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中央教育審議会

1997/11
今後の地方教育行政に関する小委員会 (第5回)議事要旨 

       地方教育行政に関する小委員会(第5回)

          議    事    録

    平成9年11月18日(火)    13:00〜15:30
    東海大学校友会館  33階  望星の間


    1.開    会
    2.議    題
        今後の地方教育行政の在り方について(ヒアリング及び討議)
    3.閉    会

    出  席  者

委員 専門委員 事務局
河野座長 安藤専門委員 長谷川生涯学習局長
薄田委員 石原専門委員 御手洗教育助成局長
國分委員 大山専門委員 富岡総務審議官
小林委員 小川専門委員 杉浦政策課長
坂元委員 尾木専門委員 その他関係官
永井委員 如月専門委員   
横山委員 佐々木(初)専門委員   
   佐野専門委員   
   蓮見専門委員   
   藤波専門委員   
   堀内専門委員   
   鱒渕専門委員   
   村松専門委員   
   森元専門委員   
   山極専門委員   
   和田専門委員   






意見発表者(◎…意見発表者)
  都道府県教育委員会連合会
  安  原  道  夫  (理事、京都府教育委員会教育長)
  指定都市教育委員教育長協議会
  森  元  弘  志  (広島市教育委員会教育長)
     小  野  邦  則  (広島市教育委員会総務部総務課長)
  全国市町村教育委員会連合会
  内  藤  昭  一  (常任理事、千葉県松戸市教育委員会委員長)
     坂  本  義  明  (事務局長)
  全国都市教育長協議会
  岩  上      進  (副会長、埼玉県与野市教育委員会教育長)
     伊  藤  博  光  (事務局長)
  全国町村教育長会
  伊  藤  義  夫  (会長、山口県楠町教育委員会教育長)
     木  村  道之助  (事務局長)


○  それでは、ただいまから地方教育行政に関する小委員会、第5回を開催いたします。きょうは、ヒアリングをお願いする関係で、時間を15時半まで延長させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。教育委員会の関係5団体からヒアリングを行います。そして、ヒアリング団体とも関連するテーマでございます「市町村・都道府県・国の関係」、それから「地域住民と教育委員会の関係」及び「教育委員会の組織・体制の在り方」、こういったことについて討議を行っていただきたいと思っております。
  初めに、都道府県教育委員会連合会理事の安原道夫さんですが、安原さんは京都府教育委員会教育長でございます。20分程度御意見をお伺いして、その後10分程度質疑応答を行いたいと思います。
  安原さん、よろしくお願いいたします。

◎安原意見発表者    京都府の教育長をいたしております安原でございます。全国都道府県教育委員会連合会の理事をいたしております。きょうは市川副会長が出張いたしておりますので、代わりまして連合会でまとめました意見を発表させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  お手元にお配りしております「『地方教育行政制度に関する意見』/全国都道府県教育委員会連合会」という資料に基づきまして、意見の表明をさせていただきます。
  中央教育審議会に対し、21世紀に向けた地方教育行政の在り方に関する調査研究協力者会議の『論点整理』を踏まえまして、以下のとおり意見を表明いたします。
  「1」といたしまして、「『はじめに』及び『総論』について」でございますが、子どもたち一人一人の多様な個性や能力の伸長を図り、「生きる力」をはぐくむために、学校・家庭・地域社会の連携が重要であるとの中央教育審議会第一次答申は、広く国民の合意を得て、21世紀に向けた教育の指針の一つとなったと考えておるところでございます。
  この三者の連携強化は必要でございますが、中でも教育委員会が中核的役割を果たしていくことが求められていると考えておりまして、このような観点からも、『論点整理』の「はじめに」において、教育委員会制度が今まで果たしてきた大きな役割を評価しつつ、さらに「総合的かつ積極的な」地方教育行政が展開できるシステムづくりの必要性が述べられていることを評価したいという考えでございます。
  「総論」において、「学校の役割と機能」に並べて「地域コミュニティーの育成」を重視していることにつきましては、教育制度見直しの視点として重要であると考えております。
  中央教育審議会第一次答申の内容が学校教育の見直しを中心としたものであったため、ややもすれば地域の教育力向上が、とかく学校教育スリム化のための補完機能の面から議論されがちでございますが、むしろ大切なことは、地域コミュニティーの育成、振興が地域社会の教育の充実を生み出すという考えであろうと考えております。
  一口に地域といいましても、それは極めて多様でございまして、都道府県においても、多くの私立学校や民間の教育機関が公立学校や社会教育施設と共存または競合しているところもあれば、多くの離島や山間地を抱えて、学校教育も社会教育もほぼ行政が担わなければならないところもございます。まして市町村におきましては、それ以上に地域の特性、人口、財政規模は多様でございまして、教育に対する地域住民のニーズも、現実に可能な施策も異なっているはずでございます。
  「市町村の規模や地域の特性との関係」において、「従来のような都道府県と市町村についての一律的な取り扱いを改めることが必要」と指摘しているのは、地域の多様性を踏まえた教育を進めるために、最も重要な考え方であり、高く評価しているところでございます。
  「はじめに」で述べている「総合的かつ積極的な」地方教育行政の展開とは、我が国の教育水準の維持向上を損なわない範囲で、それぞれの地域・学校・子どもや保護者に対し、一律的な取り扱いを改めて、最大限の選択の自由を与える方向での改善と考えたいところでございます。
  以下、各論につきまして、今後の検討に当たり御配慮いただきたい点を述べます。
  まず「学校と教育委員会との関係」でございますが、学校が「地域の教育機関としての信頼」を確保し、「学校の自主性・自律性を確立する」ための学校経営上の責任の所在明確化が述べられておりますが、実質的には校長の権限とそれに伴う責任の強化であると考えます。
  この取り組みに当たりましては、近隣の他校との横並び意識及び都道府県や市町村教育委員会の指示のみに依拠する意識を捨てて、特色ある学校づくりに取り組むような、校長の意識改革と教職員に対する強いリーダーシップが必要であると考えます。
  また、子どもや保護者の側にも、中学校や高等学校における進学実績以外の尺度で、学校教育の成果を評価するような意識改革が必要でございます。
  「教育委員会の関与の見直し」は当然必要であり、学校行事、副教材、通学路、防火管理者の任命等、さまざまな願・届・報告などの提出義務を見直すための積極的な研究が必要でございますが、最も必要なことは、保護者と教育委員会・学校の両者の意識改革でございます。
  校長の権限の拡大・強化については、校長の意識改革が不可欠であり、意識改革のためには一定の評価システムと責任の明確化が必要でございます。
  また、予算執行に係る校長の権限拡大は、各都道府県、市町村の財務規程にかかわるものでございまして、他の行政部局から均衡を欠くことの指摘を受けることのないよう、十分な検討が必要でございます。
  さらに、保護者の意識改革に当たりましては、進学実績以外の学校評価尺度を保護者自身が積極的に学校に提案できるような機会を設けるとともに、学級担任などの人事問題や学校行事の改廃への過度の関与に陥ることのないような配慮が必要でございます。
  学校の自律性・自主性を発揮しつつ、公平性や中立性を備えた運営を行えるよう、それを担保する仕組みの検討も必要でございます。
  「3」といたしまして、「都道府県と市町村の関係」についてでございますが、市町村に対する指導・助言の在り方の見直しが述べられているところでございますが、特に義務教育について、学校の設置者である市町村の主体性を重視し、国や都道府県の指導・助言が命令と受け取られることのないような配慮が必要でございます。
  しかし、その一方で、「専門性に裏づけられた指導・助言の機能充実」の必要性が述べられておりますが、教育関係者以外にはわかりにくい表現であり、中央教育審議会で十分な検討をお願いいたします。
  小規模町村においては、事務局の本務職員が事務系職員2人のみという例もあり、指導主事が1人もいない町村は珍しくございません。また、社会教育係はあっても学校教育係はなく、庶務係が学校教育に関する事務を担当している例もございます。多くの町村においては、「社会教育は町村の責任において取り組むが、学校教育は教育事務所の指導に従って、近隣町村と足並みをそろえて取り組むべきもの」という考え方が主流であったと考えられております。
  市町村の主体性を重んじつつ、国や都道府県の「専門性に裏づけられた指導・助言の機能充実」を図るという考え方は、このような現実を踏まえたものとすれば共感するところでございます。
  地方分権の観点から、市町村独自の行政の推進が期待される中で、住民の期待にこたえ、特色ある教育行政を推進するためには、学校教育についても、今後は国や都道府県に頼らず、個々の市町村が組織体制の充実に取り組む必要がございます。その場合、行財政のスリム化が求められる時勢におきまして、スタッフなどをどれだけ充実できるかは、財政力の弱い町村においては大きな課題となることが予想され、その支援の手だてを考えることが最も重要なことであると考えております。
  次に、「都道府県と政令指定都市、中核市との関係」でございますが、中核市にも県費負担教職員の任命権の委任についての検討が述べられておりますが、広域的な人事交流を確保する上で、十分に慎重な検討をお願いいたします。特に多くの離島を抱える県におきましては、教員の採用数が伸び悩む中で、離島での教育を推進するための人事の困難が予想されるところでございます。
  「国と都道府県との関係」につきましては、都道府県と市町村との関係と同様に、指導・助言の見直しが中心となっているので、「専門性に裏づけられた指導・助言の機能充実」についての十分な検討をお願いいたします。
  「私立学校と地方公共団体との関係」につきましては、教育委員会と私立学校との関係の緊密化を図るということは重要でございます。ただし、「学習指導の面」にまで踏み込んで教育委員会が指導することについては、私立学校が公立学校と異なる独自の教育活動をアピールして、児童・生徒を募集している現状を考えると、その実施に当たりましては、私立学校側のニーズの確認など、十分な準備が必要だと思われます。
  「学習指導の面」の指導による私立学校への関与の視点だけでなく、教員の相互派遣や研修の共催などにより、関係の緊密化を図ることを検討することが必要と考えております。
  次に、「地域住民と教育委員会・学校」の関係でございますが、教育委員の数の弾力化や選任については、当該地方公共団体の実情に応じて工夫することにより、地域住民の意向を的確に把握することも可能でございます。教育委員の選任に当たり、「地域住民の意向をより踏まえたものとするための工夫」の検討が必要ではないかとの指摘は、思い切った提案と思われます。具体的な方法をめぐる国の論議の進展に期待するとともに、都道府県、市町村における検討も求められているものと受けとめております。
  学校や社会教育施設と地域住民との関係については、個々の子ども・保護者・利用者の声をもって、地域住民全体の意向と即断できない難しさがあります。一つ一つの意見に十分耳を傾けつつ、その意見の活用に当たっては、学校や社会教育施設を核として、多くの地域住民の意向確認に高めていくための方策が必要でございます。
  地域住民に対し、教育行政システムを含めた教育情報の提供を積極的に行う必要があると考えているところでございます。
  次に、「教育長の適材確保」につきましては、教育長に適材を確保するための方策については、任命承認制を廃止した場合の、これにかわる手だての必要性が検討の焦点と考えております。
  都道府県、市町村においては、従来から幅広い識見、高潔な人格、適正な判断力、優れた実行力などを総合的に検討して教育長を選任してきた経緯がございまして、任命後は、教育委員や議会からさまざまな機会を通して、その見識が厳しく問われているところでございます。
  任命承認制にかわる手だてを設けなかった場合に、どのような支障が生ずるか、広範な論議を願いたいところでございます。
  なお、市町村教育長の専任化については、適材確保の方策として期待されているので、十分な検討が必要でございます。
  また、任命に当たって議会の同意を必要とした場合は、多くの政党・会派が存在する都道府県議会においては、政治的偏向のない健全な人材が選任されるであろうけれども、小さな市町村におきましては、首長や議員との地縁・血縁によって人選が左右される恐れがあるので、注意をする必要がございます。
  「市町村教育委員会の事務処理体制」につきましては、広域連合や教育委員会の共同設置による事務の広域化促進が述べられておりますが、極めて思い切った提案と受けとめておりまして、具体化に向けた方策を含めた十分な議論を望みたいところでございます。
  個々の教育施策の予算的裏づけが町村議会の同意に基づいている現状を考えますと、広域連合や共同設置を促進するに当たっては、首長や議会を巻き込んだ十分な検討が必要であろうと考えます。
  調査研究協力者会議の検討では、委員の意見も分かれているようでございますが、『論点整理』の基本理念が「住民の多様なニーズ」に応じた教育施策の展開にあることを考えても、見直しの方向は、町村の枠を越えた教育委員会の設置よりも、むしろ個々の町村教育委員会の基礎体力を強化することによる充実強化のほうが本質的な課題解決になると考えられるところでございます。
  最後に、「地域コミュニティーの育成と地域振興」につきましては、その重要性を認識しなければならないところでございます。そのための施策において、首長部局、民間、大学などとの連携に、都道府県、市町村ともに鋭意取り組んでいるところでございますが、特に大学などとの連携については積極的に検討していくべき必要がございます。
  連携すべき民間や大学を持ちにくい町村におきましては、地域住民の生涯学習の場として、学校施設をはじめ保健福祉機能などを有する施設の活用が強く期待されており、その在り方を含め十分検討をしていただきたいと望むものでございます。
  以上が、全国都道府県教育委員会連合会からの意見でございます。御清聴どうもありがとうございました。

