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資料 5

短期大学及び高等専門学校の在り方について
総会への審議経過報告


平成12年11月22日
大学審議会
短期大学及び高等専門学校の
在り方に関するワーキンググループ
 
はじめに
   本ワーキング・グループは、平成11年11月18日の総会において、短期大学及び高等専門学校の在り方について、総会での審議に先立ち議論の整理の作業を行うことを目的として設けられたものである。
   本ワーキング・グループは、これまでに、ヒアリングを含めて6回の会議を重ねてきた。この報告は、今期の審議が終了するに当たって、ワーキング・グループとして総会に対して審議の経過を報告するものである。
T 短期大学及び高等専門学校の現状
 
1. 短期大学の現状
 
   短期大学は、大学の目的に代えて「深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成する」ことを目的として、修業年限2年又は3年の短期高等教育機関として位置付けられ、その制度創設以来、私立学校を中心に発展し、我が国の高等教育の重要な一翼を担ってきた。
   また、修業年限が短期間であること、地方分散型・地域密着型という特色があることなどから、特に女性に対する高等教育の普及の面で大きな役割を果たしてきた。
   しかしながら、近年、科学技術の高度化、社会の複雑化・高度化の進展等による女性の高学歴志向の高まりや、18歳人口の急激な減少等により、短期大学を取り巻く状況は大きく変化してきている。
 
(1) 学生の進路意識の変化
専門職業志向
     専門職業に対する社会的な需要の高まりなどを受けて学生の専門職業志向が強まっており、短期大学においても、看護関係、教育関係、福祉関係等、職業資格を取得できる学科への進学意欲が強まっている。
 
女性の高学歴志向の高まり
     近年の科学技術の高度化等の社会の変化を受けて、女性の大学への進学者数が、短期大学への進学者数を超えるなど、女性の高学歴志向が高まっている。
   このため、短期大学では、大学への編入学制度の充実や専攻科を設置するなどの取組が行われている。
 
(2) 生涯学習社会への対応
     人々がゆとりや心の豊かさなどの多様な価値や自己実現を求めるようになっていることや、社会人が技術革新の進展、産業構造の変化に対応した新しい知識・技術を修得することが重要となっていることなどを背景として、今後一層生涯学習需要が高まり、高等教育機関は、幅広い年齢層の学習需要にこたえていくことが必要となっている。特に、短期大学は地域に密着した身近な高等教育機関であるという特徴を生かして、幅広い生涯学習需要にこたえていくことが期待されている。
 
2. 高等専門学校の現状
       高等専門学校制度は、高度経済成長の中、我が国の工業の発展を支える中堅技術者の養成を望む産業界の需要を背景に、昭和37年度に創設された。
   制度創設以来、中学校卒業者を対象とした5年一貫の教育の中で、学年制を採用し、学級を基本としたきめ細かい教育、一般科目と専門科目をくさび形に配置した教育課程、実験・実習を重視した実践的教育等の特色により、発想力豊かな実践的技術者を養成する高等教育機関として産業界からも高い評価を得て今日に至っているが、高等専門学校を取り巻く状況にも次のような変化が見られる。
 
(1) ものづくりに関する技術の強化への対応
     若年層を中心としたものづくり離れや生産拠点の海外移転等を背景に、産業界の各分野で我が国の経済発展において重要な役割を担ってきた、ものづくりの基盤となる技術の空洞化が懸念されるようになってきている。
   高等専門学校は、実践的技術者を養成する教育機関として、ものづくりに関する技術を創造し、発展させる人材を育成する上で大きな役割を担っていくことが期待されている。
 
(2) 科学技術の高度化、社会の複雑化への対応
     近年の科学技術の高度化、社会の複雑化・高度化の中で、若者の高学歴志向が高まっている。
   高等専門学校の卒業者のうち、大学の3年次や高等専門学校専攻科への進学者が現在3割を超え、10年間で約3倍となっており、高等専門学校卒業生の進学志向も年々顕著になってきている。高等専門学校専攻科は現在までに33校に整備されているが、このような状況を踏まえ、高等専門学校における専攻科の整備が重要な課題となっている。
 
