大学分科会(第144回)・将来構想部会(第9期~)(第27回)合同会議 議事録

1.日時

平成30年10月10日 16時~18時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂

(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. 法科大学院教育等の改善・充実について
  3. その他

4.出席者

委員

(分科会長・部会長)永田恭介分科会長・部会長
(副分科会長)村田治副分科会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,五神真,山田啓二の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,河田悌一,黒田壽二,小杉礼子,小林雅之,鈴木典比古,鈴木雅子,伹野茂,千葉茂,福田益和,益戸正樹,松尾清一,両角亜希子,吉岡知哉,吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)山脇文部科学審議官,伯井文部科学戦略官,山﨑文教施設企画部技術参事官,平野大臣官房審議官(生涯学習政策局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長,松永専門教育課長,石橋高等教育政策室長,大月専門職大学院室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)一般社団法人日本経済団体連合会三宅教育問題委員会企画部会長,  全国公立短期大学協会杉山副会長,日本私立短期大学協会関口会長,全国専修学校各種学校総連合会岡本副会長,一般社団法人公立大学協会郡会長

5.議事録

(1)「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申案)」に関して,資料1から5に基づき,日本経済団体連合会,全国公立短期大学協会,日本私立短期大学協会,全国専修学校各種学校総連合会,公立大学協会からヒアリングを行い,その後意見交換が行われた。

【永田分科会長・部会長】  定刻になりました。第144回大学分科会・第27回将来構想部会の合同会議を開催させていただきます。
 カメラ等の撮影につきましては冒頭部分のみ,審議が始まるまでとさせていただきます。
 本日,議題は大きく分けて2つありまして,1つは,これまでの皆さんの御意見を踏まえてようやく「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申案)」が出来上がり,10月5日に開催された中央教育審議会総会で皆様からおおむね了承を頂き,そこで出た意見を取り入れた形で本日からパブリックコメントにかけております。
 ただ,本部会としては,これで終わったわけではありません。本日と次回の2回にわたり,答申案について各関係団体から御意見を頂きます。これらの御意見を踏まえ,本部会の委員の先生方から最終的な御意見を頂く機会を作る予定でおります。
 2つ目は,法科大学院教育等の改善・充実についてということで,これは3月の大学分科会・将来構想部会合同会議において,「法科大学院の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(案)」について御意見を頂きましたが,本日は,事務局の方から具体的な制度改正案について御説明を頂き,皆さんから御意見を頂こうということでございます。
 それでは,配布資料について事務局から御説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  資料1から7までと参考資料が2点ございます。資料1から5までが本日御発表いただく関係団体の皆様からの資料となります。資料6が法科大学院の資料,資料7は今後の日程になります。参考資料1,2は,本日から開始しましたパブリックコメントの答申案でございます。不足がございましたら,お申し出ください。
【永田分科会長・部会長】  それでは,早速議事を始めさせていただきます。先ほど申し上げたように各関係団体からヒアリングをさせていただきます。まず一般社団法人日本経済団体連合会 三宅龍哉教育問題委員会企画部会長から御意見を10分程度で頂きたいと思います。三宅様,それではよろしくお願いいたします。
【三宅部会長】  経団連から参りました三宅でございます。本日は,答申案につきまして意見を述べる機会を頂きまして,ありがとうございます。
 まず,本答申案のビジョンや方向性につきましては,賛同するということを申し上げたいと思います。中教審大学分科会並びに将来構想部会の委員の皆様には,今回,日本の高等教育政策の節目となる非常に重要な答申案をおまとめいただき,本当にありがとうございました。
 その上で,本日はその具体化に向けたプロセスにつきまして,経団連が6月に公表した「今後のわが国の大学改革のあり方に関する提言」に照らして,若干の御意見を申し上げたいと思います。資料1を付けておりますが,本日はこの資料は使用せず,口頭での説明といたします。何かありましたら,そちらを御覧いただくということでお願いします。
 説明の順番としましては,まず強く賛同する点,次に方向性やビジョンは賛同するけれどももう少し踏み込んでほしい点,最後に懸念している点の順番で御説明申し上げたいと思います。
 まず今回の答申案で,経団連として強く賛同するポイントにつきまして申し述べたいと思います。
 1点目は人材像に関してであります。答申案では,予測不可能な時代を生きる人材に求められる人材像を定義していただいており,基礎的,普遍的な知識理解等に加え,数理,データサイエンス等の基礎的教養を持ち,文理横断的な能力を身に付けた人材と整理いただいております。これは強く賛同するところであります。
 これらの資質・能力はSociety5.0時代におきまして,創造力を発揮しながらAIやビッグデータを活用し,新たな付加価値を生む人材として経団連の提言でも求めている能力に合致すると考えております。また理数系,情報系の教育と同時に,経団連としましては人文社会科学系の教育強化も訴えておりまして,文理融合の知識を持った人材を育成することも必要だと提言しております。
 2つ目は,教育の質の保証を,実現すべき改革の方向性の柱の一つにしていただいた点であります。この点も強く賛同申し上げます。経団連でも今回,採用選考に関する指針の見直しを発表いたしましたが,産業界においても大学教育の質保証に対する関心が高まってきております。今後企業においても学修ポートフォリオなどを採用活動でより積極的に活用し,大学で何を学んだか,どのような活動を行ったかを評価する採用の流れが加速するものと予想されております。
 この答申案では,今後の検討課題としまして,学修成果の可視化と情報公表の更なる充実,3つのポリシーに基づく教学マネジメントの確立などを指摘していただいております。経済界といたしましては,学修成果等を活用した採用を積極化するためにも,大学間の比較も可能となるような現実的な教育カリキュラムの評価基準や枠組みの策定,教育の成果・効果を測る指標の開発なども期待しているところです。
 次に大きな2番目としまして,答申案の改革の方向性については賛同いたしますが,更なる議論を深めていただきたい部分をご指摘申し上げたいと思います。
 1点目は,大学等の連携・統合の推進に向けた仕組みや制度改正についてであります。国立大学における一法人複数大学制度の導入など,大学等の連携・統合の推進に向けた仕組みについては,是非進めていただきたいと考えております。今後の文科省への期待でありますが,大学の学長のリーダーシップに基づき,国公私の枠を超えた大学同士の縦横自由な連携・統合を可能にする制度改革の実現に,是非スピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。
 また,学長の大学経営の自由を阻害している障害があるとすれば,できる限りそれを取り除き,大学間の自由な再編等を促す仕組み作りをお願いしたいと思います。一方で,大学がやむなく撤退を決めた場合においては,学生への不利益が生じないようなセーフティーネットをあらかじめ整備しておくことが必要であると考えます。
 2点目でありますが,今回の答申案におきまして,18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関全体の規模や国公私の大学の役割分担を検討する必要性の指摘がされております。これは大変重要だと考えております。しかしながら,答申案では高等教育機関の全体規模について「個人の強みを最大限伸長するための規模の適正化について検討する必要がある」という御指摘があるものの,具体的な適正規模が示されなかったということは,大変残念に感じております。
 国において一定の方向性を検討する必要があるとされておりますが,国レベルで高等教育機関全体の適正規模が示されなければ,国立大学の適正規模についても適切な把握ができないのではないか。このような懸念を持っています。
 最後に,今回の答申案につきまして懸念を感じている点につきまして,御説明申し上げます。第1点は,国としてのグランドデザインがないままに,地域単位で連携・統合を検討することであります。答申案では,地域における高等教育の将来像を描く際には,国が直接関与するよりは,地域で高等教育機関や地方自治体,産業界を巻き込んで地域連携プラットフォームを構築して,将来像の検討を進めていくことが適当と御指摘を頂いております。
 私どももこの考え自体を否定するものではありませんが,この問題は,高等教育のみならず地域創生や地域の在り方,経済政策,人口動態などを含めた非常に多元的なテーマになろうかと思いますし,そうした内容を扱うことが重要であります。そのために御提案のやり方では2つの点を懸念しております。
 1つは,各地域の部分最適の集合体にならないかということであります。目指す日本の将来像とずれが生じないか。又は人材育成や経済合理性の観点からも,かえって不適切あるいは不効率となるおそれがあるのではないかと懸念しております。全体で見たときに,役割や機能の重複が起きたり,欠落があったり,あるいは地域的な偏在が生じたりということが起き得るのではないのかと懸念しております。
 2点目として,自治体をまたがる連携・統合に関しての調整機能を持つのは,やはり中央政府であるため,自治体をまたがる広域的な連携・統合が結果として進まない,あるいは調整が難航して時間がかかる,若しくは,ちょっと言い方は荒っぽいですが,足して2で割るような調整が図られるのではないかといったような懸念を持っております。
 これらの懸念があるために,経団連は6月の提言の中では,内閣に省庁横断的な会議体を設置して,Society5.0時代を迎える我が国の産業社会構造の変化,人口動態,分野ごと地域ごとの人材ニーズなどを勘案して,我が国全体の大学の再編・統合に関するグランドデザインを策定するよう提言しております。グランドデザインの策定には,地方公共団体の代表,大学関係者,産業界代表も参加して行うべきとしております。
