平成15年3月
文部科学省高等教育局
21世紀において、国立大学が「競争的環境の中で個性輝く大学」として、その使命や機能をより一層果たしていくためには、広い視野と長期的展望に立って、従来の各大学や学部等の枠にとらわれず、人的・物的資源を最大限に活用し、教育研究等の充実や特色の強化、基盤の整備を図ることが必要である。
また、国立大学の法人化を控え、全学的視点で限られた資源を活用した戦略的な経営を進める上で、ある程度のスケールメリットを確保することも有効である。
このため、将来の発展を見通した再編・統合を幅広く積極的に検討していくことが必要であることを踏まえ、文部科学省においては、平成13年6月に「大学(国立大学)構造改革の方針」として表明するとともに、同年11月には「国立大学の再編・統合についての基本的な考え方」を示して各大学に具体的な検討を促した。
このような考え方のもと、各大学において、再編・統合について、教育や研究上どのようなメリットがあるのかを中心に、各々の将来の発展という観点から幅広く検討がなされてきた。また、文部科学省においては、各大学の自主的な検討を尊重しつつ、積極的に支援・助言を行ってきた。
各大学における積極的な検討に基づき、再編・統合は着実に進展してきている。
以下に示すように、既に昨年10月には全国の国立大学に先駆けて2組4大学が統合し、本年4月に新大学として学生を受け入れる予定である。
また、10組20大学の統合が合意に至っており、これらを本年10月に統合することを内容とする国立学校設置法改正案を通常国会に提出したところである。
さらに他の数大学においても、平成16年度以降の統合を目途に大学間で真剣な協議が進められている。
【国立学校設置法改正案提出】 平成16年4月学生受入予定
なお、上記以外の大学においても幅広く再編・統合の可能性を検討中
国立大学の再編・統合は、一律にではなく、諸準備の整ったものから段階的に推進しており、これまで着実な進展をみているとともに、引き続き大学間で検討・協議を進めているものもあり、文部科学省としてはその進展を踏まえつつ、積極的な支援を図る。
各国立大学においては、法人化後、各々の立場から教育研究の充実強化(パワーアップ)の観点にたって、再編・統合を含めた多様な組織改革を検討していくことになるが、文部科学省としても、その検討の熟度等に応じ、支援・推進を図る。
再編・統合の検討に際しては、国立大学が地域の知的文化拠点として、地域貢献の機能を充実強化する視点も重要である。このため、各大学においては、様々な機会をとらえて地域の関係者等の意見を聞き、その理解を得ながら検討することや、学生等に対しても適切な説明がなされることが望まれる。
また、大学単位の再編・統合のみならず、人的・物的資源を最大限に活用し、教育研究基盤を強化して個性と特色ある大学づくりを進める観点から、大学間における学部、学科、その他の様々な単位・レベルでの機能分担の観点からの再編・統合や、近隣の大学間の連合による教育・研究面、管理運営面での連携・協力も積極的に支援・推進する。
教育研究基盤を強化して個性と特色ある大学づくりを進める観点から、複数の大学間において学部、学科等の様々な単位・レベルでの機能分担を図ることも有効である。
具体的には、1.全国的な観点から特定分野の教育研究基盤を強化する観点と2.ブロック単位や隣接する大学の連携・連合の枠組みの中で、それぞれの特色に応じた機能分担を行い、個性ある大学づくりを進める観点からの検討が考えられる。
大学や学部、学科等の様々な単位・レベルでの再編・統合以外にも、大学としてはそれぞれの独立を保ちつつ、複数大学が連合して例えば以下に例示するような組織的な連携・協力の枠組みを構築することは、教育研究内容の充実や資源の有効活用の観点から意義があり、積極的に支援・推進する。
附属病院についても、提供する医療の質の向上を図るため、医療情報、医療事故防止や院内感染防止に係る情報等について、全国立大学附属病院間の連携・協力による情報共有システムの構築を支援・推進する。
また、地域の中核的医療機関として地域の医療機関との連携を図り、1.高度で良質な医療の提供、2.医療従事者の養成、能力開発を通じた地域の医療水準向上への貢献を行う。
法科大学院については、個々の大学では教員や施設設備など必要な教育条件を整備することが困難な場合や質量ともに十分な水準を確保できない場合などに対応し、限られた人的・物的資源を有効に活用し充実した教育を行う観点から、複数の大学が連携・連合して設置することも考えられる。