○  大変ありがとうございました。今お話しいただきました「2」番、3ページの中段あたり、校長の権限拡大・強化に関連して「一定の評価システム」という言葉が出ておりますが、これについて何か具体的なお考え等がございましたらお教えいただきたいと思います。

◎安原意見発表者    この件につきましては、ある府県からの提案をそのまま書かせていただいているところでございまして、そこでは既に校長の評価システムを導入しておられるようでございます。情報公開により、当審議会の審議経過の内容を漏れ聞いておりますと、今回の学校、市町村教育委員会等への権限の委譲につきましては、やはり受け皿のところの体質が危惧されているように見うけられます。学校におきましては、校長の資質・能力によって、これからの教育改革や、学校運営、学校経営に取り組む姿勢が、校長、一人一人の方針によって、全部変わってくるわけでございます。また、職員団体との関係もございます。そういう点で、受け皿についての一定の評価制度を確立しておかないと、権限を委譲した場合に危惧されるのではないかと考えております。
  具体的には、最近、多くの都道府県で行われておりますのは、校長の自己評価制度であります。我々の京都府でも行っておりまして、多くの項目を設け、校長自らが自己採点をしていくという制度であります。教育目標から学校運営からすべてについて、いろんな項目を整理し、それを全校長が、自己評価しながら、自分の目的達成について、どのようなところを補っていかなければいけないか、できているか、またこれから努力しなければならないかということを、絶えず第三者にもわかりやすいような評価をしながら、レベルを上げていくということをやっております。そういうことが一律的に行われると大変安心ができるのではなかろうか。また、地域からも信頼されていくのではなかろうかと考えております。

○  二つほどお尋ねしたいんですが、私学との関係で、「私立学校と地方公共団体との関係」の問題が4ページの「6」というところに書かれておりますが、今、私立学校については、知事部局の総務課等で大体所管されている。それはそれとしまして、私立学校自体も公の性質を持っている、広い意味で公教育の一端を担っているということから考えまして  ―例えばけさ、新聞に報道されておりますように、学校5日制の問題などで、学習指導要領の全面的な改訂等が行われる。私立と公立との間での学力差とか、特色ある建学の精神ということで、一定程度私学が独自性を出すことについては、それはそれとして結構なことですが、あまりにも公の性質を持つ指導内容等について、端的に言って週の教科時数等が公立とアンバランスであるということについては、保護者の間からもさまざまな意見があるんですね。
  そういう意味で、指導行政について、専門的立場に立っている教育委員会が緊密な連携をすることがこれから求められるのではないかと思うんですけれども、この中段の説明のところでは  ―私も別に私学の指導内容について、個々にわたって教育委員会が指導するとか、指導主事が訪問するということまでを考えているわけではありませんが、現在のところ、指導行政については完全に二分化されているという状況にあると思うので、研修等をやるということであれば、指導面についても、教育委員会と私学との関係をもう少し緊密化する必要があると思うんですけれども、その点について、ここはやや踏み込んでいないような感じもするんですが、どういう議論経過があるのか、よければお教えいただきたい。
  二つ目は、教育委員の選任の問題等について、協力者会議の提言について、「『地域住民の意向をより踏まえたものとするための工夫』の検討が必要ではないかとの指摘は、思い切った提案と思われる。」というふうに高く評価をされているんですけれども、4ページの「7」で書かれている、都道府県教育委員会連合会としての教育委員の選任等については、現状において具体的にどういう改善策等を考えられているのか、よければその辺についてお教えをいただきたいと思います。

◎安原意見発表者    それでは、1点目の私学と公立の関係でございますが、これは基本的には文部省のほうのすみ分けがきちっとされておりまして、都道府県教育委員会からは私学の教育内容については関与する部分は全くないわけでございます。そういう制度上の限界がございますけれども、最近の例としまして、我々が、現場でいろいろ遭遇する問題は、学校週5日制について、公立の実施率は完全に充足していますけれども、私学のほうの充足率が大都市部で非常に低い。けれども、そういう状況もあわせまして、今、委員がおっしゃいましたように、公教育を担っている一部であれば、文部省がお出しになったものについては、少なくとも履行は完全にしていただきたいという願望がございます。それから、教育課程における時間数の問題、特に英語教育なんかにはほかの教科を割いてやっておられたりとかいう問題も漏れ聞きます。これも漏れ聞くしかないんですが。あるいは、入試問題における奇問難問等、いろいろございます。それから、生徒指導では、弟1学年でずいぶんと中退者が多いというような状況もございます。
  いろいろございますけれども、我々から見ますと、法制度的には全く手の届かないところでございますので、むしろ基本的には文部省のほうでもう少し強力なリーダーシップをもって整理してほしいなと。今、委員がおっしゃったような権限を都道府県に与えていただければいいんですけれども、恐らくこれはたいへんな議論がまた始まるんじゃなかろうかなといつも考えております。
  しかし、私たちはできるだけ私学とも一緒に、地域住民、保護者の方に混乱をさせないように、京都府では副知事などがキャップになりまして、府公私立高等学校設置者急増急減対策協議会(公私協)を開いておりまして、入学選抜におけるすみ分け、要するに受け皿、定数の問題を、5:5を4:6にするかというようなことは、毎回、京都の場合でも克明に、副知事が入って我々も一緒にやっております。今、一番大きな問題は、入学試験の推薦の日時を早くするか遅くするかという問題があります。最近は生徒数、児童数が非常に減ってまいっておりますので、私学も経営の問題から大ピンチになってくるということで、「公立は後にしろ」というふうな話をしてこられたりします。
  その辺は、いろいろ題材を出しながら、話し合いという点で協調を図っておりますが、法制度上の限界があります。我々も一生懸命協調の精神でやっております。京都府の場合は太いパイプで公私協をやらせていただいております。切らないように、切らないようにと、お互いが忍耐と寛容と言い合っていますが、そういうことをやっております。これは制度論として何かもう少し、きのうの教育課程審の中間まとめを読みますと、いろいろ自由裁量が出てくるようですので、すみ分けの大枠というものをもう少ししていただきたいという願望があります。我々として当面できるところは研修とか、協調で話し合いをしていくとかです。いろいろ意見はございますが、できるところをお伺いさせていただいているというのが各府県の意見じゃなかったかなと思います。
  もう一つは、教育長の選任制度の問題につきましては、先ほど意見の中で申しましたのがトータルの意見でございまして、これをどのようにしていくかの問題は、協力者会議で非常に大きな踏み出しをしておられますので、ぜひこの審議会のほうで前向きの御意見をまとめていただければという期待を持っているような状況でございます。

○  4ページの中核市への権限ということで、特に県費負担教職員の任命権の委任については、かなり慎重な検討ということですけれども、私自身も一律に中核市に任命権を委任するということについては疑問がありますが、条件の一定あるところ、例えば都市圏の中にある中核市の場合など、人事権を中核市の内部で動かしても、ほかの地域との格差はあまり生まれないのではないかとか、そういう条件のあるところでは、可能なところから私はやっていいのかなと考えていますけれども、その点について、どのような討議(委員会内部)の状況だったのかということをお聞きしたいんですが。

◎安原意見発表者    今、我々が現実に遭遇していますのは、政令指定都市には府県は教員の人件費は出しますけれども、任命権は持たないというふうな問題等がございまして、政令指定市問題というのは、地方自治制度ができてからいろんなことが議論されてまいりました。大都市が抱える一つの大きな課題として、今も歩んでおるところでございます。
  中核市にさらにそういう任命権などを分与していきますときに直近で問題になりますのは、財政構造改革の委員会でも決定されまして、義務教育教職員定数の改善数が10年度の分は3年間に分割されて出てくるという状況もございますし、これから平成17年ぐらいまでは少子化の中で児童生徒数もかなり減ってまいりまして、同時に教員の数もどんどん減ってまいるわけでございまして、地域におきましては、平均年齢が小学校の先生は50歳ぐらいになってくるところも出てくる恐れもあります。こういう地域アンバランスを是正するためには、広域的な人事配置をしないと、地域によっては、小学校のプールの指導をする先生が50歳代ばかりではどうにもならないというところが現実に出てくるわけです。
  京都府では既に数年前から広域配置をするために、市町村教育委員会に私自ら出てまいりまして、こういうデータがあるので、市町村教育委員会は縄張りをつくらずに、都道府県の広域的人事配置に御協力をいただきたいと。法律的には都道府県教育委員会でできるんですが、やっぱり内申もいただかないといけませんし、そういうことについて市町村教育委員会とギクシャクはできませんので、御協力を得る中で、先ほど離島の問題も出しましたけれども、これから広域的人事をしようとすれば、分権をすればするほど非常に難しくなってくる。そういう相矛盾する時代に立ってきておりますので、その辺をどういうふうにするかということをぜひ御議論いただければと考えております。

○  幾つかお伺いしたいこともあるんですけれども、1点だけに絞らせていただきますが、5ページの教育長の適材確保のところで、非常に慎重な言い回しだと思うんですけれども、端的に言えば、任命承認が廃止された場合に、「論点整理」では議会の同意とか、任期制とか、あるいは市町村について専任制とか言っているわけですが、議会の同意については、端的に言って都道府県の場合にはさして問題ない。しかし、市町村については消極的であると、こういうふうに受けとめてよろしいんですか。

