら、その中で、学校の仕事そのものといいますか、小さくなっても学校が行っていく仕事そのものは、大して変わらないだろうと推定しております。
  しかしながら、職員の数が減っていきますと、業務を処理することが非常に難しくなってくるということを前提にしまして、いわゆる地域に応じて学校をくくって、その中で共同の業務、事務を実施していったら、より効率的になるのではないかという考え方を持ったものですから、こういった提言をしたわけでございます。
  それでは、どのような具体的な事務があるのかと申しますと、まだ経験したことがないものですから、想定はしておりませんが、ある程度共同して、例えば金額が張ります補修工事でありますとか、そういったことを想定しないわけではありません。しかしながら、現行の中では、学校には技術職員が配置されておりませんので、そういった技術的な職員の配置があればまた別の考え方も出てこようかと、そんなふうな思いでございます。

○  全校公立小中学校事務職員研究会の方にお伺いします。「内部牽制組織をつくることが重要です」とのご意見ですが、どのようにイメージしていらっしゃるのか。また、今、各学校等には監査委員会というものが入っております。それとのかかわりはどのようなものなんでしょうか、御説明ください。

○神谷意見発表者  学校予算の内部牽制組織ということでありますけれども、先ほども申し上げましたように、地域、保護者への説明という部分については、学校予算を円滑に、かつ適正に執行していく上で必要であろうと考えております。中教審でも御審議いただいているようですけれども、説明責任といいますか、そういう部分については、保護者の税金を使っているという観点がありますし、学校の徴収金を含めて、保護者へその使い方を含めて説明する責任があるだろうと思います。学校協議会といいますか、そういうイメージの中で、中身について説明をし、報告をし、評価を得るということが、すなわち内部牽制組織ということになるのではないかと考えておりますが、お答えになりましたでしょうか。

○  先ほどの学校事務の共同実施についてでございますが、情報ネットワークによる事務の効率化といいますか、今、テレビ会議であるとか、メールとかで、いろいろ情報をやりとりできるんですが、そうした観点が入っていないようですが、お考えになっていらっしゃるのかどうか、ちょっとお聞かせください。


○神谷意見発表者  全国公立小中学校事務職員研究会のほうからお答えいたしますけれども、前回、「論点整理」のところでは「集中処理」という表現が使われていまして、今回、「中間報告」の中で「共同実施」という用語が使われておりますけれども、私どもも広い意味でこの「共同実施」という言葉を考えさせていただいております。教育の中身の活動についても共同で行うという、学校間とか、小・中の連携ということが含まれているんだろうと思います。「学校間連携」という文言を使わせていただいていますのも、そういうネットワーク化も含めて、全事研の中では検討させていただいております。

○  3団体の方々にはありがとうございました。続いて、全国養護教諭連絡協議会会長の佐藤紀久栄さん、東京都立小平高等学校の養護教諭でございます。佐藤さん、よろしくお願いいたします。

○佐藤意見発表者  全国養護教諭連絡協議会会長の佐藤でございます。
  今回の中間報告について、全国養護教諭連絡協議会は基本的に賛同いたします。「第4章」以下に関して、本会の意見を述べます。
  「第4章  学校の自主性・自律性の確立について」のうち、「3  学校の管理運営組織の在り方等」について、管理運営と人材活用の二面から5項目について述べます。
  まず最初に、保健主事に養護教諭を積極的に活用すること。
  既に全国で約22%の養護教諭が保健主事として校内運営組織にかかわり、健康教育を組織的に推進するなど、学校教育の改善のため成果を上げています。今後も養護教諭の積極的な活用を図ることが必要であると考えます。
  2番目は、生涯にわたる健康づくりのためには、養護教諭の適正配置がぜひとも必要であると考えます。
  その一つは養護教諭の複数配置であり、二つ目は幼稚園や私立学校の養護教諭の配置を促進することであります。子どもたちの健やかな心身の発達を援助し、幼稚園・小・中・高等学校から成人へと一貫した生涯にわたる健康づくりのため、健康相談活動や健康教育の充実のために、各学校に養護教諭を複数配置することが必要であると考えます。一方、幼稚園や私立学校においては、養護教諭が十分に配置されていない状況にあり、養護教諭の配置の促進が緊急の課題であると考えます。
  三つ目は、養護教諭の資質の向上についてであります。
  今回の教育職員免許法の改正により、養成から現職へと一貫した資質の向上が図られることになりました。生涯にわたる健康づくりのための健康相談活動の充実や、健康教育の一層の推進のために、今後、現職研修の拡充がぜひとも必要であると考えます。また、教職員や保護者に対する健康教育への啓発活動の推進のためには、養護教諭の活用を図ることが有効であると考えます。
  四つ目は、校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直しについてであります。
  養護教諭は、児童生徒の心身の健康や薬物・性などの健康に関する現代的な課題を初め、校内の様々な教育問題への対応、家庭への支援、地域との連携等、全校的視野で職務を遂行しており、学校経営を担うに十分な資質・能力が備わっている養護教諭が多くおります。人格・識見ともに優れ、経験を十分に積んだ養護教諭については、管理運営規則を見直して、校長・教頭への積極的な任用がされるよう望みます。
  5番目は、相談室と情報機器の設置についてであります。
  児童生徒の心の健康問題等への対応のために、保健室内または保健室と隣接した相談室が必要であると考えます。また、最新の保健情報の活用や健康教育、健康管理等の充実のために、パソコンやテレビ等の設置が必要であると考えます。
  「第4章」の「4  地域住民の意向の把握・反映などの連携協力体制の充実」についてでありますが、学校の教育力を家庭や地域に活用することや学校が地域との連携協力により、家庭への支援体制をとることが必要であると考えます。
  「第5章  地域コミュニティの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割について」のうち、「2」の「(2) 地域の教育機能の向上」についてでありますが、地域の教育機能の向上のため、学校の持つ様々な機能・教育力の一層の活用が望まれます。
  「第6章  学校以外の教育機関の運営の在り方について」でありますが、子どもたちのボランティア活動への積極的な参加を促すという観点からも、地域の施設が特性や状況に応じたボランティア受け入れ態勢等の整備を積極的に推進することが必要であると考えます。

○  1点お伺いをさせていただきたいと思います。「相談室と情報機器(パーソナルコンピュータ等)の設置」のところと、その後の「学校以外の教育機関の運営の在り方」との関連であります。
  今のお話で、相談室の整備が、特に子どもの心の健康とかかわって重要というお話は、共感を持ってお伺いをいたしましたが、それに関連しまして、学校医、あるいは学校外の関係機関等との連携、あるいはネットワークについて何かお考えがあったり、あるいは事例をお持ちでしたら教えていただければと思います。

○佐藤意見発表者  学校医との連携につきましては、学校保健委員会等、小・中学校においてはほとんどの学校で行われていると思います。高等学校においてもその必要性は十分に認知されているところでございますので、積極的に取り組まなければならないという方向で、養護教諭も鋭意取り組んでおります。
  地域との連携につきましては、学校の教育力を地域にということですと、例えば家庭教育学級とか、そういうところに養護教諭が講師として赴く、あるいは逆に学校の施設、機能、教育力を活用するということですと、今、公開講座が非常に盛んに行われておりまして、パソコン教室であるとか、高校学校では、英会話の教室とか、あるいは家庭科の先生による栄養講座とか、いろいろな形で、学校は今どんどん地域に開かれていると思います。

