ここからサイトの主なメニューです


中華人民共和国21世紀に向けた教育振興行動計画の概要

中華人民共和国「21世紀に向けた教育振興行動計画」
(1998年12月24日 教育部制定,1999年1月13日 国務院承認)
(1) 計画制定の経緯
  教育改革の党・政府指針(1993年)および教育法(1995年)に基づき,教育部が21世紀初頭までの具体的な教育政策の目標と措置を提示する「教育改革及び発展のための総合プロジェクト」として制定した。
(2) 計画の目標
  具体的には,基礎教育の普及と質向上,高等教育の教育研究の水準向上と経済発展への貢献促進,遠隔教育の発展等を通じた農村部や成人の教育機会拡充,教育投資の確実な拡大等を目標としている。
2000年までの目標
  9年制義務教育の全国実施及び青壮年の非識字解消の達成,職業教育・訓練及び継続教育制度の完成,高等教育の安定的発展(大学院・成人教育含む在学率11%,1997年約7%),高水準で創造能力を持つ人材の育成,高等教育機関ハイテク産業の新たな経済成長拠点化。
2010年までの目標
  高級中学段階の教育普及,高等教育在学率15%,一部大学・専攻領域の世界的水準への向上,生涯学習体系の基本的確立。
(3) 主な政策措置
1 21世紀資質教育プロジェクト
  資質教育(受験偏重教育を克服。子どもの資質の全面的伸長教育)推進のため,2000年には基礎教育課程の基準素案作成,10年後に実施。
2 21世紀園丁プロジェクト(教員資質向上)
  3年以内に小学校,初級・高級中学教員及び校長全員の研修実施,教員の学歴向上,中堅教員の研修の重点的実施。
3 高度・創造的人材プロジェクト
  特別契約教授(民間資金による好待遇ポスト)の設置,優秀な若手研究者100人/年の支援,優秀な博士論文100編/年の選定・奨励。
4 現代遠隔教育プロジェクト
  中国教育科学研究ネットワーク,衛星テレビ教育の拡大,インターネット大学の普及などによる継続教育制度の確立。
5 教育投資の確実な増加
  公財政支出教育費の対GNP比4%達成への努力,中央政府支出総額に占める教育支出の比率を2000年にまで3%ポイント引き上げ(1997年6.2%)。

21世紀に向けた教育振興行動計画(要約)  (抜粋)

