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大学分科会(第89回) 議事録

1.日時

平成22年5月26日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

(委員)安西祐一郎,荻上紘一,金子元久,郷通子の各委員
(臨時委員)有信睦弘,今榮東洋子,江上節子,樫谷隆夫,河田悌一,木村孟,黒田壽二,小杉礼子,佐藤弘毅,佐藤東洋士,水田祥代,中西友子,濱田純一,森脇道子の各臨時委員
(専門委員)川嶋太津夫,白井克彦の各専門委員
大学グローバル化検討ワーキンググループ主査 二宮皓専門委員
国際的な大学評価活動に関するワーキンググループ主査 山本眞一専門委員

文部科学省

森口文部科学審議官,板東生涯学習政策局長,德永高等教育局長,河村私学部長,小松高等教育局審議官,加藤高等教育局審議官,義本高等教育企画課長,藤原大学振興課長,村田私学行政課長,榎本高等教育政策室長,氷見谷国際企画室長 他

4.議事録

(1) 文部科学省から,資料1の大学設置基準等の改正について諮問があり,以下の審議が行われた。

【安西分科会長】
 何かご意見,ご質問等ありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 この大学設置基準等の改正については,中央教育審議会運営規則により,大学分科会の議決をもって審議会の議決とされています。
 それでは,大学設置基準等の改正について,議決を行わせていただければと思います。定足数を満たしているかどうか確認してください。

【榎本高等教育政策室長】
 委員及び臨時委員は29名であり,現在17名の出席ですので,中央教育審議会令第八条第1項に基づく過半数を満たしています。

【安西分科会長】
 それでは,お諮りをさせていただきます。先ほど文部科学省から説明がありましたが,諮問の内容について了解をいただくということでよろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【安西分科会長】
 ありがとうございました。それでは承認いただいたということにさせていただきます。
 特に黒田部会長を始めとする質保証システム部会の各委員には精力的に審議をいただいてまいりました。改めて感謝を申し上げたいと思います。また大学分科会においても色々なご意見をいただいてまいりました。感謝申し上げます。
 文部科学省においては,この制度改正の運用に当たりまして,ぜひ適切に対応をお願いしたいと思います。

 

(2)事務局から,各部会やワーキンググループの審議状況について資料2-1~資料2-5の説明があった。その後,各部会長から総括的な発言があり,意見交換が行われた。

【大学規模・大学経営部会 金子部会長】
 大学規模・大学経営部会の論点ですが,18歳人口の長期的な減少に伴い,私立大学の経営問題が指摘されてまいりました。これまでも色々と議論されているところですけれども,様々な状況からかなり深刻な事態が近い将来に生じる可能性も出てきています。その中で早急にこれから取り組むべき問題は何かということで議論を行っています。論点整理のポイントですけれども,A3の紙にありますように明確に私立大学の方向として,自立に向かっての支援,連携,共同を促していく。一定の条件の場合には撤退を社会的に,あるいは学生個人への被害が及ばないような形で進めていくという3つの方向を明確にいたしました。
 こういったことを可能にするためには,条件をつくらなければいけないですが,先ほど可決されました教育情報の公表は,そういう意味で非常に重要な意味を持っていると思います。それに加えて,私学事業団が経営指導・経営相談を行うことによって,大学が自立的によりよい経営判断を行う環境をつくっていくことが,今の重要な論点の一つになっています。
 もう一つ,財務・経営情報の公表も非常に重要な点です。これについては先ほど紹介がありましたようにガイドラインがつくられていて,概要がすでに報告されていますが,これを基礎にこの面での情報公開について,取組が進められることを期待しています。それがこの問題に関して取組を進める上で,重要な基礎になると思います。
 以上,申し上げましたが,私学の経営問題はかなり深刻な問題であり,これから更に詰めなければいけない問題が数多く指摘されています。これからも議論を続けていく予定ですが,現段階での方向をこのように整理したものです。

【大学行財政部会 荻上副分科会長】
 大学行財政部会では国公私立大学を通じた大学の機能別分化と大学間連携の在り方等を中心に議論を進めておりますが,その中でCOEやGPについても議論をする必要があるのではないかと委員から提案を受け,先日5月24日に高井政務官もご出席をいただき,COEやGP等の国公私を通じた大学教育改革支援プログラムの成果や課題について,有識者から意見を発表していただき審議をしました。
 COEやGP等については事業仕分けの際に,「大学改革に取り組むのは大学本来の業務であり,追加支援の必要はないのではないか」という指摘がありました。しかし,新たな取組にチャレンジする場合,現在の学生から納付されている授業料を充てることは,学生たちに対する説明が難しいところです。更に取組の成果等を,広く世界に還元するような波及効果が期待されていることもあり,大学の本来業務とは別に考えるべきではないかといった意見が委員から出されています。
 一方で,COEとGPの性格の違いが必ずしも明確にされていない点もあったのではないかということで,「それぞれの性格に応じた事業運営が行われるべきではないか」といった意見や,「支援対象となった大学における取組の成果について,社会への発表や情報発信に工夫が必要である」という課題の指摘もありました。このテーマについては,本日の午後も引き続き審議をする予定になっています。

