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中央教育審議会大学分科会将来構想部会

2002/01/24議事録
中央教育審議会大学分科会将来構想部会(第5回)

中央教育審議会大学分科会将来構想部会(第5回)

1 日時  平成14年 1月24日(木)15:00〜17:00

2 場所  文部科学省別館大会議室(郵政事業庁庁舎11階)

3   出席者 (委      員) 鳥居泰彦(会長),高倉   翔(副部会長),中嶋嶺雄の各委員
  (臨時委員) 天野郁夫,猪口邦子,荻上紘一,黒田壽二,島田Y子,関根秀和,山崎正和の各臨時委員
  (専門委員) 青山善充,大南正瑛,越原一郎,松本浩之の各専門委員
  (文部科学省) 御手洗文部科学審議官,結城官房長,林大臣官房審議官,田中総括審議官,工藤高等教育局長,石川私学部長,清水高等教育局審議官,板東高等教育企画課長   他

4 議題

(1)大学等の設置認可の望ましい在り方等について
(2)その他

5 配付資料

資料 1   将来構想部会(第4回)議事要旨(案) (略)

資料 2   目的による大学評価の類型例

資料 3   大学の教育研究の質の保証のためのトータルシステムに係る主な論点

資料 4   設置認可と第三者評価等によるトータルシステムの例(検討のたたき台)

資料 5   大学等の質の保証に係るトータルシステムのイメージ(案)

資料 6−1 法科大学院の設置基準等について/論点を反映した骨子

資料 6−2 「法科大学院の設置基準等について/論点を反映した骨子」について 〜抜粋〜

資料 7   日本技術者教育認定機構(JABEE)

資料 8   大学分科会の今後の日程について

参考資料  アメリカにおけるアクレディテーション団体の認証の仕組み

6   議   事
     
(1) 設置認可とアクレディテーションの関係について、事務局からの資料説明の後、自由討議を行った。
(2) アクレディテーションの義務付け及び効果について、事務局からの資料説明の後、自由討議を行った。
     
(○:委員,●:事務局)
     
【設置認可とアクレディテーションの関係について】
     
     設置認可とアクレディテーションの関係については、これまでのこの部会での議論は設置認可は緩和し、アクレディテーションにより大学の質を保証するというものだったと思う。平成13年12月26日の第8回法科大学院部会で「法科大学院の設置基準について/論点を反映した骨子」が公表され、平成14年1月11日の司法制度改革推進本部法曹養成検討会では、司法制度改革審議会の意見書を具体化する方向である。それらはここでの議論とは方向が異なるが、ここでの議論の方向性は従来通りでよいのか。法科大学院の設置を考えている大学へのアンケート結果によると、法科大学院での受け入れ学生数は5〜300人まで様々である。例えば、5人では研究科にも専攻にもなり得ないのでコースということになるが、現行制度では学科までが設置認可の対象なので、コースでは設置認可がフリーパスになるのではないか。その辺りの方向性がまとまっていない。法科大学院に関しては一つの公的なアクレディテーション機関を考えているが、一般大学院には複数の民間団体を想定しており、これについても方向性が逆である。法科大学院は全く新しい専門大学院なので、整理の仕方が異なることもあると思うが、そこは明確にするべきだ。
     
     設置認可とアクレディテーションの二元的大学運営は戦後の大学制度の理念だが、実際には大学基準協会が機能しなかった。平成13年12月の総合規制改革会議第一次答申は、従来の文部科学省の大学行政の在り方を根本的に変えるものだ。閣議決定されたのであれば、その答申の具体化に向けてこの場で議論を行うのか。様々なアクレディテーションの試みが始まっているが、それらと関係なく総合規制改革会議で議論されているように思える。
     
