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Home > 政策・施策 > 審議会情報 > 中央教育審議会大学分科会 > 制度部会(第13回) 議事録・配布資料


制度部会(第13回)議事録・配布資料

1 日時   平成16年10月28日(木曜日) 15時〜17時

2 場所   三田共用会議所第4特別会議室(4階)

 議事
(1)   我が国の高等教育の将来像について
  【意見発表】
 
  和田 義博氏(公認会計士)
  吉田 文氏(メディア教育開発センター教授)
  香川 正弘専門委員
(2)   認証評価機関の認証について
(3)   その他

 配付資料
資料1   制度部会(第12回)議事要旨(案)
資料2   高等教育機関の経営における諸課題(公認会計士 和田義博氏)
資料3   遠隔教育の普及と今後の課題(メディア教育開発センター教授 吉田 文氏)
資料4   社会貢献としての大学開放振興の課題(香川 正弘専門委員)
資料5-1   認証評価制度の概要
資料5-2   認証評価機関の認証について(諮問)
資料6-1   認証基準と申請内容との対比表(短期大学基準協会)(案)
資料6-2   評価基準と短期大学設置基準等との対比表(短期大学基準協会)(案)
資料7-1   認証基準と申請内容との対比表
資料7-2   評価基準と大学設置基準等との対比表
資料7-3   認証基準と申請内容との対比表
資料7-4   評価基準と短期大学設置基準等との対比表
資料8   大学分科会関係の今後の日程について

(参考資料)
 「我が国の高等教育の将来像」に関する新聞記事(追加)

(机上資料)

    中央教育審議会大学分科会「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」
    「我が国の高等教育の将来像」に関する新聞記事
    大学の設置認可制度に関するQ&A
    制度部会関係基礎資料集
    高等教育関係基礎資料集
    文部科学統計要覧(平成16年版)
    大学設置審査要覧
    教育指標の国際比較(平成16年版)
    大学審議会全28答申・報告集
    中央教育審議会 答申
  「大学等における社会人受入れの推進方策について」「大学の質の保証に係る新たなシステムの構築について」「大学院における高度専門職業人養成について」「法科大学院の設置基準等について」「新たな留学生政策の展開について」「薬学教育の改善・充実について」「新しい時代における教養教育の在り方について」
    国境を越えて教育を提供する大学の質保証について(審議のまとめ)
    科学技術・学術審議会国際化推進委員会中間報告「科学技術・学術の国際展開の戦略的推進について」
    科学技術・学術審議会人材委員会第3次提言(参考資料に「第1次提言」「第2次提言」を含む)

 <認証申請書類>
  短期大学基準協会
  独立行政法人 大学評価・学位授与機構【大学】
  独立行政法人 大学評価・学位授与機構【短期大学】

5 出席者  
(委員) 岸本 忠三(部会長)委員
(臨時委員) 天野 郁夫、黒田 壽二、島田 あき子、関根 秀和の各臨時委員
(専門委員) 香川 正弘、佐藤東 洋士、舘 昭、中込 三郎、福田 益和、森脇 道子、山内 昭人、四ツ柳 隆夫の各専門委員
(委任状出席) 安西 祐一郎臨時委員
(文部科学省) 結城文部科学審議官、泉高等教育局担当審議官、惣脇高等教育企画課長、石野医学教育課長、大槻私学行政課長 他

 議事

(1)  「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」について、有識者から意見発表があり、その後に質疑応答が行われた。

(□:意見発表者、○:委員)