○  続いて、全国学校栄養士協議会名誉会長の田中信さんでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○田中意見発表者  よろしくお願いいたします。まず、「2」の「(4) 学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大」についての意見を申し上げます。
  校長は校内教職員が一致結束して物事に当たれるよう、教職員のやる気を喚起するよう配慮する必要があるということが、まず前提でございます。
  次に、教育委員会の学校訪問に際しましては、視察するというような姿勢ではなく、学校の自主性・自律性を確立する観点から、教職員一人一人から意見を聞き、教職員が教育をスムーズに行うことのできる準備を行い、また適切なアドバイスをすることが、特色ある学校づくりの上で大変大切であるという意見を申し述べさせていただきます。
  次に、「第4章」の各項に関連する問題として、校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直し、また校長が責任を持ってリーダーシップを発揮し、学校運営の自律性を確立していくことについて意見を申し述べさせていただきます。
  私は小学校の者で、小学校の経験しかございませんが、中学校、高校の基礎を築く小学校が最も重要なところであると思っております。子どもたちが学校がおもしろいということは、給食がおいしいとか、そういうものではなく、学校の勉強がわかるということでございます。勉強がわからない学校というところは、これはもう子どものつまらないところでございます。そのために、私どもは実践の上に立って述べさせていただきますが、勉強がわかるというためには、徹底した復習を子どもにさせました。その日わからなければ、家に帰らない。そのためには、全教職員、お友達全部が挙げて、わからない子どもたちのために協力する。また、復習、あした勉強するところをちょっとでもいいから見てくる。給食ならばどういうお献立か見る。それだけでいいから、必ずそれを見て学校に来るということを、全教職員一致して行いました。その全教職員が力を合わせるということは、やはり校長の資質にございます。
  既に問題のある子どもについても、全教職員が自分のことのようにしてみんなで相談をし、また始業のベルが鳴れば、一目散に教室に駆け込む子どもたちと、どっちが早いかというぐらいに頑張ってやりました。そういたしますと、学校は全体に活気が満ち満ちている。常に話し合うことは子どものことであるということを、私は実践をもって感じました。それは校長が強いリーダーシップを発揮できるからこそでございます。そうして、教職員が校長のもと一致結束するということで、初めて実現するものであります。
  その校長はどうかということでございますが、私ども教職員は研修の機会は幾らもございますが、校長についてはなかなかその機会はございません。特に校長候補の教頭に至りましては、日常多忙を極めまして、校長と教員との間、また家庭、地域の間に入って、多忙な事務をこなさなければならない。それでやっと校長試験をパスして校長になるというのでは、そういう活気のある学校をつくり出すことはできません。私ども教職員に課する研修と同じように、校長・教頭にもそれにふさわしい資質を持たすための研修が必要かと思います。また、そのことにつきましては、教員養成の場にまで踏み込んでお考えいただかなければならないし、日本の教育は変わることができないと思っております。
  次に、地方行政全体についての意見でございますが、子どもは学級担任を選ぶことはできません。また、校区を選ぶことはできません。いじめに遭ったとき、また自分と学級担任がどうしても合わないということについて、転校したいということでも、なかなかこれは許可がおりません。そういうような校区の変更、すなわち転校についても弾力のある措置が必要かと思います。
  また、これからの週5日制の問題になりますが、2日休むということになりますと、都会はともかく、農村は全く遊び場のない状況でございます。学校しかございません。今から農村の子どもたちをどうするか。これはしっかりと考えていかなければならない問題であると思います。
  それから、超高齢化社会がやがてまいりますが、子どもがお年寄りを慈しみ、またお年寄りに対してやさしい心、またお年寄りは生きる力をつけるというようなことで、いわゆるコミュニティセンターの必要。幼稚園、保育園、小学校一体となった中で、一つのまちづくりをしていく。そばに教育機関、消防署とか、そういうものがあればなお一層いいわけでございますが、老いも若きも一団となった中で社会をつくっていくことについて、身をもって子どもたちが体験する場を、今から積極的につくっていかなければ、超高齢化社会にも間に合わないし、21世紀の生き生きとした子どもをつくり上げることはできないと思っております。

○  それでは、ただいまから全日本教職員連盟事務局長の天羽文也さんから、御意見を伺います。よろしくお願いいたします。

○天羽意見発表者  今後の地方教育行政の在り方について、意見を述べさせていただきます。
  まず1番目、学校と教育委員会との関係の見直しについてですが、学校の自主的な取組を支援する観点からの教育委員会の機能の見直しといたしまして、地方分権の推進及び地域社会に開かれた学校づくりの観点から、今後の学校はこれまでの単なる学校運営という視点だけではなく、自主性と自律性を持った経営を行わざるを得ないことは必須の状況であります。その際、以下の点に留意することが重要と考えております。
  市教委、県教委への報告事項、県や国からの調査に対する回答には、膨大な事務量が課されており、学校の自主性・自律性を確保するためにも、教育委員会の関与を大幅に減らすことは大切であると考えております。
  例えば、校外学習の実施、学校の振替休業日、副教材の使用、職員の県外出張、職員の海外旅行等の承認事項、届出事項等を学校長の裁量とし、大幅に削減すべきだと考えます。
  また、学校にも責任を持たせるために、修学旅行の実施の有無や日数、行き先、使用交通手段等も、学校長の裁量に任せるべきだと考えます。
  それから、校内暴力、刑事事件に関係するような事態の発生に際しましては、学校現場では対応しきれないような状況の場合、教育委員会は積極的に前面に出て、事件処理やマスコミへの広報等、速やかに対処することが必要であります。また、学校が危機に直面した場合には、当該学校への教員の増配置や旅費等所要経費の増配分等の具体的な措置を可能とするような条件整備が必要だと考えます。
  続きまして、学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大につきましては、子どもの個性を生かした特色ある学校づくりは、校長の豊かな識見、強いリーダーシップが大いに発揮されないと実現できません。そういった意味で、学校の予算・人事に係る校長の権限の拡大を図るべきと考えます。
  具体的には、特色ある学校づくりのために、教員定数についても配慮が必要であり、小・中学校においても高等学校に準じて、時間制の講師を置くことができるようにする。その際、校長の裁量で、専門分野、教科、種目等を選び、人物も決定できるようにすべきです。さらに育休や病休等の補充教員の任命権も与えることをお願いします。校長の責任が重くなる分、相応の格付をするとともに、校長を中心に一致協力して学校運営に参加する教職員についても処遇の改善を図ることをお願いいたします。
  学校の管理運営組織の在り方につきまして、校内組織の在り方の見直しでは、学校の裁量の拡大に対応して、学校の経営の責任者である校長がその職責を果たすためにも、校内組織の在り方の見直しは重要であると考えます。主任制度は学校教育制度上必要であり、適任者を配置し、活動を活発化させること、また主任手当の増額及び支給範囲の拡大を図ることをお願いします。
  職員会議で活発な議論を重ねることは非常に大切なことでありますが、あくまでも校長の諮問機関であるという認識で臨むことが大切です。
  それから、校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直しといたしましては、学校において創意工夫を凝らした教育活動の展開のための優秀な校長・教頭の任用において、幅広く人材を確保できる道を開く観点から、任用資格を見直すという考え方はとても理解できます。養護教諭、事務職員にも任用の道が開けることは、学校の活性化にもつながります。しかし、学校外からとなりますと、幾ら教育に関する職に就いていた経験があったといたしましても、いきなり管理職として配属されては、学校現場ては違和感が生じることも予想されます。また、長年頑張ってきた教諭に無力感とか自信喪失が生じるおそれもありますので、この点を十分に議論する必要があろうかと思います。
  最後になりましたが、地域住民の意向の把握・反映などの連携協力体制の充実といたしまして、学校が保護者や地域住民の意向を把握・反映するための仕組みにつきましては、中教審第一次答申から言われるように、学校・家庭・地域の連携なくしては、現在の教育諸問題の解決は図れません。また、学校と保護者、学校と地域のトラブルも顕在化している現状を踏まえてみますと、保護者・地域の有識者で学校運営についての協議会を設置することは非常に望ましいことでありますが、以下の点に御留意をお願いします。
  協議会開催に際しましては、一部の特定の考え方のみが取り入れられることのないよう、その人選や運営の仕方に十分な配慮をお願いします。あくまでも協議会は校長の諮問機関であるという位置づけのもと、最終決定は校長にあるということを十分に認識すること。協議会が十分に機能しない場合や収拾がつかない場合など、教育委員会が指導・助言を行うことも必要であると考えます。

○  いろいろ貴重な御意見を聞かしていただいてありがたく思っております。
  まず一つお聞きしたい点ですけれども、教職員についての処遇の改善を図ることについてですが、校長なり管理職も含めて、今、教育の責任が非常に叫ばれている中で、重い責任に伴ってかなり高い処遇をするようにというのはよくわかるんですけれども、具体的に校内組織の在り方の見直しともかかわってくるんですが、主任手当の増額、支給範囲の拡大も同時に提言なさっているわけです。確かに主任手当が日額200円というのが決まったのは20数年前になるので、これは当然、一定の社会状況の変化に合わせて、額が低いのではないかというのはわかるんですが、支給範囲の拡大について、少子化の影響を受けて学校規模も縮小してきているし、どの範囲まで拡大するということをお考えになっているのか。そのことを含めて、全体の教職員の処遇の改善について、現時点で全日本教職員連盟としてお考えがあればちょっとお聞かせをいただきたいというのが1点です。
  2点目に、地域住民の意向の反映ということにかかわって、かなり危惧される点ももちろんあるわけですけれども、確かめておきたいのは、構成メンバーをどうするかということとか、協議会の性格をあくまでも校長の最終的な決定ということでの諮問機関という性格づけにしてつくるという方向なのか。教育委員会等、ほかの団体では、時期がちょっと早過ぎるのではないか、日本の場合はこういう制度はなじまないのではないか、もっと時間をかけて慎重にという意見もかなり多く聞かれる状況の中で、全日教連さんとしては具体的な条件をはっきりさせた上で、つくっていくべきだというお考えなのか、その辺のところを確認の意味でお聞かせいただきたいと思います。

