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参考資料2.東日本大震災を受けて教育振興基本計画の策定上留意すべき課題について

参考資料2
平成23年8月29日
中央教育審議会
教育振興基本計画部会

 当部会においては、6月6日の中央教育審議会への諮問(「第2期教育振興基本計画の策定について」)を受け、これまで、現行基本計画のフォローアップ及び被災地の教育関係者からのヒアリングを行ってきた。

 第2期基本計画の策定に当たっては、今般の東日本大震災の教訓を踏まえ、被災地の復興とともに、我が国全体が希望を持って、未来に向かって前進していけるようにするための教育振興の方策を検討し、東北発の未来型教育モデルづくりを促進し、かつ全国的に広げていく必要がある。また、必要な方策については基本計画の策定を待たず、順次速やかに実行すべきである。

 我が国の社会経済状況として、これまでも指摘されてきた少子高齢化、地域社会、家族の変容、産業構造・雇用の変化、グローバル化などの状況は、今後も全国的に進行していくものと考えられるが、今般の大震災を受けて、人的・物的被害が甚だしい被災地においては、より一層急速に進展することが見込まれる。その結果、生活水準、雇用経済の悪化、社会格差の増大など負の影響が懸念される。

 一方で、被災地では、震災により行政や学校が大きな打撃を受け、他の施設を間借りして授業を行わざるを得ない地域があるなど未だ厳しい教育環境の中であっても、子ども達や教職員、地域の方々の献身的な行動、それを支える社会全体の絆の強さが明らかになるなど、希望は決して失われていない。

 実際に、子ども達が率先してお年寄りを避難させ、避難所においてボランティア活動を行ったり、マニュアルを超えた行動によって危機を乗り越えたりするなど、枚挙にいとまがない。現地の教育長や学校長などは異口同音にこれらを「誇り」であると表現し、復興に向けた意気込みを力強くしている。

 また、日本全国や世界各地から多大な義援金やボランティアによる支援が寄せられたことなどにより、被災地は強く勇気づけられ、また、国民全体にとっても、世界とともに歩み、評価される日本の存在に改めて気付かされた。さらに、今回の経験を一人一人が自らのこととして意識を共有し社会全体が一丸となるきっかけともなった。

 同時に、人知を超えた大自然においては、一人一人の人間は有限な存在ではあるが、状況を的確に捉え自ら学び考え行動するなど、どんなに困難が起きようとも生き抜くための力が必要であり、現に、被災地からもそうした力を育むことの重要性が指摘されている。

 真の意味で持続可能な社会を構築していくためには、このような震災の教訓を、世代を通じて伝えていかなければならず、これこそが、今回、犠牲となられた多くの方々の思いに通じるのではないか。

 我が国社会全体が抱える課題は、例えば、(1)社会生活基盤の確保(生活水準の安定・向上や社会への参加保障などに向けた環境整備)、(2)地域の絆・コミュニティの再構築・維持、(3)新たな社会的・経済的価値の創造が考えられるが、これらの点は今回の震災により一層浮き彫りになった。課題解決に向けて教育の果たす役割は極めて大きい。

 このため、次期基本計画策定に当たっては、上記を踏まえ、今後の教育政策全体の横断的な視点として下記の4点を重視し、関係省庁との連携も一層強めながら具体的方策を検討すべきと考える。施策例は、政府の復興構想会議や当部会のヒアリング等において挙げられたものであり、今後、当部会や各分科会において審議されている一般的課題とあわせて更に検討を深めるべきである。

【学びのセーフティネット】

1. 被災地の子ども・若者、地域の方々が未来への希望を見いだすことができるよう、一刻も早く充実した教育を受けられるようにすることが喫緊の課題である。同様に、我が国全体においても、経済的理由など様々な事情によって学習の機会を奪われないようにすることが重要である。このため、学習機会の確保や安心・安全な教育環境の実現に向けた十分な支援を行うことが必要である。 

(例)
○地域全体の復興の方向性を踏まえた施設整備など教育環境の早期復旧
(施設の移転、学校と社会教育施設、社会福祉施設等の複合化、通学支援、幼保一体化施設等の設置支援、幼稚園をはじめとする私立学校の再建支援など)
○学校・公民館・スポーツ施設等の防災拠点としての機能の強化
(耐震化、物資の備蓄、倉庫の整備、再生可能エネルギーの導入、非常電源の確保、情報通信技術の活用など各施設の特性を踏まえた支援)
○児童生徒へのきめ細かい学びの支援
(教職員配置に係る特例的な措置、教育スタッフの活用など)
○経済的に就学困難な幼児、児童、生徒、学生への多様で手厚い支援
○ボランティアやNPO等との協働による子どもの学習・交流支援
○乳幼児や児童生徒学生、教職員、保護者などへの中長期にわたる心身両面のサポート
(障害の程度や発達段階も含め個々の状況に応じた教職員やスクールカウンセラー等による心のケアやリフレッシュの機会提供など)
○関係機関と連携した就職支援
○高齢者の社会参画に資する学習機会の充実
○文化芸術活動やスポーツ活動、体験活動を通じた子どもたちの勇気づけ 
○災害時に外国人留学生を適切に支援できる体制の整備     など

