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参考5-2 調査報告書要約(公益財団法人日本オリンピック委員会(JOC))

平成24年3月26日

調査報告書 要約

公益財団法人日本オリンピック委員会
第三者特別調査委員会

【本調査における当委員会の課題】

当委員会は、本調査において、1.専任コーチ等2.マネジメント機能強化事業に従事している者が、競技団体に対して寄付をした行為について、第1に、事実関係を調査し、第2に、これらの寄付に違法または不適切があったかを判断し、第3に、これらの問題についてのJOCの関与とその当不当を判断し、第4に、これらの問題の原因・背景と今後の改善方向の提言を検討した。

検討対象期間は、専任コーチ等設置事業については、平成18年度から平成22年度まで、マネジメント機能強化事業については、平成21年度及び22年度である。

【専任コーチ等設置事業(国庫補助金)の内容】

JOCが委嘱した専任コーチ等への謝金は、その3分の2は国庫補助を原資とし、3分の1は専任コーチ等が従事する競技団体からJOCへの負担金が原資とされているが、これを定めているのはJOC専任コーチ規則※である。検討対象期間に、JOCが国庫を受けて専任コーチ等を設置した競技団体は、全加盟団体58団体中、35団体である。(※「専任コーチ等設置要項」及び「専任コーチに関する内規」をいう。)

【競技力向上のためのマネジメント機能強化事業の内容】

「競技力向上のためのマネジメント機能強化事業」助成金は、4分の3助成であり、競技団体が事業費の4分の1を負担することが要件となった助成である(平成21年度から。)。検討対象期間に、スポーツ振興センターより「競技力向上のためのマネジメント機能強化事業」として助成をうけた競技団体は、7競技団体である(平成21年度は3名、平成22年度は5名)。

【従事者から競技団体への寄付の状況に関するアンケートの結果】

当委員会は、検討対象期間にJOCより専任コーチ等の設置を受けた35競技団体に対し、同期間に、謝金を受け取った個人から寄付を受けたか否か等を尋ねるアンケートを行った。その結果、14団体において、これらの個人から競技団体への寄付が行われていたことが判明した。

【競技団体からの事情聴取】

当委員会は、上記14団体の内、寄附金額が稀少と認められた3団体を除く11団体の関係者(44名)及びJOC関係者(7名)から、事情聴取を行った。

【判断の基準(基本的な考え方)】

《専任コーチ等設置事業》

専任コーチが競技団体に対して寄付をする行為は、法律・JOC専任コーチ規則上は何ら制限されていない。しかし、JOC専任コーチ規則に定める競技団体が負担すべき部分(謝金の3分の1)の負担を回避させる目的(負担回避目的)をもって、専任コーチ等に寄付をさせて当該競技団体に環流させた場合、競技団体は、負担の要件を実質的に満たしていない状態でJOCに謝金を支払わせたこととなる。これはJOC専任コーチ規則に違反する。

具体的には、

  1. 申請前に寄付の個別的な明示または黙示の合意があった場合
  2. 申請後に負担回避目的を伴う寄付の合意が明示または黙示にされた場合
  3. 寄付が慣行として「制度化」されていた場合

→競技団体側に負担回避目的があり、JOC専任コーチ規則に違反しまたはこれを逸脱する。

上記1.2.3.を認定するにあたっては、

(a)寄付の額の多寡
(b)専任コーチ等の全員あるいは大部分が寄付しているか否か
(c)寄付の時期等に規則性があるか否か
が、重要な事実となる。

《マネジメント強化事業》

マネジメント機能強化事業従事者が競技団体に対して寄付をする行為は、何ら制限されていない。しかし、この謝金の助成は、競技団体の謝金の4分の1負担を前提としている。マネジメント機能強化事業従事者と競技団体との間で、競技団体負担部分を免除することを目的として、謝金を寄付して競技団体に環流させた場合、競技団体はその負担を免れる結果となり、助成の基本方針を逸脱し、あるいは、助成割合を同センターに無断で変更したのと同じ結果となる。

【専任コーチ等からの寄付に関する競技団体ごとの事実認定と判断】

《問題がなかったと判断した事例》

(1) 一部の専任コーチからの寄付の事実はあったが、寄付額が少額である等の理由により負担回避目的があったとは認められなかった事例

財団法人日本テニス協会

社団法人日本ウエイトリフティング協会

財団法人日本自転車競技連盟

  • 寄付金額が少額である(年間1万円から3万円。)。
  • 寄付者は専任コーチの一部にとどまる。
  • 寄付者の寄付の時期についても規則性が見られない。

→謝金と寄付との間には牽連関係が希薄である。専任コーチ等においても競技団体においても、負担回避目的があったとは認められない。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

