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東アジア地域を見据えたグローバル人材育成の考え方~質の保証を伴った大学間交流推進の重要性~

平成22年6月21日
中央教育審議会大学分科会大学教育の検討に関する作業部会 大学グローバル化検討ワーキンググループ

(目次)

1.東アジア地域を見据えたグローバル人材育成の重要性

 (1)なぜ、今、東アジア地域か

 (2)東アジア地域における大学間交流の意義

2.東アジア地域の大学間交流における基本的な考え方

 (1)多様性・互恵性の尊重

 (2)機能別分化を踏まえた各大学の方向性の明確化

 (3)多文化・異文化の理解を重視するプログラムの構築

 (4)適切な質の保証

3.具体的な大学間交流プログラム

 (1)短期交流プログラムの推進

 (2)インターンシッププログラムの推進

 (3)組織的・継続的な教育連携プログラムの推進

4.東アジア地域における大学間交流に対する大学、企業等社会全体の適切な評価

 (1)各大学において求められる取組

 (2)企業等において求められる取組

5.質保証を伴った大学間交流の枠組みの形成

 (1)東アジア地域を考慮した枠組み

 (2)質の保証を伴った枠組みの具体化

 (3)大学情報の公表の視点

6.大学の取組に対する支援

 

1.東アジア地域を見据えたグローバル人材育成の重要性

(1)なぜ、今、東アジア地域か

 我が国と東アジアの各国・地域においては、学術・文化等の様々な分野にわたって長い交流の歴史を有している。近年は、東アジア地域における生産過程から販売まで多国にまたがる活動が展開されており、日本の貿易相手国のシェアにおいてアジアが約5割を占めるなど、日本経済の東アジア地域との一体化が進展している。このような動きを背景として、教育・訓練システムや、知識・技術の修得証明、企業における雇用や処遇などもより緊密に連関するとともに、将来的には東アジア地域内での社会システムが一層密接に関連しながら発展すると考えられる。また、同様の動きは、地方自治、公共サービスといった公的部門においても招来することが予想される。こうした状況において、企業等関係者からみれば、外需・内需の垣根が相当低くなることも想定されるとともに、自国、他国の出身にとらわれない人材の登用、養成が進むものと考えられる。
 これらの急速な進展は、大学教育に大きな変革をもたらす。すなわち、大学にとっては、東アジア地域全体を通じた学生の流動性の高まりにより、学生の国籍の区分が相対的に意味をなさなくなることも考えられる。その結果、国際的に通用する専門知識とグローバルなコミュニケーション・スキルの両方を持つ人材の育成がより重視されるとともに、学位レベルにふさわしい体系的な知識や技能を身につけ、何が出来るようになったかといった修得主義の視点が重要になる。
 翻って、我が国の大学教育は、伝統的に国内向けの雇用市場に連動して行われてきており、これまでは、世界における学生の流動性の高まりや教育の質保証、修得主義等の潮流を踏まえた取組が優先課題となっていない大学も多く存在した。しかしながら、今後とも予想される激しい変化の動向を踏まえれば、我が国の大学教育は世界の潮流に呼応して変わっていくことが望ましく、かつそのスピードを高めていくことも重要である。その際には、すでに東アジア地域を舞台に、米国、欧州、豪州、さらには中国、韓国などの有力大学により、質の高い教育が展開されつつあることも踏まえておく必要がある。
 また、東アジア地域における大学間の協力・連携の推進等、国を超えた活動も変貌を遂げつつある。東アジア地域の大学間交流は、我が国の大学やその関係者が、世界の大学教育に直に触れ、より深く理解することにより、それぞれの段階で様々な改革の取組を積極的に進めるための契機になるとともに、各大学における教育のあり方を考える契機ともなる。その意味で、東アジア地域における大学間交流の促進は、我が国の今後の大学政策の展開の鍵の一つとなる。