大学間の様々な連携は、国立大学の法人化を契機として、一層の推進が可能となると考えられる。このような中で、大学間の機能分担や学部等の再編成が組織的に更に進展し、将来的には大学の統合に発展する可能性も想定される。
さらに、国・公・私立大学がコンソーシアムを形成する等により地方自治体、産業界とも連携・協力して、教育研究の充実と成果の地域社会への還元を図るような取組も有意義である。
このような大学間の連携・協力を通じ、教育事業(単位互換、自治体からの委託に基づく講座の開講等)、エクステンション事業、共同研究事業、TLO等を活用した産学連携事業、情報発信・交流事業等の幅広い展開が期待される。
教育の成否は教員にかかっており、教育改革の実現には、その観点から教員養成の格段の充実改善を図ることが必要である。これを踏まえ、教員養成大学・学部の再編・統合は、我が国の教員養成に中核的な役割を果たしている国立の教員養成大学・学部が、今日の様々な教育課題に対応できる力量ある教員の養成に的確に応えていくことができるよう、その機能をより充実強化(パワーアップ)する観点から、取り組むことが求められている。
このような状況の下、現在、各大学においては、地域の理解を得ながら、学内で検討を重ねるとともに、関係大学間での協議が進められているところであり、この検討を踏まえつつ、可能なものから積極的に具体化を図っていく。
山梨大学と山梨医科大学→山梨大学
筑波大学と図書館情報大学→筑波大学
【国立学校設置法改正案提出】 平成16年4月学生受入予定
東京商船大学と東京水産大学→東京海洋大学
福井大学と福井医科大学→福井大学
神戸大学と神戸商船大学→神戸大学
島根大学と島根医科大学→島根大学
香川大学と香川医科大学→香川大学
高知大学と高知医科大学→高知大学
九州大学と九州芸術工科大学→九州大学
佐賀大学と佐賀医科大学→佐賀大学
大分大学と大分医科大学→大分大学
宮崎大学と宮崎医科大学→宮崎大学
【北海道6単科大学】(北海道教育大学、室蘭工業大学、小樽商科大学、帯広畜産大学、 旭川医科大学、北見工業大学)
道内国立大学長懇談会の指示のもとに、副学長懇談会において北海道内6単科大学の再編・統合、連携の在り方について検討。
これを踏まえ、平成14年12月の同学長懇談会において、道内の国立大学として教育上魅力あるシステムを構築するために、北海道大学を含む7大学の連携が極めて重要であり、報告書にある広範な単位互換など実効性のある連携の在り方について具体的に検討を開始することで合意。
【北東北3大学】(弘前大学、岩手大学、秋田大学)
北東北国立3大学連携推進会議の下に、平成14年2月「3大学の再編・統合問題に関する懇談会」を設置。平成15年2月、同懇談会から当面、3大学間の強い連携を進めるべきとの提言。
【四大学連合】(東京医科歯科大学、東京外国語大学、東京工業大学、一橋大学)
平成13年3月、「四大学連合憲章」に調印して、四大学連合を結成。
教育研究の内容に応じて連携を図ることとし、複数の大学が協力して「複合領域コース」を設定し、一大学では対応できない教育プログラムを提供する取り組みを開始。さらに、当該コースの履修生に対する編入学、複数学士号取得を平成15年度より導入予定。
【北陸地区国立大学連合】(富山大学、富山医科薬科大学、高岡短期大学、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、福井大学、福井医科大学)
平成14年12月、北陸地区国立大学連合に関する協定を締結。
各国立大学とこれらが立地する地域の広範な連携により、1.学生の教育面での選択肢の拡大、2.高度で幅広い学術研究や共同研究の展開、3.地域に根ざした社会貢献の活動を推進するために必要な基盤と体制を構築することを目的とする。
【四国国立大学協議会】(徳島大学、鳴門教育大学、香川大学、香川医科大学、愛媛大学、高知大学、高知医科大学)
平成14年4月、四国国立大学協議会を設立。
各大学間の連携・再編等により学術研究・教育分野を充実、強化するとともに、新しい学術・教育分野を創造することについて協議を開始。教育研究分野別に専門協議会を設けて検討中。
※ その他の大学においても学内でその在り方を検討中
高等教育局高等教育企画課高等教育政策室
-- 登録:平成21年以前 --