大学分科会(第136回) 議事録

1.日時

平成29年7月3日(月曜日)15時~16時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 地方創生に資する大学改革について
  2. 専門職大学・専門職短期大学の制度設計について
  3. 高等教育の将来構想について
  4. その他

4.出席者

委員

(分科会長)永田恭介分科会長
(副分科会長)北山禎介副分科会長,村田治副分科会長
(委員)有信睦弘,室伏きみ子,山田啓二の各委員
(臨時委員)相原康伸,麻生隆史,安部恵美子,伊東香織,金子元久,河田悌一,黒田壽二,小林雅之,佐藤東洋士,佐野慶子,鈴木典比古,鈴木雅子,千葉茂,前野一夫,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)常盤高等教育局長,小松文部科学審議官,義本総括審議官,中川サイバーセキュリティ・政策評価審議官,村田私学部長,浅田大臣官房審議官,塩見高等教育企画課長,角田大学振興課長,浅野専門教育課長,濱口主任大学改革官,牛尾文部科学戦略官,塩原主任大学改革官,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)坂根地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議座長,山下地方創生推進室参事官事務代理

5.議事録

(1)坂根有識者会議座長から,地方創生に資する大学改革について,資料1-1に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【永田分科会長】  それでは,所定の時間になりましたので,第136回の中央教育審議会大学分科会を始めさせていただきます。御多忙の中御出席いただきまして,皆様,誠にありがとうございます。
 本日の議題ですが,議事次第にございますように,大きく3つとその他です。
 一つ目は,地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議が,中間報告をまとめていただいたところですので,そのことに関してです。本日御多忙の中,その会議の座長であるコマツの坂根相談役においでいただいておりますので,後で御報告していただきます。
 二つ目の議題は,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関である専門職大学・専門職短期大学に関してです。こちらは,昨年度中央教育審議会で答申し,5月の国会で新しく法律が成立し,現在,大学分科会の下に置かれた作業チームで詳細設計を進めようとしている最中でして,その作業チームからの御報告です。
 三つ目は,高等教育の将来構想ということで,これは2040年頃を見据えて,我が国全体の高等教育の将来構想を議論しようということで,特別に部会が設けられて議論が行われています。今回,その御報告と,特に大学分科会の中からそこに分属されていない先生方からの御意見を中心に賜りたいと考えております。
 それでは,配布資料について,事務局から説明をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第のとおりでございます。一番下,参考資料4として,高大接続改革の進捗状況についての報告資料を添付しておりますので,後ほど御覧ください。
 資料の不足等ございましたら,事務局までお知らせください。
【永田分科会長】  ありがとうございます。御確認ください。
 それでは,早速ですが,議事に入りたいと思います。先ほど申し上げたとおり,最初に,地方創生に資する大学改革に向けた中間報告の取りまとめを有識者会議が行いました。その座長を務められていますコマツの坂根相談役に,この中間報告について御説明いただいた後,意見交換等を行いたいと思います。
 それでは,坂根相談役,大変お忙しいところありがとうございます。早速ですが,御説明をお願いいたします。
【坂根有識者会議座長】  皆さん,こんにちは。ただいま紹介いただきました坂根でございます。本年2月に地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議がスタートしまして,5月22日に山本大臣に中間報告をいたしました。今日はその概要について御説明いたします。1ページ目に全体の概要をまとめまして,2ページ目から4ページ目でもう少し詳しい中間報告の概要をまとめております。その後,幾つかデータを付けております。まず1ページ目に基づき概要を御説明したいと思います。
 私どもの基本スタンス,大学改革というのは,大学だけに焦点を当てて議論すべきではないとずっと私個人は思っていました。やはり大学と雇用という問題,社会の中のどの部分に対して学生を教育して出そうとしているのか,例えは,我々メーカーでいいますと,どの市場をターゲットにして,よりすぐれた商品を出そうとするかというのが基本中の基本なんですが,私から見ますと,大学が極めて総花主義,平均点主義になっているのではないかと感じられます。そこの問題意識と,何といっても地方で雇用が生み出されるような,雇用との関係が大学にないと,なかなか地方定着というのは現実問題として無理だと思っておりました。
 大学の学長だけではなく,その自治体の首長のリーダーシップによって,産官学連携を強力に推進すること,地方版総合戦略の中心テーマに位置付けられていること,それから地方大学は,先ほど言いましたように,総花主義,平均点主義から脱却して,それぞれの特色をできる限り出すという視点,これを求めていこうというのが基本スタンスであります。
 取組の方向性としましては,私流の言い方をしますと,これだけ東京に集中するのは,はっきり言って東京にいた方が全てにおいて有利な社会になってしまったということだと思います。ですから,これを変えるというのは,役所は役所,民間企業は民間企業で本当にちょっとしたことでも変えていくということがものすごく大事なことです。その中で,大学をどう位置付けて見てみるかということで,地方大学の振興については,今申し上げましたように,産官学連携の下で,地域の中核的な産業の振興とその専門人材の育成,それから,地方創生の視点に立った振興計画を策定して,国と地方が新たな財政支援制度の創設の検討を全面的に支援をする。首長のリーダーシップ,プロジェクト内容をよく見て,地域が一丸となって本気で改革に取り組む優れたプロジェクトにまず限定して,早く成功例を作るということです。
 2つ目が,東京の大学の新増設の抑制と地方移転,後ほど詳細について少し触れますけれども,18歳人口がますます減少する中で,学生の集中が進み続ける東京23区において,大学の定員増を認めないこととする。ただ,これは我々がこれを実際に実行に移すまでの間,申請ベースでもう進んでいるところもあり,新聞情報では,もう定員増を認めたという書き方も出ておりますが,私は日本の大学で定員充足率が100%以上の学校が55%あって,一方で,定員充足率が80%以下,要するに,2割足らないという学校が20%あるという現実を考えますと,定員だけを議論しても余り現実論にならないという気もしております。
 また,地方といえども少子化の中で,大学進学率が57%まで来ている現状の中で,大学への進学者はこれ以上はなかなか増えませんから,日本全体として定員増に向かうことはあり得ないと思っております。
 ただ,その定員の中で,既存の学部・学科のスクラップ・アンド・ビルドであったり,それから,留学生や社会人教育といったような社会の変化に応じた新しい学科というのは当然あり得ると思います。
 それから,地方のサテライトキャンパス,これは今までも幾つもあるんですけれども,大学単独の企画ではなくて,地方側の行政の要請と合致してないとなかなか成功しないのではないかと思います。
 また,地方における雇用創出及び若者の就職の促進ですけれども,まず,国,地方は,奨学金返還支援制度の全国展開,インターンシップの推進,企業の地方移転等を促進する。また,経済界は,企業の本社の一部機能でもいいから大きな事業所がある地方に移転をする。それから,東京一極採用だけでなく事業所別の採用枠も作って,地域限定社員制度などを導入してはどうかということを提案しております。
 今後の取組ですけれども,資源が有限の中で早く成功モデルを作るためには,冒頭にお話ししましたように,現状,様々な取組が行われておりますので,行政と大学のリーダーを選んで支援することが大事ではないかと思っています。それから,資金面でも,当初は国が中心になるとしても,必ず自治体と民間の資金を集める努力を条件とするということにしたいと思います。既存の地元企業の成長シナリオも大事なんですけれども,一方で,大学発のベンチャー,新しい産業を各地方で少しずつでも起こしていくという努力が大事ではないかと思います。
 最後になりますが,今回,ここで添付しましたデータ以外にも相当全国レベルの見える化を行ったつもりです。ただ,これは全国レベルの見える化でありまして,この後,都道府県ごとにそれぞれの見える化をして,本当の実態がどこにあるのか,そこをスタートにしないと,また何かやったけどうまくいかなかったということになりかねないと思っております。
 以上が概要でして,2枚目,3枚目,4枚目,もう少し詳しい概要は後ほど御覧ください。
 参考資料を添付しました。まず,5ページですが,18歳人口の将来推計,90年のバブルの頃200万人いた18歳人口が今120万人,2030年で103万人,2040年で88万人と言われておりまして,これは現状から推計できるデータですから,ほぼこのとおりに行くんだろうと思います。
