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3.評議員機能の強化について
    1 評議員制度の概要等
    (評議員制度の概要)
       評議員会は学校法人に必ず置かなければならない合議制の機関であり,学校法人の運営に関する重要事項についての諮問機関である。
   評議員会は,理事定数の2倍を超える数の評議員をもって組織することとされている。
   このような制度としたのは,学校法人の公共性を高めるためであり,仮に全理事が評議員を兼任した場合であっても,評議員会が理事会とは別の第三者による合議制の機関として有効に機能し得るように配慮したためとされている。
     
    (評議員会の職務)
       評議員会は,学校法人の業務の状況,財産の状況又は役員の業務執行の状況について,役員に対して意見を述べ,役員の諮問に答え,又は役員から報告を徴することができることとされている。
   理事会は,諮問機関たる評議員会の意志に法的に拘束されるものではない。(寄附行為によって評議員会の議決を要するものと定められている場合は除く。)
   理事長が必ず事前に評議員会の意見を聞かなければならない事項としては,1予算,借入金(当該会計年度内の収入をもって償還する一時の借入金を除く。)及び重要な資産の処分に関する事項,2寄附行為の変更,3合併,4理事3分の2以上の同意による解散(評議員会の議決を要する場合を除く。)及び目的たる事業の成功の不能による解散,5収益を目的とする事業に関する重要事項,6その他学校法人の業務に関する重要事項で寄附行為をもって定めるものがあり,このほか事後的に報告し意見を求めるべき事項として,7決算がある。これらのうち1から6の事項については,寄附行為の定めにより評議員会の議決を要するものとすることができる。
   また,監事は,監査の結果不整の点があることを発見したときは,評議員会に報告することとされている。
     
    (評議員の選任等)
       評議員会については,1当該学校法人の職員のうちから,寄附行為の定めるところにより選任された者,2当該学校法人の設置する私立学校を卒業した者で年齢25年以上のもののうちから寄附行為の定めるところにより選任された者(該当する卒業生が存在しない場合は不要),3その他寄附行為の定めるところにより選任された者(学識経験者などが選任されている例が多い)によって構成するものとされているが,その構成割合や選考・任命手続,任命権者については各学校法人に委ねられている。
   なお,評議員は,理事・監事と異なり私立学校法上役員とされておらず,同族規制などが適用されていない。
     
  2 評議員機能の強化に当たっての基本的考え方
       学校法人が機動的かつ安定的に運営を行っていくためには,理事,監事,評議員それぞれが適切な役割分担の下,協力して運営に参画することが重要である。
   このため,学校法人の機動的な意思決定と公共性の確保を適正なバランスの下で実現する観点から,評議員会の学校法人運営への関与の在り方等を再整理する必要がある。
     
  3 具体的改善方策
   
   評議員会は,学校法人の業務に関する重要事項について理事会に対し意見を述べる諮問機関としての位置付けであることが原則であり,評議員会の議決が必要な場合であっても,学校法人としての最終的な責任及び権限は理事会にあることを明らかにする必要がある。
   評議員会における検討に資するよう,理事長等から評議員会への事業報告や監事から評議員会への監査報告を行うことが重要である。
   多様な意見を採り入れる観点から,実態として評議員のすべてが学校法人の役員及び教職員という事態が生じることのないよう,一定数以上の外部の人材が選任されるようにすることが必要である。

    (評議員会の位置付けの明確化等)
           評議員会については,寄附行為の定めをもって学校法人の運営に関する重要事項について評議員会の議決を要するものとすることができるため,理事会と評議員会との関係について十分に整理されていない点があったと考えられる。このため,今回,理事会と評議員会の関係について改めて整理しておくことが必要である。
   理事会は学校法人の業務に関する最終的な決定機関であり,これにかんがみれば,評議員会は,学校法人の運営が適正に行われるようにする観点から,法人の業務の決定に際し理事会に対し意見を述べるという諮問機関としての位置付けであることを明確にすべきである。具体的には,法人の運営方針や事業計画,法令上の諮問事項である予算,寄附行為の変更,合併等法人の業務に関する重要事項について理事会が最終決定するに当たり,それが妥当なもので,関係者の理解を得られるものか否かを確認する場として評議員会を位置付けることが適当である。
   なお,寄附行為の定めにより評議員会の議決を要するとされている場合についてもこの考え方に反するものではなく,学校法人の業務に関する最終的な責任と権限を有する機関は理事会であることが原則であり,評議員会は諮問機関であるという基本的在り方を踏まえた上での個々の大学の独自性による運用の問題として整理することができる。すなわち,理事会が法人の業務について最終決定するに当たり,その確認の方式として評議員会の同意の議決を得ることを必要とするか否かについて,各法人の判断にゆだねることができるようにしたものと整理することが適当である。
     
    (評議員会の充実,円滑化等)
       評議員会において理事会の方針の妥当性について正確に判断してもらうためには,これらの方針が法人全体の事業運営上どのような意味合いを持つのか正しく認識した上で判断してもらうことが必要であり,例えば理事長等から評議員会へ事業計画を報告することとするなどの措置を講ずる必要がある。
   さらに,監事の監査の状況をチェックする観点に加え,評議員会における判断に必要な情報を提供する観点からも,監事が監査の状況について評議員会に報告するようにすることが必要である(再掲)。
   また,学校法人としての意思決定が機動的に行えるようにするためには,評議員会を円滑に開催するための仕組みも重要である。このため,例えば議題ごとの委任や書面による表決が可能であることを明確化することが適当である。
     
    (評議員会の構成の多様化等)
       学校法人の公共性を高めるとともに,学校法人の運営に多様な意見を反映させていくためには,教育関係者以外の幅広い分野からの人材登用を図るなど,より外部性を高め,構成の多様化・適正化を図ることが必要である。
   現在は三つの選任基準が設けられているが,実態として評議員のすべてが学校法人の職員であるという事態も生じ得ることから,必ず外部の者が任命されるようにすることが必要である。このため,例えば法人の役員及び教職員の合計は評議員総数の一定の割合以内(3分の2以内など)とする等の措置が考えられる。
   また,評議員については,役員のように同族制限が設けられていないが,多様な立場からの意見を得られるようにする観点から,例えば同族については評議員総数の3分の1以内とするなどの措置を講ずることが必要である。


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