教学マネジメント特別委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成31年2月13日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 教学マネジメントに係る指針及び学修成果の可視化等について
  2. その他

4.出席者

委員

(座長)日比谷潤子座長
(副座長)小林雅之副座長
(臨時委員)浅野茂、大森昭生、沖裕貴、川並弘純、小林浩、佐藤東洋士、佐藤浩章、清水一彦、伹野茂、益戸正樹、松下佳代、溝上慎一、森朋子、両角亜希子、吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長、平野大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、岩本文部科学戦略官、浅田文部科学戦略官、蝦名高等教育企画課長、三浦大学振興課長、石橋高等教育政策室長、平野大学改革推進室長 他

5.議事録

【日比谷座長】  おはようございます。所定の時刻になりましたので,今回は第3回になりますけれども,教学マネジメント特別委員会を開催いたします。御多忙の中御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,林委員と深堀委員が御欠席です。
 初めに,事務局に人事異動があったとのことですので,御紹介をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。文部科学省で異動がございましたので,御紹介をさせていただきます。
 まだ席の方に着いてございませんけれども,本年の1月22日より高等教育局長として伯井美徳が着任いたしているところでございます。また,同月23日より文部科学戦略官として浅田和伸が着任しております。
【浅田文部科学戦略官】  1年半ぶりの高等局でございます。よろしくお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
【日比谷座長】  今,いらっしゃいましたので。
 それでは,伯井局長,今御紹介をしたところです。
【伯井高等教育局長】  よろしくお願いいたします。
【日比谷座長】  ちょうどいいタイミングでした。
 それでは,続けて配付資料の確認をお願いします。
【平野大学改革推進室長】  机上の議事次第のとおり配付資料を用意してございます。机上資料の方は,タブレットに格納してございます。抜けている資料などお気付きの点がございましたら,事務局までお声掛けを頂きますようお願い申し上げます。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 前回,第2回の本委員会では,総論として教学マネジメント支援に盛り込むべき事項やロードマップについて御議論を頂きました。その際に,この委員会でどこまで議論するかという範囲や,教学マネジメントの指針の性格に関する様々な御意見を頂いたところです。前回の御意見につきましては,資料1としてまとめてありますので,きょうはこれは説明はいたしませんけれども,御確認いただければと思います。
 本日は,最初に前回頂きました御意見を踏まえつつ,この委員会は期間が限られておりますので,その中で着実に与えられた使命を果たしていくため,授業科目,教育課程の各論の議論に先立ちまして,まずは私からこの委員会における議論の進め方についてお話ししたいことがございます。それから,これからの議論を有益なものとするために,教学マネジメントに関する皆様の共通理解を得ることも重要と考えており,事務局とも御相談をして資料を用意しております。これについては,事務局から私の話の後に続けて説明をしてもらい,2つ終わったところで質疑の時間をとりたいと思います。
 それではまず,資料の2をごらんください。教学マネジメント特別委員会における議論の進め方についてというタイトルが付いているものです。「グランドデザイン答申」の取りまとめに至る中教審での議論や,これまでのこの委員会における議論を踏まえまして,「教学マネジメントに係る指針」の性格や,ここで議論する範囲については次のとおり整理をいたしましたので,このように今後の議論を進めたいと考えております。
 第1に,指針の性格でございますが,いろいろな取りまとめがございましたけれども,その中で自主的な改善の努力が促されてきました。大学教育の質の保証についても様々な努力は進められているところですけれども,非常に真剣に改善に取り組んでいる大学と,改善の努力が不十分な大学とに二極化しているという指摘もございます。大学全体として十分な信頼が得られているとは言い難いと。これが「グランドデザイン答申」で示された認識です。
 中教審がまとめる本指針は,教学マネジメントはそれぞれの大学が自らの責任において,それぞれの大学の事情に合致した形で構築すべきものである,これを前提とした上で,過去の答申などで示されている大学教育改革に関する手法など,教学マネジメントの確立及び学修成果の可視化,情報公開の促進という観点から再び整理をして,それぞれの大学の教学面での改善・改革に係る取組を促すために作成するものでございます。
 そこで,この本指針は,これまで改革に真剣に取り組み先導的な成果を生み出してきた大学の取組を一定の型にはめることを意図するものではありません。改革が必ずしも学修者の目線に立ったものとなっていない大学や,改革が十分な成果に結び付いていない大学などに,大学教育の質の保証の観点から確実に実施されることが必要とされる水準。ただし,これは難易度が低い,ハードルが低いということを必ずしも意味するものではありませんが,そのような水準でそれぞれの大学の取組に当たっての留意点などについて分かりやすい形で示し,その改革の促進に主眼を置くことがふさわしいものと考えております。
 そこで,国公私立といった設置者の枠にかかわらず,規模や学部の構成,経営資源などで多様な大学などに共通する内容として作成され,そして全ての教員,職員,関係者に必要性・重要性が共通に理解され受け取られるものとする必要がございます。
 以上,指針の性格について申し上げました。
 2点目は,この委員会の議論の範囲でございます。前回の委員会で皆様からいろいろなお話を頂きまして,ちょっと理想に走り過ぎているのではないかというブレーキも最後に副座長からお話がありましたけれども,これは一般論ですけれども,人は高い理想を追うことも大変に大事でございます。これを忘れてはいけないんですが,一方,足元をしっかり固めると。余り理想に走り過ぎないということもまた重要ですので,これから申し上げることはどちらかというと足元をこういうふうに固めましょうという方のお話でございます。
 今回,今後の検討課題として「グランドデザイン答申」の中に挙げられた事項のうち,幾つかのことを任務とするわけですけれども,検討課題に挙げられたもう一つの事項,これは設置認可や認証評価など,国の行う「質保証システム」の改善,現在の設置基準の見直しなどがございます。「設置基準等の質保証システムについて見直しを行うこと」は,来期10期の中教審大学分科会で新規の部会を設ける方向が既に示されておりますので,この議論はその部会に委ねることといたします。
 それから,それ以外にも,その次の段落はちょっと読みませんけれども,幾つかのものについては様々な議論が行われておりまして,一定の結論が盛り込まれています。これらは議論が分かち難く連動している部分もありまして,この委員会での議論の成果を適切に共有していく必要がありますけれども,この委員会では現行の制度を踏まえ,それぞれの大学が取組を進める上での留意点になる「教学マネジメントに係る指針」の作成と,これを念頭に置いた学修成果の可視化と情報公表の在り方を集中的に議論をしていく必要がございます。このミッションを最大限果たしていけるように,委員の皆様の御協力を是非お願いしたいと思います。
 それから,3つ目に大学院はどうかというような御指摘がありましたけれども,審議時間も限られておりますので,本指針は大学の学士課程及びこれと共通性が高い短期大学の課程を念頭に作成することとし,議論に当たっては大学院,高等専門学校についても,その独自性を踏まえつつ,一定の適用が可能になるように意識したいと思います。
 それから,前回複数の委員から御提案,御指摘がございましたけれども,教学マネジメントのサイクルは様々なレベルのものが重層的に積み重なっています。「グランドデザイン答申」においてPDCAサイクルは,大学全体,学位プログラム,個々の授業科目それぞれの単位で有効に機能している必要があるとされていることから,今申しましたこの3つのレベルを意識しつつ議論を進めていきたいと考えております。特に大学全体というレベルでは,大学の規模や学部の数,構成,経営資源などで大学ごとに多様性があるということに十分留意する必要があると考えております。
 それでは,続きまして資料の3を用いて事務局から説明をお願いします。
【平野大学改革推進室長】  大学改革推進室長でございます。資料3に基づきまして説明させていただきます。