(2)東アジア地域における大学間交流の意義

 大学のみならず学生や教員、企業等にとり東アジア地域における大学間交流を促進する意義は大きい。
 学生にとっては、東アジア地域の多様な文化的背景を持つ教員からの指導、外国人学生との交流、国際的な教育プログラムへの参加等を通じて、自分自身の問題として多様性を理解する力、多角的な視点から事象を把握する力、コミュニケーション能力を始めとする知識・技能の獲得や人的ネットワークの形成により、経済活動の一体化が進む東アジア地域で、活躍できる可能性が広がることが挙げられる。特に、中国、韓国を始めとする同世代の若者が積極的に海外を経験し、能力の向上を図る中で、これらの若者と競争・協力していく基盤となる経験と能力を有する価値はますます高まっている。
 教員にとっては、優秀な東アジア地域の学生を受け入れるとともに、各国の大学等における講義や、研究者との共同研究、交流等を行うことを通じて、教育研究活動がより豊かで幅の広いものになる。
 大学にとっては、進学ニーズが増大する東アジアの大学との間で、短期交流プログラムや教育連携プログラムの開発、大学間ネットワークの構築等を通じて大学の教育・研究機能が強化され、国際的な知と人材の循環のハブとなるとともに、国際競争力・協働力の向上につながる。社会の多様性が求められる中で、知識基盤社会をリードする大学内における多様性の促進の意義も大きい。
 また、例えば環境、衛生分野等を始め各国に展開する企業等の努力によって、日本を含めた東アジア地域全体の円滑な交流と発展が進むことも重要である。企業等の観点からは、そのための人材として、日本人学生、外国人学生を問わず、東アジア地域においてグローバルな力を身に付けた学生を積極的に採用・評価することで、東アジア地域等における諸活動の展開をいっそう進めることが可能となる。

2.東アジア地域の大学間交流における基本的な考え方

(1)多様性・互恵性の尊重

 東アジア地域における大学は、各国の国情により様々である。我が国同様、公的な質保証システムが整備され、ユニバーサル段階に応じた高等教育制度のあり方が課題となっている国家もあれば、単位制度など大学にかかわる基本的な制度の整備が発展途上である国家も存在しており、様々な国情や法令制度を背景として多様な発展を遂げている点に留意する必要がある。制度や慣習、文化など様々な違い、多様な特色を認め合いながら、大学間交流を促進するための共通の枠組の構築を図る際には、我が国にとってのメリットとともに、相手側の大学にとってのメリットも考慮する等、互恵性の尊重が必要である。

(2)機能別分化を踏まえた各大学の方向性の明確化

 我が国における大学は、幅広い分野において高度な研究を行う大学や、特定の学問分野に重点を置く大学、高度専門職業人の育成を重視する大学、地域に密着した教育活動を行う大学など、様々な特徴を有する大学が存在する。各大学は、自らの特徴を生かしながら機能別に分化していくことが期待される中、各々の教育理念・目的、個性・特色を踏まえ、これらに応じた教育の意義や方向性を明確化し、その実現に向けて取り組むことが重要である。
 複数の国の学生や社会、産業界等のニーズに応じた教育プログラムを実施することや、特定の国のみでなく国を超えた実施が望まれるような教育を、国際的な大学間連携を通じて提供するといったことも考えられるが、例えば各大学の教育理念等に基づいた以下のような取組も考えられる。

(例)

  • 学士課程段階において、専攻する特定の学問分野における知識体系を多様な歴史・社会・自然と関連づけて理解できるよう、海外の大学との連携による短期留学プログラムを形成し、多文化・異文化に触れる経験を得るとともに、履修した科目について単位互換を行う例
  • 学士課程段階において、グローバルなコミュニケーション・スキルとしての英語を実践的に修得するため、ITネットワークの整備等により、アジアの複数国の大学との間で学生が恒常的に英語によるコミュニケーションが可能な環境を整備し、共に学ぶ学習環境を実現するとともに、共通の科目管理システムを構築し、学生の履修管理やシラバスの可視化等、質の保証を伴った交流を行う例
  • 理工系の大学院において、国際競争力のある専攻分野を中心に、高度な教育を提供しつつ、学生が英語での研究討論・発表能力、国際的な人的ネットワーク構築能力を身に付けられるよう、同様に国際競争力を有するアジアの大学との間で、海外インターンシップ等を履修科目とする英語による教育プログラムを提供し、大学の研究力の向上にもつなげる例
  • 人文系の大学院において、アジアの多様な歴史・文化を深く体得するため、英語に加えアジアの複数言語の習得をプログラムの中に位置づけるとともに、アジアの主要な大学をインターネットで結び共同授業を行うなど工夫し、相手国によって使用言語を変えることにより、外国語での発信力を身に付けるとともに、国際的な人的ネットワークの構築に役立つ教育プログラムを提供する例
  • 社会科学系の専門職大学院において、国際的に共通な基礎的分野に関する高度な教育を提供しつつ、多文化環境において学生が英語での研究討論・発表能力、国際的な人的ネットワーク構築能力を身に付けられるよう、英語による教育プログラムも提供し、同様に国際競争力を有するアジアの大学との間で、学生の交換や共通の研究基盤の構築を図る例
  •  課程段階にかかわらず、外国人学生に対する体系的な日本語教育の提供や、充実した地域研究を提供することにより、東アジア地域に関する特色ある教育プログラムを提供する例