 その次のページが東京圏への転入超過数,この推移を書いておりまして,緑色が20歳から24歳でして,大半が20歳~24歳,あるいは15歳~19歳になります。調べてみると,大学進学時,大卒後の就職時の転入が主な理由だと考えられます。
 その次のページは,大学数と学生数の現状ですが,学校数及び学生数に関して,私立大学の占める割合が7割を超えております。また,東京圏の学生数は全国の4割を占めます。また,東京都は26%,23区で18%になります。
 その次のページが東京圏の学部学生数の推移でありますが,一番上が23区,その下から23区以外の東京都とおりてきます。御覧のとおり23区だけが突出して定員数が増えている,学生数が増えているということであります。
 その次のページが近年の東京23区へのキャンパス移転の例,広い意味の東京圏からどのぐらいの学校が移転しているかという状況を示しております。
 その次のページ,都道府県別の大学進学者の収容力の変化でありますが,その都道府県にある高校生の大学進学希望者総数に対して,定員数がどれだけあるか,東京と京都が突出しておりまして,200%です。それ以外の大阪や名古屋などの大都市が大体100%,特に長野県,三重県,和歌山県というのは,長野県も東京に出るのに便利ですし,三重県は名古屋,和歌山県は大阪が近くにありますので,40%を切っております。
 それから,その次のページ,これは興味深いグラフですが,各都道府県の高校卒の大学進学希望者の進学先区分です。下の薄い青色が自分の県内に進学した比率,ざっと御覧いただきますとおり,東京圏への進学というのは,グレーの部分ですが,圧倒的に東日本ですね。西日本は結構様々な地域に分散をしております。御覧いただきますとおり,自分の県の中に進学した進学率が20%以下の都道府県が10県あります。あとは各地域ブロックの中核都市を持つ県,例えば福岡,広島,そういったところは50%以上が自分の県内に進学しているということです。
 その次の12ページから,我々が有識者会議の場で具体的に取り組んでおられる自治体の事例を幾つか聞きました。富山,北九州,それから最後は三重であります。
 私からの説明は以上ですが,もう一度強調したいのは,できる限りこのデータ以外にも数多くの全国レベルの見える化をしたつもりです。したがって,各都道府県の細部の見える化を自治体がリードする,あるいはメディアの力を借りて見える化をしてみると,各地方ごとにそれぞれ取り組むべき課題が違うと申し上げたいと思います。
 私からの説明は以上になります。
【永田分科会長】  御説明ありがとうございました。それでは,委員の方々,御意見,あるいはお尋ねしたい件があれば,是非ともお申し出ください。いかがでしょうか。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  今日は坂根座長,ありがとうございました。議論の中でもちろん地方創生に資する大学改革というのは良いのですが,多分,努力をしても,なかなか様々な力学から言って無理だということはあると思います。計画されている中では,文化庁が京都に移転をするとか,それから,消費者庁の一部分が徳島にということを聞いたことがあります。究極に地方に人を集めようと思った場合に首都機能移転というのは昔からある議論だと思いますが,こういうことは,会議の中で議論されることはあるのでしょうか。
【坂根有識者会議座長】  私は議論だけに終わるのが,会社でもそうですけど,最も嫌いでして,何かが具体的に行動に移されない限り余り議論したくありません。私がこれをお受けしたのも,私どもの会社のコマツが石川県の小松市出身で,私は島根県の出身なんですけど,そういう地方出身の立場で見てみて,会社の名前が出身地を表している数少ない会社ですが,コマツは石川県からどんどん逃げ出して来たんですね。今は大阪の工場が一番大きいんですけど,どうやったらまた石川に戻れるのか議論し,金沢の港に工場を作ってみたり,それから,本社の機能を一部を小松市に移してみたり,いろいろ実行してきました。実際にやってみたときに,会社の中のことばかりやっていても駄目だと気づきました。石川県の農業や林業も手伝わないと若者が地元に残らない。弊社の社員は兼業農家が多いですから。そこで今,農業,林業をお手伝いしている。そういう一つ一つ細かいことをみんなが始めない限り,この国は変わらないというのが私の基本スタンスです。
 したがって,駄目な理由を考えると幾らでもあって,特に私の出身の島根県は,今,島根県の活性化に知恵をかしてくれと言われて,島根大学に出掛けていったりしますけど,本当に難しいです。石川だからまだ我々は直接できますが,そこで難しいんだと諦めてしまったら,多分,この課題は終わりだと思っています。
【永田分科会長】  ありがとうございます。

(2)事務局から,まち・ひと・しごと創生基本方針2017について,資料1-3に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【永田分科会長】  順番が前後しましたが,坂根相談役から御報告いただいた中間報告を受けて,閣議決定がなされています。閣議決定の内容を事務局から簡単に説明をしていただこうと思います。
 それでは,事務局から説明をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  資料1-3を御覧ください。先ほど御報告のあった有識者会議の中間報告を受けて,政府としての閣議決定が6月9日になされております。
 1ページ目の下に具体的取組とありますけれども,二重丸の一つ目が地方大学の振興,その中で,先ほど坂根座長からありましたような地方大学が産官学連携の下で計画を作って,モデルとなるような取組については重点支援をするといったことが書いてございます。
 その下の二重丸,大学の新増設の抑制等でございますけれども,次のページを御覧いただきますと,東京23区の大学学部・学科の新増設を抑制することとして,具体的には,東京23区においては定員増は認めないことを原則とすること,その際,総定員の範囲内で対応するのであれば,既存の学部等の改廃等により,社会のニーズに応じて新たな学部・学科を新設することを認めるものとするなど,スクラップ・アンド・ビルドを徹底するということ,これらについては,具体的な制度や仕組みについて検討し,年内に成案を得る。そしてまた,本年度から直ちにこうした趣旨を踏まえた対応を行うということでございます。3月末に申請されてきた定員増などにつきまして,この趣旨を踏まえた再検討を文部科学省からもお願いをしたところでございまして,対象となる23区の14校のうち,1校については少し考えるという意思表示を頂いているという状況でございます。
 そして,その後に地方へのサテライトキャンパスの設置,それから,学生が地方圏と東京圏を相互に対流・環流する仕組みの構築などについて,閣議決定がなされております。
 以上でございます。
【永田分科会長】  最初に坂根座長から御説明のあった3つのスタンスがほぼ閣議決定の中に表れているという形かと思います。
 それでは,続けて御意見,あるいは御質問等お受けしたいと思いますが,いかがでしょうか。千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。私,日本工学院という専門学校の校長でございまして,今回の高等教育全体を考えるときに,地方創生のことも踏まえて,専門学校もその議論の中に入れていただくとよろしいのではないかと思っております。全国で約60万人が専門学校で学んでおりますけれども,概ね2年で卒業すると就職します。この人達に大学への門戸をもう少し開いていただくと,更に高度な勉強をしようという学生が地元に残って大学で,あるいは一旦東京で学んだ後に地方に,そういった流れができるのではないかと思っております。
 本校の卒業生,毎年4,000人ぐらいおるんですけれども,そのうちの100人ぐらいは大学への編入をいたします。地方では信州大学などに割とよく入るんですけど,学生にとって魅力ある制度を作っていただくと,そういったところに編入するという学生がおりますので,資料に基づいた話ということではないんですけれども,感覚的に専門学校も考慮に入れていただけると,地方の大学の少しは助けになるという,あるいは地元の活性化にもつながるのではないかということで申し上げさせていただきました。
 以上です。
【永田分科会長】  坂根座長,いかがでしょう。専門学校についての議論もあったのでしょうか。
【坂根有識者会議座長】  専門職大学とかいう話は議論の中に出ておりますが,私自身の考えを申し上げましたように,できる限り大学は社会の中のどの分野に焦点を当てて学生を教育しようとしているのか,医学部なんかはそれが最たるものなんですけど,それが少しでもはっきりした方が特色が出ていいというのが私の基本的な考えですから,恐らく地方の見える化をしていきますと,専門職の大学,あるいは短期大学,そういったものが欲しいという声は当然出てくると思います。
 ですから,私ども会社の中で地元採用したときに,そういう学校の出身者というのはかなり有効に働いてくれていますが,一方で,海外に駐在に出すときに相手国のVISAの要件などから学士の資格がないと駄目だとか,ハンディキャップを背負うのは非常に惜しいことで,そういう高校を出て入る,あるいは2年ぐらいで会社に入った社員に社会人教育をまたしてあげて,その人たちが海外駐在するときにもハンディキャップがないような仕組みが欲しいということを私は申し上げております。
