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優れた教師が備えるべき資質・条件

兵庫教育大学学長 梶田 叡一

「教育は人なり」という言葉があります。良い教育のためには、優れた教師が不可欠であるということです。

教育的な熱情・真剣さ

 優れた教師の条件の第一は、教育的な熱情と真剣さではないでしょうか。
 いいかげんな姿勢・おざなりな態度で子どもに接しているのでは、教育者として失格です。
 口先だけきれいごとを言ったり、見かけだけ取り繕ったりするような教師であれば、子どもの方でも卒業すればすぐに忘れ去ってしまうでしょう。
 熱情・真剣さは、子どもに対する愛情の現れであり、また教職に対する使命感の現れでもあります。
 それが具体的な姿としては、面倒見のよさとなり、厳しい中にも暖かい配慮となり、そしてまた分かりやすい授業・楽しい授業となり、印象深い入念な教材の作成・準備となり、きめ細かな指導として現れるのではないでしょうか。
 教職に就くというのはこわいことでもあります。しかし、やるべきことをやってさえいれば、卒業して10年してからも、20年してからも、あるいは40年、50年してからも、懐かしく、また尊敬の気持ちを持って思い出してもらえるといった素晴らしい職でもあります。

教育的力量を身につける

 もちろん、熱情や真剣さは教職にとっての必要条件であっても決してそれだけで十分というわけではありません。実際に子どもを指導していくための具体的能力や技能が不可欠です。「教師は授業で勝負する」と言われてきたように、授業こそ教師が自分を賭ける場であり、また授業を見れば、その教師の教育者としての力量も見当がつくのです。だからでしょう、特に最近では、授業の技術的側面、手法的側面について広い関心が集まっています。
 確かに、発問のあり方にしても、教材提示のあり方にしても、自主的自発的な活動の支え方にしても、説明や解説のポイントの押さえ方にしても、学習過程の診断とフィードバックのあり方にしても、論議し工夫すべき課題は少なくありません。さらには、板書の仕方、机間巡視の仕方、ワークシートの作り方、テスト問題の作り方等々、教師として心得ておくべき技術も数多くあります。
 教職にあるものはこうした技術や手法をきちんと身につけなくてはならないのです。しかし同時に、技術や手法がいくら立派でも、それだけで良い授業ができるわけではないことも認識しておかねばなりません。良い授業と言われてきたものは、本来、技術や手法の良さといったことに単純に還元できぬものなのです。
 例えば、人間的な迫力なり存在感なりがあるかどうか、という問題を考えてみることにしましょう。伏し目がちに小声でボソボソと語りかけるのでは、どんなに工夫した発問でも、説明でも、子どもの心に届きません。逆に、そこでの授業内容に教師自身がのめり込んで、熱っぽく話すような授業であるなら、少々技術的には難があろうと、子どもの方も巻き込まれて学習に集中し、よく分かりよく出来る、といった成果が生まれることになるのです。
 同じような意味で、子どもの心をきちんとつかんでいるかどうか、という問題も不可欠の重要さを持ちます。教師が子どもの心をつかまないままで授業をしたのでは、面白い活動の場合にはいいとしても、少ししんどい活動になれば、子どもの方でソッポを向いてしまうことになります。もっと極端に、子どもに嫌われているという場合であれば、どんなにいいことを教師が口にしても、子どもの方はシラッっとしているだけでしょう。教師の側の迫力も、そういう場合には逆効果でしかありません。子どもに信頼され、その心をきちんとつかんだ上で初めて、授業の技術や手法が効果を持つのです。

総合的な人間力を高める

 こうしたことを考えると、教育においては教師の諸能力が全面的に問われるのではないか、さらには人間としての生き方やあり方までが全面的に問われざるをえないのではないか、と思われてきます。「先生-その姿を言葉」の事例にも、そのことが如実にうかがえるのではないでしょうか。教師は、子どもとの関わりを通じて、自分の人間としてのあり方の全てをさらけ出してしまっているのです。この意味で、教師に本当に必要とされるのは、授業の技術や手法でなく、総合的な人間力なのです。
 こうした総合的な力量を身に付けるためには、言うまでもなく、日頃からの精進が不可欠でしょう。教師に必要とされる資質・能力として、諸外国でもさまざまなリストが提出されていますが、私たちは図に示すような諸点を不可欠なものとして考えています。ここにあるような能力・特性は、いずれも、教職にあるものにとっての努力目標です。日常の職務にとって必要となるものであると同時に、教職にある間ずっと、さらには生涯にわたって深めていくべきものと言ってよいでしょう。総合的な人間力としての<教育的力量>は、つきつめて言えば、このような方向で自分自身を伸ばしていこうと努力する教師にのみ実現するものではないでしょうか。

