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大学教育部会(第2回)議事録・配付資料

1. 日時
  平成18年3月16日(木曜日) 10時〜12時30分

2. 場所
  三田共用会議所 第4特別会議室(4階)

3. 議題
 
(1) 意欲ある学生を社会に送り出すための各種の支援方策について
 
【意見発表】 菅井邦明氏(東北大学理事)
  岩井方男氏(早稲田大学学生部長)
  宮川博光氏(千葉工業大学学生部長)
【自由討議】  
(2) その他

4. 配付資料
 
資料1   第3期中央教育審議会大学分科会大学教育部会(第1回)議事要旨(案)
資料2   大学教育部会での検討課題に関する主な意見等
資料3−1   東北大学の学生支援の現状と今後(東北大学理事 菅井邦明氏)(PDF:445KB)
資料3−2   ユニバーシティ・ハウス三条
資料4   早稲田大学における学生支援(早稲田大学学生部長 岩井方男氏)
資料5   千葉工業大学キャリア形成支援プログラム(事例)(千葉工業大学学生部長 宮川博光氏)
資料6   大学における学生支援の取組状況について(PDF:177KB)
資料7   大学分科会関係の今後の日程について

(参考資料)
参考資料   最近の高等教育に関する新聞記事

(机上資料)
大学教育部会関係基礎資料集
高等教育関係基礎資料集
我が国の高等教育の将来像(答申)
新時代の大学院教育(答申)
経営困難な学校法人への対応方針について
教員分野に係る大学等の設置又は収容定員増に関する抑制方針の取扱いについて(報告)
大学の教員組織の在り方について(審議のまとめ)
大学の設置認可制度に関するQ&A(平成17年度)
大学設置審査要覧(平成17年改訂)
文部科学統計要覧(平成18年版)
教育指標の国際比較(平成17年版)
大学審議会全28答申・報告集
中央教育審議会 答申
  「大学等における社会人受入れの推進方策について」「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」「大学院における高度専門職業人養成について」「法科大学院の設置基準等について」「新たな留学生政策の展開について」「薬学教育の改善・充実について」「新しい時代における教養教育の在り方について」

5. 出席者
 
(委員) 鳥居泰彦(会長),木村孟(部会長),江上節子(副部会長)の各委員
(臨時委員) 天野郁夫,黒田壽二,菰田義憲,中込三郎,菱沼典子,森脇道子の各臨時委員
(専門委員) 北原保雄,黒田薫,高塚人志,竹内洋,土井真一,平野眞一,本田由紀の各専門委員
(文部科学省) 中岡大学振興課長,村田学生支援課長,安藤私学部参事官 他

6. 議事
  (□:意見発表者,○:委員,●:事務局)

 
(1) 意欲ある学生を社会に送り出すための各種の支援方策について,有識者から意見発表があり,その後に質疑応答が行われた。意見発表と質疑応答の内容は以下のとおりである。