 その上で,地域に存する国公私立大学や地方公共団体,産業界が参画する都道府県を超えた広域的な協議体でグランドデザインを踏まえた再編・統合の具体的な進め方や,国公私の枠組みを超えた連携の在り方について検討し,実行していくのが適切と考えております。これらは,資料に出ておりますので,お目通しいただければと思います。
 以上,私から6月の経団連の提言内容を踏まえまして,答申案に対する意見を申し述べさせていただきました。是非経団連の考え方も御理解いただいた上で,今後とも緊密に連携させていただければと思っております。どうも御清聴ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  どうもありがとうございました。賛同の御意見から懸念されている点まで,いろいろと御意見を頂きました。委員の方々から御質問をしていただければと思います。
 有信委員,どうぞ。
【有信委員】  どうも説明ありがとうございました。
 基本的には,将来構想部会の方向性とずれていないような印象を受けますが,地域のところの経団連の懸念という部分で多少気にかかるところがあります。これは自主性・自律性の問題と全体最適をどう考えるかという問題に関わると思いますけれども,事前に頂いた資料の9ページに,大学等連携推進法人(仮称)のイメージ図があり,細かいところで申し訳ありませんが,この中に大学法人と併せて,研究開発法人というものが枠組みに入っています。これが国立研究開発法人ということを意味するのであれば,実はもともと経済界では,国立研究開発法人と大学の役割は基本的に違うので,この違いを明確にして,それぞれ力を最大限に発揮すべきという方向で議論があったように記憶しています。この辺りの考え方が変わったのかどうか。
 なぜこのようなことを言うかというと,国立研究開発法人というのは,御承知のとおり政府といいますか国の具体的な政策の実行主体なので,研究開発の方向あるいは内容等について国の審議会で審議された上で方向性が決められ,具体的に研究が進められていて,予算措置も取られているという体制になっています。
 大学法人の方は,特に国立大学法人について言えば,これは運営費交付金ということで,大学の研究・教育の自由を保障しつつ,独自に自律的に研究・教育を進めるという体制になっているので,基本的な立て付けが違うんです。例えばこれを,一緒の中でコントロールするというのは,何か経団連としては独自のお考えがあるのでしょうか。
【三宅部会長】  従来の考え方を変えたというよりも,今回特に地域ということを考えますと,先ほど申し上げましたように,地域社会の在り方や産業の在り方,雇用の在り方など,多面的に考えていかないとこの問題が解決できないと考えております。そうした中で,研究開発機関もあわせて,広く地域の在り方を考える上で必要なメンバーであるということで入れたと私は理解しております。
【永田分科会長・部会長】  よろしいですか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  答申案13ページの一番下のところでありますけれども,「産業界との協力・連携」というところがありまして,その一番下のパラグラフで,「その際,今後更に重要性の増すリカレント教育については,知識の最新化や新たな知識を学ぶことのみならず,多様な学生が相互に学び合うことを実現するために,産業界の雇用の在り方,働き方改革と,高等教育が提供する学びのマッチングが必要不可欠である」というふうに述べています。
 私は,これは,これからの日本の高等教育の将来構想を語る際に極めて重要だと思いますが,これは産業界から何らかの積極的な行動がなければ実現するものではありません。こういった点について,今全く言及はありませんでしたが,経団連としては,どのような行動が具体的に可能であるとお考えでしょうか。
【三宅部会長】  この部分は,産業界としての対応も必要だという認識は共通であります。前回のヒアリングのときも申し上げたかも分かりませんが,イノベーションの時代において,技術の進化,ビジネスの変化が激しいということは企業の共通認識であり,リカレント教育の必要性については企業としても強く意識しているところです。今,企業の中でも働き方改革を通じて,長時間労働の是正や柔軟な働き方を推進する中で,学びのための時間を確保できる仕組みは構築されてきていると思います。
 また,今後労働の流動化が進むことを考えれば,学び直しの機会も必然的に増えると思います。一方で,本人あるいは会社がどこまで費用負担すべきなのかという問題があります。特に退職して自分のスキルアップのためにチャレンジする人たちに対する経済的な支援は必要ではないかなと考えております。
 このように,今すぐに何か具体的な動きがあるわけではありませんが,現在は将来のための土壌作りをしているというフェーズだと認識しております。
【永田分科会長・部会長】  この後もヒアリングが4つ控えていますので,今現在,札が立っております五神委員,益戸委員,松尾委員,山田委員の4人で,質問は終了とさせていただきます。
 それでは五神委員からお願いいたします。
【五神委員】  7月11日の大学分科会・将来構想部会合同会議で私の意見を述べさせていただいた際,次のようなことを申し上げました。20世紀においては,大学は人材を社会に送り出す,いわば人材の高い発射台でした。その時代には産と学の分離が明確で,その役割分担の中で大学が定義されていました。
 ところが,今明らかに知識集約型社会へのパラダイムシフトが起きています。経団連も中西会長になってから発信がかなりSociety5.0色の強い発信が行われるようになり,パラダイムシフト後の社会における大学の役割についての議論が更に深まってくるのだろうと思っています。そのときに,過去の殖産興業や,高度経済成長,つまり労働集約から資本集約に向かう工業化のモデルのときとは,大学への期待が質的に変わってきているはずです。その中で,すでにストックとして整備されてきた大学という資産を,パラダイムシフト後の社会において,どういうふうに有効活用するべきであろうかという議論をさせていただきました。
 これが答申にはなかなかうまく染み込んでいないということを答申を読んで実感したところです。旧来の成長モデルで言えば,18歳人口が減るのでそれに応じて大学の規模を縮小するという話になりますが,その場合,縮小したときに残るもの,要するに捨てるものをどうするのかという議論が必要になります。
 私の3年半の大学行政経験からすると,縮小の議論はなかなか進みません。しかも,縮小して切り捨てようとしているものは価値がないわけではありません。これからの知識集約型社会においては知識がなにより重要になるわけですから、知を生み出す大学の価値は非常に高くなります。ですから,知識集約型社会を先行的に思い描いて大学を活用するような新しいモデルを作り,そこを育てる一方で,旧来の18歳の若者を教育して社会に送り出す役割の部分は縮小するなり変えていくというような戦略が必要であろうということを7月11日に述べさせていただきました。この部分は非常に重要だと考えています。
 そのときに,何を用意したらいいのか,先行投資として何が必要かということは,大学だけで考えるのではなく,産業構造がパラダイムシフト後にどのように変わっていくのかというビジョンをきちんと共有しないといけない。先ほど経済政策とのバランスあるいはリンクが重要だということをおっしゃったのは,正にその点だと思うのですが,そこを国がやるということだけではないだろうと思います。成長へのロードマップが明確だった高度経済成長のときは,産官学の分業が明確だった時代で,国がロードマップを整理して提示すればよかったのですが,今はそうではありません。
 ですから,産業構造あるいはグローバル化も進む中で,産業界としてはどういう形で日本が稼いでいくのかというビジョンを提示していただいて,それと整合する形でパラダイムシフト後のビジョンを描かないと効率的な議論になりませんし,生産的な改革が進みません。その議論が煮詰まっていないということは,先ほどのお話を聞いても感じましたので,是非そこは連携しながら深めていきたいと実感しました。
 8月にシリコンバレーのGoogleの本社を訪問する機会がありました。キュリオシティ・ドリブンで,かつお金を稼ぐことにも興味がある若者が世界中から集まっている。つまり,20世紀の高度経済成長のときには高度な知は大学で作り,それを社会に出てからバリューに変えていくという分業でしたが,今はそれが一体となっている中で知が作られている。しかも,その場が大学ではなくて,もしかしたらその主要な場は産業界に移るかもしれない。ですから,産と学という概念自身が変わらなければいけないかもしれないのです。
 この答申で書いている2040年というのは,確実にパラダイムシフト後の世界なのは間違いありません。その前に超高齢化という2025年も乗り越えなければいけない中で,2040年の社会像をどう考えるかが課題です。その中で,今,日本が持っているインフラあるいはストックをどのように生かしていってそこにつなげるかということを,かなりクリエイティブな議論をしていく必要がありますが,その道筋をもう少し深めていかないと,2040年につながる話にはなりにくいと思います。
 そのときに一番大事なのは,産官学が連携するというような各セクターが分業する発想を超えて,本当に同じ土俵で一緒に悩んでビジョンを作っていくという作業がないと,なかなか良い,世界の中で勝ち抜けるようなビジョンが作れないと思います。そういった議論をこの答申案を契機として, 2040年はすぐには来ませんので,次のステップとして議論していくのがいいのではないかと思いました。
 以上です。
【三宅部会長】  御提案はそのとおりだと思います。今,産業界で何が起きているかといいますと,完璧なものを作って,資本を投下して,一気に大量生産をするという従来のモデルから,リーンスタートアップやアジャイル開発など,試作品,プロトタイプを作りながらどんどん考えていくという流れになっており,こうした開発には実は資本力はさほど要りません。大学発のものも多くあると聞いておりますが,アイデアとそれを育てるインキュベーション機能があればいいということでありまして,スタートアップが実際のいろいろなニュービジネスの種を作りつつあります。
 そのため,従来の大企業中心のモデルではなく,産学連携したスタートアップモデルあるいはクラウドソーシング,場合によれば個人が中心になるようなイノベーションがどんどん起きて,それを大企業がうまく取り込みながらビジネスを育てるというプロセスがさらに進んでいくと思いますので,今おっしゃったような社会像というのは,かなり共感できるところです。
【五神委員】  1点だけ追加ですが,グローバル化が非常に進む中で,産業活動において,株主構成を見たときに資本は非常に多国籍になっています。その意味で,国家の単位で議論していても,なかなか実効的なものが出てこない。
 産業界ではすでに,経団連の会員企業の中にも外国企業が少なからず入ってきている状況と聞いていますので,どのように日本としての基盤を高めていくかを考えるにあたって,すでに進んでいる産業界の方の知見をインプットいただきながら議論していかないといけないと感じています。