(3)多文化・異文化の理解を重視するプログラムの構築

 東アジア地域で活躍する次代を担う人材の育成には、現地の事情に精通し、ローカルな価値観を尊重しつつ、英語等をはじめとした外国語によるコミュニケーション能力を有するなどの能力が重要となってくる。このため大学間連携による海外派遣や、日本で受入れた外国人学生との交流等を通じて、多文化・異文化に触れ、専攻する特定の学問分野の知識体系の意味と自己の存在を歴史・社会・自然と関連づけて理解する機会が提供されることが重要である。
 また、各大学においては、例えば英語等の外国語によるコミュニケーション能力を育成するため、到達すべきスタンダードの設定やそのためのプログラム開発等、実情に応じた工夫を図るとともに、インターンシップや課外活動も含め、様々な形の異文化体験に配慮することが期待される。その際、このような取組が全体として大学にもたらす意義は大きいことを理解した上で、提供される教育プログラムが社会に対して可視化されるよう、カリキュラムの体系化や積極的な情報発信に取り組んでいくことが重要である。

(4)適切な質の保証

 質の保証を伴った大学間交流の枠組みを検討するに当たっては、まず各国における質保証システムに関する情報を政府レベルで確認・共有することから進めるべきである。
 あわせて大学教育が、学位プログラムとして構成されることに着目した質保証の観点が重要となる。各大学は、体系的なカリキュラムの整備とそれに沿った教育を実施するとともに、修得可能な専門的知識・技術を見据え、自ら実施する単位互換・成績評価制度の確立、シラバスの可視化を含む学位プログラムの体系化や、教育の質の向上の観点から積極的な情報公表が求められる。また、大学がこうした取組を着実に実施できるような事務体制の整備も重要である。
 これらの取組の具体化により、大学が安心して交流活動を実施できるとともに、ディグリー・ミルの防止や、学生・教員の流動性が高まる中で不利益を被ることなく、正当に教育・研究成果を評価できるようになるものと考えられる。あわせて各国における質保証機関間における情報の交換や、機関の共同の取組促進も必要である。

3.具体的な大学間交流プログラム

 東アジア地域においては、欧米の場合と異なり、互いの国の大学の教育研究水準や、教員及び学生の状況を始め、社会・文化等についても未だ十分に把握できていないことが多い。それゆえ経済や社会システムの一体化が進む一方で多様性にも富む東アジアの進展を現地で学ぶことの意義は大きい。その際、参加学生が将来のキャリアを考える契機とするとともに、現地で必要不可欠な語学力の向上、現地文化や現地事情理解等を通じた異文化理解力の涵養に資する取組が期待される。
 各大学における役割や機能により、プログラムの対象となる地域及び学問分野、実施する期間、参加規模等は異なる。例えば学士課程段階においては、地域・文化を体系的に学び、これを国際的な文脈で理解した上で、現実社会に応用する技法を身につけるプログラム等、各大学の教育目標に沿ったプログラムが考えられるが、特に本ワーキンググループでは、プログラムを通じた大学間交流促進に向けた下記の観点が重要と考える。

