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資料2 中央教育審議会「青少年の体験活動の推進の在り方に関する部会」中間報告(素案)【第9回部会までの主な意見の整理】

※本案は「これまでの意見のまとめ」(平成23年9月12日)及び「第6回~第9回部会の主な御意見」等を中心に整理したものである。

1.青少年の体験活動の定義・意義・効果について

(1)体験活動の定義について

○  体験活動の定義については、平成19年の中央教育審議会答申*1において、「体験を通じて何らかの学習が行われることを目的として、体験する者に対して意図的・計画的に提供される体験」とされている。また、体験活動そのものを目的とする場合と、体験活動を手段として何かを学び取らせる場合を区別しながら、議論することが必要である。

○ 「体験活動」は、その内容に応じて、大きく3つの体験に分類される。1つ目は生活・文化体験であり、例えば放課後に行われる遊びやお手伝い、地域や学校における年中行事である。2つ目は、自然体験であり、例えば登山やキャンプ、ハイキング等といった野外活動、または星空観察や動植物観察といった自然・環境に係る学習活動である。3つ目は、社会体験であり、例えばボランティア活動や職場体験活動、インターンシップである。

*1 「次代を担う自立した青少年の育成に向けて」(平成19年1月30日中央教育審議会答申)

(2)青少年の体験活動の意義について

○ 他者や他の生物への配慮を含め、社会全体を考える人間を育むためには、教育的視点に裏打ちされた自然や文化などに触れる幅広い体験が必要である。

○ 幼少期から、様々な体験活動の機会を提供することが重要であり、体験活動の積み重ねが、将来のニート・引きこもり等の問題の多くを未然に防ぐことにも繋がる。また、幼少期における異年齢の子どもたち同士での「群れ遊び」を通じて、自然と力加減や人の痛みを知り、思いやりが育まれる。

○ 体験活動は、仲間とのコミュニケーションや自分自身との対話、実社会との関わり等を考える契機となり、結果、他者への共感や日本人としての心の成長や、個人や社会の歴史の形成につながっていく。青少年期にその基盤を作ることが重要である。

○ 規範意識や道徳心の育成においても、体験活動の意義は大きい。現在、「思いやり」や「礼儀正しさ」など日本人が古来大切にしてきた精神性の重要性が再認識されており、そのような道徳的価値観の涵養を図る上で、日本古来の精神性を学ぶことができるような現実の場の教育力を活かした体験活動が有効である。

○ メディアを中心に世の中に流通している情報は、心地よく感じられるよう計算され加工された情報であり、そのような環境の中でのみ育ってくると人間としての「許容量」が狭いままになってしまう。自然の中で、これまで触れたことのない物にも触れながら、その存在を認める経験を積むことで、大人になったときに、思い通りにならない他者や状況に直面したときにも、うまく対応していくことができるようになると考えられる。

○ 特に、不登校などの課題を抱える子どもたちに対しては、楽しみながら色々な世界の入り口を見せることができる体験活動を取り入れた教育が重要である。そうした教育を通じて、基本的なコミュニケーションや生活習慣を身に付けていくことが重要である。

○ 自然環境や海外の人々とのつながりを持って生きる次代のリーダー育成のためには、自然の偉大さを体験したり、海外の人々と共に自然の中で問題を解決しながら進んでいく体験をしたりすることが重要である。

○ また、近年、職場での鬱病などメンタル不全の問題への対処においては、職場や学校から離れた自然の中で人や自然と繋がる体験をし、普段の生活を客観的に見つめ直すことが重要である。

(3)青少年の体験活動の効果について

○ 独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下、「青少年機構」という。)が実施した調査では、子どもの頃の体験が豊富な人ほど、規範意識・職業意識・人間関係能力・文化的な作法や教養・意欲や関心等が高い傾向にあることが明らかになっている*2。

○ また、発達段階に応じて効果的な体験活動が異なることが明らかになっている。具体的には、小学校低学年までは「友達との遊び」「動植物とのかかわり」、小学校高学年から中学生までは「地域活動」「家族行事」「家事手伝い」等の体験が効果的であることが明らかになっている。学校、家庭、地域で体験活動を実施する際には、こうした発達段階に応じた体験活動を行うことが効果的である。

*2 「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書-子どもの頃の体験は、その後の人生に影響する-(平成22年10月14日)