  【菅井邦明氏(東北大学理事)の意見】
   東北大学は現在5キャンパスあるが,移転計画が進行中であり,最終的には3キャンパスに統合予定である。キャンパス配置は学生支援に影響を及ぼすと考えている。
 現在,女子学生数は約4,000人で全学生数の22パーセント,留学生は約1,200人で全学生数の7パーセントである。女子学生・留学生の増加も学生支援方策に影響を及ぼすと考えている。
 東北大学では,法人化前の平成15年4月に全学から教職員を集め,「教育条件・教育環境構想プロジェクト」を発足させた。このプロジェクトのもとに,6つのワーキング・グループを置き検討を重ねてきた。ワーキング・グループで取りまとめられた報告書と文部科学省が出している各種指針をもとに学生支援方策の改善を実施している。また,報告書を踏まえ,平成16年10月には「高等教育開発推進センター」を設置した。従来は「大学教育センター」として教養教育に主眼をおいた組織であったが,改組により入口から出口まで,学部学生から大学院生までを通した支援が可能になった。このセンターの目的は,1全学の高等教育のシンクタンクであること,2教育と学生支援の整理統合,である。これほどの規模の大学になると,学部の自治が強く,また,キャンパスが偏在しているため,全体を統括する組織が必要とされるとともに,利用者の視点に立って組織を整理する必要があった。平成18年4月にはさらに「キャリア支援センター」を設置予定である。
 東北大学の学生支援の考え方は,1一部学生への支援から全学生のスペシャル・ニーズへの支援,2相談内容・施設等の総合化・一本化された支援,3見える支援,4心身全体の健康の支援,5予防的支援,6支援・相談人材の専門性の確保,7国際的大学としての相談体制と支援,8安全・安心・公平な大学環境の8つを柱としている。
 学生相談の現状としては,近年相談件数が増えており,事案が複雑であることを裏付けている。また,平成16年度には,自殺者が増えたため全学として緊急に対策をとった結果,平成17年度には改善が見られた。また,最近では,対人関係やハラスメント関係の相談が増加している。キャンパスが偏在しているため,相談員が孤立しないよう,全学的なネットワークを構築する必要性があることから,学生支援全学連携・連絡会等を設置している。
 就職支援の現状について,相談者数は増加している。特に,理系学部や大学院学生の相談が増加している。これまで,理系学部の学生の就職は研究室と企業とのつながりによって決定していたケースが多かったが,最近はそれが少なくなっており,そのため相談が増えている。課題としてはライフデザイン・キャリア教育の必要性が挙げられる。
 課外活動の現状は,施設が市内外に点在しており,また,老朽化が進んでいることから,アメリカ等の大学と比べると施設が貧弱である。新キャンパス移転を契機に施設整備が可能か検討中である。
 学生寄宿舎については,現在,市内の3つの地区に6つの学生寮を設置おり,うち1つが女子寮である。施設の老朽化が問題であるが,PFI(Private Finance Initiative)により民間資金を導入し,新寮を現在建設中である。
 学生支援の課題としては,1教育・支援システムをどのように構築するか,2管理運営に関して,教員の仕事が多様化し,かつ多忙となっていることから,研究・教育に充てる時間をどのように確保するか,3学生への経済的支援を含めた財政的な課題をどのように解決するか,である。1については,全ての学生のスペシャル・ニーズに応えるためには,アカデミック・プログラムをシステム化しないと対応できないと考えており,現在検討中である。2については,研究・教育と学生支援システムの双方を確実に実行するためにも,双方を切り離した形で多様なニーズに対応するとともに,教員の時間の確保を図れるよう検討中である。
 今後の展望については,大学評価,特に自己評価による部局の改善と発展が挙げられる。学生支援についての項目も評価対象となっており,評価を積み重ねていく上で,学生支援方策もより改善されていくのではないかと考えている。