【永田分科会長】  小林委員,どうぞ。
【小林委員】  40年前に同じような抑制政策がありまして,それについては,この会議の資料を拝見しますと,いろいろ検討されているということもよく分かりますけれども,当時といろいろ状況が違うところがあります。その点について,一つだけ御指摘したいんですけれども,それはサテライトキャンパスについて,東京の大学が地方にサテライトキャンパスを作るという構想は示されておるんですけれども,現在問題になっているのが,逆に東京,特に23区を抑制するというお話です。その中に大学のサテライトキャンパスというのがかなりあります。これについては,今,十分な設置基準がないために問題になっているのではないかと思いますが,その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
【坂根有識者会議座長】  これは私より黒田委員が会議のメンバーですから,何か一言ありますか。
【黒田委員】  サテライトキャンパスについては,今の地方創生の方で話がありましたのは,地方でどうしてもこういう分野をやりたいという地方からの要望に応じて,それにふさわしい大学のサテライトを作るということが議論になっております。ただ学部を作るということではなく,地方の活性化に役立つサテライト,したがって,もう既に地方に大学がたくさんあるところで同じようなことをやることは避けたらどうかということです。
 それから,東京でのサテライトキャンパスの問題ですけれども,これは第一には,前の改革のときに設置基準の役割が低下してしまっているんです。ほとんど設置審査にかけなくても大学ができてしまうという状態に今,あるわけですけれども,設置審の方は大変それは苦労して,先生方の資格などのみ審査しているわけです。
 そういう中で,今後,どういう体制を取ったらいいかということです。大学の基準というのは,社会的に子供を育てるための基準ですから,これがいいかげんでは立派な社会人が養成されないわけです。そういう意味で,中央教育審議会の中で今後議論をして,どういう体制を取るべきかということを考えていかなければならない。ですから,規制を掛けることと設置基準を緩めてしまうということとは違うと思います。その辺のことをきちんと区別して,今後やっていくべきだと思っています。
【坂根有識者会議座長】  私から一言付け加えますと,私は物すごく現実論者ですから,現実に私が高校生だったとして,学生時代に1回は大都会で生活してみたいと思うでしょうし,さっき言いましたように,東京の大学を出た方が入社試験も東京で圧倒的にたくさん行われるし,トビタテ!留学JAPANみたいな留学制度がスタートすると,すぐ東京で試験をやってくれるし,東京に出た方が有利だと思い込んでいますから,その気持ちというのは簡単に変えられないです。
 だとすると,もう少し現実論として東京の大学が,1年から3年まで又は2年から4年までといった,地方大学とのサテライトキャンパスのような機能を持ち,お互いの学生が地方も経験し,東京も経験するという仕組みを考えてみてはどうかと,とにかくいろいろなアイデアを出してみる必要がありますが,私は地元の自治体のトップに本当の熱意がないと駄目だと思います。大学間同士だけで話をしても,せっかく来てくれた人に何としても地元で働き場所を与えるということも考えていかないといけませんし,学生のコストも掛かりますので,地元で働くことに何らかのインセンティブがないと無理でしょうから,私は今現在,東京の学校に行った方がいろいろ有利だと思う親御さんと,それから本人の気持ちという部分は無視できないと思っています。ですから,できる限り本当に有効性のあるアイデアを本報告までにもう少し詰めていきたいと思っております。
【永田分科会長】  ありがとうございます。
 それでは,伊東委員,どうぞ。
【伊東委員】  失礼いたします。岡山県倉敷市長でございます。地方の立場から申し上げたいと思います。
 これは坂根座長への質問ということではなく,中間報告を見た意見ですけれども,まず,2月からという大変短期間の中で,地方創生に資する大学改革に向けた中間報告をまとめられました有識者会議の皆様に,心より敬意を表する次第でございます。
 そして,地方の立場から申し上げますと,中間報告がなされ,6月9日に,まち・ひと・しごと創生基本方針2017で,23区の定員増を基本的に認めないことを原則とするという閣議決定がなされました後,つい先日,ニュースでも報道されておりましたけれども,平成30年度に2,183名の東京23区の定員増加が認可をされる予定になっているという発表がございました。また昨年,平成29年4月の入学に対することについては約3,000名の増員だったと伺っております。例年1,000名程度の23区内での増員のところが,ここ2年ほど非常に増員の数が多くなっているという状況を見まして,また,閣議決定されたすぐ後に定員増が認可される予定となっていることに,もちろん,閣議決定前に申請をされているという事情については一定の理解はできるわけでございますけれども,地方からどんどん東京に学生が行ってしまっているという状況の中では,大変残念な思いを持っているところでございます。
 是非,今年末までに一定の整備を行うと,成案を得るということだと思いますけれども,坂根座長が御指摘をされました1990年の200万人から,今や18歳人口は119万人に減っている,ますます減るという中で,もちろん地方の大きな努力が必要だと思います。東京ばかりをやり玉に挙げるのは何かとは思っておりますし,地方も頑張りますけれども,やはり全体の人数が減る中での国策としての取組に,是非御尽力賜りたいと,このように思っております。
 以上でございます。
【坂根有識者会議座長】  23区内での定員増に関するニュースが出て,3月までに申請済みとのことですけれども,私は,こういった問題は,どこかで一線を引いて,駄目なものは駄目だと言わない限りなかなか徹底しないと思います。政治と行政の世界は多分,非常に難しい判断があって,3月までに申請しているものまで遡って駄目なのかと言われると,非常に厳しい判断だったんだろうと思います。
 現在,定員充足率が100%以上の大学数が55%ありますが,100%を超えているような学校でない限り,定員増を考えるはずがないと個人的には思っています。ですから私はこの後,既に定員オーバーしている内数なのかどうなのか,個別にチェックをしていきたいと思っております。
 ただ,基本的な考え方として,今おっしゃったように,これから人口が減り,進学率も57%まで上がってきていると,なかなかこれをさらに上げるのは難しいと思うので,日本の大学全体の定員が増えるということはもうあり得なくて,どこかの学校を統廃合するなど,企業でいえばごく当たり前のようなことが行われない限り,成り立ちません。ですからこの後,本報告に向けて,今の話の具体的な中身をもう少し詰めたいと思います。
【永田分科会長】  山田委員,どうぞ。
【山田委員】  私も全国知事会の会長をやっておりますので,そうした面で決議をさせていただきましたが,その中で,私どもの視点から幾つかお話をさせていただきたいと思います。
この話は本当に地方創生の話なのかどうかという問題です。一番大切なのは,今,日本全体のバランスが崩れていて,地方はこれまで東京に人材を供給して,そして今の日本の繁栄を作り上げてきた。しかし,その人材供給機能が急速に薄れていって,このままでは地方はなくなってしまうところまで追い詰められてきている。これはすなわち,東京の死を意味することでもあるということです。ですから,そうした全体の姿をまず見ていただきたい。地方創生というと,何となく,地方がもっと努力するべきという話になってしまうんですけれども,基本的なインフラにこれだけの差がある中で,地方がどれだけ苦労して今頑張っているかという点を見ると,ちょっと私は違和感があるというのが一つです。
 それから,大学全体の話です。これから18歳人口が大幅に減っていくと,15年ぐらいで大学生が30万人ぐらい減っていくという話になってきます。これまでも大学全体はやはり抑制基調にあって,その中で教育の水準を守ってきたということが言えると思います。しかしながら,大学全体の抑制,設置審査の話もありますけれども,そうしたものを守ってきたときに,地域的なものを守っていくという意識が今まではなかった。これは非常に大きなこれからのテーマになってくるのではないかと思っております。そして,3番目としましては,そのときに地方がどれだけ自主性,自立性を持って将来のことを考えていくことができるのかという体制がやはり必要であると思います。
 私が少し気にしておりますのは,地方創生全体に言えることで,今回も地方が本気になって取り組んだプロジェクトについては,これを支援していくということは本当に有り難い話だと思いますが,一つ間違うと,これはまた東京目線でプロジェクトを選択して,そして地方を選別していくということになりかねない。我々からすると,中央が選別して地方がそれに従うというヒエラルキーをまた作るだけではないかという心配も一部にあるわけであります。ですから,見える化,客観化,そしてその中で地方の自主性,自立性をどれだけ担保できるのかということが,本当の意味で地方創生を成功できるかどうかということだと思います。
 そして最後に申し上げますと,今回,私ども全国知事会も,また有識者会議の中間報告も,ものすごくマイルドです。非常にマイルドな話でありまして,大学生が15年間で30万人減ることを踏まえると,本来は東京の大学をどれだけ減らすかという議論になるはずですが,そうではなく,大学の定員抑制という形でやっております。実は全国知事会の中でも,工場等立地制限法の復活を声高に叫ぶ知事もたくさんおります。それによって,かつて23区に3割ぐらいあった大学が今は十数%に減ったわけですから,そうでなければ駄目だという方もいらっしゃいます。しかし,私は今の東京の大学を衰退させてしまって,それで全体の学問の流れがよくなるとは思いません。