 資料3につきましては,先ほど座長からお話がございました。今後の議論を進めていくに当たって教学マネジメントに関する共通理解を作っていく一助として作成をさせていただいたものでございます。これにつきましては,複数の委員から前回御指摘があったことも一部反映しているものでございまして,その点も含めまして御説明をさせていただきます。
 まず,一番上でございます。教学マネジメントとは何かということでございます。ここはグランドデザイン答申の用語解説というものが付いてございまして,そこの内容を抜粋させていただいてございます。最も基本的な定義といたしましては,大学がその教育目的を達成するために行う管理運営。教育目的を最大化するための管理運営というものが教学マネジメントではないかということの趣旨が書かれているものでございます。教学マネジメント指針とはということにつきましても,先ほど座長からお話がありましたが,各大学の教学面での改善・改革を促すために,その取組についての留意点等を網羅的にまとめたものである,ただし,これは特定の取組を強制するものではないということでございます。
 下半分の方につきましては,前回お配りした資料の中で,柱立ての議論をしていただきました。その内容というものにつきまして,図表で表したものでございます。この赤の点線で囲まれている部分を教学マネジメントとしているわけでございますけれども,三つの方針というものがまずありまして,これはどのような形で,どのような学生を受け入れて,どのようなプログラムで育成するかということでございます。これが出発点ということがまず掲げられているわけでございます。その後,サイクルといたしまして,個々の内容は御説明申し上げませんけれども,学修目標の具体化,その上で授業科目・教育課程がこれを支える形で体系的に編成される。このような体系的な教育課程の下で,大学教育のそもそもの根幹でありますけれども,成績評価をしっかりしていただいて,その成績評価の情報に加えて学修成果の把握・可視化というものを学位プログラムとして明らかにすると。このような形のものをまず左側半分に書かせていただいてございます。
 また,一番右側でございますけれども,FD・SD・教学IR,これは縦長に延びておりまして,イメージとしてはFD・SD・教学IRというものについては,教学マネジメントの営み全体を支えるものとして位置付けているところでございます。実質化を図り,教学IRの理解を促進するとともに,経営層にもしっかりこのようなことの研鑽というのを図っていくということが必要ではないかということが書かれてございます。
 また,一番下の部分でございますけれども,大学が自ら把握した情報,活動に関する情報などにつきまして,積極的に説明責任を発揮していく。この情報公表につきましては,様々な情報を組み合わせて分かりやすい公表の在り方,これを指針でもまた考えていく必要があるわけでございますけれども,この積極的な説明責任を果たすことによって社会からの信頼と支援を獲得する。これは社会というものにつきましては,もちろん高校生,親御様,そのような方のみならず幅広いステークホルダーというものを含むというものでございます。
 右半分の辺りに少しぎざぎざとした丸がございます。これは歯車を意識して一応作っているものでございますけれども,先ほど座長からお話がございました3つのレベルというものを一応表そうというものでございます。授業科目・教育課程から成績評価というところについては,個々の授業科目レベルのPDCAというものをしっかりと回していく必要がございます。三つの方針の中から学修目標の具体化,学修成果の把握・可視化というものをまた反映していくといった,学位プログラムレベルのPDCAというものがあるわけでございます。
 最後に,ちょっと図示の関係で説明が外に出てしまってございますけれども,この個々の学位プログラムレベルでの営みというものを全学的に適切な体制の下で横断的に行っていくという大学全体レベルでのPDCAサイクルというものがあるわけでございます。このような3つのサイクルといったものを意識しながら,複層的・継続的に行っていく,積極的に課題を明らかにして次のサイクルの改善に生かしていくということ,そしてこのような評価を行うに当たっては,あらかじめ点検・評価するために,達成すべき質的水準,具体的実施方法などを決めておくということが必要であるということが書かれているものでございます。
 最後,ちょっと細い字で,オレンジ色で書かれているものでございますけれども,これにつきましては,いわゆる個々の教育改革に資する手法について,それぞれがどのようなところで関わってくるのかということをイメージとして図示させていただいたものでございます。この図につきましては,1枚で表すということになりまして,なかなか全て表しきれないところがあるわけでございますけれども,まずは教学マネジメントというもの,この指針のイメージというものを共有する一助として作成させていただいたものでございます。以上でございます。
【日比谷座長】  御説明ありがとうございました。
 皆様お気付きと思いますが,この3つの輪がありまして,緑色のところなんですが,歯車のようになっているのをお気付きになっているかと思いますが,ここがこの図を作ったときの苦労をした点,そしてみそでございまして,是非これが歯車がかみ合って,この3つのレベルで教学マネジメントが適切に確立されるというのを目指そうという意図を表したものですので,是非歯車には御注目いただきたいと思います。
 それでは,私からの話,今の説明を含めて,何か御質問等ございましたらここでしばらく時間を取ってお願いいたします。
 どうぞ。
【小林(雅)副座長】  少し補足したいと思いますが,初めに日比谷先生からありました資料2のことです。新しく部会を作るということは既定の方針としてそのとおりですが,今までの経験からしますと,部会とか委員会の間の連携が課題になっているのではないかと思います。事務局は全部お分かりになっているわけですが,個々の委員は全部分かっているわけではありませんので,その辺り,連携を十分考慮していただきたいということです。特に,こちらの新しい部会の方は大きな課題ですし,審議にも時間がかかりますし,課題自体もかなり長期的なものになると思います。それに対してこちらは1年程度で行うということですから,かなり性格は違うので難しいかと思いますけれども,その辺りを少し考慮していただきたい,これが第1点です。
 それから,資料3につきましては,いろいろ苦労したわけですけれども,ここで逆にはっきりさせておきたいことは,大学全体のレベルといいましてもいわゆるガバナンスは入らないということですね。これはもう少し大きな課題としてその外側にある。それから,逆に個々の授業レベルということになりましたので,個々の学生,そのレベルにまでは下りていかないと。両方ともそういう形で制限をかけているということだと思います。ただ,この2つも常に意識して検討していかなければいけない問題ですから,特に学生の問題については常に意識していくということが必要だろうと思いますので,そのことを意識しながら検討していただければと思っています。
 それからもう一つは,これは小さなことですが,資料3を見て今気が付いたんですけれども,教学マネジメント指針についての最後のところに,具体的な方針を策定するということが書いてありまして,下のところの緑で囲ったところには,「水準及び具体的実施方法などを制定」って書いてある。言葉の問題ではなくて,やはり最初のところできょう日比谷先生からもありましたように,これは文部科学省として枠をはめるものではないということは繰り返し事務局からも説明がありましたので,「制定」とか「策定」というのはかなり強い言葉ですので,もう少し「作成」とか弱い言葉にしていただければと思います。以上です。
【日比谷座長】  益戸委員,お願いします。
【益戸委員】  ありがとうございます。日比谷座長からお話があった議論の進め方について,意見を述べさせていただきたいと思います。
 私はこの教学マネジメント特別委員会の設置に至った将来構想部会の委員として,答申の作成委員に参加させていただいておりました。答申は30回に近い議論を重ねてゴールを迎えたわけですが,今後の検討材料は,まだまだ議論の時間が必要であったと感じています。そこで、この特別委員会の設置につながった訳です。
 この特別委員会は、まだ2回しか開かれていません,各委員からの御発言は,私にとって、とても勉強になり,大変すばらしい御意見ばかりだと実感しております。考えれば考えるほどこの議論というのは広がっていく議論です。
 しかし,一方で大切なことは,グランドデザイン答申から派生したこの特別委員会は、果たさなければいけないミッションがあるという事です。したがって,やりたいことと,やれることということをはっきりする上で,きちっとしたまとめが必要であるということ,それから毎回たくさんの傍聴の方が来ていただいております。これは大変有り難いことです。私たちのこの検討課題を分かりやすく説明して議論を展開し、その過程を傍聴の皆さんからより広く社会に広めていただいていくということについても,私たちは努力をしないといけないと思います。したがいまして,年末までの限られた時間の中で,この指針の性格,重要項目にしっかり的を絞って議論をしていく事は重要です。したがって,日比谷座長のこの整理というのは大変良いと思います。一言感想を述べさせていただきました。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 どうぞ,佐藤委員。