【和田義博氏(公認会計士)の意見】

 国立大学法人、公立大学法人、学校法人は公益法人である。特区では大学を設置できることになったが、株式会社は営利法人であってそもそも法人格を認める法律が異なる。当然、法人の本質も違う。
 株式会社は株主が出資し、利益を追求し、その利益を株主に還元することを目的としている法人である。一方、公益法人は公益の事業を行うことを目的としている。例えば、学校法人で譲与が生じたとしても、それは私人に流出することなく、その法人の事業にのみ充てることになっている。残余財産の分配も同様である。
 公益法人と営利法人では一般に資源の有効利用性、効率性が違う。あくまで一般論だが、公益法人は資源を効率的に活用できていない場合が多く、一方、営利法人は資源を効率的に使うということでは優れている。そういう面からは、株式会社が大学を設置した場合に効率的な運営ができるかもしれないが、むしろ学校法人が株式会社の良い面を見習って効率的に運営をすべきではないかと思う。
 このようにそもそも法人の本質が違うものが同じ「大学」を設置するということであれば、ルールを明確にする必要がある。例えば、区分経理をきちんとすることが必要になるだろう。収入・支出、収支計算、貸借対照表による財政状態について、株式会社であれば「収益事業部分」と「学校部分」を明確に区分し、他の学校と同様に公開して評価を受けるというようなルールを明確にしないと混乱が生ずるだろう。
 事前チェックとしての設置審査基準の明確化については、そもそも「規制改革」と言われてきたものが最近は「規制緩和」と言われ、何事も緩和の方向に流れている。ただ緩和するのではなく、時代の変化に応じて厳しくすべき部分は厳しくすべきではないか。
 設置審査基準の中で経営主体の財政的基盤、つまり高等教育機関がその目標を達成するために将来に渡って必要な財政基盤を備えているかどうかといった点について、審査基準をしっかり定めるべきではないか。 
 「事前チェックから事後チェックへ」という流れを支えるものとして、情報開示制度はさらに活発に行われるべきであろう。上場している株式会社は証券取引法等に基づき、学校法人より質、量ともに高い水準の情報開示をしなければならないことになっている。学校法人においても教育・研究の状況と併せて経営状況の開示がもっと行われるべきではないか。
 会計基準は経営の効率性を含め、経営状況が分かりやすいものにしていくべきではないか。例えば国立大学法人と学校法人の会計基準は比較が困難である。これに加えて株式会社が大学を設置するようになれば、更に比較が困難になる。これからは分かりやすく、かつ比較可能性の高いものにしていくべきではないか。
 第三者評価は相当大変な作業であるが、評価機関、評価手法や結果の公表方法を含め、第三者評価制度の確立が望まれる。日本では評価の文化がなかったが、今後は益々重要となるであろう。その際、教育・研究だけでなく、それを支える経営主体の財務及び管理運営等の経営状況を評価する手法についても十分な検討が必要ではないか。
 経営と教学の意思疎通が悪く、経営が機動的に行われていない例が多く見られる。経営面においては、理事会がきちんと機能しないと株式会社に遅れを取るのではないか。私立学校法の改正により監事の監査機能が強化されたが、株式会社も厳しい状況の中で監査の機能を高めており、監視機能の強化は学校運営においても重要な課題であると言える。
 予算制度は事業計画の確実な遂行と財務の安全性を保証するものである。これをさらに活用するため、予算により配分された資源はただ使えば良いとの考え方など、現行の予算制度の問題点についての検討が必要ではないか。企業は中長期的な計画のビジョンを持ちながら事後評価をしっかりと行い、より効率的な事業を行っていくという部分で優れており、こういう部分は見習うべきである。
 株式会社ではIT化が進んでおり、公益法人では一般的にIT化が遅れている傾向がある。事務分野では今後さらに差が開くことが考えられるので、十分留意すべきである。
 証券会社など一般の企業はより良いものを求め再編されているという現状があるが、高等教育機関は合併、買収、再編という事態に馴染むものなのか。いずれ高等教育機関の経営主体においても避けては通れない問題であるので、そこをどう考えるのか。