(3) 高等専門学校の規模
     高等専門学校は、制度創設以後、工業以外の分野への拡大等の制度の充実を経て、現在、国立54校、公立5校、私立3校が設置されており、設置形態としては国立学校が中心となっている。また、18歳段階の高等教育機関在学者のうち高等専門学校の学生の占める割合は約1%、それを工業系分野に限っても約5%と、高等教育機関の中では小規模な学校種となっており、社会的認識の面で様々な問題が指摘されている。
 
II 短期大学及び高等専門学校の制度上の位置付け等に関する検討課題
     本ワーキング・グループでは、短期大学及び高等専門学校の現状を踏まえるとともに、高等教育の普遍化、生涯学習社会への移行、男女共同参画社会の実現、高度な知識が求められる社会における多様な高等教育需要の増大等の我が国の高等教育全般を取り巻く課題を視野に入れて審議を行ってきたところである。ここでは、その審議における主な議論を示すこととするが、これらについては、後記Vに示す視点を含めて、更に検討を進める必要があると考える。
 
1. 短期大学の制度上の位置付けと大学の修業年限の在り方について
 
(1) 検討の出発点として、高等教育に対する需要の増大、多様化と短期大学の役割の変化をどうとらえるかについては、次のような議論や意見があった。
 
グローバリゼーションの進展により一層人々の流動性が高まるとともに、科学技術の不断の進歩により、ますます高度な知識が求められる社会に向かうと考えられる。また、人々の流動性を支えるために生涯学習が重要な役割を果たし、学習の成果が一層問われる社会となると考えられる。その中で、高等教育に対する国民の需要はますます増大するとともに、その求める内容は一層多様化すると考えられ、高等教育機関がこれに柔軟に対応していくことが求められる。
 
高等教育機関への進学率の飛躍的上昇や生涯学習需要の高まりなどを背景として、平成10年10月の大学審議会の答申にもあるように、今後、例えば、総合的な教養教育の提供を重視する大学、専門的な職業能力の育成に力点を置く大学、地域社会への生涯学習機会の提供に力を注ぐ大学、最先端の研究を志向する大学等、個々の大学が多様かつ個性的な目的・特徴と独自の存在意義を持ちながら教育研究を展開していくことによって、大学全体として社会の多様な要請等により一層適切にこたえていくことが期待されるのではないか。
 
一方、短期大学は、短期大学制度の恒久化当時の状況を踏まえ、「職業又は実際生活に必要な能力の育成」を目的として、これまで、特に女性に対する高等教育の普及の面で大きな役割を果たしてきたが、今後、我が国が目指すべき男女共同参画社会においては、女性も男性と同様に高度な専門職業能力を身に付け職業人として自立していくことが求められるようになり、従来のように、女性を主たる対象とするのみならず男性を含めた短期高等教育機関としての役割も増大していくのではないか。
 
このような状況の下で、今後、短期大学は、これまでの特色ある教育は大切にしつつも、さらに、2年又は3年の教養教育又は特定専門分野の職業教育を行うほか、大学への編入学機能や地域に密着した生涯学習機能を果たしていくなど、多様な発展を遂げることが期待され、人材養成における大学と短期大学の果たす役割が相対化する傾向はますます強まるのではないか。
 
大学と短期大学の果たす役割が相対化する状況においても、これまで短期大学が担ってきた短期の高等教育については、高度な知識が求められる社会における高等教育需要の増大と生涯学習社会における国民の学習需要の多様化を背景に、短期ということからよりアクセスしやすいものとして、今後ともその必要性は変わらないばかりか、むしろその意義はますます大きくなっていくのではないか。
 
今後の社会においては、専門分野別の学修の達成度を示す学士の学位や準学士の称号が社会的通用性を持つようになり、また同時に、ある学部・学科においてどのような専門分野の学士の学位や準学士の称号を与え得る教育課程が組まれているかが重要な意味を持つようになると考えられるのではないか。
 
(2) 短期大学の制度上の位置付けについては、大学の修業年限の在り方を含め、次の  ような議論や意見があった。
 
(大学の修業年限の在り方とその中での短期大学の位置付けについて)
 