【佐藤(浩)委員】  資料3のこの図についてコメントです。メインは学位プログラムレベルに置きながらも,全学レベルと個々の授業科目レベルのサイクルも言及するという,非常に分かりやすくなったかなと思います。まずタイトルとして,授業科目・教育課程のところについては,ほかが「具体化」とか「可視化」というのがついているので,「教育課程の編成」というような言葉を入れた方がそろいがいいのではないかと思いました。
 それから,この成績評価というのは,授業レベルのものだと思うので,どちらかというと学修成果の把握・可視化の中に入るような印象を受けます。そうすると,目標の具体化,編成,評価というふうに柱がすっきりするように思いますが,いかがでしょうか。
【日比谷座長】  大変に的を射た指摘だと思いますので,少し直すことをお考え下さい。
 ごめんなさい,川並委員,お願いします。
【川並委員】  この委員会自体の答申というか考えることについてはよく理解をできるんですけれども,2040年のグランドデザインに基づいてこの会議が行われるという中で,このグランドデザインの中には専門学校が高等教育機関として入って位置付けられているわけですけれども,この教学マネジメントについてはそこが外れているというところで,どういうふうに切り分けをされているのかということについて,少し説明をしていただけると有り難いなと思うんですけれども。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 これは事務局から御説明を頂けますか。
【三浦大学振興課長】  高等教育といいますと,今お話があったとおり専門学校も含むということでございますけれども,その中で設置基準に基づいて学校教育法の体系に基づいてやっているという中における教学マネジメントということが今回のグランドデザイン答申の残された課題としての宿題というふうに受け止めておりますので,今回の議論には専門学校の部分は入ってこないというふうに理解しております。
【日比谷座長】  よろしいでしょうか。
 ほかは資料2と3についてはよろしいですか。
 それでは,次に各論の授業科目・教育課程に関する議論に移りたいと思います。前回のロードマップで,きょうはカリキュラム編成の高度化及び柔軟な学事暦の運用を主な議論の対象としておりましたけれども,事前にも御案内しましたとおり,学修成果の可視化などにも十分な審議時間を確保してほしいという御意見もございましたので,きょうはアクティブ・ラーニング等を活用した教育の推進,それから主専攻・副専攻の活用についても議論の対象といたします。
 まず初めに,沖委員より授業科目・教育課程に関する御発表を15分でお願いをしております。その後に続けて事務局から10分程度で資料の説明をお願いします。その後,何人かの委員から提出されておりますカリキュラムマップ・ツリーなどの作成プロセス,責任者,見直しなどのチェック体制について,それぞれ2分以内で発表,そして質疑・議論の時間とさせていただきますので。
 それではまず,資料4に基づいて,沖委員から御発表をお願いいたします。
【沖委員】  はい,失礼いたします。お時間を取っていただきましてありがとうございます。資料4をご覧ください。非常に大きく印刷していただきましたので,私も見やすいです。
 開いていただきまして2ページのところです。もう言わずもがなですが,特にDP,CPについて赤字で書かせていただいています。「学部・学科が教育活動の成果として学生に保証する最低限の基本的な資質」,後で申し上げますように,箇条書き,行為動詞で書くといったものです。これがDPになります。それから,カリキュラム・ポリシーもいろいろな書き方がされていますが,「DPを保証する体系性と整合性が担保されたカリキュラム」であることを端的に示せばいいということで,余り大した文章を書く必要はないだろうと思っております。
 次のページですが,先ほどの資料3にもありましたように,いろいろな表現の仕方があると思います。理念・目的から成績評価までの真ん中の部分,これは大学教育のバックボーンだと思っております。理念・目的があり,ディプロマ・ポリシーがあり,それを達成するカリキュラムがあり,そこには授業が配置され成績評価が行われるという意味です。左側を見ていただきますと,体系性,整合性,適切性という言葉を書いてありますが,よく認証評価で使われる言葉です。この部分が基本的にはPDCAのPLANに相当する部分ですね。そして右側の妥当性,有効性というのは,CHECKに相当する部分です。次のページを開いていただきますと,言い方を変えるならば,この左側のPLANのところの,特にディプロマ・ポリシーを実現するカリキュラムを作るというところがカリキュラム・ポリシーの本質になると考えます。右側の部分は,これは全てCHECKの部分ですが,全てアセスメント・ポリシーと言い換えることができるだろうと思います。特にDPから理念・目的のところは機関レベルのアセスメント・ポリシーですし,カリキュラムからDPに至るところ,もしくは授業からカリキュラムに至るところというのはプログラムレベルの検証になります。そして,成績評価は科目レベルのアセスメント・ポリシーと言うことができると思います。
 それでは,最初のDPのところなんですが,6ページを見ていただきますと,滋賀県立大学の工学部のDPの例を挙げてみました。JABEEを取っているところですので,それに即して書かれております。そのため数は非常に多く,A,B,Cという形で書かれていますが、よく読んでみると観点別に整理をされています。観点別というのは先生方御存じのことですが,学習指導要領に載っております4つの観点の意味で申し上げています。もちろん、それにこだわるわけではなく、学士力でも結構ですし,学力の3要素でも結構です。あるいはもともとのBloomの3領域にしてもらっても結構です。余りこだわりはありません。
 7ページを見ていただきますと,ハーバード大学のコア・カリキュラム,教養のカリキュラムを載せています。これぐらいのシンプルさというのが非常に望ましいんじゃないかなと常に思っております。例えば,「技能」のところを読んでみますと,「正確に意思の疎通を図ることができる」とか,「コンピュータ等を用い,数量的な処理を行うことができる」。「1つ以上の外国語を用い,コミュニケーションすることができる」。我々がDPを作りますとどうしても修飾語が多くなったり,あるいは複文になったりして,後で検証するのが非常に難しくなるんですね。だから、これぐらいのシンプルさというが大事だと思います。
 ただ,この中で1つ気を付けなければならないのは,このDPの項目の中に指標・基準は入れないということなんですね。どうやって成果を測定するかという部分については、この中に文言として入れる必要はないということです。ただし,項目一つ一つについてどうやって検証するかということは,教育を行う側が事前にしっかりと考えておく必要があります。でも、文章に入れる必要はない。
 8ページですが,その辺りをまとめたDP策定の留意点です。まず、「4年間の学士課程教育で保証する最低限の学修成果を項目として記述すること」です。先ほども言いましたように,領域別でも学力の3要素別でも結構ですが,少なくとも3つ以上に分けて「何々できる」という行為動詞で記述するということ。それからこれは認証評価のときによく言われることですが,建学の精神や全学,学部,学科の教育目的とDPの整合性をとることも大事になってきます。DPを学位プログラムごとに作るというのは当然なんですが,同じ学部の中に2つ,3つの学位プログラムがあるということもあり得ます。その場合,学部と学位プログラムの間の整合性というのは当然問われることになります。
 それから,後でも申し上げますが,カリキュラム・ポリシーの本質というのは,それぞれのDPの項目がどの科目群でどういうふうに育成されるかを示すということに尽きます。それがカリキュラム・ポリシーの本質で,それを可視化する道具としてはカリキュラム・マップとツリーがあるということです。それから,先ほど申し上げたように,一つ一つののDPの項目というのは,どのように達成度を検証するかということを予め考えておく必要があるということですね。
 9ページ以降につきましては,授業と成績評価について申し上げたところです。