【大学院部会 有信部会長】
 資料が配付されていますが,平成17年度に出された大学院答申の中に,相当程度の大学院の在り方についての方向付けがなされているといった理解を前提に,その方向付けがどの程度各大学で根をおろしているか。一つは平均的に統計的な調査をしてもあまり意味がないという前提で,典型的な例をサンプリングし,具体的な専門性を持った各委員に,それぞれの調査をかなり深読みしていただく形で検討しました。
 大学院部会としては,各ワーキンググループの検討結果を踏まえた議論がまだ終わっていませんので,本日の報告は各ワーキンググループのまとめていただいた結果を報告させていただきます。
 大きく分けて,理工農系,人文社会系の2つは学問的な領域ということで共通に見ると,修士課程までは基本的に教育の実質化はかなり進んできています。様々な試みも行われていますので,教育そのものは相当程度実質化が進んでいます。ただし,人文社会系については,まだ修士課程でも就職等々の問題があるので,ここについては更にもう一つ踏み込む必要があるかもしれません。
 それから博士課程については,第一に,博士課程そのものの博士という学位の在り方に対する共通認識が,十分に共通化されていないという問題があります。
 もう一つは,博士という学位を持った人達のキャリアパスが明確に示されていないことです。特に理工農系においては,修士課程と博士課程前期をあわせて言わせていただくと,修士課程において研究に向いていると思われる優秀な学生が,博士課程後期に進まずにかなり就職してしまっているという問題があります。結果的に理工農系の博士課程の大学院は,ある意味で留学生の比率が高くなるとか,様々な形をとるようになっています。
 これはこれで悪いことではありませんが,本来ならばそのまま博士課程に進むべき学生を,スムーズに博士課程に進めさせるための方策が必要です。関係しますが,博士課程に進むことをためらう理由の一つであるキャリアパスが不明確であることと,経済的な支援が不十分だということについて考える必要があります。
 それから,人文社会系については,特に日本においては博士のキャリアパスが非常に不明確であるということと,教育そのものについてもまだ十分な手立てができていない。特に社会との連続の上でなされているようには見えない。ここについてもまだ検討する必要があります。
 医療系については,これはかなり専門的な領域ですので,なかなか難しいのですが,一番の問題は,特に臨床系で研究に関する部分が非常に手薄になっています。これも博士課程の問題があり,どう対処するかということが問題だと思います。
 それから,専門職学位課程については,実は極めて多様で期待以上の展開をしています。本来,専門職学位課程は,ある意味で社会的に特定のこと,専門的なことが十分できるという能力やスキルを持った人達を養成する学位課程ですが,それが十分にできていないケースもあるということです。
 もう一つは,そういうことを十分に行うためには,専門職学位課程は基本的には修士課程ですが,教育研究のバックグラウンドを与えるためなどの博士課程後期への接続問題がきちんと考えられていません。
 これは今のところ,例えば法科大学院等々で見られますように,専門職学位課程ではない部門の教員と専門職学位課程の教員とが兼務をできるという,こういう形になっているわけです。この制度を今後どのように取り扱っていくのか,専門職学位課程の教員をどういう形で養成していくのか,これが課題になっています。
 最後に,それぞれの課題を7ページにまとめていますが,こういう形で検討する必要があるということです。特に理工農系のところに記載がある5年一貫の博士課程は,以前の大学院答申の中でも,インプリシットにはこの方向性が示されていました。この試み自体は,実は筑波大学で,既に一度試みられて,それが修正の方向にあるということでもあるようです。
 したがって,これは新たな方向を目指すということで,もう一度慎重に,うまくいかなかった理由を踏まえながら進めていく必要があると思います。
 もう一つ,日本学術会議から日本の展望という報告が出されています。その中にも,大学院は一貫の博士課程と修士課程に分化するべきであるという答申が出ていると聞いています。全体として議論の方向はアカデミズムの中でもそういう方向性が議論されているということだと思います。以上です。

【大学グローバル化検討WG 二宮主査】
 まず,このダブル・ディグリー等のガイドラインの整理にあたり,これまで大学分科会や質保証システム部会において,積極的かつ前向きに議論いただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
 ガイドラインの冒頭にも記していますが,ダブル・ディグリーやジョイント・ディグリーの質保証については,事務局から説明があったように,まだまだ検討していただく課題があると考えています。ワーキンググループにおいても,「将来的には,何らかの制度面での手当てを含めた検討をお願いしたい」といった意見が多数あったことを報告させていただきたいと思います。
 大学分科会及び質保証システム部会において,引き続き公的な質保証のシステムの在り方について,幅広く審議されるものと思いますけれども,国際的な教育連携や取組が急速に進展しつつあるという背景を考えると,できるだけ速やかに,このグローバル化に関する制度面を含めた検討を着手していただければありがたいと思います。
 具体的な課題としては,制度的な検討に加えて,事務局からの報告にもありましたように,大学院設置基準における単位互換の上限にかかわる規定の扱いなどが関連する課題であると思いますし,ぜひ取り上げていただきたいと考えているところです。
 大学院の問題は,先ほども報告がありましたように,体系的な教育課程をどう実質化していくかということになるかと思います。そういう点では,私どもも十分に理解しているつもりですが,単位互換の上限は10単位ということです。
 いろいろな報告を受け議論をする中で,この大学院の単位互換の上限を10単位とする現行の規定が,ダブル・ディグリー等を形成・構築していく上でかなり困難にしているのではないか。あるいはこの仕組みのなかで,学生が国をまたがって履修をしていく履修スケジュールにも,かなりの負担をかける恐れがあるのではないか。ワーキンググループの委員からも,度々そういう指摘がありました。
 主査である私としても,大学分科会において,ぜひこの問題について取り上げていただくようお願いしたいと思って,本日出席しているわけです。
 それから,事務局から説明があったと思いますが,「東アジア域内の教育の質の保証を伴う大学間交流推進に向けた骨子案」について議論を始めたところです。先般の大学分科会の議事録も拝見しましたが,日中韓が大学間交流として質保証の在り方等について意見交換をなさったと承ります。ワーキンググループとしても,できるだけ早く深い議論をさせていただきたいということで,スタートしたところです。
 そういう中で,引き続き大学分科会や質保証システム部会の助言や指導をいただきながら,グローバル化検討ワーキンググループとしては精力的に議論していきたいと思います。とりわけ大学間交流の在り方について,どういう人材を目指すのか。そのためには,どういうスキームが必要なのか。質保証を伴ったスキームはどういうことなのか。ということについて議論を深め,報告させていただきたいと思います。以上です。

【国際的な大学評価活動に関するWG 山本主査】
 このワーキンググループは,昨年以来,国際的な大学評価活動が活発に展開する中で,国際的活動に重点を置く大学がどのような情報を発信していくか,またそれが効果的かということについて,大学からのヒアリング等を踏まえ検討を行ってきました。
 今回の報告については,質保証システム部会,大学規模・大学経営部会においても関連する情報の公表の在り方について議論が進められてきているところですので,それらの動きも参考にしつつ審議を進めてきました。
 今回,取りまとめた内容は,全ての大学に公表を求めるというものではありませんが,特に国際的な活動に重点を置く大学においては,優秀な学生や教員の獲得,そして国内外の大学との組織的・継続的な教育連携関係の構築という観点から,積極的に公表をしていくことが望まれるものであると考えています。
 また,こういった情報を公表する大学が増加することにより,我が国の大学に対する国際的な評価・国際競争力の向上にもつながるものであると考えています。
 それから,ワーキンググループの報告ですが,各大学が積極的に自らの情報を公表していくにあたり,全学的な体制を整備するとともに,他大学の発信する情報を分析・評価する,IRという言葉が最近市民権を得ています。これはInstitutional Researchと申しまして,大学の中にあって,各種の数値をもとに大学の戦略を分析する,こういった機能が重要だと考えています。
 これにより,分析した情報を自らの戦略形成の基礎にすることが可能ですし,改善をはかるためのプロセスも容易になり,大学運営に資するところが大きいということです。
 また,海外への情報発信については,最近,個別の大学が色々とやっていますが,個別の大学の取組だけではなく,国においても,我が国全体の大学教育の状況,公的な質保証システム等について責任をもって海外に発信していくことが必要ですし,さらに各大学における取組に役立つような,ノウハウを提供するといった取組を進めていただきたいと考えています。
 これまで国際的な大学評価といいますと,一般的には,よく大学ランキングということで,非常に関心を呼んでいます。もちろん,大学ランキングも大事ですが,それを横に眺めながら,やはり我が国から積極的な大学情報を公表していくことが必要です。
 特に,世界の大学の状況はよく承知しているが,自らのことを発信することが少ないという状況があるとすれば,それは極めて問題です。そういった点を改める意味でも,積極的な情報発信が望まれると考えています。以上です。

