教学マネジメント特別委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成31年4月26日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 座長の選任等について
  2. 教学マネジメント特別委員会の運営について
  3. 教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について
  4. その他

4.出席者

委員

(座長)日比谷潤子座長
(副座長)小林雅之副座長
(臨時委員)清水一彦、伹野茂、益戸正樹の各臨時委員
(専門委員)浅野茂、大森昭生、沖裕貴、川並弘純、小林浩、佐藤浩章、林隆之、松下佳代、溝上慎一、森朋子、吉見俊哉の各専門委員

文部科学省

(事務局)浅田文部科学戦略官、瀧本総括審議官、蝦名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、平野大学改革推進室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)金沢工業大学学長 大澤敏氏、学校法人金沢工業大学理事 村井好博氏、追手門学院大学基盤教育機構准教授 清水栄子氏、国際基督教大学学修・教育センター部長 小林智子氏

5.議事録

(1)座長の選任等について
座長について,大学分科会長の指名により日比谷委員が選任された報告があった。
副座長については,日比谷座長から小林(雅)委員の指名があった。

(2)教学マネジメント特別委員会の会議の公開について

事務局から教学マネジメント特別委員会の運営及び会議の公開に関する規則案(資料3)について説明があり,原案のとおり決定され,同規則に基づき,以後の議事について公開されることとなった。


【日比谷座長】  それでは,これより本日の教学マネジメント特別委員会の議事を公開いたします。本日は,第10期の中央教育審議会における初回の会議ではございますけれども,第9期より委員の交代もなく,引き続き審議を行いますので,挨拶等は省略させていただきます。
 本日は,議題(3)教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について,これがメインの議題となっています。これに関連してお越しいただきました方々を御紹介いたします。
 金沢工業大学学長大澤敏様です。
【大澤氏】  よろしくお願いします。
【日比谷座長】  それから,学校法人金沢工業大学理事村井好博様です。
【村井氏】  村井でございます。よろしくお願いします。
【日比谷座長】  それから,追手門学院大学基盤教育機構准教授清水栄子様です。
【清水氏】  よろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  それから,何か自分のところで「様」というのは変なのでやめますが,国際基督教大学学修・教育センター部長小林智子でございます。
【小林氏】  よろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  本日は前回に引き続きまして,授業科目・教育課程について議論をいたします。本日の進行ですが,初めに3名の方々,金沢工業大学は大澤学長を中心に御発表と伺っておりますが,まずそれを伺いました後,事務局から本日の議論に関する資料などの説明をしてもらいます。その後,御発表に関する質疑,それから授業科目・教育課程に関する議論の時間といたします。
 それでは,早速ですが,発表に移りまして,教学マネジメントの確立に向けて取り組み中である,あるいはこれから取り組もうとなさっている大学について,金沢工業大学の取組は非常に参考になるものと考えまして,大澤学長にお越しいただいております。
 それでは,15分程度で御発表をお願いいたします。
【大澤氏】  それでは,よろしくお願いいたします。学長の大澤でございます。
教学マネジメントについてご説明します。1枚めくっていただき,教育マネジメントの仕組みの図をご覧ください。一番左上に建学の理念があり,その下に教育・研究ビジョンがございます。ここが実は本日のCAP制にも非常に大きく関わっている大事な部分です。
 建学の理念は,人間形成,技術革新,産学協同ですが,これに基づいて我々はどのようなビジョンを立てているかというと,社会との共創でございます。共創というのは,ともに創るという意味の共創です。このビジョンを掲げて,共創教育を進めています。それを実現する方法が,社会実装教育の推進です。要するに,今まで大学は,大学の中で授業をやって,プロジェクトもある程度大学の中でやって完結していたのですが,その教育を変えて,社会に広く学生を出して,社会の方々と共創しながら,人間力あるいは自分たちが持っている学問の領域がどのように社会で通用するのかということを検証していきましょうということが大きなビジョンです。その下にディプロマ・ポリシーがあるということです。ですから,社会との共創ができる能力を持った学生の輩出の要件がディプロマ・ポリシーに記載されていることになります。
 その下にカリキュラムと書いてあります。ここでは,カリキュラムガイドブックが準備されており,学科・課程の教育目標が書いてあります。その中に学ぶ領域が科目群として細分化されています。これらを学生に示します。そして科目群には其々教育目標があって,この教育目標を達成すると,当然ながらディプロマ・ポリシーを達成したということになります。
 その下に,本日の話題の中心になると思われるシラバスが青い枠で書いてあります。科目の教育目標が当然各科目にあります。その内容が右側に書いてあります。そして成績評価に対する記述までを本日は御説明したいと思います。
 青い枠が右の方まで繋がっていますが,そこにアクティブ・ラーニングや自己点検授業などが書いてあります。先ほど申し上げましたように,本学は社会実装しながら学ぶというビジョンを掲げていますので,そのために課外教育プログラムを用意しています。学生は社会に出て学ぶことになります。そして,企業あるいは官公庁等行政とともにプロジェクトを進めます。63プロジェクトと書いてありますが,実はもっとたくさんの様々なプロジェクトがあります。プロジェクトと授業をどう結び付けるかについては,後でe-シラバスというものを御説明します。電子シラバスのことです。このシラバスに学生がアクセスすれば正課とプロジェクトの関係性について全てのことが分かる仕組みにしましょうという意図で,AP事業を通して確立させていただきました。吹き出しの部分にCAP制と書いてあります。要するに,授業だけを幾らでもとっていいですよということになると,課外活動の時間がなくなりますので,CAP制がどうしても必要になってくるということに最初にここで触れさせていただきたいと思います。
 あとは,どこの大学でもされていると思いますが,IR組織などを通して自己点検して,外部評価を受けて,またビジョンに戻るという仕組みです。昨今の社会の変化が激しく,AIとかIoTなどの情報技術を文理を問わず学ばないといけないという時代の中で,社会と共創を目的とした共創教育を実践しながら,社会の変化とともに学生を育てていくことが必要です。要するに,学生が未来を創るわけですので,そのために必要な教育の仕組みになっているということを御理解いただければと思います。
 それでは,そのために何をすればいいのかということについて3ページに概要が書いてあります。ここでは「学力×人間力」という教育をやっていきます。図の真ん中にプロジェクトデザイン教育という記述がありまして,これが本学の教育の特徴です。問題発見から解決までのプロセスを学ぶために,1年生から4年生まで,6科目の必修科目から成っています。この科目を進めるために必要な科目は通常の科目として配置されています。
 ここで,CDIOという言葉が出てきますが,考え出すがConceive,設計するがDesign,それからImplement,Operate,は実行する,運用・操作することで,ここのIとOの部分が社会実装に相当すると考えればいいと思います。この部分がこれまで大学に欠けていたと私どもは思っています。考えたり,何かデザインすることは教室でもできますが,それ以外のことは社会実装しないとできないということです。この社会実装の中で学ぶということになります。このプロジェクトデザイン科目はプロジェクトのプロセスを学ぶ科目ですが,ここで実際の問題に取り組みます。そこにはSTEAM教育の中の,Artも入っていますし,Ethicsも入っています。その赤線の上のところにSTEAM教育が記載されています。STEAMと関連付けて正課では学びます。e-シラバスは,それと課外の学修を結び付けるものです。
 この,3ページの図で,プロジェクトの現場は右側の社会になります。自ら考え行動する技術者,社会人と書いてありますが,社会人と学生がともに学ぶシステムを作らないと社会実装はできませんので,そういうシステムを作っているということです。
 本日はCAP制ということを述べてくださいということでしたので,上の吹き出しのところに要点を記述しています。時間割を授業で全部埋めてしまうと,学科共通の空き時間が作れませんし,自学自習の時間もとれません。課外時間の学修の時間が確保できないという理由で,CAP制を設けて,教育効果を上げています。平成26年から30年にかけて,正課の授業外の予習復習の時間が約2倍に増えています。
 時間もございませんので,次のページに移らせていただきます。では,学生たちは授業の外でどんなところで学ぶのでしょうか?社会実装の場を示してあります。社会に出ると,教室で授業をやっている会社はどこにも見当たりませんで,全てPBLになります。プロジェクト型で仕事を進めています。情報技術が社会の中にどんどん浸透してくるSociety5.0という時代が来ると言われていますが,それを担う学生を育てるべきだという考えで,ここにビジョンに対応するものが掲げられています。世代も分野も文化も全部超えて教育すべきと考えています。20歳前後の若い人たちと先生だけでの議論とはその深さが異なるという意味です。
 その下に社会実装例と書いてありますが,プロジェクトはこの中にたくさんあります。エネルギーに関するもの,植物工場に関するもの,医療に関するもの,それから人生100年時代に対応する健康に関するものなど,文科省が掲げている2040年までの5つの課題は全てこの中に入っています。
 右側にちょっと変わった写真を示しました。一地方大学の中で社会実装を進めるということは難しいので,フィジカルな空間とサイバーの空間をつなぎました。文科省のフィージビリティスタディーの予算を頂きまして,実物大で空間と空間をつなぐ実証実験をしたものです。ここでは金沢と虎ノ門のキャンパスをつなぎましたが,この中でいろいろな問題を議論するということができました。ということは,海外の大学ともどこの大学とも企業ともつながるということです。これからこういうことを展開していくべきだと考えており,それが本学の姿勢でもあります。
 次に,5ページに移らせていただきます。3ページの図でカリキュラムの主柱にプロジェクトデザイン教育(理工系PBL)が記述されています。その内容は問題発見から解決,さらにそれを評価・選定して,有効性を検証することです。ですから,ある程度プロトタイプを作り,外に出て社会実装するというところまでが必要で,関連事項を右に書いています。いろいろな分野の学生,自治体関係者,企業の関係者とやっていくというプロジェクトになります。