 10ページをご覧いただきますと,山口大学の教養の授業の「芸術論特殊講義」という授業を例に挙げました。もう17,8年前になりますか,当時こんなふうなシラバスの書き方に改訂したのですが,見ていただきたいのは,到達目標の書き方なんですね。いろいろなところでシラバスを拝見させていただきますが,やっぱり到達目標の書き方がアセスメント・ポリシーの命だと思っています。これを読んでいただきますと,大事なことが分かるんですね。それは何かというと,一つ目はもちろん15週終わった時点で具体的に何ができるかということがはっきり書いてあるということ。でも,それは当然のことで,もう一つ重要なことは,学生さんがこれを読んだら,15週終わった時点でどのように成績評価が行われるかまで読み取れるということなのです。例えば,一番上の「基礎的な美術史の用語を理解し,それを用いて作品を説明できる」というのを読んだら,「さまざまな美術史の用語を教えてもらえるんだろう」,そして「最後の試験で,あるいは途中の試験かもしれませんが,どこかの展覧会に出品された作品の写真などを見せられて,『この作品を基礎的な美術の用語を用いて説明しなさい』というような問題が出るだろう」というところまで読み取れるような書き方がされているということです。
 11ページをご覧ください。昨今,多くの大学で,到達目標が学生を主語にして行為動詞で書かれる,あるいは観点別に書かれるようになってきたのですが,実はそこでまた新たな問題が生起しています。それは何かと言うと,立派な到達目標がいくつか書かれているのだけれど,その一部は成績に絡んでないということが非常に多いということです。11ページにあるように,本学では,到達目標ごとにどういう評価手段でどれぐらいの比率で成績に盛り込むかということを必ずシラバスに明記することが求められています。特に大きな私立大学では,何百人もの受講生がいる授業も少なからずありますので,到達目標をそれぞれの観点で立派に書いておきながら,成績評価ではその中で一番採点しやすい知識・理解だけを穴埋め式の問題でやっているということがよくあります。本当にこういう事例は山ほどあるんですね。前回も申し上げましたけれども,そのようなことをやっていますと,成績評価が到達目標の達成度を測っていないわけですから,その上にマップ・ツリーで保証されているDPの妥当性,それからGPAへの信頼性も全部なくなるわけです。ここのところをしっかりとしておく必要があるだろうということです。
 12ページ,13ページは,アセスメント・ポリシーの中でも特に科目レベルのところで用いられる,ルーブリックを使ったパフォーマンス評価の事例を,実際に私が使っているものも含めてお示しをしたものです。14ページは理系の到達目標の事例ですが,よく研修会なんかをやりますと,全ての観点を網羅する必要があるのかという質問をいただくことがあります。その必要は必ずしもありませんし,例えば「線形代数」のような科目でしたら知識・理解だけでも十分ではないかと思います。ふだん先生方が授業でやっていることを尊重すればいいだろうと思います。ただし,この書き方を見ていただきますとお分かりのとおり,何ができるようになるか,どんな試験があるかまでやはり一目瞭然になっているわけですね。
 15ページは,到達目標作成の留意点です。あくまでも「DPとの関連で科目の到達目標を設定すること」,つまり「マップやツリーに示された科目の位置付けを確認して自分の到達目標を設定する」ということですが,最近の傾向としまして,科目の到達目標を各授業者に任せるのではなく,学科全体で考えることも増えています。学位プログラムの中で,科目の到達目標をアプリオリに決めてしまうというやり方です。というのは,後で申し上げますが,授業者各自がDPとの関連性を考えず,自由に到達目標を作った場合,カリキュラム・マップで点検しようとしても,マッピングするDPがないということもあるんですね。その意味では,学位プログラムを学科として組織的に構築するんだということで,先に決めてしまうというようなやり方も大いにあろうかと思います。それから,到達目標は「成績評価を行うものだけに厳選する」。これはもう先ほど申し上げたことです。そして,「学習者が主語で『何々できる』という形式で書く」。あとは,行為動詞の言葉遣い。これは研修,ワークショップをやって書き直しの練習というのをたくさんやることによって徐々に上達することだろうと思います。
 17ページですが,先ほど申しました体系性・整合性を担保したカリキュラムを作るというところ,カリキュラム・ポリシーの本質ですが,ちょっと17ページにまとめております。言わずもがなですが,大学設置基準の大綱化以前というのは,基本的に決められたものをどう集めるか,もっとはっきりと言うならば,○合の先生をどう引っ張ってくるかというところが大きかったんですが,91年以降各大学が自由にカリキュラムや教育内容を制定できるようになりました。できるようになったということは,科目名も学科名も科目の内容も自由になったわけですから,自らそれを説明しなければいけない。それがカリキュラム・ポリシーの本質なわけですね。具体的に何をすればいいかというのは,点検項目として3つあると言われます。1つ目は目的,これはDPにほかなりません。あと,scopeと呼ばれるDPを育成するのに十分な科目群でカバーされているかという部分。これを示すものがカリキュラム・マップなわけですね。あとsequenceと言われる系統性・体系性の部分。これはカリキュラム・ツリーでもいいですし,ナンバリングでもいいし,あるいは履修系統図のような図でも構わないと思います,こういったものを準備する,根拠資料としてこれがあれば,あとの文章は実は大したことはないわけですね。何々学部何々学科は基礎教育としてこんな科目群を擁しているとか,専門科目としてこういう特徴を持っているということを若干書けばいいんだということです。
 18ページなのですが,この間いろいろな大学のマップやツリーを見させていただいて,様々な問題点が見えてきました。最初に,マップをどうやって作るのかなんですが,単に作るだけでしたら非常に簡単なことです。学位プログラムごとに科目の一覧表を作りましてエクセルの五,六枚になりますか,教授会の際とか,非常勤講師には出勤簿の押印の際に自らの科目のマッピングをしてくださいと言えば1週間で出来上がります。ただ,1回目に出来上がったものは非常に偏りのあるものができあがります。カリキュラム・マップはまさにそれを点検する道具,チェックリストなんですね。その使い方がまず第一になります。
 そこでよく聞かれるのが,マッピングする個数です。別に決まりはありませんが,成績に絡む主要な到達目標1つから3つぐらいということでやればいいと思います。そもそも先ほども言いましたように,成績評価に絡む到達目標に厳選するならば,これが十幾つになることは基本的にはないんですね。1つから3つというのは普通だろうと思います。
 ただし,到達目標を観点別,若しくは領域別でも構わないんですが,行動目標として書くということが大前提です。これができてないとマップは成立しません。私が見に行かせてもらったところで見られた1つ目の問題は,到達目標が観点別に行動目標として書けていないというところが多いということです。もっと言いますと,私はこれを教えた,あの話もした,あれも触れたといって,DPのすべての項目に丸を付ける。これが非常に多いパターンです。先ほど申し上げたように,教授会で回覧して丸を付けてくれというような形でやりますと,このような偏りが出てくることが多いようです。要するに整合性の問題が露わになります。十分なscopeがないということが見えてきます。それから,特に選択科目の取り方によっては,一部のDPの項目に対する科目がない、あるいは少ないといったケースも多く見られます。それはそれでマップとしてはチェックリストの役割を果たしているのですが。
 それから,大きく2つ目の問題点は,到達目標とDPの関係性です。これはちょっと口幅ったい言い方なのですが,先ほど申し上げたように成績と対応していないものもそうですし,それからその科目の内容が実はDPとは全く関係のない科目,多くは人ありきの科目というのが多数あるというようなケースです。そういった意味で,ここでもマップは、点検の道具として使われることになるだろうということです。
 マップでカリキュラムの整合性を確認するというのが第一に行うべきことですが,その次に系統性・体系性を示すツリー,ナンバリング,履修系統図をワーキンググループで検討することが求められる作業になってきます。ここでの活動全てが非常に重要なFDになります。今まで人の科目に口を出すことも学部のDPも知らないということが多かったのですが,系統性や体系性をみんなで検討すること自体が,FDの一番重要なところだろうと思っています。
 19ページですが,その他の重要なキーワードを挙げさせていただいています。これまで述べてきたようなことを組織として円滑に進めるためには,シラバスの執筆要領というものを非常に丁寧に作る必要があります。いい書き方例や悪い書き方例みたいなものを明示すると,特に非常勤の先生方にとっては分かりやすい。研修会を全員に開くわけにはいきませんので,そういったものをしっかりと充実すること。さらには,シラバス点検といったものも必要になってきます。特に到達目標の書き方と成績評価の方法,こういったものについての点検は点検要領というものを作ってきちんとやっていく必要があります。それから,先ほども少し申し上げたんですが,科目概要,科目の到達目標の統一。本当は学位プログラムを作るときに組織的に到達目標を先に決めてしまうということが理想だろうと思いますが,なかなかそこまで急にはいきません。ただし,うちみたいな大きな大学でしたら,同じ科目名の科目を十数人で担当していることもあるわけですね。その際に,同じ科目名であるにもかかわらず,科目概要も到達目標もばらばらだと,マップも作りようがないし,学生から不満が出てくるわけです。それを解決するためには,ここでは科目担当者会議と書きましたが,学科で決めるもよし,科目担当者会議で決めるもよし、同じ科目名の授業については科目概要と到達目標,できれば成績評価の方法ぐらいまでは統一する必要があります。