【永田分科会長・部会長】  益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  御意見ありがとうございました。
 私たちが,今日まで27回の議論を重ねて,深めてきた意見に対して,経団連の皆さまから一定の御評価を頂けた。という事は大変やりがいがあったなと感じています。経団連さまからの御意見に,質保証ですとか学修ポートフォリオ,可視化のお話が出てきました。この問題の改革は,教育界だけの話ではなくて,経済界,産業界の御理解と協力があってこそのことであります。
 この議論は,スピードアップしてどんどん深まるでしょう。というのは,日本企業に限らず,世界中の企業が大きなターニングポイントに来ているわけですから,新たに求める人材が大きく変化するのは必然です。御意見の中では,それを強くおっしゃったのではないかと思います。今後,従来とは違う意味で大学間の比較は大切です。マスコミが特集で取り上げて,この分野ではこの大学がいいぞと扱うのではなくて,きちっとしたものに基づいた評価が,企業に限らず,御父兄,そして学習する御本人にとってすごく重要だという時代が来た。そのためのきっかけになる答申を私たちは議論しているのだということを改めて感じました。ですから,大変有り難い御意見を頂いたなと思っております。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  三宅部会長,お願いいたします。
【三宅部会長】  これは,採用する側の姿勢も変えないといけないということが常々指摘されておりまして,もちろんその意識はありますので,一緒に議論させていただいと思います。具体的にどういう指標が出てくるのかについても是非注目していきたいと思っております。
【永田分科会長・部会長】  松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  私もグランドデザインが大好きなので,よくグランドデザインのことを言っているのですが,大学の連携・統合のところで,やはり大学のパラダイムを変えて,新しいチャレンジをしていく。そのときに,障害になるものは,自治体同士のいろいろあって国がサポートするというのは多分いいのだと思うのですが,これをグランドデザインという形で決めてしまって,また類型化ではないですが,地域によってここはどうだ,ああだということを余りに国がやり過ぎると,それぞれの地域や大学の自律性や自主性を損なうことになる。一番大事なのは,大学がしっかり機能強化ができて,それが教育の質の向上につながり,産業界にも貢献できるし,基礎科学も強くなっていくという方向が一番望ましいので,誤解していたら大変申し訳ないのですが,国が一律にグランドデザインを決めてこれで行けというのは,これから余り成功しないのではないかと思います。
 むしろ,先ほどプロトタイプと言われたのですが,いろいろなプロトタイプがそれぞれの地域で工夫を凝らして,成功したものはどんどん伸ばしていけばいいし,そうでないものはもう一回やり直させるぐらいのアローワンスは,今持ってもいいのではないかなという気がするのですが,いかがでしょうか。
【三宅部会長】  これは一長一短の話であって,どちらを重視するかという話だと私は思います。私どもの提言も,国が決めるべきとは言っておりません。国に調整機能を置いた上で,地域や大学,産業界などの主だった人たちのコンセンサスを取りながら進めるべきという意見です。全体の調整機能がないままで,部分最適のシグマとなっては,日本全体の姿の視点からずれが生じないかという懸念を表明させていただいた次第です。
【永田分科会長・部会長】  山田委員,どうぞ。
【山田委員】  私も1点目は今の意見と同じような意見になるのですけれども,やはり人生100年時代や1億総活躍の時代になってきたときに,正に地域における人材のニーズも違いますし,人における自分の高等教育に対する捉え方も違う。非常に多様な時代が来るのではないか。様々な多様性を持った高等教育という時代が来るのではないか。もちろん国際性豊かで,しかもIoT時代に対応していく。企業のニーズにとっても非常に大きな戦力になることも必要であると同時に,地域にとって文化や環境を守っていくような,これからの日本のバランスの取れた生活を維持していくような高等教育もあるのではないか。
 そうした多様な教育をどのように取りまとめていくのかというのは,恐らくこれからの課題ではないかなと思います。そのときに,国のグランドデザイン,地方公共団体が参加すると言っているのですけれども,東京と鳥取や島根とでは全く違う立場,違う意見になってしまいますので,それこそかえってまとまらないだけの話ではないかと思います。地域の自立性というものをしっかりと踏まえた形で行かないと,迂遠なようでいても本当の意味での新しい高等教育の形にならないのではないかという基本的な意見を持っております。
 そうしたものを踏まえてちょっとお尋ねしたいのですが,1つはこの地域という概念です。ここで例えば大学等連携推進法人という形を取っているわけですが,この場合において,地域というものの概念は一体どういう形で捉えているのか。連携推進法人で「地域の国公私立大学をグループ化し」と言っているのですが,この地域概念がばらばらだと全く違うものになってしまうというのが1点です。
 それからグランドデザインの中心としてやっていくときに,どういうツールを考えてらっしゃるのか。特に認定とか認定の取消しだけで進む問題ではないだろうと。新しい高等教育を発展させる上での財政的な問題も含めてのツールをどういうふうに考えてらっしゃるのかという2点をお伺いしたいと思います。
【三宅部会長】  まず地域の概念は,前回もヒアリングのときに申し上げましたが,自治体などの狭い単位ではなく,ある程度の広域が必要だろうと思っております。答申案でも,「各高等教育機関が結びつきの強い地域を中心に、歴史や文化に裏打ちされた、経済圏や生活圏といった関わりや、昨今の国際化の状況も踏まえて捉えることが適切である」と書かれてありますが,それとほぼ同じ考えです。
 それから,グランドデザインの中身は何かということにつきましては,十分詰め切っているわけではなく,例えば,それぞれ大学の専門性を考慮しつつ,どういう地域に立地するのがよいのか,それぞれの定数をどう考えていくのか,そのための財政支出をどうするのか,など多面的なことがあるとしかまだ言っておりません。政府に,こうした課題に対する調整機能を置いたほうがいいのではないかという提言に今はとどまっております。
 ですから,もし提言で申しあげた方向で検討が進んでいくとすれば,具体的な内容の検討も進めていく必要があると思っております。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。
 それでは,三宅部会長,どうも本当にお忙しいところ,ありがとうございました。大変参考になります。
 続きまして,短期大学の協会の方からヒアリングをさせていただきます。全国公立短期大学協会の杉山寛行副会長,並びに日本私立短期大学協会の関口修会長から御意見を頂きます。合わせて10分程度ということでお願い申し上げます。
 それでは,杉山副会長からどうぞお願いいたします。
【杉山副会長】  公立短期大学協会の杉山でございます。本日は,こうした機会を与えていただいたことに深く感謝しております。
 全体につきましては大きな異議を持っているわけではございませんので,大きな点2点について,少し確認といろいろと意見を申し上げたいと思います。
 1点目につきましては,全般的事項についてでございますが,大学をはじめとした高等教育と社会との関係というところでは,学問の自由とか大学の自治という文言は見られておりますが,全体的な印象としては,企業や国の経済発展のための高等教育という側面が非常に強く打ち出されていると考えております。
 学問の自由や大学の自治というものが,国や企業の利益と必ず一致するものではなくて,対立するということもあり得ますけれども,将来を見据えた場合には,尊重されなければならないことだということは改めて言うまでもなく,ここで再度申し上げておきたいと思います。
 目先の最先端技術革新のためだけではなくて,すぐには役に立つかどうか分からないような基礎的研究の育成というのは,長い将来を展望した場合,またこれからの予測不可能な困難な時代には極めて重要なことであって,最後に触れられておりますような財政支援ということと絡んで,将来の高等教育を衰退させないような方策が必要不可欠であるということを,最初ですので,改めて申し上げさせていただきたいと思っております。
 高等教育が目指すべき姿の点においては,本答申の骨格となる考え方の一つでありますところの,「何を教えたか」から,「何を学び,身に付けることができたのか」への転換というものは,教えること一辺倒でありましたこれまでの教育からは一歩進んだものと高く評価しておりますが,2040年代のグランドデザインとしては,更に教育の本質であるところの教える「教」ともう一方の「育」,育てるということについて,高等教育というのは具体的な形で重点を移すべきだと考えます。
 とりわけ我が国の,世界における位置付けと高等教育への期待という点では,直面する課題を解決することができるのは,「知識」とそれを組み合わせて生み出す「新しい知」であるというふうに唱えられていますが,しかしながら知識を組み合わせて新しい知を生み出すということは,2040年代ではむしろAIを中心とする人工知能等の独壇場ではないでしょうか。
 2040年代の教育は,例えばこれは無から有を生み出すような人材育成というものが必要でしょうし,これまでの知識やデータでは生み出すことができない新しい知の創造というものを実践できる人材。また,職業人としては,技術革新の結果出現するであろうところの新しい環境,組織で新たなことを柔軟に学び取ることのできる能力というものを身に付ける。そういった人材が必要とされるのではないかと考えております。
 2番目につきまして,公立短期大学ですのでそういう立場から申し上げさせていただきますが,短期大学におきましては,2040年に向けては,短期高等教育機関として大学制度における短期大学の位置付けの再構築について検討することも必要であると指摘されております。
 近年,産業界と連携した教育を行う高等教育機関が期待される余り,おしなべて専門職短期大学等へと政策誘導がされるとすれば,残念なことだと考えております。既存の大学,短期大学が専門職学部への転換を期待されているという文言との関係で,少し懸念しているところでございます。
 まず短期大学の役割については,女子学生の教育,本文中では「女子学生の教育にも」という文言があり強調されがちですけれども,現状としては男子学生もかなりの在籍数が,これは14%でございますが,そうしたことに留意する必要があります。
 また,公立短期大学は学費が安く保護者の負担が少ないことから,志望の理由に学費が安いということを挙げる学生が極めて多く,経済的理由から4年制大学へ進めないという地方の実情があることにも注意すべきだと考えます。
