教学マネジメント特別委員会(第8回) 議事録

1.日時

令和元年8月29日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 講堂

3.議題

  1. 教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)日比谷潤子座長
(副座長)小林雅之副座長
(臨時委員)佐藤東洋士、清水一彦、伹野茂、益戸正樹の各臨時委員
(専門委員)浅野茂、大森昭生、沖裕貴、川並弘純、小林浩、佐藤浩章、林隆之、深堀聡子、松下佳代、溝上慎一、森朋子、吉見俊哉の各専門委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長、玉上大臣官房審議官、白間私学部長、西田大学振興課長、武藤高等教育政策室長、平野大学改革推進室長 他

5.議事録

【日比谷座長】  おはようございます。まだお見えでない委員もいらっしゃいますけれども,所定の時刻になりましたので,本日は第8回目になりますけれども,教学マネジメント特別委員会を開催いたします。御多忙の中,御参集いただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,両角委員が御欠席です。
 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。机上の資料,議事次第に掲げてあるとおりでございます。資料の1から資料の5,タブレットには机上資料の1から机上資料の15が格納されてございます。お手元,抜けなどがある場合には,事務局までお知らせをお願いいたします。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 本日の議題は,「教学マネジメントを支える基盤」として,主にFDやSD,それから教学IRを中心に議論をすることにいたします。
 まず,FD・SDについて佐藤浩章委員から,それから教学IRについて浅野委員から,それぞれ15分程度で御発表をお願いしています。その後,事務局からの資料説明を経て,議論の時間としたいと思います。
 なお,お二人の委員からの御発表についての質疑は,事務局の資料説明の後にそれぞれ5分ずつ程度設けたいと思いますので,そのように御理解を頂ければ幸いです。
 それでは,早速ですが,佐藤委員,よろしくお願いいたします。
【佐藤(浩)委員】  発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。私の方からは,「教学マネジメントを支える基盤――FD・SDの高度化に向けた提言――」ということで発表させていただきたいと思います。
 発表内容につきましては,2ページ目に書かれておるとおりでございます。
 3ページ目に図がございます。こちらは,本委員会でも既に提示させていただいたものでございまして,4層のPDCAを回すことが教学マネジメントであるということを示したものということになるわけですが,今回のテーマであるFDやSDというのは,このサイクルを支える土台部分に当たるかと思います。以前,吉見委員が教学マネジメントの一丁目1番地は授業数の上限設定,学修時間の制御であるという話がありましたけれども,その発言には全く同意なんですが,17年間,FDの専任の担当者として働いてきた立場から申し上げますと,教学マネジメント一丁目の1番地は教員の教育力向上にあると私は申し上げたいと思っております。つまり,学生が日々受ける授業ですとかゼミでの個別指導,あるいは図書館や学生支援センター等で学生が受ける様々なサービスや教育の質を問わずして教学マネジメントは語れないであろうと考えております。
 次に,4ページになりますけれども,法令上でのFDとSDの定義をここで確認しておきたいと思います。まず,FDに関しましては,設置基準の第25条の3項にこのように書かれているということでございます。特徴なんですけれども,本来,これがFDと言われていますが,FDという用語自体は実はここには入っておりません。そして実施の主体は大学にあるということ,それから,授業内容と方法の改善に焦点が当てられているということ,また,組織的な活動であるということと,研修及び研究というものが入っているということになります。こういった定義がある中で,今回,FDの高度化というものは何を意味するのかということを考える必要があるかと思います。
 また,次のページにはSDの定義ですね。こちらも大学設置基準の第42条の3項にあるわけですが,ここにも実はSDという文字はございません。そして,実施の主体は大学であるということ。それから,職員には,教員や学長等の執行部,技術職員等も含まれるというのが書かれているということになります。このような文言を踏まえてのSDの高度化ということについても考える必要があるかと思います。
 次の2枚は,ざっと日本のFDの歴史を追ったものです。恐らく出発点としては1972年の広島大学大学教育研究センターの誕生が一つのきっかけにはなったのだろうと思うわけですけれども,様々な各大学での取組を受けて,1999年に設置基準上でFDの努力義務化というものがうたわれたということ,これが今から20年前ということになります。
 そして7ページのスライドになりますけれども,2008年に大学設置基準上によるFDの義務化,これがほぼ10年前ということになります。そして今,FDの努力義務化から20年たって,FDの高度化というものが正にここで議論されているということになりますが,このように政府主導で日本のFDは進展してきたと言ってよろしいかと思います。
 ざっくりですけれども,その次,8ページ目のスライドになりますが,諸外国での状況を見ておきたいと思います。ここで言う諸外国というのは,高等教育の先進諸国ということで,ヨーロッパあるいは北米諸国といったことを想定しておりますけれども,これらの国々の歴史を見ますと,学生運動というのが一つのきっかけになっているということですね。1960年代末,学生からの異議申立てに対して,大学教員や大学から,まずは自分たちの授業を見直そう,それからカリキュラムを見直そうと,そういう流れでFDが誕生したということでございます。30年ほどたった1990年代に入りまして,ヨーロッパ諸国を中心にFDの一つの究極の形に結実するわけですが,それが大学教員としての教育能力資格であったと私は考えております。2010年代に入りまして,各国の代表者とも今いろいろと情報交換しているんですけれども,アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国における進展が非常に目覚ましいんですが,この理由は高等教育の大衆化によるものです。ということで,やはり学生運動も正に大衆化に対する一つの流れというふうに考えると,つじつまが合うということになります。ほかの国を見ますと,政府ですとか専門家団体が方針を出して,その上で各大学や大学間連合,中には学長たちの申合せ事項として取り組んでいるところが多く,そういった自律的な取組によって先ほどの教育能力資格を求めるということが行われています。ただし、フランスのように法令上規定している国もあります。
 そこで,諸外国のFDを幾つか御紹介したいと思いますが,9ページ目のスライドにございます。イギリスは,2000年代半ば以降に「高等教育の専門性基準枠組み」というものに基づいて各大学で資格認定のプログラムの受講を義務付けているということで,私も実際にこのプログラムの一部を滞在先のキングス・カレッジ・ロンドンで受講しましたけれども,かなりしっかりしたプログラムを学んでいます。研究中心の大学でもそのような状況です。北欧の国々もいろいろありますが,スウェーデンは2000年代に一度,研修の義務化を法令上で義務化したところではあるんですけれども,その条文は一度廃止されましたが,現状はその条文よりも非常に厳しい条件で学長間の合意でそれが進んでいるということでございます。フランスは非常に日本に似ていて,FDが遅れていると言われていた国ですけれども,2018年からFDの義務化が始まっており,対象となる准教授につきましては,試用期間が1年間あって,その間にFDを受講するということです。非常に重要だなと思ったのは,教育業務負担の6分の1は免除して,その部分を研修に充てるということが法令上うたわれているということです。
 次に,2008年の中央教育審議会学士課程答申で指摘された「日本の大学におけるFDの現状」というものがあります。これは10年前に指摘された事項ではあるんですが,今お読みいただければ分かると思うんですけれども,ここに書かれている記述と2019年代の現状を照らし合わせてみてもほとんど変わりがない。つまり,FDに関して言うと,「失われた10年」あるいは「失われた20年」と言ってもいいのではないか。そういう状況下で、FDの高度化というものをどう考えるかということを議論する必要があると思います。
 11枚目のスライドは,私が所属しております日本高等教育開発協会でこれからのFDを見据えて作らせて頂いた,「2030年に向けた大学教員の教育能力の開発と評価についての7つの提言」,通称「FD2030」と呼んでおるんですけれども,このポンチ絵です。その中で幾つかの提言がなされております。詳しくは説明いたしませんが,今日は,ここでの提言の幾つかを使いながら個人的に5つの提言をさせていただきたいと思っております。
 最初の提言です。冒頭で喜多村先生の引用をさせていただいているんですけれども,幼児教育や初等中等教育段階の教員には教員免許というものが求められるわけですが,大学教員にはありません。就学率15%以下のエリート段階ということであればさておき,50%を超えたユニバーサル段階で,大学の教壇に立つ者には免許や資格が不要ということを根拠を持って言うことは本当に可能なのだろうかということです。大学教授というのは,資格を持たない最後の専門職という言い方をされることもありますけれども,この状況に終止符を打つときが来ているのではないかと考えております。ですので,教員は,体系的な研修を修了しているという証明とか,あるいは各種の教育業績を示すエビデンスを提示して,教育能力を保有していることを証明して,それに対して大学は資格を付与すべきではないかと考えております。また,大学はこういった資格を有している大学教員の人数や割合を社会に対して発信する必要もある。これは大学ではなくても,例えば国大協,私大協,私大連といった中間団体もこういったことを自ら法令上の規定がなかったとしても,本来は義務化して質保証の取組を社会に発信すべきだと考えております。
 ちなみに,周辺の話を補足ということでいたします。まず,昨今話題になっております実務家教員ですけれども,実務家教員もまた同じ状況です。これにつきましては,今年度,文科省の別部署で主管されている「持続的な産学共同人材育成システム構築事業」というものがありますけれども,これから実務家教員養成プログラムの全国展開が想定されています。また,看護師等の養成所においては,もう既に研修が義務化されています。厚生労働省のガイドラインに基づきまして,「現場経験5年以上」に加えて,「専任教員教諭として必要な研修を修了」することが求められておりまして,この研修は37単位(1,080時間)程度,半年間にわたってこういった研修を受けるということが義務化されているということです。ということは,専門学校教員には研修が必要で,大学教員には研修が不要という矛盾が今生じている。これは所管の省庁の方針の違いかと思います。
 次に,プレFDのお話をさせていただきたいと思います。こちらは,将来大学教員を目指す大学院生向けのプログラムということになります。今,旧帝大クラスでは,全ての大学で本プログラムの運用が開始されているところです。私どもの阪大でも2014年より実施しておりますけれども,フルでとりますと8単位です。つまり,360時間以上の履修を課して,修了した学生たちに対して修了証を出していると。もし皆さんの大学で新規でこの資格を持った我々の卒業生がいれば,是非積極的に雇用していただければと思います。こういった流れを受けまして,聞くところによりますと,この博士後期課程のプレFDに関しては,実施または情報提供の努力義務化が間もなく法令上施行されるということです。このように、外堀は大分固まってきているということでございます。残っているのは,大学院時代にプレFDを受講せず、ストレートに大学院から大学の教員になった人たちをどうするかという問題かと思います。
 そして,次のスライドになります。15枚目になりますけれども,御存じのように,大学設置基準の第14条には大学教授の資格というものが書かれております。ここには,研究能力に加えて,「大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有すると認められる者」という規定があります。しかしながら,多くの大学でこの能力は厳密に規定されておりません。つまり,ここが教育業績評価が進まない,あるいはFDが進まないという一つの原因になっていると考えております。今回の委員会でも議論になっております学修者中心の観点から申しますと,「卒業認定・学位授与方針」,つまりディプロマ・ポリシーでうたわれた能力・資質を反転させる形で教員に求められる資質・能力を明文化すべきだと考えております。例えば,ディプロマ・ポリシーに「多様な他者とともに課題解決ができる能力」というものを挙げたとすれば,教員にはその能力を育成する能力が求められる。各大学の教員はディプロマ・ポリシーでいろんな能力を書き連ねたわけですけれども,結局,それはめぐりめぐって我々教員自身の能力の向上ということにつながるということになるかと思います。