(1)短期交流プログラムの推進

 短期交流プログラムは、学位取得を目的とした長期留学に比して、参加学生にとっては容易にアクセスが可能であり、結果として多くの学生の交流が可能となるなどの効果が期待される。また、プログラム化された異文化体験は、いわゆる一般的技能の習得の点でも有益であり、学士課程段階において、短期間であっても海外での経験を有する意義は大きい。さらには短期交流プログラムへの参加を契機として、将来ダブル・ディグリー・プログラムや学位取得のための長期留学等を希望する学生が増えることも期待される。
 近年では、欧米諸国においても、学位を取得するための長期留学に加えて、短期交流プログラムが比重を増しており、我が国においても数週間程度も含め実施期間の多様な短期交流プログラムの拡大が期待される。特に魅力的なプログラムの存在が、我が国に外国人学生を迎え入れる大きな原動力となり得るとともに、他大学との連携ネットワーク形成に影響を及ぼすことも考えられる。
 その一方、短期交流の実施に当たっては、受入れ及び派遣の体制整備や、それぞれのカリキュラム上の位置付けを明確にした上で、事前に大学間で十分なプログラムの協議を行い、質の保証を伴った交流となるよう教育上の配慮が求められる。また、各大学が相手大学に対して必要な改善を施すよう働きかけることも重要である。各大学は、例えば以下に掲げるような留意点について、学内及び当該プログラムにかかわる関係者との間で共有した上で、単位の認定につながるプログラムを実施することが重要である。また、2国間のみならず、多国間の大学連携により、各々の強みや資源を生かしたプログラム作りも重要となる。

(例)

  • 相手大学の所在する国・地域における公的な質保証システムにおける位置づけや、単位授与・成績管理等にかかる方針の確認
  • 交流内容、参加者見込み数、実施期間、費用、不測の事態への対応等について、関係者間で協定を締結するなどの取り決めを設けるとともに、当該内容の学内での共有、対外的な公表、定期的なフォローアップ等の措置
  • 学生が単位を取得し、その単位が帰国後に認定され、円滑な履修につながるような措置を、質の保証にも留意しつつ、可能な限り整備(例えば相手大学における履修科目の単位認定可否を事前に大学と学生双方が確認する仕組み(ラーニング・アグリーメント)により、相手大学と連携した教育支援の検討)
  • 現地の言語を活用した事前プログラムの実施や、交流中の継続的な学生支援、帰国後のフォローアップ等を通じて、プログラムの質の担保への留意
  • 受入先における学生や地域住民との交流機会等、教室内外における多種多様な異文化との交流機会を確保
  • 我が国が高い国際的評価を受けているメディア芸術等、プログラムに参加する留学生にとって魅力的な内容を含んだ企画等の検討

(2)インターンシッププログラムの推進

 インターンシップは、自ら修得中の学問分野の専門知識を実践の場で生かす機会として、また、広く異文化理解を促進する機会としても重要である。特に、日本以外のアジアの国々の企業等で働いた経験によって、学習意欲の向上、高い職業意識の醸成、独創性やチャレンジ精神の醸成、そして精神的なたくましさを備えた人材が育成されることが期待される。そこで育んだ知識・技能や、海外で得たネットワークをいかして、日本の若者がアジアで働く機会が飛躍的に増えることは、これからの日本の成長力を支える原動力となると考える。また、グローバルな展開を行う企業等の観点からは、インターンシップの実施は企業等の高い評価にも馴染むものと考える。
 インターンシップの実施については、これまでも文部科学省において、国内企業等と学生の効果的なマッチング等に関する事例集の刊行や、各大学におけるプログラム開発への支援を行ってきたところであるが、例えば以下の点にも留意した上で、海外の大学等とも連携するなどして多様な相手先を確保し、実施することが必要である。

(例)

