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資料12 社団法人日本体育学会1

スポーツ基本計画について(ヒアリング対応メモ)

社団法人日本体育学会

1.スポーツ基本計画が対応すべき課題

「スポーツ振興基本計画の達成状況と課題(文部科学省)」及び「スポーツ振興に関する特別委員会における意見」において,触れられていないが今後10年間で是非とも改善・解決すべき問題の指摘(資料2参照)

2.スポーツ基本計画の基本的方向(スポーツ推進政策の基本原理:古い文化から新しい文化へ)

 (1)「格差・不平等・疎外」から「平等・公平・公正」へ

 (2)「依存・寄生」から「自治・自立・自律」へ

 (3)「孤立・分散」から「連帯・協働」へ

3.スポーツ基本計画に必要な施策

(1)「提言1」子どもスポーツからの再構築

―「平等・公平」なスポーツライフの質保障-

1)体育・スポーツカリキュラムの質保障

 1  スポーツに関わる総合的な教養を育成する体育カリキュラムモデル(教科体育以外のスポーツ機会を含めた運動・スポーツに関わる学びの経験の総体)の開発

 2  教師教育の量的・質的充実

2)学校運動部活動の再編・新設

■幼児期から小学生までの放課後クラブの設置

■児童生徒の主体的運営と児童生徒の多様性に対応した活動形態・活動内容の多様化(「ブカツ」から「クラブ」へ)

■過熱化及びハラスメント行為の規制・抑制

■学校体育大会のあり方の再検討 

<提案理由>

1  立国戦略に示された「新しいスポーツ文化の確立」のためにはこれまでのスポーツ文化を再生産してきた学校運動部活動の再編が不可避であること

2  スポーツ享受をめぐる現代の格差問題を克服し,平等で公平なスポーツ推進を図るためにも全ての子どもに開かれた運動部活動の役割はますます重要となるが,近年,その平等性・公平性保障に困難が生じつつあるということ.また,小学生以下の世代でスポーツ享受機会の格差が著しいこと

3  日本学術会議健康・生活科学委員会,健康・スポーツ科学分科会の提言「子どもを元気にする運動・スポーツの適正実施のための基本指針」(2011.8)に示されている内容(多様な運動・スポーツを経験すること及び子どもの自発性の重要性)は,現行の運動部活動の抜本的な改革がなければ実現できないと考えられること

4  学校運動部はスポーツに関わる総合的な教養を育むための有効な教育機会であり,総合型地域スポーツクラブを含むコミュニティスポーツクラブの文化的・人的基盤であること

5  学校体育を基盤とするスポーツプロモーションの強化は,国際的な潮流(国連、ユネスコ)である.わが国はこの点で既に長い蓄積があり、学校体育分野では世界をリードするイニシアティブを発揮することが期待されること

6  学習指導要領の改訂により学校教育の一環であることが明示されたこと

  →以上の理由から,学校運動部の抜本的な転換をこの機会に強く打ち出す必要がある.

(2)自治・自立・自律の基盤整備

~地域主権と住民自治,及びスポーツの団体自治(依存からの脱却)に向けて~

 1)「提言6」スポーツ施設整備拡充10ヵ年総合計画を定める.またその際に,学校施設については「体育施設」から「スポーツ施設」へと整備改修計画を推進する.

 2)「提言7」地方自治体においてスポーツの計画的・継続的推進を担う専門職の配置及び体育・スポーツ関連学会との連携・協働

 3)「提言8」日常生活圏を基礎とする住民主導型システムの核となる住民スポーツ自治組織(総合型地域スポーツクラブを含む多様な地域スポーツ団体の連合体)を学区レベルに設置

   →本施策は,地域レベルにおける「連帯・協働」のための方策としても位置づけられる

(3)「提言14.15」 良質の政策形成に向けて―エビデンスに基づく政策の推進―

 エビデンスを「つくる」「つたえる」仕組みの整備充実

  1)政策評価のためのスポーツ関連指標(例:スポーツライフ指標,国際競技力指標等)の開発

  2)体育・スポーツに関する総合的な「学術」研究の推進

   →スポーツ推進の公益性・社会的有用性に関わるエビデンスの蓄積

   →スポーツの公益性を効果的に高める推進方策の検証      

      →JISSの人文・社会科学部門への拡充

 3)官-学の連携・協働研究推進体制の構築 

スポーツ振興基本計画の達成状況と課題について

―今後10年間で改善・解決すべき問題点のリスト―

(1)   スポーツ振興のアウトカムをめぐる問題

【スポーツ実施状況】

  1 「スポーツ無縁者(1年間の間に一度もスポーツをしない者)」の微増

  2 個人主義的スポーツ志向,スポーツによる社会的交流の衰退

  3 クラブへの加入率は横ばいのまま推移

  4 スポーツが重要な地域課題・生活内容とはなり得ていない 

  5 ボランタリズムや市民意識,自治意識・能力に関わる問題

【スポーツ享受をめぐる格差問題】

  6 スポーツ享受の格差(地域間格差・学校間格差・家庭間格差等)やスポーツ機会の不平等(経済的・時間的・身体的・能力的・心理的条件等々の富める人と貧しい人々との間の格差)