◎安原意見発表者    大変おこがましい言い方ですけれども、恐らく都道府県の教育長さんは、いろんな市町村の現状を見ておられますので、そういう極端な例もあるので、今、委員がおっしゃったような趣旨を申し上げておられるのではなかろうかと考えます。

○  3ページの真ん中あたりに、「更に、保護者の意識改革にあたっては」というところで、「学級担任等の人事問題や学校行事の改廃などへの過度の関与……」ということがありますね。この辺のところ、例えばきのう中間まとめが公表された教育課程審議会の問題からも、それぞれの学校で特色のあるというようなことが述べられておりますけれども、こういうふうな非常に慎重な言い回しで言っていますが、学校というものを  ―私らにしてみれば、学校だけでつくるんでなくて、地域や保護者、みんなでつくり上げていかなければいけないというようなときに、非常に慎重な言い回しなんですけれども、その慎重な言い回しの裏面をちょっと聞かせてほしいということで、お願いしたいと思います。

◎安原意見発表者    教育については、府民のレベルまでおろして、いろんな教育問題についてお聞きしますと、一人一人いろんな意見を出されると思います。これはPTAとか、校友会の運営に携わっておられます教頭の御意見を聞いていましても、学校運営についての参加の仕方、その辺のところの在り方のすみ分けをしておられるPTAとそうでないところと千差万別あります。そういったすみ分けをしておられるところについて、PTAなり校友会がしっかりと自分たちのやるべきことを学校と申し合わせされて、自分たちのやることに専念しておられるところは、むしろうまく今までやってきていたんですが、今回の「地域コミュニティー」は、我々もこれからの行き方としては当然こういう方向に進んでいかなければならないということを覚悟しながら、課題を整理し意識的にやっていかなければならないと思っております。
  しかし、戦後民主主義における権利と義務の問題のように、権利だけ保障しても、義務はなかなか履行されなかった50年と言われますように、やはり地域にそういう意識が本当に醸成されていく中で、こういうコミュニティーづくりを提案していっていただければ、先の学校における受け皿と同じようにうまくいくのではなかろうか。
  ですから、地域・家庭の教育力低下という問題を我々はあまり言わないようにしておりましたけれども、そういう地域の力が、地域コミュニティーを形成していく高邁な理想に近づくような熟度が、住民レベルの中で熟成していっているということを前提にして、議論していただきたい。先に方策が出たからという場合には、現場は非常に困る場合が出てくる。そういう地域の熟度とともに、今後制度が成り立っていくことを願っていきたい、こういうつもりで書いております。

○  きょうは貴重な御意見をありがとうございました。これからの審議の重要な資料にさせていただきます。それでは、続いて、この審議会の専門委員でもございますが、広島市教育委員会教育長であります森元専門委員から、指定都市教育委員教育長協議会としての御意見を10分程度お伺いして、その後質疑応答を行いたいと思います。
  それでは、森元さん、よろしくお願いいたします。

◎森元意見発表者    今後の地方教育行政の在り方につきまして、政令指定都市教育委員教育長協議会として若干の御意見を述べさせていただきます。
  実は、指定都市の教育委員教育長協議会というものは組織としてはございますが、これは恒常的な事務局を持っておりませんで、この意見につきましては、調査研究協力者会議の「論点整理」によりまして、各都市から意見を徴しました上で、今回はその意見を取りまとめさせていただいた当番市という立場で、実は私は大変難しい立場にいるんですが、そういう立場で意見を述べさせていただきますことを御理解賜りたいと思います。
  なお、21世紀に向けた地方教育行政の在り方に関する調査研究協力者会議の「論点整理」に対する政令指定都市の意見を参考として、別紙の8ページから14ページに記載をしておりますので、また後ほど御覧をいただければと思っております。
  本日は、その中の大きく5点につきまして、お手元に御提出いたしました資料に基づきまして、意見を述べさせていただきたいと存じます。それでは、6ページを御覧いただきたいと思います。
  学校と教育委員会の関係でございますが、学校の自主性・自律性を確立し、特色ある学校づくりを行うとの観点から、「ア」から「オ」に掲げております見直しが必要であると考えております。
  まず、校長が学校経営の責任者としてその職責を全うできるような権限と、その職責に見合った処遇の改善を行う必要がございます。
  なお、「論点整理」にあります、学校経営に関し地域住民や保護者などに対して助言を求める仕組みについては、円滑な学校運営を阻害するものとならないよう慎重な対応が必要と思われます。
  「イ」でございますが、学校管理規則等による認可・承認を届出に改めるなど、教育委員会の学校に対する関与をできるだけ弾力化する必要がございます。ただし、学校の管理運営に関しての最終的な責任は教育委員会が有していることから、弾力化の内容につきましては、個々具体的に検討する必要があると考えております。
  「ウ」でございますが、教育委員会から学校に対する指示・命令や指導・助言は、必ずしも明確に区分されずに使用されている現状がございます。学校の経営責任を明確にするためには、これらの在り方の見直しが必要であると考えております。
  なお、政令指定都市におきましては、実情に即した円滑な運営がなされていることから、見直しに慎重な意見があったことも申し添えさせていただきます。
  「エ」、学校予算につきまして、各都市とも校長の執行権限の拡大には工夫を凝らしておりまして、今後とも実情に応じてさらに拡大していくものと思われます。「論点整理」にあります、予算要求を学校ごとに行うことにつきましては、事務量の増大や現在の学校体制を考えた場合、慎重にならざるを得ない状況にございます。今後、各学校は予算配分の方法、あるいは校長の執行権限の拡大によりまして、特色ある学校づくりが推進できると思われますが、この項目につきましては、各地方公共団体が自主的に検討する事柄であると思われます。
  「オ」でございますが、開かれた学校づくりを進め、地域との信頼関係の上に立って学校経営を進めていくことは、教育目標達成のために不可欠であり、学校が教育目標やその達成度を保護者や地域に明らかにすることは有効な手段でございます。ただし、「論点整理」にございますように、校長の自己評価報告につきましては、学校の自主性の喪失につながらないよう慎重に検討していただきたい事柄であります。
  校長権限の拡大が、単なる事務量の増加とならないよう、学校のスリム化や学校事務の簡素化・効率化を進めるとともに、事務量に見合った財源措置の検討も必要でございます。学校の自主的な取り組みを支援する観点から、教育委員会の機能について見直しを行い、学校にゆだねるべきと判断される事務については学校に任せ、教育委員会としては地域全体の教育課題に対応した施策の推進や学校の自主的取り組みを支援する機能に重点を移すよう見直しが必要であると考えます。
  次に、道府県と政令指定都市との関係でございます。
  政令指定都市につきましては、行財政能力から見まして、かなりの部分について権限委譲がなされるべきとの観点に立ちまして、次に申し述べます「i)」から「iv」について、御意見を申し上げます。
  「i)」でございますが、地教行法第48条の指導・助言につきましては、政令指定都市は人的にも技術的にも専門的な指導・助言の能力を有しているということから、道府県の関与は、特に広域的な観点から指導・助言が必要なもののみとする必要があると考えております。
  「ii)」番目でございますが、市立高等学校の設置などにつきましては、募集定員等にかかわって、県立、私立高校との調整が必要であることから、今後とも道府県の関与は必要でございますが、事前協議を前提とした届出制にすることで足りると考えております。
  「iii)」番目でございますが、国庫補助金等の申請手続につきましても、現在は道府県を経由いたしておりますが、道府県を経由しないで、直接国に対して行うよう制度化を図っていただきたいと考えております。
  「iv)」番目でございますが、大都市特例の範囲の拡大を検討する必要がございますが、道府県と政令指定都市との役割分担の在り方を見直すに当たりましては、その役割分担に応じた財源措置が必要と考えております。
  次に、7ページをお開きいただきたいと思います。教育委員会と私学との関係でございます。
  私学に関する事務につきましては、基本的には都道府県の所管するところでありますが、私学も公教育を担う地域の教育機関であり、中教審で提言されております「生きる力」の育成を重視した教育を進めるため、政令指定都市の教育委員会としても私学との緊密化を図っていく必要があります。しかし、私学が有する独自の建学精神や教育内容を尊重しながら、必要以上の介入にならないように配慮することが必要であると考えております。
  なお、ほとんどの政令指定都市におきまして、私学助成は教育委員会が所管をいたしておりまして、それらの都市では私学との関係は首長部局より教育委員会のほうが緊密であるということが言えます。
  次に、4番目でございますが、教育委員の数の弾力化や選任における工夫でございます。
  多様な地域住民の意向を的確に把握し、特色ある教育行政を行うに当たりましては、教育委員の数は各都市の実情に応じて選択できるよう弾力化すべきであると考えますが、教育委員の数と民意の反映は必ずしも結びつかないものでございまして、おのずと上限は定めていただく必要があると考えております。
  地域住民の意向を把握する工夫につきましては、公選制が首長の任命制に変更された経緯も踏まえまして、中立性・公正性が阻害されることのないよう、慎重な検討が必要であると考えております。
  次に、5番目でございますが、教育長の任命承認制度に代わる適材確保方策でございます。2点について申し述べさせていただきます。
  地方教育行政に関する責任と権限は、当該地方公共団体に属するものであるとの観点から、任命承認制度は廃止されるべきものであると考えます。
  地方分権推進委員会の勧告にございますように、任命承認制度の廃止に伴う地域住民の意向を反映するための方策等、教育委員会の活性化のための方策については検討が必要であると考えております。また、任命承認制度に係る議会の同意、あるいは任期制、適材確保策等、新たな制度の導入につきましては、教育の中立性・公正性の確保と地方分権推進の両面から慎重な検討が必要であると考えております。
  なお、任命承認制度に代わる新たな方策については、必要がないというふうな御意見をお述べになっておられます政令市の教育長さんがおられますことも申し添えさせていただきます。
  きょうは、御意見を申し上げましたのは5点でございますが、先ほども冒頭に申し上げましたように、他の部分にかかわりましての全般的な政令指令都市としての意見につきましては、「総論」「各論」のところで、8ページ以降にお示しを申し上げておりますので、それをまた御覧をいただきたいと思います。

○  一つだけ伺います。「4」「5」の教育委員の選任及び教育長の問題は、私も全くそのとおりと思いますけれども、その場合、いい人材を選ぶという観点から、教育長をどう選ぶかというような具体的な御議論がありましたでしょうか。

◎森元意見発表者    具体的な方策についての御意見といいますか、政令市12市の教育長が集まって、あるいは意見の中で、こういう方法が最もベターもしくはベストであるという御意見については、実はまだ出てないんでありまして、これから私ども政令市として、私がまとめておりますので、そこらあたりの具体論については、もう少し意見を承った上で、専門委員という立場の中でその意見等も踏まえて、そういう具体論についてお話をさせていただくということで御理解をいただきたいと思います。したがって、今のところは、12市の中からそういう具体的な御意見なり、あるいは御議論はないということでございます。