2.現在の青少年の体験活動をめぐる状況や課題について

○ 都市化、少子化、電子メディアの普及といった社会の変化や、体験活動の機会と場を提供する公立青少年教育施設*3の激減*4、社会教育主事の減少*5等により、青少年の体験活動の機会は急速に減少していると考えられる。また、保護者の経済力や保護者自身の経験の多寡、学校の判断によって、青少年の体験活動の機会に「格差」が生じているとの指摘もある。

○ 職場において、近年、若年層の鬱病件数の増加や早期離職、コミュニケーション不足等の課題が深刻化していることについて、体験活動の不足も一つの要因であると考えられる。

○ 便利・快適・安全な現代社会においては、青少年は全力を出す「スイッチ」を入れるチャンスを失っているのではないか。青少年の生きる力を育むためには、意識的に、目標を持って体験活動等にチャレンジする機会を創出する必要がある。リスクを恐れるあまり、周りの大人が子どもに対して過保護になってしまい、青少年期に必要な体験活動の機会を奪っているようにも考えられる。

○ 近年の若者は衣食住に不自由なく育ってきており、職業観として、仕事に対し「食べるため」以上のことを追求するが、まず「働く」ことの意味を実感として理解する必要がある。その際、自然豊かな環境で、自然と向き合いながら生きる人々の暮らしぶりに触れるなど、生活の原点に戻る体験をすることが有効である。

 ○ 体験活動は学力向上の取組と相反するものではないが、学校現場では、学力向上の取組と比べると、体験活動の重要性が必ずしも認識されていないことが多いとの意見もある。また、体験活動の重要性が認識されている場合でも、教員は生徒指導上の問題への対応等の様々な課題で忙殺されており、体験活動の機会の確保が十分になされていない現状がある。

*3 青少年教育施設:青少年を対象に研修事業や体験活動プログラムの提供を行うとともに、青少年団体等の利用に供するために設置される社会教育施設。本報告においては、少年の自然体験を推進する「少年自然の家」及び青年に研修や交流の場や機会を提供する「青年の家」(宿泊設備を備えるものと備えないもの双方を含む)をいう。

*4 文部科学省「社会教育調査」によると、平成14年:718施設、平成17年:691施設、平成20年:516施設と、6年間で約3割にあたる202施設が減少している。

*5 社会教育主事は、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に置かれる専門的職員で、社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導にあたる役割を担う。年々減少しており、平成20年度は3,004人である。(平成5年度は、6,766人)

3.青少年の体験活動を推進するための取組について

(1)学校教育における体験活動の推進について

1 学校教育における子どもの体験活動の推進

○ 新学習指導要領では、「集団宿泊活動やボランティア活動、自然体験活動などの豊かな体験を通して児童の内面に根ざした道徳性の育成が図られるよう配慮しなければならない」とされており、今後、より一層、学校における体験活動を充実していくことが必要である。

○ 学校教育における自然体験活動等については、学校から遠く離れた所に行かないと実施できないと考えられていることや、大人社会の体験活動への理解不足、教員の多忙感の増加等の懸念が、大きな課題であるとの意見があった。学校教育の中に体験活動を取り入れる際には、指導内容の増加、授業時数の増加という現状の中で、子どもや教員の過重な負担とならないなど、学校現場の状況を十分把握して検討する必要がある。

○ 青少年の体験活動の推進のためには、学校教育と社会教育の連携強化が不可欠であり、目標の共有や発達段階に応じた実践プログラムの整備・普及啓発のほか、学校教育と社会教育をつなぐコーディネーターの配置などの態勢整備が必要である。また、体験活動は、学級づくりや全体的な学校運営のためにも極めて重要であり、社会教育の観点から社会教育主事等、体験活動に精通した人材やノウハウを活用し、学校を支援していく必要がある。

○ 今後、社会で求められるコミュニケーション能力や自立心、主体性、協調性、チャレンジ精神、誠実性、責任感を育むためには、社会貢献活動や集団活動等様々な体験活動が必要不可欠であり、学校教育と社会教育が協働して体験活動の充実を図る必要がある。

○ 理科の実験や、図画工作、美術、技術家庭科のような、学校の中でできる体験活動は、子どもが自分自身の興味関心・得意分野を見つける重要な機会となっており、将来のキャリア形成にも大きく影響するので、そのような教科について、「体験的に学ぶ」という観点からのアプローチも重要である。

2 教員の体験活動に関する指導力向上

○ 教員が、体験活動の意義・効果や実施の際の留意点等を理解し、体験活動に関する指導力を修得できるよう、教員養成課程等で子どもたちが体験活動をする際に引率するボランティア等としての参加の機会を積極的に設ける必要がある。