【吉田文氏(メディア教育開発センター教授)の意見】

 最初に我が国の遠隔教育の制度的矛盾について述べる。
 1つ目は通信制の設置基準についてである。通信制の学部については大学通信教育設置基準が別に定められているのに対し、通信制の大学院は大学院設置基準の一部改正によって対処し、通信制の専門職大学院も専門職大学院設置基準の中で対処している。このため大学院の場合は通学制にならった教員配置がされているのに対し、学部はそうなっていないという問題がある。
 2つ目は単位修得についてである。通学制学部では遠隔授業で60単位を修得可能であり、残りの部分についても単位認定・単位互換により通信制大学の面接授業で60単位を修得することができる。つまり通学制学部であるにも関わらず、遠隔授業と通信制大学の面接授業でほとんどの単位を修得するという一見奇妙なことが起こり得るのである。さらに通学制大学院については、「通学制」であるにも関わらず遠隔授業で30単位全てを取得可能である。また通信制専門職大学院では、「通信制」であるにも関わらず、通信制の4つの授業方法のうち「印刷教材等による授業」、「放送授業」は認められず、「メディアを利用して行う授業」と「面接授業」だけが可能となっている。これまでは通学制と通信制を明確に区別してきたが、単位修得については、これらを明確に区別する意味が実質的にどれほどあるか疑問である。
 通信制内部の区別について、現在特区においてはインターネットのみを利用して行う機関の校舎施設の数値基準の適用除外という規定があり、本部機能さえあれば施設設備をほとんど持たずに大学を設置することができる。特区以外にはもちろん上記規定はなく、特区が特区である限りは区別がある程度意義をもつだろうが、全国に広がった時にこの矛盾をどのように解消すべきか問題である。
 3つ目は通信制の授業の方法についてである。通信制の授業方法については先に述べた4つがあり得ると定められているが、各種の授業方法が一体この4つのどれに相当するのか、混乱を来たしている。例えばCD−ROM等のパッケージ型メディアを電子出版して教材として用いた場合には、電子出版したことから「印刷教材等による授業」に分類されているが、CD−ROMの性質を考えれば必ずしも適当とは言えない側面もあるだろう。映像や音声を利用したパッケージ型メディアの視聴は「放送授業」の1つの形態に分類されるが、CD−ROMやDVD等を自宅で見る場合には果たしてこの区分は適当なのか。テキストや静止画のみをインターネットで配信する授業は、テキストや静止画のみであることから「メディアを利用して行う授業」ではなく、「印刷教材等による授業」になっている。衛星系・地上系の通信回線によって教室の授業を配信する場合は「放送授業」の1つの形態に分類されるが、他方で、衛星系・地上系の通信回線を利用したテレビ会議システムは「メディアを利用して行う授業」に分類される。CDやDVD等の映像・音声を利用したパッケージ型メディアに加え、電子メールによるQ&Aを利用する場合には果たして「メディアを利用して行う授業」に分類されるのか、という問題もある。これまでは配信の技術による区別を行ってきたが、上記の例で分かるようにこのような区別を行う意味は既になくなっていると言えるのではないか。
 これまでは教育を受ける側、すなわち学習者の側からどういった形で情報が送られてくるかによって授業を捉えており、教育の配信側から学習者の学習履歴を把握するとの視点は極めて弱かった。それは学習時間等によって教育の質を保証する観点に立つ単位制についても、本人認証等についても同様である。
 以上のように様々な矛盾がある。
 次に日本における遠隔教育の普及状況を説明したい。結論として、日本における遠隔教育は数の上からはまだ少ないと言える。通信制の学校数、学生数ともに極めて少ないし、通学制の課程においてインターネット授業により単位認定を行っている学部数も少ない。通学制の表について簡単に補足すると、上段は単位を認定しているかどうかに関わらずインターネットによる授業の配信を行っている学部数または短大数を表している。下段はそのうち単位認定を行っているものである。
 遠隔教育が非常に普及しているアメリカの状況を日本との比較から御覧いただきたい。アメリカではインターネットの普及とあいまって遠隔教育の普及がここ7、8年で急速に拡大している。1997年から2000年の間に遠隔教育の実施機関の比率、遠隔教育コースに在籍している学生数は急激に増え、2000年時点で学位取得が可能なプログラム数も多い。
 1997年時点であるが、アメリカで遠隔教育が行われている領域として、学部では人文社会系のものが合わせて4割程度あり、ビジネス、健康科学、職業系の科目が続く。大学院では教育、工学、ビジネス、健康科学と、リベラル・アーツでなくボケーショナルな、プロフェッショナルな領域で遠隔教育が多く行われている。
 アメリカの遠隔教育ではインターネットが主要な配信技術になっている。これについては「配信技術」の表を御覧いただきたい。複数回答ではあるが、ここ数年の間に非同期インターネット、同期インターネットともに大きく利用率が伸びている。それに対して、双方向のテレビ会議や一方向録画のビデオを送る方式は大きく変化していない。
 以上3点のデータ等からアメリカにおいては、1公立セクターを中心に遠隔教育が拡大していること、2学部と大学院を比較した場合に学部のプログラムが約半数を占めていること、3学位取得が可能なプログラムの約半数がディグリーではなくcertificate(サーティフィケート)のプログラムになっていること、4領域としては職業領域に特化していること、5配信の技術としては非同期のインターネットが主流になっていること、が分かる。
 アメリカにおけるインターネットを主要な配信技術とする遠隔教育、いわゆるeラーニングについて論点を6つにまとめてみた。
 1つ目は組織形態についてである。非営利の大学の場合にはコンソーシアムという形態を取って相互にeラーニングのコースを互換し合うものが増えている。コンソーシアムへの参加機関は6割に及び、コンソーシアムの中には公立と私立、果ては企業等も含んでいるものもある。
 eラーニングを中心として大きく伸びてきたものに営利大学と呼ばれるものがある。1990年代以前から営利大学として既に設立されていたフェニックス、デブライ等の古典的な営利大学は学生数が増え、上場してある株式も値段が上がっているのに対し、eラーニングを行うために設立されたジョンズ・インターナショナル大学等の新しいタイプの営利大学は思うように学生を集められていないという状況もある。
 営利大学がeラーニングによって利潤を上げている中、非営利大学が外部に営利部門を作り、そこでeラーニングを行う試みが2000年の前後に数多く行われた。ニューヨーク大学のNYUオンライン、テンプル大学のテンプルU、コーネル大学のeコーネル等がそれに当たるが、有名研究大学の取り組みであったにも関わらず、いずれも1年前後で失敗してしまった。
 2つ目は専門職についてである。日本にはない新たな専門職として学内のIT戦略の責任者であるCIO、eラーニングのコンテンツ開発の専門職であるIDが大学の中で一定の役割を占めるようになっている現実がある。
 3つ目は教育の機能についてである。従来、認知的機能と社会化機能ということが言われてきたが、人間形成を目的とする社会化の機能をeラーニングの中でどこまで担えるかということも議論になっている。
 4つ目は技術課題についてである。現在、セキュリティが問題になるとともにソース・コードを公開して大学間で共有しようというオープン・ソースが行われているが、そこにもいくつかの問題が指摘されている。
 5、6番目はeラーニングが量的に普及していく中でその質をどう保証するかについてである。この点はアメリカの内部においても、あるいはWTOとの関係においても問題になっている。