 先ほどのCAP制はなぜ必要かということですが,異分野の学生や外国人と一緒にプロジェクトを進めていくときに,学部・学科の枠を超えてクラス編成をする必要があります。そうすると科目がたくさんあり過ぎると,学科混成クラスを作ることができないということです。従って,ある程度科目を精査して,専門基礎科目はしっかりとやるという中で,CAP制をとっています。
 6ページに移らせていただきます。これがプロジェクトデザイン教育という本学が特徴としている教育で,海外にもこれを輸出しています。この図は1年生から4年生までの流れです。プロジェクトデザイン入門というのは,身近な問題を扱います。例えば皆さんの机の上に置かれている水のボトルのキャップを開けるときに,これが開きにくい場合は問題であり,また微妙な手の力が必要になります。以前にボトルに毒が混入されたこともあります。今は多分フィルムが上にかぶさっています。それも学生が見付けられる解決策の一つということです。1年生のときはそこのような身近な問題から始めて,それを解決するためにはこの素材はどうだろうか,このスクリューの形がどうだとか,心理的にこれは開けやすいか,おいしく飲めるかとか,そんなところまで考えるので,問題発見・解決のプロセスから検証プロセスまで一連の流れを一応学ぶことになります。その後だんだん実社会の問題,それから研究領域の問題に入っていくということです。そのプロセスが6ページの図に書いてあります。ここでは先ほど説明したCDIOのIとOの部分が大事です。
 7ページに移ります。プロジェクト教育科目が授業の科目とどう関わっているかを学生に明示するために,各学科で作っている資料です。14学科全てでこれを作っていますが,科目との関係では,どこでどんな科目と関係していますということが書いてあります。一番右のところに2019年にAI基礎とありますが,データサイエンスの基礎として例えば,データをどう扱うか,ビッグデータからどんな特徴を抽出するかということと,AIの基礎的な内容を学習する全学必修になります。AIは全てのプロセスで使っていくということになります。
 次のページ,8ページですが,我々は,先ほどビジョンでも申し上げましたけれども,社会実装型プロジェクトを行っています。プロジェクトが授業とどう関わっているかといことを電子シラバス――e-シラバス,エレクトリック・シラバスと言っていますが,で結び付けています。
 この内容については, 11ページを御覧いただくと,簡単にイメージができると思います。どうなっているかといいますと,シラバスというのは,第1回目からずっとやることが書いてあるのですが,その中に予習課題,e-ラーニングシステムとか,配信システムとか,が組み込んであり,学生はレポートを電子上で提出してきます。ポートフォリオもここへ入れてきます。写真が出ているのは,課外活動との関係を示した部分で,クリックすると,この科目とどんな課外活動が関係しているかということが分かります。一番右に風力発電の写真がありますが,例えばこの科目が流体力学だったとすると,風の向きなどを計算します。その計算はすぐこういうところへ応用できますよといったように,授業とこんな関係になっているということが分かります。全ての教員,全ての学生がこれを活用できます。閲覧も活用もできるというところが大事で,その結果,リアルタイムFD活動になるということです。それらを学科の教室会議等に持ち帰り,改善活動に繋がることになるかと思います。
 ではシラバスはどうなっているか,9ページに戻らせていただきます。本日はここが大きい問題提起の一つだとお聞きしています。基本的には,1番から8番までに書いてあるとおりで,もちろんこの科目の学修目標も書いてあります。この科目の学修目標を達成すると,学科の目標が達成できて,そしてDPにつながっているとことは当然の仕組みと言えます。それから,5番が学生の行動目標で,授業の概要も書いてあります。この科目を達成すると,何ができるようになるか。○○ができるというような表現で書いてあります。6番目に評価の方法が書いてあります。一番下にそれを拡大した図がありますけれども,知識を取り込む力が何%などのことが,レポートで要求されていますよということが分かります。教員は課題を出すときもこれを意識します。
 e-シラバスにおいても授業明細は当然学生との契約であって不変ですが,そこに先生方が,リアルタイムで,新しい問題とか課外活動へのリンクをカスタマイズできる部分を加えるということです。ですので,新しい時事問題が起きたら,すぐそれを次の日に先生が入れて,「それについて本日はディスカッションしましょう」ということになります。
 7番が評価の方法。8番には,本日CAP制とともに提示されました具体的な達成の目安が書いてあります。次のページにその部分だけ少し大きく拡大してありますので,御覧いただければと思います。
 スライドの最初の7番の評価の方法には,試験,クイズ・小テストが書いてあります。①から⑥の6項目は,スライド中の5番に示す行動目標であり,この科目で○○ができるという番号がその前に付いていまして,それと関係ありますよというのがレ点で示されているものです。そういう観点でレポートを出してください,それから小テスト・クイズもそういう観点でやりますということを明示しています。
 本日の話題の一つとして,8番目ではこの科目で具体的に達成の目安はどうなっていますかということが箇条書きで書かれています。これは,倫理の科目の例で,それに関するものです。今は,理想的な達成目安と標準的な達成目安とあるのですが,議論の中で最低限の達成目安がDPと関係するので,それは学生に明示するべきではないかということを,教育点検評価部という教学マネジメントの組織で議論しているところです。
 時間がもうなくなりました。後はどの大学も多分されているようなことだと思います。次の12ページのミクロな部分,ミクロなFDというのは,毎日のシラバスをe-シラバスで内容の追加をしていったり,諸問題を毎週の教室会議で議論することです。真ん中にあるのは,教学組織から出てきたデータを学科レベルで精査していくもの,それから左側が大学全体の活動の改善を半年単位あるいは年単位で改善しようという流れです。
 その後の13ページは,IRをはじめ,通常行っていることが書いてありますので,御覧いただければと思います。
 その次の14,15ページは,そこから出てきたデータを個人ベースでどうやって落としていくかとかという例です,14ページにバナナ図と書いてありますが,これは,横が単位数で,縦がQPAです。このように各学年ごとに4年生まで分散していて,これを基に,どこが大体平均の単位数ですねと学生に示すときに使います。
 15ページでは,特に左の図で,教員の熱意と授業の満足度の相関性が非常に高いことが分かります。この線の下の方にある授業に関しては,ちょっと問題であるということで,学科あるいは学部単位あるいは教学組織との連携の中で様々な改善が行われていくということでございます。
 次は,アドバイスの仕組み,それから,最後の成果は,社会に対する成果ですので,企業の方々に来ていただいて,ステークホルダー交流会という成果発表会を開いています。
 最後の18ページの図は,これまで頂いたGP等が全て書いてあります。この青いところが正課で,黄色い方が正課外に関するものです。正課と正課外の活動をe-シラバスという形で合体させたというのが最近のAP事業で,来年まで続きます。機会がございませんでしたのでこの場でご支援にお礼申し上げます。
 以上,時間をとってしまいましたが,発表とさせていただきます。ありがとうございました。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして,清水先生からお願いいたします。
【清水氏】  追手門学院大学の清水でございます。本日はこのような発表の場を頂き,ありがとうございます。私からは,アメリカにおけるアカデミック・アドバイジングについて御紹介したいと思います。
 まず資料についてなんですけれども,15ページ以降は参考資料として挙げております。特に17ページにつきましては,2大学の実践事例を表にまとめております。全学組織のセンター形式で行っておりますテンプル大学ジャパンキャンパスのものと,学部・学科でアドバイザーを置いているコロラド大学ボルダー校,両大学とも私の方で訪問調査をさせていただきまして,最近のウエブサイトの情報等も付け加えた上でこの表を作成しております。両大学の差異等もございますけれども,そのあたりは御覧おきいただければと思います。
 本日は,アカデミック・アドバイジングとはということについて,3ページ以降から順次説明をさせていただきたいと思います。
 まず目的に関してでございますが,学生本人による学習目標の設定とその達成に対する支援とをまとめさせていただいております。これにつきましては,アメリカにおきましては,ほとんどの学生が大学に入学した後に専攻を決定していくことになります。ですので,自分が将来どんなキャリアに就くか,あるいは自分の興味のある分野というのはどういうものなんだろうかというところを学生自身が自分で納得して,自分の目標を設定する。そして,そのためにはどんな授業を履修していくのか,あるいは関連するどんな活動があるのだろうかということを知り得て,自分でプランを立て実践していくというところを支援していくというのが,アカデミック・アドバイジングというものになります。
 続いて組織についてなんですけれども,「全学組織,学部,学科など」と書かせていただきましたけれども,全学でいうと,大体センターを置かれているというところが多いかと思います。学部,学科に関しては,先ほど御紹介いたしました事例等も御覧いただければと思います。
 担当者につきましては,アカデミック・アドバイジングそのものを専任で行っておりますいわゆる専門職と言われるアカデミック・アドバイザーと,授業を担当しながら兼務としてアドバイジングを担っている教員アドバイザー,そして研修を受けてアドバイジングをフォローしていくピア・アドバイザーがメインです。15ページの資料にも掲げておりますけれども,専門職団体でNACADAというところがあるのですが,そこの調査によると,大体6割が,アカデミック・アドバイザーと教員の両方を含めて実施しているということが,近年の調査結果で発表されております。
 では対象としてはどういう学生が対象なのかということなんですけれども,初年次から卒業まで,1年生から4年生までの全学生を対象としております。特に,専攻がまだ決まらない学生であったり,あるいは1年生とか,編入生とか,優秀学生とか,アスリートの学生,そういう方を対象としたプログラムも実施しております。
 内容につきましては,そちらに書いてございますように,履修指導とかオリエンテーション,卒業要件といった教務系の支援に加えて,各学生それぞれに必要な情報の提供あるいは他部署への紹介ということを行っております。
 手段は,面談とか電話,メールという双方向のやりとりと,ワークショップの実施,あるいは情報の発信としてフェイスブックとかツイッターを利用されている場合がございます。
 これらの実施に関しましては,大学の規模とか目的等によって異なっております。
 続いて,今申し上げたことをイメージとして示したものが5ページの図になります。こちらは,初年次からある程度専攻が決まるまでは,それに関する履修と履修計画に関しての支援を行い,専攻が決まりましたら,その専攻の中での必修とか,要件がございますので,それにのっとった確認と履修計画を支援していきます。そして,それ以降は卒業に向けた,卒業要件の確認も含めて,どんなキャリアがあるのかとか,大学院に進学を希望しているのかどうなのかというところも踏まえながらアドバイジングを行っているというのが大体のイメージです。それに加えて,日々のアドバイジングを受ける中で,必要に応じた情報提供とか,あるいは他部署への紹介を行っているということになります。