     法科大学院部会での検討は、司法制度改革審議会の意見書を受けたものだ。平成16年からの学生受入れに向けての準備と具体的な中身の構想を考えると、非常に厳しい時間的制約がある。司法制度改革審議会では、設置認可や評価システムを含めて、司法試験の受験資格としての法科大学院の質の保証を議論している。法科大学院の設置基準、職業学位等に関する様々な場での議論を、法科大学院固有のものと考えるのかについては今後の検討課題である。全体との整合性あるシステムにしなくてはならない。
     
     総合規制改革会議は平成13年12月11日に第一次答申を出し、同月18日に閣議決定された。その答申に関する骨子等はこの場でも何度か議論をいただき、それをフィードバックしてきた。総合規制改革会議の基本的な考え方は、競争的環境に向けて大学の設置の緩和を進め、第三者による評価認証制度を整備し、質の高い教育・研究活動をできるようにするということだ。設置認可の緩和としては、全体的に最低限の規制になることを目指すので、アクレディテーションに完全に移行するのではない。全体の方向性について平成14年に検討・結論を出すとしている。大きな方向性は、ここでの議論と一致している。今後もこの件に関しては、議論をいただきたいと思っている。
     
     アクレディテーション団体が文部科学大臣の認可により設置され、その審査での法令違反を文部科学大臣に報告し、その結果として法人の取消もあり得るという考え方のようだ。アメリカでは団体に加盟するかどうかは自由で、加盟することが評価となる。日本では加盟を義務付けし、法令違反があれば大臣が取消を命ずるのであれば、アクレディテーション団体はボランタリーな団体ではなく、政府の下請けになるのではないか。
     
     設置認可とアクレディテーションの関係については、今後も検討を重ねていただきたい。アクレディテーションの義務付けの有無や、機関別・専門分野別等で評価を分類するのか。アクレディテーションの効果等も含めて議論していただきたい。総合規制改革会議の答申に関しては、今後の制度設計の参考の一つとしてお考えいただきたい。
     
     文部科学省は大学に対して廃校命令は出せても、途中の指導権限はないと聞いたが、明白な法令違反や教育研究上の大問題を抱えた大学を現在の制度で勧告し得るのか。
     
     設置認可した大学については指導しているが、改善命令・勧告等是正のための措置が認められていない。学校教育法第14条に、法令の規定等に違反した場合の変更命令が定められている。しかし、この規定は私立学校法第5条第2項により適用除外されており、変更命令が出せない。学校教育法第13条に学校の閉鎖命令が定められているが、現実には故意に法令違反したケースに適用するのみである。
     
     認可制度がある以上、チェック機能が働くのが当然だ。なぜ私立大学は適用除外なのか。
     
      私立学校法の基本的理念は私学の自主性の確保であり、その特性を尊重するためである。
     
     自主性を認めるのであれば、そもそも設置認可も不要なのではないか。
     
    諸外国においても、学位授与権を有する大学等については設置認可を行っている。最初の段階で、大学としての通用性を持つことを認可することが最低限必要だ。
     
     私立学校法第5条第2項で、私立学校には学校教育法14条を適用しないとされている。しかし、私立学校法第50条第1項第6号では、所轄庁つまり文部科学省からの解散命令を定めている。また、同法第62条によると、私立学校に対して所轄庁の監督が想定されている。個人的解釈としては、文部科学省は私立学校法第62条に基づき私立大学を監督し、法令違反等の場合には、同法第50条に基づき解散命令を出すべきである。
     
     以前に事実上は不可能だと聞いたが、そうではないのか。今後、設置審査を簡素化するのに伴って認可の取消を行うとしているが、それは廃校命令と同じなのか。
     
     「認可の取消」という言葉は法体系の中にはないと思う。強いて言えば、学校教育法第4条に「設置廃止」とあるのが、私学に対する認可取消なのではないか。
     
     この「設置廃止」は、私立学校側からの廃止申請を認可することではないか。これで認可の取消が出来るという解釈ではないと思う。
     
     我々が「認可取消」と言う場合は、大学設置・学校法人審議会で審議し大臣が認可したものを取り消すことは出来ないのかということだ。
     
    学校教育法第4条の規定は、私学側からの申請によるものである。大臣が認可したものの取消は、学校教育法第13条の閉鎖命令が該当するが、閉鎖・解散命令はかなり悪質でないと無理なので、改善・是正をする新たなシステムを考えるべきだと思う。
     