 したがって,これから増えない程度に抑える。それでも,実は東京の5年間の定員を4年間に換算すれば,2万5,000人増えているわけです。この調子で増えていくと,15年間で7万5,000人ぐらい増えてしまうわけです。30万人減るときに東京の定員が7万5,000人増えてしまったら,地方にとっては本当に大変なことになる。そういう中で,どちらかというと非常に自主性を重んじた中でのマイルドな案を,今回,坂根座長に出していただいたと私は思っておりまして,そういった点については,是非ともこの分科会の皆様にも御理解いただきたいと思いますし,実際問題としては,更に内閣府の方は,地方の大学を振興するためのもっと思い切った手も打っていただきたいと思います。
 以上です。
【坂根有識者会議座長】  一言だけ言いますと,東京は,地方からヒト・モノ・カネを集めて今日に至っているわけですけど,どうして外国からヒト・モノ・カネを集める方向に発展できなかったのかと私は思います。少しは始まってはいますが,必ずしも海外からの留学生は東京に集まっているわけではなく,地方にも分散して,地方の学校も本当に大学の生き残りをかけてやっておられるところもあるし,だから東京は定員増をするなら,留学生向けや社会人教育,選抜教育向けなど,何か特色を出してほしいと思いますし,今,山田委員がおっしゃいましたように定員増の表現の仕方については,私自身はもっと,めり張りを付けて,最終的にはこの意思をはっきりすべきだと思っております。
【永田分科会長】   それでは,佐野委員,どうぞ。
【佐野委員】  ありがとうございます。公認会計士としての立場で地方の大学に伺うことがございますので,その観点から,ちょっとお伺いしたいと思います。
 地方の大学へ行きますと,地方大学へ行っている学生の声を聞くことがあります。いろいろな良い面ももちろんありますが,そうではない方の声としまして,2つぐらい上がります。1つは,先生方に関することです。学生が言う良い教授,良い研究者がなかなか来てくれない。看板には載っているけれども,年に何回かの特別講義で終わってしまう。質問も出せない。そういった状況と,それからもう1点は交通インフラに関することです。バス便がない,鉄道がない,結局は学校が通学バスを出すかというと,資金難ですから余り出せない。足がないから自分で軽自動車でも買わなきゃいけない,そうするとお金がかかる。地元に戻るといいますか,近いところにいてもなかなか寮がない。そういったことがあって2点,学生の不満があります。
 1点目の,教員,教授がなかなか集まらないこと。例えば,コーチにしても教員にしても,東京と掛け持ちになりますと,良い教員が果たして地方に根付いて地方のための研究,若しくは教員,教授を補ってくださるのかという,その辺はどんな議論があったのでしょうか。
 それと,やはり交通インフラにつきましては,今,民活や民営化などになって赤字路線がどんどん廃止されている中で,企業も,やはり物流の拠点としては立地の良いところに建てる傾向があります。そうすると,インターチェンジのそばに置いたり,港のそばに置いたりということで,なかなか地方創生に結びつかないというところもあると思います。その辺がどのような議論があったのか,教えていただければと思います。
【坂根有識者会議座長】  今の時点で結論的に言いますと,中間報告の段階でそこまで細部に突っ込んだ議論はまだしておりません。データの説明のときに触れましたように,2割の大学が定員充足率80%以下となっている現況下で,大学の生き残りというのは当然,現実問題です。ですから,そういった話も今後は具体的に出てくるでしょうし,それから,私が言いましたように,大学が特色を出そうと地域社会との関係や地元産業と関係した部分を出そうと思ったとしても,今の大学の先生にそれを教える力がないわけです。そういう先生が実際に来ないと教えることもできないし,技術というのは常に変化していますから,大学へ行って3年,5年経過すると,もう陳腐化してしまうので,大学の先生の在り方も,本当に根本から変わってきます。
 ですから,この後の半年間,かなり絞った形で議論に深く突っ込んでいかないと,現実にそぐわずに,本質の問題はもっと別のところにあるというようなことになるのではないかと思っています。それから,私自身はアメリカのようにいろいろな地方の大学が,大学発の知財権を使って大きく羽ばたくような企業がこの国に出ないのは,大学が知財権を全部握ってしまうためだと考えています。知財権はオープンに出して,成功したらロイヤリティーをもらう方がよほど良い結果が得られるにも関わらず,知財権をずっと握り締めるというところもありますし,だから,この話を具体的に,各地方ごとの産業に少しでも関係した教育の在り方を考える際には,先生の在り方,あるいは知財権の在り方も当然出てくると思います。
 最後ですが,山田知事がおっしゃったことで一つ引っ掛かるのは,こういう問題は全国一律では絶対にいかないと思います。企業経営も,本当に経営者次第で大きく変わる企業もあれば,そうでない会社もあります。ですから,全国一律でこれをやりなさいというやり方は恐らく現実的ではなくて,本当にトップ自らが具体的な構想を持ってやっているところを支援し,他がその成功モデルを見ながらついていく,これが現実的ではないかと思います。
【永田分科会長】  それでは,村田委員,どうぞ。
【村田副分科会長】  私から一つ,中間報告の後の本報告に向けてのお願いといいましょうか,この点の議論をお願いできればと思っております。
 先ほど坂根座長もおっしゃいましたように,基本的には地方の創生のときに,東京への人口の移動というのは,いわゆる大学に入るときではなくて,むしろ就職時です。そういうことがやはり一番重要で,更に先ほど富山の例も出されましたように,今回は総花主義,平均点主義ではなくて,特色を出すということであれば,あるいは首長がリーダーシップを持ってやるべきであるというお言葉も伺いました。そうであるとすれば,地方の大学をどうするかというときに,やはりその地方の産業をどうしていくのか,そして,その産業を中心に産学連携をとりながら大学を良くしていく。当然,そこには産業を誘致する,あるいは,コマツのトップとしてもいろいろやってこられたと先ほどお聞きしましたが,確かに産業に対してはいわゆる集積のメリットというものがあって,そのことで東京に一極集中している。恐らく大学教育というよりも教育サービスにも集積のメリットがあると思いますが,産業によっては集積のメリットが働かないものもあり,その地方の特色に合わせて,それぞれどういう産業をその地方の産業として生かしていくのかを考える必要があります。それがなければ,冒頭申し上げましたように学生の移動は結局,また地方へ行っても東京へ戻って来てしまいますので,やはり地方にしっかりと人口が残っていくためには,産業があり,その産業が中心となって大学との連携ができていく,そういうスキームを幾つかの地方でできていけば根本的な解決になるのではないかと思います。そのため,はじめに大学ありきではなくて,産業ありきの視点を,是非お願いしたいと思っています。
【坂根有識者会議座長】  資料1-1の最後に3つの例をお示ししましたが,富山県知事が有識者会議のメンバーでもあるので,お話を伺いました。富山は「くすりの富山」という特色がはっきりしていますから,多分,取組の発想がしやすかったのだと思いますが,私が期待しているのは,こういう話が各地域にあるのではないかということです。そのためには,我々のような大企業より,むしろ地元に根付いた中堅企業の特色を見つけて,大学もそういう人たちが成長するようなアイデアを提供していく。そういう具体策がそれぞれの県で違うのではないかと思い申し上げました。
【永田分科会長】  鈴木委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  この,まち・ひと・しごと創生基本方針2017という閣議決定を読ませていただいて,先ほど山田委員が,これはマイルドにできているのではないかという印象をおっしゃっていましたが,私も,これは良い意味でマイルド,悪い意味では,何か,余りめり張りがないという印象を受けました。
 例えば,私の大学は秋田県にありますけれども,秋田県といえば衰退していく地方・県の代表でありまして,ちょうど今年の1月に人口が100万人を切ったというニュースも流れております。そういう中で,本学の受験者の倍率は14,5倍を長く続けておりますし,また,海外からの視察などが非常に多く来て,それが賑(にぎ)わっているというぐらいの大学になっております。
 一つ,資料1-1の取組みの方向性に「若者の雇用機会の創出」とございまして,地元企業等に就職した者の奨学金返還支援制度の全国展開というあたりが非常に特色のあるものであると私は思いますが,更に踏み込んで,授業料の無償化という話題が今出ていると思います。とにかく,地方に進学する学生たちの4年間の授業料を無償化するということも含めた,学生側のコスト削減に取り組んでいく。そして,その一環として奨学金を返さなくてもよいという非常に強い財政的なインパクトのある施策をやっていく必要があるのではないかと思います。生活費も含めばいいですが,生活費はさすがに難しいので,授業料を無償化することで,都内あるいは首都圏に在る大学との経済的な優位性を保たせるということも,一つの手ではないかと思います。