○ 教員養成段階において子どもたちの体験活動への参加の機会を取り入れることで、子どもの成長を実感したり、予期せぬ子どもの行動も予見し対応したりする、教員に必要な能力を身につけることができる。

○ 島根大学教育学部では、教員志望の学生に対し「1000時間体験学修」プログラムの履修を卒業要件として導入しており、学生は4年間を通じて、学校現場や社会教育施設等で様々な体験活動を行い成果を上げている*6。こうした体験活動を取り入れた取組例やその効果を事例集にまとめる等して、教員養成課程を設置する大学等に広く周知する必要がある。

○ 教員養成課程で体験活動を実施する際の課題としては、学生の希望と受け入れ側の学校・機関の意図との間のミスマッチや、受け入れ側の理解不足等があるが、学生の活動の成果や課題を次の年度の取組に活かすために事例発表の場を設けたり、大学側と受け入れ側の機関の意識共有を図るため定期的に会議を設けたり、また学生への事前・事後の指導を徹底したりする等の対応が効果的である。

*6 島根大学によれば、「1000時間体験学修」を修了した学生は、「子ども理解」「協力」「コミュニケーション」が優れていることが判明している。また、教育現場で働く卒業生からは「いろいろな現場に行って、たくさんの人と出会い、物事の考え方や捉え方、視野が広がった」「机上の勉強だけでは学ぶことのできない本当に社会に出て必要な経験をできた」等の感想が寄せられている。

3 大学の秋季入学移行に伴う青年期の体験活動の推進

○ 現在、東京大学を中心に大学の秋季入学への移行が議論となっており、東京大学の「入学時期の在り方に関する懇談会」報告書(平成24年3月)においては、「ギャップターム期間」中に、研究の現場に接する体験活動、学術を俯瞰する体験活動、ボランティア等の社会貢献活動、インターンシップなど勤労体験活動等の様々な多様な体験を行うことが提言されている。青年期に幅広い分野の様々な体験を行いグローバルでタフな人材を育成するとの検討の方向性について、本部会としても大いに共感し、高く評価したい。

○ また、秋季入学への対応のみならず大学生を対象とした様々な体験活動の機会が、社会に出る前の重要な経験となることを改めて指摘しておきたい。現在、秋季入学移行については、東京大学において、引き続き検討が行われているが、実際に「ギャップターム期間」中において、体験活動を推進するためには、年間何万人もの者が様々な体験活動を実施できるよう、社会全体で支援していく必要がある。

○ その際、全国28の国立青少年教育施設は、年間約500万人が活用しており、かつ、青年期を対象とした様々な事業も実施しており、そのスケールメリットやプログラム開発のノウハウを広く活用できるのではないかと考えられる。

○ イギリスでは、「ギャップイヤー」が導入されているが、経済的な理由により、体験活動ができない人もいるとの意見もあり、家庭の経済状況の格差が体験活動の格差にならないように、様々な機関と連携し支援策を講じていくことが必要である。

(2)社会全体で体験活動を推進するための機運の醸成について

1 体験活動に関する理解の促進

○ 子どもや保護者、学校それぞれにとっての体験活動の意義や目的を提示するとともに、その目的に沿ったプログラムや実施体制の整備等を検討する必要がある。

○ 特に、保護者に対しては、子どもの発達段階に応じて実施するべき体験活動とその効果を青少年機構の調査研究結果等の根拠を示しつつ積極的に情報発信することにより、体験活動への理解を広げられると考えられる。

○ 青少年育成に関する顕在的・潜在的な社会のニーズを踏まえ、体験活動の意義や効果をそのニーズに合わせてストーリーとして組み立てて、進学塾やゲームなどの他の選択肢に比べどのような利点があるかを示していくことが重要である。

2 学校・家庭・地域の連携による体験活動の推進

○ 学校で体験活動に取り組む際は、地域との連携が極めて重要である。色々な立場の人とのコミュニケーションの体験が子どもにとって必要であり、地域の人々と交流する機会などを盛り込むことが効果的である。

○ 核家族化が進み、学校では同学年の子ども同士で遊ぶことが多いが、子どもは異年齢の子どもと交わることで成長するので、そのような機会を地域と連携しつつ、意識的に提供する必要がある。