○塚原意見発表者  委員長の塚原でございます。教員の処遇改善についてですが、うちでは従来から、教諭の3級昇格といった要望を行っております。現在、校長、教頭、教諭、講師という4級の給与表しかございませんが、教諭につきましてもぜひ経験年数、それから勤務実績等がある者につきましては、教頭並みの給与体系を取っていただきたいということです。
  それに関連しまして、将来的には5級制、教諭で二つの給与表でいいのではないかと考えておりますので、校長中心に一致協力して学校運営に参加する教職員というのは、そういったことを具体的には指したいと思っております。
  また、主任手当ですが、そのときの状況に応じまして、いじめ問題、それからナイフ問題等で、大きく状況が変わっておりますので、保健主事  ―今、養護教諭がやっと保健主事に任用される道が開けましたが、保健主事には手当がついておりませんので、そういったものにもぜひつけていただきたいということで、主任手当の支給範囲の拡大をお願いいたします。
  また、最後の協議会の位置づけですが、十分議論を踏まえた上で設置する方針ということで、設置するには校長の諮問機関という位置づけは崩してはいけないと考えております。

○  質問は、学校の自主性・自律性を高めるために、教育委員会の関与を大幅に減らすという方向はいいかと思うんですけれども、学校の自主性  ―初めに私の考えを述べて、そしてそれについて御質問したいと思います。
  学校の自主性・自律性を高めるということは、その裏腹としてその学校ごとの厳しい学校評価システムを確立するということが、一方ではあると思うんです。例えば、時と場合においては、今まで以上に教育委員会の学校に対する査察、監査、改善勧告というものが、場合によっては強くなる場面もあるということ。あるいは、学校の評価システムの一つとして、例えば教育課程の基準に到達しているかどうかについて、教育課程実施状況評価を行って、その結果を公表する。場合によってはインターネットに公表する。そういったものとか、カリキュラム等の工夫をあわせて、時と場合によっては保護者や生徒が学校を選択する。そこまでいくかどうかは別にして、そのぐらいのアカウンタビリティーと学校の自律性・主体性が裏腹の関係にあるんだということぐらいは考えておるのかどうか、その辺を御質問したいと思います。

○天羽意見発表者  おっしゃるとおりに、自主・自律と学校に対する責任が重くなるのは確かだと思います。そうなっていかないといけないかと思います。しかしながら、学力を全国で調査すると。そこまでいきますと、ゆとりある教育という観点からいきますと、これはねらうところが逆になってしまうのかなといったような感じはいたしております。しかし、自主・自律だからといって、学校が本当に自由なままに好き勝手やっていっては、これはまた大変なことになります。そういった意味では、おっしゃったように教育委員会の査察も必要になろうかと思います。今後、ますます児童生徒減とか、通学区域の弾力化といったようなことで、保護者が学校を選ぶということは必然的になってくると思いますので、学校の自主性・特色性で、保護者、児童生徒が学校を選ぶという方向に、これから順々になっていくと思います。そのニーズにまた学校側がこたえていかなければならないと考えております。

○  それでは、ただいまから、全日本教職員組合中央執行副委員長の松村忠臣さんから意見発表をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○松村意見発表者  御紹介をいただきました全日本教職員組合の松村と申します。
  今後の地方教育行政の在り方に関する私たちの基本的な見解につきましては、既に昨年12月12日の本審議会の意見聴取の場において明らかにしてきたところですが、今回は学校の自主性・自律性の問題を中心に私どもの見解を述べさせていただきたいと思います。既に文書で提出をしておりますので、可能な限り重複を避けて、その補足的な意味で見解を述べさせていただきます。
  第1の問題は、この問題を考える際に最も重要なことは、御承知のように今日の子どもと教育の置かれている実態が極めて深刻なものであり、これを一体どう見るのか。それを踏まえながら、今改めて学校教育の課題は何かという問題です。
  中高生による刃物を使った殺傷事件を初め、いじめやそれを苦にした痛ましい自殺、あるいは校内暴力の増加、登校拒否や不登校の広がり、さらにはここ数年、教育現場では大変大きな関心を呼んでいる、教育にとって最も大事な授業が成立しにくい、いわゆる「学級崩壊」と言われる減少が大きな問題になっております。これらは決して私は一部の子どもたちの問題や教師の指導力に帰することのできないもので、今日の子どもたちをどう見るのか、学校教育はそれを踏まえて何をどう取り組まなくてはならないか、その根本が問われている問題のように思います。学校が学校として成立することが困難になっております。そうした現状を深く分析して、何よりも学校というのは子どもたちの人間らしい成長や発達を保障するという公教育の基本に立って、学校の在り方を検討し、その再生に向けた教育関係者、行政の在り方も含む、真摯な努力が今まさに求められているのではないでしょうか。
  遺憾ながら中間報告は、学校の自主性・自律性という問題に関して、主として運営組織の在り方や校長の責任、リーダーシップは強調されているわけですが、毎日毎日子どもに向かい合って具体的な教育活動を進めているのは教職員です。その問題が遺憾ながらほとんど触れられていません。
  教師が何よりも生き生きと教育活動を進め、子どもたちとの間に深い人間的な関係、とりわけ子どもたちが持っている様々な人間としての願いや葛藤や、あるいは様々なつまずき、あるいは時には非人間的とも言えるような言動の背景に何があるのか。やはり子どもたちはどの子も人間らしく学びたい、友達と仲良くしたい、そして何よりも小学校高学年から既にもう自分探しを始めているのではないでしょうか。そういう状況の中で、子どもたちとの深い人間的な関係、共感と信頼の関係、それを築くことが、今、切実に私たちは求められているように思います。
  それを築き上げるためには、やはり何といっても、教師の教育という営みにふさわしい責務を遂行することを可能とする教職員の自主性と教育活動の自主的な権限が保障されなくてはなりません。このことを抜きにして、教職員の自主性や、あるいは子どものためにこうしたい、ああしたいというあふれるような思いから生まれてくる創意などを後景に追いやって、上意下達の職員会議の補助機関化や、あるいはそれと一体になった校長の職務権限の強化論は、逆に私は学校の自主性を奪い、今日の学校の閉塞状況を真に打開していくものにならないのではないかと思います。
  私たちは自主性とは、教育行政も含めた統制や支配から自立することであり、学校と教育が最も尊重すべきは、真理や真実と教育の条理です。これこそ私たちは憲法と教育基本法が示す理念と原則ではないかと考えます。そうした点に立ってこそ、学校教育の自主性・自律性は可能となるものであり、これを基本にしながら答申の中に明記されることを私たちは強く求めたいと思います。
  二つ目の問題は、子ども、父母参加の問題です。これは閉塞状況と言われる今日の学校を真に開かれたものにするために、私は欠かすことのできない重要な課題だと考えます。今、子どもと教育をめぐる困難な状況のもとで、それでも多数の教職員が子どもを中心に据えた、父母、地域住民参加の極めて貴重な学校づくりの取組が全国で少なからず進められています。これらの実践は共通して子どもの声を真に人間的な願いとして耳を傾け、子どもが文字どおり教育活動の主体者として日常の授業に参加をするにとどまらず、学校全体の教育活動についても様々な意見表明を保障すると同時に、父母、地域住民が真にその願いが生かされるような取組を進めて、いじめや学校の新しい荒れと言われる状況を克服し、学校が大きな信頼を回復して、その機能を進めつつあるように思います。
  こうした現下に行われている困難な中での教育活動に学びながら、何よりも教育の主体者は国民であり、父母であり、地域住民であるということを基本にするべきではないでしょうか。こうした考え方は決して特定の団体の特定の見解ではなく、何度も私たちが指摘をさせていただいておりますように、最高法規である日本国憲法と教育基本法の理念と原則に示されているものではないでしょうか。さらには、国際的にも諸条約や宣言、勧告として明らかにされている合意事項だと考えております。
  最後になりますが、私自身も5月27、28日の2日間にわたって、ジュネーブで開催されました子どもの権利条約についての日本政府報告の審査を傍聴してまいりました。さらに、この審査の場で議論されたことは、御承知のように6月5日、日本政府に対する提案と勧告という形で明らかにされております。私はこの審査の傍聴をしながら、各権利委員の皆さんが指摘される内容をお聞きして、本当に今、日本政府がこの視点に立った施策を積極的に進めない限り、私は国際的にも信頼の問題として大きな課題が投げかけられているのではないかということを痛感いたしました。また、日本政府の代表もはっきりと条約は国内法に優先するとの立場を明確にしておられます。私たちはこの勧告の誠実な履行こそが日本国憲法やあるいは教育基本法の指し示す道であり、同時にこれは人類の確かな未来にもつながる国際的な動向ではないかと考えており、日本政府はこうした視点に立って、したがって中央教育審議会の審議の場においても、その視点が具体化をされる必要があるのではないでしょうか。
  中教審各委員の皆様におかれましては、その責務は重大でありますが、その重大性にかんがみて、これらを踏まえながら、本当に今日における子どもと教育の歴史的とも言える、かつてなかったような危機的な状況を打開して、真に子どもや教職員や父母や国民や地域住民の子どもや教育に関する切なる願いを積極的に受けとめていただいて、答申に反映されるための御尽力を心からお願いをいたしまして、私どもの見解とさせていただきます。