【安西分科会長】
 ありがとうございました。
 各部会やワーキンググループにおいて,大変,精力的な議論をいただいています。この大学分科会として情報を共有したいと思いますし,ぜひ皆さまのご意見をうかがえればと思います。
 先ほど事務局から説明がありましたが,学位プログラムを通じた質の保証,また機能分化等々のことが底流にあり,その上で,それぞれの部会等で審議をいただいている状況です。
 本日,各委員から意見をいただき,次回の大学分科会において本日までの審議を踏まえて,それぞれの部会等の審議状況を取りまとめられればと考えています。
 それでは意見交換に入らせていただきます。どなたからでも結構です。

【白井委員】
 各部会で相当な議論が進められたということで,評価できるのではないかと思います。
 ただ,私学の立場は特にそうですが,大学規模・大学経営部会で出てきた論点整理は,画期的です。おそらく,これまでの日本の高等教育の議論の中で,私立大学についてだけ書いている報告は,これが初めてです。中教審で出てきたのも初めてです。
 要するに,かつて私学を問題にしていなかったことを考えると,非常に画期的なことですが,はっきり言って,こういうことが書いてあること自体が非常に残念だと思いますし,非常に悲しくも思います。
 要するに,私学のことを考えるペーパーが,いかに私学を潰すのかといった論調のペーパーであるということは,非常に残念だと言わざるを得ない。そこまで放置したこと自体が非常に大きな問題ではないか。
 もちろん,私学は競争原理あるいは市場原理の中で自主自立にやっていますから,成り立たないところが辞めていくこと自体はごく当たり前のことであり,何ら問題はないということについて,別に結構だと思います。
 しかし,どうしてそういうことが起こってきたのか,あるいは,今ある日本の高等教育のシステムが,いかにいびつなのかに関する議論が,まったく大学規模・大学経営部会で議論されていなかったのではないか。
 国公立,私立といった今のやり方では競争原理はまったく働いていないし,働く構造にもなっていない。ですから,そういうところを固定化しておいて,私学のセクトは無理だからもう撤退しなさいといった議論は正しくないのではないかと思います。日本の高等教育のシステムを,これからどういうふうに構築するかということ,要するにシステムを変えるという発想はあるのではないか。そうすれば,色々なものを救うことができるし,もっといい教育もできる可能性がたくさんあると思います。
 例えば地域において,もっと徹底したコンソーシアム形式にするとか,国立大学がトップになって全部をまとめるとか,公立でも私立でもいいのですが,そういった連携をつくる。アメリカでも州の中のシステムは,当たり前にできています。
 そういう新しい日本の,これからの高等教育の組み立て方を考えていくのが正当ではないか。そういうやり方が現存するということです。大学分科会は,そういうことを議論しないといけないのではないか。私学のことを考えてくれることは,非常に結構ですが,論点整理がこういった形だと,なんとも言いようがありません。この議論は前から,やらなければいけないと言っていますが,ぜひ今後,そういう議論を大学分科会で進めていただけないだろうかと思っています。
 全体の報告の根底に機能別分化があるということは結構です。機能別分化しなければいけないと思います。その機能別分化のつくり方が,現状を肯定するというか,現状の基盤を永続するための機能分化になっているのではないか。
 論点整理の中で先ほど説明がありましたが,国立大学は世界の中のトップ大学になるのだから,そこのところはこういうことをしろとか,どうやったらできるのか議論しなさいといった論点整理になっていると思います。それは要するに現状を肯定するというか,一層固定化する発想にしかとれません。
 ですから,もう少し全体感をもって,システム全体を議論していただきたいということが切なる願いです。細かいことを言い出すと沢山ありますが,一番基本のシステムを,我々は今後どうするのかということを議論していただきたい。
 国立で全部それができるのであれば結構ですし,そういうやり方もあると思います。それが全体の結論であるなら,そういうやり方もないとは言えませんが,現実的にそうでないと思います。現状として7割以上の学生を私立大学が担っているということは,国のお金の使い方や人材育成の仕方について,国立大学だけで考えることができなくなっています。また,高校卒業生の5割以上が大学に入学するようになっています。
 「字も書けないような学生は大学に来てはいけない。」とか,「既に潰れそうになっている大学に来ている学生は意味がない。」とか言う人が結構いますが,そういう見方は,国力のつくり方として根本的に間違っていると思います。ですから,その中をどのように良くするかを考えるべきであり,いかにして廃止するべきなのかを考えるのはどうなのか。そういう考え方もあるとは思いますが,国費を使わずとなると,財政窮乏もあるから難しい問題だと思いますが,ぜひ十分な議論をお願いしたいと思います。

【安西分科会長】
 大変基本的で重要な問題を提起いただきました。今までこういう議論が回避されてきた面が多々あると思います。ぜひ,この大学分科会においては,ストレートに議論をしていただきたいと思います。