  中国共産党第15回全国代表大会は,21世紀に向けた社会主義現代化建設の偉大な目標と任務を提起し,科学技術と教育による国家振興戦略の実行について全面的な政策措置を打ち出した。この党大会が確定した目標と任務を実現し,科学技術と教育による国家振興戦略を実行に移し,教育の改革と発展を全面的に推進し,全民族の資質と創造能力を高めるために,ここに本行動計画を制定する。
  改革開放及び現代化建設の新時代において,ケ小平同志は社会主義現代化の実現には科学技術は鍵であり,教育は基礎であることを繰り返し強調した。また,世紀の変わり目である重要な時期において,江沢民同志は「今日の世界は,情報技術を主たる指標とする科学技術が日進月歩で進歩し,現実の生産力への高度な科学技術成果の転化がますます速くなり,新たに出現した知識経済が人類の経済社会生活に新しい巨大な変化をもたらそうとしている」ことを意義深く指摘した。21世紀は,国家の総合的な国力及び国際競争力がいよいよもって教育の発展,科学技術及び知識創造の水準により決定されること,教育は一貫して優先的に発展させる戦略的地位に置かれることになろう。
  党の第11期中央委員会第3回総会以来,我が国の教育事業はめざましい成果を収め,21世紀における教育事業振興にしっかりした基礎を固めた。しかし,我が国の教育発展水準及び人材養成モデルはなお現代化建設の需要に対応できていない。このため,教育事業を振興することは,社会主義現代化の目標及び中華民族の偉大なる復興を実現することにとり客観的にみて必要なことである。我々はケ小平理論の偉大な旗印を高く掲げ,ケ小平同志の「教育は現代化に目を向け,世界に目を向け,未来に目を向けなければならない」という言葉に関する戦略指導方針を真剣に守り,機会を逃さず,改革を深め,鋭意進取の気概を持ち,溌剌たる活力に充ちた中国の教育を21世紀に押し出していかなければならない。「21世紀に向けた教育振興行動計画」は「教育法」及び「中国の教育の改革及び発展についての要綱」を貫徹実行することを前提として提起した,21世紀に向けた教育の改革及び発展の青写真であり,全面的に計画を立て,重点を突出させ,要点をつかみ,その実現を重視しなければならない。
  行動計画の目標は次のとおりである。
  2000年までに,全国で9年制義務教育を基本的に普及させ,青壮年における非識字を基本的に解消し,資質教育(訳注:受験偏重教育の克服,徳・知・体の全面にわたる子どもの資質を伸長させようとする教育)を大いに推進する。職業教育・訓練及び継続教育制度を完成させ,都市・農村の新規労働力及び在職者が広く各種各レベル及び多様な形態による教育訓練が受けられるようにする。高等教育を積極的かつ安定的に発展させ,高等教育在学率(訳注:大学院・成人高等教育を含む。分母は在学該当年齢人口=18−22歳)が11%程度に達するようにする。国家創造体系構築という目標に向けて,高水準で創造能力を持つ一群の人材を養成する。科学研究を強化し,高等教育機関のハイテク産業を経済の新しい成長拠点育成に貢献させる。改革を深め,教育新体制の基本的な枠組みを確立し,経済社会の発展に積極的に対応するようにする。
  2010年までに,9年制義務教育の普及及び青壮年における非識字解消を基本的に達成した後を受けて,都市部及び経済は発展している地域において次第に高級中学段階の教育を普及させ,全国民の教育年数を発展途上国における先進的水準に引き上げる。高等教育の規模をさらにやや拡大して在学率を15%に接近させ,若干の高等教育機関及び一部の重点専攻領域を世界一流の水準に引き上げるか又は接近させる。生涯学習体系を基本的に確立し,国家の知識創造体系及び現代化建設のために十分な人的支援及び知的貢献を行う。

一.「21世紀資質教育プロジェクト」の実施(国民の資質の向上)
1.   2000年に計画通り9年制義務教育の基本的普及,青壮年の非識字の基本的解消という目標を達成することは,全国教育政策の「重点中の重点」である。この取組は既に胸突き八丁の段階を迎えており,全国的目標の実現を確実にしなければならない。党第15期の期間(1997-2002年)では「国家貧困地区義務教育プロジェクト」(訳注:貧困地区義務教育実施に対する国・地方の補助金交付事業。1996年開始,当初2000年まで予定)を引き続き実施し,山岳地域,放牧地域及び辺境地域を重点とする。
  視学による教育の監督指導を一層強化し,視学機構を健全化し,視学制度を完全なものとし,9年制義務教育の普及と青壮年の非識字解消の「基本的達成」への取組の質及び資質教育の順調な進展を保証する。
2.   「21世紀資質教育プロジェクト」を実施する。資質教育を総合的に実施し,国民の資質及び民族の創造力を全面的に向上させる。2000年には基礎教育課程の枠組み及び基準の素案を作成し,教育の内容・方法を改革し,新しい成績評価制度を推進し,教員の研修を展開し,新課程の実験を開始する。10年前後の実験を経て,21世紀基礎教育課程の教科書体系を全国に普及させる。
3〜7(略)