○  「校長の権限拡大とその職責に見合った処遇の改善」という表現になっているんですが、具体的に校長の処遇改善について、現行の校長の給与体系をどういうふうに、手当の部分で考えられているのか、本体自体の水準を上げるということなのか。それから、現在、校長、教頭、一般の教諭というふうになっていますけれども、校長の職責に見合って上げることも結構なんですけれども、全体として教員、教頭さんも含めて上げるべきだとも思うんですけれども、その辺のところについて何か具体的に検討されておれば、お聞かせいただきたいと思います。

◎森元意見発表者    教員の待遇改善という広い意味ではなくて、あくまでも校長としての権限強化を図るならば、政令市の教育長の御意見では、その部分については、例えば管理職手当を少し膨らますとか、あるいは校長としての給与体系を若干変えていくとか、権限に見合った報酬なり手当を十分にしてあげる必要があるのではないかということでございまして、教員すべてにかかわる給与体系、そのほかの見直しではなかったというふうに私は理解をいたしております。
  それでは、続いて全国市町村教育委員会連合会の常任理事であります内藤昭一さん、内藤さんは千葉県松戸市の教育委員会の委員長でございます。また、全国都市教育長協議会副会長の岩上進さん、岩上さんは埼玉県与野市教育委員会の教育長でございます。さらに、全国町村教育長会会長の伊藤義夫さん、伊藤さんは山口県楠町教育委員会の教育長でございます。お三人の方から、大変短い時間で恐縮でございますが、お一人5分程度で御意見をお伺いしまして、その後、お三人について10分程度の全体的な質疑応答をお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、まず内藤さんからよろしくお願いいたします。

◎内藤意見発表者    ただいま御紹介いただきました千葉県連の内藤でございます。本日は、全国市町村教育委員会連合会会長の委任を受けまして、同連合会の坂本義明事務局長とともに出席させていただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
  お手元の資料の15ページでございますが、そこに要旨がございます。その要旨に従い、要点を絞りまして、また若干の補足を加え、全国市町村教育委員会連合会としての意見を申し述べたいと存じます。
  初めに、私ども市町村教育委員会は、昨今の地方分権推進の流れの中で、またさきの中央教育審議会の御答申に示されました教育改革を推し進めます上で、従来にも増して重要な役割を果たすことを求められていること、また社会の期待の大きいことを痛感しておりまして、そのような認識を踏まえて、各都道府県の市町村教育委員会連合会に意見を求め、それらを集約したものを要旨として取りまとめたものであることを申し上げたいと存じます。
  私どもの意見は三つの柱からなっておりまして、1番目は「主体的な地方教育行政」、2番目は「学校運営の自主性の確立」、3番目は「地域住民との連携」ということでございます。
  まず1番目の「主体的な地方教育行政」に関しましては、地方教育行政の中核をなします教育委員会の主要な構成員である教育委員と教育長について述べさせていただきます。
  現行法規では、教育委員は5名と定められておりますが、地域住民のニーズに的確にこたえるため、市町村の規模、地域の実情、施策の必要性などに応じて、弾力化することが望ましいと考えております。
  また、教育長の任命承認の廃止につきましては、市町村教育委員会の自主性・自律性を高めるための措置として、基本的に賛成でありますが、従来、教育長の選任につきまして、任命承認の制度は一定のチェック機能を果たしてきたことを考えまして、したがいまして、任命承認制度を廃止する場合は、教育長の適材の確保を保証するための資格要件等につきまして、選任基準等を設ける必要があろうかと存じております。また、その職務の重要性にかんがみまして、特別職として位置づけ、それとともに専任化することが望ましいと存じております。
  2番目の「学校運営の自主性の確立」につきましては、まず校長の権限の拡大ということでございますが、現在目指しております教育改革を進める上で、教育委員会の学校への関与の在り方を見直し、学校の自主性・自律性を確立することが大切であります。また、教育現場の創意工夫、積極的な創造性を引き出すために、学校長の権限を拡大し、裁量の幅を広げることは極めて望ましい方策であります。具体的には学校管理規則、関係制度等の見直しが必要となりますが、学校や地域の状況には大きな差がありますので、実態をよく見定めた上での改定が望ましいと存じます。
  一方、学校長のリーダーシップを十分発揮させるためには、学校長を有効にバックアップする体制、あるいは制度の整備が必要かと存じております。
  さらに、学校長が望ましい学校経営を行うためには、有能な教職員の確保が必要でありまして、学校長の人事に関する具申権等を強化することが望ましいと考えております。
  教育委員会の学校への援助ということでございますが、従来、教育委員会の学校への関与の仕方は、法的拘束力を持ちます指示・命令とそれを持たない指導・助言という形でなされてまいりました。しかしながら、学校長に対します指導・助言も指示・命令に近い強い関与として運用された嫌いがありました。したがいまして、両者の在り方を正すためにも、改めて学校長の経営責任、また教育委員会の関与の在り方につきましても明確化する必要があろうかと存じております。
  なお、指導主事につきましては、現在、町村教育委員会には教科指導等の充実のための指導主事を置いているところが極めて少ないのが実情です。そのような学校を援助する教育委員会の機能の充実を図るためにも、県費による指導主事の増員に配慮する必要があると存じております。
  保護者・地域住民の意見の反映ということにつきましては、児童生徒の健全な育成のためには、学校・家庭・地域社会の三者の連携・協力がぜひとも必要でありまして、そのための組織化や制度を設けることが強く望まれると思っております。例えば、中学校区または小学校区を基準といたしまして、学校長を初め、学校側代表者、保護者、町会、児童民生委員、児童生徒の育成団体、地域の文化・スポーツ関係団体、地域の有識者等の代表からなる委員会などが考えられまして、そこでの意見、助言等を生かすことが、学校教育として有効であります。なお、そのような組織を通しまして家庭及び地域社会の教育力の活性化にもつながるものであろうかと存じております。
  3番目の「地域住民との連携協力」についてでございますが、今後、市町村教育委員会は学校教育とともに、従来にも増して生涯学習、文化、スポーツ活動の振興を通して、地域コミュニティーの育成、地域の振興に寄与する役割を果たしていかねばならないと存じます。このため、既存の図書館、公民館、青少年文化センター等の教育施設の事業展開とともに、各種民間団体、カルチャーセンター、スポーツクラブ、地域の大学等の多様な人材の活用を図る必要があり、このため、首長部局との連携協力を進めるために、協議会等の設置が望ましいと考えております。
  他方、これら地域の教育力を学校教育に活用することが望まれるわけでございますが、現在進められております教育改革の中で、地域社会、家庭と学校が新たな視点に立って連携協力を進めていく上にも、主として学外との交渉・連絡に当たる教頭の複数配置が必要であろうと存じます。
  なお、地域の教育力を活用するためには、講師採用の制度等についても見直しが必要であろうかと存じております。
  以上を、要点を絞りまして、7点にわたり意見を述べさせていただきましたが、さらに根源的な問題といたしましては、市町村教育委員会の多くが、人事、予算等におきまして、首長部局とのかかわりで実質的にその独立性、自主性が十分とは言えないのが現状でございます。それらを打開、改善するための諸施策や制度の検討が強く望まれるところでございます。

◎岩上意見発表者    与野市教育長の岩上でございます。本日は、都市教育長協議会の立場から、御意見を申し上げさせていただきます。
  ヒアリング資料は、18ページに要約を掲げさせていただきました。都市教育長協議会においては、39の都市から意見を聴取しまして、ある程度集約したわけでありますが、本日は時間の制約もありますので、努めて焦点を絞って申し上げたいと思っております。
  私は、第1番目に、教育行政ということを考えるときには、現行の教育基本法の第10条にうたわれている精神は変えないものという認識のもとに考えておるわけです。それは皆さんおわかりのように、一つは教育の政治的中立性の保持ということと、もう一つは教育行政は教育条件の整備を目的として行うんだと。要するに学校がやりやすい条件を整えることが教育行政の本旨なんだと。その本旨に基づいて物を考えたときに、私は、今回の改革も、改革のための改革ではなくて、ぜひ真に改善を必要とするものに論点を絞って検討されたいということを、まずお願いしたいわけであります。
  そのためには、教育関係諸法規が制定されてからおおむね半世紀がたつわけでありますが、その中には、現状と合わない部分も結構あるんですね。そのような御検討もぜひお願い申し上げたいということと、それから旧教育委員会法のもとでは、教育委員会は公選でありました。しかし、この制度は発足して間もなく全面改正されて、現行の地方教育行政法が制定されたわけでありまして、それから約40年、あまり問題なく今日になっておりますので、その実績は十分評価されなければならないのではないかと私は思っております。
  実態的に申し上げますと、教育委員会は現行のもとで、もう一つ基本的に考えなければならない点があるわけですが、それは教育委員会というのは合議体の執行機関である。議事機関ではないということです。そのことを考えますと、具体的に教育委員会の行政を執行するのは教育長でありますので、したがって、その職務の重要性から見て、適材者を得ることが教育行政上極めて重要な意味を持つということであります。そのために、教育長に人を得ることを最優先の方策と考えて、早急かつ慎重な検討が必要ではないかと思っておるわけであります。
  今後の課題といたしましては、人材確保の上から待遇面の改善。これは全国市町村まで考えれば、教育長の待遇というのは非常に格差があると思うんでありますが、その問題と、それから機能の充実を図るためには、特別職化が必要であろうと思っています。
  現在、市町村のほうは教育委員という身分において特別職として遇されているわけでありますが、もしこれを分離するということであるならば、教育長を特別職化することは絶対の条件ではないかと私は思っています。
  それから、任命承認制については、地方分権の趣旨からして廃止されるべきと思いますが、適材確保の上から、先ほど全国市町村教育委員会連合会の内藤常任理事さんからお話がありましたように、私どものほうも必要な資格条件を明示することが、一つのチェック機能になると私は思っております。
  次に、教育委員の選任等に関しましては、教育委員会が先ほど申しましたように合議体の執行機関であるということを考えれば、教育委員を人口規模において考えるというような説もあるわけでありますが、それは基本的に結構だとしても、数をいたずらに増やすことには限界があるのではないか。議事機関であるならば、私は数を増やしても構わないと思うんです。しかし、執行機関であるという性格からすれば、おのずから限界があるのではないかというのが私の考えであります。
  また、教育の政治的中立性の保持ということを考えれば、公選的な措置を講ずるということには、やはり問題があるのではないか。選ばれてきた結果、政治的な確執が委員会の中に持ち込まれる。それが旧教育委員会法時代の問題点だったと私は思っております。
  したがって、地域住民の意向を教育行政に反映させるということについては極めて大切なことでありますが、現行法を前提にして考えれば、これは制度上の問題というよりも、むしろそれは選任すべき首長、市町村長、あるいはそれを運営すべき運営上の課題、要するに意識の問題であり、運営上の課題ではないかというのが、私の基本的な考えであります。
  次に、教育委員会の事務局に関することでありますが、地方教育委員会事務局の体制は、教育委員会の生命である指導行政という点では、まことに貧弱であります。指導行政を進める人材が不足し、実態としては、特に研修機能等は校長会や教頭会に依存している状況があります。各教育委員会においては、事務局職員の資質向上に努めているところでありますが、現状ではままならないのが実態であります。この改善策につきましても、十分な御検討をお願いいたします。
  全体的に改善の方向に論議が進められると思いますが、教育に関する改革・改善の論議は、先を見越しまして慎重に行われ、成果を上げられるよう、十分な時間を持って吟味検討することをお願いいたします。