  7 家庭の経済的条件が生むスポーツ享受の格差及びその拡大可能性,子ども世代がその影響を強く受けている(金銭面での負担感は,幼児・小学生をもつ親に強く,運動部活動が設置されている中学・高校生の親では低い)→「裕福な家庭に生まれなければスポーツさえもできない」状況→格差の再生産へ

  8 遊び社会の衰退(金がかからず大人の関与のない運動遊びの消失)

  9 遊びの貧困化(遊びの商品化・サービス化による遊びの創造的機能の喪失)

  10 スポーツの産業化の進展や地域スポーツクラブの受益者負担強調によりカネのかかる余暇活動に→経済的条件の影響がすべての世代に

  11 運動・スポーツ行動における二極化問題(スポーツに旺盛な興味や意欲を持つ者とほとんど興味・関心を示さない者という心理的条件の格差,運動を過度にしすぎる者とほとんどしない者、この傾向は子ども世代だけではない)

【スポーツ享受の格差と現代スポーツの特質】

  12 格差問題解消のためにはスポーツ文化の質的改革(新しいスポーツ文化の確立)が必要

  13 生涯スポーツを目指した総合的体育カリキュラムが整備されておらず、学校における教科体育だけでスポーツ文化の質的転換を図るには限界

  14 保体審答申(1997)、スポーツ振興基本計画(2000)の政策意図(生徒の主体性と多様性に対応した柔軟な運営)にもかかわらず,「一つの種目を,他を犠牲にしてでも勝利を目指す」運動部が未だに大勢を占め(運動の楽しみの特定化),勝利・業績主義、鍛錬主義、集団主義、ゲスト主義、権威主義、規律訓練的な文化的性質が強い

  15 過度な練習等が原因とされる傷害・障害,パワー・ハラスメント的行為(体罰・しごき),バーンアウト等「スポーツからの逃走」

 16 近年では,学校選択制の導入や私立学校の増加に伴い,運動部活動が学校経営の道具として利用される傾向が強まり,上記のような文化的特質を強化

  17 小学生を対象とした地域スポーツクラブ等にも共通して見られる特徴

  18 クラブライフの拒否傾向(「クラブに今後も加入したいとは思わない」人々がクラブ未加入者の5割超)

【スポーツ情報・知識・教養に関わる問題】

  国民一人ひとりが,自らのライフスタイルに適した豊かなスポーツライフを送るために,そして国民運動としての新しいスポーツ文化の創造に主体的に参加するためには,正しい知識を教養として身につけることが大切であり,そのための情報提供と教育機会が必要

  19 自ら自己に適した運動プログラム(運動強度・運動頻度・運動方法)を作成できる力,スポーツの歴史的発展や文化的特性,現代スポーツの特徴に関わる知識等のスポーツ教養の習得状況については,総じて満足できる水準にはない?→正確なデータが整備されていない

  20 スポーツ政策・施策・事業への関心と認知度の低さ

総合型地域スポーツクラブや学校体育施設開放等,地域住民の身近な生活圏で展開されている施策でさえ一部の人々にしか届いていない.

(2)スポーツ推進の組織的問題

【自治体スポーツ行政に関わる問題】

■スポーツ行政システムの「中央依存」

スポーツ振興基本計画単独の策定率の低さ,計画内容の独自性の制限

■スポーツ行政組織の政策マネジメント力の低さ(特に小規模自治体)→スポーツ環境の「地域間格差」 

担当職員の専門性に関わる問題に起因

■国と自治体の役割分担は不明確なまま(特に都道府県の役割)

■国→都道府県→市町村というトップダウン型行政指導に終始し,基礎自治体による自律的な政策展開を制約

■縦割り型行政が根強く,特に地域スポーツクラブの推進に不可欠な他部局(例えば,生涯学習・福祉・まちづくり・健康保健関連部局等)との連携・共同を基本とする総合行政化が進まない

【スポーツ連盟・団体に関わる問題】

■スポーツ諸組織間の有機的な協働関係が弱い

■スポーツの推進が地域コミュニティの形成へ貢献するために必要な地域諸団体(自治会・町内会,学習・文化系団体,福祉団体等々)とのネットワークが形成されていない

■自立した経営体として自律的な経営機能を十分に発揮しているという組織状況にない行政「依存」の組織・事業運営が一般化

(3)スポーツ推進の資源的問題

■スポーツ活動の物質的基礎となる運動・スポーツ施設の絶対的不足

■地域住民の日常生活圏における身近なスポーツ活動の場となる学校体育施設及び公共スポーツ施設の不足は深刻

■スポーツ実施率を上昇させるという目標を掲げていながら,目標値を実現するための施設整備基準と整備計画が示されていない.

■学校体育施設開放:運営組織及び管理運営の方法に多くの問題→学校体育施設の利用者が少ない

■指導者養成・研修・派遣・管理等の総合的なプラニングを遂行する人材が不在であることが指導者問題を含めた諸々の資源問題の根底にある

上記のような古くて新しいスポーツ問題が繰り返し再生産されている.

そうしたスポーツ文化とスポーツ環境の中からは,新しいスポーツ文化創造の担い手が育たないと考えられる.

お問合せ先

スポーツ・青少年局スポーツ・青少年企画課

(スポーツ・青少年局スポーツ・青少年企画課)

-- 登録:平成23年11月 --