【金子委員】
 白井委員の言われたことは全くそのとおりだと思います。国公私の機能別分化の問題を正面から議論しなければいけないことも,そのとおりだと思います。ただ私学の統廃合の問題は客観的に見ても状況はかなり深刻さが増しており,一部である程度技術的な議論等はされておりましたが,正にそういった問題は様々な問題の中で議論されなければならないために,実はあまり正面から具体的に議論できなかったというところもあると思います。
 大変残念な形と言われましたが,全くそのとおりだと思いますが,こういう形ではっきりと議論のテーブルに上げるということは,それなりの意味があるのではないかと思います。その上で,国公私の問題もそのまま棚上げにしないということも重要だと思いますが,もう一つ,非常に重要だと思うのは,撤退の問題はただ単に経営上の問題だけではなく,放置すれば非常にプアな問題のある教育環境をそのままにして相続するような大学もこれから出てくる可能性があることです。そういう意味で,質の問題はこの論点整理と非常にかかわると思います。
 あるいは,活性化し再生する大学も出てくるかもしれません。それも,むしろ教育内容にかかわって再生してくると思います。結局,教育を中心として強化する形での再編成が行われることが全体として望ましいので,サバイバル自体が目的ではなく,日本の高等教育全体が,この論点整理をきっかけとして体制を強化する。特に教育の質を強化する。そういった形に結びついていく方向で考えていきたいと思っていますし,今までの部会での議論はその方向で進んでいると思います。
 白井委員が言われたことを踏まえて,これからの議論をしていきたいと思います。

【河田委員】
 私は昨年12月まで私立大学におりまして,そういう中で,この大学規模・大学経営部会の審議資料に,撤退という言葉を入れるべきか,入れるべきでないかということは苦渋の選択でした。しかし,現実を見たところ,非常に困っている大学があり,そこを何とかしなければいけない。撤退がなるべくないような形での解決ができればということで,我々私学事業団としては,9月21日の札幌から始まって,仙台,東京,名古屋,大阪,広島,福岡において,大学の理事長や学長が必ずしも財務諸表が読めない方もいるということで,私学のリーダーズセミナーを実施し,できる限りの努力をしたいと思っています。それが一つです。
 それからもう一つ,この論点整理には入っておりませんが,私学関係者としてはぜひ要求したいことがあります。それは,現在政党や政治資金団体への寄付をする場合には,税額控除が30%,あるいは所得控除といったどちらかを選択することが行われています。昨今,政府のほうでは「新しい公共」ということで,税制面を解決するために認定NPO法人には税額控除を導入することが考えられていると思います。先ほどから出ておりますように,私学には,おおよそ大学で74%,短期大学で94%,幼稚園で81%,高等学校で30%の学生及び生徒・児童が学んでいます。
 ぜひとも,そういう多くの私学に属する父母や私学を応援する方が,税制の面で公教育を担っているわけですから,政党の場合に優遇されるのと同じような形での税額の控除が行われれば,もう少し私学にとってもありがたいのではないかと思っています。
 以上,2つのことを申しました。

【黒田委員】
 2点お話ししたいと思います。
 河田委員から話がありました寄附税制の問題は,私学にとって非常に重要なことです。寄附文化の醸成もあります。こういう公共事業に対する寄附の在り方を政府も考えているようですが,資料2-1の大学規模・大学経営部会で出している論点整理の7ページに,公財政措置の充実ということが書いていますが,この中にぜひとも寄附税制のことも付け加えていただき,寄附金が集めやすいような政策をとっていただきたいということも明記していただけたらと思います。
 それからもう一つは,大学行財政部会の当面の進め方についてです。これは白井委員が発言されていたことにも関連しますが,国公私の在り方についての分類の仕方,国立大学の役割に,例として1から8まで挙がっていますが,これは何も国立大学だけのことではないと思います。国立大学がこういうことをやるということではなく,国立は国の政策を実行するところでなければいけない。国策としてやるべき研究や教育の内容をどう進めるかが国立の在り方だと思います。ここに書かれているような,世界最先端の学術研究の推進は私学でもやれますし公立でもやれます。ですから,こういうことではなく,国としてやるべき国立大学の在り方はこうであり,公立はこうであり,私学は建学の精神に基づきこういう教育をやっていくべきという書き方で,バランスをとっていただきたいと思います。国立だけが1から8のことをやって,あとは知らないという表現では,先ほどの白井委員が言うようなことにもつながってくると思いますので,この記載について修正していただければと思います。

【樫谷委員】
 白井委員の意見はよくわかりますが,この論点整理は私学を強くするという論点で見ています。撤退を入れるということは辞めろということではなく,強くするということです。つまり,撤退もあり得るので,しっかり経営してくださいという観点から記載しています。私学が強くない限り,幾らお金を投入してもだめです。体質や経営力を強くすることが必要です。これは,国立も本当は撤退があってもいいと思っています。国立の論理の中でも撤退,つまり自主・発展,連携・共同,撤退があってもいいと思いますが,やはり体質を強くしないと幾らお金を入れても無駄です。何をやったって駄目です。今の大学はリスクを感じていないのではないかというところが沢山あって,撤退を入れられたことは非常に高く評価しています。これを入れることによって私学はさらに強くなる,強くならなければいけない。強くなるための手段としてぜひこれを使っていただきたいと思っています。決して,足を引っ張るということではありません。世の中は当然,新しいものを入れたり,古いものはやめていったり,循環があるのは当たり前ですから,その循環をスムーズにするという話ですので,これは決してマイナスにとらえるべきではないと思っています。

【白井委員】
 付け加えさせていただければ,要するに,大学は基本的に,国立大学はこうで,公立大学はこうで,私立大学はこういう立場であると一応役割があります。ありますが相当な部分で同じことをやっています。これは企業でもそうですが,同業種が一方は国からのお金がかなり入って,それで同じことをやっている。郵政民営化と同じですけれども,そういうことがずっと行われています。
 ですから,その競争原理と役割が,どのように整理されているのかということが非常に問題です。同じことをやっていて,一方は授業料がかなり高くて,それを全て学生や親が納めています。そういうことが,本当に正しいことなのかどうか。前から言っていますが,そこのところをしっかりとしたシステムにしないといけないのではないか。もちろん,私学は私学の理念でやっていますから,仮にうまくいかなくて潰れたとしても一向に構わないと思います。それはその人たちの責任だと思います。そこのところは間違えないでいただきたいと思います。
 要するに,全体の日本の高等教育のシステムはどのようにしたらいいのかに関して言うと,今,国立大学に通っている学生と私立大学に通っている学生は,希望してそのどちらかに行っているわけではありません。国立大学に通っている学生は好きで通っているのかもしれませんが,たまたま,入学試験等に合格したことによるものかもしれない。このゆがみは無視できない。ですから,そこをもう少しいいシステムにすることは,幾らでも方法はあると思います。それが実行されないことが問題です。そのことを議論していただきたいと思いますが,どちらかというと現行の私学は駄目だから潰そうという議論では,あまりにもひどいのではないかということを申し上げています。