○  今お話の中でもありましたが、教職員の自主性ということ、また学校の自主性の確立は、教員の権限の尊重と不可分であると述べられ、校長の責任はこの関係において問われるべきであると。中間報告のほうでは、「校長の権限と責任」ということが言葉としてあったと思いますけれども、教員の権限の尊重とそれに伴う責任というのはどのような行使の仕方をお考えでいらっしゃるか、お伺いします。

○松村意見発表者  先ほども申しましたように、私たちが子どもと国民に対する責務というのは、何よりも学校教育において子どたちが本当に人間としての成長、発達を保障することにある。したがって、私たちはそのことを前提にしながら、実際に毎日毎日行う教科学習の内容やあるいは子どもたちの自主活動を含む学校生活の全般にわたって、本当に子どもにとってこれが成長、発達を促すものであるのか、その教材の中身やあるいは指導方法も含めて、私たちが自主的権限を発揮して、何よりも子どもたちの間に深い人間的な信頼関係を前提にしながら、教育活動を進めることが何よりも私たちの責務であると考えています。
  同時に、それを可能にするような条件整備、とりわけ私は教育という営みは、命令や指示という上下関係によって成り立つものではないと考えています。先ほども述べましたように、何よりも私たちは真理や真実、それと同時に具体的な創意工夫、さらには全体として教育の条理に沿って具体的な教育活動を進めることが、責任、あるいは私たちの責務になっていくと思います。それを疎外するような外からの何物による統制や介入も教育の場においてはふさわしくないし、そういった自主性が保障されれば、私どもの様々な調査結果によっても、教師としての自覚的な責務に基づいた教育活動を進めることが可能だということが明らかになっているのではないかと思っております。

○  今の御質問とかなり似ているんですけれども、御主張は私も納得できるといいましょうか、同意できるところがたくさんあるんですけれども、基本的に今回の方向が学校の自主性・自律性を確立するために、校長の権限を教育委員会に対して強めていくという一つのトーンがあると思うんです。それについて別に否定はされていらっしゃらないと思うんですけれども、それに対しまして今の「教職員の」と言った場合に、例えば私は職員会議の在り方につきまして、必ずしも諮問機関であるとか、補助機関であることに賛成していない人間なんですけれども、要するに組織におきまして、権限というのは必ず責任と裏表であろうと思っているんです。今回の問題も、校長の権限を強めるのは、同時に責任体制をはっきりしていく。その責任がイコール学校という組織体の長である「校長の」ということになりますので、学校の責任とほぼ等値できる。こういう論理構造を持っていると思うんです。
  きょうの御主張の中で、「教職員」という言葉が出てくるんですが、職員会議でも何でもいいんですが、どういう形で責任が「教職員」という言葉で果たせるのか、その辺、明確にお持ちだったらお答えいただきたいと思います。

○工藤意見発表者  全日本教職員組合は職員会議について、かつていろいろ考え方があって、今も様々な考え方があるわけですが、最高の決議機関という考え方をしているわけではありません。教職員一人一人が子どもに対して責任を負うという観点から、教育課程を進める上での合議をする、十分な協議をする機関であると考えています。
  校長権限とのかかわりで言うと、確かに校長が対外的には責任を負うということにはなっています。校長のリーダーシップというのは、対外的に責任を負うというところだけにとどまるのではなくて、教職員の協議の中で、内容的にどれだけリーダーシップを発揮できるのかどうかということが問われているのであって、形式的にそれを補助機関として個人的な権限を強めるということでは、実際子どもたちを背中にしながらの教員一人一人の力量、知恵がそこに発揮されないのではないかという考え方から、私たちは教職員一人一人の責任の問題と校長の責任の問題を学校内外それぞれ分けた形で考え方を明らかにしているところです。

○  「地域住民の意向把握反映などの連携協力体制の充実」についてとの関連ですが、住民の意向の「『把握・反映』という消極的見地から、『権利』としてとらえた『子ども・父母参加』の学校づくりシステムに発展させるべきだ」との考え方がありますが、『子ども・父母参加』の学校づくりシステムについて、もう少し具体的なイメージがありましたら伺いたいんです。
  先ほどお話のように、先生方が子どもたちに対して積極的に教育活動を展開していこうというときに、外部からの支配は加わるべきではないというお考えが一方にある。それとのかかわりの中で、非常に積極的な父母参加ということと、先生方の自主的な活動との間にどういう関係が作られれば、そこがうまくいくのか。その具体的な学校づくりシステムのイメージを若干教えていただければと思います。

○松村意見発表者  御承知のように、先ほどの御意見の中にもありましたように、我が国ではまだPTA組織以外に、学校評議会であるとか、あるいは三者協議会であるとか、あるいは学校委員会であるとか、そういう事例が決して豊かにあるわけではありませんから、私たちの中でも具体的なそのシステムの内容というのは、今後、明らかにしなくてはならない問題はあると思うんですが、少なくとも基本的な考え方としては、学校の自主性や自律性を尊重する前提というのは、何よりも教育を受けるのは父母、国民であり、地域住民の権利である。そして、子どもが何よりも教育の主体者になくてはならない。
  そういった子どもを初めとして、地域住民や父母の皆さんが具体的に学校教育に対してどのような願いやどのようなお考えをお持ちであるのか、そのことを明らかにし、そしてそれが学校づくりや具体的な日常の教育活動にどのように反映されるべきなのか。そして、それぞれの意向や願いは学校として主体的に判断をして、教育課題として明らかにしなくてはならないものは何なのかということを、少なくとも子どもの願いや父母や地域住民の皆さんの中から積極的に明らかにして、それを学校教育活動の基本に据えるというシステムが、各学校ごとにつくられなくてはならないと考えています。
  さりとて、すべて評議会や学校委員会の中で決定するのかといえば、必ずしもそういう立場は私たちとしては考えていません。職員会議に多数決がなじまないように、学校評議会やあるいは様々なそういうシステムで多数決で決定して、それを学校に迫るということも私たちは慎重に考えてみなくてはならないと思いますし、何よりもそこに基本にすべきは、教育条理を基本にしながら、そういったシステムづくりが今具体化される必要があるのではないかと考えております。大変抽象的ですが、私たちの基本的な考え方です。