【社会を生き抜く力】

2.今回の震災をバネにして、夢と志を持って社会を生き抜くための力(例えば、困難な状況に置かれても、状況を的確に捉え自ら学び考え行動する力など)の重要性を社会全体で共有し、一人一人が生涯を通じて身につけていくことが重要である。このため、様々な学習機会を捉えて教育の質の向上やその保障に向けた方策を講じることが必要である。

(例)
○教育内容・方法の改善・充実
(震災経験を日常の教育活動に活用するなど実体験に基づく学習活動、様々なボランティア活動や体験活動・交流活動等の推進、放射線に関する知識と理解の定着への支援など)
○地域との連携や防災技術の発展、「減災」の考え方も踏まえた実践的な防災教育の推進
(今回の震災対応の実例を十分踏まえた方策)
○ボランティアやNPO等との協働による子どもの学習・交流支援(再掲)
○教職員の十分な確保・質の向上     など

【絆づくりとコミュニティの再構築】

3.今回の震災では、学校と地域住民が連携した取組を進めている地域では避難所運営が円滑に進められるなど、日頃より存在する地域における一人一人のアイデンティティや人々の間の絆、これらを形成するコミュニティの重要性が際立った。一方で被災により地域コミュニティの維持が危ぶまれている地域もあり、また我が国社会全体でも都市部や限界集落などでは、コミュニティの再構築が求められている。このため、学びを媒介として様々な立場の人々が協働するための拠点である学校や公民館等を中心にして、地域社会全体の教育力の向上や、個人が主体的に社会に参画し相互に支え合うための教育上の方策を講じることが必要である。

(例)
○地域の主体性、創意工夫が活かされるような教育行政体制の確立
○学校・公民館・図書館・博物館・スポーツ施設等を拠点とした地域コミュニティの再構築
(コミュニティ・スクールや学校支援地域本部、放課後子ども教室など学校・地域づくりへの地域住民等の協働・参画の促進、地域コミュニティの拠点としての学校・公民館・スポーツ施設等の機能強化、地域の復興への子どもたちの主体的な参画、情報通信技術の活用)
○ボランティア活動等の推進、コーディネーターの育成確保、拠点形成
○地域における文化芸術活動やスポーツ活動の充実
○学校・公民館等の防災拠点としての機能の強化、地域との連携や防災技術の発展、「減災」の考え方も踏まえた実践的な防災教育の推進(再掲)
○大学等における地域復興のためのセンター機能及び教育研究基盤の整備
(大学を核とした地域復興、人材育成、教育研究活動、大学病院を核とする地域医療の復興、子どもの学習・スポーツ活動支援や心のケア等に関するボランティア活動の推進など)
○高齢者の社会参加に資する学習機会の充実(再掲)
○街ぐるみの留学生支援や外国人留学生と地域住民との交流促進     など

【未来への飛躍】

4.単なる復旧ではなくあらゆる英知を結集して未来志向の復興を目指す必要がある。このため、新たな社会的・経済的価値を生み出すイノベーションの創出や、例えば環境問題、エネルギー問題、少子高齢化に係る問題など様々な社会のニーズに応える人材の養成や研究、また、異文化理解やコミュニケーション能力などを備えたグローバル人材の育成を図ることが重要である。被災地においては、地域産業の復興・高度化や新産業の創出、高度医療を担う人材の養成に向けた方策を実施することが必要である。

(例)
○初等中等教育段階における科学技術や国際化、情報化の進展等に対応した先進的教育の実施
○地域医療を支える医療人や研究医の養成
○大学、専修学校、高等専門学校、高校における復興に向けた人材育成等の推進
(復興に向けた人材育成、教育研究活動、産学官による連携協力体制の構築の推進、就職支援など)
○大学におけるグローバル人材育成への支援
(海外の大学との協働教育、大学の国際化の拠点形成及びネットワーク化推進、情報発信等の取組支援や留学を促進する制度整備など)
○専門分野の枠を超え俯瞰力と独創力を備え、広く産学官にわたりグローバルに活躍するリーダーの養成
○国際的視野を持ち先見性や創造性に富む人材の養成
○日本人学生の海外留学や外国からの留学生の受け入れなどの促進     など

5.上記1~4を実現するためにも、次期基本計画においては、中長期的視点に立って具体的な成果目標及びそれを実現するための具体的な政策の実現方途を設定することが必要である。

お問合せ先

生涯学習政策局政策課教育改革推進室

寺田、高橋、濱、今井
電話番号:内線:3465, 3279

-- 登録:平成23年08月 --