(2) 一部の専任コーチからの寄付はあったが、調査対象期間中の謝金との関連性がなく、負担回避目的があったとは認められなかった事例

財団法人日本アイスホッケー連盟

  • 寄付を行ったコーチは、4名中1名のみ(実人数)。※
  • この寄付は、調査対象期間に当該専任コーチが受領した謝金との関連性がなく、負担回避目的とは異質。

→負担回避目的はなかったものと判断。

※平成13年と15年に設置された1名の専任コーチ名義の通帳が競技団体に保管されていたところ、当該専任コーチが平成21年度以降再び専任コーチに委嘱され、平成22年度に、競技団体からの要請により、通帳預金残高(約857万円)全額が競技団体に寄付されたもの。

《問題があったと判断した事例》

(1) 専任コーチ等が競技団体負担部分相当額を寄付することについて、負担回避目的があったが、競技団体は受動的であり、かつ件数が少なかった事例

公益社団法人日本カヌー連盟

  • 7名の専任コーチ等のうち3名(いずれも実人数)から寄付がある。
  • そのうち2名の専任コーチからの寄付は、立替経費の精算を放棄したものを経理上寄付と処理したもの。

→負担回避目的は認められない。

  • 残り1名の専任コーチは、平19年度に競技団体負担部分と同額を寄付。金額、寄付の動機等に照らせば、専任コーチと競技団体との間には少なくとも黙示的な負担回避目的があったものと認められる。

→この1名・1年度分の寄付については、不適切。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

財団法人全日本柔道連盟

  • 専任コーチ等実人数14名のうち1名が、自発的に競技団体負担部分と同額を3年間にわたって寄付。
  • 寄付者と会計担当事務職員の間の協議により、「(競技団体)負担金戻し」という名目で処理されていた。

→専任コーチ側に負担回避目的があり、競技団体においてもこのような名目の寄付を早期に発見・是正が可能だったものであり、管理・監査が十分でなかったと言わざるを得ず、不適切。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

  • 柔道連盟は、平成23年度以降は専任コーチからの寄付を受け取っていないことは、酌むべき事情である。

(2) 専任コーチ等が競技団体負担部分相当額を寄付することについて、競技団体側に明確な負担回避目的があったが、件数が少なかった事例

社団法人日本ホッケー協会

  • 10名の専任コーチ(実人数)中、2名の専任コーチから寄付。
  • 1名は、平成19年度に競技団体負担部分と同額を寄付し、平成20年度には未収のまま会計上は「コーチ寄付金」として収入に計上された後、平成21年度に競技団体負担部分と同額を寄付。
  • もう1名は、平成19年度に競技団体負担部分の半額を寄付し、平成20年度に競技団体負担分と同額を寄付。

→専任コーチ等・競技団体とも負担回避目的があったと認められる。寄付者は2名のみだが、不適切。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

社団法人日本ボート協会

  • 9名の専任コーチ(実人数)のうち1名から、平成20年度に、競技団体負担部分と同額の寄付。
  • これは、同人が専任コーチに就任後、競技団体から金額を指定した寄付の要請があり、専任コーチ側がこれに応じたもの。

→寄付者は1名のみだが、競技団体から専任コーチに対し寄付の要請があったものであり、不適切。

(3) 専任コーチ等が競技団体負担部分相当額を寄付することについて、負担回避目的があり、寄付の件数が相当数に上っていた事例

財団法人日本水泳連盟

  • 競技団体から、専任コーチ等の中で主に統括的立場にある者に対し、専任コーチ等に就任した当初の時点で、競技団体負担部分の半額を目安とした寄付の要請を行っていた。
  • 実際に寄付を行ったのは専任コーチ等の約半数(専任コーチ16名中8名(実人数))。
  • 寄付の金額は、半数は目安とされた額あるいはそれに近い額だが、残り半数はまちまち。専任コーチ等には諾否の自由があり、寄付の依頼に対する対応は各人の任意であった。

→競技団体から専任コーチに対し寄付の要請があった事実は存在し、実際にも相当数の専任コーチ等からの寄付が行われていた以上、不適切との評価は免れない。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