 こういった基準に関しては,専門団体が作成した基準なども参照としてはどうかということで,これも私どもが今年度示させていただきました。16ページのスライドには「大学教員の基本的な教育職能の基準枠組」と,大枠ではございますけれども,こういった能力を最低限身に付けるべきだという基準も出ております。こういったものが参考になるかと思います。具体的なプログラム等については,この後また見ていきたいと思います。
 次の提言3でございますが,17ページのスライドにございます。体系的で,かつ生涯にわたる段階的で統合的な能力開発の機会保障を義務化せよという提言ですけれども,労働者という立場で考えますと,これは権利ということになります。つまり,業務で必要な能力に関して,その能力開発の機会が保障されてないということに対して,労働者としてはFDの機会をもっと要求すべきことなんだろうと思います。しかし,FDはなかなかそういう認識で捉えられず,義務化というふうな言葉だけが飛び交っているということかと思います。以下が望ましい例ということなんですけれども,例えば愛媛大学ですが,2013年から始めたテニュア教員育成プログラムによりますと,100時間の研修の義務化ということです。追手門学院大学も同様に100時間。阪大も30時間の研修,これにはかなりの反発がありましたが,何とかこのような状況まで来ました。金沢工大はもっと早くから5日間の研修を義務化されている。これは過去の未受講者はゼロだと聞いておりますけれども,かなりインテンシブな研修をされているということでございます。
 また,次のページには,FDといった場合にすぐに研修会というのがあるんですが,実は様々な内容がありますよということで,ミクロレベルの授業レベルに関してもここに書かれているような様々な方法がございます。また,現状での法令の規定の中には入っておりませんけれども,カリキュラムや制度・規則に関しても学ぶべきことというのは多々あると。その方法も様々であるということをここでは示させていただいております。
 次ですが,19ページには,ファカルティ・ディベロッパーを配置するということで,私がまさにこの仕事をこの17年間やってきたのですけれども,結局,各大学でなかなかFDが進まない理由の一つは,誰がやるのか,誰が猫の首に鈴を付けるのかという問題かと思います。私は若かったのでよく分からないままに就職してこの仕事をやってきたんですけれども,普通,やりたがる方はおられません。こういった専門職と言ってもいいと思うんですけれども,FDの専任の担当者を配置する必要がある。ここには、FD活動を担う4つのアクターというふうに書かれております。一般教員の先生方がもちろん中心的に担うことも大事ですし,学部の教育責任者,全学の教育担当の管理職の方も大事なんですけど,やはり専門家がそこに入ることによってより活動は豊かなものになるのではないかと思います。教員の能力開発は教員の個人努力に任せるべきものではないと書いてございます。これは,よくこういう話をしますと,例えば教員の能力開発は,それは当然教員がするべきことで,お金を出すことではないという言説が,財務省ですとか財界の皆さんが言われます。しかし,社員の能力開発は社員が勝手にすることで,そこにお金を出すべきではないという,そういう言説は多分主流派ではないと思うんですね。額はともかく,しっかりと賢明な企業というものはこういった能力開発に人もモノも投資しているかと思います。是非それをここではやるべきだと思います。ですので,私としましては,まず,FDの責任部署ですね,これは委員会でもセンターでも構わないんですけれども,これをしっかりと整備して,担当者を付ける,配置するということの後押しが必要かと思っております。
 そして提言の5番目,最後になりますけれども,こちらはSDでございます。SDに関しましては,教学マネジメントに関わる内容ということで限定しておりますけれども,ミドルレベル、つまりカリキュラムレベル,プログラムに関してのFDというのはやはり教員のみならず,学部長・学科長・教務部長・教学系の職員,こういう方たちが非常に重要になってまいります。また,マクロレベル、つまり組織,制度,規則に関わるFDで言えば,教学担当の理事・副学長・教学系の幹部職員の方たちの能力開発も非常に重要になってくるかと思います。ですので,こういったことに関わる専門職の養成というものも進めていくべきだと思っておりまして,先ほど申しましたFD担当の職員の方あるいはSD担当職員,この後出てきますIRerですとかカリキュラムコーディネーターなどについても履修証明制度などを活用して,全国的に普及させる必要があるのではないかと思っております。
 最後は,まとめのスライドでございます。吉見先生のお言葉を使わせていただきますけれども,教学マネジメントの一丁目1番地はFD・SD,とりわけ大学教育の質保証を担う大学教員の教育能力の質保証にあるのではないかと思います。諸外国のFDは,学生の声,特に異議申立ての声に対する大学教員側からの応答として始まって,それが大学教員としての教育能力資格という形に結実した。これは大学教員自らが選んだものと言えると思います。そして,FDの高度化というのは,今回御提案させていただきました5点であると私は考えております。また,SDの高度化につきましても,同じように関わる職員の能力開発機会の保障というものを想定してはどうかという提言です。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,続いて,浅野委員,お願いいたします。
【浅野委員】  では,資料2をお手元に御準備いただけますでしょうか。本日、私からIRについて,佐藤先生に引き続き御説明いたします。
 まず,本日の報告の構成ですが,最初に論点の位置付けということで簡単に図を次のスライドにお示ししております。そしてその後,これから議論をするIRとは何かということ,それから日本における大学のIRの現状,そして私なりに考えてまいりました短期,中長期の対応策をご説明し,最後にまとめというふうにさせていただきたいと思います。
 早速ですが,1点目の本日の論点の位置付けについてご説明いたします。この図は,ある意味,意図的に出させていただきました。事務局がこれを作られたときに非常に大変で,特にこの矢印といいますか,このギアのようなものをかなりの時間を掛けて作られたということでしたので,あえてここでお出しして皆さんに再度,お披露目するとよいのかなと思った次第です。本日の議論のIRは,「ここ」というふうに右の下の方に矢印を書いている部分に位置づけられており,先ほどの佐藤先生のお話と併せて,IRはこのギアを回すときの縁の下の力持ちだという位置付けがなされているものと理解しております。
 このことを基本前提として上で,では,IRとは何かということについて説明いたします。IRについては,いろんなところで講演もさせていただく際にお話ししておりますが,残念ながら「IRはこれだ」「IRはこういうことだ」というふうに定義できる現状にはありません。これはアメリカを含めて,同様の状況でございます。これらを踏まえ,小林先生と一緒に2016年にまとめさせいただきました調査報告書において,IRは多義的な概念であり,現在も発展途上にある機能の一つであり,ある断面を切り取って,これがIRだというふうに定義ができないということを書かせいただいております。そうは言いつつ,研究あるいは実態レベルで受け入れられている定義というのはございます。それは,Institutional Research as “decision support”であり,意思決定を支援する上で必要な情報を提供するために行う調査・研究である,というふうに捉えることができます。
 こういった流れを受けて中教審の答申等でも,まず2008年の「学士課程教育の構築に向けて」の審議まとめにおいて,初めてIR(当時はインスティテューショナル・リサーチャーという言葉)に言及されていると理解しております。ここでも先ほどの定義に倣って,大学の諸活動に関する調査データを収集・分析し,経営を支援する職員という位置づけがなされています。同様に,2012年の質的転換答申,あるいは2014年のガバナンス改革の推進についての審議まとめにおいても,この定義を踏襲する形で,大学の意思決定を支援するための調査・研究ということが前面に押し出されています。
 では,日本の大学のIRの現状はどうなっているのかについての説明をさせていただきます。本日お示ししておりますのは、まず文部科学省で実施されております調査のうち,公開されている最新のデータを参考に整理させていただいたものになります。スライド5を御確認ください。こちらの表にありますように,まず,全体的なIRの部署の設置状況でございますが,平成24年には約10%だったものが,平成28年には三十数%,4割弱に上がってきているというのがございます。多くの大学で専門のIRの担当部署が設けられているのみならず,委員会方式等の組織も同じように10%から3割弱に上がってきているという状況から,多くの大学の現場ではIRの部署又は担当する委員会を置く現状にあることが示されている。では,この設置された組織又は委員会等がどういったことを担当しているのかということですが,平成28年に限定して,トップ3を挙げると,まず学生の学修成果の評価のためのデータ収集,次に自己点検評価に必要なデータの収集,そして学生の学修時間の把握のためのデータ収集等となっており,基本的にはデータを集めるというのが共通点として読み取れます。
 一方,次のスライド6にお示ししておりますが,先ほど御紹介いたしました小林先生と一緒にまとめさせていただいた調査報告書において,IRの主要な担当業務がデータ収集となっているにもかかわらず,学内のデータにアクセスできる権限を有しているIR担当者は非常に少ないという現状が明らかになっています。具体的には,財務から教員,授業評価,学務データ等の基幹システムへのアクセス率は15%を切っているというような数字が出ています。そうしますと,IRにはデータを集める機能が期待されているにもかかわらず,担当者はデータにアクセスできないという,構造的な問題に直面していると言えます。これは,私が運営に携わらせていただいております大学評価コンソーシアムの会員を対象に実施させていただきました調査においても,ほぼ似たような形で,データの収集・管理は多くのIR担当者が課題を抱えていることが示されています。
 こういった現状を踏まえ,本日の議論にありますIRを実質化していく,あるいは縁の下の力持ちとして機能させるには何が必要なのかという観点から,短期と中長期に分けた提案をさせていただきます。まず,短期的にできることとして,スライド7にお示ししておりますように,IR担当部署又は委員会等は学内で何をするところなのかということを十分に議論し,それをその組織の使命として定めることが重要であると考えます。この使命を定めることによって,IR担当部署の活動のよりどころができ,役割等も明確になっていくといえます。実際,多くの大学のIR担当者の皆様のお話をお伺いすると,執行部として何をIR部署に求めているのかというのも担当者には伝わっておらず,担当者も何をすればよいのかが分からないという悩みを吐露される方が非常に多くいらっしゃいます。こうしたことから,当たり前かもしれませんが,大学の中でしっかり議論をして,IRに何を期待するのか,IRは何をするのかということをしっかり議論し,それを活動の拠り所となる使命等として明文化していく必要があると考えます。御参考にまで,山形大学で我々が考えているIRというものを図式化したものをこちらのスライドにお示ししております。我々は,後ほど出てまいりますが,IRと,もう一つ,IE(Institutional Effectiveness)があり,後者のIEについては,私の認識としては,本日の議論に関わる教学マネジメントとほぼ同義であると捉えており,これを前提に考えています。この右にある図でお示ししておりますが,IRはデータを集めて,それを分析し,各所に提供していくところまでが主であり,そこから緑色のボックスが2つございますが,この改善策を構築し,それを実行していくというのは,これはIR部署単体でできることではございませんので,大学全体あるいは教育に関係するところでいきますと先ほどのFDとの関連も出てまいりますが,現場の先生方がこういった取組に参画していくということがない限り,このサイクルが完結できないというところはございます。
 次に,上述した大学内でIRの役割を決めるということと併せて必要であると考えるのが,スライド8にお示ししておりますルールかです。先ほども出てまいりましたように,IRのメーンの仕事はデータの収集と分析だということを考えますと,大学として,そのデータをどういうふうに集めて管理・運営していくのかということのルールが必要だと考えております。実際,公開されている大学の規則等を検索してみると,大学としてどのようなデータを集め,それらをどのようにして管理するのかということを規則あるいはガイドライン・指針などとして置いている大学は,現状,それほど多くございません。そうなりますと,現場では,ある特定の年度は,個人間のつながりで集められていたデータが,人事異動等によって担当者が替わったとたんに,突然そのデータが入手できなくなり,データが集められなくなるといった問題を引き起こします。そうしますと,最終的に大学全体で活用していくという流れが途絶えてしまい,IR業務を停滞させることになります。
 実践事例として,山形大学で作っている2つの規則をこちらの方で挙げさせていただいています。1つ目の規則は,大学の中でどういうふうにデータを集め,それをどういう責任と役割の下で管理していくのかということを定めております。2つ目の規則は,集めたデータを大学全体でどういうふうに使っていくのかということを定めたものです。双方に共通しておりますのは,最終的な責任者は学長であり,IR担当部署がデータの責任を負うのではないということが明記されています。
