資料5-2 第47回科学技術・学術審議会総会(平成26年6月3日)における平野分科会長御発言要旨

第47回科学技術・学術審議会総会(平成26年6月3日)における平野分科会長御発言要旨

○ 学術分科会では、本年2月に、学術研究の衰退についての強い危機感を踏まえ、私から、改めて学術研究の在り方等について抜本的な審議を行うことを提案した。以降、西尾章治郞主査の「学術の基本問題に関する特別委員会」を中心に、集中的な審議を行ってきた。

○ 年度末・年度始めのお忙しい中にもかかわらず、委員の先生方には、たいへん熱心にご審議いただいた。関係の委員の先生方には、この場を借りて御礼申し上げたい。

○ 議論やとりまとめに当たっては、客観的根拠に基づいて行うことに努めた。報告書の概要は以下のとおりである。

○ 最初に、「1.失われる日本の強み―危機に立つ我が国の学術研究―」では、本議論の前提として、学術研究をとりまく環境の悪化と、それによる我が国の強みの喪失への危機感を記述し、学術研究による知の創出力と人材育成力の回復・強化が喫緊の課題であり、国と学術界が一体となって学術研究を推進していくことが急務であることを述べている。

○ 次に、「2.持続可能なイノベーションの源泉としての学術研究」では、近年期待が高まっているイノベーションに関し、イノベーションとは短期的な経済効果を目指す技術革新ではなく、新たな知を基にした価値の創造であるという本来的意味を確認したうえで、イノベーションと学術研究の関係を正面から捉え、学術研究はイノベーションの源泉であることを説明した。

○ その上で、「3.社会における学術研究の様々な役割」において、改めて学術研究の特性や社会における様々な役割を整理し、学術研究は「国力の源」であることを確認した。そして、グローバル化や情報化が加速する現代において、学術研究に求められる現代的要請として、挑戦性、総合性、融合性、国際性の4つをあげ、将来にわたる持続的な社会の発展において「国力の源」としての役割を果たすためには、次代を担う若手研究者の育成が特に重要であるとしている。

○ 続いて、「4.我が国の学術研究の現状と直面する課題」では、これまで限られた公財政投資の中でも、我が国の学術研究は卓越した成果を創出してきた一方で、近年、学術研究に対する厳しい見方があることを記載した。この厳しい見方については、必ずしも正しい認識に基づいているとは言えないものもあるが、我々は、これを先ほど述べた学術研究の現代的要請(挑戦性、総合性、融合性、国際性)に関わる部分で脆弱な面があるという問題の提起と捉えた。さらにこの問題の根底には、国と学術界双方の資源配分における戦略不足があると指摘し、これが学術研究の現場の疲弊を招いているとしている。

○ 最後に、「5.学術研究が社会における役割を十分に発揮するために」では、根本的な課題を解決し、学術研究が社会における役割を十分に発揮するため、
「(1)改革のための基本的な考え方」として、
・学術研究の現代的要請に着目した資源配分の思い切った見直し
・学術政策、大学政策、科学技術政策が連携した施策の展開
・学術研究を通じた人材育成・教養形成
・社会との連携強化
の4つを掲げた。

○ この基本的考え方を踏まえ「(2)具体的な取組の方向性」として、
  ・デュアルサポートシステムの再構築
  ・若手研究者の育成・活躍促進
  ・多様な人材の活躍促進
  ・共同利用・共同研究の充実等
  ・学術情報基盤の充実等
  ・学術界のコミットメント
 の6つについて現時点までの議論を踏まえ、取組の方向性を提言した。

○ 以上が概要である。
  本中間報告のとりまとめに当たっては、政府関係者はもとより、大学や研究現場の個々の研究者をはじめとする学術界、さらには多くの国民に、学術研究が社会において果たす役割や推進の必要性等を理解していただけるよう努めた。

○ 特に、政府には、学術政策、大学政策、科学技術政策が連携して一貫性ある施策を展開し、研究者の自由な発想を保障し、知的創造力を最大限発揮できる環境を確保するよう強く求めたい。
また、学術界には、学術研究の現代的要請を踏まえ、これまでの慣習にとらわれず、諸制度の思い切った見直しを行うことにより、学術研究の成果の最大化を図ることが何より重要であることを認識し、自主性・自律性を基本とする学術界にふさわしいアクションを速やかに起こすことを期待したい。

○ 議論を通じて改めて、状況は待ったなしであると感じた。全委員が危機感を共有している。本中間報告は、我々学術研究に携わる者が、現状の改革を行い、将来を担う若い研究者に残し、彼ら、彼女らに発展的な活動をしていただく礎になるものと考えている。

○ 今後、各方面からのご意見や、関係部会等の議論を踏まえ、引き続き検討を行ってまいりたい。

(以上)

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-- 登録:平成26年07月 --