【坂根有識者会議座長】  議論を重ねて中間報告書を1枚にまとめたので,かなりマイルドな表現の部分がありますが,恐らく定員のところはかなり,御指摘のとおり甘いと,マイルド過ぎるのではないかと言われても仕方がない表現になっています。しかし,それ以外は,中間報告ではかなり具体的にいろいろなことを詰めたつもりです。
 今おっしゃった大学の授業料の話は,この国全体で財政が厳しい中で,次世代のための子育てに使うお金と,大学に行くときのお金とどちらに使うかという議論になった場合,子育ての方に使いたいと私は個人的には思っています。一方で,都道府県別の県民所得と大学進学率は明らかに強い相関があります。ですから,所得の低い方で,意欲を持って大学へ行きたいと思っておられるのに行けなかったという方がおられるとしたら,そういう人を救うべきで,何とか良いアイデアが,全部で一律というよりも,所得との関係でインセンティブが出るようなアイデアを考えていきたいと思います。
【永田分科会長】  吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  はい。立教大学の吉岡です。
 23区に対する規制については言いたいことがいろいろありますが,具体的な提案のところで是非進めていただきたいと思うのは,地方創生インターンシップという考え方です。私は,就職問題懇談会の座長もしておりまして,今やはり非常に大きな問題は,インターンシップをきちんとした形で日本に根付かせることだと思っております。
 インターンシップは,短期のものが多く,短いものですと1日のものもインターンシップと称していますけれども,やはり1か月や2か月,きちんと企業が受け入れるというシステムを作っていくことが非常に大切だと思います。地方の,それこそ例えばコマツさんが,ある枠組みを作って東京の学生を1か月受け入れていくというのは,実際,学生の動きを促進することになるでしょうし,東京の学生は地方のことを単純に知らないところがありますので,働くことだけではなく,地方を知るという意味でも非常に重要だろうと思います。是非,この部分を拡充させるべく,具体的な形に進めていただければと思っております。
 一つだけ言いますと,東京の大学は非常にローカライズされていて,7割,8割が東京圏の学生です。資料1-1の6ページの表を拝見しても分かりますけれども,15歳から19歳の学生の流入というのは余り増えていません。実は東京に出てきている人の多くは20歳以上です。今は大体浪人しませんから,大学に入学する学生のかなりの部分はそれほど増えていないのではないか。
 もう一つ,学生数が増えている大きな要因は,東京の場合ですと女子学生の進学が非常に増えていることです。そういう部分をもう少し細かく見ていただくと,具体的な対策ができてくるのではないかと思います。やはり多様性と流動性を作っていくことが大事だということを前提に,インターンシップのモデル的なものを,地方が中心となって取り組んでいくことが重要ではないかと思っております。
 以上です。ありがとうございます。
【坂根有識者会議座長】  まずインターンシップですが,御指摘の点については,この後,頭に置いて進めていきたいと思います。
 島根県でインターンシップの話を聞きましたら,大企業ではインターンシップをやらなくても採用しやすいわけですけれども,地元の中堅企業でインターンシップをやっているのかと聞いたら,中堅企業でインターンシップをやったら,学生はそういう企業に行かなくなったといった例も聞きました。要するに,ますます大企業指向になってしまったということを聞いて,各地方でやるのは,現実論としてこれも簡単じゃないと思いました。多分,大学と地方企業との実質的な連携が高まる中でのインターンシップでないと成果がでないとも思います。
 少し申し上げましたが,コマツで,できることから自分たちでやろうという方針で,東京本社で一極採用していたものを各工場別採用枠で決めて,各工場別に採用試験をやると,当然,地元中心で応募が来ます。ですけど,どうしてもコマツに入りたいという人で,東京に住んでいるけれども石川まで面接に来るというような人もいて,こういう人こそ採用したいと思い,各工場別の地域採用で採用してみると,やはりその人には不満がある場合もあって,将来ハンディキャップになるんじゃないのかといった心配もあると思います。本人が,「どこでも私は転勤します」とか,「海外の駐在もします」ということであれば,いわゆるグローバル人材の方に変わってもらいます。待遇も地方採用だからといって変えないこととしております。事務局に確認したいと思っていますが,大企業の場合,東京で採用したとしても,実際に働いている場所は,各地方なんでしょうか。
【吉岡委員】  そうです。
【坂根有識者会議座長】  それなら,なぜ東京でまとめて採用試験をするのかと思います。そこを変えるだけでも相当違います。ですから,私はとにかくそういう具体的なところまで踏み込んでいって,本当に有効な手を皆さんで考えていきたいと思っております。
【永田分科会長】  坂根座長から御説明いただいた内容は,今,議論の中でもありましたが,要はニワトリと卵の問いと同じだと思います。つまり,大学と産業界あるいは地域社会,そのどちらが卵であるか,ということを考える必要があり,大学が変わることが卵になる場合もあるし,地域が変わることが卵になることもあります。坂根座長は,おそらくそうおっしゃっていると思います。それは,他の言い方をすれば「一様でない」ということであり,一様にやってしまってはうまくいかない可能性がある,ということです。というのは,それぞれに個別化された理由もやはりあるだろう,ということだからです。ですから,中央教育審議会からは,やはりどちらにも課題解決の糸口があり得る,ということを念頭に改革を一緒に進めていくことを提言することが重要ではないかと思います。やはり一辺倒ではないだろうと,聞いていて思いました。
 これに対しても,また御意見があるかもしれませんが,地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議においても,共通の目的はこの国の高等教育や産業界の発展です。したがいまして,今後も中央教育審議会等としては連携を続けながら,この目的達成にベストのアイデアをうまく議論をしながら作っていくことが重要だと思います。


(3)事務局から,専門職大学・専門職短期大学の制度設計について,資料2-1から2-5に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【永田分科会長】  それでは,専門職大学・専門職短期大学の制度設計について,事務局から説明をお願いします。
【塩原主任大学改革官】  高等教育局の新たな高等教育機関プロジェクトチームでございます。当プロジェクトチームからは,先の通常国会において成立をいたしました,専門職大学の制度化のための関連法案につきまして,御報告させていただきますとともに,この法律制定に伴いまして,更に必要となっております関係政省令の整備等につきまして,本日御審議を賜れればと思います。
 資料は資料2-1から資料2-5までの一連の資料となっております。
 まず,資料2-1でございますが,こちらは成立をいたしました関係法律,学校教育法の一部を改正する法律でございます。こちらにつきましては,昨年5月の中央教育審議会答申において提言された,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関としての専門職大学・専門職短期大学を制度化するものでございまして,先の通常国会に法案を提出し,これをお認めいただきまして,本年の5月31日に公布されているものでございます。
 制度の概要は,大学制度の中に位置付けられ,専門職業人の養成を目的とする新たな高等教育機関といたしまして,4年制の専門職大学及び2年制,ないしは3年制の専門職短期大学の制度を設けるものであり,現在,6年制で養成しております医学,歯学,獣医学,及び臨床薬学の分野は対象から除かれることとなっております。
 法律で定めております具体的な内容につきましては,その下の法制度の概要のところにもございますが,まず,機関の目的としましては,専門職を担うための実践的,応用的な能力を育成・展開することを目的とすること。また,課程修了者には,文部科学大臣が定める学位を授与すること。
 さらに,社会のニーズへの即応ということで,専門職大学等においては,関連事業者の協力を得て教育課程を編成・実施し,及び教員の資質向上を図ること。さらに,認証評価につきましては,専門職大学院と同様に,分野別認証評価を受けること。
 さらに,社会人が学びやすい仕組みといたしまして,4年制の課程については,前期2年,又は3年,及び後期2年,又は1年の区分制の課程にすることができる仕組みや,さらに,修業年限の通算といたしまして,実務の経験を有する者が入学する場合には,当該実務経験を通じた能力の修得を勘案した,一定の修業年限の通算ができることとしているものでございます。
 なお,本法改正の施行日につきましては,平成31年4月1日からとすることとなっております。
 さらに,資料概要2の1にあります,関連事業者等との協力に関する教育課程の編成,実施に関する規定につきましては,今回,法改正におきまして,専門職大学院においても同様の規定を整備することとなったものでございます。