 公立短期大学は自県内からの多くの学生を受け入れ,産学官共に継続的に連携を図り,就職希望者のほとんどは就職し,かつ自県内への就職率も高いなど,地域における産業等を担う人材育成を行うとともに,生涯学習の拠点となって地方創生に貢献してきております。また,学生の中には,学習を続けるうちに4年制大学へと進む学生も多く,海外の大学へも進んでおります。幅広い進路というものにも対応しているのが現状であります。
 このように輩出した人材が産業界から継続して評価され,また,4年制大学へと進路が広がってくるということは,それぞれの大学が特色を生かしつつ,総合教育にも力を置いた専門教育を行うという公立短期大学の特色ある教育方針によるものだと考えております。「幅広い教養を踏まえて職業又は実際生活に必要な能力を育成する教育」と文言がありますが,前者の「幅広い教養を踏まえて」という部分を,今後一層進化させる必要があるかと思っております。
 以上のような短期大学の特色というようなものを踏まえた上で,多様な高等教育機関の一部として,短期大学というものについての強みや特色を更に発揮できるよう,検討していただけると有り難いと考えております。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,関口修会長からお願いします。
【関口会長】  ただいま御紹介を頂きました日本私立短期大学協会の関口修と申します。
 我々短期大学は,様々な観点で,これまでいろいろな立場から教育の質の向上並びに国際化,そして2040年を捉えた短期大学教育の在り方はどうあるべきかということ。同時に地方における短期大学が,皆様御承知のように地方の中小都市にはたくさん短期大学が存在している。言い換えれば,日本の中産階級の教育内容自体は,短期大学が担っていると言っても過言ではないのではないかと思えるほどの内容を担っている。これが現状かと思います。
 正に教育内容という観点から申しますというと,一般財団法人短期大学基準協会が機能してから第3クール目に入っております。この基準協会の評価それ自体は,正に教育の質の向上自体と同時に,地域に求める人材,地域の産業界にどのような人材を輩出するか。
 御承知のように短期大学の特色であります自県内の就職率。これは70%から80%の自県内就職率を担っているという現状にあります。特に私どもが心配しておりますことは,若い世代の高校卒業生あるいは短期大学,大学卒業生の大方は,残念ながら大都会に就職を求める傾向が強うございます。このような中で,自県内の教育環境そして人材養成を担っている短期大学として,今,我々が対応しなければならない大きな課題は,短期大学の教育そのものも同様でありますけれども,2040年に向けて,我々は新たなシステム,目下我々の中でも随分活用してきてはおりますけれども,特例適用専攻科。これは御承知のように独立行政法人大学改革支援・学位授与機構が対応しておりますが,これは地域のそれぞれの状況をきちんと認識して,そこに新たな体系の学校教育制度そして勉強できる内容を具備いたしませんというと,地域のそれぞれの持っている特色はいささか枯渇してしまうのではないか。全てが金太郎アメのようなことであっては,地域は枯渇する。御承知のとおりであります。
 そのことへの我々のいざない方,そしてまた取組。これが新たな特例専攻科のような形のものを作り上げてまいりませんというと,地域のそれぞれの産業形態が求める人材への対応,これは正に産業界と我々協議会が十分に話し合った上で,このような制度を設けなければならないのではないかということへの考えが,いささかだんだん膨れ上がってきているのが現状であります。
 何にも増して大事なことは,地域で,そして若い人たちが地域社会を支える。それも高校卒業生程度のところからこれが成り立たなければなりません。我々はそれがなし得るということの査証として,短期大学基準協会による短期大学それぞれの評価をこれまで続けてきております。この認証評価機関の持っている意義,これは新たな分野,2年又は3年の上に1年又は2年の教育機関を設けることによって,新たな取組。4年制に編入すればいいということでは決してないと思います。その地域を支える教育機関があればこそ,我々がなし得る教育が十分果たせるのではないか。正に我々,それらの内容について海外の評価機関とも提携しながら,これを推し進めてきております。
 そのような内容で,海外あるいはまた4年制大学への進学する学生への取組が,正にこれから2040年に向けて,我々が具備していかなければならない内容がそこにあるということを申し上げて,御質問を頂戴したいと思います。ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  関口会長,どうもありがとうございました。
 それでは,委員の方々からの御質問をお受けいたします。どちらの協会への御質問でも構いませんし,双方に対してでも結構です。いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは,私の方から1つだけ。「地域連携プラットフォーム」という案を答申の中に書きこんでおりますが,ここには四年制大学だけでなく,短期大学も,高等専門学校,専門学校も全て参加して議論することになると思います。それについて,短期大学としては当然あった方がいいとお考えか,あるいは,それが自分たちの改革にポジティブに働くお考えかどうか,ということについてお伺いします。
【杉山副会長】  そのとおりだと思っております。先ほど申しましたように,地域における高等教育機関としての多様性というものが,かなり重要だと思っておりまして,その中で短期大学がどういう機能を果たすか,どういうポジションにあるのかというようなことを考えるというときに,今おっしゃったようなそうした組織の中で再度考えるということは,非常に必要な状況だと考えております。
【関口会長】  今,杉山先生がおっしゃったこととほとんど同じではありますけれども,大事なことは,認証評価機関がどれだけ機能するかということと同時に,その教育内容が具体的に評価されるに至るプロセスは大事にしていかなければならないと思いますので,是非このような観点もお考えの中に入れていただければと思います。
【永田分科会長・部会長】  そのほか,よろしいですか。
 それでは,杉山先生,関口先生,お忙しい中ありがとうございました。御意見を参考にさせていただいて,ブラッシュアップを続けていきたいと思います。
 それでは,続きまして全国専修学校各種学校総連合会の岡本比呂志副会長から御意見を頂きます。10分程度で御発表いただいて,質疑応答とさせていただきたいと思います。それでは,岡本副会長,よろしくお願いいたします。
【岡本副会長】  ただいま御紹介いただきました全国専修学校各種学校総連合会の岡本でございます。まずは,このたびの答申案につきまして,このようにヒアリングの場を設けていただいて,意見発表する機会を与えていただきましたことに感謝申し上げたいと思います。
 専門学校は,高等教育の中でも職業教育を中心に担うセクターとして,全国約2,800校の学校群として人材育成に対応しておるところでございますが,今回,この発表については,今後の高等教育,特に職業教育の振興・充実の観点から意見を申し述べたいと思います。
 まず,資料4の1ページ目,ローマ数字の「2.教育研究体制―多様性と柔軟性の確保―」のところから御説明申し上げたいと思います。社会人の学び直しへの対応,リカレント教育につきましては,いわゆる人生100年時代に向け,教育・仕事・老後という3ステージの人生から,教育と仕事の繰り返しや,老後における学習など,長い人生の中で教育が関わる場面がより多くなることが予想されます。国民に対して多様なニーズに対応した教育プログラムを高等教育機関が提供していくことが重要と考えております。
 特に専門学校におきましては,新しい技術あるいは新しい分野の産業に対応した人材育成と,そのための教育プログラムの開発提供というのが得意な分野でありまして,そういった点で多くの人が持続可能な社会の担い手となっていくためにも重要であります。さらには都市部から地方へのIターン,あるいはUターンを希望する人への教育機会,教育プログラムの提供も,地域人材確保のために重要になっております。
 産業界と地域との連携が必要であり,連携強化のために地域連携プラットフォーム(仮称)などの仕組みが提唱されておりますが,そこにおいても積極的に参加して,それぞれの高等教育機関が持つ教育資源を活用するというふうにしていきたいと思います。また,このプラットフォームに関するガイドラインの策定に当たっても産業界や地方公共団体の意見等も十分に取り入れていくということが必要かと思います。
 また,社会人の学び直しにつきましては,現在いろいろな施策もありまして,積極的に取り組んでおるところでございます。一方社会人というのは受講時間,受講場所,受講費用などについてやはり多くの課題がありますので,経済的負担の軽減,より学びやすい環境の整備と,文部科学省だけではなく厚生労働省,経済産業省等の政策と是非積極的に連携していくことが重要になると思っております。
 2つ目,「留学生の受入れ」につきましては,グローバル化の進展で海外からの留学生は増加傾向にあり,平成29年度で専門学校留学生数は約6万人になっております。Student Mobilityということで全世界から優秀な留学生を集めるというのが,世界の競争になっているわけですね。現在検討が進められております日本語教育推進基本法案を是非成立させていただいて,留学生の日本語能力の向上のための政策の推進も望むところでございます。
 あわせて,専門学校を卒業する留学生は,専門的技能・知識を身に付けた学生でありますので,我が国で就職を希望する学生は多いということでございますので,その促進ということも重要です。優秀な外国人材確保の促進とともに,我が国の高度で専門的な技能・知識の海外移転,それによる国際貢献など,国内外の期待に応えていく必要があります。
 現在,技術・人文知識・国際業務という形で就労している卒業生が多いわけでありますが,その従来の在留資格の対象範囲を拡大していく,運用を弾力化していくということがまず必要でありますし,一方で現在政府が検討しております新たな在留資格の創設,これはいわゆる人手不足というところに限った分野での創設ということもありますけれども,やはりこの点については,いわゆる単純労働のような形での受入れということについてはやや疑問を持っておるところでございます。留学生の卒業後の我が国での就職機会の拡大を図り,単純労働とは異なる,より幅広い専門的技能・知識を生かした就労を可能とすることが重要ではないかと思っております。
 その際,特に専門学校留学生の場合は,専門学校での学修内容と業務の関連性が認められなければ在留資格の変更が認められないということになっておりますので,より幅広く就職機会を拡大していくことが大切であります。
 人口の都市部への一極集中,生産人口の減少により地域の人材が極端に減少し,特に地方における人材不足が指摘される中,地方での人材確保にも資することが期待されます。留学修了者を積極的に高度人材として受け入れることは,我が国への一層の留学促進策にもなると思っております。