  • インターンシッププログラムを取り入れる前提として、当該プログラムを教育課程においてどのように位置づけるかについて適切に検討
  • その上で、質の保証を伴った学修内容となるよう、ディベート能力の育成やPBL の組み入れ、現地で使われる言語の事前学習等の事前・事後研修の充実、論文テーマも勘案した指導教員と研修先機関指導責任者の連携等の適切な工夫
  • 大学、受入先が密に連携し、実施に当たっての目的・趣旨を明確化するとともに、学生も含めその共有を図る
  • 大学と受入先間において、インターンシップの趣旨・目的等を踏まえた実施要領を事前に確認し、受入時期、実習内容、事故又はトラブル対応等を想定した取り決め等の作成(その際、受入先の就業規則及び守秘義務の遵守事項に加え、事故や怪我等を想定した各種保険加入についても検討)
  • 日本人学生の受入先の開拓に当たり、日系企業以外の現地企業や公共セクター、卒業生・同窓会ネットワークの活用も含めた検討
  • 大学間交流協定等の枠組みを活用し、日本人学生の現地実習先の開拓や住居等の支援を当該大学で実施するとともに、日本でも当該大学からの外国人学生を受入れて支援を行う双方向型インターンシップなどの工夫
  • 外国人学生と日本人学生が協働して課題解決に向けチームワークを実践することで、異文化との触れあい、計画実施の試行錯誤を擬似的に体験できる機会の確保
  • 多様なネットワークを有する国内外のインターンシップ支援団体との連携

(3)組織的・継続的な教育連携プログラムの推進

 日本と東アジア諸国の大学間で魅力ある教育プログラムを検討していく際、ダブル・ディグリー・プログラムやジョイント・ディグリー・プログラムなどの組織的・継続的な教育連携関係を目指すことも大いに考えられる。これらのプログラムを通じて複数の学位を有する学生は、質保証システムの中で一定の質が保証されているものであり、卒業・修了後グローバルな視野を活用して、地域に限定されることなく幅広く活躍することにもつながる。
 なおこれらのプログラムを形成する際の留意点については、本ワーキンググループにおいて「我が国の大学と外国の大学間におけるダブル・ディグリー等、組織的・継続的な教育連携関係の構築に関するガイドライン」を先頃とりまとめたところであり、大いに活用されることを期待したい。

4.東アジア地域における大学間交流に対する大学、企業等社会全体の適切な評価

 実践的な教育の場として東アジア地域全体を視野に入れた人材育成が実行されても、それらの人材について企業等を始めとした社会が積極的に評価し、キャリアパスの形成や企業等の国際競争力の向上に寄与しなければ、十分な効果があげられたとはいえない。
 大学は、様々な社会のニーズを踏まえ、国を超えた学生や教員・研究者の移動・交流や、国際通用性を前提とする学位の授与など、本来的にグローバルな活動を伴う教育研究を展開するものである。昨今のグローバル化に伴い、企業を含めた日本社会全体において、求められる人材像が変化しつつある中、多言語や異文化への接触など、様々な経験を経てきた学生が持つ潜在的な能力は大きい。日本社会全体において均一性から多様性への価値の転換を図り、グローバル人材への適切な評価を求めるとともに、各大学においても、そうした社会からの評価に堪え得るようなプログラムの提供と、その内容の可視化を強く求めたい。具体的には、各大学及び企業等において以下のような取組を進めることが考えられる。

(1)各大学において求められる取組

 各大学においては、自ら提供するプログラムに関する単位授与や成績評価、シラバス及び学修成果について可視化することが、企業を含めた社会から適切な評価を受ける上でも前提となることを認識し、積極的に取り組んでいくことが重要である。また、学生の社会的・職業的自立に向けた指導や、留学先大学とも連携した学習計画の指導、通年採用の実態等の適切な情報を踏まえた指導の充実、職員の養成、国際交流担当部局と学生支援担当部局の連携強化、キャンパスにおける外国人学生と日本人学生の積極的な交流促進等が求められる。
 とりわけグローバルに展開する大学においては、外国人学生を含む多様な学生の指導やプログラムを担当する教員個々人の意識も重要であるが、各大学の戦略に基づいて大学全体、並びに学部・研究科等による組織的な取組が進むことが求められる。さらに学生が交流プログラムに参加する機会が十分に提供されていないとの指摘も踏まえ、各大学の指導教員等は、日本人学生の派遣、外国人学生の受入れのいずれにおいても、アカデミックプランや将来性をよく把握し、学生が成長する機会を適切に提供、支援するような配慮が求められる。