【樫谷委員】
 現行の私学が駄目だから潰そうということではなく,私学の良いところと悪いところがあって,この悪いところを直して,良いところは強化しようという話が,今回の論定整理だと思っています。

【白井委員】
 もちろん,そういった議論は大学分科会でやっていただいていいと思います。今まで私学のそういう議論はやっていないと思いますから,そういう意味では非常に評価しますが,私学だけ議論してもしょうがないと思います。要するに,例えば,日本の地域における学校群の教育を本当に良くしようとするのだったら,もう私立大学だからとか国立大学だからとか言っていられる状況ではない。そういう自覚を持たなければいけないということを申し上げています。

【小杉委員】
 私は,特にこの論点整理の中で連携・共同に大変関心を持っていまして,学校がどうなるかということではなく,学びたい人がしっかりと学べる機会を保障してほしいということから,ある程度の地域間に,必ず高等教育機関が残る仕組みを考えていただきたいということを主張してきました。
 地域間連携によって,学ぶ機会をしっかりと保証するようなネットワーク化をぜひ図っていただきたいのが,共同・連携に込めた思いです。大学が生き残る,生き残らないということより,日本全体として,国民がどれだけ学ぶ機会をきちんと持てるかどうか,そういう議論をするべきです。
 その延長で,さっき出ていたような寄附の件も,大学が生き残るためというよりは,国民の意思を持ったお金をきちんと流せるような仕組みが非常に大事で,その中の一つだと思います。今ずっと政府ではNPOを中心にやっていますが,ある意味で言えば非営利の社会的目的のための活動という,正に学校法人はその最たるものだと思いますが,そういうところまで含めて,意思を持ったお金をどうやって地域の活性化のために回すかとか,そういう大きな仕組みの中で,税制の話を考えていただきたいと思います。

【有信委員】
 非常に難しい問題だと思います。例えばこの論点整理をどのようにやっていくか,それぞれの手段のところで考え出すと様々な方法があるかもしれませんが,例えばヨーロッパ流で言うと,欧州は最近変わってきていますけれど,ほとんどの国で学生から授業料は取っていません。これは,私立であれ国立であれ全く関係がない。つまり,大学教育は国の責任で行うものであるという共通認識があると想像しています。今,白井委員が言われたような枠組みを考えるのであれば,そういうところをきちんと議論しなければいけません。
 一方で,アメリカはそれぞれ私立と州立があります。当然,私立大学は非常に高い授業料を取りますが,奨学金制度がきちんとしていて,優秀な学生は,ある意味では高い授業料の負担を逃れる道があります。もちろん大学の方針により学生の採用の仕方はそれぞれ違うと聞いていますが,お金がある学生はちゃんと授業料を払うし,寄附もそれぞれ集められるということです。例えば,西海岸だと州立大学のUCバークレーと私立大学のスタンフォードが,ある意味でほとんどの学生の選択の幅で,日本でいう国立を選ぶか私立を選ぶかというような差は,優秀な学生にとってはほとんど関係ない状況になっています。ですから,基本的な設計を考えるときに,アメリカ式に,いわばそれぞれの大学の独自性を生かしながら,州立大学は州立大学としての特定の義務を見ながら考えていくのか,国として人材育成の責任を持つ形で,もう少し国の助成を均等に持っていくような方向にするのかは,多分,人材育成に対する基本的な考え方の違いだと思います。したがって,そこをしっかりと議論しないといけない。例えば,今の寄付税制の問題は非常に重要だと思いますが,これを充実させていくのは多分,アメリカ流の方向でいくことだと理解できますので,それとあわせて,奨学金をどうしていくかとか,そういう手段を考えるという方向に話が進んでいくと思いますが,基本的に人材育成や大学の教育を国としてどう考えるかというスタンドポイントを明確にする必要があると思います。

【水田委員】
 この論点整理で言っている不採算部門が,単に経営上の不採算だけを言っているのであれば,それはまた問題だと思いますが,学問的な意味であれば,それは国立大学がきちんとフォローしていかなくてはいけないという役割を担っていると思います。
 不採算ということを,何をもって言っているのかということだと思いますが,国立大学でも,全然日を浴びない学問の領域はあります。だけどそれを,この領域はもう駄目だからなんてことは絶対言うべきことではありません。それを国立大学でしなさいということであれば,それはするべきだと思います。機能を役割分担するということでは大事になってくるのではないかと思います。
 それからもう一つ,資料2-5に国際的な発信の観点から想定される情報項目例があり,非常に詳しく学生に関する基本的な情報等が書いてあります。この項目は,資料1の大学設置基準等の改正では,そこまでするのか,しないのかということについてお聞きしたい。
 たしか,以前に議論したときに,退学者や留年者の状況がどうなっているかということまで詳しく発信したほうがいいといった意見があったと思いますが,それも全部するのか,この国際の項目だけ詳しくするのかということを教えていただきたいと思います。

【徳永高等教育局長】
 設置基準や学校教育法施行規則として義務付けるものですから,当然限定的です。したがって,ワーキンググループで出したものは対象になっていません。しかし,一方で,国際化に向けて活動する大学については,そういった情報公表を促していくということです。

【川嶋委員】
 白井委員から話しがあった「論点整理」の議論はどなたも異論はないところで,日本としてこれからどう生きていくかというときに,人材育成が非常に重要で,これについては国公私も,白井委員の持論のように同じように教育しているわけですから,同じ土俵にすべきという議論は私学関係者からこれまでもずっと出されていることは承知しています。
 それに加えて,7割近くの大学生が私学で学んでいることを考えれば,国の観点から立てば,当然,しっかりと国として手当てをすることは国全体の人材育成にもつながるということで,それは非常に正論であります。
 一方で財政的な問題と,それから設置者毎による様々な制度上の仕組みの違いがあって,総論ではどなたも反論はないと思いますが,具体的にどう考えを進めていくかは,今後も議論していく必要があると思っています。
 そういう話とは別に,もう少し細かいことを確認したいのですが,論点整理のところで定員超過の指摘があります。これは常々思っているのですが,一方で出口管理を厳しくしなさいということも質の保障ということで言われています。例えば,厳しく出口管理をすると,当然,留年する学生が増えてきて学生実員が増えてきます。それと,定員超過に対して国立はプラス10%,私立はプラス30%でペナルティがかかりますが,このあたりは政策として矛盾しているところではないかと思っています。それが1点。
 もう一点は,機能別分化ということで納得できないわけではありませんが,先ほど水田委員からも話がありました情報公開について,国際化を目指す大学とそうではない大学で,情報公開に濃淡をつけることは,ある意味では,外から見るとダブルスタンダードといった形で,日本の情報公開の在り方が問われるのではないかということが1点。
 それから,もう一点は,これも機能別分化に関連していると言えばそうかもしれませんが,ダブル・ディグリー等の連携については,大学院博士課程や研究に重点を置く大学の取組に期待と説明がありましたが,そうではない大学でも国際化を重視しようという大学は,当然ダブル・ディグリーを考えているし,実際実施している大学があると思いますので,ある種の決め打ち的な表現は,大学分科会としていかがなものかなと感じました。