 以上が短期的な御提案2つとなります。
 次に中長期のお話をさせていただきます。
 まず,本日の議論に絡めて先ほど少し言及いたしましたが,教学マネジメントということを考えますと,これはアメリカで最近よく言われているInstitutional Effectivenessとほぼ同義だと考えています。Institutional Effectivenessの基本的な考え方については,スライド9の左の図にありますように,使命があって,その使命にのっとって策定された目標/成果というものがあり,それらの達成度を評価し,その結果に基づいて改善をしていくという,いわゆるPDCAサイクルのようなものだとお考えいただければよいかと思います。現実問題として,IR先進国と言われているアメリカにおいても,図の左側にお示ししておりますように,結果を活用して改善をするというところはそれほど進んでいないということも言われています。そのため,特にIR関係の方々とお話しする,あるいは学会などに参加するとよく出てくる言葉が,彼らのモットーとしている“Closing the Loop”であることが多いと感じます。改善のループを完結させるには何が必要か,何が出来るかということについては,アメリカのIR担当者も苦心している現状にあります。
 このことを踏まえつつ,このInstitutional Effectivenessを教学マネジメントに置き換えて考えると,これを日本の大学の中で進めていく上で重要なポイントが3つあるのではないかと考えています。スライド9の右の図にありますように,まず教学マネジメントを支える土台として,学修成果の測定の部分,そしてプログラムの達成度を見るという意味でのProgram Review,これを支えるIRという3つの要素が本日の議論に関わっていると考えます。一番左にありますAssessmentについては,これは学生を対象にした評価,真ん中のProgram Reviewは教育プログラムの達成度の評価(Assessmentの集合体でもあるかもしれませんし,別の情報も組み合わせてプログラムとしてどのように達成してきているのかの評価),そして右にあるIRがその必要な情報を集めていくという,そういった関係性があろうかと思います。
 これを実際に我々の中で実践しておりますので,概要だけを御説明いたします。次のスライド10を御確認いただきますと,まず,Assessmentという意味では,これは山形大学で現在実践しております「基盤力テスト」というのがございます。これは学生を対象に,まず,図の上の方にございますように,テストを行い,その結果をポートフォリオ化して学生個人にフィードバックしていくという部分が該当します。そして,矢印下の方にございますが,これは個々の学生さんのデータをプログラム単位に整理をし,分析をして活用していっているというものであります。本日,時間の関係で内容の詳細は御説明できませんが,図の下にありますように,A,B,C,Dとある学士課程のプログラムごとの学生さんの伸び(1年生のときと2年生の結果を比較して差がどれぐらいあったのかということを統計的に検定した結果)を確認し,その結果に基づくカリキュラムの改善というところに生かしている状況でございます。
 そして併せて実施していますのが,次のスライド11にございますProgram Reviewというものになります。先ほどの結果は学生さん個人から出てまいりますが,その結果をカリキュラムと照らし合わせていくということが重要になってまいります。この取組については,以前の会議の資料としてお示ししておりますので,簡単に御説明いたしますと,これはプログラムごとに個々の授業が何を狙っているのかということを可視化したカリキュラムマッピングになります。ここにあるような数字あるいはカリキュラム・ポリシーとディプロマ・ポリシーとの対応を見て,なおかつAssessmentの結果と照らし合わせて初めてそのカリキュラムの現状というのが理解できるようになりますので,それを我々は総合的にやっているという状況であります。
 もう一つ,IRを機能させるガバナンスの模索ということで,教学マネジメントの話の中でもよく体制の話が出てまいります。
 IRも同様かと思いますが,スライド12の左に日本の大学の現状,そして右に米国の大学の典型的な例というのを示しております。まず,日本の大学ですと,総長/学長の下にIR室であったり,IR担当部署というのが置かれているケースが多かったりします。もう一つは,特徴として出てまいりますのは,理事の役割が,教育,入試,研究,財務,総務といったような形で,かなり役割分担が進んでいるというのがございます。一方,右のアメリカの例を見ていただきますと,基本的には学長・総長に当たるPresidentの下に,アメリカの大学はProvostあるいはChief Academic Officerという役職を置かれるケースが多くなっております。Provostに関しましては,日本の大学と大きく異なりますのは,人事と財務の権限を一部持っているという形になります。要は人と予算の権限を有していて,IRはその下に位置付いているという形がございます。こういった構造的な違いというのも1つございます。これは小林先生も論考を出されておりますけれども,Provostについてまだまだ全容は明らかになっていませんし,アメリカの大学においても必ずしも一様な捉え方はされていませんが,本日の論点に対して言えることとしては,このProvostという役職がかなり重要な役割を担っているということです。それは,アメリカにおいて学長は外の顔というふうによく言われ,州議会との折衝,寄附金やファンドの獲得において重要な役割を果たし,実質的な大学の経営はProvostが担っているという,役割分担が進んでいます。このことを,念頭に置く必要があるのかなということで,ここで御紹介いたしました。
 もう一つの提案として,IRを支える情報環境の整備ということで,先ほどのデータにアクセスできないという問題等も併せて,日本とアメリカというのは結構な違いがございます。特に機関レベルあるいはコンソーシアム等の任意のレベル,そして国レベルで見ると,環境は大きく異なります。まず,機関レベルで見てまいりますと,アメリカでも一様ではございませんが,かなり統合的なデータベースというのは持っております。大学全体で統合的にデータを管理するインフラがあるのに対して,日本の場合は,人事なら人事,財務なら財務,教務なら教務という形で,それぞれの役割に応じたデータベースは整備されていますが,それを全体で活用できるような統合されたものがないというのが1つ。任意の取組において見ていきましても,山田礼子先生を中心に進めてこられましたIRコンソーシアム等の取組を除けば,余り進んでいないという現状がございます。一方,アメリカにおきましては,そこに挙げておりますように,かなり多くのデータを大学間で交換する任意の仕組みというのが整備されています。また,国レベルで見ても,大学ポートレートなどは進んでおりますが,下にありますアメリカのIPEDSのように大学間を比較するようなものが仕組みとしてはないというのがございます。我々といたしましては,国レベルで整備されていますe-Statの情報などを今使っていろんなことを作成し,大学内で公開していますが,まだまだこういった情報環境がないということに起因して,日本のIRはなかなか進まないんじゃないかなということを考えています。
 以上,要点を絞ってお話しさせていただきました。最後に,まとめといたしましては,次のスライド14にございますように,教学マネジメントを支える基盤としてIRを定着させるという観点から見ていきますと,各大学の実情に応じてという部分は大前提になりますが,まずはIR部署(組織)といったものがどういった使命や目的を持って何を果たすのかということをしっかり文書化あるいは明確にしていく必要があるんじゃないかということです。もう一つは,先ほども御紹介いたしましたように,様々な業務に必要な情報を大学として活用していくというルールを規定することも重要だと考えます。その上で,教学マネジメントの各種業務を推進できる大学のガバナンスの在り方ということについても,例えば先ほどの日本とアメリカでは大きく異なりますし,その過程でIR担当部署というのがどういうふうに関わっていくのかということも見ていく必要があるんだろうと思います。この点について,先ほどの佐藤先生のお話をお伺いしながら,吉見先生が言及されました,一丁目1番地という観点からいたしますと,恐らくIRを定着させる上で重要な役職者というのは学長をはじめとする執行部なんだろうと思います。この方々の覚悟(IRを使う)がなければ,机上の空論に終わってしまう可能性もありますし,この覚悟に加えて構造的な部分への理解というのも必要なんだと思います。現状ですと,学長と理事の役割というのは,日本の大学では必ずしもIRを定着させやすい状況にはございませんので,そこを見据えていく必要があるんだろうと思います。そして最後に,大学のみならず,任意の取組又は国レベルの環境整備がうまくかみ合うようになりましたら,特に情報基盤においては重要な部分が多数ございますので,そういったものも進展していくことによって,より明確なものとして位置付いていくのではないかと考えている次第です。
 以上が本日の情報提供ということで準備させていただきました内容となります。ありがとうございます。
【日比谷座長】  お二人の委員から御発表いただきまして,ありがとうございました。
 それでは,御質問の前に,まずは事務局から次の説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。
 資料3は前回の主な御意見でございます。説明は省略をさせていただきます。
 資料4の方を説明させていただきます。「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項(丸5教学マネジメントを支える基盤)」でございます。
 まず,15行目以降が,FD・SDの高度化ということでございます。
 1つ目の黒丸,学修者本位の教育という観点から,必要な資質・能力を備えた教職員の存在は不可欠であります。
 2つ目の黒丸,これは,個人の研さんや努力のみに期待するのではなく,組織的かつ体系的なFD・SD,これを実施すべきことが不可欠であるということでございます。
 23行目以降の黒丸でございます。ここは先ほど御発表の中にもございましたけれども,大学としての教育理念やディプロマ・ポリシーというものを踏まえて,自学が目指す教育を提供するために教職員に必要な能力や資質ということを特定して望ましい教職員像を定義する,そうした教職員を育成するためのFD・SDを実施する,このようなことを基本的な考え方として挙げさせていただいてございます。
 2ページ目でございます。1つの黒丸でございます。教学マネジメントを機能させるためには,まず,大学としての教育理念でありますとかディプロマ・ポリシー,また,これを踏まえて作成された望ましい教員像というものについて,関係者間で共通理解というものを構築するということが必要でございます。その上で,現場で実際に教育に携わる教員というレベルだけではなく,学長,副学長といったような大学全体のマネジメント層,学部長といったような学内組織のマネジメント層,この辺りも対象とするということが必要であると。その上で,対象となる者の役職や能力・資質というところに応じて,授業科目レベル,学位プログラムレベル,大学全体レベル,このようなものの中から最適な内容というのを講演会やワークショップ,他大学の視察,多様な手法の中から最適な手法というのを組み合わせて提供するという必要があるということでございます。
 10行目以降の黒丸でございます。スタッフ・ディベロップメント(SD)につきましても,教学マネジメントの推進という観点からは,教務事務担当部署の職員というものを念頭にしっかり行っていくということが必要だろうと。その際には,大学全体の理念やディプロマ・ポリシー等の共有,学位プログラムの運用方法,法令等の制度の理解,その運用,このようなものについてしっかりと提供していく必要があるということでございます。
 そもそも,16行目以降でございますが,FD・SDそのものに関しても,これはやって毎年同じものを繰り返すということではなく,不断の改善が求められるというものでございます。そのためには,しっかりと実施後にアンケートを実施するとか,また,一定期間たった後に修得度合いの確認や追跡の調査を行う,このようなことでFD・SDもしっかりと,ここは効果の測定と書いておりますけれども,学修成果というか,そういったものを可視化していくということはここでも必要ではないかということでございます。その上で,効果が見られないものについては,内容の改善,場合によっては中止,こういったことも視野に入れるべきであろうということでございます。
 また,21行目以降でございます。先ほど御紹介いただきましたとおり,大学院設置基準の改正ということに伴いまして,博士後期課程における学生へのプレFDの実施,また,自分の大学で実施できない場合は情報提供ということを努力義務とするということが既に方向として出ているところでございます。各大学としても,このプレFDというものを自大学のFDのノウハウというものを生かし行っていくということが望まれるということでございます。
 大学全体レベルということでどのようなことを考えていくべきかということで,26行目でございます。大学全体レベルで教学マネジメントを円滑に実施していく観点から,大学全体としての理念や三つの方針,これを適切に設定したり,見直しをするための研修会,他大学のマネジメント層との情報交換会,外部の専門家,企業経営者等を講師とした組織マネジメントに関する講演会,高等教育政策に関する講演会など,大学全体のレベル,大学の執行部として必要な資質・能力を培う上で必要な内容というものを定期的に行っていく必要があるのではないかということでございます。