◎伊藤意見発表者    全国町村教育長会会長の伊藤と、同じく木村事務局長が出席をいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
  提出しております意見書は、20ページ、21ページでございます。我々全国2,500有余名の町村教育長がほとんど土曜、日曜日の休みもなく、連日努力しております職務上の課題について、理事会で集約をいたしまして、特に地方教育行政の刷新・充実のために、多年にわたり希求し、国及び都道府県などに要望をいたしております事項の中から、最重点課題としてまとめたものでございます。6項目ございますが、特に4点につきまして申し上げたいと思います。委員の皆様方の格別な御理解と御支援を賜りますように、切にお願いを申し上げます。
  第1は、地方教育委員会の活性化、指導体制の確立であります。
  第2に、教育長の特別職化の推進でございます。
  第3に、5項目目に挙げておりますが、義務教育費国庫負担法の制度の堅持について。
  最後に、6の項目でございますが、教育予算の確保について申し上げたいと思います。
  まず第1の地方教育委員会の活性化、指導体制の確立でございますが、先ほどの陳述の中にもございましたように、特に町村の教育委員会では、教育長が管理主事、指導主事、社会教育主事等の業務を遂行しなければならない実情でございます。今なお、一部を除いては、ほとんど指導主事が配置されておりません。また、派遣社会教育主事につきましても、全町村に配置されている県は九つの県のように聞いております。今後、さらに減少傾向が見られます。したがいまして、社教主事のほうは他の38の都道府県は半数または一部の町村のみの配置状況でございます。
  生涯学習の推進、学校における指導・助言を充実するためにも、全国すべての地方教育委員会に指導主事、派遣社会教育主事を必置することの法制化の推進をお願いしたいのであります。
  そのためには、財政措置としては、国及び都道府県並びに市町村がそれぞれの立場において、一定の負担割合を設定することによって実現を図っていきたいと希望しているものであります。
  第2に、教育長の特別職化についてでございます。これにつきましても、先ほどの意見の陳述にもございました。市町村の教育長は、御案内のように、教育委員としてはいわゆる特別職であります。教育長に任命されますと、一般職の身分でございます。教特法によりまして、給与あるいは勤務時間等については個別の条例で定められているところではございますけれども、身分がこのような状態にあるわけであります。教育行政の重要性とその職務の内容から、首長や助役の職務に準ずる町村での地位でございます。また、教育長に適材を確保するためにも、ぜひ教育長の特別職化の実現につきまして、御検討、御推進をいただきたいものでございます。
  3点目でありますが、義務教育費国庫負担法の制度の堅持につきまして。これは申すまでもないことでございますが、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図る義務教育の推進・充実は、国の行財政施策による責務であります。いわゆる国家の義務教育が責務でございます。行財政改革の推進は理解いたしますけれども、百年の大計である義務教育について、市町村間の不均衡や格差があってはならないと思います。したがいまして、ぜひ現行制度の堅持をお願いいたしたいのであります。
  つけ加えますと、交付税措置による拡大が、現在、相当広がっておりますので、ここに歯どめをかけて、義務教育費の国庫負担制度をぜひお願いしたいと思うのであります。
  最後に教育予算の確保についてでございます。これも申すまでもございませんが、現行では教育委員会は全く予算権限はございません。そのため、とかく年次的・計画的な教育行政の運営に苦慮している現状でございます。各町村の実情によりまして、財政上やむを得ないというところもございますが、今後、適切な教育予算の確保ができるような制度化についても検討をしていただき、推進方をお願い申し上げるところであります。
  以上で、意見の発表を終わりたいと思います。

○  今、御発表になりました岩上さんと、それから伊藤さんにお伺いいたします。
  教育長の職務が大変であるということはよく存じておりますけれども、教育長としての必要十分条件というのはどういうものでございましょうか。
  それから、待遇改善で特別職化というふうにおっしゃってられましたが、それをおっしゃられるのは、助役などと対等に交渉する職位のゆえなのか、あるいは専門性のゆえなのか、その辺のところもお聞かせいただければと思います。

◎岩上意見発表者    まず一つは、教育長の必要条件ですが、これは何といっても今の教育委員会が、教育委員さんのレーマンコントロールという趣旨からすれば、教育長は教育に関して専門性が問われていると思うんです。ですから、教育長としての資質ということになれば、教育行政あるいは教育運営といいますか、そういうものに対する専門性が条件になるのではないかと思います。ただし、現状では、首長部局等から行政職の方も入っておりますから、そういう意味では、行政職の方がなった場合には、次長等が教育から上がっていって十分補佐しておりますから、副次的に考えることも必要だろうと思いますが、いずれにしても行政的、教育的に専門性を有することが第1条件ではないかと思っています。
  2番目の、特別職をどうして唱えるのかということですが、これは私は3点あると思います。
  一つは、今おっしゃったように、職位上の問題がございます。これは教育行政というものの地位にかかわる問題もありますので、教育の重要性を考えれば、その長たる者は助役、収入役と肩を並べて結構なのではないか。一般の部長並みになることはむしろ問題があると私は考えております。
  それから、それよりも特別職であるということによって、人材を広く確保することができるんじゃないかと思うんです。御存じのように、一般の職員であれば、大体エスカレーター式に下から上がっていくというのが普通ですから、特別職化することによって人材を広く確保する。これがもう一つのねらいだろうと思います。
  もう一つは、先ほどちょっとお話がありましたけれども、教育長の実際の仕事というのは、土曜も日曜もないのが実態なんですね。そういう勤務態様ということからいっても、そうは言いながら、毎日、一般の職員と同じように朝8時半から規定の時間を勤めているわけですが、そういう問題もありますから、身分的には特別職化することによって、その辺の保障をすることも必要ではないか。ただし、特別職にすることによって、地公法上は政治活動はできるようになっていますが、教育長の場合は地教行法の定めるところによって、政治的活動は制約を受けることは当然だろうと思っております。

◎伊藤意見発表者    まず、教育長の資質の件でありますけれども、特に私ども町村の立場からいたしますと、先ほどおっしゃいましたように、専門性、これは当然の第1条件でございますが、加えて現行のままでありますというと、先ほど申し上げましたような指導体制が十分でございませんので、教育行政の経験と教育現場の経験と両方を備えられたような適材が確保されれば、教育長の資質としては大変ありがたいと思っているところであります。
  もう1点の、助役と教育長との関係についてでございますが、これは御案内のように、助役は首長のもとにおける、いわゆる一般行政のまちづくりの中枢にある責任者であろうと思います。それから、教育長は教育委員会教育委員としての立場と教育行政の執行責任者としての立場とございます。したがいまして、同列にどうかということを申し上げることはできませんが、教育長の立場とすれば、教育行政によるまちづくりの推進の責任者であるというように私は考えております。
  例えば、現在、各市町村が本腰で進めております生涯学習社会の構築、生涯学習のまちづくりは、まさにその専門的な立場から推進しているのは教育委員会でありますし、その中核になりますのは教育長でございます。したがいまして、生涯学習は一般行政とあわせてやるものでございますけれども、実情を申し上げますと、教育長と助役と申しましょうか、一般行政との職務上の違いは当然あるのだと思っております。以上でございます。

○  2点、お聞きします。明確に書いてある全国市町村教育委員会連合会の方にお聞きします。一つは、ほかの団体もあるんですが、今の議論にかかわって、教育長に求められる資質ということと、教育長に適材確保のための基本的な条件、資格要件とか、明確な基準を設けろということは同じようなことだと思うんですけれども、具体的にどのような資格要件とか、基準をお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  私自身は、正直言いまして、教育長に求められる資質というのはいろんな考え方がありまして、教育職出身者、行政職出身者という方々をいろいろ見てみると、全然タイプも違い、そうした多様な方々が教育長になれることはよいことだと考えておりますので、必ずしも学校現場の経験が必要だということも考えていません。ですから、教育長に適材を求めるための資格要件とか、基準をどう設定するかによって、かえって教育長を選ぶ際に対象を狭めるという危険もありますので、資格要件とか、基準を具体的にどう考えているのかということをお聞きしたいと思います。
  二つ目は、16ページのところに、「学校への活用」ということで、特に教頭の複数配置の問題等々にかかわった提言があります。私もこれから学校の問題というのは、校長、教頭、主任を含めた管理職スタッフの任用の在り方とか、職務の在り方等が、かなり重要な課題になってくると思いますけれども、ここで教頭の複数配置といった場合に、教頭の任用の問題とか、職務の問題をどのように考えられていて、ほかの主任とか、学校事務職員との連携とか関係、職務分担など学校の組織編成の在り方をどう考えているのかということを、これに絡めてもう少し具体的にお聞きしたいんですけれども。

◎内藤意見発表者    それでは、市町村教育委員会連合会のほうから考え方を述べさせていただきます。
  まず第1点の教育長についての資格要件ということでございますが、これは既に都市教育長協議会、それから町村教育長会の代表の方からお話しになりましたとおりでございますが、私もほぼ同様に考えておりまして、教育行政あるいは教職関係の経験者ということが大事ではないかと思っております。ただ、そういたしますと、学校教育の面ばかりが非常に強くなるという嫌いがあろうかと存じますが、そういう点では、もっと広い立場から教育長の適材を考えられてよろしいかと思いますが、基本的には教育行政並びに教職経験がおありになることのほうが、基礎的な条件としては望ましいのではないかと思っております。
  もちろん教育委員会に課せられます課題は、学校教育のみならず、現在進められております生涯学習社会への移行ということで、その方面での見識がかなり高く求められておりますので、ただいま御質問のように、あまり狭い範囲で選びますと、かえって適材を得られないということにもなろうかと存じますが、やはり学校教育が基本的には重要な部分をなしておりますので、基本的には教育行政、教職経験のある方が望ましいのではないかと思っております。
  それから、教頭の複数制ということでございますが、教頭は従来は学校内部の教員の関係を調整するとか、子どもを教育する教科の面におきます学校長の補佐役としての役割が主でございますが、現在はさらに地域社会との連携、あるいは家庭との連携というふうに、学外との関係が非常に強く求められるようになっておりますので、今の御質問の御趣旨と同様に、学校長を補佐するスタッフの整備は大変必要であろうかと存じます。
  これも既に委員の先生方、また専門委員の先生方、御承知のとおりでございますが、学校現場に課せられております課題というものはあまりに多うございます。教員は本来の教科を教えるということが一つございますが、それ以外に課外活動、それから進学、就職、学校給食、家庭訪問、それから巡回補導、生徒指導でございますとか、日常の生活上のしつけ等々、いわば家庭及び地域社会が担うべき事柄をすべて学校が引き受けている現状がございます。そういう点で、過大な役割が学校教育に課せられておりますが、それに加えて、先ほど申し上げましたような生涯学習社会への移行に伴う、学外との関係がまたその上に加わってまいります。それから、ちょっと申し落としましたが、最近はさらにカウンセリングなども教員に求められておりまして、ますます過大な課題が学校に課されております。そのような実情ですので、対外的な渉外活動の重要性、さらには学校における危機管理等の問題もございます。学校長の特命事項を請け負うような、学内の教科あるいは職員の連絡調整等を受け持ちますいわば内政担当の教頭と、それから外政担当の教頭がどうしても不可欠であろうと思っておる次第でございます。