【徳永高等教育局長】
 定員の超過と言われましたが,基本的には,多くの場合,成績管理を厳しくすることによって在学生が増えるという部分ももちろんありますが,データの上では入学の段階から,明確に入学定員を上回っている場合のほうが,国立大学も含めて多い状況です。そういったところをまず是正していきたいと思っています。

【中西委員】
 先ほどの大学規模・大学経営部会の論点整理についてですが,オールジャパンとして大学をとらえた場合,経営上の問題が大きいということで情報公開するべきという方向に出ていると思いますが,それでは今経営破綻が起きると予想される法人をどれくらい把握しているかも必要になってくると思います。だれが把握するのか,どれくらいあるのか。もしあるとすれば,できるだけ早く対策を立てなくてはいけないことも考えないといけない点だと思います。
 それから,一番ケアすべきところは学生であり,学生には責任はないわけですから,スムーズに他大学に移れるような措置も考えなくてはいけません。
 それからもう一つ。国際化のところですが,外国人教員数という項目があります。これは,今回いただいた資料を見ていて気がつきましたが,普通は外国人教員数を上げればいいと思いますが,問題は教員の質であり,外国人の数が増えたからといって他の留学生がここに来たいと思うかどうかはわからないと思います。そこはもう少し議論してもいいのではないかと思います。

【河村私学部長】
 中西委員からのお尋ねの中で,経営状況についてどれぐらい把握しているのかということですが,大臣所轄つまり大学,短大,高専を持っている法人の財務諸表等は、私学助成を受けていることに伴う届出等を通じて、ほぼすべてのものが文部科学省にございます。また,一定の経営判断指標が3年前に私学事業団で開発されましたので,それでスクリーニングをするということはしております。ある程度の実態は把握し,かなり状況が悪くなっているところがどういうところであるか把握しております。
 さらにこれについてのより踏み込んだ助言や指導,経営者の方々に様々な判断ができるための踏み込んだ相談をしていくべきではないかということが今回のまとめの方向と考えています。

【今榮委員】
 大学教育のグローバルな展開で,先ほどランキングの話が出ましたが,大学全体としての評価のランキングと論文引用数のランキングに非常にギャップがあり,その原因は,トータルで見ると日本の大学はグローバル化の点で,全体としてのランキングが落ちていることを聞いたことがあります。その差がどこにあるか,どうやって解消できるか,それを解決しないと単に外国人の導入だけではないと思います。
 どうやって国際的に我々の研究や教育をインターナショナルにするか,その原因をもう少し掴まないかぎり,なかなかそのギャップが埋まらないのではないか。それが埋まれば,トータルとしてのランキングもまた上がってくると思います。それから,外国からも認められるということになると思いますので,その辺の解析をもう少しやるべきと思います。

【山本委員】
 今の中西委員の意見はもっともで,私どものワーキンググループでは非常に細かなところまでは議論をしていませんが,例えば,ここに挙げられた情報公開の例はあくまで事例ですから,それは各大学の判断でやるべきところが多いと思います。
 そして,大学としてのランキングと個々の専門分野毎の国際的な評価は確かにずれがあるのも事実で,要するに我々のこの目的は,例えばランキングを上げるとか,その専門分野の評価をよくするということは,目的というよりはむしろ手段や結果です。結局,このグローバル社会や知識社会に我々大学がどのように主体的に参画していくかというところにあるのではないかと考えております。ワーキンググループの作業は一応終わりましたが,今後,国際的な大学評価については,さらに具体的かつ総合的な検討が必要ではないかと思っています。

【有信委員】
 大学院の観点からすると,ここで言っている学位プログラムの中身がいま一つ明確でないところがありますが,大学院で特に博士課程の課題が非常に多いという結論になっていますが,学位プログラムのときの学位のクオリフィケーションといいますか,質をきちんとどこかで各大学が保証する必要があります。質保証をするということはどういうことかというと,いわば大学が抱えている育成目標がきちんと達成されているということを大学が確認をしているというところで質が保証されるということだと思います。
 ただし,そうはいっても,これが本当に世界に通用するかということで,具体的に実行する上での国際的な通用性をきちんと確認していくという流れは,その後に出てくるダブル・ディグリーやデュアル・ディグリーという,いわば共通な学位プログラムを形成していく過程で必要な教育の単位数,教育内容,それから学位の審査基準等々が合っていないと共通のダブル・ディグリーになりませんから,そういう中で,それぞれ洗練されていくことだと理解しています。ですから,そういうことを全体として関連性を持たせて進めていけるような議論をしたいと思います。
 それから,社会人については,いまだに何となく社会人を特別扱いしているような気がしますが,一番の問題は,先ほど申し上げましたように,特に理工系においては,博士課程後期に進むべき優秀な前期課程の学生がどんどん就職しているといった現状です。その人達は学位が必要だということで,必ず帰ってきます。特に企業においても,毎年相当数の人達がいわゆる社会人コースで学位を取得しています。
 例えば,東芝の場合だと,昔は年間に学位を取った人を社長が顕彰していました。でも,それでは数が増えてしまうので,最近は各事業部門に,その年に学位を取得した人を顕彰するという方法に変わってきています。これが実はしっかりとした社会人の博士課程の学生として機能していない部分があります。なぜかというと,社会人コースという特別枠にして,しかもパートタイムのような格好で授業をそんなに受けなくても良いみたいなことで扱っています。こういう人達を本来は内数としてきちんと教育して学位を与えるという仕組みにしていけば,かなりの部分が変わると思います。現実に社会から戻ってきているという状況もあると思います。それをさらに促進するような方向に持っていく必要があるような気がします。できるだけ社会人を特別扱いしないような議論の仕方にしていただければと思います。