 3ページ1行目でございます。先ほどの話とも若干繰り返しになりますが,どのような能力・資質を備えた教職員が求められるかどうか,望ましい教職員像を,「卒業認定・学位授与の方針」というものを踏まえ,先ほど反転しというお話がございましたけれども,そのような上で明らかにするということがまずスタートでございます。そのためにFD・SDを学内で継続的に提供するという観点から,誰がFDを行うのかといった担当者の特定,また,責任分担の明確化,このようなことにも留意をしながら,FDの能力開発を担当するような組織の構築・運用を行っていく必要がある。また,FDの実施等の能力を身に付けたような教職員のような専門人材,このような確保ということを進めることが期待されるということでございます。また,学内において専門人材を必ずしも確保できないという場合においても,先進的な大学であるとか,また,FD・SDに関して国が認定をしているような教育関係共同利用拠点と連携を図るであるとか,また,大学コンソーシアムの参加といったような形で,可能な限り自大学においてもそのような環境づくりというものに努めていく必要があるということでございます。
 12行目でございます。現状のFDについては,文科省の方からお伺いしても,「開催されていますか」と聞くと,もちろん「開催しています」ということなんですが,参加率の方を調査で聞いてみると,実は5割を下回ったりしているケースというのもまま見られるわけでございます。必ずしも参加状況というのは十分とは言えないというケースもあると。そのようなところを考えますと,やはり教職員へのアンケートなどを通じて,何を学びたいのかというニーズの把握ということが重要になってまいりますし,オンラインによる学習とか個別コンサルティングも含めたような対象者に到達しやすいような手法とか場所を選択するといった工夫。また,参加者にしっかりインセンティブを与えるような工夫,このようなことで参加したくなるような環境を醸成していくということは重視されていく,期待されるということでございます。
 18行目からの丸でございます。FDとSDを場合によっては一体的に行うということ,これは考えられるのではないかということでございます。
 22行目以降が,学位プログラムレベルということでございます。主に学位プログラムレベルのマネジメントなどを対象とする学部長などに対して,効果的な教育課程の編成方法や実施・評価方法,学位プログラムレベルで求められるようなマネジメントに必要なノウハウ,このようなものを提供するためのFD・SDというものを定期的に実施する必要があると。具体的な手法については,25行目から27行目の辺りに括弧で例示を挙げさせていただいてございます。
 また,29行目のところからもそうでございますけれども,ここもやはり教職員に資質・能力というものをしっかりと明らかにした上で体系的に行う必要があるということでございますが,4ページの1行目からでございます。特に,教員としての経験が少ない新任の教員でありますとか,また,これまで必ずしも大学の教員として活躍されてきたということではないような実務経験者,このような教員の採用のタイミングでは,やはり大学の教員に一般的に求められる基礎的な知識・技能や学位プログラムを担う教員として望ましい資質・能力を身に付けさせるため,FDというのは確実に実施されることが必要であるということを盛り込ませていただいてございます。想定される内容で,これは大学教員として一般的に求められる知識とか学位プログラムを担う教員として必要な内容ということを想定して,4行目から8行目の頭まで例示を挙げさせていただいてございます。加えて, 他大学において教員の経験を有する方が自大学にいらっしゃった場合,このような場合であるとか,また,大学内においても,組織内で期待される役割というものが変化した場合,このような場合にもそういった節目というところを捉まえて,知識・技能のアップデートを図る観点から,このFDについて,個々の教員の実情に合わせて組み合わせて,適切なものを新たに施していくということが必要であるということを書かせていただいてございます。
 12行目以降でございます。FD・SDは,サイクルの議論がございましたけれども,PDCAの中で言うと,具体的な大学の教育改善という意味ではActionに位置付けられる活動でございます。そのような全体の中での位置付けというものをしっかり認識した上で,体系的に実施することが必要ということを書かせていただいてございます。
 授業科目レベルでございます。ここは,ここの教職員という部分を一つ認定に置いている部分でございますけれども,19行目から20行目にありますように,きちんとディプロマ・ポリシーを理解した上で,個々の科目との関係というものを認識するということ,また,大学教員に必要な能力というものをしっかりと担う教員として望ましい資質・能力のためのFDというのを実施することが必要でございます。
 27行目以降,手法の部分でございます。参加型のワークショップや公開授業,授業参観,ピア・レビュー,授業コンサルテーション,自己啓発のための教材提供,このように様々な手法というものがある中で,その人の一番ニーズに沿った,また,大学のニーズに沿ったものを選択していくということが必要でございます。
 5ページ目の頭でございます。授業科目レベルということのFDというところで申し上げますと,授業アンケートというものを通じて授業事例の把握というものをしっかりと行っていくことが重要でございます。ただ,ここは,学修成果の可視化の際にも少し似たような議論があったかもしれませんけれども,単に授業に対して学生に漫然とした感想を求めるというものになっていて,授業改善につながっていないという指摘もあるわけでございます。アンケートを実施するに当たっては,学修者本位の教育という観点から,自らの学修を授業科目というものを通じて振り返るために有益な情報であるとか,また,ディプロマ・ポリシーに示された資質・能力,また,授業科目として設定されたような到達目標,このようなものを把握するための質問というものをしっかり含むアンケートというのを実施して,また,後段の方に書いてありますのは,しっかりと実質的に回答いただけるような調査時期とか頻度,このようなものも考えていくということ,重要ではないかということを書かせていただいてございます。
 14行目以降がIRの関係でございます。IRといいますと,経営面なども含めて用いられる言葉でございますけれども,この教学マネジメントに関する指針においては,あくまで教育改善を目的とするというところに限定をさせていただいてございます。これは,各大学の規模や設置形態に応じて,IRと広く言いますが、求められる機能が違うだろうということからでございます。
 18行目からでございます。IR,教学IRというものは,ともすれば万能薬とみなされたり,また,IRそのものを実施することが改革なんだといったようなことになりがちというような傾向があるわけでありますけれども,教学IRの主たる役割は,大学のマネジメント層が教学の改革について正しい判断を行うために必要なデータを収集・分析し,一定の目標達成に資する情報として提供することにあるということをしっかり認識する必要があるということでございます。
 23行目でございます。教学IRという部分については,その瞬間の成果というものを単に把握するというだけではなくて,その過程で明らかになる課題なども踏まえて,現状の改善・向上に資することを目標とするというものでございます。その観点からは,学長や副学長,また学位プログラムレベルで申し上げれば学部長というものが,大学全体の理念やディプロマ・ポリシーに基づいて,教学IRに何を求めるのか,教学IRで何を行うのかという目的を明確に設定するということ。また,設定した目的を達成するために必要な体制,環境整備等を行うということが出発点に必要でございます。
 30行目から3行程度書いてあるのは,やはりこういった教学IRというものを有効に機能するという観点からは,ベンチマーキングというような手法というのを積極的に取り入れていくということも期待されるということを記載してございます。
 6ページ,大学全体レベルでございます。教学IRの重要性というものについて,先ほどの役割というものをしっかりと学長や副学長など大学全体のマネジメント層が理解をするということでございます。その観点から,9行目以降でございますが,教学IR部門というものが学内の様々な学部・部署から円滑にデータを収集し,適確な分析が行えるように,学長のリーダーシップの下で教学IR部門に必要な権限を付与する,こういったような環境整備というものが行われているかということを確認することが必要でございます。
 12行目でございます。教学IRに関わる専門スタッフというものが不足している,このようなケースもあるわけでございます。ここは,大学として,外部の機関の活用や大学間連携というものを通じて,専門スタッフの育成を活性化する。教学IRに関する業務を今後共同処理していく,このようなことの展開も期待されるというところでございます。
 16行目からでございます。教学IRに必要になるような学内の各種データというものは,体系的に収集・分析が必要なわけでございますが,部局を超えてデータを円滑に収集し,継続的に使用するということを可能にするような観点から,適切に規定を設ける必要がある。また,データの取扱いに関して適切に行えるように学内規定を整備する,こういったことが必要でございます。その際,特に教学IRを活用・推進していく上で,近年,個人情報保護制度,こういったものが整備されているところでございます。大学の各部門が収集するデータについても,その取扱いに対して取決めが不在であるというケースで,学生のデータを利用できないといったようなケースが指摘されているということも踏まえた上で,様々な体制構築というのは行う必要があるわけでございます。
 27行目からは,学位プログラムレベル,授業科目レベルということについて,それぞれ簡単に触れているところでございます。学位プログラムレベルで申し上げれば,やはり学位プログラムが適切にディプロマ・ポリシーに即して行われているのかというところ,そのために改善点はどのようなところがあるのかといった観点から,プログラム全体を改善する契機としてIRというものをしっかりと実施しているということが必要ではないかということでございます。学内からデータを収集するときには,なるべく重複等がないようにということを書かせていただいてございます。
 最後,7ページでございます。7ページの1行目からについては,学位プログラムレベルでも大学全体レベルと同様に,どのようなものをIR部門に期待するのかといったことは,学部長等が積極的に定義をしていくということが必要という趣旨のことが書かれてございます。また,授業科目レベル,7行目以降というところについても,ディプロマ・ポリシーとの関係で当該科目が必要な役割を果たしているか,このような観点からの改善や,また,科目単体としても,学生の興味・関心を高めるため,参加意欲を高めるためにどうすればいいかといったようなところ,このようなことまでもデータというものを集めることによって射程に入れることは可能であると。その観点から,適切な目標設定の下に行われるということが必要でございます。
 授業アンケートというものを活用して,学びの満足度や状況というのを明らかにするというようなことというのも書かせていただいております。
 このペーパーの方は,この委員会のミッションというものに従いまして,今,現行の制度というものを前提に,大学としてどのようなことに取り組んでいくべきなのかという観点から整理をさせていただいたものでございました。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,先ほどお約束しましたとおり,これから10分程度時間をとりまして,佐藤委員,それから浅野委員への御発表への質問を受けたいと思いますので,どうぞ,いつものように札をお立てください。
 では,松下委員,森委員,吉見委員の順でお願いします。
【松下委員】  ありがとうございます。佐藤委員への質問なんですけれども,FDは,労働者として見たときに,義務というよりは権利であるとおっしゃいました。一方で,FDをなかなかやりたがらないという大学教員の実情もありますよね。なぜFDをなかなかやりたがらないのかというと,教員の方は時間の問題と効果の問題の両方があると思うんですね。つまり,時間としては,研究をやり,運営をやり,社会貢献をやり,いろんなことが求められているという中で,さらに例えばFDが義務化されて研修をやらなければいけないということになったら,その時間はどうやって捻出するのかという問題があります。
 それからもう一つ,こういうふうな研修を受けて本当に自分の授業がよくなるのか,教育能力が高まるのかということに対する疑念があると思うんですね。
 まず,1点目の時間について,先ほどフランスの例は面白いと思ったんですけれども,何か教員へのタスクを増やしたら,その分,何か減らさないと教員はもうとてもやっていられないと思うんです。そういう案をどういうふうにお考えになっているのかというのを伺いたいと思います。
 それから,2点目の効果に関してなんですが,私もFDに関わってきましたけれども,効果があったなと思うのは,オン・ザ・ジョブ・トレーニング型,何かプロジェクトをやるということになって,そのプロジェクトを一緒にやる中で教員の力が身に付いてきたなというのは実感するところがあります。いわゆる研修というものとそういうOJT的なもの,つまりオフとオンと,その両者の関係をどういうふうに考えていらっしゃるのかということ,これが2点目に伺いたいことです。