 以上が改正法の内容でございますが,この法律の成立に伴う,より詳細な制度設計につきましては,政省令の整備が必要となります。平成31年4月の新制度のスタート,また,それに先立つ大学設置認可等の手続に鑑みますと,関連政省令は本年夏頃までを目途に整備する必要があるかと思っております。
 続きまして,資料2-2を御覧ください。資料2-2は3月29日の大学分科会におきまして,御了承いただきました第9期の大学分科会における部会等の検討体制でございます。このうちの5の専門職大学等の制度設計に関する作業チームにつきましては,関係法案が成立次第,速やかにこれを設置するものとされておりました。法案成立を受けまして,1枚めくっていただき,委員名簿にありますように,9名の委員による作業チームを設置し,御審議を始めていただいたところでございまして,主査には黒田委員に御就任いただいたところでございます。
 続きまして,資料2-3を御覧ください。資料2-3は,今回の法改正に伴いまして,整備を要する政省令等の一覧でございます。内容は(1)から(6)まで全部で6件でございますが,このうち(1)設置基準の制定等につきましては,専門職大学,短期大学に加え,専門職大学院における産業界等との連携による教育課程の編成等に関する規定の整備も含めることが必要となっております。
 それぞれの政省令整備等の具体的な内容につきましては,資料2-4以降となりますので,こちらを御覧ください。資料2-4は,まず,設置基準の制定等でございます。設置基準につきましては,これまでの中央教育審議会での審議ないし,国会での法案審議を踏まえて定める必要があるものでございまして,その制度設計のポイントにつきましては,資料2-5に本日,添付させていただいております。昨年5月の中央教育審議会答申において,既に示されているものでもございます。
 制定に当たっての基本的な考え方といたしましては,中央教育審議会ないしは国会審議における大臣答弁においても繰り返し述べられておりますが,大学の枠組みの中に位置付けられる機関としてふさわしい水準を担保するよう,現行の大学,短期大学設置基準の水準を考慮すると同時に,一方で高度かつ実践的な職業教育を行う機関としての,機関の特性を踏まえた適切な水準の設定を図ること。この両方の観点を踏まえる必要があると思っております。
 その上で,資料の下でございますが,専門職大学等の設置基準で定めるべき具体的な内容といたしまして,既存の大学,短期大学とは特に異なる部分を抜き出して,こちらに記載しているものでございまして,ここに記載している以外の部分につきましては,基本的には大学,短期大学と同様の規定を新しい専門職大学等の設置基準にも定めることを念頭に置いているものでございます。
 具体的内容は,最初は教育課程等でございますが,教育課程の編成方針といたしまして,産業界等と連携しつつ,教育課程を自ら開発・開設,更に不断に見直しをすることと,さらには(2)教育課程連携協議会でございますが,産業界等との連携による教育課程の編成・実施を行うための教育課程連携協議会の設置を義務付けることとしております。こちらの(1),(2)につきましては,専門職大学院設置基準においても所要の規定を整備することを予定しております。
 また,(3)開設授業科目につきましては,こちらにあります1から4にありますような四つの科目を規定いたしまして,それぞれ四つの科目について,必要な卒業単位数を定めることを考えております。
 また,(4)実習等の重視につきましては,実習等による授業科目について,例えば,4年であれば40単位以上というように,一定単位数の修得を卒業・修了要件として規定すること。さらには,これら実習等による授業科目には,企業等での臨地実務実習,いわゆるインターンシップでございますが,それによる一定単位数を含むこと。臨地実務実習につきましては,やむを得ない事由があり,かつ教育効果を十分に上げられる場合には,企業等と連携した連携実務演習等による一部代替も可能とすることとするものでございます。
 その下,入学前の既修単位の認定につきましては,法律で定めました実務の経験を勘案した修業年限の通算の仕組みの裏付けといたしまして,こうした大学入学前の実務経験を踏まえた単位認定の制度を仕組みとして定めるものでございます。
 さらに,1枚おめくりいただきまして,教員についてでございます。専任教員数につきましては,大学・短期大学の水準を踏まえつつ,小規模の学部・学科を想定した基準を新設すること。また,実務家教員に関する規定といたしまして,必要専任教員数の概ね4割以上は実務家教員とすること。当該必要実務家専任教員数の2分の1以上は,更に研究能力を併せ有する実務家教員とすること。同様に,必要専任実務家教員の2分の1以内は,いわゆるみなし専任教員の活用も可能と規定することとしております。
 また,学生でございますが,入学者の多様性の確保に配慮した入学者選抜を行うことについての努力義務を規定すること。さらに,同時に授業を行う学生数につきましては,原則として40人以下とすることを規定しているものでございます。
 次に,施設設備につきまして,校地面積については,学生1人当たり10平米という現行の大学・短期大学設置基準の水準を踏まえつつ,一定の要件の下での弾力的な取扱いを可能とする案でございまして,その場所に立地することが特に必要であり,かつ,やむを得ない事由により所要の面積確保が困難と認められる場合には,教育研究上支障がない限度において,当該面積を減ずることができる旨の規定を置くことを考えているものでございます。
 運動場,体育館その他スポーツ施設の取扱いにつきましては,原則として体育館,その他スポーツ施設を備えるとともに,なるべく運動場を設けることを求めるとしますが,ただし,やむを得ない特別の事情があるときには,大学外の運動施設の利用による代替措置も可能とするものでございます。
 校舎面積でございますが,こちらにつきましても,大学・短期大学設置基準の水準を踏まえつつ,小規模学部・学科を想定した基準を整備することに加えまして,臨地実務実習が必修である等の特性を考慮し,卒業に必要な臨地実務実習を実施するに当たり,実習に必要な施設の一部を企業等の事業者の施設の使用によって確保する場合には,一定の要件の下に必要校舎面積を減ずることを可能とするような措置を検討しているものでございます。
 以上が設置基準についての検討中の内容でございます。
 続きまして,3ページでございます。学位規則の一部改正(案)についてでございます。今回,改正法律におきまして,専門職大学,短期大学の課程修了者には文部科学大臣が定める学位を授与する旨,規定されているところでございますが,そこでいう文部科学大臣の定めといたしまして,学位の種類は「学士(専門職)」並びに,「短期大学士(専門職)」とすることを定めるものでございます。
 具体的に,「学士(専門職)」の学位につきましては,専門職大学を卒業した者に授与する学位の種類としています。また,「短期大学士(専門職)」につきましては,専門職短期大学を卒業した者,並びに専門職大学の前期課程を修了した者に授与する学位の種類として定めるものでございます。
 また,1枚おめくりいただきまして,学位の種類,分野の変更等に関する基準(告示)の一部改正についての案でございます。現行,設置認可の制度におきまして,大学,短期大学の学部・学科の設置・改組転換に際しましては,学位の種類ないしは分野の変更を伴うものである場合には,文部科学大臣の認可の手続を,こういった変更を伴わない場合には届出を要するものとされているところでございまして,今回,新たな学位の種類といたしまして,「学士(専門職)」及び「短期大学士(専門職)」を定めたことに伴いまして,これらの学位における分野の取扱いについて定めるものでございます。
 具体的な分野の設定につきましては,専門職大学院が授与しております専門職学位における分野の取扱いと同様に,既存の大学等における分野の区分と同じ区分を用いることとしておりまして,違いといたしましては,「学士(専門職)」につきましては,獣医学,医学,歯学関係は除いていること,また,「短期大学士(専門職)」につきましては,既存の短期大学と同様の分野を含むとなっています。
 続きまして,学校教育法施行規則(省令)の一部改正についての案でございます。こちらにつきましては,法律の施行に伴って,更に必要な事項を定めるものでございますが,まず,1として,専門職大学,短期大学の設備,編制等,設置に関する事項については,それぞれ専門職大学設置基準及び専門職短期大学設置基準の定めるところによる旨を定める規定を置くこと。
 さらに,その下,実務の経験を通じた修業年限通算に関する省令レベルの規定といたしまして,こういった修業年限通算が認められるのは,先ほどの設置基準の案にもありました,能力修得に対する単位認定を受けた者に対して与えられた単位数等を勘案して,認められるものであること。また,認められる修業年限通算の期間の上限につきましては,全体修業年限の4分の1を超えてはならないことを定めるものでございます。
 さらに,専門職大学等の分野別認証評価に関し,文部科学大臣の定める代替措置といたしまして,例えば,認証評価機関が存在しない等,特別な事由がある場合の分野別評価に替わる措置を定めようというものでございまして,1は既存の専門職大学院でも同様に扱っているように,文部科学大臣が指定した国際的な団体から評価を受けている場合,ないしは,2にございますように,こちらは,専門職大学院についても,制度創設当初10年間の経過措置として類似の措置が設けられていたものでございますが,分野別認証評価団体が存在しない等の場合には,当該分野の課程に係る識見を有する者による第三者の検証を定期的に行うこと等によって,分野別認証評価に代替することを専門職大学等につきましても可能としているものでございます。