     文部科学大臣の「是正命令」は、従来の規制の中にはないので、新しく作るということか。
     
    今はない。法律上働いていない「変更命令」は、含んで考えてよい。
     
    総合規制改革会議の議論は、国の関与の在り方を見直すためのもので、設置認可についても議論いただいている。この部会での議論は、文部科学大臣の諮問によるものだ。総合規制改革会議の方がこの部会よりも先に答申が出たが、それに縛られずに考慮に入れて議論を深めていただきたい。日本の大学に対する圧力は国内だけではなく、国外からもある。我々が大学に対する権限を持ち続けるのではなく、大学がその努力により発展していけるようにしていきたい。設置認可とアクレディテーションの関係に関する議論は様々だが、私立学校法の基本は自主性である。設置認可の在り方を見直し、規制緩和すると、良い大学と悪い大学の差が広がるだろう。悪い大学が増加すると、日本の大学全体が汚名を浴びることになる。日本の大学としての質の保持や水準の向上に向けて、行政行為としての勧告・命令の方法を新たに考えるべきか等について議論いただきたい。
     
     本来は光り輝く大学を作るための議論である。某短期大学が、留学生に対する国際機関からの奨学金を留学生に渡していなかったことが発覚した。これは場合によっては、刑事事件になりかねないし、国際的にも問題がある。こういう機関を認可するところに今の設置認可制度の問題がある。
     
     設置認可については、国は一定の設置認可の責任を持つと思う。設置認可とアクレディテーションの双方に国が関与することは、大学等に対する大きな心理的圧力になるだろう。総合規制改革会議での案は、第三者による評価認証制度の導入について文部科学省の提案以上に突っ込んだことが書いてあるが、設置認可とアクレディテーション全体を国がカバーする重さを考えるべきだ。国は設置認可に関して税金を投入する責任を持たなければならない。アクレディテーションに関しては、複数の様々な民間団体を育てていくべきで、その過渡的な措置をこの場で議論していただきたい。大学の学位授与権という切り口を用いて新たな設置認可システムを構築してはどうか。EUでは国を越えたシステムを作る上で、学位の認証規定も統合しなくてはならない。日本でも学位授与権の内容を議論することを考えてもよいのではないか。また、収容定員や定員管理の問題については、事務局から幾つか案を出してもらって議論させていただきたい。
     
【アクレディテーションの義務付け及び効果について】
     
     教育・研究の質の担保の観点から一律にアクレディテーションの義務付けを行う必要があるのか。アクレディテーションの効果を資源配分にどう関わらせていくのか。
     
     アクレディテーションを義務化しないと、設置認可の緩和との整合性が取れないのではないか。JABEEの審査は厳しいが、これは日本の技術者の国際的通用性としての問題で、大学としての評価・認定とは別だろう。アクレディテーション団体は各々の目的に沿って認定するので、その意味での大学・大学院としての相応しい姿を模索するべきではないか。資源配分のためのアクレディテーションはすべきだが、私学助成に対しては早期にすべきではなく、慎重に考える必要があると思う。
     