  【岩井方男氏(早稲田大学学生部長)の意見】
   多くの学生は卒業後,社会で活躍することを望んでいる。このことを踏まえると,大学の社会的使命は高度の研究と教育の充実であるが,学部教育は,学生が社会に飛び立つための助走路として位置づけざるを得ない。しかし,このことは社会に迎合するということではない。大学が優れた教育を施した学生を社会に送り出すことは,大学が果たすべき社会貢献である。
 年長者が若者に対して教えなければならないものの1つに「社会性」つまり「自分が他者と共に生きているという認識」がある。優れた社会性を有した学生を育成するため,大学内では学生支援関連箇所が一致協力しなければならないと考えている。
 学生に対する「教育」とは教室内における教育にとどまらず,また「学生支援」も教室外での支援に限らない。大学が学生に提供するものは,全て教育であり支援である。教育を担当するのは教務部,学生支援を担当するのは学生部という従来型の分類には,実態にそぐわない部分が出てきている。早稲田大学学生部及び学生支援関連箇所では,「学生支援の全てが教育の一環である」との認識のもとに業務を行っている。
 課外活動に関しては,きわめて盛んである。課外活動の主体は学生であり,学生の独立心や指導性を育成するには絶好の場である。教職員にとっては大きな負担となるが,課外活動ごとに会計監査をした上で補助金を交付している。また,優秀な活動を表彰することにより,課外活動の振興を図っている。
 学生に対する経済的支援としては,奨学金が単なる金銭の授受ではなく,それを媒介とした人と人とのつながりであることを認識させるため,学内で実施している寄附金を原資とした奨学金ついては,寄附者と奨学生の交流の場を設けている。また,限られた財源を有効に活用するため,常に学内奨学金制度の見直しを図っている。
 障害を持った学生に対する学生支援は一部を除き学生ボランティアで運営されている。
 キャリア形成支援については,その重要性が高まっており,従来,学生部で行っていた業務をその外局であるキャリアセンターで担当するようになった。早稲田大学では,就職活動をすでに終えた学生によるボランティアと教職員が連携のもと,セミナー形式で学生の社会意識の向上を図り,大きな成果を上げている。
 留学生の受け入れ・送り出しについては,すでに別組織で支援が行われているが,学生部においては国際コミュニティーセンターを設置し,学生ボランティアを中心に学生に国際化の意味を問いかける取り組みを行っている。
 学生相談については,クラス担任制度の充実とともに,「総合健康教育センター」において医師,弁護士等の専門家による対応が常時可能となるような体制を取っている。また,予防が大切であり,学内各所との連携を強化している。
 学生支援の基礎データとして,毎年学生生活調査を実施し,学内における学生支援方策の指針としている。また,学生に対しては,報告書を取りまとめ配布している。同時に,学生同士のコミュニケーションが活発化するように広報誌を発行しており,さらに,学生ボランティアの協力の下,英訳作業を行うことで留学生に対する便宜も図っている。
 これらの学生支援方策とは別に,学生支援が従来の垣根を越えた教育の一環であるとの認識のもと,早稲田大学の学生としての意識を目覚めさせ,それを精神的なよりどころとすることを目的とした「自校教育」を学生部主催で行っている。この「自校教育」は全学共通科目として卒業単位に組み込むことが認められている。
 社会性のある学生を育てるため,学生部は学生支援に責任を持つが,それだけでは学生にとって効果は薄い。教職員が一丸とならなければ効果的な教育はできない。学生部は全学的な学生支援体制作りの旗振り役となっている。