教職にあるものが努力すべき主要ポイント

 教え子の心にクッキリと印象の残る教師とは、毎日毎日の授業を通じて、自分自身の生き方や人間性までを何かの形で露出している人です。次に示す諸点について、そうした総合的な視点から考えてみていただきたいと思います。そして、教職にある人も、これから教職を目指す人も、自分自身の上にこうした諸点が実現していくように頑張っていただけたら、と心から願っております。

1.子どもとの間に教育的関係を築ける力を持つ(対人的関わり能力の点での成長)

  1. 教育に対する熱意・情熱にあふれている
  2. 子どもと一緒に遊んだり談笑したりすることを喜びとする
  3. 子どもの内面の気持ちや感情を敏感に感受できる
  4. 子どもに軽視されたり無視されたりしない存在感を持つ
  5. 子どもと心のつながりを深める方法をいろいろ身につけている

2.人間的社会的に成熟した存在であること(人間として社会人としての成長)

  1. 開かれた柔軟なパーソナリティを持つ
  2. 自己受容し自信を持って心理的に安定している
  3. 人間的な暖かさと協調性を持つ
  4. 社会的な常識と責任感を持つ

3.集団を指導する力と一人ひとりを生かす力とを合わせ持っている(集団指導の専門家としての成長)

  1. 公平でえこひいきがなく一部の勢いの強い子どもに引きずられない力を持つ
  2. 集団としての全体的動きと同時に一人ひとりの状況を把握できる力を持つ
  3. 集団に対する指示が的確で規律正しく活動させることのできる力を持つ
  4. 集団全体に熱気と活気を与え皆の気持ちを一つの方向に集中させる力を持つ

4.担当する教科等の指導力を深める(教科指導の専門家としての成長)

  1. 教科・教材の内容や筋道、節目となるポイント、背景等について理解を深める
  2. 教科・教材の多様な指導方法や活動展開のあり方について理解と技能を持つ
  3. 学習過程でのつまづきや落とし穴とその対応方策について深い理解を持つ
  4. 教科書と黒板の活用の他に広範な教授メディアを活用できる技能を持つ
  5. 学習や成長を把握するための広範な評価技法を教育的に活用できる力を持つ

5.自己教育力を持ち常に成長し続ける(学び続ける知識人としての成長)

  1. 自分自身に対して謙虚な気持ちを持ち常に学び続けようとする姿勢を持つ
  2. 精神的深さに対する感覚を持ち求道的に生きていく姿勢を持つ

教職にあるものが努力すべき主要ポイント

1.子どもとの間に教育的関係を築ける力を持つ[対人的関わり能力の点での成長]
  1. 教育に対する熱意・情熱にあふれている
  2. 子どもと一緒に遊んだり談笑したりすることを喜びとする
  3. 子どもの内面の気持ちや感情を敏感に感受できるようである
  4. 子どもに軽視されたり無視されたりしない存在感を持つ
  5. 子どもと心のつながりを深める方法をいろいろ身につけている
2.人間的社会に成熟した存在であること[人間として社会人としての成長]
  1. 開かれた柔軟なパーソナリティを持つ
  2. 自己受容し自信を持って心理的に安定している
  3. 人間的な暖かさと協調性を持つ
  4. 社会的な常識と責任感を持つ
3.集団を指導する力と一人ひとりを生かす力とを合わせ持つ[集団指導の専門家としての成長]
  1. 公平でえこひいきがなく一部の勢いの強い子どもに引きずられない力を持つ
  2. 集団としての全体的動きと同時に一人ひとりの状況を把握できる力を持つ
  3. 集団に対する指示が的確で規律正しく活動させることのできる力を持つ
  4. 集団全体に熱気と活気を与え皆の気持ちを1つの方向に集中させる力を持つ
4.担当する教科等の指導力を深める[教科指導の専門家としての成長]
  1. 教科・教材の内容や筋道、節目となるポイント、背景等について理解を深める
  2. 教科・教材の多様な指導方法や活動展開のあり方について理解と技能を持つ
  3. 学習過程でのつまづきや落とし穴とその対応方策について深い理解を持つ
  4. 教科書と黒板の活用の他に広範な教授メディアを活用できる技能を持つ
  5. 学習や成長を把握するための広範な評価技法を教育的に活用できる力を持つ
5.自己教育力を持ち常に成長し続ける[学び続ける知識人としての成長]
  1. 自分自身に対して謙虚な気持ちを持ち常に学び続けようとする姿勢を持つ
  2. 精神的深さに対する感覚を持ち求道的に生きていく姿勢を持つ

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初等中等教育局初等中等教育企画課

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