 さらに,6ページ目でございます。教育研究活動等の状況についての情報の公表につきましては,既存の大学等についての情報公表事項に加えまして,関係者との協力に関する情報についても公表することを省令において規定するものでございます。
 その次,学校教育法施行令(政令)の改正でございますが,政令におきましては,いわゆる専門職大学の前期,後期課程の区分制度課程につきまして,課程区分を設けるとき,ないしは前期,後期それぞれの修業年限を変更することについては,文部科学大臣の認可事項にすること。さらに,その他の変更の場合,これは課程区分の廃止を念頭に置いているものでございますが,その場合については,文部科学大臣への届出に係らしめることとするものでございます。
 最後でございますが,学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際しての必要な細目を定める省令,いわゆる細目省令の改正でございます。文部科学大臣が認証評価団体の認証を行う際の認証基準について,基準を適用する際の細目を定めるものでございまして,内容といたしましては,まず第一に,専門職大学及び専門職短期大学の認証評価を行う認証評価機関が定めます大学評価基準については,それぞれ,専門職大学及び専門職短期大学の設置基準等に適合していることが必要である旨を定めること。
 さらに,その下については,専門職大学,専門職短期大学に加え,専門職大学院についても同様でございますが,分野別認証評価を行うに当たっての基準に関する事項といたしまして,教育課程連携協議会に関すること,及び学修成果(進路に関することを含む)を大学評価基準の内容として定めるべきことを追記すること。さらに,評価の実施,及び評価基準の策定,変更に当たって,関係事業者等の団体の意見聴取を行うことを規定するものでございます。
 以上が,作業チームにおいて御議論いただき,本日,現時点の案として御報告をさせていただくものでございます。よろしく御審議のほど,お願いいたします。
【永田分科会長】  ありがとうございました。作業部会の委員の先生方から何か補足がありますか。 よろしければ,今の御説明に御意見,あるいは,御質問をお願いします。河田委員,どうぞ。
【河田委員】  私どもは日本私立学校振興・共済事業団で,私学助成金,経常費補助金の配分役をさせていただいております。この実践的な職業教育に特化した新大学は国公私立の別でいくと,私立大学に分属されると思います。
 そうしますと,恐らく経常費補助金の問題が出てくる。今,ちょうど全国各地で補助金説明会を行っていて,あすからは仙台で説明会を開催いたしますが,600の4年制大学と328の短期大学があって,あと3つの高専があり,私学助成金を受けているわけですが,さらにこの新たな専門職業大学,あるいは短期の専門職業大学が私立大学と判定されれば,当然,私学助成金,経常費補助金を欲しいという話になります。が,それについては,今,全く言及がございませんでした。
 資料2-5の最後のところに財政措置ということが書いてあって,これは以前に私が申し上げて,ようやく必要な財源の確保を図り,ふさわしい支援を行っていくと明記されましたが,このことにつきましては,どのような議論がなされており,必要な財源はどこから持ってこられるのか,今年であるならば,3,153億を配分しているんですが,これがもし100校も新設されると,小さな私立大学は財政的に破綻してしまう可能性もあると思います。その辺のことはどのようになっているか,お教えいただきたいと思います。
【塩原主任大学改革官】  今回,御審議賜っておりますのが,省令レベルの設置基準等についての現在の案でございますが,この制度が実際に制度化された場合につきましては,河田委員御指摘のように,学校教育法は国公私立を通じた制度でございまして,このうち私立大学につきましては,私立学校振興助成法上の大学のうちに入るものでございますので,私立学校振興助成法上の助成の対象にはなっていくという制度になっております。
 また,それに対する助成措置につきましては,先ほど河田委員からも御指摘いただきましたように,昨年5月の中央教育審議会答申におきまして,必要な財源の確保を図り,実践的な職業教育を行う機関としてのふさわしい助成措置を行うこと等についての御提言を頂いているものでございまして,国会の審議等におきましても,このことについての関連の国会質問等も多く頂きまして,こういった趣旨での附帯決議等も頂いているものでございます。
 実際に,経常費助成につきましては,基本的には完成年度を迎えた後の対象ということになってございますので,専門職大学等の制度については,平成31年度に新しい専門職短期大学,2年制が創立された場合に,それが完成年度を迎えます平成33年度以降の措置が必要となるということであろうかと思いますが,中央教育審議会での御提言,また国会での御審議等も踏まえまして,必要財源を図りつつ,適切な助成措置を行っていくことについて,私どもも努めてまいりたいと思っているものでございます。
【河田委員】  この件について,議事録にきちんと明記していただいて,適切な,必要な財源の確保を是非図っていただけますように,よろしくお願いいたします。
【常盤高等教育局長】  説明の中身については,つけ足すことはありませんが,その議論は国会の衆議院,参議院それぞれで大変多くの御質問を頂きましたし,今,申しましたように,国会の委員会の附帯決議でもそういう方向での記述がございます。国会の議事録にも既に記載されておりますので,我々としては,完成年度を迎える平成33年度での措置になりますので,それに向けて財政当局にしっかりと要求をしていくことになろうかと思います。
【永田分科会長】  室伏委員,どうぞ。
【室伏委員】  室伏です。1点質問させていただきます教育内容,方向のところで,分野の特性に応じた適切な指導体制が確保された企業内実習等を2年間で300時間以上,4年間で600時間以上履修することと書いてございます。
 資料2-5にも2-4にもありますが,これを拝見して,とても良いことだとは思いますが,かなり無理ではないかという気がしています。今,経済同友会でインターンシップの在り方についての検討をしておりまして,本当に有効なインターンシップを行うために,かなり企業の方々の負担の問題ですとか,大学がどのように協力するかということを議論しています。今年度から,新しくインターンシップだけに特化した委員会も作りまして,いかにしたら学生のために,また,企業にとっても有益なインターンシップになるかということを考えておりますが,この時間は相当,双方に無理なのではないかと心配です。この辺の議論はどのように行われたのでしょうか。
【塩原主任大学改革官】  企業内実習等の取扱いにつきましては,中央教育審議会の昨年5月までの特別部会等の議論の中でも,実際には非常にハードルが高いのではないのかといった御議論も頂きましたが,一方では,新たな高等教育機関が,あえて既存の大学制度の中から,より実践的な職業教育に重点を置いた仕組みとして制度化を図るということであれば,その特色として,ハードルとしてはそれなりに高い目標になるかもしれませんが,企業内実習については相当のボリュームを持たせるということで整備したものでございます。
 分野によっては,既にこのぐらいの企業内実習等をやっているような学校も少なくないと聞いていますが,また,一方においては,なかなかここまで行けていないところもあろうかと思いますので,そういった点につきましては,私どもも,今後,例えば,各成長分野等の所管省庁等と連携をしながら,関係業界への呼びかけやサポート体制等についての連携も行ってまいりたいと思いますし,高い基準を乗り越えてこられる学校に新たな高等教育機関になっていただきたいと思っているものでございます。
【室伏委員】  相手のあることで,企業がそれに対してどのように関与してくださり,どのように実施していくかということが大切ですので,その辺はよく御検討いただきたいと思います。
【常盤高等教育局長】  今の件は,ドイツなどの国際的な水準といいましょうか,そういうことを念頭に置いたという議論がございますのと,それから,カリキュラムを作ってから企業にお願いするというよりも,カリキュラムを設計する段階で,産業界とよく連携をとりながらカリキュラムを設計し,学校のコンセプトを定めるということを考えとして持っておりますので,そういう中で御理解いただきながら,進めさせていただければと思ってございます。
【室伏委員】  はい,お願いします。
【永田分科会長】  それでは,金子委員,どうぞ。
【金子委員】  三つあります。一つ目は,これは新しい専門職大学についての規定ですが,ここに至る経緯では,既存の大学にも専門職の教育課程を作ることも構成に入っていたわけで,今のところ,設置基準には出ていませんが,当然それが入るものだと思っております。
 二つ目は,設置基準の内容ですが,内容を見ますと,既存の大学と内容がほとんど同じでありまして,これは,要するに新しい機関を想定していますから,具体的な需要の想定が,実は必ずしもできていないのではないか。これはできないから駄目だというわけではありませんが,しかし,これを早急に具体化しないと,質の保証に非常に大きな問題が出てきます。
 三つ目は,資料2-1の一部にありますが,企業との連携と,それから地域との連携は非常に重要で,それがないと,構想自体が成り立ちません。教育課程連携協議会という教育課程に関する連携協議会というものが,一応名前は出ていますが,これがかなり強力に設定されるような設置基準の書き方ないし,しかも,これは大学としての設置基準だけではなくて,地方を交えて,そういった協議ができる,それから,インターンシップに対しても参加をしていただく,設計の段階で参加していただくことと同時に,インターンシップの学生を受け入れていただく,そういうかなり強力な組織を作ることが重要だと思います。
