第3 学生支援・学習環境整備について

 学生支援・学習環境整備については,既に,公的な質保証システムの観点からの検討課題を示したが,ここではその他の観点として,学生相談,学修支援,経済的支援について,現時点までの審議経過を整理した。

1 多様なニーズに対応する大学教育を実現するための総合的な学生支援

1.学生支援については,学生相談,学修支援,経済的支援等に対応する総合的な拠点を設ける大学や,相談内容に応じて複数の窓口を設置する大学等,様々な形態で行われている。
 学生相談の内容が,対人関係,学修上の問題,経済的問題等,多様化しており,また,学生が抱える課題には様々な背景がある可能性も高いため,学内外の関係機関による有機的な連携・協力が非常に重要である。

2.以上のような観点から,多様なニーズに対応する大学教育を実現するための総合的な学生支援について,以下のような検討課題が考えられる。

検討課題(例)

ア 社会や学生の多様なニーズを適切に把握し,学生支援に係る関係機関がそれぞれの役割・機能を明確化した上で,有機的に連携して行うよう,以下のような大学の取組を支援。

  • 学生の履修支援,学生生活支援,留学生支援を一体的,かつ総合的に行う学生支援体制の整備,担当する教職員の位置付けの明確化と能力開発。
  • 学生の多様性(社会人,留学生,障害学生等),学習・生活習慣に課題がある者の個別ニーズを適切に把握・支援。
  • 増大する相談へのニーズや必要な支援に即応できる学生相談体制の充実
    (就職相談窓口の充実など学生の就職支援の環境整備,学生に関わる事件・事故等に適切に対応する体制の整備や,学内外の関係機関との連携・協力の促進等を含む。)。
  • 学生支援の多様な機能・窓口を充実させるとともに,学生のあらゆる相談に応じる窓口をワンストップ・サービスで行う。
  • キャリア支援における高校と大学との協議機関の設置など連携・協力体制。
  • 大学生のキャリアパスの多様化に伴う大学と企業等との連携・協力への支援。
  • 留学生支援における優れた教育や学生生活支援に関し,共同利用も含めた支援。

イ 大学院進学を決断するに当たって大学院修了後の就職が重要な要素となっていることを踏まえ,大学院におけるキャリア情報の提供,インターンシップ等のキャリア支援の充実,キャリアアドバイザー等の体制の整備等,キャリア支援を強化。
 国は,そのような大学院の取組を支援するための措置について,分野別に検討。

ウ 各大学院は,学生の学修状況,特に長期欠席者の実態や満期退学者の進路等に関する実態等の把握に努め,状況に応じた指導・支援。

エ 学生の就職活動の早期化・長期化の問題に関し,学士課程における学修や,修士課程における学修・研究活動に支障を及ぼさないような在り方について,今後とも民間企業等と連携した検討。

2 学生への経済的支援方策

1.高等教育への公財政支出に関しては,平成17年1月の「我が国の高等教育の将来像(答申)」において言及しているほか,平成20年7月に政府によって閣議決定された「教育振興基本計画」の策定に先立ち,中央教育審議会でも議論されている。
 我が国の高等教育に対する公財政支出は,他の教育先進国と比較して低く,高等教育費に占める家計負担の占める割合が高い。また,大学の授業料が,国公私立を問わず年々上昇しているなど,教育費の負担が増加傾向にある。
 さらに,大学の中途退学者のうち経済的理由で退学する学生は,平成21年3月20日時点で約16%(7,711人)に達したという調査結果も報告されている。
 これらを踏まえ,経済的に困難な者が修学を断念することがないよう,一層の教育費負担軽減策を充実することが課題となっている。

2.今後,経済的に困難な状況にある若年者が教育費の負担増を恐れ,進学を断念する事例が増加することは,個人として能力が活かされないだけでなく,社会全体にとっても人材の損失を招くことが懸念される。
 このため,教育の機会均等を図る観点から,学生への経済的支援を全体的に充実することが重要であるが,一定の財源の中で,特に経済的に困窮している学生に対し優先して支援が行き届くようにすることが重要である。

3.また,様々な経済的支援が行われる中で,進学を希望する者が必要な情報を得られず断念したり,学生が将来の経済的負担の見通しを立てられず,進学を断念することがないよう,奨学金等の経済的支援に関し,きめ細かな情報提供と相談体制の強化が不可欠である。

4.以上のような観点から,多様なニーズに対応する大学教育を実現するための総合的な学生支援について,以下のような検討課題が考えられる。

検討課題(例)

ア 経済的に困難な学生が修学を断念することがなく安心して学べるよう,教育機会を確保する観点から,学生への授業料減免や奨学金等の教育費負担の軽減を推進。

(総合的な経済的支援の在り方)

  • 低所得層の学生への授業料減免事業による国の支援策。
  • 諸外国の施策を参考とした給付奨学金,教育費減税の在り方,大学の自主的な経済的支援等。
  • 優秀な学生が経済的な不安を抱えることなく大学院に進学するような条件整備を行う必要があるため,育英的な観点からの生活費相当額程度の経済的支援とともに,TA(ティーチング・アシスタント),RA(リサーチ・アシスタント)及び研究奨励金(フェローシップ)等による経済的支援の大幅な拡充。
     その際,各大学において,競争的資金から必要な額を大学院生の経済的支援に充てることを求めるなどの方策。
  • 民間団体が行う給付・貸与奨学事業への支援。
  • 我が国における奨学と育英の支援策の基本的な目的,効果等を明確化。
  • 大学の設置形態に配慮した教育費負担軽減の在り方についての議論が必要。

(個人のニーズに応じたきめ細かな支援の在り方)

  • 各大学は,進学にかかるコストの提示及び学生に対する経済的支援等に関する見通し(ファイナンシャル・プラン)を作成支援。
  • 奨学金制度に関する情報を得られないまま大学の進学を断念することがないよう,高等学校段階も含めた情報提供,相談体制を強化。
  • 独立行政法人日本学生支援機構の奨学金を返還する者が経済的困窮な場合に認められる返還猶予制度において,大学・大学院卒業者の雇用状況や,低所得者の割合が高いことなどの現状を踏まえ,就業状況や所得状況など経済状況に応じた減額返還の仕組みを導入。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

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