  • 平成22年度以降は専任コーチに対する寄付の要請を行っていないことは、酌むべき事情である。

(4) 専任コーチ等が競技団体負担部分を寄付することについて負担回避目的があり、これが競技団体内の慣習に至っていた事例

財団法人日本セーリング連盟

社団法人日本近代五種・バイアスロン連合

(現在は、社団法人日本近代五種協会、一般社団法人日本バイアスロン連盟)

日本ボブスレー・リュージュ連盟

社団法人日本カーリング協会

  • 寄付金額は、謝金総額の3分の1。
  • 寄付者は専任コーチの全員またはほぼ全員。
  • 寄付者の寄付の時期について、多くが秋と年度末の2度に分けて謝金総額の6分の1ずつ寄付をしており、共通性がある。
  • 各競技団体に所属する者が、専任コーチ等から競技団体に対する負担部分の寄付が慣行として確立していたと回答。
  • 多くは、専任コーチ等に就任する以前から、専任コーチ等が競技団体負担部分を競技団体に寄付している慣行及び競技団体が財政的に余力の少ない事情を認識していた。

→競技団体に負担回避目的があり、競技団体と専任コーチ等との間に専任コーチ等からの謝金の競技団体負担部分の寄付を受ける慣行が存在。

→専任コーチ等に活動実態がないと認定するに足りる事情は認められなかった。

  • ボブスレー・リュージュ連盟において、平成21年度には、2名の専任コーチから競技団体負担部分のおよそ半額の寄付がなされているが、残額については経済的事情を理由にこれらの専任コーチからは寄付がなされず、その所属地方競技団体または関係者から残額相当額の寄付がなされている。カーリング協会においても、平成20年度から平成22年度の間、1名の専任コーチから経済的事情を理由に寄付がなされず、その所属地方競技団体から競技団体負担部分相当額の寄付がなされている。

→所属地方競技団体または関係者が寄付した範囲では、専任コーチは謝金を受け取っており、寄付を経由して競技団体負担部分の原資とされたものではなく、負担回避目的が認められない。

  • ボブスレー・リュージュ連盟は、上記寄付の慣習を自ら克服し、理事会決議により、平成22年度以降は専任コーチからの寄付の受け入れをやめていることは酌むべき事情である。また、平成21年度に行われた寄付のうち60%弱の金額を寄付を行った専任コーチに返金している。

【マネジメント機能強化事業従事者からの寄付に関する、競技団体ごとの事実認定と評価】

社団法人日本ボート協会 負担回避目的は認められず、問題がない。

財団法人日本セーリング連盟 負担回避目的を伴うものであり、問題がある。

社団法人日本カーリング協会 負担回避目的を伴った寄付の範疇を超え、強制の契機がうかがわれ、大きな問題がある。

【JOCの責任の有無】

  • JOC、専任コーチ等による競技団体への寄付の事実を認識しながら、その対策を怠り、放置したことにより、結果としてこれを黙認していた。
  • マネジメント機能強化事業従事者からの寄付が行われたことも、JOCが専任コーチ等による寄付を黙認していたことが背景にある。

→JOCに組織としての責任が認められる(特に強化部、総務部)。

【社団法人全日本テコンドー協会について】

《専任コーチ等設置事業》

  • テコンドー協会会長は、ヒアリングにおいて、「専任コーチは、謝金全額を受領できるだけの活動実態がないため、専任コーチには、最後の2ヶ月を除き月額10万円または5万円のみを受け取らせ、最後の2ヶ月分は税金の支払いがあるので月額謝金全額を受け取らせ、残額は自分に預けさせた。そして、これをテコンドー協会の会計に入れることなく自分で管理し、韓国の監督、コーチへの謝礼や大会遠征費用等として使用した。これをテコンドー協会に寄付したわけではない。」と自ら発言した。
  • テコンドー協会からは、本報告書発表の直前に、専任コーチ謝金支払明細と題する書面が提出されたが、その内容は、テコンドー協会会長の上記発言と一部において一致し、一部において相違している。
  • 断定はできないが、テコンドー協会会長は、専任コーチに支給された謝金の中から、競技団体負担分を大幅に超える金額を預かって自己で管理していた可能性が高い。仮にそれが事実であれば、専任コーチに支払われた謝金の大半が会長の手に渡っていること、これを会長がテコンドー協会の簿外で処理している可能性があること等の問題を含んでおり、不当なものであるにとどまらず、不正というべき可能性が極めて高い。