 続いて6ページなんですけれども,アカデミック・アドバイジングのミッションというのはどういうものなのかということなんですが,各大学のミッションにのっとってアカデミック・アドバイジングのミッションは設定されています。それに基づいた学習成果の設定と書いておりますけれども,アカデミック・アドバイジングでの目標の設定ということになります。例えば,本日の事例に挙げておりますコロラド大学でしたら,学位プログラムの要件を理解すること,あるいは学習に関する情報に基づいて自分でちゃんとプランを決断していくこと,リソースを理解することといったあたりが,この学習成果の設定というところになります。そして,アカデミック・アドバイジングを実践し,それを学生あるいはアカデミック・アドバイザーが自身で評価をし,改善に結び付けています。これが一般的に理想とされているアカデミック・アドバイジングのミッションと学習成果の設定ということになります。
 続きまして,7ページは,では学生から見たらアカデミック・アドバイジングとはどういうものなのだろうかという視点から書かせていただいております。必要な情報を得て,自分が利用するであろう施設とか関連部署についても理解した上で,ちゃんと自分自身で目標を設定し,そしてその目標を達成するためのプランを立てていきます。そしてもちろん実践をしていくのですけれども,これに付け加えて,教員とかアカデミック・アドバイザーと交流することで,大学への満足度が上がると言われています。これは日本での調査でもそういうことが言われておりますけれども,そういうことがあります。あるいは,大学(学部・学科)への帰属意識が生まれてくる,高まるというのは,NACADAの調査等でも報告をされているところです。
 8ページに移らせていただきまして,ではアカデミック・アドバイジングを担当している人たちはどんな役割を担っているのだろうかということでございます。
 まず,アカデミック・アドバイザー(専門職)はどういうことをしているかと申しますと,履修科目の選択とか専攻の決定,あるいは専攻を変更するようなこともあろうかと思いますが,その際の助言とか,手続に関してサポートをしています。そして,卒業要件の確認,あるいは,各所属大学で独自の方針とか諸手続がございますので,そのあたりの情報提供を行っています。いわゆる学生にとっても有益な情報も与えるのですけれども,履修に関わる全般的な助言及び対応を行っているのが,アカデミック・アドバイザーの役割としてまとめられると思います。
 一方,教員アドバイザーに関しましては,専門領域に関わる助言,科目のことで,この科目をとった方がいいのか,それともこっちの方がいいのかということについて学生が悩んでいるようなときには,その専門的な立場から,将来その子がどういう道を歩みたいのかといったところを考慮した上で,それぞれに見合った専門領域へと導いていくと言われております。ですので,自分自身の専門分野に関わる助言とか対応をしているのが教員アドバイザーです。となると,日本で申します教務系の部署の方々あるいはチューターとか担任とかゼミで指導されている先生方が担われているものと大体イメージが重なってくるような役割を担っていると理解しております。
 続いて,9ページに移らせていただきます。9ページに挙げさせていただいておりますのが,そのアカデミック・アドバイジングを担う担当者に必要とされる資質・能力についてです。こちらは,先ほどから何度も紹介しております専門職団体のNACADAが掲げている枠組みになります。基礎となるCompetencyとして挙げられております。まずは,アカデミック・アドバイジングそのものに関しての理解,そしてアドバイジングとはどんなものなのだろうかということの理解,いわゆる概念のところに挙げられているものがそれでございます。それに加えて,各大学で必要となるものです。所属大学独自の事項に関しての情報,あるいは自分の大学の学生層にはどんな特徴があるのだろうか,ニーズがあるのだろうかというあたりを知っておくというようなことです。もちろん,アカデミック・アドバイジングは,先ほど申しましたように,面談等も行いますので,そのあたりに関してのやりとりもできるようにということで,対人関係というのが挙げられております。これは能力・資質の一例でございますけれども,これに基づいて,NACADAは,研修の実施,研修プログラムを作って実施するということもしておりますし,書籍を提供してサポートをするということも行っております。
 足早にアカデミック・アドバイジングの概略について説明をさせていただきました。では,どうしてこういうアカデミック・アドバイジングがアメリカで必要とされているのだろうかという点について,10ページを基にお話をさせていただきたいと思います。
 こちらは,最初にアメリカの学生の大学への進学理由というのが挙げられると考えます。16ページに初年次生を対象とした調査結果を挙げておりますけれども,その中で,大学へ進学するに当たって「もっとも当てはまる」と回答した上位の回答の中に,「よりよい仕事に就く」とか「キャリアを磨く」という項目があります。これは,経年で割と高い割合を占めてきております。つまり,アメリカで学生にとって大学を卒業するということに関しての意味付け,意義付けが高いということが考えられます。ですので,先に申しますと,卒業率,あるいは自分の大学から逃げられないようにするというか,自分の大学でずっと在籍を継続してもらうということに関しては,各大学で経営的な面でもかなり高いウエートを占めていると考えられます。そして,その次に考えられますのが,様々な学生が入ってきていることです。ですので,それに対応するきめ細かな支援も必要になってきているというのが現状と考えられます。というところが私の考える背景でございます。
 最後に,「日本への導入検討にあたって」と書かせていただきました。もう既に,次に御発表になられます国際基督教大学様とか金沢大学様など,様々な大学で実はアカデミック・アドバイジングを導入されているところがありますが,このアメリカの実践を基に導入するに当たって留意したらよいのではないかという御提案も含めて,お話をさせていただきたいと思います。それにつきましては,まずアカデミック・アドバイジングの概略をざっと御説明させていただきましたけれども,そこから特徴をまとめたいと思います。
 そちらはまず何かと申しますと,専門職団体等によってアカデミック・アドバイジングの定義や基準というものがある程度示されている,提示されているというところでございます。加えて,先ほど申しましたように,大学のミッションとの関係性があることから,目的あるいは目標が明確化されているということです。そして,学生,担当者の責務が明示されております。このあたりは,18ページにアカデミック・アドバイジング・シラバスというのを挙げておりますけれども,そちらで,各大学の形式に従って,そこでのアカデミック・アドバイジングというのは,何を目標にどのような責務があるということも示されています。
 続いて申し上げますと,継続的な支援が行われていることです。1年生から4年生まで,年間の支援が行われています。また,全学的な支援体制が形成されています。アカデミック・アドバイジングは,必要な情報を提供するとか,他部署に紹介すると先ほど申し上げましたように,学内の他の部署との連携というところができている,ハブと形容されるような部署になっておりますので,そのあたりで支援をより効果的にしているということが挙げられます。
 最後に,あと2つなんですけれども,担当者に対する能力開発が行われていることです。これは学内だけではなくて,何度も出ておりますけれども,専門職団体NACADAの貢献のウエートは高いと思われます。ここまでは全学的に共通するようなことを申し上げましたけれども,ただ,各大学での実践というのは独自性を持って行われているというところも特徴の一つとして挙げられようかと認識しております。
 続いて,メリット,デメリットについてです。メリットは,学生自身が自分で選択するわけですから,主体的な学習姿勢を促すことができるのではないか。そして,帰属意識を高めることで,自大学から逃さないということもありますし,卒業率を向上させるということも言われています。そして,ハブとして,他部署とか教員との全学的な支援体制を確立しております。
 デメリットとして考えられるのは,やはり担当者の負荷というところがあります。一人のアカデミック・アドバイザーあるいは教員アドバイザーが担当する学生の数というのがかなりあるので,時間とかいろいろなところで負荷が出てくるということです。そして,残念ながら,必ずしも全学生が来ているわけではないという点です。強制にしている大学もありますが,そうでないところもございますので,本当に来てほしい学生が本当に来ているのかどうなのかというところではまだ疑念があるところです。3つ目といたしましては,担当者による対応に温度差があるというのは否めないと思われます。最後に,予算の確保についてです。これがなかなかアメリカの学修支援系のところでは大変だと伺っております。
 以上を踏まえて,最後に,私の考える導入に関しての留意点として5つ挙げさせていただきます。
 専門職とか一部署が全てをカバーできるわけではないですので,こういうことをやるということになりますと,全学的な支援体制の確立が必要です。
 そして,継続的にアドバイスをしていくことが必要だと考えます。履修登録の時期だけとか卒業の確認の時期だけではなくて,年間を通じて,あるいは1年生から4年生までの継続的な支援が必要だと考えます。
 そのためにも,目的とか目標,責務の範囲などを明らかにした学習成果の設定と,それの評価による改善ということは必要だと思います。
 加えて,担当者に対しての能力開発の必要性です。やはり,学内だけではなかなか難しいところがありますので,学外とのネットワークも含めたような研修の実施が必要だと考えます。アメリカでいうNACADAのような存在は大きいと思われます。
 最後に,アカデミック・アドバイジングに関して,個別大学で独自性はもちろんあってもいいと思うんですけれども,質の保証を考えたときに,ある程度の基準の提示も必要なのではないかと考えております。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,続いて,ICUの発表に移ります。
【小林氏】  国際基督教大学学修・教育センターの小林と申します。本日はこのような機会を頂きまして,ありがとうございます。
 本学の学修・教育センターは,学生の学修に関する支援と教員の教育活動に関する支援の両方を行っている部署です。学生支援も教員支援も密接に関わっていると思いますので,そういう意味で,私の方からは,センターにおける活動について両方の側面からお話しさせていただければと思います。
 センターが設立されてから今年で5年目に入りましたが,以前は学修・教育に関する支援は,お手元の資料2枚目にありますように,建物も異なる別々のオフィスで行われておりました。2014年に,学生も教員もいつでも気軽に相談ができて,必要な支援が受けられるセンターを創ろうということで,学長の諮問委員会が設立されました。現状の調査を行ったり,他大学の教育支援関連センターを訪問させていただくなどして,ICUにおける新しいセンターの構想をまとめ,提案が提出されました。
 一方で,学修・教育センターの設立は,本学のスーパーグローバル大学創成支援事業の3つの柱の1つでもあります。幸い,そこにもありますが,中間評価においても,学生・教員に対する一元的かつ総合的な支援体制としてセンターを設置し,学生への学修支援と教員への教育支援を統合した包括的な支援に取り組んでいるという点を評価していただきました。