二.「21世紀園丁プロジェクト」の実施(教員の資質の大いなる向上)
8.   教員全体の資質を大いに高め,特に教員の職業道徳向上を強化しなければならない。3年以内に現職の小学校・初級高級中学の校長及び本務教員全員に対し研修及び継続教育を実施し,小学校・初級高級中学の校長の職務研修と研修修了証を校長の就任要件とする校長資格制度を定着,完成させる。小学校・初級高級中学教員の継続教育における教材の整備を強化する。2010年前後には,条件を備えた地域では小学校及び初級中学本務教員の学歴を高等教育専科(訳注:短期2-3年)及び本科(学部)卒業レベルに引き上げ(訳注:現行資格は,中等師範学校卒及び専科師範学校卒),経済発展地域では高級中学本務教員及び校長における修士学位取得者の比率を一定レベルに高めていく。師範教育を改革・強化し,新教員養成の質を向上させなければならない。比較的高い実力を持つ高等教育機関は教員の養成研修に貢献しなければならない。
9.   小学校・初級高級中学の中堅教員の資質向上を重点的に強化。1999-2000年に小学校・初級高級中学及び職業学校の中堅教員10万人に研修を受けさせ,所属学校での教育内容方法の改革実験,巡回講義,研修セミナー,他校教員の研修受入れ等を展開させる。これにより,他の教員に対する指導及び優れた教育の普及の役割を中堅教員に発揮させる。
10.   教員及び他の職員の契約任期制を実施し,成績審査,競争による職務担当を強化する。2000年前後には,教職員1人あたり児童生徒数の改善,一部部署における余剰人員の配置換え等を通じ,小学校・初級高級中学教員の資質を改善する。これと同時に,教員資格を持つ優秀な非師範学校卒業者(訳注:現行では師範系以外の大卒者も有資格者)を社会から小学校・初級高級中学に招聘し,教員の構成を改善する。(以下略)

.「高度・創造的人材プロジェクト」の実施(高等教育機関の科学研究活動の強化,国家創造体系構築への積極的参加)
11.   高等教育機関は,国際的な学術発展の最先端を追い,知識創造と高度で創造的な人材の養成基地とならなければならない。高度で創造的な人材の団結,協力及び奉仕の精神を養うことを重視しなければならない。各専攻領域を指導して国際的に先進の水準に到達させることができる優秀な学術指導者を国内外から招く。「一つの専攻を選び,一人を招聘する」ことを原則として,国家は重点的な資金援助を行う。
12.   1998年から,全国の重点専攻領域(重点学科)(訳注:重点投資のための国及び地方指定の高等教育機関の専攻領域又は専攻)で,特別契約教授のポストを設置し,特に優秀な青壮年研究者を国内外で公募,契約により任用する(訳注:民間資金の基金を財源に好待遇で任用。すでに開始)。
13〜16(略)

四.「211プロジェクト」の継続かつ早い進行(高等教育機関の知識創造能力の向上)
17.   1995年に開始した「211プロジェクト」(訳注:21世紀に向け100校程度の高等教育機関及び重点専攻領域の教育研究水準を飛躍的に高めるための重点投資計画。当初2000年まで)は,我が国の創造的な人材養成及び国家創造体系構築のために重要な基礎を固めた。2000年までの「211プロジェクト」第1期計画を着実に完成させるよう保障し,これを踏まえて第2期計画を開始し,主としてすでに策定した重点専攻領域の整備強化に資金投入しなければならない。資金投入項目の管理を強化し,資金投入効果を高める。

五.世界先進水準の一流大学及び一流専攻領域の創建
18.19(略)

六.「現代遠隔教育プロジェクト」の実施(開放型の教育ネットワークの形成,生涯学習体系の構築)
20.   プロジェクトを実施するに当たって,現有の優れた教育資源を有効に使用することは,我が国の教育資源が不足している現状においては教育を発展させる戦略的措置であり,重要な基盤施設として大いに整備に力を入れなければならない。
21.   現在の中国教育科学研究ネットワーク(CERNET)(訳注:1993年開始のインターネット利用の教育研究ネットワーク。清華大学を中心に全国の大学,一部中等学校を接続)のモデルネットワーク及び衛星放送システムを基礎として,中国教育科学研究ネットワークの情報提供量及びネットワーク規模をさらに拡大する。全国大学生のコンピュータネットによる選抜,コンピュータ学籍管理,卒業者の就職情報サービスを一体化した情報システムを整備する。
22.   衛星テレビ教育が現代遠隔教育において果たしている役割を引き続き発揮させ,現在のラジオ・テレビ教育(訳注:地上波)の放送網を改修し,ネットワークセンターを整備するとともに,中国教育科学研究ネットワークと高速接続を進め,一部遠隔教育センターとの接続を進める。2000年までに,全国農村部の絶対多数の小学校・初級高級中学が教育テレビの番組を視聴できるようにする。優秀な教員及び現代的な教育手段を活用して教育テレビ番組を作製し,辺境,島嶼部,山岳地帯,林業牧畜地域等の教育需要を重点的に満足させる。
23〜25(略)