○ 学校での体験活動を推進するため、ボランティアによる学校支援活動について、学校支援地域本部等を活用してまとまりある支援体制を構築していく取組も必要である。

3 体験活動の評価・顕彰制度の創設

○ これまで議論してきたように、体験活動はコミュニケーション能力や自ら考え自ら動く力を身につけることにつながり、人間性豊かでたくましい青少年の育成につながるものである。こうした青少年をさらに養成していくため、体験活動を積極的に行った青少年を学校や社会がしっかりと評価するよう、その機運を高めていく必要がある。

○ 例えば、イギリスにおいては、青少年を対象に、奉仕活動、冒険旅行などを通じて、自主性、協調性を育み、自信や自尊心を高めることを目的とし、行った活動の時間数等に応じて賞(アワード)を授与する取組(インターナショナル・アワード)を行っている。この賞(アワード)は、就職や進学、奨学金獲得の際に評価材料ともなっており、現在までに、世界131カ国で、約700万人の青少年が参加している。

○ 日本においても、体験活動を積極的に行い様々な力を身につけた青少年が社会で評価されるよう、イギリスの事例等も参考にしつつ、日本の実情に応じた評価・顕彰制度の創設に向けて早急に検討する必要がある。その際、日本においては、用具が購入できないため部活に参加できないなど経済格差がそのまま体験格差につながっているとの指摘もあり、経済的に余裕のない家庭の子どもも参加できるよう配慮する必要がある。

4 体験活動の指導者養成

○ 青少年には良質な体験と指導者を用意することが必要不可欠であり、教室外の体験も指導できるような指導者資格を付与する仕組みを国全体で検討する必要がある。

○ 体験活動を推進するためのプログラムの企画とともに、その実施体制を検討する必要がある。プログラムの企画・実施が、担当者の異動や個々の教員の経験の多寡等、属人的な事情により大きな影響を受けないよう、組織としてプログラムの成果を蓄積・共有できるようにする必要がある。

○ 特に学校において、より質の高い体験活動を実施するため、プログラムの企画・実施においては社会教育主事の活用について、積極的に検討する必要がある。このほか、質の高い指導者養成の他、指導者等をコーディネートできる人材の育成が急務である。

○ 体験活動のうち特に自然体験活動は、生命に関わる事態が発生する危険性があり、安全管理は最も優先されるべきである。ただし、不測の事態に臨機応変に対応する力を身に付けることが体験活動の目的の一つでもあり、過度に過保護な環境を創出することはその趣旨に反する。指導者等を活用し、安全確保ができる範囲を可能な限り広げるように努め、安全確保のために活動範囲を縮小することのないよう留意する必要がある。

○ 利用者の安全確保のために、施設・設備の維持管理や研修による指導者の能力向上や連絡体制の整備、情報共有等について、国及び地方自治体が適切な支援を行うことが必要である。また、国及び青少年機構は、安全確保のための指導事例集やマニュアルの開発を進め、教育関係者が広く活用できるようするなど、安全指導に関する具体的な情報提供の方法を検討する必要がある。

(3)青少年教育施設の役割・取組について

○ 青少年教育施設は、現在、国立は全国に28、公立施設は516あり、青少年の体験活動の機会と場を提供する中心的な役割を担っている。また、青少年教育施設では自然体験だけではなく、集団で食事や入浴をするなど協調性を養ったり、規則正しい生活体験の機会を提供する場でもあり、青少年の成長に大きな影響を与えている。

○ 全国28の国立青少年教育施設は、青少年の体験活動を推進するナショナルセンターとして年間約500万人もの青少年等に利用されており、指導者養成、調査研究、モデル的なプログラムの開発・普及等を実施している。また、学校・企業・民間団体など地域社会との連携や、国公立及び民間の青少年教育施設・青少年教育団体相互のネットワーク作りを担っており、今後、その機能をさらに強化する必要がある。

○ 一方で、「独立行政法人の制度・組織の見直しの基本方針」(平成24年1月20日閣議決定)において、「国立青少年交流の家等の自治体・民間への移管等に向けた取組や稼働率の低い施設の廃止に向けた検討を積極的に進め」ることとされており、今後、例えば閑散期には施設を閉じる「季節開設」を検討するなど、体験活動の機会と場の確保という観点を踏まえつつ、より効果的・効率的な在り方について、さらに検討を行う必要がある。