○  それでは、日本高等学校教職員組合書記長の平井昭夫さんからご意見をお伺いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○平井意見発表者  日本高等学校教職員組合の書記長の平井でございます。
  私たちの組合は、県立高等学校の教職員、あるいは障害児教育諸学校の教職員で構成された組合でございます。こういった観点から、意見を発表してみたいと考えておりますので、どうかよろしくお願いしたいと思います。
  まず、1番目の教育委員会の学校に対する指示・命令、指導・助言の見直しについてでございますけれども、学校の裁量のもと自主・自律的に行われるためには、校長を中心といたします学校組織のスムーズな運営が必要であると考えております。そのためには、責任の所在は明確にすべきであると考えます。特に教育活動全般にわたっては、校長にすべての権限と責任を持たせるべきであると考えております。しかしながら、法律に触れる事務あるいは専門的な対応を求められるものに関しましては、教育委員会の責任になろうかと思っております。こうしたふうに、法的に強制力のある指示・命令、あるいは指導・助言に関しましては明確に区別すべきであるとともに、教育活動におきましては指示・命令部分を縮小することが必要ではないかと考えております。
  続きまして、学校管理規則の見直し等による許可・承認等の整理縮小でございますけれども、従来におきましても管理規則の中におきましても、校長の責任と権限とされてきた部分が多々ございます。なぜこういったものがあるかと申しますと、やはり校長というのは学校の組織編成や教育課程の編成等について、学校の実態あるいは地域の実情、あるいは生徒の個性を十分に熟知しているからであろうと考えられます。このように各学校におきます特色等を発揮するためにおきましても、学校管理規則による許可・承認・届出、あるいは報告等による統一は必要ではないと考えております。しかしながら、全県的な統一の必要性、あるいは法令等を周知するために必要であるならば、この限りではないと考えております。
  続きまして、学校の自主的な取組を支援する観点からの教育委員会の機能の見直しについてといったことでございますけれども、学校の自主性あるいは自律性といった観点から申しますと、教育委員会との関係の見直しについては、現在行われている見直しに関しましては非常に評価できると考えております。しかし、学校の対応の中で、生徒あるいは地域とのかかわりの中で生じた法的な訴訟でありますとか、突発的な事故、そういった専門的な知識、あるいは対応等が求められる緊急時におきましては、やはり教育委員会といたしましても常時学校をサポートしていく、そういった体制が確保されるべきではないかと考えております。
  続きまして、学校の予算・人事等に係る校長の権限の拡大についてでございますけれども、まず予算につきましては、各学校の主体性あるいは地域性に基づく校長の予算権限の拡大に関しましては評価をしたいと考えております。しかし、人事面におきます校長の権限の拡大は、あくまでも教育委員会に対してであります。そういった権限と申しますと、具体的に言いますと、校長の人事要望が教育委員会に尊重されるといった点での権限の拡大といったものを考えております。しかし、人事が公平あるいは公正に行われるといった観点から、教育委員会が全体的な各県の視野の中でもって、あるいは地域性に応じた目でもって、例えば男女比、あるいは年齢別バランス等、そういった大局的な面からの人事は、やはり教育委員会が持つべきであろうと考えております。
  続きまして、校内組織の在り方の見直しでございますけれども、特に学校の裁量を拡大し、学校が管理職を中心に一体となって有効に機能するためには、やはり校内組織体制におきます、例えば校務分掌あるいは各種会議、委員会等の在り方が、学校の実情に基づき編成され、あるいは活性化し、そしてそれらの決定については校長が責任を持つということが明確化されなければならないと考えております。しかしながら、そういった反面におきまして、校長の権限が拡大し、ややもすると独断的と申しますか、判断がひとり歩きすることも考えられます。そういった点におきましては、特に職員会議で十分話し合い、共通理解の上に立って、校長が決定していくことが重要であると考えております。
  続きまして、校長・教頭への適材確保のための任用資格の見直しでございますけれども、幅広く人材を確保する観点からの登用といったもの、あるいは教育といった営みから考えますれば、ただ単に経営的な手腕にとどまらず、教育上豊かな見識、あるいは幅広い視野を持ち、迅速な処理ができ、あるいは調整力を兼ね備えた豊かな人物であるといったことが重要になってまいります。我々の立場といたしまして、基本的には教育関係機関を経験するとともに、教育免許状を有する人物が登用されることが望ましいと考えております。
  続きまして、教員以外の専門性を有する人材の活用についてでございますけれども、学校は高度な専門機関であるといった立場から、専門性を有します人材の活用は必要であると考えております。しかしながら、例えば心の教育や生徒指導の充実、こういった点におきましては、まず教員が先立ってやらなければならない。まず教員がやる。そういった面から、教員の一人一人の資質の向上が重要になってこようかと思います。そのための、例えばカウンセリングの研修の拡大でありますとか、外部の諸機関との連携が十分に図られなければならない。まずは教員がやってみるといったことでございます。しかしながら、各学校においてどうしても専門的な知識あるいは能力を必要とする人材が必要な場合があると思います。そういったときにおきましては確保すべきであり、教育委員会等がそれを確保できるような体制を常時つくっておくことが必要になってくるかと思っております。
  最後になりますけれども、関連する制度の見直しについてといったことですけれども、特に管理運営組織の見直しを円滑に進めるためには、現在、教職員が非常に多忙化しております。例えば、幾つかの校務分掌を兼ねて活動しているといった状況がございます。そういった中で、教職員の配置、特に教職員の増大が不可欠ではないかと考えております。それとともに、教職員の待遇改善が重要であると考えております。そのためには、2年間延長されましたけれども、第5次定数改善計画等を早期に完結いたしまして、次期の第6次定数法が策定されることを強く要望するわけでございます。また、現定数法に位置づけられていない職種の先生方を位置づけること、さらには生徒一人一人にきめ細かな指導が可能となるように、学級定員の削減を要望したいと考えております。
  非常に簡単な説明でございましたけれども、我々といたしましては、生徒それぞれが学校の中で自由に生き生きと生活し、あるいは学習できる学校づくり、そのために何が必要であるかということを十分に考えていきたいと考えております。