.「高等教育機関ハイテク産業化プロジェクト」の実施(国家のハイテク産業発展の牽引役,経済の新たな成長拠点の育成貢献)
26〜29(略)

.「高等教育法」の徹底した実施(高等教育の積極的かつ安定的発展,高等教育改革の加速的な足取り,教育の質及び運営効率の向上)
30〜35(略)

.職業教育及び成人教育の積極的発展(資質の高い労働者及び初級・中級人材の多数養成,特に,教育の農業及び農村事業に対する貢献度を向上)
36〜38(略)

十.管理運営体制改革の深化,社会各方面の教育事業発展に対する積極性の動員
39〜41(略)

十一.法に従い教育費の「3つの増加」の保障,教育への有効な投資の確実な増加
42.   科学技術と教育による国家振興戦略の実行には,教育投資が消費的投資であるという観念を変え,教育の発展を基礎施設建設,基礎的投資とみなし,あらゆる手段を講じて教育投資を増加させなければならない。各レベル政府の財政は既に制定した教育費調達のための法律及び政策を真剣に実施し,特に「教育法」が規定した教育費の「3つの増加」(各レベル政府の教育財政支出増加が同レベルの財政経常収入増加を上回る,学生生徒1人当たり教育費を徐々に増加,教職員及び学生生徒1人当たり事務経費を徐々に増加)の実施を保障しなければならない。「教育法」及び「中国の教育の改革及び発展についての要綱」の規定に基づき,公財政支出教育費国民総生産に占める比率を4%にするという目標の達成に努力しなければならない。
  中央政府及び省レベル政府の財政支出における教育支出の占める割合を徐々に高めていく。1998年から,中央政府は同費目財政支出を毎年1%ずつ引き上げていき,2000年にはこの比率を3%ポイントに高める。各省・自治区・直轄市の財政支出に占める教育費の割合も,各地の実状に合わせて毎年1〜2%ポイント増加させる。
  財政部「教育科学技術予算の配分確保及び教員給与の定期支給保障を一層確実にすることに関する通知」の国務院による承認・転送通知(国弁発[1998]23号)を真剣に実行し,1998年から各レベル政府の収入超過分及び財政予算外収入は,年頭に確定した教育費が財政支出総額に占める比率を下回らない配分率で教育に使用すべきである。
  都市,農村における教育税(原語・教育費附加)(訳注:1980年代半ばから全国で徴収。都市部では特定税目の納税額に一定の比率を付加し教育分として徴収。農村では農民1人当たりの収入に一定比率を課税)の徴収・管理を強化し,規定通りの徴収と教育行政部門,経済・財政行政部門による統一的な配分使用を確保する。勤工倹学(訳注:学校が労働教育の一環として行う生徒の生産活動収益を学校収入として教育に使用)及び学校経営企業の発展を積極的に支持し,税制上の優遇措置を継続する。
  中国幼稚園,小学校・初級高級中学教師奨励基金会(訳注:1986年設立の優秀教員表彰・奨励のための基金管理組織)の基礎のうえに,中華教育発展基金会を設立し,多様な財源を通じて教育費を調達する。
43〜45(略)

二.ケ小平理論の偉大な旗印の高掲,高等教育機関における党組織の整備と思想政治活動の強化,高等教育機関を社会主義精神文明建設の重要拠点
46〜50(略)

ページの先頭へ