  【宮川博光氏(千葉工業大学学生部長)の意見】
   千葉工業大学では,学校教育の成果は個人に帰属されるとともに,個人の人格と知的能力を通して,職業をはじめとした社会や産業界において広く還元されるべきと考え,平成9年度より,キャリア形成支援プログラムのカリキュラム(単位)化を検討し,平成11年4月から実施している。入学から卒業に至るまで,学生個人が学年や自己の個性・適性を考慮した「キャリアデザイン」を視野に入れて目標を設定し,学生自らの意思決定で進路・職業選択ができるようなキャリア支援を目的としている。
 キャリア教育を行うにあたり,どのような学生を対象にすべかについて統計をもとに分析を行ったところ,学生の成績と就職の決まった時期とに相関関係があることがわかった。100人の学生を成績順に並べたところ,内定の時期が最も遅かったのが,50番〜80番のグループであった。このグループは真面目であるが目的意識が薄く,それが内定時期の遅さにつながっていると考えられた。そこで,このグループを対象にして,さらに分析を加えた。その結果,最近の学生の行動基準や価値観は,経済至上主義のもと,利己的になっており,自らの権利を強く主張し,就労意識が希薄化し,善悪の価値基準が薄くなっていることがわかった。また,就職活動において,自分で適職や企業を見つけようとせずに他力本願的な行動をとる傾向があることもわかった。このことから,「どんな組織でも存在感を持って活躍できる能力」をキャリア形成支援の目標とすべき,つまり,就職支援ではなく,学生生活を総合的に支援し,自分で考え,自分で行動できる能力を身につけさせることが必要であると考えた。
 そこで,キャリア形成における具体的視点として,8つの視点を持つこととした。中でも,これまでキャリアセンター主体で行われてきた支援を全学が連携する体制に改めた。また,現在の学生は働くことの意味を教育されていないケースが多いことから,まず学生に対して働くことの意味を教育(ティーチング)し,その上で学生からの相談(カウンセリング)を受け,学生を支援(コーチング)するというサイクルをとるように考えた。
 次に,人材育成目標は,1スペシャリストタイプ,2コンサルタントタイプ,3プロジェクトマネージャータイプの3つの人材に絞ることとした。そして,この3つに共通して必要とされるものが就業能力であり,学生の就業能力(人間力)を開発するために,1個人(対自己),2組織(対人),3課題(対課題)に分けて,社会性,他者理解力,コミュニケーション力,問題分析力,判断力等を涵養することとした。
 我々が考えているキャリア形成支援の基本的な枠組みは,1キャリア準備期,2キャリア養成期,3キャリア実践期である。1においては,1〜3年次学生を対象に,ガイダンスや就職カリキュラムを通して,論理的思考と問題解決法等を学び,早期に進路選択への取り組みを図っている。2においては,3年次学生を対象に,具体的な進路決定のための準備やインターンシップや,ボランティアへの参加等の実践的な行動を体験させることで,自己の適性が活かされる職種を理解させ,業界や企業の絞り込みを行っている。3においては,3年次後期から4年次学生を対象に,自己の適性を理解した上で,希望する職種・業界・企業の情報収集や分析を基に就職活動をさせ,活動履歴からカウンセリングを行い,目標や問題点を理解させる。また,「自らの判断で就職して行く」行動が計画的に進められるよう情報収集・実行方法・意思決定と実践的な行動をとらせている。
 キャリア形成支援のカリキュラムを検討する際に最も注意したのは,大学は学生のための就職予備校ではないということである。キャリア形成支援をいかに学問体系の中に位置づけ,それを授業の中で活かしていくかが,重要である。さらに,各大学では,知識の伝授は積極的に行っているが,それを企画力等の知恵に変えていく取り組みはまだまだ不十分である。千葉工業大学では,学生の企画力を高めるための取り組みとして,在籍する学生が,在学中に得た知的財産を生かし,ベンチャー企業の創設やモノづくりを希望する際には,一定の審査のもと社会貢献度の高い提案に対しては,1事業につき100万円の支援を行い,学生の勉学意欲の向上を図るとともに,学内の活性化に寄与している。

  【以下,質疑応答部分】
 
委員  千葉工業大学ではキャリア科目については,必修としているのか。

意見発表者  選択科目である。

委員  クラス間で授業内容が異ならないようにするために,どのような工夫をしているのか。例えば,授業担当者のFD等,質を一定に保つために苦労していることはないか。

意見発表者  教職員一丸となってこのプログラムを開発したが,実際に担当できる教員が学内にいないということが,悩みであった。このような内容の授業は,担当者によって大きく内容が異なる可能性がある。我々としては,多くの社会経験を有する方に授業をお願いしたいと考えていた。現在は,受講生を100名ずつにクラス分けをし,さらに,クラスを30名程度のグループに分けて,グループごとに課題を与えるような形で授業を実施している。授業担当者には,経営コンサルタント,心理士,キャリアカウンセラーの資格を持つ者を採用している。
 現在の学生は,精神面で大きな問題を抱えている者が多く,また,自分で工夫せず,すぐにあきらめてしまう者が多い。そうならないためにも,学生に対して,解決のための方法論を提示していくことが大切であると考えている。担当教員は,就職委員会等で作成したシラバスに基づき授業を行い,内容にばらつきが出ないよう工夫している。学生が進路を選択する際には,実際に働く姿を見せることで自分に合う職業を見つけ出して欲しいと考えている。この授業は学生のモチベーションの向上を目的としている部分があるが,授業アンケートでも学生は高い評価をしており,授業の効果は高いと考えられる。