○  それでは、最後になりましたが、日本教職員組合中央執行副委員長の樋口浩さんから御意見を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○樋口意見発表者  日本教職員組合の副委員長の樋口でございます。簡単に私どもの意見の概略を申し上げたいと思います。
  中教審の委員の皆さんが、地方教育行政の在り方全般について見直され、学校の自主性・自律性の確立等について、回数を重ねて審議をいただいておることにつきまして、心から敬意を表したいと思います。
  私どもは既に12月12日付で意見を申し述べてきたものでございますが、それらを含めまして、3月27日に中間報告をいただきました。それ以来、本当に何回も何回も私ども組織内で議論をし、検討し、意見をまとめてまいりました。何よりも大切なことは、今後のことを考える場合、学校現場が今どうなっておるのか。何にいわばつまずいており、何に行き詰まっているかということでございます。そういったことにつきましても、私ども現場教職員を代表する立場から若干申し上げて、意見にかえたいと思うところでございます。
  そういう立場から、学校教育の現状と課題について、特徴的な諸問題といたしましては、1つ目として人間関係の希薄化の問題、あるいは個別化・多元化の問題、そういった中で授業が成立しにくい、あるいは学級崩壊というふうな状況が今日ございます。
  2つ目としては、そういった中で、教職員が達成感とか、教職に就いておることの誇りというようなものをなかなか持ち続けることができないという疲労感のようなものについて書いてございます。
  3つ目は、少子化の進展の中で、学校内で受け持つ仕事が複雑化・多岐にわたりつつある。
  4つ目は、いわゆる社会の諸問題が学校にストレートに持ち込まれる。そのことによってさらに課題が増えていく、この困難さ。
  5つ目は、電話回線が小・中学校で平均2本しかない、デジタル化されておらないというところで、パソコンの使用があり、インターネットの使用がある。ファックスも兼用だ。プールにも保健室にも内線電話すらないところが多いといった状況について、何とかならんだろうかということでございます。
  そういう中で、学校教育に要請されている課題は、個別的・選択的な学習要求に端的にあらわされているように、随分多岐にわたっておりますし、今までに考えられなかったような要求あるいは要請が学校に対して行われておるところでございます。
  また、学校教育に要請されている課題につきましては、まず、生徒指導の問題。学習と生活の単位としての学級の役割と学級担任の仕事。
  次に、学校外の教育プログラム、あるいは地域に開かれた学校のための仕事。
  そして、地域の状況や子どもの立場に立った特色ある学校を創造していくための新しい仕事等を書いてございます。
  そうなりますと、新たな学校教育の在り方について、以下のようなことになるのではないか。
  一つには、経営・管理の高度化並びに生活学習を含む学習系の高度化、あるいは意思形成の問題、外部の専門家の教育への投入の問題、そういったところから、学校自体とはちょっと違うところで学校教育を支援するためのセンターのようなものが必要なのではないかと思います。
  2つ目は、職員会議を「参加と協議の場」と位置づけ、その場では子どもの実態と教育課題をすべての教職員が共有をする。そして、実践の方向について意思の一致を図ることが必要なのではないだろうか。
  さらには、部活動の負担の軽減。
  また、子育ての社会化の問題。
  そして、これらを具体に実現するための教職員定数の問題等、教育諸条件の整備が不可欠だというふうな現状分析に立って、以下、4点にわたる私どもの意見なり提案なりを申し上げたいというところでございます。
  中間報告で提起された内容に関しては、おおむね私どもは賛成できるものが多い。なおこれを具体化してもらいたいということが基本的な願いでございます。そういう意味で、学校教育法の106条の改正については、全国共通の必要最小限に限定をすべきではないだろうか。あるいは学習指導要領に関しても、基本的な事項のみのいわば基礎・基本のみを全国の水準とするというふうな限定の仕方が望ましいのではないかと考えるところでございます。
  以下、まず提案の大きな1つ目は、第1に学校の自主性を高めることにかかわっては、学校管理規則の見直しを図っていただきたいということでございます。とりわけ学校管理規則を教育委員会が学校を支援するという視点から、内容の一層の弾力化、基礎・基本に絞ったものにする。例えば、「学校等経営標準規則」というような名称にならないだろうかということでございます。
  第2に、遊具の事故、あるいはプールの事故に端的に見られますように、これらが基本的に学校の責任にされておるわけでございますけれども、遊具のパイプの中が腐っておるというようなことは、教職員の一般的な点検では明らかにならないわけでございまして、そういう意味では、安全・点検にかかわっては設置者が専門家による定期点検を行う等お願いしたいところでございます。
  第3に、学校にもう少し、例えば諸手当の認定の問題等について、学校限りで完結をするというふうな、現場に近いところに仕事と権限、責任をおろすことが必要ではないだろうか。
  第4に、情報の公開、いわゆる情報化社会に対応する学校の体制づくり。これも新しい課題ではないだろうかと考えております。
  大きな二つ目の提案は、新しい学校と学校支援システムについてであります。
  第1に、現行の一元的な、つまり校長をトップにする一元的な縦構造から脱却をすること。学校の構造を横断的な連携の構造につくり上げることが必要だと考えております。専門的な分立、教育職員要請審議会が言いますように得意分野をいっぱい持った教職員が一致して、力を合わせて、そのことによって学校の総合的な教育力をつくるというシステム。現行の校務分掌、主任制度などは、これらの視点から抜本的に見直す必要があるのではないかということでございます。
  第2は、学校支援システム。これは学校外に「学校協議会」や「地域教育協議会」といったものが必要なのではないだろうかということでございます。
  第3に、これらを中学校区単位に整備し、地域連携のシステムをつくり上げたらどうかということで、簡単に図示しますと、各学校においては学校経営・管理系の仕事が一つ。学習系では教科学習系と、最近非常に注目されております生活学習系、生活指導と言いますが、子どもの立場から言うと生活学習系といったものをつくる。これが学校協議会と結びついている。
  学校外に業務・事務の共同処理体制。いわゆる学校事務のたぐいのこともありますし、部活動というものもあるわけでございますが、あわせて地域のカリキュラムセンター、スクールカウンセラー、ボランティア等のいわゆるスクールボランティアの確保ということであります。
  第4に、これらにかかわる施設・設備、定員などの教育諸条件の整備を行うことが望まれる。
  若干具体に展開をいたしますと、まず学校経営・管理系では、学校機能の充実を図るためのスタッフ職の整備。これはできたら行政系で、地域連携、あるいは事務処理、あるいは学校経営戦略を考えるスタッフが必要なのではないだろうか。
  次に、教科学習系と生活学習系に分かれまして、それぞれに専門性を確立する必要がある。一人の教員が両方にまたがるのは当然でございますけれども、少なくともここ何年間かは生活学習系に力点を置いて一定の責任を持つ教員と、いや、ここ何年間かは少なくともこの教科の指導に責任持つ、研究を進める、こういった機能分化を考える必要があるのではないかということでございます。
  あわせて、担任の役割の明確化。専任司書教諭、実習教諭、養護教諭、学校栄養教諭などの専門性の確立が必要です。
  これについては、地域カリキュラムセンター、スクールカウンセラー、スクールボランティアの創出という、いわば総体的に学校の横にある組織も必要だと思います。
  さらに、学習系の機能につきましても、教科学習系では、調べ学習のためにこれこれが要りますと。生活学習のためにはこれこれが要りますと。養護教諭の役割、あるいは栄養教諭の役割が、今、社会的に見直されておるところでございますが、いずれにしてもそういった課題にこたえるための定数上の措置、あるいは待遇上の措置が不可欠ではないでしょうか。
  あわせて、学校支援システムの問題でございますが、ナショナルカリキュラムセンター、あるいは生活指導研究センターは、中間報告でも触れていただいたところでございます。私どもはもろ手を挙げてこれに賛成でございます。しかしながら、これは現場にどのように役に立つか。最後は教職員を励まし、力をつけ、子どもに返っていかないといけないわけでございますから、ナショナルセンター一つではどうにもならないという意味で、各地域においてこういったものの措置をお願いしたい。
  その場合、現在の指導主事の在り方が、ティーチャーコンサルタントという原点に戻ったものである必要があると考えるところでございます。要は学校が、今地域にある教育諸力をどう活用するか。ここへ開いていった学校は一定成功しているわけでございます。本当に忙しいけれども、意欲を持って、誇りを持って仕事ができる。こういう教職員、学校はたくさんあるわけでございますから、そういったものを保障していくようにしてもらいたいというのが後段でございます。
  さらに、部活動については、既に中学生・高校生のニーズにこたえられるだけの多様な部活動を保障することができない中学校・高校が圧倒的に増えてございます。これらを幾つかの中学校単位で地域的に保障するシステムを何とかしてつくれないだろうかと考えておるところでございます。
  提案の大きな三つ目として、住民参加と意思決定システムについて書いてございます。今日の教育に対する本当に多様な住民や保護者のニーズをどう吸収し、反映し、敏感にこれにこたえていくか。そのことによって、本当に子どもに対する教育力を地域・家庭・学校が一体となって総合的に力をつけていくかという課題として、一つは学校協議会について書いてございます。
  次に、職員会議であります。残念ながら形骸化しているところや、事実上子どもの話がなかなか出てこないという職員会議もあるようでございますが、私どもの職員会議の基本的なイメージは、子どもの実態について教職員が十分交流し合うということでございます。そのような子どもの実態に立った場合に、教育課題を絞り上げ、一つの方針に学校全体が燃えて立ち上がる。このような場をもって職員会議とすべきではないだろうか。私自身はそういう学校を幾つか経験をしてきたところでございまして、今日、形骸化しているなどの声を聞くというのは、まことに残念なことでございます。
  そういう意味で、子どもの実態というのは、一つの学級の一つの小さな事柄からざっとわかるものでございますから、そのような子どもの実態をどこの学級からでも、どこの学年からでも小さなことでも出し合える、出すことがいいことなんだと思い合える教職員集団、そのような職員会議を何とかつくり上げていきたいと思うところでございます。したがいまして、最高決議機関であるとか、あるいは諮問機関であるとか、そういうような古い議論をもう一遍持ち出して、教職員間に疑念や論争や机上の空論による建前上の論議を持ち込むことは絶対によくないのではないか。今ある子どもの実態にどう焦点化するかということに力点を置くべきだと考えておるところでございます。
  校長への権限委譲につきましても、私どもは大いにそうしてもらいたいと考えております。しかしながら、教職員の意欲を引き出す、能力を引き出す、そして総合力をつける、これが管理職、校長の基本的な仕事である。このことがスポイルされるような形でもし権限委譲を考えられるとするならば、これは間違いだということを明確に申し上げておきたいと思います。
  若干、校長と現場の関係については、私どもとしては学校の代表者が校長であることは当然のことであるし、その校長のリーダーシップがきちっと発揮される。その発揮される内容において、教職員が伸びていく、成長していく、教職員の納得において成長させる、こういう管理職像をぜひ持ちたいと思うところでございます。そういう意味では、学校長に委譲された権限が適正に、かつ効率的に、本当にそれが子どもに返る姿で実現をするためには、やはり現在のシステムでは無理なのではないだろうか。先ほど申し上げました行政職風のスタッフもぜひ必要なのではないかと考えるところでございますし、予算をもう少し、一国一城のあるじという表現は変でございますけれども、20人、30人の教職員、大人を預かり、何百人の子どもを預かっている校長に、1万円、2万円の金を出費する権限もないというようなことはとんでもない話ではないか。何とかここは変えてもらいたいと思います。
  提案の大きな四つ目でございますが、教育諸条件の整備であります。これについては、教職員定数は人件費だというふうに一概にくくられますけれども、教育は人でございますから、教職員の人件費というのはまさに事業費そのものだという立場から、どうかひとつここの場にいない方への説得力のある論を展開していただきたいと思うところでございます。
  第2には、学校の施設・設備の問題でございます。電話回線の話は先ほど申し上げました。あわせてO―157で問題になりました調理室の問題、あるいは給食を食べる食堂の問題。そもそもあのような机といすが、今日、社会の中に学校以外にどこにあるか。子どもたちの家庭におけるいすと机の状況はどうかということとぜひ比較をして、今日こんなに高度に発達をした日本社会に子どもたちが暮らしているんだという立場から、子どもたちの居心地のいい学校というものをイメージしてもらいたいと考えるところでございます。
  第3には、教職員の勤務実態であります。人によるんだという見方もございますけれども、極めて長時間労働にあえいでおりますし、その長時間労働も意欲を持ってバンバン元気にやっているときは何ら苦にならないんでございますが、一旦後ろ向きの問題処理のために長時間かかる、今晩も遅い、今晩も10時、11時だとなってきますと、教職員は耐えられないというふうな学校も結構たくさんございます。ぜひひとつそういった面での処遇の改善、勤務実態の把握にも努めていただきたいところでございます。
  更に次ですが、まず今日の子どもたちのニーズが、選択履修や個別学習、あるいは生活学習への対応、あるいは小学校からの教科担任制、こういった新しいことを打ち出さないと学校も燃えていかないわけです。新しいことを打ち出した場合に、学校が燃える。燃えたら、子どもに必ずいい影響があるというような意味で、ひとつ30人以下学級を含めて、複眼的な子どもの理解を進めるための教職員定数の改善をお願いしたい。また、地域ごとの包括的な定数措置だとか、事務職員、専任司書教諭、実習教諭、養護教諭、学校栄養教諭などの専門的な職の確立と定数の改善を切にお願いしたいところでございます。
  次は、施設・設備で、子どもたちが居場所になるような場所。保健室が心の居場所だと言いますが、その保健室にしたってどれだけの設備があるか。学校をよく見ていただいているでしょうから、おわかりいただけると思いますが、そういった問題でございます。電話のない保健室だっていっぱいあるわけでございます。
  そして 、施設・設備の機能的な向上。
  さらに、処遇の改善等でございます。学級担任についての立場の見直し。学級担任が、昔は外されたと言って怒ったものでございますが、このごろは一遍外してもらいたいと思っても、なかなか外してもらえないという形で、担任の責任と多忙さから逃れたいというのが教職員の最後のいわば逃げになっている。この状況は決していいことはないと考えているところでございます。
  最後に、「第5章地域コミュニティーの育成と地域振興に教育委員会の果たすべき役割について」の部分への意見と提案でございます。
  ゴールドプランだとか、新ゴールドプランだとか、少子高齢化と言いながら、高齢化部分はいろいろ議論になるけれども、少子化部分について心を用いていただきたい。その意味で、チャイルドプランというふうなものを考えられないだろうか。さらには、地域コミュニティの拠点として学校の整備を進めることによって、地域コミュニティというものを新たに21世紀、日本がつくり出す必要があるのではないだろうか。その場合の核はやはり学校ではないだろうかということでございます。
  最後に、教育委員会はややもすれば首長部局の財政事情によって、いわば非常に切り縮められる。その場合、人件費といったら等し並みに人件費というくくりで切っていかれる。このことに対して、子どもたちが本当に自分たちが大切にされていると思うような学校づくり、教職員配置をぜひお願いをして、最後に電話回線アンケートの状況がございますから、このような事業所が一体日本のどこにあるかということもお考えいただきたい。
  日教組としての御意見を述べさせていただいたということにさせていただきます。