 以上です。
【佐藤(浩)委員】  ありがとうございます。
 まず,1点目の件ですね。これは,つい先日,かなり大規模な私学の関係者の方とも話したときに,私立大学の場合は労働時間がかなり厳密に規定されていて,組合との関係もあって,この提案にあるような形で研修を増やすことは本当にできないと言われました。その場合は,やはり一定期間中は担当授業科目数を減らすだとかを考えなければ研修が入り込む余地はありませんという話がありました。ですので,先ほどフランスの話も紹介しましたけれども,教育現場で働き方改革も進んでおりますから,やはりあのような形で,これは法令上で後押しすることを考えなければいけないんだろうなと思います。つまり,大学や個々の教員の自主努力ということではもうどうにもならない状況になっているかと思います。
 一方で,大学の教員のいろんな時間数が増えているわけですけれども,かなりの部分がマネジメントに関わる業務が増えているということも明らかになっています。この点に関しては,職員の方たちの働き方を一歩,教員が今やっていることも踏み込んで担うことによって解消される部分もあるかもしれないということでございます。
 2点目に関しては,これは,FD担当者の学会でも常にこの効果測定の問題は議論されております。例えば先行研究でも,2時間程度の研修では全く効果がないということも言われておりますが,相変わらず私は年に1回の2時間のFD研修というのに呼ばれて行くわけですが,あくまでそれは呼び水だと思うんですね。そこで何か情報が入って火が付いた方が,先ほど御提案にあったようなOJT型というか,アクション・ラーニングですよね,業務をしながらFDをやっていくという形です。そのためには,日々の委員会業務等も実はFDであると,そういう認識の下で管理職の方がそういったものをどう組み合わせていくのかが,非常に大事かなと思います。
 また,学生でいうところのラーニング・ポートフォリオに当たるようなものですけれども,教員にはティーチング・ポートフォリオというものがあります。つまり、様々な場で断片的に学んだものをどう統合していくかということを促すことも効果があると言われていますので,やはり効果のあるものをきちんと全体設計しながら進めていくという必要があるかと思っております。
【日比谷座長】  森委員。
【森委員】  まず,お二人の御発表に関しまして非常に納得がいくものが多いなという感想を述べさせていただきます。その上で,今,事務局からお話がありました資料4の中には織り込まれているけれども,今こうやって個別にFD・SD・IRということで切ってしまうと,どうしても教学マネジメントという観点が低くなってしまうのではないかということを危惧しています。私自身,実は多分レアケースで,本学ではIR担当者でもあり,FD担当者でもありというところで一体化を図っていくことを狙っています。これまでもFDの義務化からかなりFDはやられているというふうに,各大学,認識があると思います。そして,IRもそこそこ進んできていると。ただ,FDをやっても,それが一体何になるのか,IRはデータを集めているけれども,その分析は一体何になるのか,その辺の連動が現場ではつかめていないと思っています。先ほど浅野先生の方からClosing the Loopというお話がありました。,本当に閉じない限りは何のためにやるのかということ,これが徒労感につながると思います。それは,先ほど松下委員の効果の部分と非常に密接に関わってくると思うんですね。ですから,今回もそうなんですけれども,お二人も多分そこは意識されていると思っていますし,たまたま事例としては出てきてないんですが,やはりこういう一般的なものではなくて,各大学の文脈に落とし込んだ形のループを閉じるモデルを今回はこの委員会では見せていかなければいけないのではないかなと思っています。これは事務局に対してですけれども,そうじゃないと,また疲弊するものが増えたというふうにとられかねないと思っています。それに関して御意見があればお聞かせいただきたいと思います。
【日比谷座長】  それでは,お二人,いかがですか。どちらからでも結構です。
【浅野委員】  では,佐藤先生に譲っていただきましたので,先に回答させていただきます。
 私はきょうちょっと時間の関係で説明をはしょりましたけれども,まさしくおっしゃるとおりです。本日の資料でいきますとスライド12でアメリカの情報を出させていただいていますが,実はIRと併せてCollegesとかSchoolsとかがProvostの下に置かれています。要は学部や研究科もProvostの下にひっつくという形になっていますので,まさしくIRとFDは一体で動いていると認識していますし,そこは重要なんだろうと思います。山形大学でも,本日の資料のスライド7でお示しした組織の中には,IRとFDと両部門が同じ機構の中に置かれています。したがいまして,いろんな分析をした結果をFDに生かしていくということもやっておりますし,ここを一体的に捉えるのは重要であるというのは御指摘のとおりだと思います。ただ,これは多分,組織が大きくなれば必ずしもそこが機能しないというところもありますので,森先生もおっしゃっていましたように,各大学の実情に応じてというところは前提としてあろうかとは思いますが,全体としては両部門が連動して動くというのは重要だと思います。
【森委員】  済みません,1つだけ。佐藤先生のお答えの前に,詳しい浅野先生にお聞きしたいんですけれども,多分,アメリカのIRも,Provostの下にあるIRとティーチング&ラーニングセンターの下にあるアセスメント機能とあると思うんですよね。この関係はどうなっているのか。当然ながら,マネジメントということであれば,ティーチング&ラーニングセンターの下にある。本学も当然ながらそれを意識してその体制にしていて,非常に効果を実感しているということなんですが,その辺のアメリカの状況をもし御存じでしたら教えていただきたいと思います。
【浅野委員】  大きく分けますと,恐らく州立と私立では随分違うと認識しております。私立は,おおむね御指摘のようにラーニングセンターとかに置かれているケースが多いと思います。ただ,州立の場合は,アカウンタビリティーの側面が大きいので,そことは切り離してマネジメントですね,InstitutionalレベルのIRとして置かれているケースが多いのかなと思いますし,特にフラッグシップ型の大学ですと,学修成果の測定よりは教員のパフォーマンス管理とかそっちの方に話が行きますので,多分,各大学の実情によってそこは違うのかなと理解しています。
【日比谷座長】  じゃ,佐藤委員から。
【佐藤(浩)委員】  2点アイデアがありますけれども,1つは,浅野委員の提示されたこの図ですね,文科省の職員の方が苦労して作成されたこの図ですけれども,この図で言うと,FD・SDというのがPDCAサイクルから分離しちゃっているんですね,基盤ということで。今回の章立てがそうなっていたので,私もそういう位置付けなんですけれども,ただ,やはりPDCAサイクルの中に入れ込むとすれば,CheckのCのところにIRが入ってきて,そして,ActionのAのところにFD・SDというのが入ってくるはずです。ですので,この図の中に,FD・SDやIRを入れていくというのは一つの方法です。ただ,それとは別に,例えば基本的な授業の仕方だとか基本的な法制度の理解というFD・SDに関しては,きちっと土台としてやっておく必要があるだろうと思います。だから,土台の部分に入るFD・SD・IRというものと,PDCAの中に入るものがあるので,その2種類を分けて図の中でうまく表現できればいいのかなというのが1つのアイデアですね。
 もう一つは,恐らく今回,指針の中に,事例を盛り込んでいってはどうかというアイデアが,この間,何回か出ていたかと思いますけれども,その事例の中で今のような接続,統合された形で様々な要素を読み解くことができればいいんじゃないかなと思います。
【日比谷座長】  では,吉見委員,お願いします。
【吉見委員】  2つの知見に富んだ御発表,ありがとうございました。大変勉強になりました。浅野先生と佐藤先生に1つずつ質問させていただきたいんですけれども,まず,佐藤先生の方のFDの話の中でイギリスの話をされたときに,イギリスでは研究中心の大学でもかなりFDをしっかりやっているというお話がございました。これは私の偏見というか,印象ですけれども,日本ですと,非常に高度な研究中心の大学だと,研究ということがややFDをやらない言い訳になっているというか,教員相互の評価とか授業参観とかピア・レビューだとか,教育面の評価というより,まず研究業績なんだというふうになっている傾向がある印象を私は持っています。この印象は正しいのかどうかは,私は私個人の印象ですので分かりません。もし正しいとすると,それを変えていくには一体どうしたらいいというふうに佐藤先生はお考えなのかを教えていただきたいと思います。
 それから,浅野先生のお話ですけれども,IRの担当者が全学データにアクセスできる権限が6.2%から14%で,極めて低いということですね。これ,リアリティーとしてすごくよく分かるんですね。特に大規模な総合大学,つまり部局自治が非常に強い大学は多分そうだろうとリアルに思います。なぜそうなのかという,これも私の印象ですけれども,部局の壁でそれぞれの特に教育に関するデータというのは,それぞれの部局が囲い込んでいるというか,担当部署にはデータはあるんですけれども,それぞれの部局からなかなか外に出ていかない構造があるのではないかという印象を持っています。この私の認識が正しいのかどうかということと,それから,いきなりProvostというのは,なかなか日本の大学では先が遠い気がするんですけど,そうでないとすれば,この教学に関する情報の全学共有化を進めるためには,つまり部局の壁を取るにはどうしたらいいとお考えになられているかという,これを教えていただければ幸いです。
【日比谷座長】  それでは,先に佐藤委員からお願いいたします。
【佐藤(浩)委員】  ちょっと確認ですけれども,先生が言われている研究中心になっているというのは,日本のということですよね。
【吉見委員】  はい,日本のです。あくまで日本の。つまり,イギリスはちゃんとそういう問題はないと。日本のかなりハイレベルな研究中心の大学の場合に,教育というところの評価等が, FD等を含めてですね,やや二次的になるという傾向がある,言い訳になっているという傾向があるのではないかという印象を持っているということです。
【佐藤(浩)委員】  ありがとうございます。恐らく日本の研究大学だけではなく日本の大学全体あるいは世界的に見ても,やはりそのとおりだと思うんですね。ヨーロッパ諸国の場合にはかなりトップダウンでもって資格取得を義務付けていますけれども,その理由は,大学教員は研究に走ってしまうので,最もコントロールが利きやすい初年度の仮採用期間中にそれを課してしまうということです。逆に言えば,ここでしかもうコントロールが利かないということかと思います。ですので,現状,なかなかFDに関心持たない方が多いというのは,正にそういう風土があって,それは1つは採用に当たっても昇進に当たってもやはり研究業績が中心になっている。教育業績に関して言えば,持ちコマ数と授業アンケート結果くらいでしょうか。よほど学生からクレームがあれば別ですけれども,普通の授業をしていれば昇進できるということが問題になっているんだろうと思います。その意味では,教育職能の基準となるものを作るべきだという提案をさせていただいたわけです。
 どうしたらいいのかというのは,これはずっと,FD担当者は常にこれを朝から晩まで考えているわけですけれども,阪大に移って,例えば我々の大学にはリサーチを推進するような部署もあるわけですね。URAの部署もあります。そういうところが例えば学会での効果的なプレゼンテーションの仕方というふうにすると,かなり集まります。二,三百人,会場が埋まるくらい集まります。あるいは,学会論文の英語での発表の仕方,これもかなり集まります。じゃあ,私どもが学生の前で効果的なアクティブ・ラーニングだとか効果的なプレゼンテーションでやっている内容と大きく違うかというと,そうではないということですね。ですから,結果としてその能力が付けばいいので,先生方向けには,こちらは研究能力の向上のためのプログラムですよということを打ち出しながらも,実は中身のところでは教育に活用するという隠れたメッセージを送るような形で今は進めています。
【吉見委員】  教員評価とか授業評価なんかはどう……。
【佐藤(浩)委員】  教員評価・授業評価に関しては,踏み込んでそれを結び付けるというようなことはしてはいないですね。多分,日本全国で見ても,やっているところはありますけれども,まだ非常に少ないと思います。
【日比谷座長】  じゃあ,お願いします。
【浅野委員】  まず,認識としては,恐らく,特に規模が大きくなればなるほど部局間の壁は厚く,特に学務系の情報というのは流通しにくいという現状はあると思います。その理由の一つは恐らく個人情報保護法がありまして,学生の同意を得ていないものは使えないというのが基本的な担当者の認識だと思います。もう一つありますのが,先ほどお話ししましたように構造的な問題で,要は学部長も任期があり,事務局の方も定期的に二,三年に一度,人事異動等で替わっていくため,途中の課程で信頼関係を築いたとしても,その後,その関係がずっと維持できるという保証はありませんので,担当者が替わった途端にこれまでのルールが一切通用しなくなって,データは出てこないという,2つの問題があるのかなと思います。
