資料4-5 三つのポリシーに基づく大学教育の実現に係るこれまでの主な御意見

1.ガイドラインの位置付け等について
(1)ガイドラインの策定主体について
・ 高大接続システム改革会議「中間まとめ」においてはガイドラインの作成主体は「国」とされているが,「国」が何を指しているのかはっきりしない。
・ ガイドラインの策定主体は大学教育部会とするのがよい。
・ 大学教育部会で十分な時間をかけてガイドラインの素案を検討すべき。
(2)ガイドラインの位置付けについて
・ ガイドラインがないと,学内で合意を得る過程で,三つのポリシーが非常に漠然としたものになりかねないので,ガイドラインはあった方がよい。
・ 三つのポリシーは諸外国にはない概念であることも踏まえ,ガイドラインは大学が理解できるよう易しく,分かりやすく示すべき。
・ ガイドラインは必要だが,多様性,大学の機能分化に沿う形で各大学がどういう機能を持つのかということを考えた上で策定すべき。
・ 三つのポリシーやそれに基づく大学教育の具体的な内容については,各大学の建学の精神や機能の在り方を考えた上で,各大学が主体的に考えていくべき。
・ ガイドラインにより大学に特定の取組を求め,大学を縛るべきではない。
・ 大学教育については,大学内部の自律的な活動が原則であること,大学の多様性や自律性の担保が必要であることをガイドラインで明記すべき。

2.三つのポリシーの一体的な策定の意義について
・ 三つのポリシーの策定の最終目標は,大学における教育の質の向上や,それによる学生の学修成果の向上である。
・ 三つのポリシーの策定は,大学の理念や建学の精神から,具体的なディプロマ・ポリシーを通して,計画的なカリキュラムを設計し,個々の授業の実施と成績評価に至る「学士課程教育の一貫性構築」の営みである。
・ 一貫性のある学士課程を構築することに最終目標がある。
・ 大学教育に組織的に取り組むためには,学士課程教育に携わる全ての教職員がディプロマ・ポリシーや他の科目の到達目標,位置付けを意識して取り組む必要がある。
・ 三つのポリシーの一体的な策定により,「入り口」「中身」「出口」の一貫したマネジメント体制を構築していくことが必要。

3.三つのポリシーの策定について
(1)三つのポリシーの策定のための組織・体制について
・ 学長や教学担当副学長を中心とした全学的な策定方針,あるいは支援体制が必要。
・ エビデンスベースで議論するために,教育IRチームのような組織が必要。
(2)三つのポリシーの策定単位について
・ 三つのポリシーの策定単位は学位プログラムとすべき。
・ 学位プログラムという語の定義がなされておらず,分かりにくいので,ガイドラインで使用する際には定義をすることが必要。
・ 学位プログラムと学部・学科の関係についてはまだ十分な議論がされていないので,ガイドラインでは学位プログラムという語の使用は慎重に検討するべき。
・ 各大学が大学としての責任を持って教育する単位と考えるものを三つのポリシーの策定単位とすべき。
・ 全学単位でもポリシーを策定する大学もあり,一大学で複数のポリシーを策定しうることが分かるようにすべき。
(3)三つのポリシーの策定に関わることについて
 (総論)
・ 全学のディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシーから,それぞれの学位プログラムのカリキュラム・ポリシーという流れが重要。
・ 「一体的な策定」のためには,まずディプロマ・ポリシーを検討し,それを踏まえてカリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーを策定するという方法が適切である。
・ アドミッション・ポリシーでどういうレベルを要求するのかを示し,入学後はどういうところを補っていくのかをカリキュラム・ポリシーで示し,どういう人材が育つのかをディプロマ・ポリシーで示すべき。
・ まず国からは「大学はアドミッション・ポリシーを示すべき」という方針が出されたが,その後三つのポリシーを,しかもディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーの順で策定すべきという方針が出されることになるので,大学がこれまでのアプローチとは逆方向でポリシーを検討しなければならなくなることに留意すべき。
・ 各大学がどのような人に三つのポリシーを理解してもらうことを目指すか整理すべき。
・ 三つのポリシーの策定に当たり,各大学は日本学術会議の分野別参照基準を参考にすることは考えられるが,分野別参照基準に拘束される必要はない。
・ 日本学術会議の分野別参照基準において示されている全分野に共通する知識・能力については,ディプロマ・ポリシーやカリキュラム・ポリシーに記載すべき。
  (ディプロマ・ポリシー)
・ ディプロマ・ポリシーは,個々の授業科目の学修成果を総合したもので,学修成果が測定可能であることはもちろん,ディプロマ・ポリシーも測定可能でなければならない。
・ ディプロマ・ポリシーは,学位プログラムとしての到達目標である。
・ ディプロマ・ポリシーは,社会に対する説明責任を果たすものと捉えるべき。
・ ディプロマ・ポリシーの策定に当たっては,育成を目指すコンピテンスを重視すべき。
・ 均質な人材育成ではなく,多様な人材育成を大学教育で行うことを意識する必要がある。
  (カリキュラム・ポリシー)
・ 大学教員は教養教育に関心を持たない傾向があるが,教養教育,専門教育等を体系的に構築・実施する必要がある。
・ ディプロマ・ポリシーに基づいてカリキュラム・ポリシーを具体化することによって,他大学との共通性が明確になり,大学間の協力が成り立つことが考えられる。
・ カリキュラムの整合性を可視化するツールとして「カリキュラム・マップ」,体系性・系統性を可視化するツールとして「カリキュラム・ツリー」が有効。履修系統図やナンバリングもこれらを可視化し,学生の学びを促進するツール。
・ 計画的な教育プログラムとは,ディプロマ・ポリシーと個々の科目の関係性,整合性,体系性を整理した教育プログラムであり,カリキュラム・ポリシーの本質になる。
・ カリキュラム・ポリシーにおいて教育方法についても言及し,それを時代とともに見直すこととすべき。
  (アドミッション・ポリシー)
・ 「学力の3要素」は重要であり,これを踏まえ,かつ各大学がどういう学生を必要としているのかに基づいて入試の在り方を考えるべき。
・ アドミッション・ポリシーは,学生を主語にして具体的に記述する必要がある。
・ アドミッション・ポリシーの中で,AO,推薦,専門高校用の入試それぞれでどういうレベルまで要求するかということを書くべき。
・ アドミッション・ポリシーにおいて,あらゆる入試の形態について,それに対応したカリキュラムや,最終的に学生をどのレベルまで育てるのか,ということを全て書くことができるのか疑問である。
・ 特に実際の入試への反映という観点から,大学では三つのポリシーに関するスケジュールについての関心が高く,分かりやすく示すべき。