(2)企業等において求められる取組

 各企業及び経済団体等においては、上記の大学側の取組を理解し、大学における実践的な教育の提供に協力するとともに、質を伴ったインターンシップや留学の経験によって学生が身につけた能力の適切な評価が求められる。
 また、学生の卒業後の進路就職の観点からは、グローバル化した企業のキャリアパスの明示や多様性の促進といった企業等の人事戦略の展開や、例えば就職フォーラムの海外開催や、人事採用スケジュールの複線化、通常の新卒採用も含めた採用スケジュールの見直し等により、優秀な学生の積極採用等が期待される。なおグローバルな展開を行う企業では、既に多様な採用活動により、外国人学生の採用を進めている例もある。今後は、これまで外国人学生の採用実績が無い企業についても、多様な人材による企業等の活性化につながるよう、採用のメリット等が企業間で共有され、企業等団体間で情報の提供及び交換等が進むことにも期待したい。

5.質保証を伴った大学間交流の枠組みの形成

(1)東アジア地域を考慮した枠組み

 これまでに述べた域内の大学間交流は、質の保証を伴うことが前提となる。東アジア経済・社会の一体化の進展の観点からも、本来は東アジア全体における質保証の枠組みが形成されることが望ましいが、その具体化に向けては、隣国であり、比較的共通性の高い大学・大学質保証システムを有する日中韓において、単位互換や成績評価など、質の保証を伴った大学間交流の枠組みについて一定の検討を行った上で、アセアン大学連合(AUN)やアセアン工学系高等教育ネットワークプロジェクト(SEED-Net)等、大学間交流の先行事例の成果も踏まえ、ASEAN 等と対話を行いながらその成果を共有していくことが適当である。

(2)質の保証を伴った枠組みの具体化

 上記の枠組みを具体化するに際して、一定の考え方の共有を図っていくことが交流の基盤形成となる。本ワーキンググループとしては、例えば質の保証に関する以下のような事項が、東アジア地域において共有された上で、大学間交流が促進されることが望ましいと考える。

(例)

  • 各国の質保証システム(大学設置の基準や大学評価等)に基づく、大学としての制度的、実質的な最低要件を満たした大学間において交流を進めること
  • 単位互換を行う上で、各大学における単位授与や単位互換のプロセスが各々の国の法令に従ったものであり、その方針が可視化されていること。また、それらが最終的に学位授与に至る過程が明確化されていること
  • 単位互換に伴う関係科目の成績評価の考え方や、シラバスの作成方針について、一定の共通性や一覧性が担保されていること

(3)大学情報の公表の視点

 質の保証を伴う大学間交流には、各大学の情報が十分に発信されることが不可欠である。現在のところ、欧米と比較して東アジア諸国における大学情報は、十分に発信されているとはいえず、各大学によりわかりやすく教育研究活動を発信することが求められる。
 大学分科会においては、別途大学の質保証を確保する方策として、教育情報全般にかかる公表のあり方について整理され、公表すべき事項を法令上明確にするための学校教育法施行規則等の改正を行ったところである。また、中央教育審議会大学分科会の「国際的な大学評価活動に関するワーキンググループ」において、国際的な大学評価活動の展開状況や我が国の大学に関する情報の海外発信の観点から公表が望まれる項目の例が示されたところである。各大学において、これらが積極的に参照・活用されることが望まれる。

6.大学の取組に対する支援

 これまで述べたとおり、本ワーキンググループとしては、我が国の各大学が、東アジア地域における大学間交流を積極的に展開することを期待するものであるが、一方で、大学教育のグローバル化により、各国は競って優秀な外国人学生の戦略的な受入れと、積極的な自国の学生の派遣の促進に取り組んでおり、そのための国及び関係機関、産業界等からの支援について、スピード感をもって進めていくことが求められる。
 支援の方向性としては、各大学の牽引役となるような、大学の総合的な取組や特色ある取組を重点的に支援するとともに、裾野の広い交流支援、特に短期交流や海外派遣支援やそのための基盤支援を強化していくことが考えられる。
 あわせて、これらの支援を検討する上では、短期交流も含めた外国人学生の受入れ及び日本人学生の海外派遣の実態把握も重要であり、実情が分かるよう、国及び関係機関における適切な検討を期待したい。

参考資料

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課国際企画室

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-- 登録:平成22年07月 --