【永田分科会長】  ありがとうございます。鈴木委員,どうぞ。
【鈴木(雅)委員】  地方の企業のOJTはどのようにして行われるのか。実際に地方の大学がこれからどうなるのかという議論をしているときに,OJTとして,地方企業の受け入れが少なければ,地方の大学生も含め多分受け入れることができないと思います。
 ただし,ここでやる内容というのは,2年間で300時間ということは,1年で約1か月分のOJTなんです。ですから,1か月間企業が本当に即戦力として受け入れるだけの余裕があるかどうか,その辺の実態を踏まえた上で進めていただければと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  前野委員,どうぞ。
【前野委員】  今のことに関わりますが,企業側の受入れ等にまだいろいろ問題があるとすると,もう一点,実験,実習をかなりの割合で入れようとしますと,教員だけの文言が多いのですけれども,分野にもよりますが,技術職員,あるいは,教員以外のスタッフについても,何らかの言及があってもいいのではないかという気がいたしました。
【永田分科会長】  ありがとうございます。麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  私の質問は,金子委員が言われた1番目の既存の大学と短期大学に関してこれをどう適用するかということです。同じです。
【永田分科会長】  今現在の条件では,公立,私立は可能ですが,国立では難しいのではないかと理解しています。しかし,最終的には,先ほど金子委員がおっしゃったように,新しい学科を設置していくという形がとれるようにしないとアンフェアだと思いますので,可能になるように詳細が設計されるであろうと認識しています。
 続きまして,伊東委員,どうぞ。
【伊東委員】  ありがとうございます。倉敷市立短期大学を運営しております市の立場から申し上げたいと思います。私どもの大学は1968年から市立短期大学を運営しておりまして,その中で短期大学でございますので,準学士の称号を学生が当然のことながら取得しておりました。そして,やっと平成17年から短期大学士ということで学位を頂ける状況になりました。是非新しくできます専門職大学,専門職短期大学等につきましては,学問としての設置基準につきまして,これまでのものと同等の内容というところに是非とも御配慮を頂きたいと思っております。
 また,専門職として,非常に地方が欲しい優秀な人材が専門職大学,短期大学から輩出されると思っております。また,新しくできる大学につきましては,先ほどの東京23区の新しい大学の新設を抑制するという範疇(はんちゅう)の中にもきっと入ってくるのではないかと思っておりますので,私ども地方としては,非常に欲しい人材でございますので,年内に成案を得るという,先ほどの中間報告,本報告に向けた議論との調整もお願いできればと思っております。
 以上でございます。
【永田分科会長】  山田委員,どうぞ。
【山田委員】  基本的には金子委員をはじめ,既に出た意見ですが,既存の大学の基準の方が,多分はるかに評価を含めて面倒な話になってくるのではないかと思います。その点では,新大学の話だけ,ここに出てきているのは,やり方として非常に厳しいんじゃないかというのがまず,1点であります。是非とも早めに,既存大学の在り方も出していただいて,その比較の中で,どうやって新しい大学の位置付けを明確にしていくのかという点をお示しいただきたいと思います。
 それから,もう一点は,地域によって,かなり必要な人材は変わってまいりますので,そうした中で設置基準というものをどれだけ地方に合わせて柔軟に行うのかという点について,地方の意見も十分聞いていただいて,仕組み作りを行っていただきたいなと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございました。今,最後に出てきた問題も,それは当然ながら学生ですから,例えば,福祉の分野などのように,地方の事情によって柔軟な対応も必要だということです。これまでの大学設置基準は,そのように制度設計されていますが,それを緩和できる部分はなるべく緩和しよう,という方向で進んでいるということです。
 今いただいたご意見は,作業部会で議論を続けていきたいと思います。ただ,先ほど御説明があった中で,こういった意見を踏まえながら,併せて,社会からも意見を聞くためのパブリックコメントを行いたい,と考えています。したがいまして,本日の御意見を踏まえ,更に踏み込んだ詳細な制度設計を行っていくことになると思いますが,その際,もちろん中央教育審議会での御報告もありますが,社会の意見を聞く,というプロセスを経たいと思っておりますので,そのことに関しては,御了解を頂きたいと思っております。


(4)事務局から,高等教育の将来構想について,資料3-1及び3-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【永田分科会長】  高等教育の将来構想について,現在,大学分科会の下の将来構想部会で議論が進んでいます。それについて,事務局から御説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料3-1を御覧ください。将来構想部会を設置いたしまして,これまで3回御議論いただいております。そして,この大学分科会で出た議論も踏まえて,これまで出た意見を整理しております。
 1枚目が四つの検討事項のうちの1について。2枚目が検討事項2について,学位の国際通用性,設置認可,認証評価等々について御検討いただきます。3枚目が検討事項3,規模の問題について,進学率100%を目指すべきか,そうではないか等々,御議論が出ております。そして,その後,2ページめくっていただきまして,検討事項4として,財政支援の在り方についてということで,それぞれ御議論いただいているところでございます。
【永田分科会長】  今現在,自由討論の形式でキーワードを探している最中でして,その中から今,御説明いただいた観点として,四つの大きなラインの中で議論を始めたところです。ちなみに,規模の問題というのは,最重要課題になりますが,その問題を最初に自由討論をしている最中です。当然ながら,いろいろな意見が出てきておりますが,学問分野の多様性を保証しなくてはいけない,という意見があります。今,出ている議論としては,大学をすぐに廃止するという考え方ではなくて,大学の質を高めていきながら,全体の入学定員規模としては減らしていかざるを得ないであろう,といった議論になっています。
 何か御質問ありますでしょうか。特に,将来構想部会にお出になっていない委員の方で何かあれば,分かる範囲でお答えをいたします。北山委員,何かございますか。
【北山副分科会長】  高等教育全般に関係する議論なので,切り口は非常に多いと思いますが,その中で一点だけ,認証評価について申し上げたいと思います。平成17年の答申「我が国の高等教育の将来像(答申)(以下,「将来像答申」という。)」以降,質保証について様々な検討が行われてきていますが,認証評価については,なかなか抜本的な改革には至ってはいないのが実情かと思います。例えば,大学の評価疲れという観点では,機関別評価,分野別評価,国立大学には国立大学法人評価もあり,それらの内容には依然としてオーバーラップしている部分もあります。
 したがって,将来像答申以降,この10年間で行われてきた施策を検証し,PDCAサイクルのCを確りと踏まえた上で,例えばIR体制の充実や,情報公開との合わせ技で,認証評価の在り方を見直すことについて,是非御検討いただければと思います。
 以上です。
【永田分科会長】  ありがとうございます。基本的には,そこにあります設置基準,設置審査,認証評価,情報公開,一つにまとめた形で議論がされる予定になっています。実際には設置の問題が,実は更に重いわけでありまして,設置と接続したアフターケアや認証評価というもののつながりが,よくよくできるようにということで議論をしていただこうとしています。
 その他いかがでしょうか。河田委員もお出になっていないと思います。どうぞ。
【河田委員】  四つ目のところで,支援法策ということで,基盤的経費や競争的資金が出ております。国立大学も寄附金については,4月から国立大学法人法が改正され,資産運用が可能になりました。私立大学もそういう資産運用をやっておりますので,是非自己努力としての寄附金募集や資産運用などをアメリカのようにやっていく,コモンファンドのような税金の掛からない組織をつくり,資産運用が進展すると,そういう項目を入れていただいて,その件についても御議論いただければと思います。
【永田分科会長】  ありがとうございます。まだこれは本当に始まったばかりで,まとまった御報告をできる状態ではありませんが,随時,これから御報告を申し上げて,御意見を賜って,部会の方に持っていきたいと考えております。
 それでは,本日の議題はここまでとさせていただき,第136回の大学分科会を閉じさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

―― 了 ――

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