 それから,言わずもがな,DPの周知と点検というのは,プログラム・レベルのアセスメント・ポリシーとして,DPの達成度を学生に聞く場合,学生がDPを知らなかったではどうしようもありませんし,先生方が知らないで自分の授業をしていたでは話にならないということです。そういう意味では根本的に重要なところになってくると思います。
 当然,DP,CP,APは定期的に見直すということで,これも機関レベルで当然のことです。
 加えて,今度は各学部・学科の執行部の先生方なんですが,要するに学位プログラムの設計に責任を負う先生方です。この先生方が代替わりしていくということです。代替わりすると,前のことがすっかり忘れ去られているということがよくありますので,本学で取り組んでいるのは,教学ガイドラインというものを作って,マップ,ツリー,DPの達成度,学修成果を基に次のカリキュラム改革をするということを明文化して引き継いでいこうということです。そういった地道な基礎固めも重要だろうと思います。特に,客観的かつ厳格な成績評価はパフォーマンス評価が基盤で,エビデンスに基づいた教育改革の定着というのが重要になってくるだろうというところです。
 最後に26ページをご覧いただけますでしょうか。これは,私が数年間,関わらせていただいた東京慈恵医大の事例なのですが,カリキュラム・ルーブリックと呼ばれるものです。DPとは,学生さんが卒業する時点でどういうことができるようになっているか,最低限の資質を書くわけですが,例えば学生調査などをやっていきますと,例えば1回生時にDPをどれぐらい達成しているか,2回生はどうなった,3回生どうなった,4年生はどうなった,卒業後どうなったということを調べたりしています。ところが,DPというのは卒業時の話ですから1年生にそんな高尚なことを聞いてもよく分からない。そういう意味で,アメリカのAAC&Uのバリュールーブリックもそうですが,初級レベル,中級レベル,上級レベルでもいいし,L1,L2,L3,L4という学年に相当する分に分けてもいいですので,DPをいくつかのレベルに分けて,つまりDPをブレークダウンして学年ごとにして,学生調査でその達成度を聞く,あるいはそのブレークダウンしたDPに対して,カリキュラム・マップで科目を配置するというような取組を進めているところが多いようです。これは1つのアイデアだと思いますし,学生調査などをやるときにはこういうものを参考にするのがいいのではないかと思っております。
 ちょっと早口でお話しして申し訳ございません。以上でございます。ありがとうございました。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,続きまして事務局から資料5の御説明をお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  失礼いたします。資料5について御説明させていただきます。
 まず,この御説明に入る前に,先ほど座長から本日の議論の範囲ということについてお話がございましたが,本日の机上資料の7-4という部分に前回お示しをしたロードマップというものが示されてございます。本日はこのロードマップ上の第3回という部分なわけでございますが,先ほど座長から話がございましたように,アクティブ・ラーニングやICTを活用した教育の推進,主専攻・副専攻の活用,こういった部分も学修成果の可視化というところについて審議時間を確保するという観点から本日取り込ませていただいているものでございます。
 また,本日の資料5につきましては,前回の資料3,今回の資料でいいますと机上資料の7-3ということになりますが,基本的にはこの項目を転記しているものでございます。ただ,今回違っているところが幾つかございますので,まずフレームについて御説明をいたしますけれども,まずは前回のものを先ほど申し上げた大学全体レベル,学位プログラムレベル,個々の授業科目レベルという形でレベルに応じて再配置をしたということが1点でございます。また,その個々のレベルの後に点線で囲っている部分がございますけれども,過去の答申の内容をしっかり再整理するというこの教学マネジメント支援を作っていく上でのいわゆるミッションということになっているわけでございますけれども,過去の再整理をするという観点から過去の関係する答申につきましては抜粋をさせていただいているところでございます。
 3点目につきましては,下線が引かれている部分がございます。下線が引かれている部分につきましては,前回の御意見を踏まえて少々修正した部分と,過去の答申との整合性という観点から追加などをした部分がございます。この修正につきましては,現段階で最低限反映できるものだけを反映したものでございまして,その他の前回以前も頂きました各委員の御意見というものにつきましては,しかるべきタイミングでしっかりと反映していくということも考えているところでございます。
 その上で,今回御議論いただきたい事項は,○ということでございます。●は一応前回御議論いただいている内容でありまして,大変恐縮なんですけれども,▲というのはまた次回もう一回議論する機会がありますので,そこへということで分けております。○に御注目を賜れればと思うわけでございます。
 それでは,中身の説明に入らせていただきます。1ポツの大学レベルという部分につきましては,教育課程の編成・実施というものにつきましては,各教員や専門的な主体的な参画を得つつ,大学及び学位プログラム全体で組織的に行われる必要があり,副学長や学部長を中心にふさわしい体制を整える必要があると。必要に応じて外部の関係者の意見を取り入れることも考えられるということでございます。大学全体レベルということでございますので,大学全体というところと副学長などを中心にというところに力点があるということでございます。
 下の部分につきましては,学修目標の具体化のところから抜き書きしてございますけれども,いわゆる学位プログラム共通の考え方や尺度に従って点検・評価を行うということが必要不可欠でありますので,その方針についてはあらかじめ大学全体として定めておく必要があるということについて言及しているものでございます。
 2ページをごらんください。ここの部分が分量的にも非常に多くなってくるわけでございますが,学位レベルでございます。○を御説明いたしますけれども,まず2つ目の●につきましては,ディプロマ・ポリシーとの関係性,科目の関係性というところでどれぐらい広がりを認めるのかというような議論が前回ございました。少々修正をしてございます。3つ目の○,体系的な教育課程の編成ということでございます。個々の授業科目について個々の教員の意向を優先するのではなく,学修者本位の教育の観点から,「卒業認定・学位授与の方針」との関係を踏まえつつ,「教育課程編成・実施の方針」に従い,教育課程全体の中での分担,授業内容を検討すること,個々の授業科目の到達目標についても,「何ができるようになるのか」を意識して設定すること。2つ目。「カリキュラムマップ」の作成等を通じて,同方針――ディプロマ・ポリシーでございますけれども――に設定された各観点を満たす上で必要な科目が過不足なく設定されているかどうかを検証し,科目の設定や内容の検討に活用するとともに,必修科目とそれ以外の科目を分類すること。3つ目。「カリキュラムツリー」の作成などを通じて,各科目相互の関係や,卒業までの期間における履修順序や履修要件というものを検証すること,このようなことが必要ではないか。マップ,ツリー等は,学生の主体的な学修を促す観点から,分かりやすい形で提示されることが必要ではないかということでございます。
 4つ目,○でございます。学内外に教育課程の体系性を明らかにする観点から「ナンバリング」を実施することが必要ということでございます。
 5つ目でございます。これにつきましては,先ほど1ポツの大学全体レベルで御説明した内容でございますので,説明は省略させていただきますが,学位プログラム全体,学部長を中心にといった辺りに力点があるわけでございます。
 次,2つ●が並んでございます。これは少々前回の議論を踏まえて修正をしている,また,過去の答申との整合性の観点から修正をしているものでございます。
 下から2つ目の●でございます。セメスター制だけを推しているのかというお話でございました。そういうことではない。あくまで例示で,セメスター制やクオーター制の導入などということでございます。また,通年科目による4単位というものと半期の4単位,クオーターにおける4単位というものは全く位置付けが違うわけでございますけれども,前回の議論の中では授業科目の複数回実施ということが密度の濃い授業という観点からは重要ではないかという御指摘があったことを踏まえて,修正をしてございます。