【木村委員】
 今の有信委員の意見について,私が英国にいたときの経験で言いますと,まさしくかなり前から指摘のような状態になっています。社会人という概念はありません。私が在籍した大学の研究グループは非常に大きなグループで,30人ほどのリサーチ・スチューデントがいて全部ドクターでしたが,一番短い人で社会経験が5年です。あとは7年,8年,9年。そういう人が極端な場合はほとんど会社を辞めて,再びドクターコースへ来て,しかも一度社会に出ていますから,非常に高いインセンティブを持って学位を取得しにきます。取得後,今度は自分でビジネスをやったり,また別の企業に行ったりして,つい最近ゲット・トゥギャザーがありましたが,皆そうそうたる役職になっています。そういう社会になれば,社会人という特別枠を設けなくても,とにかくドクターを取得すればその後の展望が開けるということで,どんどん学生が増えてきます。
 ただ,これは工学関係が主体であり,物理科学になると若干現役の学生が多いのですが,それでも一度社会に出た人が帰ってくるというケースが多い。どうも日本は年齢にこだわり過ぎるので,それで社会人という特別枠をつくらないとうまくいかないという状況があるのではないかと思います。
 それから,ランキングの件ですが,これは数年前にブリティッシュ・カウンシルがGoing Globalという,エジンバラで非常に大きなフォーラムをやったときにこの問題が出ました。英国の大学のそうそうたるところから学長が来ていましたが,彼らは少なくとも表面ではこのランキングは全然相手にしていません。しかし,自分の大学を宣伝するときにこれを使います。先ほど今榮委員が発言されましたが,日本はある意味でものすごく優秀です。ドイツは100人に1人しか入っていないし,フランスはゼロです。研究者の先生方はご存じだと思いますけれども,英語で論文を書くということは,日本語で論文を書くことの10倍位のエフォートが要るわけです。それでこれだけ健闘しているのですから,あまり卑下する必要はない。これはアングロサクソンの1つのメジャーですから,あまりしゃかりきになって考える必要はないのではないか。
 ただ,カテゴリー5とカテゴリー6のところが外国人の教員数であり,6が留学生ですから,これはやはり日本はどうしても古いです。ですから,そう簡単には上がりませんが,分野別に見ると,ここに出ているように,相当日本の大学は善戦していますから,世界的に言うと,そう卑下するものではないのではないかと思っています。

【白井委員】
 機能別分化と情報公開に関連すると思いますが,機能別分化の考え方の中で,どうしても同じ大学でやっていたりするものですから,学部教育の問題と大学院の問題の話がいつも混じってしまうのですが,少し分けて考えていただいたほうがいいのではないかと思います。日本の国力をつくるという観点からいったら,特に大学院で,理工系,人文系,あるいは社会科学系とあると思います。それぞれ事情はもちろん違うと思いますが,どういうイメージで最高のところをつくっていくのか。これは限られると思います。
 それから,小さな大学院はどこかで自由にやるということはそれで結構ですが,それはどこかのネットワークに入るとか,そこに来た学生からするとそういうことが必要だと思います。
 そういうことも含めて,ユニークなものがあっていいと思いますが,現在で言えば国立大学が中心ですが,そういうところの拠点を徹底的に強くする。大学院をしっかりさせるということは機能別分化の中でそういった捉え方をしたほうがいいと思います。研究大学という言い方をしていますが,そこを具体的にどうやってどのぐらいのレベルまで持っていく覚悟なのかということが必要です。
 それから,学部教育に関しては,むしろ地方性,地域性ということを中心にしながらしっかり組み立てるべきだと思うし,社会人教育をこれから我々はどのように取り組んでいくのか。社会人は自分で授業料を払って来るので,非常に多くの人たちが生涯学習という観点から通うにしては,今の授業料をまともに取ったら取り過ぎだと思います。ですから,どのようにしたらそういうものが実現できるのか。もちろん通学距離のような問題もあると思います。eラーニングももっと活用されなければいけないかもしれない。そういう議論があって,社会人教育に関して言えば,できるだけローコストにして,かつ国立と私立の授業料格差があることはとても許される話ではないと思います。
 それから,話が前後しますが,大学院に関して言えば,特にドクターコースの学生が高い授業料を納めるようなことをやっていたら,やはり国力にはなりません。ですから,強い大学院をつくるということには,そういったファンディングの問題があります。専門職大学院の話が少しありました。初めから申し上げていますが,機能別分化から言えば,国立大学は専門職大学院をやる必要がない。職業教育をやるのであれば,それは私立大学でも十分できることです。ですから,そういうところに任せればいい。非常にハンデになっています。
 例えば,国立大学がビジネススクールを非常に少ない人数とかなり安い授業料で実施しています。そういった大学は,ほとんどが国費で賄われています。研究所なら別ですが,本当にビジネススクールとして意味があるのか。それと,私学のビジネススクールは今までたくさんあると思います。もちろん質を上げるという問題はまた別の次元の問題ですが,国立大学で国の資源を投じて社会人が来て,要するにいい稼ぎをしている人が来て,大変安い授業料になっている。そういう国としての価値があればそれもいいと思いますが,本当に国立大学でやるべきことなのか。
 要するに,国費を投じてビジネススクールをやるのかということは,少し何かよくわかりません。補助しても構わないし,国立大学がやってもいいと思うが,私学と全く同じ経営条件でやればいいのではないか。本当に国立がやらなければいけないという考えだったら,私学と全く同じ条件で専門職大学院をやってほしいと思います。これはロースクールも完全にそうなっていて,大なる矛盾を抱えながら我々はやっています。これまで私学は赤字ばかり積み重ねていますので,そういうことが本当に健全かどうか。そういうことをしっかりと決着してほしいと思います。

【金子委員】
 これまでの議論で共通に問題になっているのは,やはり質の保証と質の改善がどこでも色々と問題になっていたと思います。やはりこれを長期的に見れば,日本の高等教育は量的な拡大から質的な改革に転換しつつあるということだと思いますし,白井委員が言われたように,大学院もそうだし,学部教育もそうだし,あるいは社会人の扱いもそうかもしれません。
 そういった観点から見ると,大学院部会で様々な議論をされてきましたが,本日冒頭に可決された教育情報の公表は,ある意味で非常に大きなステップだと思います。やはり質の問題に関して透明性を増すということは,第一に非常に重要なことですから,これを強化することは非常に重要なステップだったと思います。当然経営あるいは組織上非常に重要ですし,あるいは教育についても重要だと思います。
 ただ,教育については,やはり情報公開の内容を見てみますと,どちらかというとインプットと目的であり,どういう内容でどういう成果を上げているというか,プロセスとアウトカムの部分が非常に重要な課題として残っていて,世界各国は,今,非常にここのところをやろうとしているわけであり,OECDでも問題としているところだと思います。
 これはこれで重要だったのですが,問題はこの次にどういった課題があるのかということです。今,お話しされていた色々な具体的な論点もありますが,私は大学教育の内容をどのように評価し,それをどのように改善するメカニズムをつくっていくのかというところが非常に重要だと思います。
 その際に基本となるのは,やはり大学自身がもう少し内容にわたって自己評価し,改善するメカニズムをつくっていくことだと思います。自己評価はちょうど20年前位に言われたわけですが,それはかなり形式的であり,必要なのは,どういった教育をしているかということをきちんと捉えて,それを改善に結びつけていくことだと思いますが,その点では自己評価でもわかったことですけれども,個々の大学がやっているだけではだめです。第三者機関がそういったプロセスをリードしていくというか,刺激を与えていることは非常に重要だと思います。
 そういう意味で,他にも色々な要素があるかもしれませんが,そういったメカニズムをつくっていくことが,前向きに考えればこれから非常に重要な課題になってくるのではないかと思います。