《マネジメント機能強化事業》

  • JOC元事務局長は、マネジメント機能強化事業申請時に、協会負担分の原資を協会外部から獲得する必要があることを理解しており、テコンドー協会会長も同様に認識していたが、実際には、平成21年度と比較して、新たな収入源を確保することはできなかった。

→寄付が行われた時点では、テコンドー協会会長とJOC元事務局長の間で、負担回避目的があったと強く疑われる。

  • マネジメント機能強化事業の申請時に、テコンドー協会会長とJOC元事務局長の間で協会負担分の寄付を行うことを約束したり予定したりしていたことまでを確定することはできない。
  • しかし、テコンドー協会とJOC元事務局長の間で、マネジメント機能強化事業の申請時から、仮に新たな財源を確保できなければJOC元事務局長から競技団体への寄付により協会負担部分をまかなうことが了解されていたとの疑念は払拭できない。

→疑念を生じさせるような行為を、JOC元事務局長がJOCに在籍中に行ったことは、不適切なものであったといわざるを得ない。

《JOC元事務局長のマネジメントディレクターとしての稼働実態》

  • JOC顧問としての活動については多くの時間を費やしていた一方、マネジメントディレクターとして新規ではないものの2つの企業からのテコンドー協会への補助を取り付ける活動を行い、テコンドー協会会長に関する専任コーチ等の謝金にまつわる疑惑を調査し是正しようとした活動やテコンドー協会の組織体制の整備に関する活動を行った。

→マネジメントディレクターに対する報酬相当の活動がなかったとまではいえない。

《専任コーチ等設置事業に関するJOCによる指導ないし助言について》

  • JOC元事務局長は、テコンドー協会の総務委員会で謝金プール問題が浮上した際、総務委員長として事実を調査しようと試みたが、これにテコンドー協会会長が抵抗したため、JOC事務局を動かし、JOC事務局からテコンドー協会に対する調査・報告を命ずることによって調査を進めようとした経緯が認められる。

→テコンドー協会会長による謝金の扱いについて、JOCが組織として助言したり許容したりしていたことまでは認められない。

  • しかし、このような問題が発生したのは、JOCが専任コーチ等による寄付を黙認していたことが背景にある。

《付言》

  • 当委員会の調査は、任意の協力を前提として行われ、かつ時間的にも短期間という制約の下に行われたものであって、調査には限界があったことを否定できない。
  • テコンドー協会における謝金プール問題に関しては、今後、さらに十分な調査が行われ、真相が解明されることを期待する。

【原因・背景についての検討と今後のあり方】

  • 負担金への還元につながる多額の寄付は、補助金の根本原則に触れるものである。謝金を受けた者からの競技団体に対する寄付に関して厳しいガイドライン等を設けるべきである。
  • 競技団体における会計処理を明確にし、JOCの競技団体に対する会計監査を充実させるべきである。
  • 競技団体負担部分についての寄付が広範に行われた背景には、競技団体の経済的基盤の脆弱性がある。
  • 新しい公益法人制度が発足し、競技団体はこれまでにない出費がかさんで赤字に苦しんでいる。
  • JOCの自己負担部分3分の1を競技団体にそのまま一律に準用する必要はなく、自己財源であるマーケティングの収益等で正面からまかなう努力を強める必要がある。
  • 専任コーチ制度は、世界の指導者に比して待遇が行き届いているとは言いがたい。他方で、稼働日数や指導実態に対して内容にそぐわない過分な対応だとされるケースもある。実情に応じたきめ細かな給付額を決定すべである。
  • 平成13年にスポーツ振興基本計画が策定されてから、スポーツ団体の経済的基盤の脆弱性の状況改善をしないまま長年にわたり放置したことが、今回明らかになった競技団体の行動の背景に横たわっている。
  • 不適切な寄附を慣例化していた競技団体の責任も指摘せざるをえないが、問題点の改善を怠ってきたJOCにも大きな責任があり、すべての責任が競技団体に帰すると断じることはできない。専任コーチ制度を含めた、日本の競技スポーツ環境に対する抜本的な改革が必要である。

注)競技団体の名称等は、特記なき限り、平成22年度末(平成23年3月31日)を基準とした。

お問合せ先

スポーツ・青少年局競技スポーツ課

(スポーツ・青少年局競技スポーツ課)

-- 登録:平成24年04月 --