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資料2-1

 

優れた研究者の養成・確保に関する科学技術・学術審議会での主な意見

●:科学技術・学術審議会総会での意見
◎:学術分科会での意見
○:学術分科会基本問題特別委員会での意見

研究者養成に関する論点

   大学の本来の役目は、問題発見型の研究教育、あるいは問題を発見できる人材の育成。30年というタイムスケールで次の時代を考え、かつ、短期的な問題に対しても発信できなければいけない。今の大学では、それがあまりよくできていない。ただし、だからといって、大学が短期的なことをやる人材を育てればよいかというわけではない。短期的と言うと、問題解決型になりやすいが、今の日本の場合には、問題発見できる人材を育てることが特に求められている。
   
   文部科学省の任務は、将来に向けての人材の供給。例えば、情報、バイオが重要だという時に、文部科学省の役割は、研究者の研究を重点分野へシフトするのではなく、その分野の学生定員を増やすことかもしれない。
   
   人材の問題となると教育、特に大学や国研の体制に関連する。改めて将来若者が希望を持って研究できる場を考えていただきたい。
   
   高等教育の側からは、大学院を高度専門職業人養成機関という観点に重点を置いた施策を展開している。研究者養成から見て、大学院をどう構成していくかという観点が抜けているのではないか。各分野の振興に当たって「人がいない」という話になるが、人は大学から作らなければしようがない。そこに科学技術基本計画24兆円の相当部分を振り向けるのが、まさに日本の将来にとって一番大事。
   
   問題解決型の研究開発が、大学の先生やポスドクを取り込んで行われようとしているが、それは柔軟な問題発見型の頭脳を持っている若い人たちを即問題解決型の仕事に就かせて、貴重な人材を消耗している側面がある。
   
   大学は、将来の日本を背負って立つ人材を育成するという観点は一番大切。ただ、大学院生がイシュー(課題)を解決するための研究に従事することによって、将来をだめにされてしまうという考えは間違いではないか。
   
   科学技術が国民の幸福に資するものだとすると、科学技術のエキスパートに限らず、社会システムのエキスパートを育てる必要もある。

 

研究者のキャリア・パスと流動化に関する論点

   人材問題の一つの切り口としては、それぞれのキャリアパスのあり方を、ステージごとの観点から眺めるのも一つの見方ではないか。
   
   若手研究者を養成するための財政的支援が行われ、優秀な若手が随分育っていることは事実だが、この若手研究者の行き先を見ると、国研の独立行政法人化があり、公務員は減少の方向に進んでいる。若手研究者を将来どういうセクターで収容するのかということは、教育者として大変心配している。「学術・科学技術は大事であるから、若者たちにしっかり研究して立派になりなさい。」と言ってエンカレッジしているが、現実は将来非常に不安であるというのが、若者たちの偽らざる心境だろうと思う。
   
   研究現場では、若手(35歳ぐらい)の年齢を過ぎた後に行くポストが見えない。問題解決型の仕事に飛び込めば、企業等への就職もあり得るが、一定割合で問題発見型の人材を国として抱えようと思うとそれは難しい。中堅研究者の流動ポストという側面も並行して考えていかないと、すぐ行き詰まる。
   
   ポスドクの後についてどうするか議論したことがあるが、結論は研究者に市場メカニズムを導入するというものだった。ポスドク1万人計画は、賛否両論あるが、日本にもやっと競争的環境が整い、女性研究者も増えたという指摘もある。
   
   企業側がドクターについて、ほとんど知らないことも問題。人材の問題は、需要者側ではなく学生の立場に立って議論すべき。
   
   定員削減になると、助手を新しい講座に移すなどの措置がなされるが、その結果、助教授が助手の仕事をすることになり、研究支援が不足してくる。また、各分野で博士が不足してきているので社会人の活用・利用について検討すべき。
   
   例えば、COE等で2年任期の非常勤研究者を増やしているが、2年後にはどこかに行かなければいけない。しかし、研究職あるいは大学教官の定員は減っており、研究を支える技術者の定員も減っている。研究を支えるためにどの程度の人材が必要なのかをきちんと議論して基本計画が立てられているのか。

 

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