【江上委員】
 私も大学規模・大学経営部会の一員として議論してきましたので,申し上げたいと思います。
 1つは,大学規模・大学経営部会は限られたミッションの経営の健全体ということと,学生にとって不利益はこうむらないということを中心に議論を進めてきました。ですから,この論点整理はそれをきちんとした形でまとめたものですが,ただ,このまとめを拝見すると,自立・発展,連携・共同と撤退ということが等価に書かれている印象があって,私学全体の今の経営的な状況の構造はどうなっているのか。普通産業界で考えるときはマーケットの構造を全部データで分析して,どのくらいの層がどういう量でどこにプロットされているのかを見るわけです。撤退に該当する大学は少数だと思いますが,これを見たとき,一般の自立・発展のグループに属する大学からかなり反発があるのではないかという気もします。先ほど白井委員が言われた国公私を含めて全体の議論をどうするのかという青写真が示されていないというところもあるかと思います。また連携・共同,撤退を進めていけば,自立・発展のグループに属する大学にもいろいろ位置変化が起こると思いますので,全体図がどうなるかということを少し情報として補うものが必要なのではないかと思います。
 それから,今,白井委員が言われたビジネススクールもそうですが,そういうことに代表されるように,大学行財政部会の資料2-2の論点例に国立大学の役割が書かれていますが,そういう意味では,やはり私立大学で教育研究をより強化する分野,それから国立が本当に力を入れるべき分野,公費を負担して何をすべきか。そこのところがまだまだ現実は曖昧なのではないかと思います。そこを整理することによって,今回の私学の健全な発展に向けた方策の充実というプランが生きてくるのではないかと思いました。

【中西委員】
 大学院について,先ほど有信委員が言われたように,博士課程が一番問題で,最近あまり学生が行かなくなったということですが,その原因として産官学の連携によるキャリアパスがよく言われます。
 個人的には,高度な知識を持った人はこれからの世の中で非常に大切で,ありとあらゆる階層にそういう人たちが入っていき,日本の背骨をつくってほしいと思います。日本は人材が資源ですから,単に大企業だけでなく,中小企業でもいいですし公務員になってもいい。一次産業に行っても,ありとあらゆる階層に高度な人が入ってほしいと思いますが,それは理系の場合であり,もっと議論が必要だと思うのは人文社会系です。資料では博士課程の入学者が3人未満の専攻があるとか記載がありますが,自然科学系に比べれば就職は厳しいと思います。キャリアパスをどのように考えるのか,この人文社会学系の人達もものすごく知識を集積した人達ですので,こういう人たちのキャリアパスや役割をもう1回きちんと考えていくべきだと思いました。

【森脇委員】
 各委員の意見と特に大きな違いはありませんが,大学規模・大学経営部会で私学の健全発展を取り上げていただいているのは日本で初めてだと思いますので,期待しているところです。あわせて大学における社会人の受入れの促進について,先ほど意見も出ていましたが,これも多分初めてではないかと思います。
 これについて,具体的に踏み込んだ形で大学の機能別分化や国公私立の役割といった視点を持って,ぜひ議論をお願いしたいと思います。例えば,ここに書かれている教員の問題,大学の持つ教育プログラム,社会人学生の経済的な負担の問題についても,制度的な問題にしろ,個々の大学の取組の問題にしろ,本気で日本の発展のために貢献するような形で推進していくのには,様々な課題があると思います。
 あわせまして,産学連携も相当踏み込んだ形で,今までにない形でやらないと実現しないように思いますので,今後の課題ということかもしれませんが,期待したいところですので,よろしくお願いします。

【安西分科会長】
 ありがとうございました。
 社会人の問題については,個人的な見解ですが,大学関係者の中だけで議論をしていてもなかなか難しく,もっと広い社会構造の問題だと思います。
 大学分科会の委員には,大学所属でない委員が何人もいますが,ぜひご意見をいただければと思っていますし,特に経済界とのコミュニケーションは非常に大事だと思います。
 本日は,特に国私間の問題が出ており,あまりストレートに申し上げてもどうかと思いますが,国立大学関係者の私学に対する理解といいますか,私学は実際に一体何をやっているのかといったギャップもやはりあるように思いますし,逆に私立大学側から見たときに国立大学は一体何をやっているのかということの理解のギャップもあるように思います。やはり,それを超えてこの大学分科会は議論をしていただきたいと思っていますので,その点はぜひご理解くださいますようにお願い申し上げます。
 どうしても国立大学関係の方は国立大学を念頭に置いているように思いますし,私学関係の方も逆に言えばそうだと思います。大学規模・大学経営部会の論点整理は,やはり私学の定員割れが相当ある中での危機的状況ということがあり,そのことをどうしたらいいのかということについて,端的にここで議論していかなければいけないということから出てきていると思います。そのことは先ほど白井委員が最初に言われましたけれども,白井委員の言われたことも含めて,やはりここできちんと議論していただきたいと考えています。
 本日は大変重要なご意見を多々いただきました。一応ここまでにさせていただきたいと思います。
 各部会やワーキンググループの審議状況については,いろいろ多岐にわたっていますので,時々取りまとめながら審議をしていくのがいいのではないかと思っています。次回の大学分科会については,その方向にさせていただければと思っています。

 

(3)文部科学省から,国際連合大学の教育プログラム開設に伴う必要な対応について説明があった。

 

(4) 今後の日程について,事務局より資料4の説明があった。

 

― 了 ―

 

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-- 登録:平成22年07月 --