【香川正弘専門委員の意見】

 大学開放が現在ほど求められる時代はかつてなかった。これは大学のみならず国にとっても大きな問題となっている。18歳人口の減少に伴う経営戦略としての社会人の受け入れ、社会貢献の要請への対応は各大学の願望ではあるが、実際にどのようにやるかという具体的な方法論に欠けている。試行錯誤を繰り返している状態であり、そういう意味で大学開放の推進について積極的な政策が講じられる必要があるのではないか。
 大学拡張の研究者の立場から4つほど指摘をしておきたい。
 有教育者の高度な学習意欲を満たすような成人教育が発達しておらず、また、高度な専門性を持った社会人の経験を生かす働き場がないのではないか。これは広い意味の人材の浪費に当たり、こういった人々の活用方法として大学等を考える必要があると思う。
 大学の行う生涯学習とカルチャーセンターや公民館の行う生涯学習と違うものであるが、その辺りが不明確ではないか。
 大学の公開講座が社会からあまり信用されていないのではないか。信頼を高めていく必要がある。
 大学教員が情熱を傾けている研究の成果が開放されていないのではないか。これは一般の講座、公開講座の両方にあてはまる事項であり、研究や学問をする喜びや悲しみを伝えられていないのではないか。
 大学開放が実現された望ましい姿とは、まずは大学で学びたいと思う人が誰でも学べるような大学になることであろう。数値を用いるのが適切かどうかは分からないが、社会人学生が30%程度に増えることが望ましいのではないか。また、大学が地域社会において知的・文化的拠点として支持され、頼りにされることが必要ではないか。地域社会には多くの生涯教育機関があるが、大学が一人勝ちするのではなく共存していくことが望ましいのではないか。

 一連の大学改革を大学開放の観点から見た場合に次の3点を述べておきたい。
 1つ目は社会人が大学教育を受けやすくする制度改革が行われたことである。具体的には長期履修生制度、専門職大学院の開設等であるが、考え方を変えれば学内の大学教育の開放体制が整ったと見ることができる。
 2つ目は大学の運営が弾力化されたことである。大学を自主的に運営する観点が自覚されるようになったことは大きい。特に国立大学の法人化により、大学と自治体が「協働」する気運が生まれたこと、特色を出す観点から大学が自身の所在する地域に関心を向けるようになったことも画期的な展開であろう。
 3つ目は産学官の連携である。産学官交流センターができ、従来は特許を利用しての企業化などを手掛けていたが、ベンチャー企業ができてくることで企業との共同研究、ひいては企業の従業員教育、一般社会人への教育に広がる可能性を持っている。従来の大学開放は人文社会系が主力であったが、これにより理工系の大学開放が本格的に始まったと言える。全学的に開ける道ができたことは評価に値する。また、大学が発展する基盤がようやく構成されたのではないかと考えている。

 大学が社会に開かれていく過程を歴史的に見ると3段階か4段階に分けられる。大学拡張、大学開放、高等成人教育、継続高等教育がそれである。大学拡張という言葉が全体を通してのキーワードとなるが、その本来の意味は大学教育の開放(Extension of University Teaching)であり、大学による社会への知の普及機能と捉えられる。これは大学の「教育」機能の対象が一般学生と社会人になったということであり、特別な機能が作られたわけではない。この考え方が基本となって高等成人教育という言葉が生まれた。大学拡張が教養的・社会科学的なものを中心としていたのに対し、高等成人教育には職業的・専門的な内容も含まれる。継続高等教育は職業的・専門的部分を強調する時に用いられる。
 社会貢献という言葉との関連では、社会貢献と大学拡張はほぼ一致する概念ではないか。ただし大学拡張は大学教育の拡張をもととする昔からの概念であり、教育以外の分野での活動も含む社会貢献よりやや狭い。
 21世紀型の大学開放は「大学の人的、物的、知的な資源」を社会に開放することであり、教育以外にも研究も開放するところに特色がある。また生涯学習社会においては、大学開放が学校教育と社会教育の両系統の頂点に位置付くという理解が大事である。