委員  労働組合の責任者の立場から,現在,学校現場と実労働界との連携について,問題意識を持っている。労働界・産業界での経験を踏まえた「労働観」を学校現場に導入することを検討しており,大学に寄附講座を設けた例もある。労働観を学校現場に恒常的に導入できればと考えている。
 昨今の経済情勢により,ものづくり,特に地方の中小企業におけるものづくりの力が弱くなっている。学校と社会が連携しなければさらにその力が弱くなってしまう。地方を活性化させる観点からも,実体験を学校現場に取り入れる取組を行っていくべきではないか。さらに,経済面での二極分化が進行している。奨学金制度の拡充も必要ではないか。
 ニートの問題については高等教育の問題だけではないのではないか。勤労に対する動機付けを幼少の頃から行う必要があり,初等中等教育段階からの検討が必要と考える。

委員  企業との連携を深め,テーマを決めて大学のカリキュラムの中にインターンシップを位置づけるべきではないか。愛知県では,国公私立大学の学長懇話会のもとでインターンシップ制度を運用し,実績をあげている。しかし,インターンシップは労働観を感じ,自己を確立させる場としては十分であるが,企業とのマッチングを含め,十分な体制になっていない点に問題がある。
 現代社会では,親の背中を見て働くことの意味を考えるという状況になっていない。働く場に触れるという教育を初等中等教育段階から体系的に実施すべきではないか。

委員  学生支援の範囲の設定について,各大学で違いがあることが意見発表で明らかになったと思う。学生支援の範囲自体が広がってきており,従来「厚生補導」と言われていた時代の考え方では対応できない状況になっている。その上で,3点伺いたい。
 まず,学生支援について,どのような組織編制の中で対応していこうと考えているか。特に,日本の大学は部局の力が強いが,部局との関係をどのようにすべきと考えているのか。
 次に,学生支援の専門家養成が急務になっている。特に,教員と職員の間を埋めるいわばグレーゾーンの立場に立つ人材が鍵を握っていると考える。この問題について,どのように考えるか。
 最後に,カリキュラムの問題について,学生のニーズに合った教育,就職に対応した教育を行うとなれば,現在のカリキュラムを見直す必要が出てくる。その際,教員の協力が必要であり,教員の意識改革がなければ困難であると考えるが,どのようにして教員の意識改革を行ってきたのか。

意見発表者  我々は教育と学生支援を統合して考えている。これまで,日本の大学は教育が中心にあったが,今後はこれまで不足していた学生支援を充実しなければならないと考えている。特に,学生支援は学生部の仕事ととらえる大学が多いが,我々は教育と学生支援は対等なものだという認識に立っている。しかし,現在の教育水準は堅持する必要があり,学生支援については,エクステンションセンターのような場で,学生の特別なニーズに応えられるように,専門家を配置して行うことを現在検討している。
 我々の大学では,本部と部局の連携は比較的うまくいっていると思う。教員が,自らの教育研究のための時間を確保するためにも,専門家を配置することは必要ではないか。また,職員についても,異動があるために,サービスの質を一定に保つことができないとの問題がある。学生サービスのレベルを低下させないためにも,学生支援を専門に行う専門職制度を導入すべきではないかと考えている。

意見発表者  我々の大学には教務部と学生部があるが,学生支援は両者が一体となって行うべきとの考えから,月に1〜2回程度打ち合わせを行い,情報を共有している。
 カリキュラムに関しては,一般教養科目を発展的に解消し「オープン教育科目」を設定した際に,就職支援関連の科目を加えた。
 学生支援を専門に担当する専門家の必要性は,我々の大学でも感じており,導入については現在検討段階にある。

委員  看護系の大学では,他の分野と異なり,比較的目的意識をはっきり持った学生が多い。それは,学生の間に実際に看護の現場に出て実習を行うことが影響しているのかもしれない。しかし,明確な目的意識を持っているにもかかわらず,卒業後1年以内に離職するものが約1割程度いる。これは教育そのものにも問題があるのではないかと反省している。千葉工業大学ではキャリア形成支援プログラムを導入することで,卒業生の動きに何か変化はあるのか。

意見発表者  同窓会でこのプログラムの受講者にアンケートを実施したところ,「所与の条件の中で,最善の選択は何か」ということを常に考えるようになったとの意見が多かった。自ら選択し,意思決定ができるという点が社会に出てからも役に立っているようである。