 次のページに移りまして,2015年にセンターが設立されまして,ファカルティ・ディベロップメント業務やICT活用支援,それから特別学修支援室が統合されました。そして,2016年には,今もお話がありましたが,アカデミックプランニング・センターがありまして,それがセンターの業務として加わりました。その時点ではまだ建物は別々のところで業務を行っていたのですけれども,2018年,昨年の4月に図書館に拠点を移しまして,それまで図書館にありましたライティングサポートデスクというのも加わりまして,現在のような体制が完成いたしました。現在では,図書館のワンフロア全体がセンターとなっているのですけれども,ラーニングコモンズとオフィス,それから相談を受けるような空間が一つのセンターとして完成しております。
 その間に,本学が加盟しているGlobal Liberal Arts Allianceという大学連盟があるのですけれども,その制度を利用しまして,センター長とスタッフとでアメリカのリベラルアーツ大学を幾つか訪問させていただきました。Teaching and Learning CenterとかLearning Support Centerなど,様々なお話を伺う中で,学修・教育センターの目指す方向について教員とスタッフとで共通のイメージを持つことができたということは,今後のセンターの目指す方向を考えていく上で大変貴重な経験となりました。
 続いて6枚目の資料ですが,学修・教育センターには,ここにありますように,様々な機能があります。学修支援, 教育支援,それから学修環境を整備する機能,学生調査等がありますけれども,その中から幾つか特徴的なものを御紹介したいと思います。
 まず,学修支援の1つ目としましては,アカデミックプランニングサポートがあります。今もお話があったと思いますけれども,どのような科目を履修し,どのメジャーを選び,卒業に向けてどのように学ぶか,それから履修プランを学生自身が自ら考えるということがアカデミックプランニングだと思います。本学では,開学当時からアドバイザー制度がありまして,学生一人一人にアドバイザーが付きますが,そのアドバイジングは,学生のアカデミックプランニングを支援するためのものです。メジャー制におきましては,専門外の分野についてアドバイスを与えなければいけない場面もありますので,学修・教育センターはその橋渡しの役割も果たしています。また,このスライドの左の写真にもありますけれども,ICU Brothers & Sistersという学生のピア・アドバイザーも活動しています。
 8枚目の資料に移りまして,次にライティングの支援ですが,ライティングサポートデスクでは,大学院生のチューターがサポートを行っています。そこでは,チューターとの対話を通して,学生自身が自分のレポートの説明をする中で内容の整理をし,よりよい文章にしていくことをサポートしています。
 ちなみにこちらの資料のところにバナーがあるのですけれども,熊の絵が描いてあります。この熊は「ライティンぐま」といいまして,学生からマスコットキャラクターを募集して,選ばれたものです。ぬいぐるみとかもあったりします。
 続きまして,9枚目の資料に移りたいと思いますが,特別学修支援室では,身体障害,学習障害,発達障害,精神障害のある学生に合理的配慮を提供しています。教員への配慮依頼や,FDセミナーの開催,支援の事例を共有するということで,教員へのサポートも行っています。
 続きまして,教育・授業支援のところですけれども,例えばシラバスをよりよいものにするために,学生にとってどのようなシラバスが履修の助けになるのかということで学生のアンケートを行ったりもしました。そうしたことを踏まえて,項目の見直しを行ったり,教員が入力しやすいように入力フォームの改善を行ったり,それからシラバス作成ガイドラインの改定等も行っています。また,英語で授業を行う教員のための研修の機会も提供しております。特に,英語圏の留学生と英語の得意でない学生が同じ授業を受講しているような状態ですので,英語で教えるにはというよりは,多様な言語や文化的背景を持つ学生に対して,どのようにすれば効果的な授業ができるかというところがポイントになっているかと思います。
 11枚目の資料ですが,新任教員のためのFDプログラムを実施しています。大学の理念や教授方法,それからリベラルアーツ教育についてのビデオやオンラインコンテンツが用意されておりまして,新任教員はあらかじめ予習をした上で,週2時限,10週間にわたるプログラムに参加します。その中では役職者の教員やその他の教員がファシリテーターとして登場しますので,その中でつながりも生まれます。また,アドバイジングについて扱う回の中では,先ほどの学生のピア・アドバイザーも登場します。
 12ページになりますけれども,授業におけるICT活用についても様々な支援を行っています。反転授業を試してみようという教員がいれば,個別にサポートを行うということもやっております。あらかじめ講義ビデオをアップしておくということは,教室での授業をアクティブにするということだけではなくて,開講言語が母国語でない学生にとっては,事前に何度も繰り返し見ることができるなどの利点もありますし,同時に何らかの障害のある学生にとっても役に立つこともあったりしますので,多様な背景を持つ学生へのサポートにもつながっていくと考えております。
 続きまして,13ページ目になりますが,調査や分析もセンターの重要な役割の一つです。学生の意識調査ですとか卒業時調査などを実施・分析し,学内にフィードバックしております。また,授業効果調査も毎学期行っておりますが,こちらにありますように,結果はオンラインで公開されていまして,非常に多くの学生が履修計画の参考としているようです。
 以上,センターの幾つかの業務について御紹介させていただきましたが,最後に今後の展望ということでお話しさせていただきたいと思います。本学の学修・教育センターは,今お話ししましたように,学生とも教員とも様々な形でつながりがあるということが強みだと考えています。その強みを生かして,センターの様々な支援と学生や教員をつなぐハブとしての役割を果たしていくことができればと思います。例えば,学修支援で感じている問題点が授業改善やアドバイジングのヒントになることもありますし,調査結果や学生の声を共有していくことで実際にカリキュラム改善の検討につながっていったケースもありました。最近では,成績不良者の面談を副センター長とセンターのスタッフで行っているのですが,履修科目に無理があれば,履修計画のアドバイジングをすることもできますし,レポートが書けずに困っていて単位を落としてしまうような学生がいれば,ライティングサポートデスクでサポートすることもできます。必要に応じてアドバイザーと情報を共有したり,それから他の教員に協力をお願いしたり,他のセンターと連携を行っていくなど,総合的にサポートを行っていくことができればと考えています。
 以上です。ありがとうございました。
【日比谷座長】  3つの発表をどうもありがとうございました。
 それでは,これまでの発表内容について質問,コメント等もおありかと思いますが,それは後ほど時間をとることにいたしまして,ここで事務局から本日の資料などの説明に移りたいと思います。この委員会では,第2回の資料として,「教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき事項(案)」というものをお示ししまして,これを基に議論を進めてきたところですけれども,過去3回にわたる議論を踏まえて事務局で資料のアップデートをしておりますので,まずその説明,それから,文科省が実施する事業のうち,この委員会にとって参考となるものについても併せて紹介をお願いします。
 それでは,平野さん,どうぞ。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。資料7,8,9,10の順で御説明させていただきたいと思います。
 資料7を御覧ください。資料7につきましては,前回の主な御意見をまとめさせていただいてございます。説明については,省略させていただきます。
 続きまして,資料8を御説明させていただきます。資料8につきましては,教学マネジメントに係る指針に盛り込むべき主な事項についてまとめたものでございます。先ほど座長からお話しいただきましたとおり,こちらの内容につきましては,これまでの議論を踏まえて若干アップデートさせていただいているというものでございます。この資料につきましては,これまで各委員から意見を頂く中で,指針全体に関する御意見,また次回以降御議論いただくような成績評価以降のテーマについてという項目についても御意見を頂いているところでございますが,これらについては今後反映させていただくこととしてございます。
 まず資料8の1ページ目を御覧ください。資料8の1ページ目,14行目でございます。1番,タイトルの部分でございますが,「学修目標の具体化」とこれまでしていたところについて,「「三つの方針」を通じた学修目標の具体化」とさせていただいてございます。これにつきましては,授業科目ごとの学修目標の設定という項目が2番の頭の方に出てくるわけでございますけれども,これについては,学修目標の設定という点で共通するので,1にすべきではないかといった御指摘も頂いたところでございます。1番の部分につきましては,教育課程等の編成の前提となるようなディプロマ・ポリシーないし三つのポリシーに関する留意事項をまとめたものということの趣旨を明確にするために修正したものでございます。
 2ページの方を御覧ください。2ページにつきましては,2行目でございます。こちらにつきましては,大学全体の方針というものをしっかり作るということが,大学全体のクオリティーの確保,また幅の広い学修を確保する観点から必要ではないかといった御意見を頂いてございました。その観点について追記させていただいているものでございます。
 続きまして,20行目を御覧ください。ディプロマ・ポリシーについてでございます。こちらにつきましては,いわゆるディプロマ・ポリシーについてはどの程度具体的であるべきなのか,また後ほど出てまいります各授業科目の到達目標との関係はどうなのかというような御意見が幾つかございました。ディプロマ・ポリシーについては,これは過度に抽象化されることはないように留意する必要があるということで,そのような旨を追記させていただいてございます。後ほど,授業科目のところでも,その内容については少し触れさせていただきます。
 続きまして,25行目でございます。25行目につきましては,過去の会議において,しっかり自分たちの提供するプログラムというものが適切なものかということを説明できるようになることが重要であるという御指摘,またそれを客観的に説明できるようにするためには,様々な基準とか,外部の評価といったものも役に立つケースがあるのではないかという御指摘を踏まえて反映したものでございます。
 続きまして,4ページ目を御覧ください。4ページ目の1行目につきましては,「授業科目・教育課程」とこれまでなっていたところでございますけれども,これにつきましては,ほかの項目との平仄を合わせる観点から,「の編成」という言葉を加えさせていただいているところでございます。
 続きまして,28行目からの黒丸に関係する部分でございます。こちらにつきましては,個々の授業科目についての到達目標ということでございます。先ほどディプロマ・ポリシーというのは過度に抽象化されることがないようにということで書かせていただいているわけでございますけれども,この個々の授業科目の学修目標というのは,過度に抽象的にならない範囲でのディプロマ・ポリシーというものをさらに具体化するという観点で設定すべきものであるということで,両者の関係を整理させていただいたものでございます。
