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資料  3

教育の基本理念(目的・方針)に関する教育基本法の規定の概要

第1条(教育の目的)  教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。


◎  本条で規定している「教育の目的」とは何か
  教育は、人を育てることであり、ここで「教育の目的」としては、どのような目標に向かって人を育てるか、どのような人を育てることを到達の目標とすべきかについて規定している。

◎  本条の構造
  教育の目的は、
A: 人格の完成をめざし、
B: 平和的な国家及び社会の形成者として、(以下の徳目を有する)心身ともに健康な国民の育成を期すること。
     
  1真理と正義を愛し、
2個人の価値をたつとび、
3勤労と責任を重んじ、
4自主的精神に充ちた
 

「人格の完成」: 個人の価値と尊厳との認識に基づき、人間の具えるあらゆる能力を、できる限り、しかも調和的に発展せしめること(「教育基本法制定の要旨」昭和22年文部省訓令)。
  真、善、美の価値に関する科学的能力、道徳的能力、芸術的能力などの発展完成。人間の諸特性、諸能力をただ自然のままに伸ばすことではなく、普遍的な規準によって、そのあるべき姿にまでもちきたすことでなければならない(「教育基本法の解説」)。
   
なお、「真理と正義を愛すること」「個人の価値をたつとぶこと」「勤労と責任を重んじること」「自主的精神」として掲げられている徳目について、制定時の帝国議会答弁においては、「第1条ですべての徳目を掲げるのは適当ではなく、従来我が国の教育の比較的欠陥といわれてきたところや現在においても欠陥と考えられているところを特に強調し、それ以外は「人格の完成」に包含させる」との考え方をとってきた。

「教育基本法の解説」田中二郎・辻田力監修(国立書院)、「教育基本法の理論」田中耕太郎著(有斐閣)に基づき作成

 

帝国議会における第1条(教育の目的)に関する主な答弁
  

【教育の基礎として如何なる人間観に拠っているのか。】
○昭和22年3月19日  貴族院・本会議
<高橋国務大臣答弁>  教育基本法に於きまして、先づ人間は人間たるの資格に於て品位を備へて居るものでありまして、何等他のものと替へらるべきものでないと云ふ意味に於て、其の前文に於きまして、「個人の尊重を重んじ、」と謳つて居るのであります。次に人間の中には無限に発達する可能性が潜んで居ると云ふ考を基礎と致しまして、教育は此の資質を啓発し培養しなければならないのでありまして、之をば第一条に「個人の価値をたつとび、」と申して居るのであります。第三に、人間は単に個人たるに止まらず、国家及び社会の成員であり、形成者でなければならないと云ふことも亦此の基本法に於ける人間観の基礎として居る所のものであります。更に人間は真、善、美などの絶対価値の実現を追求するものと致しまして、文化活動の主体であると考へるのであります。是等を基礎と致しまして、教育が人格の完成を目指さなければならず、普遍的にして而も先程仰せのありました所の日本人として、又個人と致しまして、個性豊かな文化の創造を目指さなければならないとして居るのであります。

【教育理念を法律の形で規定することの意味は何か。】
○昭和22年3月19日  貴族院・本会議
<金森国務大臣答弁>  (教育に関する基本方針を国会において法律として定めるのは、)国民の共同意識、謂はば国民の代表者に依つて現されて居りまする所の全国民の納得を基本として、実行上然るべき基準を規律して行かうと云ふことでありまするが故に、先づ大体の見地から申しまして、国の法律として定めると云ふことが、余り程度を越えさへしなければ然るべきことのやうに存じて居ります。
<高橋国務大臣答弁>  一部に於きましては、又国民の可なり大きな部分に於きましては、思想昏迷を来して居りまして、適従する所を知らぬと云ふやうな、状態にあります際に於きまして、法律の形を以て教育の本来の目的其の他を規定致しますることは、極めて必要なことではないかと考へたのであります。

【よき日本人の育成、祖国観念の涵養といった観点が欠けているのではないか。】
○昭和22年3月20日  貴族院・教育基本法案委員会
<高橋国務大臣答弁>  「個性ゆたかな文化の創造」、此の「個性ゆたか」と云ふことは、博士の御解釈になりますやうに、単なる個人的のものばかりでございませぬので、日本の国民性の十分に現はれた所の文化の創造と云ふ意味に私共は解釈して居るのでございます。尚此の基本法なるものは、十分に普遍的なものと同時に、日本的なもの、特殊的なものをも求めて進んで行かなければならぬと云ふ精神に基いて出来て居るものと申上げて差支えなからうかと考えて居ります。 <辻田政府委員答弁>  それで教育の目的の中には色々な徳目、或は掲ぐべき必要なことがあらうと思ひます。従来我が国の比較的欠陥と言はれて居つた所、或は現在の状態に於ても欠陥と考へられて居る所と云ふやうなものを特に強調致しまして、「勤労と責任を重んずる」、「責任」と云ふ字を特に入れ、又「自主的精神に充ちた」と云ふやうなことを特に強調致しまして、此の我が国の国民として特に教養すべき点を掲記したのでありまして、此の中に有らゆる徳目を掲記すると云ふことは、必ずしも適当でないと思ひますので、それ等に付きましては「人格の完成」と云ふ中に包含してある訳であります。