委員  現在,大学卒業者の離職率が約3割だと言われているが,受講者の離職率について調査すれば,このプログラムの効果がわかるのではないか。

委員  各大学において様々な機能別の相談窓口を設けているが,学生にとっての本当のアメニティは,現在のように効率を重視したものではなく,キャンパス内の熱気や雑踏に包まれている混沌としたものなのではないか。
 また,「支援」という立場が強く出ているため,大学が学生を「助けてあげる」という姿勢になっていると考える。しかし,今の学生はどちらといえば,「助けてください」と言われた方が生き生きしていると聞いたことがある。例えば,入学後,早期のうちに学生に対して大学の運営に参加してもらい,役割を与えることが逆に学生支援として有益ではないか。
 一方で,大学が様々な学生支援方策を行ったとしても,企業が置かれた社会は厳しく,学生は大学が手厚い支援を行えば行うほど,大学と社会とのギャップに驚くのではないか。大学が企業の論理に近づいていくばかりではなく,企業を大学側の発想に引き寄せることも必要ではないか。

委員  千葉工業大学での「ベンチャー・モノづくり支援」について,企業の協力をむしろ排除しているとの説明があったが,学生自身が考え,入手した情報のみでどれほどのものができたのか興味深いとともに,それが「ごっこ」になっていないかとの懸念もある。
 卒業後に受ける社会とのギャップの大きさが,離職やニートの問題につながっているのではないかとの意見があったが,2007年に迎える団塊世代の大量退職を見据え,優れた技能を持つ退職者の知恵を生かす方法を考えなければならないのではないか。また,OBや地域の組織を活用することで,心のケアやマナーの問題を含め,持っている経験を生かすことができるのではないか。企業もOBの活用については頭を悩ませており,大学と協力することでそういった問題が解決できるのではないか。

意見発表者  「ベンチャー・モノづくり支援」には専門分野の教員を1名配置し,指導・助言しているので,「ごっこ」になることは防げているものと考えている。

委員  PFIの手法により,学生寮が建設できるようになったのは良いことである。一方で,PFIを用いた際に,学生の費用負担,特に留学生の費用負担をどうするのかという問題がある。

意見発表者  国立大学等の授業料その他の費用に関する省令で定められている金額は一律に負担してもらうが,それを超えた付加的なサービスについては,学生に応分の負担を求めることになるだろう。また,留学生の費用負担の問題については,現在も検討中であり,結論はまだ出ていない。

委員  日本学生支援機構としても,本日発表があったような優れた事例を収集し,各大学に情報提供を行っていきたい。
 本日の発表を聞いていて感じたのは,「学生支援」のとらえ方が大学によって様々であり,幅があることである。学生支援を教育研究と切り離す考え方と,両者が一体のものであるとする考え方もあるが,当部会での「学生支援」の範囲はどのように考えていくのか。

事務局  その点も含めて御議論いただきたい。「検討課題例」においては,幅広い意味で学生支援をとらえている。

委員  広い範囲で様々な意見をいただいた上で,当部会としての学生支援の範囲を見定めていきたい。
 学生支援を手厚くするほど,社会とのギャップとの大きさに驚くのではないかとの発言があったが,現在の日本のシステムが続く限り状況は変わらないのではないか。つまり,日本においては学生について現役志向が強い点が,欧米とは大きく異なる。欧米では学生の年齢構成が幅広く,人間的にも成熟してから入学してくる学生が多くいる。現役志向により,日本では学生が成熟しないまま,社会に出てしまっているのではないか。その点についても検討しなければ,本日のテーマである意欲ある学生を社会に送り出すことはできないのではないか。
 また,PFI方式で学生寮を建設できるようになったことは良いことだと思う。奨学金の拡充も困難で,GDPに占める高等教育費の割合が減少し家計負担が増加している中で,安価な施設を提供できることはそれ自体が学生支援の一種である。欧米では,学生の休業期間に施設を民間に貸し出し,対価を受けているという事例もある。日本でも同様なことができるよう検討すべきではないか。


7. 次回の日程
  次回は,平成18年4月14日(金曜日)15時〜17時に開催することとなった。

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)

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