 続きまして,35行目及び5ページの2行目あたりでございますけれども,ここにつきましては,「カリキュラムマップ」,「カリキュラムツリー」等の記載の部分でございます。ここにつきましては,これは手法という部分で言いますと,それ自体が目的ということではないわけでありまして,あくまで,そうした手法を通じながら,必要な科目が過不足なく存在していることを検証するとか,又は履修順序・履修要件の検討が行われることが重要であるというところにむしろ力点があるものでございます。手法については,「例えば」ということで例示という位置付けで書かせていただいてございますけれども,何らかの手法を通じてしっかりこの後段に書いてあることについては達成していく必要があるということを明らかにするという趣旨で修正しているものでございます。
 5ページ目の7行目につきましては,ナンバリングについて御指摘が前回ございました。これについて追記しているものでございます。
 また,5ページ目の15行目でございます。学生の時間は有限であるということを頭に入れて,しっかり対応を考える必要があるという趣旨の指摘を頂いてございましたので,ここについて改めて明記させていただいたところでございます。
 主要な修正としては,あと1点でございます。8ページを御覧ください。8ページにつきましては,アクティブ・ラーニングについて触れられているところでございます。こちらにつきましては,アクティブ・ラーニングの内容について少し分厚くしたということと,その手法というものを採用するかどうかということは,授業科目の到達目標に応じて活用するということであるべきであるという御意見を頂いておりましたので,その旨を修正させていただいてございます。この資料につきまして,今回白丸にさせていただいているところが御議論いただきたい点ということでございます。
 5ページでございますけれども,5ページの23行目,こちらがいわゆる履修指導というもののテーマに関する記述でございます。
 また,27行目がシラバスに関する記述でございます。
 37行目からがCAP制に関する記述でございます。これが6ページにかけましてCAP制の適用除外というところまでが触れられているというのが,本日主に御議論いただきたい内容ということでございます。これについては,後ろの方の個々の授業科目レベルにおいても再掲されている部分がございますので,適宜御参照を賜れればと思います。
 資料8の説明は以上でございます。
 続きまして,資料9でございます。資料9につきましては,教学マネジメント特別委員会でどのような点を議論するのかということのロードマップでございます。これにつきましては,既に今までもお示ししていたところでございますが,前回までは第9期の中央教育審議会であり,第10期というところでの取り扱いは未定ということにさせていただいていたものでございますが,第10期の中央教育審議会の開催が開始されたということで,今後の道行きというものについて,ある程度示させていただいたものでございます。
 本日がこの第4回という部分,授業科目・教育課程の編成という部分でございますが,今後,成績評価,学修成果の把握・可視化,教学マネジメントを支える基盤,情報公開の在り方について,このような順番で1回ないし2回御議論いただきまして,最終的な指針案の提示,省令改正案等の提示ということを年内におおむね終わらせていくと,このようなロードマップということを現在のところ示させていただいてございます。
 資料9の説明は以上でございます。
 続きまして,資料10でございます。資料10につきましては,昨年度平成30年度の先導的大学改革推進委託事業ということで,文部科学省で行っている委託調査研究の内容でございます。調査の概要につきましては,タイトルがございますけれども,「大学における学修成果の分析・活用等に関する調査研究」ということでございます。
 左側,調査の概要というところでございます。調査の目的につきましては,大学教育の質の向上・確保の観点から,各大学が学修成果を可視化する際に,どのような観点から収集,分析,公表を行っているのか,また得られた分析結果等をどのように大学全体の改革・改善に生かしているか,このような点について調査を行っていただいたものでございます。
 検討体制につきましては,左下,検討会委員の名簿を載せさせていただいてございます。こちらにつきましては,当特別委員会のメンバーの先生方も御参画いただいているところでございます。
 実際の調査の事項につきましては,右側でございます。各大学に対するアンケート調査,各大学6校に対するヒアリング,海外機関に対するヒアリング,企業の採用担当者へのアンケート調査というものを行っているものでございます。
 この各大学へのアンケート調査の内容としては,学修成果の活用状況というものとか,各大学が自学の立ち位置の確認に資すると考えていることなどが明らかにされております。また,海外機関へのヒアリングにつきましては,情報収集に関するノウハウとか,また効果的な利活用に関する示唆が示されているものでございます。
 続きまして,産業界採用担当者のアンケートにつきましては,採用担当者に対して様々な角度から質問を行っているものでございますが,特にeポートフォリオにつきましては,現状においてまだまだ活用の割合というのは少ないわけでございますが,活用したところにつきましては,かなり好意的に捉えていらっしゃるという結果などが得られているところでございます。
 本日,各委員の先生の机の上に報告書の本体をお配りしてございます。本調査の結果につきましては,今後また学修成果の可視化・把握等について議論する機会がございます。その際にまた改めて詳しく御説明する機会を設けることができればと考えておりますので,本日はこの程度の御紹介にとどめさせていただきます。
 最後でございます。資料11に,私どもの行っている,先ほども御紹介を賜りましたけれども,大学教育再生加速プログラムAPについての資料が配られているところでございます。今年度が最終年度ということでございますけれども,各大学の取組をまとめたパンフレットが完成しているところでございます。委員の先生の机の上にこのような青いパンフレットが置かれていると思いますけれども,こちらがそのパンフレットでございます。説明,内容については,時間の関係で省略したいと思いますけれども,適宜御参照いただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。ありがとうございます。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,お約束しましたとおり,ここで3つの発表についての質疑,またコメントの時間をとりたいと思いますので,どなたからでも,札を立ててお願いします。
 それでは,吉見委員,お願いします。
【吉見委員】  ありがとうございます。金沢工業大学さんに質問させていただきたいのですけれども,大変刺激的な取組をされていて,共感するところは多でございます。日本の大学教育の根本的な問題というのは,一つは,学生の履修科目数が多過ぎて,しかもそれらが有機的に構造化されていないという問題。それからもう一つは,学生たちが一体何のために学ぶのかという目的がはっきりしていないという問題です。この2つがやはりとても大きいわけです。金沢工業大学さんは,この前者に関してはCAP制の徹底という解を出していらっしゃいますし,後者に関しては社会実装という解を出していらっしゃいます。そのことに非常に賛同すると申し上げた上で,3つほど質問がございます。
 1つは,この課外教育ですけれども,この課外教育は,単位科目の外側になっていますね。つまり,これには単位が出ない組み立てだと思うんですけれども,これを単位外にしている理由,つまりわざとそうしているという積極的な理由と,仕方なくそうしているという消極的な理由,両方あるかもしれませんが,それらの理由を教えてください。例えば,この課外教育の中で学生たちの関与度は様々だと思いますが,そういった関与度について評価は特にしていないのか,単位外だとすると,そこは評価する仕組みはどうなっているのでしょうか。これが第1点でございます。
 第2点ですけれども,このプロジェクトデザイン教育というPBLも大変いい試みだと思うんですが,この必修6科目は,1科目2単位ならば合計12単位だと思いますが,そうすると,学生の全体が履修する単位数の全体の中で,この12単位のプロジェクトデザイン教育をだいたい幾つ学生は履修することになっているのか。おそらく複数の系列をとるという組み立てなのですよね。これが1つで, 12単位だけだとすると,ちょっと少な過ぎるのではないでしょうか……。
【大澤氏】  17単位です。
【吉見委員】  17単位ですか。
【大澤氏】  8単位科目もあるので。
【吉見委員】  なるほど。分かりました。8単位科目というのは大変いい試みだと思いますが,その17単位のプロジェクトデザイン教育科目を学生は幾つぐらいとる形になっているのかということを教えていただきたい。これが2番目でございます。
 3番目は,今度はe-シラバスの方ですけれども,これも大変精密に組み立てられていて,かなりアメリカのシラバスに近い形が実現していると思います。しかしながら,それぞれの教員は,逆に言えば教員の教える科目数の問題と関わってきますけれども,一人一人の教員は幾つぐらいの科目を教えていて,すなわちこのe-シラバスを1学期当たり幾つぐらい書くことになっているのでしょうか。これは教員の負担の問題です。一人の教員は1学期で平均幾つぐらいシラバスを書くのか。それが多いと,負担ではないのかという,これを3点目で教えていただければ幸いでございます。
【大澤氏】  それでは,1番目ですが,課外活動は単位外です。ただし,このプロジェクト教育,先ほど申し上げました2番目のPBLですが,これは全学必修です。必修で,1年生から, 2単位ずつが続きまして,最後,4年生のときは8単位になります。この科目の中で社会との様々な関わりが出てきます。学生全員がそのプロジェクトに参加するという形をとっていて,そのことも含めてポートフォリオ等に上げてきます。そういう意味で「正課×正課外」ということになっています。通常の課外活動のプロジェクトが単位数になるということはないです。ただし,課外活動をやっているということが自分の成長であり,最後にステークホルダー交流会というものを挙げさせていただきましたが,ほとんど全ての学生が何らかのプロジェクトに参加するということになっていまして,こういう場で社会に成果を発信しているということです。就職のためにやるわけではないですけれども,これをやっていることが本学の一つの特徴でありまして,そのための手法も授業の必修科目で全員が学びますし,全学科混成のクラス編成や,さっきCAP制を導入……。
【吉見委員】  あえて単位内にしなかった理由を教えていただきたいという……。
【大澤氏】  プロジェクトそのものにいろいろな性格があって,それを,これは何単位,これは何単位ということは,不可能に近いということです。それから,学生が自主的にやるということを尊重しましょうということで,今のところ何の問題も出ていないので,こういう形になっています。単位のために何かをやるということを本学は求めていません。自ら考えて行動するということがディプロマの最後の要件になっていますので,その部分は単位外にしておくべきで,そこで学んで成長した学生たちは成績がよくなるはずだという考え方です。それが1番目の質問の回答です。