○ また、国立青少年教育施設を民間活力によって活性化することは重要である。青少年団体、NPO、企業、学校、地方自治体、地域住民の方々等多様な主体が、施設の管理運営や事業の企画・実施に参画する「新しい公共」型の管理運営のさらなる推進や、所長から一般職員までの幅広い人事交流、民間出身所長の活用等が必要である。また、各地域において、少子化や地域の絆の希薄化等により、地域を担う青少年のネットーワークが薄れつつある中で、地域づくりや地域の青年リーダー養成等の中核としての機能を担うことも求められている。

○ 公立青少年教育施設では、効率的な管理運営の観点から指定管理者制度の導入が進んでいるが、優秀な人材の継続的な確保等の安定的な運営の面、そして何よりも安全面で問題が生じているとの意見もあった。公立青少年教育施設が、学校や各種団体と連携し、地域の体験活動の拠点として、より一層活用されるように、行政としても多面的な支援をする必要がある。

○ 都市部における青少年の体験活動の不足が深刻であり、ニーズ調査等も行いながら都市型の青少年教育施設についても今後検討する必要がある。このほか、農村部の青少年についても、遠方に所在する体験活動を実施できる施設に行く機会は少なく、屋内でのゲームが遊びの大半を占めている場合も多いため、家の近所で体験的な遊びができる環境づくりが求められている。

○ 青少年教育施設での活動内容の充実だけでなく、青少年教育施設の指導者を学校や教育委員会主催の研修会に講師等として派遣する等の取組や、教育委員会と連携して教員指導育成プログラム作りを考える必要がある。

4.東日本大震災を踏まえた青少年の体験活動について

○ 今回の東日本大震災のような非常事態では、用意された答えを探すだけの勉強では、適切な対応をとることが不可能である。瞬時に適切な対応をとることができる感性や生き物としての、いわば「野生の勘」を磨くためには、青少年期に自然の中で様々な体験を行うことが必要である。

○ 東日本大震災において、多くの青少年がボランティア活動を通じて成長したように、社会の一員としての自覚と責任感を高めるため、平常時においても、様々なボランティア活動等の社会貢献活動を積極的に奨励すべきである。社会貢献活動は、相手の役に立つという意義だけでなく、活動を行う側にとっても、多くのことを学ぶことができる学習の機会であるという認識を持つべきである。

○ 東日本大震災では、多くの被災者の方々が、長い間、避難所となった学校の体育館等での共同生活を送る事態となったことを踏まえ、今後、平常時から、体育館やテントでの宿泊、野外炊事といった非常時の生活を想定した体験をする機会を設けることが必要である。このような取組は、非常時にどのような行動をとるべきかを体験的に学ぶ機会となるとともに、地域住民で協働して取り組むことによって、災害時にも互いに助け合うことのできる地域の絆づくりにも繋がる。

○ このため、国は、各地域の特性に応じた体験的な防災教育を推進するため、学校等を避難所として想定した生活体験等の防災教育プログラムを地域住民や保護者の協力を得て実践する「防災キャンプ推進事業」(平成24年度から実施)のさらなる推進と成果の普及に努めることとする*7。

○ 国立青少年教育施設は、今回の大震災で延べ約5万5千人の被災者及び国立オリンピック記念青少年総合センターにおいて1千名を超える帰宅困難者等を受け入れるなど、その宿泊機能や職員の持つノウハウを活かした受入れ支援を積極的に実施した。また、国立岩手山青少年交流の家では、自衛隊からの要請に基づき、被災地支援に要する燃料補給や延べ約2万6千人の自衛隊員の休息基地として対応するなど、被災地支援に重要な役割を果たした。

○ 東日本大震災後、福島県の子どもたちは、東京電力福島第一原子力発電所の事故や、限られたスペースで活動しなければならない避難所生活の影響で、日常生活の中で多くのストレスを抱えることとなった。こうした子どもたちに対し、文部科学省及び青少年機構が実施した様々な自然体験活動等を提供する「リフレッシュ・キャンプ」*8では、参加後の子どもたちのやる気が向上(無気力感が低下)する等、様々なよい効果が見られた。

○ 引き続き、被災地では子どもの心のケアが大きな課題となっており、福島県をはじめとする被災地の子ども達に対して、こうした体験活動の機会を積極的に設けることが必要である。特に被災地にある国立青少年教育施設は、体験活動を通じて被災地の子どもたちの心のケアを行う中心的機関として積極的に機能することが必要である。

○ また、被災地を中心に、国公立の青少年教育施設を拠点として、災害現場から学ぶ体験的防災教育の仕組み作りを被災者・行政・ボランティアなど多様な主体が一体となって進めるべきである。