 3つ目,「学位・称号及び学修成果の国際的通用制の確保について」であります。「高等教育の資格の承認に関するアジア=太平洋地域規約」の発効により,学位等の国際的通用制に関する議論が進むことが期待されております。特に専門学校卒業者が取得できる称号,専門士・高度専門士に関する国際的通用性の確保が重要です。
 学位の国際的通用性の確保のための具体的方策として,英語表記の整理が指摘されておりますが,併せて国家資格等と学修成果(ラーニング・アウトカム)・職業能力評価も含めた「国家学位・資格枠組み(National Qualifications Framework)」の構築に向けた取組を是非国家戦略として推進していただきたい。我々団体としてもしっかり対応していきたいと思っております。
 また,高等教育機関で取得可能な国家資格等に関して,国家間の相互認証による通用性の確保も重要であり,留学生がグローバルに活躍する際の評価基準ともなり得ます。
 次に,ローマ数字の「3.教育の質の保証と情報公表―『学び』の質保証の再構築―」ということで,「4.教育の質保証と情報公表」でございます。これも大変大事なテーマでありまして,現在文部科学大臣認定の職業実践専門課程の学科を有する専門学校数は,全体の3割強。2年制以上の学科で言うと約4割となっています。職業実践専門課程の充実方策として,認定校(認定学科)の増加と質保証・向上の更なる実質化が今後も専門学校教育の信頼性ということで重要と考えております。
 今般,高等教育の無償化,いわゆる負担軽減の制度設計に当たりましては,一定の質保証と情報公開を求められていますが,これは公的資金が投入される教育機関として社会への説明責任を果たす意味でも必要な措置と認識しております。
 また大学設置基準における学問分野の種類につていての指摘がなされていますが,専修学校設置基準に当たる分野分類についても同様の課題があります。見直しと整理が必要と考えます。
 ローマ数字の「4.18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置―あらゆる世代が学ぶ『知識基盤』―」については,説明を省略させていただきます。
 ローマ数字の「5.各高等教育機関の役割等―多様な機関による多様な教育の提供―」の「6.専門学校について」でございます。専門学校の特徴としましては,実践的な職業教育,地域密着型の教育,留学生・社会人受入れ,職業実践専門課程(学校関係者評価,情報公表の義務化),質保証・向上の取組などに言及しております。
 しかし,専門学校は他の高等教育機関と異なって,いわゆる学校教育法一条校ではありませんので,都道府県所轄の高等教育機関ということから,なかなか運営費補助等,公的助成がないという現状があります。したがって,職業実践専門課程に対する運営費補助,これは一部の都道府県はもう既に出ておりますけれども,都道府県による支援がより積極的に行われるよう,国としてもそういう取組を地方,都道府県に任せるだけではなく,国としての取組を是非お願いしたいと思っております。
 続きまして,ローマ数字の「7.高等教育を支える投資―コストの可視化とあらゆるセクターからの支援の拡充―」ということで,「7.高等教育への投資について」でございます。やはりこれからは説明責任,アカウンタビリティーが求められておりますので,その辺りのエビデンスというものをしっかりと確保していきたいと思っております。
 特に職業教育を行う教育機関におきましては,これまで教育の成果としてきた就職率,国家資格の合格率などのいわゆるアウトプットも極めて大事なのですが,それだけではなく,学生が卒業後にどのような職業キャリアを積み,高等教育機関で受けた教育が本人の職業キャリアの一時期若しくは最終的にどのように活かされたと言えるのか。ラーニング・アウトカムやいわゆる高等教育のコストパフォーマンスについて中長期的な視点に立って調査し,データを収集することが必要であります。
 地域を支える人材,地域経済の担い手を多数輩出している専門学校への公的支援は,他の高等教育機関に比べ極端に少ないという現状があります。高等教育機関が社会にコミットし,その便益を高めていくことにより得られる経済効果をいかに高等教育に還元していくかということを示すということの必要性が指摘されておりますので,是非そういった視点に立って,高等教育を受ける学生への公平な支援を国として行っていくことが重要であり,望んでいるところでございます。今回,その端緒として,高等教育の負担軽減が専門学校を対象にしても,もちろん全部ではありませんが具体化するという政策が打たれるということでありまして,これについては高く評価しているところでございます。
 以上で発表を終わります。ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,委員の方々から御質問等ございましたらお願いいたします。
  麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  岡本副会長,ありがとうございました。
 専門学校の在り方については,説明をよく理解させていただきました。その中で3ページに書いてあります,先ほど短期大学でもありました教育の質保証に関しましては,職業実践専門課程においてそれがなされているが、まだ全部がその課程ではないということで,この点を重要視されているということは十分理解いたしました。
 次に3ページの下の「専門学校について」の項目で,特に実践的な職業教育という観点でいきますと,これは一度,福田先生にもお伺いしたことがあるのですが,やはり専門学校としては,1年以上4年までの課程が置けるわけですが,新たな制度となりました専門職短期大学や専門職大学は一条校になりますので,こういったものを今後目指されたようなことを考えられているのかどうかということを是非教えていただければと思いますので,よろしくお願いいたします。
【岡本副会長】  ありがとうございました。専門職大学,専門職短期大学につきましては,今現在2019年開学の認可申請が出されているところでありますが,専門学校,特に職業実践専門課程を有する専門学校の中には,将来,専門職大学あるいは専門職短大を目指そうと考えているところもあります。全部転換するか,一部専門学校を残すか,それはもちろん各学校の経営方針でありますが,一定数の学校がそういう希望を持っております。一方で,現在の専門学校の皆さんの話を聞きますと,やはり大学・短大の設置基準というものが,校地・校舎はじめ,もろもろ非常にハードルが高いというようなことで,果たしてこれから新たに作って,学生が集まって経営上もきちっと運営できるかというような不安があります。
 資料の3ページにも,いわゆる大学設置基準の見直しということも,専修学校設置基準の見直し等もありますが,私も中央教育審議会の特別部会に委員としても参加させていただいておりましたが,やはり大学・短期大学の今の設置基準は多分60年ぐらいは抜本的な改定がなかったと思いますので,専門職大学・短大もそれに準拠した設置基準ができましたので,分野の設定の仕方も含めて,今回見直しというのが出されております。それこそ2030年,2040年を見越して,どういう大学,専門職大学・短大あるいは専門学校の在り方が必要なのかという観点から,設置基準については大いに議論していただきたいと思っております。何もただ基準を緩和すればいいということではないんですけれども,本当に少子化の中で,質の高い大学,専門職大学,専門学校がいい学生を集めて,卒業生が活躍できる社会を目指すということが最も重要なことです。やはり設置基準のところが専門学校が専門職大学・短大を創設する上でいろいろなハードルになっているというふうには聞いておりますし,私もそのように感じております。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございました。
 そのほか御意見いかがでしょうか。
 今,麻生委員が御質問された点は非常に重要なポイントで,いろいろな問題が含まれているので,この点はお互いに認識を深めていかないといけないと思います。
 それでは,ありがとうございました。お忙しい中おいでいただきまして,本当にありがとうございました。
 続きまして公立大学協会,郡健二郎会長から御意見を頂きます。10分程度で御発表いただき,その後意見交換をさせていただきたく思います。
 それでは,郡会長,よろしくお願いいたします。
【郡会長】  御紹介いただきました,公立大学協会から参りました郡でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。ヒアリングの機会を賜りましたこと,深く感謝いたしております。
 実は,昨日,一昨日と公立大学の学長会議がございまして,文科省の方から局長はじめ,この答申案の骨格のお話を頂き,そして学長の間で共有したところであります。
 先週事務局から配布させていただいておりますこの書類に従って,御説明申し上げたいと思います。
 公立大学協会では,「時代をLEADする公立大学 未来マップのための16の課題」と,ちょっと仰々しくうたっているいわゆるグランドデザインを今年の5月に発しているところであります。もしお時間がございましたら,お目通しを賜ればと思っております。
 また,この私,答申を拝読いたしまして,個人的には一大学を仰せつかっている学長といたしまして,非常に示唆に富むというと失礼ですが,本当に数々学ぶところがありまして,問題を整理させていただきました。ありがとうございました。
 本日は3つの点について,お話をさせていただきたいと思います。
 最初は,括弧の中にくくっていることでありますが,まず1つ目が,「学修者が得られる学びの成果を明確にし,それらを実感できるような教育研究を行う。また,それを確認できる質保証を行う」こと。
 2つ目は,「減少する18歳人口のもとで,教育の質を維持するために各大学は規模の適正化を行うとともに,社会人及び留学生の受入れ拡大をはかる」。
 3つ目が,「地域における高等教育のグランドデザインの議論の場を作り,大学は地域のニーズに応えつつ,強みや特色を生かした連携や統合を行う」。
 その3つが骨格かというふうに拝察いたしました。それぞれにつきましては,重要な課題であり,とりわけ私たち公立大学につきましては,地域における教育・研究・社会貢献について責任を持って確実に行っていくためにもこの指針をしっかりと受け止めていきたいと考えておるところでございます。
 本日は,この中で公立大学に限りましたことについて,4つお話をさせていただきたいと思います。
 まず1つ目がさきに述べました1点目に関係いたしまして,「教育の多様性の課題」についてでございます。答申の中で,本当にたくさん多様性をうたっておられます。多様性は,言うまでもなく大学の教育におきまして新たな可能性を生み出す源泉とも言え,公立大学におきまして,その強みとして強調させていただいているところであります。