 そこで御提案させていただきましたのは,大学の中では,規則といいますのは国で言うと憲法にかなり近いようなものですので,規則化されていると基本的にそれに準じるということが可能になってまいります。幸い私は,山形大学においてはそういったものが既に整備されていまして,センシティブなデータも含めてアクセスできるという環境には置かれています。そういった意味では恵まれていまし,先ほどお話ししましたように,責任者が誰かというと,学長であり,その責任をIRが負わされることはないため,いろんな不都合に直面することなく,業務を展開出来ております。
 もう一つ,Provostについて御質問いただいたかと思いますけれども,正直かなり難しい側面もあろうかと思います。ただ,実態として,学長がProvostの役割を担っているというケースも多数あるんだというふうには思います。特に規模の小さな大学ではそういう傾向が強いというのはございますので,やっているところはそれでいいんですが,規模が大きい又はそうではなくて理事間で業務の所掌が違っているというところについては,米国のProvost制度を念頭にやっていかないといけないんだろうというのは思います。これは,政策レベルでも重要視されていて,現状の制度改革の中でも恐らく来年度から施行される,国立大学については法人法の中に総括理事を置けるというような形で改正されていきますので,そこが進めばもう少しProvostに対する認識というのも変わってくるのかなというふうには思っております。
【日比谷座長】  ちょっと所定の時間を過ぎておりますけれども,この後,林委員,深堀委員からお二人への質問をお受けしまして,その後は一般的な議論に移りたいと思います。お願いいたします。
【林委員】  ありがとうございます。佐藤委員に2つ,それから浅野委員に1つ御質問させていただきたいんですけれども,まず佐藤委員の方なんですが,認証評価とかやっていても,FDやっているかという問いに対して,やっているのがハラスメント研修だったり,あるいは教員談話会をやりましたとか,そういう状態なので,認証評価でそれをバツにできているかというと今そういう状態ではない。佐藤委員言われるように,例えばこういう能力を育成するのが必要だとか,もう少しFDというのはしっかりと,佐藤委員の言葉で言えば高度化なのかもしれませんけど,内容がしっかりと明示的に示されると,大学としても何をやればいいのかというのが見えてくるとは思います。それで,まず1個目の質問は, FD担当者を必ず置かなきゃいけないかという話のところなんですけれども,やはり単科の小さい大学を見ていると,FDを自前でここに書かれているようなものをやるというのはなかなか厳しいなというのが,正直,見ていて思っているところで,もう少し,例えば佐藤先生のような方が大学の協会とかそういうところと組んで,少しネットワーク的に講習をするような形の方がよいんじゃないかと思うんですけれども,そういう取組が行われているのかというのがまず1つ目の質問です。
 それから2つ目の質問なんですが,一時期,狭義のFD,広義のFDみたいな,そういう言葉遣いで,きょうのお話は基本的には教員の特に授業レベルの,授業をどうやっていくかの能力の話が多かったと思うんですけれども,恐らく広義のFDってなったときにはきっと,カリキュラムをどう形成するかであるとか,もう少しプログラムレベルの話のものであって,じゃあ,そこで行われるFDというのは,講習会ではなくて,正にカリキュラムの形成のための議論の場を作って,そしてみんなで議論をしてという,そういうことだと思うんですね。それが恐らく今までこの会議で議論していた前半のところとは結び付きが強いような話だと思うんですけれども,現状,FDといったときに,そういう広義のFDまで入れての議論というのはどのくらい行われているかというのが2つ目の御質問になります。
 それから,浅野先生に質問なんですけれども,浅野先生のお話を聞いて,今,認証評価等でも内部質保証を求めていて,そこでは3つある認証評価機関ともやはりプログラムレベルのレビューというか,プログラムレベルの質保証が必要だと言っているんですが,まだまだそんなのが実際に動いている状態じゃないと私は理解していて,浅野先生のお話を聞いてよく分かるのは,IRという形で,例えば浅野先生のAssessmentの結果を部局に示すであるとか,IRでアンケートをやって示すであるとか,そういうデータが出てきてこそ,そのプログラムの担当者が,プログラムレビューとして自分たちの教育がうまくいっているかを確認しないといけないんだなと,やっとそれが理解してもらえるんじゃないかと思います。逆にそれがなかったら,何で今やっていることをわざわざもう一回そんなレビューしなきゃいけないんだという,そこの認識が得られないんじゃないかと,きょうお話を聞いて思いを強くしたんですけれども,御質問としては,山形大学の場合に,浅野先生がやっているIRの取組とプログラムレビューみたいなプログラム単位の質保証の取組というのはどう結び付いているのかって,そこを是非教えていただければと思います。
【日比谷座長】  じゃあ,今回も佐藤委員からでよろしいでしょうか。
【佐藤(浩)委員】  御質問ありがとうございます。まず1点目の点ですね,自前でファカルティ・ディベロッパーを養成できない大学,ほとんどの大学はそういう状況じゃないかなと思います。大分前に,私,アメリカのファカルティ・ディベロッパーに会ったときに,大体,教員何人当たりに1人のファカルティ・ディベロッパー,専任の担当者が必要かという質問をしたら,200人に1人ぐらいかなとかいう話がありました。その後,いや,それは少な過ぎるとか多過ぎるとかいろいろ議論が展開しましたけれども,ある種のしきい値というのはあるんだろうと思うんですね。非常に先生の数が少ない大学で皆さんが一生懸命勉強会を自発的にやっている大学は既に日本の大学の中でもたくさんあります。ただ,規模が大きくなったり次のステップに移る必要があるときには,専任の担当者を置くべきであろうと考えております。そのためには,やはりファカルティ・ディベロッパーの養成が必要ですね。これに関しましては私も個人的には15年ほど前に恐らく日本で初めて愛媛大学でファカルティ・ディベロッパー養成講座を開催させていただいて,それ以後も2年に1回,愛媛大学では継続して実施されています。今年も用意されております。ただ,やはりそういったところに来られても2年で委員が交代になりましたということで,結局,繰り返し,繰り返し我々が研修をしているんですけれども,定着しないという問題がありますので,是非,今回それを後押しして,少しでも定着させる方向でというのが提言でございました。
 それから2点目,狭義,広義の話がありました。これは,2つ考え方があって,先生が言われた広義というのは,カリキュラムレベルだとか組織レベルも含めて教学マネジメントのFDを含めてやるべきだということですね。これに関しても,今,私どもの協会では,例えばカリキュラムコーディネーター養成研修というのもやったりとかして,主に教務の先生だとか管理職の先生にも呼び掛けてやっているものもあります。ただ,これはまだ始まったばかりです。もう一つの考え方は,広義といった場合に,教育だけではなくて,研究能力の開発ですとか,それから今出ていた社会貢献だとか社会関与の能力ですね,これらも含めて広義のFDとして考えるというものです。今,大学教員に求められる能力は従来の研究だけではなくて,非常に多義的で多様で,しかも深化しているということで,これにきちんと対応する研修なり能力開発の機会を特に大学院時代や入ってからの数年間でトレーニングしなければいけないということで,FDも教育を超えて様々な能力開発と連携しながらやっていく時代に入っているのかなと思っております。
【浅野委員】  御質問いただいたところでいくと,私もきょうの資料でお示ししていますが,スライド11にあるのが肝だと考えています。まず,ここをスタート地点にしないとなかなか厳しいと。具体的にお話ししますと,少なくともDPとCPはプログラム単位になっていないと話が始まらないというところであります。学部単位で作っている場合というのは,測定したアウトカムに対しても,結局,例えば同じ工学部ですと,機械,電気電子,あるいは化学でも全く違うわけですから,同じ数字を見ても反応が違います。そのため,ここをアウトカムの部分と明確に位置付けていくという意味では,まずは要素分解しないといけないということで,ポリシーをどの単位で作るのか,あるいは学位プログラムといったときに,そのプログラムをとの単位にするのかというところの設計の部分が大きいかなと思います。
 その設計をしっかりやると,先ほどお話ししましたスライド10にある単位で数字が出てきます。加えて,この設計をしっかりやると,比較もできるようになりますので,数字の意味も出てくるといえます。この意味ではおっしゃるとおりで,要は,IR側としては,アメリカとかだともうここが確立されているので,データを収集して分析すればいいんですが,そこができていない日本においては,少なくともAssessmentの担当者がいないところにおいてはIRがやっぱりそこの設計まで関わっていって,しっかりどういうふうにやるのかというデザインまでして,そこからデータを収集・分析していかないと厳しいんだろうなというふうに考えております。また,プログラムレビューについては,カリキュラムのデータが中心になりますが,昨今はマネジメント側の視点も重要になってきます。教員の最適な配置がなされているのかとか,そういったことも踏まえてやるという意味では,かなり時間は掛かりますけれども,そのデザインをどうするかということ,そしてそのユニットをどう構成するのか,その構成したユニット間のデータをどう比較するのかという,こういったことの全体像を描く過程においてもIRが関わりながらやっていかないといけないのかなと考えているところです。
【日比谷座長】  それでは,お待たせしました。どうぞ。
【深堀委員】  ありがとうございます。私は佐藤委員に質問をさせていただきたいと思います。FD・SDの高度化のために専門家の配置が必須であるというご主旨に大いに賛成します。そこで,17年間,ファカルティ・ディベロッパーとして御活躍してこられたご経験に基づいて,ファカルティ・ディベロッパーにどのような能力が必要なのかという点について,お考えをお伺いしたいと思います。
本委員会のテーマである教学マネジメントを推進していく上で,プログラムレベルのFD・SDは特に重要な意味を持つわけですが,そこではプログラムを支える学問分野の知識が非常に深く問われます。そのとき,ファカルティ・ディベロッパーとして,分野横断的に様々な部局と連携することを通して培われた俯瞰的な専門性に基づいて貢献できる部分は非常に大きいと思います。その一方で,各学問分野の教育の中で,学生にどのような知識や能力を習得させたいのか,そのためにカリキュラムをどう編成するのか,どのような授業科目を配置し,教員にどのような授業を展開することを期待するのかという点については,その分野を学んだ者でないと意見しにくい側面もあると思います。そうした中で,ファカルティ・ディベロッパーは,学問分野の専門家とどのように連携することが考えられるのか。
例えば,医学教育では,日本医学教育評価機構の医学教育分野別評価基準に「教育専門家」という項目が立てられており,「必要な時に教育専門家へアクセスできなければならない」,「カリキュラム開発」と「教育技法及び評価方法の開発」については教育専門家の利用についての方針を策定し,履行しなければならないことが規定されています。さらに,医学部は医学教育講座を開設し,医学生と研修医の教育といった医師の養成を継続的に担当される先生方がいらっしゃいます。そして,日本医学教育学会には認定医学教育専門家資格制度が設けられており,医学教育の専門家を養成する取組も制度的に展開されています。
そうした動きを見据えて,ファカルティ・ディベロッパー制度を振興していく上で,国としてどういう制度設計が望ましいのかという点について,お考えをお聞かせ下さい。
【佐藤(浩)委員】  ありがとうございます。このテーマも,我々の業界で言うともう何十年も議論されてきたテーマになるかと思います。例えば私は医学部の先生とお話しするときには,「私は医学に関しては全くの素人です」と言います。数学に関しても物理に関しても全く同じなんですけれども,そのことについてはむしろ教えていただきたいと。ただし,私が背景としている教育学のことに関しては私の専門的な知見を提供しますと伝えます。だから,その両者を統合した知識でもって問題解決をしていきましょうというスタンスですね。これは恐らく得意・不得意はあります。もちろん数学ベースのファカルティ・ディベロッパーもいますので,そうすると二重の専門性を持つということになると思うんですけれども,そこははっきりと,どこの専門性を持っているのかということはクリアにしておくべきかなと思うんですね。
 そのときに,ベースとなるものとしては,今出てきました教育学ですとか心理学ですとか,あるいは経営学なんかも我々としては持っておいた方がいいだろうということで、学問的な知見が必要です。それから,様々な人と一緒になって働くので,やはり高度なコミュニケーション能力も必要になってきています。私個人的には,最も大事なのはストレス耐性だと思います。非常にストレスフルなので,集まるとやはり愚痴大会になりますけれども,そういう仲間が集まってネットワークを作っていくことの重要性というのはそういうところにもあるのかなと思っております。
 以上でございます。
【日比谷座長】  それでは,大変有意義な御発表でしたので,質問とそれに対するお答えの時間をちょっと長めにとりましたけれども,ここからは主に資料の4に基づきまして本日のテーマについての議論に移りたいと思います。
 それでは,益戸委員,お願いします。