◎岩上意見発表者    教育長の選任基準のことですけれども、皆さん御存じのように、旧教育委員会法時代は教育長の免許状が必要だったわけですね。免許状を廃止して、現行法のもとで承認制が生まれてきたと思うんです。例えば他の地方公共団体では、教育委員4人がみんな教育長の経験者で、教育長さんが素人なんです。だから、校長人事やなんかをお話ししても、持って帰るとひっくり返ってしまうようなところもありました。
  そういうことやなんかを考えて、首長さんがしっかりした意識を持って、しっかりした選任をすれば、私はなんの制約も要らないと思うんですが、そういうこともまんざらないわけでないとするならば、チェック機能として、せめて地方自治法上の措置要求ですね、その幅を残しておく必要があるのではないか。要するに、承認制というのは、あらかじめ文部省なり都道府県の教育委員会が承認しなければ任命できないんですね。そうではなくて、問題があるときにはチェックをすることができるんだと。そのためには、現行の地教行法の中に指導主事の資格要件をうたってあるんですけれども、せめてあの程度のことをうたっておく。そのことによって、チェック機能を果たすいわゆる措置要求の余地を残しておくことが必要ではないかというのが、私の具体的な提言です。

○  全国市町村教育委員会連合会の内藤さんへの御質問なんですが、校長の権限の拡大をするときに、学校や地域の状況には非常に差があるので、権限の拡大には地域の実態に即してきめ細かい施策を講ずる必要がある。また、教職員の人事の扱いにも配慮が必要であるというふうに、15ページの下のところで言っておられるわけですが、これは具体的にはどういう御議論の結果かなということをお教えいただけたらと思うわけです。
  権限としては一括したもので考えていくのかなと思っていたんですけれども、さらに権限としても地域の実情に即したようなものを考えていくというような御議論なんでしょうか、ということが一つです。
  もう一つは、16ページにございます、「保護者、地域住民の意見の反映」というところで、三者連携ということが書いてありまして、御説明では、いろいろな団体の代表の委員会のようなものを構想しておられるようですが、これは教育委員会対応の委員会あるいは協議会のようなものをお考えなのかなと伺ったんですけれども、校長先生をサポートするという意味では、学校単位ということもあるんだろうと思うんですが、そのあたりの御議論の御様子もお聞かせいただきたいということでございます。

◎内藤意見発表者    2点の御質問がございました。1点は、校長の権限の拡大ということでございますが、これは最も大事なのは、何といっても教育現場でございます。そこの創意工夫、積極的な創造性を引き出すためには、学校長の権限を拡大し、裁量の幅を広げることが望ましいことでございまして、これは必要な方策であろうかと存じます。
  地域の実態ということでございますが、率直に申しまして、学校長の学校内の取りまとめが比較的容易なところと、それから地域によりましてはなかなか難しいところがあるようでございます。そういう点で、学校長の権限の拡大ということが、従来は教育委員会の指導のもとに  ―これが従来、やや過度であったということを言われておりますけれども、これからは適正な教育委員会との関係の中で、学校長がリーダーシップを十分発揮して学校経営をしていくわけでございますが、その点において、内部的に若干難しいところもあるのではないか。そういうところでは、学校長のリーダーシップを十分発揮させることができる保障と申しますか、教育委員会も含めましてバックアップできる体制、制度の整備が必要であろう。やはり地域の格差がいろんな意味でございます。そのようなことをよく見定めました上での学校管理規則、あるいは関係制度の改正が必要であろうということでございます。
  第2点の、三者連携の委員会のようなものはどういう意味合いかということでございますが、これはあくまでも学校を単位とした、例えば中学校区とか、小学校区でもよろしいかと思いますが、私どもの市としましては中学校が現在21校ございますが、中学校区で全市をカバーできるような形をとっておりますので、中学校区等を基準にして三者の連携を密にできる、学校教育にも役立ち得る、かつ学校長をあくまで補佐するというか、助言し、学校教育にプラスになるような形での、そういう三者の協議会が必要であろうかと存じます。
  ただ、その結成につきましては、教育委員会が何らかのノウハウを提供するとか、指導・助言を適切に行う必要があろうかと存じますが、あくまで学校単位の、学校長の学校経営に資するような三者の連携を基本的には考えております。

○  3点ございますけれども。きょう、お三方においでいただいているわけですが、お三方に共通して2点ございまして、あと1点、伊藤先生に、加えて御質問がございます。
  一つは確認ですけれども、お三方とも教育長の身分等に関しまして、任命承認の廃止と、それから専任化と、特別職化について、かなり共通性をもってお話があったと思います。これは3点セットと考えられているかどうかが1点です。ばらけて考えている余地があるかどうか、お伺いしたいと思います。
  二つ目は、資格の問題で、ほかからの御質問があって、また一部お答えの中に出たと思いますが、いわゆる経験的な資格といいましょうか、教育職であったり、行政職であったりというお答えがあったんですけれども、例えば免許の問題  ―かつて免許制がありましたが、新しい形での免許の問題や、それにたぐいした資格、あるいは加えて研修制度等の御論議があったかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  最後に、伊藤先生に対するご質問ですけれども、口頭でお話しにならなかったところで大変恐縮なんですけれども、いただきましたレジュメの3点目の小規模教育委員会の在り方で、統合する方向ではなくて、個々の委員会を存続してという御主張があったと思います。その背景的なことは理解できると思うんですが、例えば1番目に強調されました活性化の問題との絡みですね。なぜ統合の話が出てくるかといいますと、言うまでもなく、現状の規模では活性化が図れないという脈絡から出てきていると思います。この辺のつながりをどう御説明いただけるのか。以上、お答えいただければありがたいと思います。

◎伊藤意見発表者    共通した課題もございましたが、最後の小規模委員会の在り方のことでありますが、時間がございませんでしたので、申し上げなかったわけですが、ここに表現しておりますように、我々とすれば、各自治体ごとの委員会制でありますので、これを小さいからといって共同設置にするとか、あるいは統合するという方向は考えていないわけでございます。広域交流のことを書いておりますが、これはまた時間がございましたら申し上げたいと思いますけれども。
  活性化との絡みにおきましてどうかというお尋ねでございます。教育委員会の活性化は早くから言われておりますが、この「活性化」という言葉の中身ですが、私どもはいろんな領域があるわけでありまして、まとめて活性化、活性化と。したがって、小さい教育委員会は活性化がなっていないと、一般的にこう言われておるんですけれども、私は決してそうではないと思うんです。これに加えて言うならば、ヒトとモノとカネであります。これがそろいさえすれば、活性化するわけであります。規模の小さい、つまり財政規模の小さいところで、これを満足することは到底できません。したがって、一方では、先ほど私は会の代表として申し上げましたように、指導主事、あるいは派遣社会教育主事、こういう指導職員の充実が、活性化の一つの大きなポイントになろうと思っているところでございます。
  しかし、少人数ながら、職員とすれば小さいながらも精いっぱい活動しているわけです。これを活性化と見ていただかなければならない一つの論点であろうと思うんです。規模の大きい、何千万の人口のある教育委員会の活動と、規模の小さい委員会の活動とをどう比較して見られるかというところに、私は一つの視点があろうかと思っております。先ほどお尋ねの、小規模のためにどう活性化を図るかということのお答えにはならないと思いますけれども、基本的な考え方としては、私ども小規模教育委員会の立場からはそのように考えて、今後も一体となって首長のもとで推進して、まちづくりのために努力してまいりたいと。これは、全国の町村の教育長の考え方、あるいは実践については、どなたも同じであろうと申し上げて過言ではないと私は思います。

◎内藤意見発表者    それでは、教育長に関連いたします御質問にお答えさせていただきます。私の理解では、任命承認制度の廃止と、特別職化、専任化、これが3点セットかということでごさいますが、これは必ずしもそのように考えておりません。まずは任命承認制度の廃止は、地方分権推進の流れの中で進むことでございまして、地方教育委員会の自律性を高めるという点で、まず第1に重要なことであろうかと存じます。そのようにますます重要性が増します教育委員会のかなめであります教育長でありますがゆえに、特別職化し、かつ専任化することが必要となろうと、そのように考えております。

◎岩上意見発表者    まず、3点セットかどうかということは、結果であります。そう考えたわけではありません。
  それから、教育長の専任化の資格の問題ですけれども、私個人の考えを率直に言うならば、地方分権の趣旨からして承認制は不要なんだということであれば、私は全くそういうことを考える必要はないんだろうと思うんです。というのは、教育長の仕事というのは、地教行法に明確にうたわれているわけでありますから、その仕事に耐えるか耐えないかが基準であります。したがって、選任すべき首長やそれを承認すべき議会が  ―現行法のもとでですけれども、そういうシステムが保持されるならば、首長が選んで、議会が承認するという洗礼を受けるならば、私は何の条件も必要ないんだろうと思うんです。ただ、さっき申したように現実的な問題があるならば、自治法上の措置要求の余地を残しておく必要があるのかなと私は思っているわけです。だから、気持ちとしては、旧教育委員会の免許状に近いような細かな規定を設けることについては、むしろ私は反対であります。

○  お三人の方には、大変お忙しい中を御出席いただいてありがとうございました。いただいた貴重な御意見は、これからの我々の審議の重要な資料にさせていただきます。
  それでは、ただいまのヒアリングの内容なども踏まえながら、「市町村・都道府県・国の関係」、それから「地域住民と教育委員会との関係」、さらに「教育委員会の組織・体制の在り方」、こういった点について、これから御議論をお願いしたいと思います。時間の関係もありますので、テーマごとにやりませんで、三つの事柄についてあわせて御意見をいただければと思います。
  中教審の答申を踏まえての、きのうの教育課程審の中間まとめが取り上げられておりましたが、そういったことを実現するためには、地方教育行政がどうなっていくか、これが決定的だと思いますので、そういう点からもいろいろ審議をお願いしたいと思います。

○  今ほどヒアリングでいろいろなことをお聞かせいただいたんですけれども、私、ずっと聞いていまして、どうも考えていることが違うんじゃないかなという感じがものすごくしたんです。現行法でとか、非常に枠にとどまった考え方ばかりなさっていたんで、中教審のところでは今までそんなことはなかったんじゃないか。いろんなことを考えて、それを破るために、現行法もどういうふうに変えていかなければならないかという考えで進んできた中で、何か枠にとどまっての考え方を述べられていたのが非常に感じられたので、ちょっと違うんじゃないかなと。もっと前向きに、現行法などは度外視しても、こういうふうにしたらもっと地方の教育行政がよくなるんだという方向を示してほしかったなと私は感じたんですね。ですから、自分たちの立場を堅持するとか、守るというものでなくて、もっともっと前向きに、大きな改革を望んでいきたいなと思って聞いていました。