 3ページをごらんください。シラバス,キャップ制,履修指導については,次回御議論いただく予定にしてございます。過去の答申との整合の確保という観点から一部修正をさせていただいてございます。
 3ページの1個だけある○でございます。分野を超えた専門知の組合せが必要とされる時代であり,一般教育・共通教育においても幅広い分野から成る文理横断的なカリキュラムが必要となるとともに,専門教育においても従来の専攻を超えた幅広くかつ深いレベルの教育が求められる。主専攻・副専攻制の活用など学生の学修の幅を広げるようなカリキュラムの工夫を促進することが必要ということについて,最も根幹なところというのを過去の答申から引き出して書かせていただいているところでございます。
 5ページをごらんください。5ページにつきましては,個々の授業科目レベルということでございます。
 2つ目の○については,先ほど説明した内容と重複するものでございます。個々の授業科目に係る部分というのを抜き出させていただいてございます。
 3つ目の○でございます。生涯にわたって学び続ける力,主体的に考える力を持った人材を育成するためには,従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から,教員と学生が意思疎通を図りつつ,一緒になって切磋琢磨し,相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り,学生が主体的問題を発見し解を見出していく能動的学修,いわゆるアクティブ・ラーニングへの転換が必要だということの根本について,述べさせていただいているところでございます。その次につきましては,前回御議論のありました,いわゆる細分化された授業科目の統合ということと同時に,ICT,アクティブ・ラーニングへの転換も視野に,1つの科目の中で「考える」,「話す」,「行動する」など,多様な学びをもたらす工夫が必要ではないか。その際,TAによるサポート等も重要ではないかということを書かせていただいてございます。
 これにつきましては,先ほど申し上げたように,前回の資料3,今回の机上資料7-3の項目を再度レベル別に位置付けてということでございます。これを議論する際の材料の一つとして御活用いただければと思います。説明は以上でございます。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日何人かの委員の方々より御所属の大学のカリキュラムマップ・ツリーに関する資料を御提出いただいておりますので,その発表に移りたいと思います。
 資料6,ホチキスでとじてあるものをごらんください。表紙にございますように,最初に私がちょっとお話をいたしますけれども,その後,基本的にはきょうはお名前のあいうえお順に御発表いただきますが,川並委員のみちょっと途中で御退席と伺っておりますので,2番目にお話を頂きたいと思います。
 事前に御案内をしましたけれども,時間も限られておりますので,申し訳ございませんけれども,お1人2分とさせていただき,前もちょっとそういうのをやりましたけれども,2分経過したらチンが鳴りますので,時間の厳守をよろしくお願いいたします。私はきょうは手元にストップウオッチも持ってまいりましたので,自ら管理してお話をしたいと思います。
 それでは,1ページをお開きいただければと思います。先ほど3つのレベルを意識してということが出ましたけれども,この後の御発表では学部レベルのものも幾つか例が挙がっておりますが,ICUは学部は教養学部1つで,その中で31のメジャーというものがあります。そのほかに一般教育科目もあれば語学教育科目もあれば保健体育科目もあるということになっておりますので,カリキュラムツリーは,これはそれぞれのメジャーごとに,先ほどの沖先生の御発表の言葉で言いますとsequence,履修の順序を示したもので,番号が振ってありますのでナンバリングについてもごらんいただけるかと思います。
 最初に100番台の科目がございまして,基礎科目から始まって矢印を見ていただければよろしいかと思います。黄色のものが言語学メジャーとして提供している科目です。右側にはコアの科目ではなくて,やや周辺的な科目も含まれておりますが,緑色のものはほかのメジャーの科目ですけれども,言語学の単位に数えますよというものをCo-listと呼んでおりますけれども緑色で示しております。それから,300番台の右下にQで始まる科目が幾つかございますが,これらは大学院の科目でして,400番台,500番台ですが,能力のある人は学部生で取っても卒業単位に認めます。
 これらをどのように作っているかと言いますと,それぞれのメジャーにメジャーコーディネーターという人がいますので,その人の責任でメジャーの教員で相談をして作った後,複数のメジャーが集まってデパートメントというものに教員は所属をしているんですけれども,そこで協議をした後,最終的には,学部は一つですから教養学部長1人しかいませんが,その人が見直し,チェックをし,そして学修・教育センターが学内のネットワークに公開するという手続を取っております。以上でございます。
 では,川並委員,お願いします。
【川並委員】  本学の大学・短期大学があるわけですけれども,短期大学の方の保育科のカリキュラムマップをきょうは参考資料として提出させていただきました。
 前回までもいろいろと話がありましたけれども,短期大学の保育科は2年間で幼児教育のスペシャリストを養成して社会に輩出するということと併せて,免許・資格にかかわるものがございますので,この免許・資格については,文科省並びに厚労省の指定規則に基づいて,ある程度科目を履修していないとその次の実習が受けられないというような制限もある中で,2年間でどのように効率的に学生たちの指導を行うかということで,実習を中心にどのようにカリキュラムを構成するかということを考えて作られております。実際にこの実習を中心にという形で行う前は,学生たちにどれだけの力を身に付けて卒業させるかという,いわゆる卒業時の力を優先して考えていたために,かなり学生に多くの負担をかけていたことも事実でありましたが,実習を中心にカリキュラムマップを整理することによって,学生たちにとってのカリキュラムの重複等々も減らすことができて,形としてこういう形で提供することができました。
 2ページ目はその学びの中でどのようなアウトカムが得られるかということについて,学生たちにこれを提供することによって自分たちが今どのような形で学んでいるかということが理解できるようにしております。3ページ以下につきましては,三つの方針並びにアセスメントをどのような形で行うかということでアセスメント・ポリシー等々を参考資料として提示させていただいております。以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 次,浅野委員,お願いいたします。
【浅野委員】  資料,丸3を用いて説明をさせていただきます。
 山形大学では,スライドの上の方に示しておりますように,体系的な教育課程を編成していく上でこの4つのステップが必要であると考えています。単位を設定する,次に目標設定,アライメントとアサイメントです。アライメントとアサイメントは体系化と教員配置の話になっていきます。
 まず,単位設定については,通常のカリキュラムマッピングでは余り言及されることはありません。しかしながら,日本の大学の現状を踏まえますと,前の会でも話しましたように,どのレベルで目標を定めるのかというのが非常に分かりにくい状況がございます。山形大学では,この単位設定に少し時間を割いて,どの単位でDPを策定するのかということを整理いたしました。その結果,6学部合わせて22単位となりました。この単位を決定する際に重視したことは,同じ学部であっても教育目標が異なるプログラムが複数ある場合,それぞれでDPを作成するということです。
 このように単位が決まれば,次に目標を定めることができます。そして,その目標を用いて,次の12ページにありますカリキュラムマップの様式に落とし込んでいくという作業をやっています。真ん中の部分がカリキュラムそのものになります。左に先ほど上で示しました右の図のカリキュラム・ポリシー,そして右にディプロマ・ポリシーを記載しております。本日,実物をお持ちすればよかったのですが,非常に情報量が多く,A3で印刷してもフォントがすごく小さくて見えないため,基本的な考え方を資料で示させていただいております。