 2番目の質問のPBLについては,全員が受ける必修科目で,本学のカリキュラムの柱で17単位になっています。特に,この科目においては正課の時間以外の学修量が実は物すごく多いんです。それでCAP制も設けないといけないということになっているのです。要するに,ここではプロセスを授業の中で学んで,正課外で,例えば地域の自治体の人と話し合ったりとか,地域の人たちを学校に呼んでインタビューしたりとか,外国人が地域に多かったとしたら,彼らに対してどんな問題がありますかというインタビュー形式のものもあります。データサイエンスに基づいてデータを整理する,そういう授業なんです。
【吉見委員】  このプログラムの履修は,一人の学生は一つですか。
【大澤氏】  一人の学生は全部受けます。
【吉見委員】  いや,そうではなくて,プロジェクトデザイン教育は,1本なのか,2本,3本とるということがあり得るのかということです。
【大澤氏】  各学年で必修科目なので,全員が各学期にとります。カリキュラムの中に入っています。
【吉見委員】  いや,お聞きしていることはそういうことではなくて,このプロジェクトデザインは,一つの連続的なプロセスを作っているわけですよね。
【大澤氏】  科目としてです。
【吉見委員】  それは,科目で,連続的なものですよね。
【大澤氏】  はい,そうです。
【吉見委員】  そうすると,それは一つのラインなのか,複数のラインを学生は履修するのか,一人の学生に対していくつなのでしょうか。
【大澤氏】  一つのラインです。
【吉見委員】  一つのライン。
【大澤氏】  ただし,チームで活動しますので,クラスで大体5人ずつで6チームできます。だから,テーマは何になるかは自分たちで決める。
【吉見委員】  それは分かります。
【大澤氏】  要するに,自分たちで問題を発見する手法を教える場所がこの必修科目で,それに対して進捗はどうかを議論するのも教室になります。そこでは先生のアドバイスがあるということです。あらゆる修学アドバイザーから,研究所の先生から,ほとんど全ての先生がこの科目に関わることになります。それは,その科目の主担当者ではないけれども担当者として関わるという形になっています。幾つかラインが走っているというのではなくて,全学科で同じラインで走っているということです。例えば6ページを御覧いただければと思いますが,全ての学科にプロジェクトデザイン入門という科目が1年次の前学期にあります。6ページの資料です。ですから,14学科すべて,今は改正したので12学科なんですが,12学科全ての学科でこの科目を導入しているということです。プロジェクトデザインIとかIIというところは,外国人が入ってきたりもします。あるいはこのⅠのところは,全ての学科混成クラスにしています。要するに,自分たちの学科で問題発見・解決が一段階できました。そうしたら,次にほかの学科の人たちが入ったチームの中でやるとどうなるか,これが非常にいい効果があります。そういう形でここは全学科混成にされているということです。実践のところにも別の学科の学生も入ってくる場合があるという形でずっと上まで行くので,各学科にそれぞれこの科目が全て準備されていると考えていただければと思います。
 3番目の質問のe-シラバスですが,これは,最初に導入するときはやはり大分抵抗もございました,シラバスは先ほど契約ということで,変えてはいけない部分ということをお示ししました。それが9ページです。9ページに黒い文字で書かれています。これは紙媒体でもウエブ媒体でも見ることができます。ここは,契約書なので,変えてはいけない部分になります。9ページ,10ページが契約になるので,学生はこれに従ってやっていきます。ところが,11ページの授業の概要で1回目にはこういうe-ラーニングシステムがあるので,予習・復習に使ってくださいというものをここに添付したりとか,ビデオを入れたり,自由にカスタマイズできる部分が……。
【吉見委員】  私の質問は,1人の教員が1学期当たり平均幾つのシラバスを書くのかという数の問題です。
【大澤氏】  3科目から,多い人で4科目です。負担にはならないと思います。というのは,ほかの先生のも全て見られますので,学部全体で集まる会で,こんないい例がありますと紹介すると,その先生に聞いて,例えばそこのシステムをちょっと導入したいんですけれどもということになり,そのようなFDが学科で行われますので,ほとんど負担にならないんです。むしろ,これを全ての学生が見ますので,ここをしっかりしておかないと授業がうまく進まないということです。
【吉見委員】  分かりました。
【日比谷座長】  それは,大森委員はよろしいですか。
【大森委員】  私も正課と課外の関係をお聞きしたかったので,大丈夫です。
【日比谷座長】  分かりました。では,後の議論の時間もありますので,清水委員,益戸委員,浅野委員のお三方のところで打ち切りたいと思います。では,清水委員,お願いします。
【清水委員】  ありがとうございます。それぞれの3人の御発表は有益で,大変勉強になりました。私がその中で注目しているのは,先ほども御質問がありましたけれども,金沢工業大学の8ページです。授業と課外活動について,そのプロジェクトは教育プログラムで単位になっている。課外活動は,単位外であり,単位外と授業を結び付けた。これが今後,特に日本人の学生が勉強していないという文科省の非常に悪いデータを解決する上でヒントになるのではないかと思いました。単位の定義の問題もありますが,それぞれの授業と課外活動が連動しているわけですから,必ず課外活動の学修という学びの時間というのは,授業の関連の時間に当然入るわけです。全ての人が課外活動に参画していることになれば,彼らはものすごい勉強時間というか学修時間を学期とか年間に費やしているわけですよね。そういうものを大学としてもあるいは日本の大学全体としても拾い上げて,日本の学生は,授業もたくさんやっているけれども,授業外でもこうやって勉強していますということを見せるヒントになると思います。是非これを政策の上でも何とか組み込めないかなと思っております。
 以上です。
【大澤氏】  ありがとうございます。インセンティブというのは実はあります。単位にはしないけれども,奨学金と関連している部分があって,ここで出てきた成果を学生はe-ポートフォリオに上げないといけないんです。そういう意味では,次に奨学金を取りたいという学生は,1年生のときからプロジェクト活動をどんどんやります。そして,2年生で何とか奨学金を取ろうというインセンティブはあって,それらはポイント制になっています。
【清水委員】  そうすると,学生の中にもかなり差があるというのが実態ですか。
【大澤氏】  そうです。
【村井氏】  済みません,村井でございます。ちょっとだけ補足させてください。今の先生のお話の中で,私たちが大切にしたいなと思っていることは,課外の活動というのは学生の自発的・自主的な活動であるべきだということです。それが課外プロジェクトへの参加であったり,各種の自学自習や資格取得の勉強であったり,その他,様々な活動がありますが,その取組が実は正課の授業との関係をしっかり持っていることが,結果として,正課の授業への能動的な取組や,授業内容と社会活動との関係性が認識できると考えています。授業というものがどういう考え方で何を学んでいるのかということを実はしっかりしておかないと,学生たちは単に例えば数式を覚えていくとか,何か解を見付けるということだけに終始するような思考プロセスになってしまうと思っています。どちらかというと,課外プロジェクトというのはいろいろな学生が集まっている中で,興味・関心を引いたものが授業との関連で知識とひも付けされます。その知識のひも付けの中で授業が分かりやすい授業として成立していくという考え方を大事にしているので,こういう書き方にさせていただいているということでございます。
【清水委員】  ありがとうございます。ちなみに,筑波新構想大学は,45年たちましたけれども,新構想当初の目標の一つに,課外活動を単位化するというのが入っていたのです。これだけがまだ実現していません。私学によっては課外活動とか大学行事を単位化しているところもありますけれども,今後こうした課外活動というものを単位化するというのは,こうした事例を見ますと,やはり検討する必要があるかなと感じました。
 以上です。
【日比谷座長】  では,益戸委員,お願いします。
【益戸委員】  益戸です。どうもありがとうございます。本日の会議のために,私なりに幾つか大学を選び,シラバスを見てみました。本日ご説明をいただいたものや,各委員からのご提出資料とは全く異なるものが存在していました。本日の様なものであれば,あえてここで委員会をする必要はないというぐらいに,現実との差に実はびっくりいたしました。あえて大学名は申し上げませんが,難関大学と言われている大学など,大変びっくりしたします。全く無味乾燥な説明かつ参考図書は,自分でお書きになった本が並べられているだけのようなものや,授業内容はいずれ授業で分かるようなことが書いてあったりとか,いや,これはひどいと思いました。ちなみに,企業で,かつて80年代,90年代には,先輩方が「俺の背中を見てついてこい」みたいな教育もありましたが,今はそんな教育では企業間競争には勝てませんし,かつ企業に入社した若者たちがそれではすぐ会社を辞めてしまいます。第2回の委員会で,日比谷座長からここでの議論はしっかりやっていない大学のレベルを引き上げるという趣旨のご発言がありました。私が今回実感したのは,このやっていない大学というのは,決して難関であるとか,入学が簡単であるとかという基準ではなく,本当に教学マネジメントに真剣に取り組んでいないことについて,我々ははっきり意見を言うべきではないかという事をまず非常に強く感じました。
 次に,御説明の中で,例えば金沢工業大学の資料の2ページの教学マネジメントの仕組みの中に外部評価というものがありますが,これは非常に重要な点です。学内だけで考えてはいけません。
 それからもう一つ,企業内においては,研修をするインストラクターだけではなくて,企業が向いている方向に基づいて,どのような社内研修をすれば良いかということは非常に重要なポイントです。したがいまして,清水先生やICUの小林部長がお話しになったような,外の力を借りることや,中の人間を孤立させない様な仕組みを作ることは大切です。特にICUの中の説明にありました教員の方のための教育相談は,私には非常に新鮮でした。
 資料8にも触れさせて頂きます。5ページです。
私の感想からしますと,この5ページの23行目から36行目までの間に出てくる言葉遣い,例えば25行目の「大学教員と専門スタッフ等との協働体制」,27行目の「契約書」という表現,それから「コースカタログ」,さらに30行目の「できるようになること」(到達目標)や,33行目の「事前に必要な」の「事前に」という部分,そして36行目,「内容が着実に実施されることが重要」との記述がありますが,こういう言葉遣い/表現をしっかり私たちは使わないといけないのではないかと思います。よく教育の議論の中に「学長の強いリーダーシップの下」と出てきますが,もうそこに全て頼るのではなくて,より具体的に提案することが非常に重要ではないかと,今回特に感じました。
【浅野委員】  私の方からは,それぞれの御発表に1件ずつ質問をさせていただきたいと思います。
 まず,金沢工業大学様には,9ページのスライドにあります「学生の行動目標」というものをかなり具体的に書いていらっしゃるということでご説明いただきました。本日の議論にも関わってきますが,シラバスでその目標を統一化するのは非常に難しいところだと思われます。特に必修科目であったり,同じ授業を複数開講したりしている場合,担当教員が異なると,それを合わせるというのがなかなか難しい状況が生じます。このあたりは,どのように捉えておられるのかというのが1点目の質問です。