【奉仕的精神に満ちた国民の養成という観点が欠けているのではないか。】
○昭和22年3月20日  貴族院・教育基本法案委員会
<高橋国務大臣答弁>  此の第一条に掲げてあります国家及び社会の形成者、此の形成者と申しまする文字は、単なるメンバーと云ふだけでなくして、実際の国家及び社会の構成者、ギルダーと云ふやうな意味も含まれて居るものでありまして、尚国家竝に社会に対する奉仕の点は、後にありますやうに「勤労と責任を重んじ」云々と云ふ言葉で十分に現はされて居るのではないかと存ずるのでございます。

第2条(教育の方針)  教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。


◎  本条の趣旨、内容
  本条は、第1条に規定する教育の目的を実現するための道筋(方法)、心構え、配慮事項を規定したものであり、名宛人は教育者のみならず一般国民を含むとされている。主な意味内容は以下の通り(「教育基本法の解説」より)。

     
 

(1) 「あらゆる機会に、あらゆる場所において」
  制定当時、それまで学校教育のみで教育は終了したものと考え、その後の研究修養を省みない弊風を改めるため、学校教育と並んで社会教育が大いに振興されるよう規定したもの。

(2) 「学問の自由を尊重し」
  憲法第23条「学問の自由は、これを保障する。」の学問の自由を侵してはならないとする消極的な規定をさらに進めて、積極的に尊重していこうとするもの。

(3) 「実際生活に即し」
  教育なり、学問なりが実際生活を基礎とし、そこから出発して行われなければならず、またその成果も実際生活に浸透していかなければならないという意味を示したもの。

(4) 「自発的精神を養い」
  自ら進んで学問をしたいという気持ちを起こさせ、個人の研究的態度を養うという意味。

(5) 「自他の敬愛と協力によつて、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない」
  教師と生徒の間のみならず、教師相互、生徒相互の間に敬愛という心のつながりを持って、相互に教育し、教育され、協力一致していくところに偉大な文化の創造と発展が遂げられるという意味。

 

  制定時の帝国議会答弁においても、本条前段は、教育の目的を達成するためにどのような方針で進んだらよいかについて形式的な面を謳い、後段は実施的な方針、内容、すなわち、教育を取り扱う者の心構えについて謳っている旨答弁している。
  

 

帝国議会における第2条(教育の方針)に関する主な答弁
  

◎  第二条(教育の方針)について
【第二条(教育の方針)は意味がよくわからないのではないか。】
○昭和22年3月20日  貴族院・教育基本法案委員会
<辻田政府委員答弁>  第二条は御話の通り、前段と後段と色々と錯綜したりして居るではないかと云ふやうな御考もあるかと思ひますが、前段の方は謂はば教育の目的を達成致しまする為にはどう云ふやうな方針で進んだら宜いかと云ふことに付きましての形式的な面を謳つたのでありまして、次の「この目的を達成するために」とある「この目的」と申しまするのは、教育の目的と云うことでありまするが、是は此の後段の方は謂はば実質的な方針、内容を示したものであるのでございます。で、此の前段の方は特に御説明をする要はないかと思ひまするが、後段に付きましては、是は第一条に掲げてありまする教育の到達すべき目標を達成する為には、教育を取扱ふ者、教育に従ふ者は斯う云ふ風な心構へを以てやらなければならないと云うことを謳つて居るのであります。即ち是は学校の種類、程度、段階等におきまして、それぞれ重点は或いは違うかもしれませぬが、「学問の自由を尊重し、実際生活に即し」、唯学問の自由を尊重するだけで実際生活から全然遊離してしまうというようなことがあっては困りますので、「学問の自由を尊重し、実際生活に即し」というように致しましたが、是も学校の程度に依りまして、大学の場合と小学校の場合とは、それぞれその重点の置き所が違うことは当然であります。「自発的精神を養い」、是は学校の生徒が上から、先生から物を授けられると云うだけでなしに、生徒、児童が自発的に勉強して研究していくという態度、精神を養うという意味であります。「自他の敬愛と協力によって」と申しますのは、先程大臣から御説明がありましたように、是は相互の互に敬愛することと、又力を協せるということに依って、従来の色々欠陥であります所のものを矯正して、そうして立派な日本国としての文化を創造していかなければならぬ訳でありますので、この「自他の敬愛と協力によって」と、従来比較的欠陥となっておりましたようなことに付きまして掲げたのであります。大体以上が第二条の内容でございます。
  

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