 多様性の具体的なものとして,分野を超えた専門知の組合せが必要との御指摘がございます。こうした分野融合の教育課程を,単に多様な教育科目を準備して学生さんの主体的な選択に委ねるカリキュラムを作る。それだけに限ってしまうと,学生の学問的なアイデンティティの確立に問題が起こるという指摘があると思っております。したがいまして,多様性を実現するには専門知をどのように組み合わせるのか。あるいは大学側のしっかりとした戦略が必要と考えます。
 なお,公立大学では,さきに御紹介させていただきました未来マップの中で,それらの実践を試みているところでありますので,重ねてお目通しいただければと存じます。
 2つ目のテーマであります。先の1番目に関連したことでありますが「教育の質保証の課題」につきまして,お話しさせていただきます。
 教育情報の公表は,質保証について最も重要な一つだと考えております。現在御承知のとおり,大学ポートレートは国には2つの機関があり,公立大学は大学改革支援・学位授与機構のシステムに相応の費用負担をさせていただきながら参加させていただいております。答申書の中で,学修成果についての新しいツールが御紹介されておりますが,これまで積み上げてまいりましたポートレートの取組につきましても,活用価値の高いものを育てるという観点で,よろしくお願い申し上げたいと思います。
 また認証評価は第3期に入っていると思いますが,7年サイクルでの平準化が強く求められる余り,次の改革が行われる機会となりますと,制度が始まってから21年後ということになりますので,少し長過ぎるのではないかという意見がございました。特に法人評価など他の法令に基づく,より厳しい第三者評価が義務付けられております公立大学にとりましては,大学改革に軸足を置いた評価など,多様な評価を選択できるような柔軟な仕組み作りを求めてまいりたいと思っております。
 3つ目のテーマといたしましては,先の2番ないし3番目に関連したことで,「国公私立大学の役割分担と地域配置の重要性」でございます。答申案の中では,公立大学の役割について37ページでうたっていただいており,地方公共団体や産業界との関わりの中で,地域における高等教育のグランドデザインを議論することと拝読いたしました。公立大学といたしましても,「地方公共団体の高等教育施策の中心的役割を担う」と同ページにありますが,その存在として提案いただいたことをしっかり受け止め,実行してまいりたいと考えております。
 一方,地方公共団体の多くは,高等教育政策の舵取りをするには,失礼ながら経験が必ずしも十分ではない。そこで地域の民意を反映する機関であります重要性を考えますと,高等教育機関側すなわち大学から知見を補いながら,その政策機能を高めていく必要があるのではないかということであります。そういう意味でも,公立大学はイニシアチブを取れるように努めてまいりたいと考えております。
 最後,「ガバナンスの課題と地域で描く将来像」につきまして,お話をさせていただきます。
 大学のガバナンスにつきましては,国立大学の一法人複数大学制が現在注目されておりますが,公立大学では,御承知のとおりこの制度につきましては経験済みで,機能面での課題も明らかになっているところでございます。そのような仕組みも含めまして,公立大学ではドラスチックな改革を行ってきたところでございます。大学分科会の「大学のガバナンス改革の推進について(審議のまとめ)」におきましては,学長,教授会等の役割がうたわれておりますが,加えて,国,地方公共団体などステークホルダーの関係についてのガバナンスの議論も必要かと考えます。
 なお,その際,ガバナンス論につきましては,政府から民間,中央から地方,そして政府から社会ネットワークという観点の議論も必要かと考えます。
 まず政府から民間につきましては,法人化によって市場化や企業化が強調される余り,政府の役割が不要になったというふうにとりかねないところがございます。公立大学といたしましては,自治体との関係をより重視しながら努めてまいりたいと考えております。そのような観点も御利用いただければと思っております。
 2つ目の中央から地方につきましては,大学は教育サービスの提供者と考えた場合,答申案に示されておりますように学修者の学修成果の実感が大切になってまいります。国よりも地方政府において,効率性あるいは応答性が高まることで,公共サービスの質や利便性が向上するという公共政策における議論を踏まえれば,地方公共団体の果たす役割についてうたっておられます答申案の方向性は,公立大学としても,公立大学協会といたしましても妥当なものと考えております。
 3つ目の社会ネットワークの視野につきましては,答申の地域連携プラットフォームという御提案を私たちも支持する考えでございます。とりわけ質保証活動におきまして,構成員がオーナーシップを持つことが,この活動が機能するかどうかというポイントであるという研究があると伺っておりますので,参考にできるかと愚考いたします。
 最後に答申案の中では,国全体という視点,それだけではなく地方という観点で立っておられることを力強く思っております。今後高等教育の連携におきまして,どのようなイニシアチブの下,ガバナンスを構築できるのか。あるいはどのように公共空間に向けて応答性を高めていくのか。そのような議論を関係者の間でしっかりと進めていくことが,公共財である大学を次の世代へつなげていくため,重要だと考えております。
 以上でございます。改めまして,本日ヒアリングの機会を頂きましたこと,深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
【永田分科会長・部会長】  郡会長ありがとうございました。
 それでは,委員の方から御質問等ございましたら,お願い申し上げます。いかがでしょうか。日比谷委員,お願いいたします。
【日比谷副部会長】  御意見の御発表ありがとうございます。
 頂きました資料,2ページの「教育の質保証の課題」のところについて,1つ伺います。学修成果等についての新たなツールの紹介というのは,現在の答申案の31ページ,32ページあたりのことを指しているかと思いますが,一方御発表のとおり,これまでのポートレートの取組もあるということで,一貫性のある方策が必要であるという御意見がありました。もう少し踏み込んで,こういうふうにしたら一貫性のある取組になるのではないかというような具体的な御提案があれば,もう少し伺いたいと思います。
【郡会長】  ありがとうございます。このポートレートにつきましては,4年ぐらい前から公立大学協会の中で,この意義とその費用について議論がありました。その結果として,大学改革支援・学位授与機構に大きな資金を投じてお願いしようと決めました。そこまで至るには,費用対効果がどうかという議論がたくさんありました。例えば自分たちだけでもできるのではないか。しかし,足並みをそろえてやるということで,最後には小さな大学も足並みをそろえていただいたところであります。
 したがいまして,このスタートされたときのこのポートレート,要するに学位授与機構が力を入れておられると伺っているそれに関して,もう少し成果が出るところまで,私たちが乗った後に,急にはしごを外されたということのないようにと。そういう意味であります。
【永田分科会長・部会長】  黒田委員,どうぞ。
【黒田委員】  ありがとうございます。
 公立大学は,もう既に1法人で複数大学を持っておられるところがあるわけでありますけれども,資料の2ページのところに,公立大学ではもう既に経験済みであると。国立大学が一法人複数大学制を取ろうとしているけれども,機能面での課題も明らかになりつつあるということを書かれていますが,複数大学を持ったときにどういう課題が今問題になっているのか,少しお聞かせいただければと思います。
【郡会長】  御質問ありがとうございます。
 既に複数の1法人複数大学を持っていると言うにはおこがましく,法人化したときに1法人,すなわち県などが複数の大学を持たざるを得なかった結果としてそうなっているというのが率直なところだと思っています。そういう大学から怒られるかも分かりませんが,本来であれば,機能的に言えば1法人1大学という形にすればよかったのが,法人化という波の中で,大学の中でできなかったというのが率直だと思っています。
 ただ,公立大学というのは,先ほども申し上げましたように多くが小さな大学,少ない学部しか持っていないところでありますので,それぞれが自分の主張をしながらやるというよりも,協調してやる方が大きいと,これは私見でありますがそういうふうに考えます。
【永田分科会長・部会長】  そのほか,いかがでしょうか。
 郡先生,どうもありがとうございました。
 本日,お呼びしました団体としてはここまででございますけれども,次回も引き続き関係団体をお呼びしてヒアリングをさせていただくということで,準備を進めております。

(2)法科大学院教育等の改善・充実について,資料6に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。

【永田分科会長・部会長】  それでは次の議題,法科大学院教育等の改善・充実についてでございます。法科大学院については,3月27日の会議において,「法科大学院等の抜本的な教育の改善・充実に向けた基本的な方向性(案)」について御意見を頂きました。その後,大学分科会直下の法科大学院等特別委員会において議論を続けていただき,取りまとめられた改革案,特に具体的な制度改革案について,事務局から御説明いただいて,その後議論させていただこうと考えております。それでは,事務局から御説明をお願いいたします。
【松永専門教育課長】  専門教育課でございます。
 法科大学院等の教育の改善・充実につきましては,3月のこの大学分科会におきまして,法科大学院等特別委員会にてまとめられました基本的な方向性について御報告申し上げました。その後,法科大学院等特別委員会におきましては,学部に設ける法曹コースに求められる事項でございますとか,関連する改革方策について御審議いただきまして,去る10月5日にその方向性についておまとめいただいたところでございます。本日は,このうち制度改正を要すると考える内容についてお諮りするものでございます。
 改めまして資料6の1で今回の改革の方向性の主要な点について御説明申し上げます。目的としましては,資料6の1ページ目上にございます,プロセスとして質の高い法曹を養成するという理念を堅持しつつ,優れた資質を有する法科大学院志願者を回復するというのが大きな目的でございます。このために,方向性としては2つございます。
 1つが,法科大学院と法学部等との連携の強化でございます。法学部に法曹コースの設置を奨励し,法学部が法科大学院と連携して,体系的,一貫的な教育課程を編成することにより,法曹志望が明確な学生等に対して,学部段階からより効果的な教育を行うというものでございます。
 現在法曹を志望する者の減少がありますが,この大きな理由の一つとしては,時間的・経済的な負担というのがございます。法曹になるまでの時間,経済的な負担があるということが指摘されております。この中にありましてその軽減のために,法曹コースには,希望する学生が3年間で必要な単位を修得できるよう教育課程上の配慮等を求めまして,優秀な学生につきましては,学部での3年間の学修の後,法科大学院での2年の学修を経て,司法修習へという道を拡大・促進しようとするものでございます。