【大澤氏】  同一科目に対しては同一シラバスということなので,担当教員が替わろうとも,もちろんシラバスの内容が変わることはありません。ただ,担当教員によって,さっき言ったe-シラバスの部分で,自分はこう研究をやっているから,ここは関係あるよという情報は入れてゆきます。例えば1つの科目を4クラスで受講していても,全ての学生が全てのシラバスを見られます。契約書の部分は一致していて,そうでないところは,こっちの先生はこういうことをやっています,こっちの先生はこういうことをやっています,それらはプラスアルファです。先生にも得意な分野があるわけですから,その得意なところは,個々の先生の授業で伸ばしてもらおうということです。
 それから,学生の行動目標は,当然,複数担当科目の場合は,科目代表者がいまして,そこで決めます。ただ,その科目だけで決めると,全体像が分からなくなるので,その科目を構成している学科の目標のどこに合致しているかというのは,学科長を中心に決めます。その後,学部全体だと,学部長を中心に決めます。そして,その上に部長会というのがあって,そこでカリキュラム全体を決めますと同時に,教育点検評価部というところで常に情報を得ておいて,フィードバックしていくという構造になっているとお考えいただければと思います。○○ができるという項目は,全てDPに結び付いていく過程の一つという概念で,複数担当科目であっても変わることはないということです。学科でも共有されているし,学部単位でも大きく共有されていると考えていただければと思います。
【浅野委員】  関連して,同一科目だったら目標は同じだということの最終的なチェックはどこでされているかをご教示願えますでしょうか。
【大澤氏】  教育点検評価部という組織があり,各学科から1名ないし2名,副主任クラスを出しているのですが,そこで2週間に1回,科目の精査をやっています。そこでチェックしています。
【浅野委員】  ありがとうございます。
 では,清水先生のご発表に対して質問させていただきます。資料の8ページにありますアカデミック・アドバイザーを専門とされる方についてお伺いします。アメリカの場合,いろいろな役職の方がいらっしゃるのですが,アカデミック・アドバイザーを専門職とする場合,科目の履修選択とか,そういったものを学生に指導するとなると,ある程度アカデミックなバックグラウンドがないと難しいと思うのですが,アカデミック・アドバイザーを専門職とされる方々の背景といいますか,一般的にどういった方が担われているのかということを教えていただけますでしょうか。
【清水氏】  ありがとうございます。一般的にアカデミック・アドバイザーという職に就く方々は,学生支援あるいはアカデミック・アドバイジングに関わるような分野の修士程度の方々がアカデミック・アドバイジングを担われているのが主となります。ただ,それプラス,学部卒の方であっても,大学等でピア・アドバイザーとか,そういう経験を積んで,その上でアドバイジングを担うようになっている方もいらっしゃいます。そういうバックグラウンドになっております。
【浅野委員】  ありがとうございます。
 最後に国際基督教大学様にお伺いしたいのは,センターの支援のうち,教員への支援といったときに,どういった支援をなされているのかということについて,より具体的に伺えますでしょうか。特に,分野を横断していろいろな先生方に対応できる体制を築くのは,すごく難しいように思えたのですが,そのあたりはどう対応されているのかということをご教示いただければ幸いです。
【小林氏】  教員への支援ということですけれども,確かに,スタッフは全員が専門知識を持っているわけではありませんので,なかなか難しいところではありますけれども,例えば,先ほどICT活用という話をしましたけれども,授業の中でそういったシステムを使っていく,LMSとか,そういったものを使っていく中で,こういった使い方がありますよというようなことはサポートできるかなと思います。センターで教員をサポートしていると,ほかの教員がどのように使っているかというのがだんだん見えてきますので,教員同士は割と他の授業でどのように活用されているか,見えない部分があったりするのですが,スタッフのところには事例が集まってきますので,そのあたりはこちらから,こんな使い方をしている人もいますよということを伝えることもできますし,あとは,先ほどお話ししましたけれども,他のスタッフとか,他の部署とか,そういったつながりがあるので,そういった強みを生かしたサポートはできるかなと思います。
 あと,FDのワークショップや新任教員のオリエンテーション等を私たちはマネージする側の立場なんですけれども,それぞれの専門の教員の,例えば新任教員のためのプログラムは,実は教育の専門の教員がコンテンツ等を考えて作られたプログラムで, センターと協力して作り上げていただいたのですけれども,教員にとっては研究とも関連した部分でご協力いただき,私たちが運用していくというような体制もとっております。
【浅野委員】  ありがとうございました。
【日比谷座長】  それでは,ここで次の議論に移りたいと思います。先ほど平野さんからもお話がありましたように,本日は,シラバス,CAP制,履修指導体制を中心に,この後の時間は議論を進めたいと思います。事務局説明への質問のある方も併せて,それではどなたからでも,札をお立てください。
 では,吉見委員,どうぞ。
【吉見委員】  本日の資料の8ですけれども,CAP制のところに若干コメントさせていただきます。6ページの2行目です。ここは要するにCAP制に例外を設けることを認める条項になっていて,特に優秀な学生については,CAP制の適用を除外するという例外を設けることになっています。しかし,いわゆる難関大学で,特に優秀な学生がたくさんいる場合がある。非常に優秀な学生がたくさんいて,だから例外がたくさんあって当然だという議論も成り立ち得る。アリの一穴ではないですが,例外規定があると,大学によっては必ずしもCAP制は徹底しなくてもいいという結果にならないのか。特に難関大学の場合,抜け道がいろいろ生じるのではないか。この種の例外規定はどうしても必要なのでしょうか。
 それから同じことですけれども,その前のページの5ページの最後の行で,「1年間の上限単位数が多すぎることにより実質的に機能していない場合には」となっていますけれども,表現が抽象的ですので,「1年間の上限単位数が多すぎる」というのはどのくらいのことを指しているのかという具体的なガイドラインはなくていいのでしょうか。大学や学部によって,それぞれの事情で実はこれは多過ぎないという理屈を立てることも可能なわけですね。その場合,CAP制があまり機能しなくなるのではないでしょうか。科目がとにかくたくさん履修されていても,学生は力を持っていて,それなりにこなしてしまう。だから制限する必要はないという主張をする大学や学部も出てくるのではないでしょうか。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 ちょっと整理します。小林委員,それから溝上委員,佐藤(浩)委員,川並委員,林委員の順でお願いします。どうぞ。
【小林(雅)副座長】  私もCAP制についてですけれども,やはりCAP制が非常にまだ体系化されていないというか,片方では,今,吉見委員からありましたように,余り機能していないということについて述べられているわけですけれども,それは次のところでは逆に例外規定を設けるということで,いわば相反することが書かれているわけです。私もCAP制の導入には賛成ですけれども,なぜCAP制が機能していないか,あるいは導入していない大学があるかということを考えると,大学によって,あるいは,ここでは学生が違うということが書かれているのですけれども,大学のカリキュラムも違えば,例えば資格を取る場合とか,様々なことがありまして,一律にやることが非常に難しいわけです。ですから,数値目標を出すというのは最近はやりですけれども,これは数値目標を出すのは実は非常に難しいのです。もうそういうことをやられている大学もあると思いますけれども,例えば教職課程であれば何単位,それ以外の学生にとっては何単位というように,もう少し細かな規定が要るわけでありまして,その辺を含めて,もう少しCAP制をどのように考えるかということの基本的な考え方を書かないと,これだけではちょっと逆にいろいろ議論が拡散してしまうようなことになりますので,その辺のCAP制の基本的な考え方をまず書いていただいて,その上でどのように考えるかということをここで議論していただくということの書き方の方がいいのではないかと思います。そういう意味で言いますと,私は,基本的にはこれは導入すべきではありますけれども,大学に委ねる部分というのは非常に大きいと,そういう書き方になるのではないかと思っております。
 以上です。
【日比谷座長】  では,溝上委員,お願いします。
【溝上委員】  溝上です。ちょっと質問を入れていいですか。
【日比谷座長】  もちろん,どうぞ。
【溝上委員】  アカデミック・アドバイジングについてお話ししたいと思います。清水先生に後で訊きますけれども,こういう支援機能というのが大事だというのは,言うまでもないと思います。私は今,桐蔭学園というところにいて,桐蔭横浜大学という大学がありまして,偏差値的にも低い大学なんですけれども,小さい大学なので,こういう支援組織というのが,アカデミック・アドバイジングとは呼んでいませんけれども,そういう支援者とか支援の専門員というのはいるんです。キャリアのカウンセラーとか,それから,最近分かってきたんですけれども,学修支援とかリメディアルという名の下で数学とか国語を支援しているんですけれども,どうもこれはSPI対策らしくて,とにかくいろいろな支援機能があります。学生たちは非常にまじめで,たくさん訪れているんです。こういう支援者の,例えば清水先生の資料で言ったら,アカデミック・アドバイザーのいろいろな機能とか役割ということが書かれていて,それはそれで一つ一つもっともなんです。ただ,大学全体で見ていると,これは教学マネジメントの部会ですので,教学マネジメントのほころびというか,単に支援をして大学が期待するところに学生を合わせていく,適応させていくということだけではなくて,学生たちの問題とか相談内容からは結構大学として改善しないといけないことが見えてくるんです。
 そういうことをちょっと前提にして,今はもう本当にアドバイザーだらけというか,いろいろな支援者がいないと,学生たちは,オリエンテーションとかでいろいろ必要なことを伝えても,ざるのように抜けていって,こういうのがないと本当にもたないんです。それぞれの支援者を専門職とかキャリアカウンセラーとかいろいろ入れるんですけれども,そこだけで終わっているんです。先ほどからもちょっと議論は出ていますけれども,教員にもっと伝えて,いわゆる教学マネジメントと大きく持っていくのでなくても,もう少し教学に生かしていくような体制,フィードバックと言ったら,それはそうなんですけれども,もう少し何か協働体制というか,そういう事例というか,アメリカでも日本でもいいですし,単なる支援者以外のそういう体制をちょっとお訊きしたいと思います。
 あと,今申し上げたんですけれども,とにかく支援者に,学生ががんがん来るんですよ。ST比ではないんですけれども,学生はこれぐらいで何人ぐらいいたらとかというのはあるのかなと思って,もし何か御存じの方があれば,教えてください。
【清水氏】  ありがとうございます。今回の事例で挙げておりますコロラド大学ボルダー校の学科に訪問調査をしたときがございます。当時は,アカデミック・アドバイザーは,学部が1人,大学院が1人ずつだったんです。今それが2人,2人に変わっているというところが,ウエブサイトで新たに分かったところなんです。