     機関別と専門分野別のアクレディテーションについてどう考えるのか。
     
     機関別は、大学の学部や大学院毎のアクレディテーションなのか、または大学全体としてのものなのか。
     
     アメリカのものを参考に、大学全体でのものを考えているのではないか。事務局にはその辺りについて、資料の整理をしていただきたい。
     
     法科大学院と一般大学院の最大の違いは国家試験との関わりで、それがある場合には適格認定を義務付けるべきだと思う。それがない場合には、法令違反はアクレディテーション団体を通さずに文部科学省が直接是正命令を出すべきだ。ボランタリーな機関の行為は、ボランタリーな受入れが前提でなくてはならない。アクレディテーションは法令違反の取り締まりではなく、教育・研究内容の水準に関する重大な情報を公開するものだ。法令違反の場合に、文部科学省が是正命令を出すために、ある種の法律が強化されることになるだろう。行政の仕事として不透明な部分は最小化されなければならない。是正命令については、段階的にペナルティーを課すことが出来るようにするべきだと思う。また、アクレディテーションはマーケッタビリティの通用性において効力を持つべきだ。アクレディテーション団体と市民社会が成長してこなければ、アクレディテーションの重要性が正しく認識されないと思う。アクレディテーションの通用性は、社会の判断を取り込んで改善していく必要がある。
     
     アクレディテーションについては、専門分野別や機関別で問題が異なると思う。例えば、JABEEは工学教育を行う中で一定のレベルに達したものを認定するもので、今の工学教育を否定するものではない。法科大学院は、国家試験との関係が重要で法務省との関わりも深い。このような国家による規制には他省庁が絡んでいる場合もあるので、一括してアクレディテーションを考えるのは無謀だと思う。大学の最大の特徴は学位授与権で、その設置認可は教育機関としての大学を対象にすることだ。大学は人間形成機能を持つので、学部と大学院のアクレディテーションは別に考えるべきだ。アメリカのアクレディテーションは、当初連邦政府とは無関係であった。日本ではそれとは異なり、政府から始めようとしている。その違いを認識して議論するべきだ。
     
     資料2の「目的による大学評価の類型例」は、アクレディテーションの効果の整理とも捉えられる。しかし、この整理では国際的通用性の側面が入っていない。また、一つのアクレディテーション団体が幾つかの総括した機能を持つように議論されているが、各々の機能について別の評価機関を考えるべきではないか。
     
     アクレディテーション団体の理想型は紳士クラブだろう。加入の義務付けではなく、加入を制限することにより機能するのが本来の姿だと思う。ある水準の団体が更にその上を目指すようでなければならない。しかし、現実には敢えて加入しないという大学もあると考えられるので、その場合に備えて文部科学省が改善命令を出せるようにしておく必要がある。
     
     アクレディテーションは、義務ではなく任意であるべきだと思う。ただし、法科大学院等の専門分野別については、義務付けが必要だろう。効果については、文部科学省のその後の資源配分等の行政に直ちに結びつけるのは賛成できない。設置認可者の責任として是正命令や中間的措置が出来るように考えるべきだ。アクレディテーション団体の行動は自己完結的でよいと思う。不祥事を起こす大学があるが、それらは設置認可を厳しくしても防げないケースだった。設置認可後のアフターケアの仕方が重大なので、具体的な議論が出来るように事務局にケーススタディーを出していただき、議論を具体化・深化させるべきではないか。
     
     アクレディテーションについては、アメリカの制度との関係で考える傾向がある。文部科学省によるアクレディテーションの考え方は、アメリカ的アクレディテーションとはかなり距離があると思うが、アメリカの制度から触発を受けながら、良い制度にしていきたい。
     
     総合規制改革会議等の内閣の会議が改革を進めていくのはありがたいが、ある種のオーソライズを受けている中央教育審議会等が決めることとの関係が難しくなっている。双方が話し合う機会を持つべきだと思う。設置認可に関する文部科学省の責任については、アフターケアとして設置認可後4年間見続けている。その時の委員の勧告を制度としてどう扱うのか。アクレディテーションと設置認可の仕分けをどうするのか。大学基準協会はアクレディテーション団体のはずだが、設置認可制度によって意義を失ってしまった。現在では、その評価についての報酬は無料から1年間に1万円に変更したが、ボランティアではないという整理にすると、どこからお金を捻出するのか。何か独立行政法人のようなものを考える必要性が出てくるのではないか。それに伴い、学位の授与権についても再度整理すべきではないか。
     
     
7   次回の日程
   次回は、平成14年2月19日(火)に開催することとなった。



(高等教育局高等教育企画課)

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