 知識基盤社会の形成が必要であると考えるならば、大学開放を今後推進していく必要があり、そのためには大学開放を大学にとって必須な事業活動に位置付ける必要があるのではないか。つまり、社会のニーズに応えることを大学の義務と考えてはどうか。審議の概要には大学の役割が7つ述べられているが、どの役割の大学においても必要とするということである。
 教育の開放は大学の目的に即して行うことが必要であろう。これが地域の生涯学習機関との共存をもたらすことになると思う。
 研究の開放が21世紀型の大学開放の中心になると思われるが、市民への研究の開放からゼミ形式の一般教養講座、専攻科レベルでの高度専門教育講座の普及まで、幅広く大事になるのではないか。
 こう考えると、学校教育の中に社会人を取り込むだけでなく、むしろ取り込む前段階としてパートタイムでの学習形態を普及させる大学開放により意義があるのではないかと思う。社会人の生活形態を考えるとその方が普及しやすいのではないか。大学開放講座を正規の大学教育や大学院教育へ進学していくための苗床と見なすことも可能であり、そこから正規の講座に移って行ける連携制度を今後作っていく必要があるのではないか。
 大学全体の取り組み方として、現在のところ、産学官連携センターと生涯学習センターの2つが核となると考えられるが、これらを大学開放センターという形で一本化することはできないか。またセンターの設置を必須にすることも考えられる。現在は開放の経験が蓄積される形になっていないと言えるのではないか。
 大学開放センターには経営の視点も必要である。学生の授業料を社会人の講座にまわすことには強い疑問がある。地域社会のニーズに応えた講座、質の保証された講座を行って信頼を得ることが必要であろう。大学に外部から資金が入ってくる際の窓口にもなる。

【以下、質疑応答】

委員  資料3でcertificateについて触れているが、学位プログラムとcertificateの関係を教えていただきたい。
 また営利大学と2頁の表との関係を教えていただきたい。営利大学と遠隔教育の関係も教えていただきたい。
 認知的機能と社会化機能についての記述があるが、地区別のアクレディテーション団体の評価基準では社会化機能の問題はどのように扱われているのか。
 1頁で「教育の配信者が学習者の学習履歴を把握するという視点」が欠けていると指摘されているが、これは非常に重要な問題であろう。これから単位累積加算制度を導入する場合には、この問題は一体どうなるのか。アメリカではこの問題をどのように解決しているのか。

意見発表者  ディグリーを与えるものとcertificateを与えるものの両方が学位プログラムにカウントされており、内訳は大体半々である。
 2頁の表においては恐らく、私立の中に営利大学がカウントされているものと想像される。表のデータはアメリカ教育省の教育統計センターが行っている調査によるものであり、対象は学位等を授与する高等教育機関ということになっている。きちんと書かれてはいないが、営利大学の中でもアクレディテーションを受けているものはカウントされているだろう。
 営利大学には様々なタイプがあり、高等教育機関の19%程度が営利大学であると言われている。その中には遠隔教育を行っているものもあればそうでないものもある。フェニックスやデブライの歴史は古く、当初はサテライトキャンパス等を行っていたが、インターネット等が普及する中で遠隔教育に進出してきた。一方、ジョンズ・インターナショナル等は遠隔教育だけで学位を授与するような営利大学として登場した。
 eラーニングが行われる遠隔教育を地域を区別してアクレディットすることを無意味と考え、1999年頃から6地区の8つのアクレディテーション団体が共通のガイドラインを作ろうとしてきた。現在はそれが遠隔教育の共通のガイドラインとして使われているようであるが、その中で社会化機能については十分に触れられていない。遠隔教育で行われる以上、学生と教員のインタラクションを密に取っていくことが非常に重要だと述べられている程度である。
 学習履歴の把握について、例えばアメリカではインターネットのログを取ることなどで対応している。日本でも同様の方法が用いられており、把握の傾向は強まっている。しかし本人認証の問題はやはりいたちごっこであり、技術的限界をカバーする手段として途中や最後に提出したレポートやクイズの回答の内容等を見ることで本人かどうかを判断するといったことが行われている。

委員  「事前チェックから事後チェックへ」という流れの中で、経営の安定に資するために将来に渡る安定的な維持基盤のチェックを事前に行うべきという話があったが、設置の際の審査基準が随分緩やかになった中でどこまで行うべきと考えるのか。