○  きょうの話をいろいろ聞いていまして感じたことと、もう一つは、この諮問が出たときに、たしか事務当局のほうから、地方分権推進委員会から出たことについては、特に法律事項については、できるだけ早く結論を出してほしいと。具体的には任命承認の廃止ということだろうと思うんですけれども、きょうのヒアリングの中でも、例えば任命承認を廃止すれば、もうそれだけでいいんだという考え方もあるかもしれません。しかし、そうは言っても、議会の同意があるから、そこは縛られるじゃないかという御意見もあったわけですが、議会の同意というのは教育委員としての議会の同意であって、教育長としての就任についての議会の同意でないわけです。また、専任化してくれという意見も、市町村の場合にありました。専任となれば、議会の同意が今の仕組みでは、ない。そして、特別職にしてくれと。特別職にするということは、一般的には議会の同意にかかるということで、時間があれば突っ込めたんでしょうけれども、どこまでその辺を整理して意見を言っておられたのかなという感じが正直に言っていたしました。
  この問題は、私も協力者会議のメンバーとしてやりましたときに、正直言って、方向性がなかなか見出せなかったわけです。言葉は悪いですけれども、羅列的に議会の同意であるとか、任期制であるとか、あるいは市町村の教育長の承認制であるとか、いわば事柄を並べたような感じがするわけで、地方分権推進委員会から出されたことについて、早く結論を出して改正作業をやらなきゃならんとすると、もう少し突っ込んだ議論をここでする必要がある。ただ羅列するのではなく、方向性を見出した議論をする必要があるのではないかという気がいたします。私自身、どういう方向でこれに臨んだらいいかというのは、実はまだよくわらないでいるというのが正直なところでございます。

○  本日の教育長の意見をお聞きして、やはり新任教育長の徹底した初任者研修が必要だと思います。校長も教員も初任者研修をしていますから、教育長も、市町村教育委員会教育長もどこでやるかということもありましょうけれども、それなりの研修が必要かと思うんです。初任者研修の一つの視点としては、改革の意欲とか、行政能力の育成など、ものすごく大事ではないかという感じを受けました。
  それから、首長は選挙でもって選ばれますから、住民に対してサービスというか、自分が住民の中に入って意見を聞いたり、積極的にやるということはしていますけれども、果たして教育長や教育委員会が積極的に住民の中に入って、アカウンタビリティーではありませんが、説明等を受けていく、あるいは批判に耐える、そういったことがどれだけなされているのか。ただ議会で答弁していれば済むのかという感じを持ったわけです。

○  今の御意見は重要だと思います。と申しますのは、きょういただきました発言の要旨を見ますと、教育長の適材者を得ることが大変困難である。しかし、人を得ることは最優先の方策であるというようなことを、全国都市教育長協議会でも書いておられますし、さらに一歩踏み込んで、全国市町村のほうでは、「実効を伴う明確な基準等を設置する必要」ということまで述べられて、現場の方はそれを痛感しておられると私は受けとめたいと思います。
  ただ、どなたか御質問なさったときに、特にそれについての具体的な御発言はなかったのですけれども、一方、ある方からは研修ということを考えておられるかという質問をされて、私もそのとき、なるほどなと思ったんですが、今の御発言を伺ってみて、やはり何か勉強してもらわなければだめだろう。それから、住民と議会に対して教育長は責任を負っているわけですから、もう少し積極的などんな人が選ばれてきたのかということを、住民と議会のほうに、質問を受けて答えるのではなくて、逆に積極的に乗り出していって、「私はこういうことをしたい」ということを述べることが非常に重要ではないかと思います。

○  教育長としての必要十分条件という御質問があり、それに対するお答えがあったと思うんですけれども、伺っておりまして、教育長に求められるものがかつてと変わってきていると思うんです。ここに出てきている文言で言えば、地域の教育力ですとか、地域コミュニティーの育成ですとか、そういったことに教育委員会や教育長がもっと積極的なかかわりを求められるようになってきている現状があるとすれば、これから先、教育長には、今までのような教育行政や教育の実際的な経験以上のものが必要となってくるに違いないというふうに感じました。
  ですので、地方行政全般についての視野をお持ちで、その中で教育が果たす役割、意味みたいなものもわかっていらっしゃって、なおかつ教育に関する実際的な経験もあれば、さらにいいというような、大変重要で重たい任務をこれから教育長は担っていかなくてはならない。そのことの認識があって、しかもそれが可能になるような研修制度を含めたものが決められて、初めて特別職というようなことが考えられていくのではないかと思いました。そこで、今までの学校教育を中心とした教育行政や教育の経験のある教育長という考え方は、もうそろそろ離れてはいかがかなと思っております。

○  まず、教育行政あるいは学校教育にかかわっては、公式の形でお話をすることが難しい面が非常にあるように、私は常々思っているわけであります。きょうのヒアリングにつきましても、短い時間で制約もあったということもあるんですが、当然のことですが、語りにくい部分は語られなかったという部分がありまして、前段としましては、そのことに関してやはりきめ細かい情報を今後集めていって、見極めをした上で、方針を示すことが大事かなと思ったわけです。
  例えば一つ申し上げますと、きょういただいた資料の20ページに、小規模教育委員会の在り方というところで、例えば小規模教育委員会を統合する方向ではなくて、交流の制度化を図るというような御意見が出されているわけであります。実はきょう、どなたからも、例えば指導主事あるいは派遣社会教育主事が必要であるということが出されていますが、これも例えば統合のような広域化の方向でいくと解消の方向になりますし、それから人材確保についてもメリットがあるわけでありますけれども、それに対しても独自性を維持することが重要であるということになりますと、そこに何らかの事情があるはずなんですけれども、その部分についてはお話がございませんでした。
  実はそこには、私も10年前ぐらいに、今の仕事に就く前に教育事務所に勤務していまして、当時、26市5町1村の教育委員会と深くかかわりを持っていまして、私はお話を伺いながら、たぶんこんな事情があって、独自性維持ということを言われているんだろうなと、私はそのような経験で補って考えておりましたけれども、その経験がないと、この文言だけではちょっと理解できないところがあるように思います。例えば、そのようなところを今後、情報をきめ細かく収集していって、そのあたりの見極めもしながら方針を決めることが大事かなということを、きょうは思った次第であります。

○  教育長の人材確保についてですが、先ほどのヒアリングで、任命承認制の廃止、専任化、特別職化、この3点が議論にのなっておりました。教育長は公務員であるという枠組みの中で、どういう人材確保ができるかということを踏まえないと、人材確保と言っても、条件が限られているかと思います。その限られている条件の中で、市町村の場合は教育委員との兼任ということで、教育委員が幅広く選べるという中での、人材が確保できるという方策があったかと思っております。
  市町村では民間から教育委員になり、教育長になることができますが、県では行政職の専任ですから、行政職か教育公務員以外は教育長になれないという中で、特別職化という話は、むしろ幅広い人材確保の方策でもあるわけです。また、教育行政において地方教育委員会は非常に困難な厳しい状況にあることも事実でございます。それは立場が非常に弱いということ、人事権も予算権もなく、地方分権の中で自立せよと言われる中で、きちんとした立場の確保という点で特別職化は意味があり、今回の地方教育行政の見直しの中でぜひお願いしたいと思っております。
  市町村の場合には、そういう意味では、今、市町村すべてが一律に扱われておりますが、例えば教育長の場合にも、教育委員との兼任化で、よりいい人材を確保できるならばそれも可、むしろ専任化して特別職化する方がよければそれも可、そういう選択を市町村の規模や財政事情によりできるようなシステムも必要ではないかと思っております。
  なお、前に私、兼任化より、専任化のほうがいいと申し上げたのは、私自身の体験からでございます。兼務するといいましても、非常勤職員である教育委員と、一般職の公務員であるということになりますと、全体の行政の中では極めてあいまいな立場です。あるときは非常勤職員扱いで、市町村によりましては教育長は実質的に非常勤、週に3日来ればいいと言われている。あるいは、研修の話が出ましたが、文部省や県がしている教育長の研修会のへの参加も、自らは予算措置ができないという立場の教育長も大勢おります。そういう意味では、兼務であるためきちんとした立場を確保しきちんと責任を持つことができず、あいまいな任用の仕方や運用であるなら、専任化・特別職化ができるところはした方がいいのではないかと思っております。
  もう一つ、中核市は、連絡会をつくりまして、地方分権に大変熱気をもって頑張っております。その中で、文教行政についてどういうことを望んでいるか、それぞれ問い合わせをした調査がございますが、教育委員会は皆、非常に不安といいますか、静かでございます。任命承認制の廃止も含めて、積極的に賛成しているところが少ない。なぜかという点に、これからの地方教育行政を考えていく大きな問題があるのではないかと思っております。それらが文部省の強いリーダーシップのもとに、きちんと解決されることが重要ではないかと思っております。
  3点目ですが、先ほど中核市への教員の任命権委任は広域的行政の点から問題があるというお話がありましたが、もし広域的行政ということだけであるならば、現実問題としては、広域という意味のエリアをどう考えるのかという点が一つポイントになるかと思います。では、全県的に人事異動ができるかといえば、それは極めて困難であります。義務教育では女性教諭が多く、果てから果てへと家族を分割しての人事異動は現実にはできないわけでして、具体的に教員の資質向上と、より学校を活性化するという意味の広域的な人事異動について、再考お願いしたいと思っております。
  同時にこのことは、現実には県教委と教職員団体とのいわば覚書による人事異動のほうが、市町村教育委員会の権限よりもはるかに強いわけでございます。人事にかかわる問題は、もちろん県が任命権者として大局的にいろいろとなさる必要があると思いますが、広域ということを単に全県域というふうに考えると、現実には機能せず、また多くの課題を抱えていると思っております。以上でございます。

○  前にもお話ししたように、私どものほうは3町で、教育委員会の職員を1年間人事交流をするということで、今、実は相談をいたしております。そのほか生涯学習事業も3町で一緒にやれないかという相談をいたしておりまして、そういったこともこれからは考えていかないといけないのかなという感じがいたしております。
  2点目といたしまして、教育経験があるとか、教育行政経験があるとかで、教育長を選ぶということだけでいいのかなと。ということは、先ほどからも出ておりました生涯学習のまちづくりということで、これからは生涯学習時代に入ってまいります。町当局との連携が密接に必要になってきますので、そこら辺、もっと弾力的な教育長の人材確保に努めてもいいのではないか。いずれそういう時代でないのかなという気がいたします。
  第3点目、人事も予算権もないというのも事実でして、町の動きによって教育委員会の予算が、その年に多くなったり少なくなったりという、これ自体が教育の機会均等という点で問題があるのではないかと思います。
  そうなると、昔は予算権があったとかというお話ですが、教育委員会にはこのくらいの予算を使ってもいいとかということができないのかなと、実はいつも悩んで、特に教育委員会の学校関係の予算は削られがちだという実態があるわけで、そういったことも考えていただけるとありがたいと思います。
  これも前に申し上げましたが、学校が地域に開かれていくということの一つの条件として、やっぱり社会教育主事といった方が学校にいて、中学校単位に一人とかでもいいわけですが、密接に教育委員会と連携を取り合っていけば、地域に開かれていくかなと思います。
  それから、地域と学校と家庭の三者というお話が出て、学校を包み込んでいくというお話が出ておりましたけれども、社会教育委員とか、公民館運営審議会には学校の校長先生を入れるという条例や、社会教育法の規定にもありますが、社会教育委員も地域の住民の代表が入っておりますので、そこら辺の兼ね合いをどうしていくのかなとちょっと考えたりもいたしております。