 例えば,サイエンス・スキルという科目があれば,それはどのカリキュラム・ポリシーにのっとって編成されたものですかというものをまず簡単にチェックしていただきます。これは該当するかしないかを機械的に判断する作業ですので,負担はほとんど生じません。次に,ディプロマ・ポリシーとの対応関係を見ていきますが,この作業はやや負担が多くなります。具体的な手順としては,カリキュラムの緑色の網掛けが掛かっている授業の到達目標(先ほど沖先生のお話にもあったように,シラバスから転記)を踏まえて,該当する事業がどのディプロマ・ポリシーを達成しようとしているのかというのを見ようとしています。日本の多くの大学では,資料上の○,△などの記号を用いるのが一般的ですが,山形大学で1つだけ工夫しているのは,アメリカの大学の多くで取り入れているI・R・M・Aという記号を導入している点です。それぞれの記号の意味は注釈に書いておりますが,導入科目(Introduced)なのか,応用・強化する科目(Re-inforced)なのか,熟達させる科目(Mastered)なのか,あるいは最終的な評価をする科目(Assessed)なのかということを,DPと照らし合わせてプログラムごとに示しています。この記号が付されたのちは,多分IRの出番だと思いますけれども,プログラムごとに数値化していって,個々のポリシーとの対応を比率で見ていくことができます。
 時間の関係もございますが,右の下にあるグラフが重要なポイントになります。I・R・M・Aを用いていきますと,学年進行に沿ってそれぞれの科目が導入から評価まで,どういうスパンで行っているのかというのが見えるようになります。現状,残念ながら多くの場合それぞれのディプロマ・ポリシーの到達度をどの科目で評価するのかというのはなかなか対応付けられないという問題がありますので,現在我々はそこを検証しているという状況でございます。少し時間を超過して申し訳ありませんが,説明は以上です。
【日比谷座長】  大森委員,お願いします。
【大森委員】  大森です。13ページをごらんください。
 本学は超小規模単科大学という全国にあまたある大学の典型としてということでお話をさせていただきます。宿題が出ると,できてなくても何か出さなきゃいけないと思って,これはできてない勘違いの好例ということでお聞きいただければと思います。
 14ページをごらんください。本学ではここ数年かけて教学マネジメントの構築に努めてきました。今春の卒業生が初めて初年次からKYOAI Career Gateという仕組みで自己評価を重ねてきた学生たちですので,その結果も踏まえて次年度カリキュラムの見直しをするのが中期計画に載っています。その中で,本日の議題であるマップやツリー,これまでも作成してはまいりました。例を19ページから21ページに挙げておりますけれども,いずれも分野や進路,関連資格を念頭に置いて作られています。つまり,これまでのマップなどはDPを基にしたものになっていないということに最近になって気付くわけです。18ページにあるようにシラバスには共愛12の力との対応を記載するようになっていますので,まずはマップを作ってカリキュラムとDPの整合性を確認して新たなカリキュラムを作っていくというのが今の段階です。
 そこで幾つかの課題がございまして,15ページをごらんください。課題の1つですけれども,本学のように教学マネジメントの知見が学内にないところがたくさんあると思います。事実本学でもこのマネジメントの手順が前後してしまっているという実際が起こっています。ここまで気付くのに,また随分時間がかかっています。本当に独学で頑張ってきているので。今後これを進めていくときには,学内に知見のない多くの大学にとって羅針盤でありマニュアルとなるような指針・ガイドラインができると有り難いなと思っていますし,教学のリーダーである学部長なり教務部長なりの知見を深める取組というのも絶対に必要だなと感じています。課題の2はカリキュラムを精選する議論が出ていましたので,現実的な課題ですけれども,いろいろありますが,我々としては学生募集という最も大きな課題との関係も十分に考慮していく必要があると考えているところです。以上です。
【日比谷座長】  続きまして,佐藤東洋士委員,お願いいたします。
【佐藤(東)委員】  私もちょっと十分な資料ではないと思います。御案内がカリキュラム・マップ,ツリー,それぞれ1枚ずつということですので,参考にもならないかなと思っております。それよりもむしろ作成のプロセス,それから責任体制,チェック体制ということについて述べよということです。もともと中教審前期のときから,いわゆるアカデミックオフィサーが必要だということを言ったのは,カリキュラムをきちんとコントロールする人間が必要であるということで申し上げたつもりなのです。それが今度は統括副学長というような話になり,何かプロボーストという翻訳がされたり,余りはっきりしなくなってしまった。カリキュラムというのはどこが責任を持ってコントロールするべきかということですが,先ほどからお話があったように,教員集団や,教授会だけでやると,人が代わった際にまた方針が変わったりするということがあって良くないということです。
 私どものところよりむしろ日比谷先生の最初の1枚の方が雄弁に物を語っているというふうに思っているわけですが,私どものところは5つの学群が機能分化されて置かれております。現在,カリキュラムモデルは161異なったものがあり,それからマップが19それぞれあって,それぞれの教育課程にくっついているということを聞いております。現在は,学長の下に副学長が2人の体制ですが,大きく言うと1人はアカデミック・アフェアの担当の副学長,もう1人はエンロールメントですから,学生の受け入れ,それからもちろん卒業に至るまでの間のこと,プレイスメントも含めて全部やるということになっています。ちょっと人が足りないというよりも,分量からいってもう少し分けた方がいいだろうということ。カリキュラムコントロールについては,学業,学術なり研究教育担当の副学長が担当して,その下に学務部長がついて検討しているというような状態であります。以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,佐藤(浩)委員,お願いします。
【佐藤(浩)委員】  ありがとうございます。
 私の方は24ページからということなんですけれども,カリキュラムマップとかカリキュラムツリーという用語についても再検討する必要があるかなということで,こういうまとめ方をさせていただいております。
 まず, 25ページのような形で,マトリクス型のカリキュラムマップにも学年ですとか学期とディプロマ・ポリシーを対応させたようなものもあります。これはどこにどういう科目が偏っているのかとか,そういうことを見るには適したマップかなと思います。そして,27ページに書かれているようなマトリクス型は,よくある一般的な形だと思うんですが,こちらは授業目標とディプロマ・ポリシーが対応している。いずれもマトリクス型なんですけれども,その役割がちょっと違うかなと思います。
 作成の仕方なんですけれども,個々の先生方に丸を付けてもらったりするやり方は,体系性を確保するというのが非常に難しいので,コアになる教職員が,当初しっかりと丸を付けた段階で先生にお渡しするというのが基本的な流れかと思います。
そして,29ページ,30ページにあるようなチャート型のカリキュラムマップもあります。ちなみにこれは非常にきれいにできているんですが,なぜかというとデザイナーを入れてやったのできれいなんですね。というのは,普通の先生方が作成したマップというのが非常に残念なマップになることが多かったものですから,デザイナーを入れるとどうなるかなと思ってこんなのをやりました。これはきれいにできたということがよかったというよりは,デザイナーとのやりとりの中で自分たちのカリキュラムの構造が見えてきたという点に意味があったかなと思っております。デザイナーを使わない場合には,31ページにあるような形で,非常にアナログなんですけれども,附箋や模造紙を使ってワークショップをやることが多いんですが,これは非常に盛り上がるワークで,FDとしての効果は非常に高いと思っております。
チャート型というふうに言ったのは,国際的にはカリキュラムフローチャートとかという言葉で言われていることが多いのではないかと思います。この辺,ここで統一した見解を作っていただくのであれば,呼称はどちらでも構わないかなと思っております。以上でございます。
【日比谷座長】  続きまして,清水委員,お願いいたします。
【清水委員】  最初の宿題でありますカリキュラム編成の高度化について。本学では学修成果の可視化を実践しましたのでそのプロセスを報告します。1番目の学士力の策定は前回報告しました。全学で四十数個の学士力を策定しました。今日はカリキュラムマップとツリーということで,次のページには例示として全学共通のカリキュラムマップを掲げました。6つの共通の学士力(学士基盤力)が横軸,縦軸に共通科目を羅列してあります。丸の付けた部分の多い少ないというのが一目瞭然で,このことからもカリキュラム改革が必要であることがよく分かりました。本学では約1,200科目開設していますが、それぞれについてこうした形で全部マップを作成してあります。
 次のページは看護のカリキュラムツリーでございます。これもそれぞれの学部・学科,全学レベルで策定いたしました。