○  全般にわたって非常に興味深く聞かせていただきました。一つだけに絞って質問させてください。
  特に教師の負担軽減というところと、子どもの指導に専念するための条件整備をどうやって進めていくかというところについては、私自身も共感していまして、今、子どもに対するわかる授業を目指していくことは極めて重要ですけれども、現場の先生方の勤務形態をよく見ていくと、指導の中でも、教科指導にかかわるエネルギーというのは2割、3割で、生活指導に7割、8割のエネルギーを費やしているというのが実態です。特に学級担任になった場合、さらに仕事の配分が生活指導とか、そういうところにエネルギーがほとんど割かれて、まともな授業準備ができない状況になってきているということが、現場に行けば行くほどそういう事実が見られるわけです。特に学級というのは子どもにとって日常生活ないしは教師にとっての生活指導の基礎単位ということで極めて重要で、そうした学級担任の負担軽減を実現して、学級担任としての仕事の役割をきちんとやっていく。そのための条件整備をしていくことについては、私自身もその線は共感して聞いていました。
  そういう点で、少しお聞きしたいことは、そうしたことも含めて、教職員の定数ないしは配置の改善の必要性は、これからの学校づくりの一つの重要なテーマだということは私も常々思っているわけですが、今のお話を聞くと、教職員定数・配置の改善といった場合には、ほとんどが教職員定数の大幅増が中心に展開されていると思うんです。私自身もそれは重要で、ぜひ実現してほしい。ただ、今、大蔵省を含めて国の財政状況を考えると、教職員定数の大幅増なんていうことは非常に難しい状況にあって、これは文部省のほうに一生懸命頑張ってほしいんですが、定数増の見通しが厳しいという中で、定数増を前提とした定数改善とか、配置の改善は難しいと思うんです。
  そこで、ちょっと発想を転換して、定数増ということを前提としなくても、今の教職員数を前提としながらも、例えば学級編制基準とか、教職員定数ないしは配置の運用の弾力化を図るということで、もっと学校自身の活動を支援するような仕組みをつくれないだろうかということでのお考えはないだろうか。その辺は、教職員定数の改善のお話の中で、幾つかそうした趣旨の提言があるような感じもするんです。その辺、編制基準とか、それに連動する教職員定数の運用の弾力化という点で、より具体的なお考えがあれば聞かせていただきたいということです。

○樋口意見発表者  そういう質問に答えられるような努力を現場でしておったらよかったんですけれども、率直に言いまして、そのような余地が小学校にも中学校にも現状ではないと言わざるを得ません。つまり、学級数が決まると、配置される教職員数が決定されます。それは小学校を例にとりますと、17〜18学級あったとしても、校長、教頭、養護教諭、事務職員を除けば、学級数プラス2ないし3でございます。さらに、このところいただいております6次改善で、ティーム・ティーチング等でいただく教員は、プラス1でございます。学年に一人ではなくて、学校に一人でございます。それをどう回してみても、教科担任制を何とか広げるとか、中学校では選択履修というんですが、選択履修の科目は設定しても、実はそれが学校としての選択になってしまわざるを得ない。子ども一人一人にとっての選択になるまでの人手がないということでございます。
  例えば、夏休みなんかに、朝の6時から何々学校何々タイムとかやって、教職員が全部何か得意わざを持ち寄って、例えばギターを持ち寄ったり、パソコンを持ち寄ったりして、そういういわば選択制を長期休業中等を利用して、子どもたちと教職員の意見の合うところで、希望によって3人、5人、10人、多いところは30人というようなことは可能でございますけれども、それはあくまでも日常の学校生活がないということを前提にした選択制でございまして、まことに残念ではございますけれども、今我々に与えられている教職員定数で、なかなか工夫の余地がない。率直に言って、今のところそういう工夫はほとんど見られないというのが現場の状況でございます。

○  大変丁寧な資料等をありがとうございました。感想では、日本教職員組合は政治闘争等よりもこういう前向きな経済的なことをもっとやっていたら、もっと日本の教育もよくなったのでないかと思いますが、過去は過去として。
  ティーム・ティーチングで、確かに教員の加配、それからクラスサイズの問題は、これから非常に大事な問題かと思うんですけれども、例えばティーム・ティーチングを考える場合も、今の御説明のように、単に教師同士のT・Tとやりますと、どうしても十分ではありません。しかし、ここにまさに先生が書いてある「複眼的な子ども理解」という視点で、教授スタッフと支援スタッフの組み合わせという視点から、例えば非常勤講師とのT・Tとか、あるいは保護者とのT・Tとか、あるいは今大学のいろんな教育実習生、そういう大学生とのT・Tとか、あるいはコンピュータであれば情報技術のコンサルタントとのT・Tとか、T・Tも視野を広げてやることによってもうちょっと打開できないのか、それとも不可能なのかという感じを受けました。いずれにいたしましても、非常に意欲的な御説明も多々あったかと思います。