【益戸委員】  佐藤委員,浅野委員,とても勉強になりました。とてもいいプレゼンをありがとうございました。
 一方で,民間企業の立場から意見を述べさせていただきますと,大変驚きました。企業においては,企業ごとによってきちんとしたミッションが決まっています。それに基づく人材育成が非常に大切です。ですから,佐藤委員が「なかなかやりたがらない仕事なんですよ」とおっしゃいましたが,是非民間企業に転職なされたらトップエリートになれますよというのが私のコメントです。要は,このような教育やデータをどう活用するかというのは,企業の中でもなかなか行くところができない人事部や経営企画部が担っているところなんです。組織にとってとても重要なことです。ですから,ここにいらっしゃる各委員の皆さんの御専門というのは,今後の大学経営上はとても重要なことだと思います。だからこそ,きょうのプレゼンはとても大切でした。
 それからもう一つは,企業の中には,プロフィットセンターとコストセンター,管理部門や営業部門,本部と支店など様々な組み合わせがあり、それぞれの役割によって責任が異なります。当然,そこにいらっしゃる方の能力と適性,資質というものが違ってきます。おのおのその中でやはり教育をしていかないといけません。これは,企業の成長にとってとても重要です。どちらの部門が重要だという議論はありません。両方がうまく支え合っていないと企業としては回っていきません。とすると、このFDとSDについてですが,私は,FDは,先生方にニーズに基づいた教え方など様々なご努力をいただくことは重要だと思いますが、それを支えているSD,職員の皆様の教育というのは今後より一層重きを置いて考えていかなければいけないと感じます。事務局が御説明になった資料4の中に, FDという言葉は30個,SDという言葉は16個あります。これでは駄目だと私は思います。数が半々であることが必要だと思います。
 吉見先生より、研究に予算を配分しているのか、というご質問もありましたが,そのお話も踏まえた上で、文部科学省の方に是非お聞きしたいことは、文科省からくる予算というのは,何かひも付きなものですか、ということです。例えば、FD・SDのために自由に使えるお金というのはあるのでしょうか。というのは,大学ランキングの話になりますと,論文の数などにどうしてもスポットが当たります。更に,大学の先生方の人事評価という点においても、先ほどその論文数の話というのが出ました。私はいかに職員の皆さんが大学経営のために努力をしているかという評価も重要だと思います。いかに教員と職員が協力をしてより良い大学を作っていくかということも、今後の大学改革において重要な点ではないでしょうか。この点について文部科学省の皆さんはどうお考えになっているのでしょうか。ご説明をいただければと思いました。
 それから,本日のプレゼンには出てきませんでしたが資料5の中に「国際基督教大学におけるIR・ミッション」という資料があります。この1ページがとても重要で、まさにこのとおりでございます。企業でも、自分たちの置かれている立ち位置のために,各種データに基づいて企業経営の意思決定,ビジネスプランの策定,その点検・評価というものをしています。このIR,データ分析というのはそのためにあります。だからこそ経営企画部が握っているのです。しかも,タコつぼ的に各部門がデータを握っていたら,それは分社化すれば良いということです。けして1つの会社ではありませんね。
 ですから,非常に雑駁な民間側からの意見で申し訳ないのですが,私たちはグランドデザイン答申の中の重要な教学マネジメント部分を私たちは議論していますので,大きな意味での2040年に向けた大学経営はどうあるべきかという点を踏まえた上で,今後もアカデミアの皆さまには御議論を頂きたいと思いました。
【日比谷座長】  平野さん,御質問ありましたが,短くお願いします。
【平野大学改革推進室長】  いわゆる補助金のように使途が特定されているものというのもありますけれども,大学についてはいわゆる基盤的経費と称されるような運営費交付金,また私学助成の一般補助,こういったものについては基本的には大学の側で使い道は選択していただく,もちろんFD・SDにも使っていただける,こういった制度設計でございます。
【日比谷座長】  それで,ばばっと上がりまして,私から見て左の小林委員,次,右の小林委員,佐藤東洋士委員,それから沖委員,大森委員,川並委員,溝上委員の順で行けるところまで行きたいと思いますので,できるだけ手短にお願いします。
【小林(浩)委員】  浅野委員,佐藤委員,御説明ありがとうございました。私も大変勉強になりました。
 その中で,私,全国の大学を回っていて,やはりこの教学マネジメントを支えるスタッフの存在が非常に大きいと思ってます。また,特に今,私立大学を中心に職員力がある大学ほど改革が進んでいて,こういった教学マネジメント面でも進んでいるという印象があります。
 その中で今回, SDとFDという言葉がありますが,佐藤委員の中に,この5ページ目にSDという用語はないというのがあって,また,職員には,教授等の教員や学長等の大学執行部,技術職員等も含まれるというふうに定義がありました。これは以前,義務化されたときの審議会を傍聴しに行っていたのですが,そのときの最後の質問に「このスタッフには学長も含まれるんですか」という質問がありました。,それに対して文科省の方が「これは大学を運営するスタッフとしての職員なので,教員,職員,技術職員,学長も含まれます」という回答をされてこういうふうになっていると思います。大学にお伺いすると,SDという言葉が2つの意味で使われていて,1つは,教授に対する職員のスタッフのSDということと,もう一つは大学を支えるスタッフ全体としてのSDと2つあって,きょうはどっちの意味ですかというのを聞くような会が結構あるんですね。なので,今回の議論の中でSDと言うときに非常に重要だと思うんですが,どういう意味で使われているのかとか,使い分けとかをきちんとした方がいいのではないかというのが1点目です。
 もう一つは,浅野委員の中で大学ポートレートが出てきました。これ,私は最初のところから関わっていて,毎回ずっと言っているんですけれども,現在のポートレートは横並びで比較ができません。せっかく情報が公開されても、比較できないこういったものって役に立つんだろうかなと思っております。例えば,今,何かネットで比較するときには,ポチポチってやれば全て何でも比較できるようになっています。これが現在のポートレートでは,ページごとに見なきゃいけないということになっていまして,これを例えばIRの御担当者の負担を減らすために、きちんと比較可能なものにすることが必要だと思います。,同業他社との比較あるいはベンチマークというのは民間企業でも非常に重要でありまして,大学でもこれは同じだと思います。アメリカなんかではこういったものがちゃんと比較できるような仕組みになっていると伺っているんですが,日本では大学ランキングを助長するみたいなところで、大学からの反対があるということです。そんなことをしなくても,いろんなメディアは自分たちでランキングを作って発表しています。大学ポートレートがIR担当者の業務削減や業務サポートというところにきちんと資するような形であるとか,あるいはベンチマークがちゃんとできるような形での提供というのが,どうも今,議論が余りされていないような気がしますので,こういったところの議論も,もしあれでしたら,今どんな議論になっているのかも含めてお答えいただけると有り難いかなと思っております。
 以上2点でございます。
【日比谷座長】  手短に答えられます?
【平野大学改革推進室長】  そういったデータというものの公表の基盤とか,こういったものをどうするかということについては,グランドデザイン答申でも盛り込まれているわけでございます。今回の議論というのは,今,現行制度を前提に大学として何をするかというところでございますけれども,そういった部分も含めて,今後,大学全体の観点からしかるべき部会等で議論をしていく必要があると思っております。
【日比谷座長】  じゃ,どうぞ。
【小林(雅)副座長】  ここは政策を考える場でありますので,その観点から少し意見をのべたいのですけれど,きょうの資料でいいますと4のところの6ページで教学IRのことについてですが,学内規定の整備,これは浅野委員がきょう非常に力説されたところで非常に重要な指摘だと思いますけれど,それについてはかなり詳しく書かれているんですけど,その上に教学IRに関する専門スタッフの不足ということと,外部機関の活用や大学間連携というのはかなりあっさり書かれている。ここは,きょうお二人の発表はこの点についてかなり触れられているので,もう少しここのところを具体的に書かないと,政策としては少し足りないのではないか。
 もう少し詳しくそれを敷衍してお話ししたいのですけれど,きょう,専門スタッフということと,それから組織が重要だという話がお二人とも共通にあったと思うのですが,そられに参考になるのは評価だと思います。認証評価というものができることによって,評価も最初は専門スタッフなんていうのはまるでいなくて,ゼロからスタートしたのですけれど,認証評価機関というのができることによってそれなりの研修ができ,活動ができる。活動し過ぎだという意見もありますけれど,それはともかくとして,そういう形で動いている。IRとかFDについてそういう形で動くのがいいかどうかというのは議論があると思いますけれど,いずれにいたしましても,少しそういうことは参考になるのではないか。つまり,具体的に申しますと,政策としてどういう支援ができるかということを考える必要があるのであって,これは大学に何かやってほしいということがずっと書かれているのですけど,では文科省は何をするのですかということも政策ですから,その観点からしますと支援ということを考えられる。
 それで,支援にも2つあると思うのですけど,1つは,きょう浅野委員の発表にあったIRコンソーシアムは,文部科学省の大学間連携共同教育支援事業から始まっている,文科省の事業が始まっているわけですから,そういうものが今ないので,そういったことも考えられる。中間組織というのはやはり決定的に重要ですから,それをどういうふうな形で政策として支援できるのか。IRがもう一つ盛んになった理由は,私学助成の中で改革支援ということで,IRの組織を作るとポイントが加算されるというやり方をとったので,私学は大体それでポイントのために箱だけ作った例が多い。それで,箱を作ったけど,何をやっていいか分からないという話になってしまっている。そういうやり方は政策誘導としては非常にまずいやり方だと思いますので,その辺,そういった中間組織をもう少し支援するというような方法を考えていただきたいということです。
 第2点は,これも今まで出てきましたけれど,大学ポートレートを含めてデータをどうするかということで,これについてもIPEDSの話が出ましたけど,IPEDSだって,初めからアメリカですごくいいデータシステムを持っていたわけではなくて,個別高等教育機関のデータを公表し,研究者が活用し,あるいは大学がそれに応じて改革をしていくことによって,データもまた整備されていくという,きょうの浅野委員の言い方をしますとClosing the Loopができているわけで,そういったことが日本の場合できていないということが問題です。これも何回も繰り返して申し上げていますけど,文部科学省の学校基本調査というのは物すごくいいデータです。ただ,それが個票として使えるような形になっていない。これは,指定統計という制約があるからですけれど,その辺を含めてデータの在り方をもう少し,文科省としてどういうふうに大学が活用できるようなデータを作っているのか,ポートレートあるいは学校基本調査を含めてどういうふうにするかということについてももう少し考えていただきたいということです。私は,一番IRが遅れているのは文部科学省じゃないかと思っているのですけど。それは半ば冗談,半ば本気ですけれど,そういうことを含めて少し政策としてこの辺り,6のところにさらっとIRのことだけで書かれていますけど,これ,全体の話でFD・SD含めての話だと思っていますので,その辺り,もう少し検討していただければと思います。
【日比谷座長】  佐藤委員,お願いします。
【佐藤(東)委員】  ありがとうございました。佐藤委員,それから浅野委員からの報告について大変興味深く伺っていたわけですが,ちょっと本筋と違う話をするかもしれないけれども,なぜこういう議論が長いこと続くのかなというのが私自身の思いがあるんですね。というのは,佐藤委員の方からFDの歴史にずっと書いてくださっていて,私も関わったところがあって,一般教育学会の課題研究集会,今年は広島のエリザベトでやって,玉上審議官がスピーカーとして来てくださるというようなお話のようですけれども,その頃から考えると相当年数この議論をしているんですね。設置基準にも努力義務化から義務化になっていろいろしてきたんだけれども,じゃあまだ何でこんなにディテールの話をするのか。最初の頃は,当然,ICUの授業とかで,たしか原先生とか絹川先生とか讃岐先生かな,なんかがされていた頃からいったら,えらい昔の話ですよね。何なのかなと。それからFDって言われ出して,FDで,まだ8インチのフロッピーディスクがあった頃で,FDってフロッピーディスクで,何だというふうなことから始まったんだと思うんですね。
 しかし,これ,ずっと見て,なぜなのかなと思うと,努力義務あるいは義務化すると。今度は,それをやらないとペナルティーが付くみたいな議論になっていってしまうから,先ほど小林先生から,私学助成の運営でもIRを置くことによって補助金が少し加算される,評価されるということを言っていたんだけれども,むしろインセンティブ,これ,しっかりしたところはインセンティブをきちんとするというようなことがいいんじゃないかなと。