 もう一つの方向性2というところでございますが,法学未修者教育の質の改善についてでございます。これにつきましては,共通到達度確認試験など進級に当たっての質保証プロセスを導入いたしますとともに,具体的には,下の方にもございますが優れた未修者教育の実例・手法等を体系化して共有するために,調査研究を行うということを考えているところでございます。
 先ほど申し上げましたように,10月5日に法科大学院等特別委員会におきまして了承されました改革方策の中には,制度改正を要すると考える内容が含まれておりまして,これをまとめましたのが2ページでございます。資料2ページにございますように,今回の制度改革の趣旨としましては,法曹養成プロセスの中核である法科大学院における教育の充実に資するため,法科大学院と法学部の連携促進による法曹を目指す学生の時間的・経済的負担の軽減でありますとか,法曹養成制度の信頼性・安定性確保等を図るという趣旨でございます。
 改正の概要として考えております事柄を挙げております。
 1つ目に法科大学院の教育の充実に資するため,まず丸1としまして法科大学院に教育課程等に係る情報の公表を求めてまいります。また2番目としましては,法科大学院のカリキュラムの更なる体系化を図るということをやっていくというものでございます。
 2つ目の丸が,いわゆる先ほど申し上げました法曹コースに関するものでございます。法科大学院において必要とされる法学の基礎的な学識を習得させることを目的として,法学部に置かれた課程(法曹コース)を法科大学院が何らかの形で指定すると。当然ここには法科大学院と学部等との協議があるわけでございますが,法科大学院の方からこの学部の法曹コースを指定等するというものでございます。
 丸2としまして,法科大学院が法曹コースを置こうとする法学部に対して必要な協力を行うこと。
 丸3としまして,法科大学院は,法曹コースの学生に対し入学者選抜における適切な配慮を行うこと。これについては後ほど申し上げます。
 3つ目が法科大学院における入学者の多様性の確保等のためと。1つは,法学を履修する課程以外のいわゆる他学部の学生,法学については未修者あるいは社会人等に対する入学者選抜における配慮を,配慮義務として規定するというものでございます。
 それから4つ目でございますが,法科大学院入学から司法試験合格までの予測可能性を高め,法曹養成制度の信頼性・安定性を確保するためと。このために平成30年度の法科大学院の入学定員は2,300人でございますが,これを総定員として,当分の間これを上限と定めるというものでございます。
 法曹養成につきましては,政府として毎年1,500名程度の法曹を輩出するという目標がございまして,現在司法試験の合格者数もおおむね1,500人程度となっているところでございます。こうした中におきまして,現在の入学定員1,300人というものを上限として定めることによりまして,法科大学院に入学すれば一定程度合格するという予測可能性を高めて,法曹養成制度の信頼性・安定性確保しようというものでございます。
 2番目としまして,仮に今後入学定員2,300を超えて大学側に動きがあるという場合には,文部科学大臣と法務大臣がこの定員について協議をするという仕組みを設けようと考えております。
 更に3番目としまして,法科大学院に限って,現在認可事項ではございません収容定員の増につきましても,これを認可事項としようというものでございます。
 最後の丸でございますが,学部3年から法科大学院2年のいわゆる3プラス2の一層の促進につきまして,飛び入学につきまして,法科大学院に限って,飛び入学を認めるための大学院側の判断材料を広げることを考えております。現行の学校教育法の飛び入学の要件は,その資料にございますように,当該大学院を置く大学が定める単位を優秀な成績で習得したと認められる者というものがございますが,法科大学院につきましては,既修者コースでの学習に足る能力を有するか否かを判断するための既修者認定試験というものが定着しております。ですので,例えばこの既修者認定試験の成績を学部での単位の修得状況と併せ勘案して,法科大学院への飛び入学を可能としようとするものでございます。
 先ほど御説明申し上げました1ページ目の資料の図のところに,法学部3年次を終えたところで飛び入学と早期卒業というのが並べて書いておりますが,今般,早期卒業につきましては,現在学校教育法で定められております要件であります,大学の定める単位を優秀な成績で習得したと認める場合というこの要件について,拡大等の改正をすることは考えておりません。早期卒業についての規定は,特に今回は触らないということでございます。
 その下にございます,これは制度改正そのものではございませんけれども,未修者あるいは社会人に対しては,先ほど申し上げましたとおり入学者選抜における配慮を求めますけれども,このほかに教育の質の改善につきましては,制度改正と併せて,そこに記述しておりますような内容について進めてまいりたいと考えております。
 また机上資料としまして,法曹コース出身者を対象とする法科大学院の入学者選抜の在り方のイメージ図をお配りいたしております。法曹コース修了者につきまして,それが法科大学院から見て連携先の法曹コースであるか否かを問わず,法曹コースからの入学者に対する特別選抜というものを法科大学院に求めまして,その枠,人数につきましては,入学定員の2分の1を上限としまして,またこのうち連携先の法曹コースからの学生を対象とした推薦等による選抜の枠につきましては更にその2分の1,全体の入学定員の4分の1を上限とするとしているところでございます。
 その机上資料の2ページ目に円グラフがございますが,これは現在の法科大学院入学者の出身大学の状況でございます。左側,現在既習コースへの自大学の法学部出身者の割合は46.9%となっております。今般の改革におきまして,法科大学院は自分の大学の学部と連携する,自分の大学の学部の法曹コースと連携するということが考えられまして,連携先の法曹コースから推薦等による特別選抜を実施するということが想定されるわけでございますが,先ほど申し上げましたように推薦等による枠につきましては,入学定員の4分の1を上限とするとしておりますので,今回の特別選抜枠を設けることによりまして,この法科大学院進学時の学生の流動性が妨げられることにはならない。自大学の法曹コースからの学生を囲い込むという状況にはならないと考えているところでございます。
 私からは以上でございます。よろしくお願いいたします。
【永田分科会長・部会長】  ただいまの御説明に対しまして,御意見,御質問等ございましたら,委員の方からお願いいたします。
 吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  法学部の人間として,少し発言させていただきます。
 今回の改革というのは,やはりかなり限られた,しかし現段階でできる限りの改革だというふうに思いますし,是非これがうまくいってほしいと思っているのですが,そもそも法曹改革が課題になったときの法曹人材の養成のときの非常に大きな方向性というのは,開かれた法曹界を作るということと,それから同じことではありますが法曹人材の多様化ということだったと思うのですね。
 法学部の限られた人間だけが,そういう意味では受験が得意な子たちがなっていくというようなシステムを変えようということがあった。これは理念として今後もやはり考えていくべきことだろうと。特に世の中が変動していけば,その必要性というのは明らかだろうと思います。そういう意味では,今度の改革がその理念から,ちょっと見ると何か元に戻ってしまっている,囲い込みになっているのではないかというふうに見えないこともないのです。是非当初の理念というものを生かしていくという方向を進めていただきたいと思います。
 それから,法曹コースを作るということが,ある種の囲い込みといいますか,やっぱり非常に限られた学生たちを育てるということにならないでほしいのです。例えば法科大学院の教育の経験というのは,やはり新しいメソッドも随分作ってきたし,FDとしては非常に効果的なFDを進めてきたと思います。そういう意味では,こういう形で,学部の教育というのが活性化するという可能性というのはやはりあると思うので,是非その辺が生きるような形に進めていただければと思います。
 あとは他省庁との調整も是非お願いしたいと思います。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  これは,むしろ吉岡委員にお伺いしたいのですが,こうしたコースができた場合に,現在の法学部の教育はどのように変わっていくとお考えになるのか。法曹の専門職に行きたい人について一定のコースができるということで,それはそれでいいことではないかと思うのですが,ただ法学部の収容人員は多分このコースよりもかなり多いのではないかと思うのですけれども,その人たちに対して,法学部の教育というのはどのように開かれたものになるのか。活性化というふうにおっしゃいましたが,どのように変化していくとお考えでしょうか。
【吉岡委員】  私が答えるものかどうか,よく分からないですけれども。
 日本の法学部の教育というのは,ロースクール型の例えばアメリカなんかの教育と多分発想がそもそも大分違っていて,1つは,もともと国立大学なんかは国を支える人間というのを作るという,官僚を作るのと並行して行ってきたということもある。そういう意味では,法曹界の人を作っていくというだけではなかった。それから私立の法学部まで含めていきますと,現在でも例えばいわゆる法曹界に入っていく人間は,ある意味で非常に少ないのです。
 ただ,そこで法学部の学部教育というのは,ある意味ではある種のリベラルアーツと結び付いているところがあります。法学部の人間はリーガルマインドを育てるという言い方をしますけれども,ある種の秩序というのがどういうふうに構成されていくのか。それをどうやって作っていくのかみたいな訓練。あるいは,もっと狭い意味で言えば,例えば法体系というものを理解するとか,規範のシステムというのを理解するということが,やはり戦前からだと思いますけれども非常に大きな役割,特に戦後の法学部で大きな役割を果たしてきたと思います。
 その部分というのは多分生きているので,ここのところで法科大学院ができたときに,どの法学部も法学教育をどうしていこうか。つまり法科大学院ができた後の法学部教育というのは,やはりそれなりにみんな考えてきたと思うのですけれども,結果的にも法学部のそういう体系自体が本当の意味では壊れはしなかったですね。法学部の卒業生たちというのは,一般企業に入っていく部分というのは非常に多いですが,そういうリーガルマインド育成の部分というのは生きていくだろうと思います。