学校教育法において、大学の目的とは別に現在の「職業又は実際生活に必要な能力の育成」という短期大学の固有の目的規定を今後とも維持する必要性は乏しいのではないか。
 
大学が、今後ますます高度な知識が求められる社会において知識や技術を適時適切に提供するなど、国民の多様な学習需要に応じた教育機会を柔軟に提供することができるようにするとともに、国民が生涯の様々な段階でその求める教育を幅広く選択できるようにし、国民にとってよりアクセスしやすい大学を実現するとの考えに立って、同じ目的の下で、大学の修業年限を弾力化して短期の修業年限を認めることとしてはどうか。
 
大学の修業年限の弾力化を行う場合には、社会の側から学生がどのような専門的能力を身に付けているかという達成度を判断することができるようにする観点から、これと併せて、修業年限4年以上の学士課程、修業年限2年又は3年の準学士課程という学修達成度を示す課程の概念を導入し、それぞれまとまりのある完結した教育課程を提供するものとして位置付ける必要があるのではないか。この場合、 現在の短期大学については大学の準学士課程あるいは準学士課程のみを置く大学として位置付けられることになるのではないか。
 
大学の修業年限を弾力化し、短期大学を大学の準学士課程として位置付けることは、今後の我が国の高等教育にとっての転換点となるので、大学制度全般との関わりの中で、国際的な通用性を踏まえつつ検討する必要があるのではないか。また、短期大学の在り方については、短期大学の個性を強化し活性化する、質の向上を図るという観点から、更に検討することが必要ではないか。
  (学士課程、準学士課程を大学制度上位置付けることの意義と内容について)
 
現行制度上、大学と短期大学とは別個の組織としての設置認可を受けなければならないが、1つの大学の組織の中に学士課程と併せて準学士課程を置き得ることとなれば、大学が自らの教育目的や目標に沿って、同一の管理運営体制の下で学士課程や準学士課程を柔軟に組み合わせ、人々の学習需要に的確にこたえることができるのではないか。
 
同じ大学という制度の中で学士課程と準学士課程という修業年限や学修達成度の異なる課程の教育を提供するという考え方からすれば、両課程の教員資格等の基準については基本的に共通のものとなり、 大学の判断によって、同一の教員組織の下で、両課程の連携を確保し、学生の課程間の移動等についてもより柔軟に対応することができるようになるのではないか。
 
学士課程、準学士課程という概念を導入したとしても、両課程は相互に独立したものであり、それぞれの課程の方針に基づいて入学者を選抜し、各々まとまりのある完結した教育課程を提供するものと考えられるので、両課程の教員資格は区別し、教員組織も別々にすべきではないか。
 
(学士課程の途中段階の学修成果の評価)
 
生涯学習社会を推進する観点から、例えば、学士の学位の取得を目指す課程にいた者が途中段階で進路を変更したり、いったん社会に出て再び大学に戻ってくるような場合に、当該途中段階の学修の成果について一定の評価を行うことが考えられる。このため、学生から要請があった場合において、一定の要件の下、当該学生の学士課程における学修が準学士相当と認められるようなまとまりのあるものであったと認められるときは、準学士の称号を与えることができるようにすることも考えられるのではないか。
 
学士課程の途中段階の学修の成果について評価し準学士の称号を与えることは、学士課程と準学士課程が各々まとまりのある完結した教育課程を提供するという趣旨にかんがみ、適切でないのではないか。
 
  以上の意見等を踏まえて、今後、次のような課題について更に検討することが必要である。
 
1 大学の修業年限の在り方とその中での短期大学の位置付けについて
2 学士課程、準学士課程を大学制度上位置付けることの意義と内容について
3 学士課程の途中段階の学修成果の評価について
 
2. 高等専門学校の制度上の位置付けについて
 
1. 短期大学の制度上の位置付けと大学の修業年限の在り方について
 
(1) 高等専門学校が今後果たすべき役割については、次のような議論や意見があった。
 
我が国の産業基盤は高度な技術と技能に裏打ちされた、ものづくりによって支えられてきたと言われているが、近年ものづくりの基盤となる技術の空洞化が懸念されており、今後、ものづくりに関する技術を創造し発展させるような人材の育成が重要な課題となっている。
 