○樋口意見発表者  保護者並びに大学生、コンサルタントとのT・Tということについては、できる幅でできるところでポツポツ始まっているという実態がございます。しかしながら、教育実習においでになる学生とのT・Tという場合には、むしろ担当する指導教員のほうがそのことによって  ―子どもにうまいぐあいに返していって、うまくメリットをつくれる場合があったらいいというんですが、そうすべきだと思ってはおりますが、どっちかといえば教員の負担が増えるというのが実態でございます。
  それから、非常勤講師につきましては、おっしゃるような形で、嘱託の非常勤講師をやってもいいよというふうに、今年度から予算がついてございますので、そういったことについてもできる限り活用したい。何でも使いたいという気持ちはあるわけでございます。

○  先ほどの御提言の中に、例えばチャイルドプランであるとか、学校支援センターとか、学校協議会、あるいはスクールボランティアという形で、生涯学習を見据えた学校教育の充実ということで、非常に先見性があるというんでしょうか、今後に向けての貴重な話があったようにお伺いして、私も個人的にそのことは非常に重要であると思っているんです。
  そのことに関連しまして、現実論としてはそういうことをこれから進めていく場合に、これは教育行政が当面は主導でやっていくことが重要とお考えなのか、学校主体で当面はやっていくということなのか、あるいはその他の地域の関係団体等が中心になっていくのか、あるいはそれは地域によって、学校によって様々だから、それぞれ違いがあるというのか、その辺について何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。

○樋口意見発表者  私どもは教職員組合でございますから、ございますからと言うのは変な話ですけれども、現場が第1と考えてございまして、現場がぶち当たっている問題をどうすれば解決できるかということで、このようなことを考えておるということでございますので、中教審も幸い理解していただいて、こういう方向なんだ、ひとつ現場から何とか解決していこうよという立場でありますから、基本的には現場主導でありたい。現場の英知を結集したものでありたい。
  なお、その場合に、行政サイドがどのような支援をしてくれるだろうか、あるいは支援をぜひしてもらいたいという立場で、生涯学習を見据えたその基礎の基礎を小・中学校、高校でやるんだという考え方は全く同感でございます。

○  1点だけ。教職員の研修制度の転換をはかるというところについてますが、今、一番大きな課題の一つでもございます。「教職員のニーズに応じた研修体制を整備すること。」について、私どもはよくいろいろな懇談会で、社会のニーズに応じた教職員研修が必要なのでないか、いわゆる自主研修という形で閉じられていることに対する非常に強い批判が社会的にございます。地域や社会の信頼にこたえる教職員の資質向上という意味で、教職員のニーズだけでなく、社会のニーズに応じた研修体制、そして学校が事務所として電話回線が特異であるという御指摘もございましたが、もし組織体といえば、学校はやはり組織の中では極めて特異だということが、PTAなどでもよくいろいろな仕事を持った方から出ております。そういう中では、学校が地域の中で、コミュニティの育成をこれから担っていくというためにも、地域社会のニーズに応じた研修体制も必要ではないかという意見をよく聞きますが、その点についていかがでしょうか。

○樋口意見発表者  予定調和で言うわけではないんですけれども、教職員のニーズに応じた研修と言う場合に、例えば内容の問題もございますし、あるいは期間の問題もございます。そういうことですから、私ども1年なら1年、2年なら2年、10年なり15年なりに1回は、そういった長期間、大学並びに一般社会、あるいは国際的なボランティアに出るということを主としてイメージしているところでございます。そうなりますと、社会の風を学校に入れるという効果が非常に大きいと考えておりまして、社会のニーズが教職員のニーズと一致するだろうというような、予定調和的にとられるかもしれませんが、私どもとしてはそのように考えているところでございます。
  なお、自分のニーズで研修に参加した人が、その研修の中で社会のニーズを身につけるということは十分あるというか、むしろそういう形でしか、教職員のニーズと別のところから社会のニーズはないのではないだろうか。教職員も一般社会人として日々暮らしているという面、あるいは子どもを通して、その子どもの親を通して社会と触れ合いがあるという意味で、教職員のニーズと社会のニーズを私どもとしてはほぼ一体的にとらまえたいし、内容的にそうありたいと思っているところでございます。

○  大変ありがとうございました。「中間報告で提起された内容に関しては概ね賛同している」ということについてでございますが、私、全体の御説明をお聞きしまして、非常にわかりやすい御説明をいただいて感謝しております。特に諸問題があるわけですが、その諸問題を一人一人の組合員といいましょうか、先生方が自分のものとして、自ら教師のものとして具体的に考えているということで、非常に共感を持って説明をお聞きしたわけであります。
  先ほどの御説明の中で、おおむね賛同しているが、具体化を欲しいという一言があったんですが、私は中間報告はあまり具体化しないで、具体化は受けとめるほう、現場で、あるいは市町村なり県の教育委員会でという考え方を持っておるんですが、その点はいかがでしょうか。もう一度そこをお聞かせ願いたいと思います。

○樋口意見発表者  率直に申し上げて、私どもとしては、幾らいいことを言っていただいても、それを実現できる条件をつけてもらわなければ、かえって現場には閉塞感だけが残ってしまうという意味で、大変恐れているところでもございます。きれいな絵は描けた、その絵を具体に日々の生活の中で子どもに返していくためには、現状の定数と現状の予算では無理なんですと。本当に無理なんです。そのことを文部省も含めまして受けとめていただくために、何が必要だろうか。このことがなければ本当に絵に描いた改革に終わってしまう。つまり、教育改革というのは、我々がしんどくなっただけの話かいと。何で組合までそんなことを改革だ、改革だと言うんだというふうに、私どもどっちかといえば日ごろから組合員から批判を受けている側面もございまして、何とかこれができる  ―あらゆる改革、あらゆる施策に、金と人の手だてのない施策、そんなことがあっていいのだろうか。研修一つ取り上げてもそうですし、教科担任制一つ取り上げてもそうですし、あれこれ言いますと長くなりますが、ぜひとも審議会の答申を文部省なり政府なりが最大限尊重しますという場合に、尊重して具体に移せるために、これこれのお金と人をつけますというところまでぜひ何とかしてもらいたい。これは悲願のようなものでございます。

○  大変多面的に御意見をいただきましてありがとうございました。大変参考になる点が多かったと思います。1点だけ御質問します。
  新しい学校と学校支援システムのことですが、「学校協議会」と「地域教育協議会」という言葉が出ていまして、どういう区別をされているのか。学校に学校協議会、地域に地域教育協議会。この地域は中学校区。学校協議会は各学校ですから、小学校、中学校おのおのと、こう理解できるんですが、学校のほうは例えば親だけの参加で考えていらっしゃるのか、地域のほうはそれも含めてより広域的に考えていらっしゃるのかという点。
  それから、全市町村の約2割ぐらいが、ちょっと正確ではありませんけれども、1中学校しか持っていないわけです。そうした場合に、教育委員会の委員の選任の問題。これはあくまでも住民参加の問題としてお考えでいらっしゃると思いますので、どういう重なり方になるのか。教育委員会があって、地域教育協議会があって、学校協議会があると。この辺の整理がなされているかどうかについてお伺いしたいと思います。

○樋口意見発表者  率直に申し上げて、整理し尽くしているわけではございません。ただ、今答えられる範囲で言いますと、学校協議会というのは一つの学校に絡むことでございます。それから、地域教育協議会というのは、一つの小学校があって、もう一つの小学校ないしはもう一つあって、中学校が一つあるという、三つないし四つの地域で、最後は中学校で一緒になるという、そういう地域内の連携ということでございます。
  それから、学校協議会のところで書いてございますように、どちらかといえば、私は住民のニーズを吸収し、反映する、こたえるというところに力点を置いておりますので、いわば諮問機関的に考える。
  そういうことでございますから、学校協議会は一つの学校、地域教育協議会は幾つかの学校に、それぞれ代表を出し合って、うちの地域の子どもの問題という形で話をしていただく。
  したがいまして、行政の権限を持っておるところの教育委員会とは一応別のものと考えてございます。なお、教育行政サイドからの学校協議会、地域教育協議会に対する支援はいろんな形でお願いしたいと考えているところでございます。

○  それでは、きょうは樋口さんを初め、お忙しい中をおいでいただいて、貴重な意見発表をいただきました。十分参考にさせていただきます。ありがとうございました。今後ともよろしく。委員の方々に今後の審議の進め方について申し上げます。本小委員会の今後の会議スケジュールについては、次回、6月22日は、第22回小委員会ですが、PTA団体、社会教育・体育・文化関係団体からヒアリングを行いたいと思います。
  これで本日の会議は終了いたします。
  次回の小委員会は、6月22日、13時から、霞が関東京會舘・ゴールドスタールーム、霞が関ビル35階で開催したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  きょうはどうも長時間ありがとうございました。

 

(大臣官房政策課)

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