4.関係省庁・関係機関等の連携による有機的、総合的な推進

 留学生を30万人迎え入れることは、とりもなおさず我が国がグローバル化し、世界の中で存在感をさらに高めていく戦略の一環として考える必要があり、教育政策のみでこれを論じ、対応していくことは不可能である。このため、国家戦略としての留学生政策と位置付けて展開することが重要であり、特に、関係省庁・関係機関等とがそれぞれ工夫しながら連携して取組を進めることが必要不可欠である。

(1)外交戦略や入国管理、労働政策等関係省庁との連携体制

  1.  外交政策に関しては、短期的には、外交的要請や各国の教育事情に応じて、戦略的、機動的な対応が求められるとともに、中長期的観点からは我が国にとって安定した国際環境を構築する点を特に注視しつつ、我が国の外交戦略と連携して、留学生の受入れを展開することが必要である。このため外務省は文部科学省と密接に連携し、特に、国費外国人留学生制度の大使館推薦による留学生の選抜方法の改善や国別割当ての恒常的見直しを行うとともに、同制度の戦略機動枠に外交戦略が的確に反映されるよう有効活用していくことにも留意する必要がある。また、在外公館によって優秀な留学生獲得に対する姿勢や取組に温度差があることから、特に外務省が実施する在外公館への職員派遣に際して行われる事前研修の中に、留学生に関する事項についても詳細に派遣予定者に教授するといった取組も有効であり、各在外公館を通じたスタンダードが確保され、国費外国人留学生制度への取組が安定的に行われることが望まれる。
  2.  入国管理に関しては、真に勉学を目的とする者については簡便に入国できるなど留学生の日本留学の意欲を削ぐことのないよう、大学等の在籍管理が適切に行われているところには、書類や手続きについて考慮するなど、入国審査について格段の配慮が求められる。一方で、大学等受入れ機関においても、留学生の在籍管理を組織的に徹底して行う体制を整備するとともに、入国管理当局との円滑な情報交換等連携を進めるべきである。また、我が国では、日本語学校に在籍する学生の在留資格は「就学」と区分されているが、日本語教育機関卒業生の7割が我が国の大学等に進学し、留学生となることを考慮した扱いとなることが期待される。
     なお、財団法人日本語教育振興協会と中国教育部学位及び大学院生教育発展センターの合意により、平成18年10月より、中国の大学入学統一試験の成績と高等学校の統一試験の合格証書及び成績の認証制度が開始され、我が国の日本語教育機関に入学を希望する中国人学生の選考に活用されている。このような取組は、学生の質の確保に加え、入国審査の円滑化にもつながることから、大学等にもこうした取組が拡大されることが期待される。また、他国の統一試験の成績認証の可能性についても検討が求められる。
  3.  
  4.  留学生の宿舎の確保は喫緊の課題であり、2.(2)5.で述べたように、国土交通省や都市再生機構、地方公共団体が実施する入居促進制度を積極的に活用することが必要である。その際、制度のPRとともに、大学側の積極的な取組が重要であり、相互の連携、情報共有が必要である。
  5.  就職の機会が拡大することが、留学生獲得の重要な鍵となる。現在、日本に就職する留学生のうち、従業員300人以上の企業に就職する割合は25%(平成18年)にとどまっている。優秀な留学生の我が国企業、特に大企業への受入れの拡大を進めることが望まれる。就職についても3.(1)で述べたように、関係省庁、機関との連携が必要である。

 このように、今回の留学生30万人計画の策定を契機に、関係省庁・関係機関等の連携・協力体制が確立され、有機的・総合的に様々な取組が推進されることが必要不可欠である。

(2)民間企業や地域との連携

 関係省庁間のみならず、広く民間企業や地域とも連携して取組を有機的・総合的に進める必要がある。
 例えば、大分県別府市は我が国唯一の「留学生特区」として認定され、市民の国際理解及びホームステイの促進・医療救急体制の整備等留学生支援に取り組んでいる。また、公営住宅を目的外使用し留学生宿舎に提供している。
 さらに、行政、商工会や県内の大学など広く関係者が集まってコンソーシアムを設立し、様々な事業を通じた地域と留学生との交流促進や地元企業と連携したインターンシップ事業、留学生への生活支援事業などを行っている。
 このような事例を参考に、地方公共団体が留学生受入れの強力なサポーターとなり、各地域の関係機関が連携した取組を進めることが望まれる。また、地域ぐるみの受入れを進めるため、都道府県ごとにある留学生交流推進会議のあり方を見直すとともに、さらに小さな地域での連携体制の構築が求められる。
 そして、このような関係省庁や関係者の連携を一層促進し、国民運動に高めていくためにも、例えば留学生交流に係る全国レベルの交流推進会議を創設し、関係省庁をはじめ有識者、企業、大学等、日本語教育機関などに留学生を含めた留学生交流の関係者が一堂に会する場を設定し、留学生を受け入れる意義を広く一般国民にも浸透させ、「留学生30万人計画」を有機的、総合的に推進する原動力にしていくといった方法が考えられる。

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