高等専門学校は、5年一貫の技術教育を行う実践的技術者養成機関として発展し、その教育成果は産業界等から高い評価を受けてきており、今後とも、ものづくりに関する技術を創造し発展させる人材を育成する上で大きな役割を果たすことが期待される。
 
産業技術の高度化に伴って、新技術の創造を可能とするような高い創造性を持った人材の供給が求められており、高等専門学校について、教育内容を科学技術や学術の進展に即応させるための研究機能を持たせることが必要となっているのではないか。
 
(2) 高等専門学校の制度上の位置付けについては、次のような議論や意見があった。
 
高等専門学校を中学校卒業を入学資格とし、後期中等教育段階から一貫して教育を行う大学として位置付けることが適当ではないか。また、このような大学の3年次修了者については、現在の高等専門学校の3年次修了者と同様に大学入学資格が認められることとしてはどうか。
 
このような大学の法制上の位置付けについては、その特性を踏まえ、学校教育法第1条に規定する大学とは別の学校種とすることや、名称(「専科大学」等)等について更に検討する必要があるのではないか。
 
後期中等教育段階を含む学校を大学と位置付けることには、法制上の整理が必要ではないか。
 
  以上の意見等を踏まえて、今後、次のような課題について更に検討することが必要である。
 
1 高等専門学校の制度上の位置付けの見直しについて
2 1を踏まえた高等専門学校の名称の在り方について
 
3. その他
 
     現在、短期大学及び高等専門学校の卒業者には、大学評価・学位授与機構による学士の学位授与の基礎資格が認められ、同機構の定める要件を満たす専攻科で一定の学修を行った者等については、学位が授与されることとなっている。その場合の一定の学修の中には、法令上の定めはないが、同機構の定めるところにより、大学における16単位以上の単位の修得が義務付けられている。
   このことについては、学位が授与されるためには大学評価・学位授与機構が認定した専攻科における学修でなければならないこと、申請を行った者に対し個別に審査がなされること、平成3年の制度創設以来、同機構による専攻科の認定が定着しつつあると考えられることなどを踏まえ、今後の生涯学習需要の多様化、高度化により柔軟に対応できるようにする観点から、同機構が認定した専攻科で所要の学修を行った者については、大学における16単位の修得を求めないことが適当である。
 
III 今後の検討について
 
     今後の短期大学及び高等専門学校の在り方については、前記Uで提起したような具体的な検討課題がある。
  一方、この問題について、今後、総会等で更に検討するに当たっては、現在進行している教育改革、大学改革の検討状況についても留意する必要がある。例えば、最近においても、教育改革国民会議の中間報告「教育を変える17の提案」(平成12年9月22日)において、大学の学部では、教養教育と専門基礎を中心に行い、大学院へは学部の3年修了から進学することを一般的なものとしてはどうかといった提言がなされるなど、大学の学部教育の在り方について検討すべき課題がある。
  また、このワーキング・グループでは、総会から託された審議事項である短期大学及び高等専門学校の在り方を中心として審議を進めてきたが、短期高等教育機関全般という広がりでとらえた場合、専門学校(専修学校専門課程)が、実際的な知識・技術等を修得するための実践的な職業教育・専門技術教育機関として重要な役割を果たしてきていることから、専門学校の在り方についても視野に入れつつ検討することが必要である。
  さらに、今日、社会、経済、文化のグローバル化が急速に進展しており、短期高等教育機関に対しては、生涯学習需要への積極的な対応、国際的な交流・貢献の在り方を含め、その特性を生かした改革方策が求められている。そして、このことについては、本審議会の「グローバル化時代に求められる高等教育の在り方について(審議の概要)」(平成12年6月30日)においても、短期大学及び高等専門学校の制度上の位置付けの検討に当たって、グローバル化時代への対応という観点を踏まえて検討を行う必要がある旨言及しているところである。
  今後、総会等において短期大学及び高等専門学校の在り方について検討を行うに当たっては、前記Uで提起したような具体的な課題について、上に述べた各観点をも視野に入れつつ具体的に検討を進めていくことが必要であると考える。

 

(高等教育局高等教育企画課)

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