○  今のお話と若干関連するようなことになるんですけれども、今、教育委員会といっても、学校教育から社会教育、生涯学習、文化まであるわけですね。それをだから、首長部局で文化などをやっていれば、そっちのほうはいいという場合もあるわけです。教育委員会自体がどういう所管というか、事業を抱えているかによって、教育長の問われる資質も変わってくるのではないかということが一つ。
  それから、専門性というのはもちろん教育長に必要なんですけれども、どうも教育長の皆さんは、現場体験があるということに比重を置かれたんですが、掌握している、執行する事業によってかなり違ってくる。つまり、高度の教育的な視野を持つ人物という意味合いなのか、その二つの選択があって、どっちに比重があるのかということなんですけれども。
  それともう一つは、行政職的な手腕というのと専門性という、この両方を兼ね備えたものがないといけないということなんですけれども、どっちにポイントを置くかというところは、私の考えなんですが、専門性のほうを先にとって、行政的手腕というのは、そこには事務局があるわけですから、教育長を補佐する事務局で強力な手腕がある人を置くとか、スタッフの問題とも絡むと思うんですけれども、どう思われますか。

○  例えば教員免許制度が変わりまして、学校長はこれから専修免許が必要になってくるという形で、教員全体の高学歴化が進んでくる。そうすると、十分条件というのはいろんな要件がありますから、一概に言えないんですけれども、必要条件の問題として学歴みたいな問題を考えていいのではないか。これからの話です。
  そうした場合に、例えば教育養成系の大学院が各府県にできている。その中で、現在、科目等履修の制度をどうするかというのを論議しているわけです。現職の先生方が、例えば15年経験があるならば、6単位を取れば専修免許が取れる。これからその活用をアピールしていこうということを今考えているんですが、6単位というと、要するに半期ものを三つ取れば専修免許は取れる。教育長ということを考えた場合に、学校経営とか、教育行政とか、そういったものを最低6単位程度取ってもらう。それを必要条件として考えていくような方向が今の時代ではあっていいのではないかという私見を持っているわけです。
  どういう形で制度化していくかというのは難しいんですけれども、かつても資格制度、免許制度があったんですけれども、そういうような大げさな形でなくても、実際に一つのベースをそろえていくような資格条件を教育長に考えていく時代といいましょうか、条件がそろってきているのではないか。その辺の条件が一体どういう形でなっていくのかということを調べていくこともこれから必要ではないか。こういう意見を持っております。以上です。

○  教育委員会のいろんな仕事ということで、わかりにくい部分があるわけですが、今出ています教育長の件は、私は任命承認制でいいのかなという感じしか、今の時点ではわかりません。流れを見て、公選するということに対しては、住民にとって地域度が非常に低くて、人物像もよくわからない、そういう状態で教育長を選挙するということは、やはり現在のほうがよりいいだろう。現在の形で、教育委員会内部で人選を進め、議会で任命されるということで、そのときに住民が傍聴できるようなシステムなどを置けば、教育長はどんな方がなるのかということは、参加された方には明らかになるでしょうし、その他広報などにおいてもそれを周知徹底させるということで、現在の教育長はどういう方なのか、理解できるのかなという感じがします。
  先ほど来、前職が教員であることとか、いろいろ出ていますけれども、一般に教員であると、学校現場についつい目がいってしまうだろうし、また行政職にいた方は、教育行政、あるいは一般行政などにどうしても目がいってしまう。それは首長と同様、住民サイドにどちらかというと目が届く。前職が教職現場にいるとか、行政職の方だからそちらをとか、そういうのはないと思います。話によると、教育現場にいた教育長というのは、そればかりずっと何十年もやられたということで、本意ではないんでしょうけれども、ついつい社会教育委員の会議だ、あるいはいろんな社会教育関係団体を持っているわけですけれども、そちらのほうにはどうしても疎くなってしまうというか、会議においても出席できなかったりということを聞いています。
  結局、なった人が、先ほど来ありますように学校教育、さるには社会教育を取りまとめた生涯学習社会構築という中において、前歴を余り重視するような考え方というよりは、学校や地域住民との連携に目を向けていくような努力をしていく方というのが、一番大切なのかなという感じを持ちました。
  それから、小規模な町において指導主事を配置するような財政措置ということは必要だと思います。それとあわせて、現状では指導主事になられる方というのは、教育現場にいる先生が多いということがあります。そうすると、学校教育の中において経験豊かな方。そうしますと、現時点での指導主事の仕事としては、教員の資質向上ということで市町村の中での教員の研修を主に持っていくという形がよろしいのかなと。一般に聞くと、小さな町村において一人配置すればいいんですが、配置されたとすれば、事務的なことばかりが中心になってしまって、本来の学校教育なり研修という部分がやりたくてもできないということも聞いたこともありますので、その辺の配置と仕事の内容も考えていく必要があるのかと思います。

○  教育委員会と住民とのかかわりというのは非常に難しい。あまりないんじゃないかと思うんです。さっきお話があったように、教育長が外へ出ていく。私どもでは、この前ちょっとお話しした出前講座というのをやっているんですが、176のメニューなんです。そのほかに特別メニューで、「市長、出てこい」と言えば、私はどこへでも出ていってやってくるわけです。ですから、教育長もやはり地域へ出る。それと私は4月1日の先生方の着任式で、新しく来た方はまず地域を知ってくださいと。地域を知らずして開かれた学校はできるわけがないと私は思っているんです。ですから、まず地域のことを知ってもらう。地域の人とコミュニケーションを図ってもらうことが大事ではないか。
  教育委員会も、できれば24時間体制の電話とか、ファックスを置いて、いろいろ住民の声を聞くことも必要じゃないか。行政でやっているんですけれども、そういうふうにすることによって、住民の人たちも物が言える場があるということは違うのではないかなと思います。
  それと教育委員といったって、住民の人はあまり知らないと思うので、住民の人に一日教育長とか、教育委員になってもらうようなことをやるとか、あるいは子どもに委員になってもらって、子ども教育委員会とか  ―私どもでは子ども議会をやっていますけれども、そういうふうにして、子どもにも教育委員会の制度とか、仕組みを知ってもらう機会をつくってあげたらいいのではないかと思います。
  それと校長先生の権限拡大の話もありましたが、私は教頭先生の権限拡大を図ってもいいのではないか。市長部局では助役にもある権限を与えて、助役で決裁できるようなシステムがあるわけですから、先生方の中でも、学校でそういうものがあってもいいのではないかと思います。
  それと、今、生涯学習社会で、学校も生涯学習推進の一翼を担っているわけですから、教務主任がいるように、生涯学習主任を置いてもいいのではないか。これは仙台の中学校では既に置いている学校がございます。それと校長、教頭の試験の中に、必須科目として「生涯学習」を置いてもいいのではないかと思います。

○  一つだけ教育委員の公選制については、私たちもアンケートを取ったんですが、ほとんどは現状がやっぱりいいと。公選制にするといろんな問題があり、なぜひっくり返ったかということについては十分理解して、進めるべきではないかという意見が強かったことだけお話し申し上げたいと思います。

○  きのうの教育課程審議会の中間まとめが公表されましたが、そこで学校の裁量と責任がかなり大きくなるということで、それへのサポートシステムとして地教委があるんでしょうけれども、きょうお伺いしますと、市町村特に町村のほうの教育委員会の状況ですと、学校としてはこれは大変だなという感想を持ちました。
  もう一つ、これは学校だけでできない部分として、子どもの豊かな環境づくりがありますが、これも地教委にお願いしたいところですけれども、今の状況では、その点についても非常に問題点があるのかなということを感じました。
  それから、地域と学校とを結びつけるということで、先ほど教頭2人制というお話がありましたけれども、教頭でなくても、校長をサポートする補佐役、スタッフがいればいいのではないか。これは例えば嘱託の方でもいいと思います。そのようなシステムの改善も、豊かな子どもの環境づくりということで必要かと考えています。

○  先ほどの意見の発表に関連しまして、ページでいうと、先ほどのヒアリング資料の6ページですが、「道府県と政令指定都市の関係」というところで、できるだけ道府県の関与を排除して、政令都市は力もあるんだから、大いにやらせてくれと、平たく言うとそういうことだと思うんです。最後のところに、「4」で「政令指定都市の行財政能力を勘案すると、大都市特例の範囲の拡大を検討する必要があるが、その役割分担に応じた財源措置が必要である」となっていますね。これは、例えば具体的には、今、政令指定都市は任命権者で県の人事から外れているわけですけれども、財政負担は県費負担ですから、県が持っている。任命権を持っているんだから、ちゃんと私どもも教員の給与について財政負担しますよと、こういう意味合いでございますか。

◎森元意見発表者    そうなんです。それと同時に、それに見合う財源措置もお願いをしたいというのがつくわけですね。

○  交付税、その他でですね。
◎森元意見発表者    そうです。

○  これは指定都市教育長会でのある程度の合意を見た意見というふうに承っていいんでしょうか。

◎森元意見発表者    これは実は各論があるんです。それがいいとおっしゃる方と、それじゃぐあいが悪い、今のままにしておけばいいじゃないかと言われる方と。議論が分かれたところを、きょう最後のところで私は言いたかったんですが、一つは教育長の任命承認制度について、現行任命承認制度の廃止に強い反対をしている市が2市ございます。
  もう一つは、今の財源措置の部分なんです。そこの表現で非常に難しさがあったわけでありますが、こういう表現にさせていただけませんでしょうかということで、実はこれも議論形成過程だと御理解いただきたい部分があるんですが、財源措置を伴って大都市特例を設けられるならよろしいということが、かなりの市であります。
  もう一つは、私学の関与のところで、これも首長部局が持っているところと、教育委員会が現実に持っているところと、二つのタイプがあるわけですが、これも実は政令市の中ではかなり議論があるんです。
  ほとんどのところは同感とおっしゃっていただいているんですが、その三つのところで実は政令市の中で意見が大変分かれておりまして、私が申し上げるのも非常に慎重な言い回し方をさせていただいたわけでありますが、そこのところを最後のところで私はちょっとつけ加えたかったんです、この場で。

○  ありがとうございました。
  今後の審議の進め方については、前回の会議で、次回、第6回小委員会以降も引き続き関係団体からヒアリングを行いながら、論点についてさらに検討を深めていくということで御了承をいただきました。具体的なヒアリング対象団体等については、次回、12月12日の第6回小委員会では、各学校種ごとの校長会、教職員団体等の学校関係の12団体から、大変でございますがヒアリングを行い、「学校と教育委員会の関係」「地域住民と学校との関係」について討議をしていただきます。
  12月17日、第7回小委員会では、PTA関係の2団体、社会教育、体育、文化関係4団体及び3私学団体からヒアリングを行い、「地域住民と教育委員会、学校の関係」「私立学校と地方公共団体との関係」及び「地域コミュニティーの育成と地域振興」、こういったテーマについて討議を行っていただくことにしたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  これできょうの会議は終了いたします。
  次回の小委員会は、12月12日、13時から、霞が関ビル33階、阿蘇の間で開催したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(大臣官房政策課)
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