意見発表者  難しい問題であるが、設置申請者の将来の財務計画をしっかり見ることは必要であろう。その際、例えば経営計画や収支計画で資金だけでなく全体の財産についてしっかり確認して将来の安全性を図るといったことが考えられないか。金融機関が行っている審査なども参考にしながら審査基準を変えていく必要もあるのではないか。

委員  現在の日本における大学開放のレベルはどの程度と考えているか。大学評価の一環として社会貢献を評価しようとの動きがあるが、評価できる段階にあるのか。評価できるならば、その際の基準についての考えも教えていただきたい。

意見発表者  従来は文科系の公開講座が中心であったが、TLOを中心に理系のセンターができたことで文科系、理科系の両方の開放体制ができ、大学開放へ向かう基盤が作られたのではないか。しかし中身を見てみると、国際的な水準からはまだ評価されないものが多いと思う。まだ評価できる段階ではないが、地域社会やその構成企業に共同研究でどれだけ役立てたか、といったことが評価の対象として考えられるのではないか。

委員  企業と大学や特定の研究者との連携は急速に進展している。企業との人材交流を含めた産学連携が双方にとって有益と考えるが、日本の高等教育機関が授業料を取ることについてどのように考えているか。

意見発表者  全てを正規の大学院生で行う必要はないのではないか。大学院レベルで行ってきたことを公開講座レベルで安く普及させることは考えられないか。これから様々な分野で専門職大学院ができてくると思うが、学生にならないと勉強ができないという制度だけでは不十分だろう。全部を受講することはできないが特定の講義をパートタイムで受けられるような体制を普及させることがこれからの大学開放で重要になるのではないか。

委員  産学連携以外の研究の開放について、ライフワークの追究との言葉があったが、その辺りをもう少し詳しく教えていただきたい。

意見発表者  個人が趣味として専門的な勉強をする時に、現在は大半が公開講座で終わり、目標が資格取得へと向いていっているのではないか。それをもう一歩進めて学位レベルに近づけるような大学開放があっても良いのではないか。

委員  従来型の公開講座では不十分との指摘は大変重要だと思う。現在の公開講座は学習塾の延長のようになっており、大学本来の機能の一部とは位置付けられていない印象さえある。大学の社会に対するサービスの一環との認識が弱く、特定の資格や学位と全く無関係に運営されていると思われる。職業人対象のリカレントプログラムを取り入れるなど、きちんとした取り組みにしなければならないとの主張と理解したが、それで良いか。

意見発表者  その通り。それに加えライフワークの追究機能の充実も重要である。

(2)  認証評価機関の認証について事務局より説明があった後、申請機関である「短期大学基準協会」、「独立行政法人 大学評価・学位授与機構」から申請内容の説明があった。その後、質疑応答が行われた。

(□:申請者、○:委員、●:事務局)

【短期大学基準協会からの説明及び質疑応答】

 認証評価の名前はストレートに第三者評価としたい。その目的として質の保証、短期大学教育の向上・充実に資すること、評価システム・評価結果の公表により社会の支持を得ることの3つを設定している。
 目標達成のための基本方針としては2つを設定している。1つ目は短期大学設置基準を踏まえた「短期大学評価基準」により評価を行うことである。これは公平性の担保という点では非常に優れているが、規模、建学の精神、設置学科、地域性といった短期大学の個性を汲み取ることは難しい。よって上記を中核としつつ、2つ目として建学の精神・理念に基づく目的・目標の達成に向かってどのような努力を行っているかの評価を行っていく。後者は達成度評価と言えるのかもしれない。
 実際の評価に当たっては、1つの短期大学について5人程度の評価員で評価チームを組み、自己点検・評価報告書に基づく書面調査と訪問調査を行いたい。訪問調査のスケジュールとしては大体2泊3日を考えている。
 評価システムを作る時に、事前規制と事後チェックの問題について感じたことがある。それはある程度の事前規制があって初めて事後チェックも機能するのではないか、ということである。両者のバランスが肝要であり、あまりに事前規制が緩やかになると第三者評価は機能しづらい。
 最後に1点申し上げたい。御存知のように現在、短期大学は少子化という理由もあり大変厳しい状況におかれている。短期大学基準協会には現在410校程度の会員校があるが、認証評価機関としての認証を短期大学教育の向上・充実に向けたチャンスとしたい。これは会員校全ての思いであり、何卒認証の審査をお願いしたい。