 あともう一つは,FDも,私の記憶では,89年の暮れ,ベルリンの壁が崩壊した直後,アメリカのある組織のFDのプログラムにベルリン壁崩壊後の体制についてというのがFDのテーマで,日本のFDって,私は一般教育学会のときから,授業の小道具とか大道具みたいに授業の方法論という内容についてばかりで,第2のところでもう内容に入ったらいいんじゃないかと言ったんですけど,どうしても内容については入っていかないということだったんじゃないかなと思います。
 そういう意味では,これから少し変わって,何かそれぞれ議論,お話の中に,規模が違う,内容が違うという,それぞれの大学はそれぞれの大学にふさわしいFDをきちんと構築したら,それを評価して,インセンティブとして何かできるというようなことを考えるのがいいのではないかなということです。
 きょういろいろお話を伺いましたけれども,余り後期高齢者がしゃべってはいけないというふうには思っているんだけれども,とりあえず,あ,随分長いことやってきたんだな,なぜなんだろうなと。これはSDも同じ。それから,今,アメリカの大学のシステムと比較があるけれども,アメリカの大学というのは,ボードというのは全然外にあって,プレジデントもボードに入らないというのが大半ですから,執行部なんだな,オフィサーなんだな,Vice President and Provostのオフィサーであるということから言うと,じゃあ同じ扱いをできるのかどうかということはちょっと感じているところです。
 以上です。
【日比谷座長】  沖委員,お願いします。
【沖委員】  失礼いたします。資料4の4ページの1行目なんですが,非常にいいことを書いていただいているなと感心しております。新任の教員,実務経験のある教員の採用のタイミングでFDを確実に実施するというのは,ここでも盛り込んでいただいているので,是非重要視したいと思っています。
 ただ,この際に,佐藤委員からもありましたように,新任教員の基準枠組みというものがなければ,何をどの程度すればいいかということがやっぱり不明確になろうかと思うんですね。先ほど佐藤委員は,海外,特にイギリスにおいては新任のタイミングを外せばコントロールできないというようなお話もありましたが,実際やはり,新任のときの研修というのが非常に重要になってくるかと思います。また,これはFDerについても同様で,何らかの能力証明が必要になってくるだろうと思います。
 その意味で,資料5なんですが,8ページのところに立命館の事例を挙げました。先ほどの国研をはじめ日本高等教育開発協会の基準枠組みに相当するものを立命館でもこういうふうに制定して,それに基づいて講座を配置し,更にそれに基づいて新任教員向けのFDプログラムをやっているというところですので,こういう基準枠組みに基づいたプログラムを公に認証するというようなことが第一義的に必要になってくるんじゃないかなと思います。先ほど深堀委員もおっしゃったFDerもそうなんですけれど,文科省がするのではなくて,学協会が認証するというようなことをまず考える必要があろうかなと思います。
 あと,ちょっと余分ですが,12ページのところには,本学における教学IRの中心的な調査として実施している「学びと成長調査」を挙げております。文科省が今,進めている学生調査というのは対外的なベンチマーキングには有効ですが,例えば学内においては,学年進行に即してDPの達成度がどのように向上していくか,どういう学びが行われ,どんな学修成果が蓄積していくかというようなことを見ることも非常に重要ですので,文科省がやられる学生調査と学内的なIR体制の整備,両方とも必要となるだろうと思いました。
 以上です。
【日比谷座長】  大森委員,お願いします。
【大森委員】  ありがとうございます。いつも私は現場でこれを展開していくときに,これじゃ分からないとかっていつも文句を言っているんですけれども,今回,資料4は非常に分かりやすくて,なるほどと思って,これ,すぐできるというか,すぐやらなきゃというか,だったので,これは私は今回すごくよかったなと思います。特にFDというのが,私なんかも,多分,本当に現場の学長先生たちのレベルでいくと,授業の技法を学ばせなきゃということに執着していたようなところがあると思うんですけど,他の先生方は,何,今更そんなことを言っているのって思われるかもしれないですけど,多分そのレベルです。なので,そこをちゃんと段階的に示していただいたというのと,それから,やっぱり教学マネジメントとしてDPに基づいて,じゃあどういう人材が必要なのか,そのためにはどういう育成プログラムが必要なのかというふうにやっていくというのもすごく腑に落ちたので,とても有り難いなと思います。
 予算の話が出たんですけれども,やっぱり改革総合でIRの専門員を置くかとかってなると,逆に,私が聞いた話だと,「あれはお金のある大きいところの話だよね。うちはもう出さない」ってなっているところが結構あったりするわけです。というところで,例えば改革総合でもIRはやらなきゃならないし,カリキュラム専門員みたいな人も置かなきゃいけないし,これでFDのとかってなっていくと,うちで3人を新たに雇用するって絶対無理ですよね。というようなところでいくと,それが望ましいんだけれども,それをやったところは,佐藤先生おっしゃったようにプラスでというところは有り難いと思っていますけれども,実質をちゃんと見れるような何かということで,例えば今年の夏のうちのFDはDPをもう一回考えながら各学科の目標を再設定して,さらに,それに基づいてそれを達成するカリキュラム構築というワークをずっとやったんですけど,それは誰がワークを主導してシートを作ってって,私なんですね。これ,私はファカルティ・ディベロッパーとしてどうなんだろうと。でも,それ,専門としてそれが置かれているわけではないですよね。でも,実質としてはかなりいいところにいけているんじゃないかと思っているんです。だから,そういうところがちゃんと見てもらえるような,それを置かないと駄目ってなると,それで補助金にひも付いて,「やってないところは駄目です」みたいになっていくと,ちょっとしんどいところがあるなというところは申し添えたいなと思います。ありがとうございます。サバティカルって研究であるんですけど,教育のサバティカルもあってもいいなとちょっと思ったりしました。
 以上です。
【日比谷座長】  それでは,この後,川並委員,溝上委員,清水委員と,お三方お願いしたいと思いますので,できるだけ手短によろしくお願いいたします。
【川並委員】  まず1つは,大森委員と重なることですけれども,やはり学校の規模によっては専門家をどんどん置きなさいという話が出てくると非常に苦しいなと。ただでさえ設置基準でぎりぎりで教育を回している学校が非常に多くある中で,こういうものが次々と,「こういうのを置くのはいいですよね」という程度でしたらいいんですけど,だんだん「置きなさい」という話になってくると,なかなか苦しいところが出てくるんじゃないかなと思っています。
 あと,もともとFDが最初にスタートして,後からSDが出てきたので,FD・SDと切り分けて置いてあるんですけど,私はこれ,FDとSDを切り分けてやる必要があるのかどうかということを非常に疑問に思っておりまして,教員だけが教育を行っているわけじゃなくて,教育と職員がやはり互いに補完し合って教育が成り立っているので,教員が一体どんな教育をしているかということを職員が知らなかったらサポートのしようがないと思うんですよね。ですので,大学にしろ,短期大学にしろ,売っている商品は教育ですので,構成している人たちが全ての人たちが教育の中身について知ることは当然のことだと私は思っています。
 先日,WASCのACCJCに参りまして,「SDってどういうふうにやっているの」って聞いたら,その方が答えたのは,警備員と清掃員がどういう研修をするんだというふうに言われましたのが非常に印象的でした。
 終わります。
【日比谷座長】  溝上委員,お願いします。
【溝上委員】  手短に大きく1点,資料4に対して浅野先生の御発表もちょっとにらみながらコメントしたいと思いますが,この委員会でデータ・エビデンスというのを収集して,それをマネジメントに反映させていくというのはもう基本だと思うんですね。一番という,幾つかの一つだと思うんですね。イコールそれがIRなのかということをちょっと基本に戻って考えないといけないんじゃないかというふうに,この文章を読んでいて思います。私,前職でIRの仕事もしていましたし,FD・SDもやってきましたので,そういう立場から見てきた視座と,今ちょっと幼稚園から大学までの経営もしていますので,また,大学の学長が交代することもありますので,大学の副学長とかまさに教学マネジメントというのを執行部で作っていっているんですね。そのときに,データとかエビデンスなんていうのは,IRの部署からではなく,毎日どこかしらかの部署から集めている状況があります。先ほど大森先生もおっしゃいましたけど,例えば教学マネジメントを進めるときに,人が欲しいとか,これをやるんだったらこの部署が要るとか,そんな話になって,結局お金の話にもなったりして,そういう資料も要るのですね。非常に多岐にわたります。だから,教学マネジメント特別委員会でまとめていくときの教学マネジメントに関するデータ・エビデンスがIRとどう関係するのかというのを整理した方がいいんじゃないかなと思います。先ほど浅野委員の御報告がありましたように,IR,非常に多岐にわたっていて,歴史もありますので,もういろんなところに絡んでいく言葉になっていると思います。「教学」と付けても,結構,意思決定していくときにはIR以外のところからの情報というのが非常に多く必要になってきますので,その辺りの観点からちょっと御検討いただければと思います。
【日比谷座長】  それでは,お待たせしました。清水委員,どうぞ。
【清水委員】  きょうの2人のプレゼンテーション,あるいは資料4は問題ないかと思います。
 20年ぐらい前の八王子の大学セミナーハウスを思い出しました。先ほど佐藤理事長もおっしゃいました,日本にFDを持ってきたのはICUの原一雄先生で、アメリカスタンフォードでの授業評価を日本に紹介されました。臨教審のときです。第四部会の飯島部会長のところに耳打ちして,そこから始まったと聞いています。義務化されたのが新制大学ができてから60年近いということになります。きょうの資料5の最後の4枚を急遽用意させていただきました。長い間,私もFDに携わってきましたけれど,究極の狙いは,教育共同体とか教育コミュニティーを作ることにあり、ここにFDの目的を置かなければいけないと考えています。また、アメリカが開発したシステムですよね。きょう,佐藤先生の大学の世界のFDという中にアメリカが入っていないのは,皆さん不思議に思いませんでしたか。私の調べた範囲では,大学カタログに単位制度が出てきたのは1892年。その次のペーパーがありますけど,この単位制度はハーバード大学の選択制導入に基づいて生まれたシステムで,あらゆる科目は等価値である。だけど,教え方だけは同じにしないと学生は不利益を被るということで,FDが開発・実践されたわけです。ちなみに,GPAもこの定義によって生まれたシステムで,言ってみれば,単位制度イコールFDイコールGPAなんです。それを日本と比べてみると,日本は単位制度が戦後導入されましたが,FDは五,六十年後に義務化されました。GPAに至ってはまだです。
 こういう状況の中で,日本型のFDを今,義務として展開しているわけですが,1つだけ,指摘したいのは,今回の委員会ではDPとか学修成果の可視化が議論されていますが,こうした教え方を同じにしようという,この中には,教員の責任性があるということです。つまり,単位の取得いかんは学生の責任であるというのが一般的にとられていますけど,ここには,学生の学修成果を同一にするという意味合いが含まれているわけです。ですから,単位制度の中にもそれは含まれているし,FDの中にも含まれる。つまり,これは教員の責任性でもあるということです。教員の責任性というところでこのFDも捉えなければいけないというところを私は強調したいと思います。
 最後の2枚は,本学のFD・SD規程とその基本方針,私自ら委員長としてこのFD・SDを今推進しています。策定した基本方針を御参考にしていただければと思います。
 以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 ちょうど12時を過ぎたところかと思いますが,本日ちょっと御発表へのコメント等時間をとりましたので,もし御発言がなかった方,また,言い足りなかったというところがありましたら,御意見を事務局までお送りいただければと思います。
 それでは,事務局から何か最後におありですか。
【平野大学改革推進室長】  本日また誠に活発な御議論を頂きまして,ありがとうございました。指針の議論というところに加えて,また,国や中間組織といったものも含めてどのようなことが期待されるのか,国に対するまた一つの御示唆というところを頂いた部分もあります。こういう内容については,しっかり関係部局共有するとともに,今後の政策の検討を審議に生かさせていただけるように,しっかりと整理をしてまいりたいと思います。
 次回でございます。9月24日(火曜日)午前10時からの開催でございます。場所等,詳細はまた調整の上で追って御連絡を申し上げます。
 資料につきまして郵送を希望される先生は,いつものように附箋に「郵送希望」と書いて机上に残していただきますようにお願いします。
 ありがとうございました。
【日比谷座長】  それでは,本日の委員会はこれで終わりにいたします。ありがとうございました。


―― 了 ――

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