【溝上委員】  学生は何人ぐらいですか。
【清水氏】  学生は345人程度,訪問したときはそのぐらいです。その350人ぐらいを1人のアドバイザーが学部の場合は対応しておられました。その大学の場合は,アカデミック・アドバイザーが1人で,まず相談窓口である彼女のところに,学生がこんなことを聞きに来ましたと。その後本人に,要は何が問題なのかを明らかにした上で,そのことだったら,あの先生のところに行ってみたらどうかという話をし,本人が納得すれば,そこに行きます。そこでもうまくいかない場合は帰ってきたり,教員とのやりとりはそのプロセスの中であると伺っています。なので,その大学の特徴と言えば,一手に窓口で350人をアカデミック・アドバイザーが引き受けていたことです。ただ,任意で来る相談でしたので,350人が一遍に来るということは恐らくないんですけれども,卒業単位の認定のときなどは,必要な場合,個別に学生と連絡をとらないといけないということはあると聞いています。
 他大学の場合なんですけれども,教員1人が割り当てられて200人をアドバイジングしないといけないというようなこともあるんですが,そうなるとどうしても履修のサインだけで終わってしまうというようなことも現実問題あります。ですので,まさに今先生がおっしゃったように,教員と支援者との連携というのは必要で,全学的な取組がやはり私は必要だと考えております。
 よろしいでしょうか。
【溝上委員】  ありがとうございました。
【日比谷座長】  では,佐藤(浩)委員,どうぞ。
【佐藤(浩)委員】  指針の中身の話もしたいのですけれども,その前にこの指針の形式そのものについて,平野室長ないし座長にお聞きしたいです。この資料8で書かれている文章が本文そのものになると考えてよろしいですか。
【平野大学改革推進室長】  今はまだ議論のフェーズでございますけれども,資料8の内容というものが最後に指針につながっていくものだと思っていますが,体裁そのものがこういう形になるかどうかは,ちょっとまだこれから考えることだと思っております。
【佐藤(浩)委員】  分かりました。例えば5ページの2行目に「カリキュラムツリー」の話が出てきますけれども,こういった用語に関しては,きちんと説明しなければいけないので,用語集が必要だと思います。それから,文末の書きぶりが大体「学生にわかりやすい形で提示されることが必要」とか抽象度が高いものになっています。こういうのは指針にはならない。何が「わかりやすい形」なのかとか,数字としてどのぐらいなのかというのが提示されないと,各大学では具体的な指針にならないのではないかなという印象を持っています。
 それから,「再掲」というのが何度も出てきています。例えば学位プログラムレベルと授業レベルで同じようなものが書かれていたりします。このあたりがどんな形で最終的にまとまるのか,よく分からないので,また教えていただければと思います。
 その上で,中身に関して申しますと,5ページの27行目からのシラバスのところでございますけれども,例えば27行目に「単なる講義概要」というのがありますが,これは多分「単なる授業概要」ではないかと思うんです。講義だけではなくて実験,実習とかも含めてですので。ここの部分には何度も「講義」が出てまいりますが,「授業」に切り替えるべきではないかと思います。
 それから,33行目に「事前に」というのがあるのですが,「事前・事後」ではないかと思います。またこれも「毎回の授業に関わっての事前・事後の学修時間」ですね。これが必要にも関わらず,今多くの大学ではワンボックス内にざっくりと書かれているんです。それをきちんと各回について書くことが大事かと思います。
 また,シラバスに関しては,先ほどの議論の中にもありましたけれども,まずもって全学ないし学部・学科レベルでシラバスの項目の見直しをしなければいけないということは書かなければいけない。そのときに,諸外国との互換性についても触れてほしい。ほかの国から見ると,今の日本のシラバスというのはシラバスになっていないと,もう20年ぐらい前から言われていると思うんですけれども,形式はほとんど変わっていないんです。単位互換するときにこのシラバスではもう話にならないということが繰り返し言われています。本日御紹介のあったシラバスであればいいんですけれども,そうなっていないということも強く言った方がいいのではないかと思います。
 項目の見直しをした上では,まず学内での相互チェックを担当者を決めてやるということです。そしてこういうシラバスが認証評価等で通ってしまっていることが問題だと思うんです。なので,外部評価についてはここでは踏み込まないということではありましたけれども,その点についても,問題のあるシラバスがどんどん認証されているということの問題点についても言及した方がいいと考えております。
 以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,川並委員,林委員,浅野委員でお願いします。どうぞ。
【川並委員】  先ほど小林委員の方からCAP制についてお話が出ましたが,実際に短期大学の場合は,免許・資格を出して卒業させるのが命であります。そういう場合に,過度なCAP制をしいてしまうと,又はこれを規定化してしまうと,卒業するときに免許・資格が取れずに卒業するという事態も発生して,それぞれの短大の死活問題にもなりかねないということで,先ほど小林委員がおっしゃってくださったように,それぞれの学校種別ごとにこの要件について御検討いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  林委員,お願いいたします。
【林委員】  申し上げたいのはシラバスなんですが,その前に1点,今のCAP制のことなんですが,私は認証評価機関にいましたので,そのときにも,分野別部会をやると,まさに教育学とか,そういうところでは,資格のためにCAP制を一律に学内で定められると困るという状況は明らかですので,ここではどのレベルでCAP制を設定するのかというところまでちゃんと踏み込んで書いていただければと思います。
 それから,言いたかったのはシラバスなんですが,ここに書かれていることは,シラバスの様式としてそのとおりだなと思うことが書いてあると思うんですが,ただ,一方で,今作っている指針の流れから言うと,シラバスを作る体制なんですけれども,先ほど学内の相互チェックという話は委員からもありましたけれども,実際に私の周りでも,各授業で教えられることが実は重複していたり,あるいは本来プログラムとして教えられるべきものが欠けているという状況も現実にあります。そうすると,今の指針の読み方だと,教員個人がしっかりした様式の下に書いてくれと読めてしまうんですけれども,そうではなくて,プログラムとして,各授業でどういうものを教えるかというのをまずは考える。そうすると,もうシラバスのある程度の中身の骨子のようなものは教員個人ではなくてプログラムとして作って,そしてそれを具体的にどうするかというレベルになったら教員個人のところに落ちてくるという流れではないのかと思うので,ちょっと書き方のところに,どうプログラムとしてシラバスを作るのかというところも是非踏み込んで書いていただければと思います。
【日比谷座長】  では,浅野委員,お願いします。
【浅野委員】  くしくも今,林委員がおっしゃったようなことを頭の中に想定しながらコメントをしようと思っていて,もう一つは,多分,ここに書くことで5ページの27行目にある「契約書」という言葉の重さというのもちょっと今考えておりまして,実質はそうなんですが,例えばこれで示したときに,学内から出てくる一つの考え方としては,ではもう書いてしまったら変えられないのではないかという,そこが出てくるんです。そこはちょっとここまで書くのかどうかというのは,是非御議論いただきたい。というのは,しばらくは,恐らく日本の大学の中では,むしろその方が改善が動くということ,働くということも考えられますので,書いてしまって,変えてはいけないという印象を持たれるような用語をここで使うのはどうなのかということが気になっております。
 それ以外のところは,今,林委員がおっしゃったように,まずはプログラムとして考えた目標を踏まえてシラバスは書かれるべきですので,まずは教員個人ではなくて,プログラムで作ったものを踏まえて,教員がそれを,先ほど金沢工業大学さんから御紹介がありましたように,自分なりのテイストを少しは入れるということは多分認めてもいいと思うんですけれども,その大本のところは上から落ちてくるところが大きいと思いますので,そこをイメージできるような書き方が重要ではないかと思っておりました。
【日比谷座長】  では,松下委員,お願いします。
【松下委員】  1つはCAP制なんですが,京都大学の場合も一律に入れるのはとても難しくて,今いろいろな部局でそれぞれの事情を踏まえて導入あるいは検討されているんですけれども,教員,あるいは学生の側にも,CAP制を入れることに否定的な声が結構あるんです。そういう人たちにCAP制の意義を示していくために今,京大でやっているのは,履修状況を把握し,教育IR推進室などが履修・修得単位と成績評価の関係を洗い出して,その上で説得力をもってCAP制の意義を示していくということです。こんなふうに制度改革をIRとも結び付けてやっていますので,そのようなところで各大学の事情というのを踏まえていただければと思います。
 それからもう1点,細かいことですみません。先ほどの金沢工業大学の御発表の中で,直接評価,間接評価という言葉が出てきて,間接評価とプロセス評価,直接評価とインプット・アウトプット評価というのが同じように捉えられていたんですけれども,ちょっとそこは概念が違っているように思います。例えばポートフォリオなどはプロセスを見ますが,間接評価ではなくて直接評価の方になります。すごく影響力をもつ資料ですので,そこはちょっと修正をお願いできればと思います。
【大澤氏】  済みません。これはちょっと誤解を生むかなと考えていました。学内でこの図を使っているので出させていただきましたが,おっしゃるとおりで,この図では,教員側から見てここが直接評価ということ書いてあって,ポートフォリオとか,そういうのももちろん直接評価ですので,それを教員側から見て間接的に使っているという資料なので,ちょっとそこのところは誤解が生じるかなと懸念していました。申し訳ございません。
【日比谷座長】  まだまだ議論があるかと思います。次回は成績評価について取り扱う予定にしておりますけれども,本日の履修指導,シラバス,CAP制とも密接に関わる項目ですので,引き続き,本日の議論について,もし足りなかったところを次回も取り上げるということで検討したいと思います。
 では,最後に事務局からお願いします。
【平野大学改革推進室長】  本日は活発な御議論を頂きまして,まことにありがとうございました。
 次回の日程でございますが,今のところ5月30日の午前中を予定しているところでございます。詳細は調整の上,追って御連絡をさせていただきます。
 また,いつものお願いでございますが,本日の資料について,郵送を希望される委員の方は,机上の附箋に郵送希望という旨を記載の上,机の上に残しておいていただきますようにお願いいたします。特に記載がない場合は,先生の御勤務先の方に数日で郵送させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  それでは,以上をもちまして本日の第4回教学マネジメント特別委員会を終了いたします。活発な御議論をありがとうございました。

―― 了 ――

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