委員  私立短期大学を中心とした評価を行うという説明はあったが、公立も視野に入れているのではないか。

申請者  現在の会員は私立短期大学だけで構成しているが、認証を受けた後は、公立短期大学の評価も行う。従って、公私立ともに認証評価を行う予定である。

委員  不適格になった会員短期大学はその会員資格を失うのか。

申請者  それはない。

委員  不適格になった会員にはどのように対応するのか。

申請者  第一には評価結果が不適格であることを公表する。次に次回の評価までに中身を向上していただくような様々な支援を行っていきたいと考えている。短期大学基準協会が会員制を採用するのは、関係者が一丸になって評価文化を育てていくことが今の短期大学にとって大事であるから。もう一つ、財政的な基盤の確保という理由もある。

委員  今のところ任意団体であるが、財団法人化をするのか。

申請者  現在は任意団体であるが、認証を受けたら直ぐに財団法人の許可申請を行いたいと考えている。

委員  会員校は定員が300人以下の場合は1人、それを上回る場合は2人、評価員を出すことになっているが、評価員の養成についてはどう対処するのか。

申請者  当面は評価員候補者に研修を行っていきたいと考えている。17年度の評価のために、12月1日には評価員候補者の研修を早速行いたい。それから評価員の研修も行っていきたい。評価チームは大体5人の評価員で構成されるが、それぞれに評価責任者を設定している。管理運営や財務の評価も行うので、それを行う方の研修もやっていきたいと考えている。

委員  短期大学基準協会の会員の中から全部評価員を出し、評価を行うのか。

申請者  基本はそうである。

委員  高等教育全体、社会全体としての評価はどのように行うのか。

申請者  評価員は短期大学関係者に加えて学識経験者等の参加も考えている。また、第三者評価委員会あるいは理事会には外部の方にも入ってもらうことになる。

委員  短期大学の課程は2年であり、評価を7年待っていると相当大きな変化があると思うが、その点についてどのように考えているのか。また今の御時世、不適格となった短期大学は消滅するのではないかと思うが、改善を促すというのであれば、もっと早い段階で取り掛かる必要があるのではないか。

申請者  認証評価制度は平成16年度から導入され、各短期大学は7年以内ごとに評価を受けることが義務付けられている。7年の間には短期大学の情勢、高等教育全体の情勢が変わると思われるため、評価システムを常に見直すなどの対応を考えている。

【独立行政法人 大学評価・学位授与機構からの説明及び質疑応答】

 独立行政法人大学評価・学位授与機構では平成12年度から試行的に評価を行ってきた。その経験を生かして、この度申請を行った。大学と短期大学の2つの機関別評価に申請を行ったが、評価基準の構想や評価方法は基本的に同じなので、前者を中心に説明を行いたい。資料は黄封筒に入っているものを主に使う。
 認証評価の目的として3点挙げてある。具体的には1我が国の大学の教育研究活動等の質を保証すること、2評価結果を各大学にフィードバックすることにより、その教育研究活動等の改善に役立てること、3大学の教育研究活動等の状況を明らかにし、それを社会にわかりやすく示すことにより、大学の運営等について広く理解が得られるよう支援・促進すること、である。
 その目的を踏まえて基本的な方針として6点を挙げてある。具体的には1大学評価基準に基づく評価、2教育活動を中心とした評価、3各大学の個性の伸長に資する評価、4自己評価に基づく評価、5ピア・レビューを中心とした評価、6透明性の高い開かれた評価、であるが、2は質の保証の観点から教育活動を中心に評価を行うというものである。456は今回の申請に当たり、基本的な方針に加えた。
 評価の実施体制については、大学機関別認証評価委員会あるいは短期大学機関別認証評価委員会を組織して実施に当たることにしている。これらの委員会は既に立ち上げてある。
 評価の実施方法等であるが、具体的な大学評価基準について説明したい。教育活動を中心として大学の総合的な状況を評価するために11の基準を定めている。例えば基準1「大学の目的」では目的が明確に定められているか、学校教育法で定められた大学の目的に適合しているか、大学の構成員に周知されているか、あるいは社会に広く公表されているかといったことを挙げてある。
 これら11の基準は各大学に必須の基準として設けてあるが、この他に大学の希望により選択的に実施する選択的評価基準を設定しており、各大学の希望になるべく沿えるように工夫してある。当面は「正規課程の学生以外に対する教育サービスの状況」を選択的評価基準として実施を予定している。「研究目的の達成状況」については実施体制が整った段階で行うこととしており、早ければ18年度からの実施を目指して現在検討を進めている。
 2頁の頭に「各基準ごとに、基準を設定した意義・背景を説明する『趣旨』を記載するとともに、その内容に即して教育活動等の状況を分析するための『基本的な観点』を設けており」とあるが、これについては申請書類を御覧いただきたい。例えば9、10頁では「教育内容及び方法」について、課程ごとの大学評価基準の後に、その基準を設定した「趣旨」と自己評価に当たっての「基本的な観点」を記述している。評価対象大学にはこれらの趣旨や基本的な観点を踏まえて大学の状況を分析・整理していただきたい。なお、各大学の特色・個性を生かした評価も重要な方針であり、それぞれの目的に照らし、独自の観点を設定した上で自己評価を行うことも可能なシステムを採用している。
 評価のプロセスとしては次の通り。まず上述の形で各大学に自己評価をしていただき、その状況を踏まえた上で11の基準について、各々を満たしているかどうかを理由とともに判断する。次に11の基準全てを満たしている場合に機構の大学評価基準を満たしていると判断し、評価報告書により公表する。なお基準を満たしているかどうかの判断に加え、基準を満たしているもののうち優れているもの及び改善の必要が認められるものについては、その旨を併せて指摘することにしている。選択的評価基準については満たしているかどうかではなく、当該大学としての達成状況等を分析してその内容を公表する。
 評価方法は自己評価書に基づく書面調査と訪問調査である。
 認証評価の特色である追評価については、大学の教育研究活動等の改善に役立てる観点から、大学評価基準を満たしていないと判断された大学にはその意向に基づき、満たしていないと判断された基準に限定して評価実施年度の翌年度または翌々年度に追評価を行うことにしている。その際には評価後に行われた改善に向けた取り組みと前回の結果を合わせて評価を行う。
 短期大学については、基本的な枠組み及び評価方法等に大きな違いはない。短期大学評価基準5「教育内容及び方法」の構成が違うのは課程の編成が違うので当然のことであるが、併せて「趣旨」や「基本的な観点」にも違いがある。
 以上で概略の説明を終わるが、宜しくお願いしたい。