○ これらを踏まえ、広い敷地や多数の研修・宿泊施設をもち、質の高い職員を擁する国公立青少年教育施設において、災害への対応や防災に係る研修プログラム、「サバイバル」の要素を持った研修プログラムの開発・実施などを行い、青少年教育施設を防災拠点として、その機能強化を図る必要がある。

○ 東日本大震災の被災地でのボランティアに参加したいという大学生等も多くいるが、休学中の学費や単位取得への影響を懸念する意見もある。国内の大きな問題に取り組む体験活動は重要であり、大学等も必要な支援に努める必要がある。

*7 「学校安全の推進に関する計画」(平成24年4月27日閣議決定)において、国は「防災キャンプ推進事業」の実施と成果の普及に努めることとされている。

*8 「リフレッシュ・キャンプ」:平成23年3月11日の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により屋外活動が制限されたこと等を踏まえ、文部科学省と青少年機構が福島県の児童・生徒の心身の健康やリフレッシュを図るため、自然体験活動をはじめとする様々な体験活動の機会を提供した。福島県の子ども等を対象とした夏季は、コカ・コーラの協賛も得て、約4千名が参加した。引き続き、被災地の子ども達を対象として同様の取組を実施しており、これまで約3千5百名が参加している。

5.青少年の国際交流の推進について

○ 青少年の国際交流を推進するためには、自分の意見を正々堂々と述べたり、自分の意見とは異なった考え方を受け入れたりすることができる能力や態度を育成する必要がある。そのためには、学校教育の中でもディべートやプレゼンテーション等を積極的に取り入れ、コミュニケーション能力の育成を図るとともに、日本の豊かな伝統や文化を理解し、世界に情報発信する力の修得を図ることが重要である。

○ 国際社会で活躍できる能力・感覚を育成するためには、文化や社会体制の異なる人々と寝食を共にしたり、実際に意見交換を行ったり、様々な活動を協力して実施するなどの国際交流体験を積むことが必要不可欠である。

○ 例えば、4年に1度開催されるボーイスカウトの世界大会である世界スカウトジャンボリーでは、様々な国の青少年が、言葉は分からなくても、ともに行う体験を通じて自然にうち解けて交流を深め、互いの文化を学び合う場が形成される。このような国際交流の体験は、自国の伝統と文化を尊重するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する人材の育成に資するものである*9。2015年には、日本(山口県山口市きらら浜)で世界から約3万人が集う第23回大会が開催されることとなっており、これを契機として、青少年の国際交流の機運を醸成していく必要がある。また本大会に対し、政府としても積極的に支援を行う必要がある*10。

○ 青少年の国際交流の推進にあっては、国の明確な方針の下、地方公共団体への財政的支援等についても検討し、円滑に活動が推進されるよう環境整備を図る必要がある。

○ 海外留学者数が減少傾向にあり、若い世代の「内向き志向」も指摘される中にあって、グローバル人材の育成は急務であり、能力段階に応じた育成が必要とされている*11。一般に留学する年代(主として高等教育段階)に至る前の小中高の段階から、国際交流の機会を提供し、グローバルな視点を持てるようなきっかけを提供することにより、将来に向けて好循環を生み出すことが可能である。例えば、青少年教育施設を活用した国際交流事業などを通して、より多くの青少年が機会を得られるよう、今後、このような取組をより一層充実させることが重要である。

*9  第22回世界スカウトジャンボリー(22WSJ)調査報告書-国際的な集団野外生活が青少年に与える影響-(平成24年3月10日)

*10 第23回世界スカウトジャンボリーの実施については、平成23年12月16日に「関係行政機関は必要な協力を行うものとする」との閣議了解が行われている。

*11 「グローバル人材育成戦略」(グローバル人材育成推進会議「審議まとめ」)(平成24年6月4日)

6.今後さらに議論すべき事項

○ NPOや子ども会、青年団、青年会議所等多くの民間団体が青少年の健全育成のため、様々な体験活動プログラムを企画・実施している。これらの団体は、各地域における青少年の体験活動の推進や、地域の絆づくりにおいて、重要な役割を果たしており、これらの団体等の活性化方策について、さらに検討を行う必要がある。

○ 体験活動については、学校教育法や社会教育法において、その充実等について規定されているが、体験活動を総合的に推進するための法律の整備について、関係する様々な意見を踏まえつつ、必要な検討を行う必要がある。

お問合せ先

スポーツ・青少年局青少年課

(スポーツ・青少年局青少年課)

-- 登録:平成24年08月 --