 一方で法学教育というのはやはり実践の部分と結び付いている。つまり法曹人材を育てる。その人数が多いか少ないかは別にしても,法曹人材を育てるという部分はやっぱり法学教育の非常に重要な核の部分だろうと思います。それがこういう形で学部の中に明確に法曹コースという形でできることは,悪いことではない。つまり法曹コースがほかのところと切れてしまって,非常に狭い限られた部分で,その部分を早く選抜してしまって,そこで囲い込みをするということが起こらなければ,むしろそういうコースがあるということが他の学生にも,あるいは教員にとっても教員同士の交流といいますか,刺激にもなる。法曹コースでの教育のシステムというのが,他の法学教育と結び付くというふうになっていけば,いい方向かなと思います。
【永田分科会長・部会長】  松尾委員,どうぞ。
【松尾委員】  名古屋大学の状況を若干当事者の法学研究科並びに法科大学院の人たちに聞いてきたのですけれども,名古屋大学では2016年から,2年次の秋学期と3年次の春学期に民法,刑法,それから憲法などの法科大学院担当教員が,法曹養成演習,これ,各2単位ずつなのですが,これで開講しているということで,このコースをまず選択した学生のGPAは総体的に高いということと,このコースを修了した者の中から,法科大学院既修者コースへの進学者も出てきているということで,まだこれ結論を出すのは早いのですけれども,そういう動きがあるということで,私はその話を聞いて,こういった自主的な取組が多様性を生んで,増えていくというようなことがこの制度改正によってなされるということは,いい方向ではないのかなと感じました。
 ただし,私は,ちょっと法学の専門ではないので,医学ではもうかなりカリキュラムの改革は進んでいるのですけれど,そういうのからすると,ちょっとまだもっともっと改善する必要があるのかなという感じはいたしました。
【永田分科会長・部会長】  五神委員,どうぞ。
【五神委員】  知識集約型社会に向けて,サイエンス・アンド・テクノロジーががらっと変わる中で,社会システムをそれに整合するように変え,さらには経済メカニズムも同時に変えるということを全部リンクさせないと社会変革は起こりません。その中で,例えば自動運転とか,知財の問題とか,プライバシー保護の問題とか,法学に関係するところをいかに社会変革のスピードに合わせて変えていくかというのは極めて重要だと思うので,例えば未履修者として,どういう分野の人たちを意識的に呼び込むかとか,そういう設計をしておくことがスピードアップには絶対必要だと思います。
 ですから,そこをうまく法学の教育分野に閉じた形での議論ではない形で設計をしていくことが必要です。その上で,1つ私が重要だなと思うことは,正に吉岡先生がおっしゃったリーガルマインドの部分は,全員が法学の専門家だけではなくて,社会人がみんな,たとえば高校まででも,構成要件該当性とか有責性とかいうようなことをきちんと知っておくことは,議論を効率化する上でも極めて重要です。そのように,法学教育を現代的にアップデートしながら広めていくと,専門家としての法曹がなぜ必要かというニーズも喚起されるので,全体的によい方向に進むと思います。
 つまり,法科大学院の問題は,法学部の人たちだけ,法曹の人だけに閉じた形ではない発想で考えていくことが極めて重要であるということを,いろいろな御苦労の様子を窺って,実感しました。
【永田分科会長・部会長】  千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。全くの専門外なので質問という形になりますけれども。
 これからの新しい時代の中で,弁護士も要らなくなる仕事の一つということもよく聞くわけですが,この分野こそやはりダブルメジャーみたいなことも必要になってくるのではないのかなというのが素人の考えです。
 それからもう一つは,推薦枠が5割程度というのはちょっと多過ぎるのではないのかということと,「程度」ということは,6割でもいいのかというようなことになってくるので,このあたり,質の確保という面でどうなのかなということもお聞きしたいと思います。定員未充足の場合には,実入学者の5割程度がいいというような状況が,きちんといいラーニング・アウトカムにつながるのかどうかというのがちょっと分かりませんので,質問させていただきます。
【永田分科会長・部会長】  この御質問には事務局から御回答をお願いします。
【大月専門職大学院室長】  ダブルメジャーについては,法科大学院は非常にカリキュラムが密でありますので,ちょっと想定はしておりません。ただ,委員からも御指摘がございましたように,多様な方に法科大学院に入っていただく。多様な専門分野を持ってらっしゃる方に入ってもらうことが大事で,そういう方が法曹になっていけるようにやっていきたいと。各法科大学院も,そういうような取組はこれまでもやってきているところでございます。
 もう一つ推薦枠の関係でございますが,先ほど御説明させていただきましたが,少し細かい話なのですが,特別選抜枠自体が2分の1でございますが,推薦については更にその2分の1,全体の4分の1を考えております。将来的には,全体の2分の1が推薦で来てもらえるような,推薦で取っても大丈夫なような方に来てもらいたいなとは思っておりますけれども,現時点では,法科大学院については厳密に論文試験で選抜しなければいけないとなっておりますが,このような形で優秀な学生については推薦を認めることとしたい。ただ,すぐには2分の1も確保できないので4分の1とすることを考えているということでございます。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。
 河田委員,どうぞ。
【河田委員】  私は十五,六年前,関西の法律学校から創立された大学の学長をしていたので,今回の「改善・充実について」の方向性②の法学部未修者教育は,法科大学院創設時の理想に戻っていて,素晴らしいなと思います。けれど,ありていに言ってしまえば,やはり法科大学院が淘汰されて少なくなってきた,その最大の原因は司法試験の「予備試験」の存在であります。司法希望者はみんなその「予備試験」を利用して法科大学院には入学して来ないわけです。本来は,「予備試験」は法科大学院の学費が払えないような方が「予備試験」を受験するということで設けられた筈です。が,その「予備試験」が主流になってしまって,司法希望者が法科大学院には入学してこない。合格者数も予備試験が多数を占めて,おそらく2012,2013年頃からその数は逆転してしまっている。
 ですから,こんなことを言ってしまっては申し訳ないのですが,いい案をお作りになって,私は創設時の理想に戻って良かったと思います。けれど,「予備試験」をなくさない限り,もう法科大学院は救いようがない。というのが,法科大学院創設時から十数年間ずっとその推移を見てきた,私の考えです。いい案をお作りになって,本当に御苦労がにじみ出ていると思うのですが,やっぱり制度の問題として,根本的問題があるから大変だと思います。
 というのが,この案を見たときの私の感想です。
【永田分科会長・部会長】  大変本質的な点に対する御感想でした。
 村田委員,どうぞ。
【村田副分科会長】  ありがとうございます。基本的に今の河田先生の御意見に私も同感でございます。
 その上で,先ほど金子委員の御質問。実は私どもの大学では,この法曹コースを既に持っておりまして,3年生で早期卒業させて,大学院,ロースクールというふうになっております。法曹コースに入れるときに, GPAの基準を設けておりまして,それ以上でないと入れないというふうになっておりまして,少しエリート意識を持たせる。あるいは学習に対する意欲がある学生を絞っています。
 先ほど吉岡委員おっしゃいましたけれども,全員が全員ロースクールに行くわけではないのですね。ここでいろいろな他の学生ともまれて,もちろん法学部の中なのですけれども,優秀な学生が集まっていますから,中には国家公務員の試験だとか,あるいは企業に行くとか,いろいろなところで芽生えてといいましょうか,行きます。
 一時期この法曹コースの学生が本当にロースクールに行かない比率が増えてきて,どうしようかなと思ったこともありますが,今は何とかロースクールには行っておりますので,そういう意味では,非常に制度としてはある意味本学ではうまくいっていますし,いい形になるのではないか。特に先ほど河田委員の一番根本的な御指摘を除けば,苦肉の策なのかなという気はいたします。
 以上です。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。実例を御紹介いただきました。
 それでは,日比谷委員,お願いいたします。
【日比谷副部会長】  ありがとうございました。
 先ほどから何人かの先生方から御意見がありますように,本来の趣旨はこの方向性②のようなものであったと,私も理解しています。特にこの方向性②の方向で,法科大学院に多くの卒業生を送り込んできた大学としましては,やはりこれを是非しっかりとしてほしいと。ここに未修者の教育実績に応じて重点的に支援するというようなことが書かれていますけれども,本日の最大のテーマはグランドデザインの答申案だと思いますけれど,答申案の5ページ,「21世紀型市民」とあります。
 これからの法曹に進む人は,要するに21世紀型市民としての基礎的な素養を身に付けた人が更にこの法科大学院に行って,しっかり勉強して,そしてこれは弁護士とか裁判官になるというだけでなくて,様々なセクターで活躍するということを目指していくべきだと思いますので,それが全体的にできるような是非改革を進めていただきたいと思います。
【永田分科会長・部会長】  ありがとうございます。日比谷委員の御意見は,今回,法学系に関することなので自然に受け止められましたが,他にも同じことが言える分野もあると思います。
 いずれにしても,ネガティブな御意見はなかったと思います。基本的には前に進めて頂き,村田委員から御紹介のありました実例も踏まえ,この改革を実現するために,少し具体的な方策としてもう一度御議論いただいて,再度お諮りいただければと思います。本日のところは,この改革案の基本的な方向性はお認めいただいたということで,先に進ませていただこうと思います。御意見等,ありがとうございました。
 本日の議題は以上でございまして,先ほども申し上げましたが,次回も引き続き関係団体のヒアリングを行う予定でございます。それらについて,事務局から御説明を頂きます。
【石橋高等教育政策室長】  ありがとうございました。
 次回でございますけれども,将来構想部会に関しましては10月17日,10時から12時30分までを予定しておりますので,よろしくお願いいたします。
 大学分科会の委員の先生方におかれましては,将来構想部会との合同会議を11月6日,16時から18時までを予定しております。ここでパブリックコメント後の答申案の最終審議となりまして,11月26日の中央教育審議会総会にて答申を大臣に手交となりますので,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【永田分科会長・部会長】  以上で本日の議題は全て終了です。御協力ありがとうございました。

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