4.三つのポリシーの運用について
(1)三つのポリシーに基づく全学的な教学マネジメントの確立
・ 三つのポリシーを作っただけでは駄目で,それを動かして実体化していくことが重要。自己点検・評価においても,これが実体化をされているかどうかを評価すべき。
・ 問題点が発見され,到達目標や科目の内容を含めた見直しが多くの科目に求められ,それが次回のカリキュラム改訂に生かされる。これが内部質保証であり,これが本当に動いているかどうかが肝腎。
・ 三つのポリシーに基づく全学的な教学マネジメントの確立に必要な具体的な取組内容は質的転換答申で説明されているため,各大学は,全学的な教学マネジメントの確立に向けて質的転換答申も参考にすべき。
(2)体系的で組織的な教育の展開と学生の学修成果の評価
・ 全学的な意識改革と,学部・学科の執行部に対する具体的な策定のための学習会,研修会が必要。
・ 教員がポリシーに沿った教育をしているのかを確認することが重要。
・ ガイドラインにおいて大学の具体的な取組を例示する際には,それらの取組の位置付けを丁寧に説明すべき。例えば,少人数のチームワーク,集団討論,反転授業等に言及する際には,それらがアクティブ・ラーニングのための教育方法であることを丁寧に説明すべき。
・ パフォーマンス評価等の定性的な評価は重要。
・ パフォーマンス評価は時間と労力を要するので,一部をサンプリングすることが考えられる。
・ 学生の学修成果を評価する際には,定量的評価と定性的評価の両方を組み合わせて評価することが必要。
・「学修成果の評価」というと,教育課程と個々の学生のいずれの評価を行うものなのか分かりにくいため,整理が必要。
(3)三つのポリシーに基づく大学の取組の自己点検・評価と改善,情報の積極的な発信
・ 個別学生の学修成果の評価と,大学の教育活動全体の評価は次元の異なる話だが,日本語では両者を共に「評価」と呼ぶので混同が生じている。両者の区別が更に意識されるべき。
・ 評価(学生の学修成果の評価,教員の教育活動の評価,教学マネジメントの評価など)に関することは,各大学の主体性に基づくべきであり,ガイドラインに入れるかどうかは慎重に検討すべき。
・ 各大学が三つのポリシーの策定により行うのは,教育理念や教育方法の大枠を定めることであり,それと大学の教育活動を評価することとは次元が異なるので,ガイドラインで評価について触れるのは適切ではない。
・ 三つのポリシーに基づく大学教育の実現のためにはアセスメントは必要。ガイドラインにおいてアセスメントに言及しなければ,各大学における大学教育の成果の証明は達成できない。
・ アセスメント(PDCAのC)はPDCAサイクルの中で最も重要なので,骨子案において,各大学がアセスメント・ポリシーについて検討する際に留意すべき点をガイドラインに入れるべき。
・ 三つのポリシーを用いた評価の在り方について,ガイドラインの中に項目を立てて整理すべき。
・ ディプロマ・ポリシーの測定や検証には,学生調査やパフォーマンス評価などが有効。
・ 三つのポリシーは常に見直しが必要で,教育を日々動かしながらも,学生や受験生に理解されやすいよう,またその達成度の評価がしやすいよう改訂していかなければならない。
・ 大学全体のポリシーを策定している場合,学部・学科ごとのポリシーが専門教育の内容に偏りがち。教養教育と専門教育全体を通じて授与する学位と,学科ごとのポリシーに整合性があるか,各大学はチェックすべき。
・ ディプロマ・ポリシーは簡単には変えられない。
・ 卒業生の評価や卒業生による出身大学の評価という観点も必要。
・ 国は各大学の情報の公表を促進すべき。

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-- 登録:平成28年02月 --