委員  大学、短期大学両方の申請を出しているが、評価項目はほとんど同じに思える。両者は多少、教育目標が違うと思うが、その点についてどう考えているか。

申請者  実際の評価に当たっては、基準1において個々の大学の目的を示した上で、基準2以降においてそれぞれの目的を踏まえながら各基準に挙げている事柄について分析するため、それぞれの機関としての個性が反映された形となるよう配慮している。

事務局  評価の目的の中には評価結果をフィードバックすることで各大学の教育研究活動等の改善に役立てるということがあるが、責任ある組織運営システムの確立という観点から学長が学部及び研究科の状況を把握するシステムについてはどのような評価を行うのか、説明をお願いしたい。
 また、教育研究組織の構成の機能面からの見直し、改組転換についてはどのように評価されるのか。さらに「教育の質の向上及び改善のためのシステム」では、成績評価基準や単位認定などについて内容や質をどのように評価されるのか。

申請者  学長のリーダシップを含めた責任ある組織運営システムの確立については、具体的に基準の11の管理運営において、「管理運営体制が機能しているか」「各構成員の責務と権限が明確になっているか」を評価することにしている。その辺りを含め、大学の管理運営が適正に、各大学の目的目標達成のために行われているかどうかを見ることで十分に判断しうると思っている。特に大学評価基準は大学全体としての教育研究等の状況について評価を行うわけであり、管理運営が十分でない特定の研究科等があれば、大学全体の管理運営に響いてくるものと考えている。今御指摘いただいた点は基準の適用に当たって十分考慮すべきものと考えている。
 教育研究組織の問題及び成績評価基準については、例えば、基準9「教育の質の向上及び大学全体の取組み」の中で、大学全体の取り組みについて、問題点等も含め十分分析しうる仕組みになっていると理解している。御指摘いただいた点については、実際の評価に当たり基準を適用していく中で、大事なポイントとしていきたい。

委員  「教育内容及び方法」、「教育の成果」の評価のところで大学全体としての状況について評価を行うことになっているが、学部・研究科ごとの評価と大学全体としての評価の関係を教えていただきたい。大学全体として基準を満たしているが、ある学部・研究科は基準を満たしていないということもありうるのか。その辺りの評価結果の表し方も含めて教えていただきたい。

申請者  これについては基準を設定すると同時に委員会の中で検討を進めている段階である。現段階の考え方ではあるが、各大学に大学全体の活動の基礎としての学部・研究科等の取り組みについて十分把握し、それを分析するよう求めていくことになろうかと思う。

委員  研究科や学部別の評価をするのではなく、あくまでもそれらを踏まえて大学全体としての評価を行うということで良いのか。

申請者  これについては試行評価の中で全学的な評価経験があり、その経験を踏まえて行っていく。具体的には評価方法を詰めていく中で考えてまいりたい。またそれが各大学に十分伝わるように努めてまいりたい。

 次回の日程
 次回は、平成16年11月11日(木曜日)14時〜16時に開催することとなった。

(高等教育局高等教育企画課高等教育政策室)


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