 2つ目の宿題であります学事暦の改革については,最初のページは,アメリカのUCLAとバークレー校は,同じカリフォルニア大学でもセメスター制とクォーター制を別々に敷いています。その理由は,差別化,差異化ということですが,一時期論争になったときのカリフォルニア大学における2つの学期制のメリット,デメリットを表にしたものでございます。このようにベストの学期制はないという中で,何に重点に置くかということで学期制が考えられなければなりません。セメスター制かクォーター制かを選ぶ基準です。前職の筑波大学で40年ぶりに新構想の3学期制をセメスター制に移行しました。そのときの改革事例を以下挙げてございます。教育の実質化を目指して,これこそ日本で最大の柔軟性のある学期制を実現しました。つまり、5週でもいい,10週でもいい,15週でもいいと、各部局にそれを自由裁量で任せたわけです。結果的には左にありますように,赤と青が半々になりました。つまり10週でやるところと15週でやるところに分かれた結果になっております。以下はその学事暦改革のねらいと特徴でございます。これによって大学のカリキュラムや教学のシステムの改革が併せて行われたということで参考にしてもらいたいと思います。
以上です。
【日比谷座長】  伹野委員,お願いします。
【伹野委員】  国立高専です。国立高専は全国に51校ありますが、全国共通の教育の質保証ということで,構築したシステムが40ページです。全高専共通の分野別教育の到達目標を記載したモデルコアカリキュラムに合わせて各高専がカリキュラムを作成します。それにはWebシラバスというシラバス入力システムを使って、各高専がそれぞれのシラバス作成を行います。学校全体や学科のカリキュラムについては,カリキュラムマネジャーが各学校におり,シラバス上の到達目標内容をチェックし、分野間の整合性やバランス等を確認しています。
 この図は,実際の操作画面上の図です。後ろのページをご覧下さい。学科の到達目標と到達水準の設定,到達目標に対する科目の割り当てを行うと,自動的にカリキュラムマップが設定されます。後でこれが確認できます。それに合わせた授業を行い,目標設定の確認を行うことができます。
 48ページに参考資料を付けましたが,PDCAサイクルと教育の質保証,高専教育全体のPDCAサイクルと高専教育保証システムとの関係です。このようなPDCAサイクルを作っています。左側のモデルコアカリキュラムから各高専のシラバスを作成し,教育を実践し、そしてその到達度を確認することになります。これはCBT(Computer Based Testing)で行い,その結果を教育改善やFDにつなげます。これを各高専で行っています。そして50ページの高専全体の教育質保証システムに展開しています。平成30年度からスタートしているところでございます。以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 松下委員,お願いします。
【松下委員】  55ページをごらんください。京大の場合はカリキュラムツリーではなくてコースツリーという言い方をしています。京都大学の事例としてきょうは理学部のコースツリーを持ってきました。
 京都大学は,全学部・全研究科,全てこういったカリキュラムツリーをウエブ上に公開しております。理学部は理学科のみの1学科で,しかも,必修科目がほとんどなく,レイトスペシャリゼーションのシステムを採っていますので,非常にコースツリーの効果が求められる学部になっています。このコースツリーをごらんいただくと,最初どんな科目でも選択でき,幅広く学んだ上でだんだん自分の専攻を決めていくというふうに色分けされているのがお分かりいただけるかと思います。
 55ページが理学部全体のもので,56ページはその中の地球惑星科学系のものです。こういうふうにそれぞれの系ごとにさらにコースツリーを作っておりまして,そしてその系ごとに各学年でどんな科目の履修が期待されるかをナンバリングと併せて説明しています。理学部はこれをウェブサイトで示すだけでなく冊子体でも配付していまして,毎年改訂版を出しています。
 コースツリーの作成等の全学的な進め方については,57ページをごらんください。教育担当理事の下に教育制度委員会というのがありまして,そこが大体の方向性や内容を決めて,各部局に依頼を出します。その依頼にどう対応するかについては,FD研究検討委員会と私たちの高等教育研究開発推進センターが,勉強会,コンサルテーションなどを通じて部局の支援を行っています。資料に,第10回「コースツリー勉強会」の模様を載せていますけれども,分野によってコースツリーの形が様々なので,このときは,9つのタイプに分類してお示ししました。理学部のものは科目型に似ていることが見てとれるかなと思います。以上です。
【日比谷座長】  ありがとうございます。
 それでは,森委員,お願いします。
【森委員】  ありがとうございます。では,関西大学の事例を申し上げます。58ページからになります。
 所属大学のマップとツリー事例をと指示がありましたので,ぼんと出してしまいましたら,申し訳ありません,A3の物すごい長いものが添付されてしまいました。これは外国語学部の全ての授業になります。
 今回の議論で大学全体の教育目標はどうなっているかなと思っております。関西大学の場合,3つ大きな特徴があります。まずは,単科大学の寄せ集めではなく,関西大学○○学部とするために,関西大学全体と各学位課程の構造性を意識したというところにあります。2点目はアセスメントすることを前提として作っているということです。そして3つ目は,私ども専門教員の学部への密なコンサルテーションということだと思います。
 全体の流れを御説明申し上げます。まずは大学全体のポリシーをしっかり決めるということでございます。これは学力の3要素に区分して大学執行部の方で作りました。その後に大学全体のポリシーに基づき,関西大学のキーコンピテンシーを策定し,それらを学年別に記述語に分けたベンチマークもそのときに作成してございます。もう一つ申し上げれば,それをどう測るかアセスメント・プランを最初に作ってしまうということで,逆向き設計を意識し,ポリシーとアセスメントを往還しながらこの2つに取り組みました。 この後に,大学のポリシーと同じ枠組みで各学位課程の3ポリシー,全部で29あるんですけれども,それを策定していくといったところでようやく今回のこのテーマになるのかなと思います。この中でアセスメント・プラン,マップ,ツリーというものを作っていたということでございますので,大学全体と学位課程の整合性はとれているということです。以上でございます。
【日比谷座長】  大変お待たせしました。最後に,両角委員,お願いいたします。
【両角委員】  私だけ資料もなくて申し訳ありません。ほかの先生方は学長先生ですとか学長先生の仕事を一緒に推進する立場の先生方からの説明ということなんですが,私はどちらかというとそれが降ってくる学部の一教員の立場ですので,全体については把握しておりませんで,あくまでも東大の教育学部でというところで,かなりちょっと違う話になるかと思います。また,東大の場合は1・2年生は駒場の教養学部の方でやっていて,教育学部でと言ってもあくまでも3・4年生のところだけで,ちょっと前期に何かやりたいなと思ったら2年生の持ち出し科目を増やすぐらいの手段しかないことも他の大学とは異なります。
 基本的には,想像どおりかと思いますが,東大は先生たち個人はとても教育熱心ですが,組織的な取組は弱いという印象でして,学部の中で専門分野別にコースに分かれていて,基本的にはそこでカリキュラムを作っています。その中では体系性ですとかいろいろなことを議論されているとは思いますが,例えば学部全体で作っている3ポリシーとの関連を真面目に皆が考えているかというと,普通の教員はそういうことは考えていないような感触を持っています。また,全学から例えばナンバリングはこういうルールでやってくださいとか,成績評価を厳格化するからこうやってくださいと上から基本方針が降ってきて,そうすると学部の中の教務委員会で議論して教授会で決めていくというやり方をするんですけれども,一つ一つの手段として捉えるので,それだけが進んでいって何のためにそれをやっているのかとか,ほかのものとの関連性とか,そういったところがなく局所的に一部だけ進んで,肝心なところが余り理解されていないような印象を持っています。
【日比谷座長】  皆様,時間管理に御協力いただきましてありがとうございました。
 それでは,これから今までの御発表も踏まえ,先ほど事務局から説明がありましたが,きょうは資料5の○についてこれから御議論を頂ければと思います。
 どうぞ,札をお立てください。
 では,益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  資料5の5ページ。個々の授業科目レベルというところ上から2つ目の○のところですね,アクティブ・ラーニングについて。アクティブ・ラーニングへの転換が必要であるという点ですが,最近の新卒の学生は大変よく勉強してきている方も多くいらっしゃいます。しかしながら,勉強で専門知識を持っても,それをうまく伝えることができない。やはり大学と社会で大きく違うのは,大学生の間はほぼ年齢が同じ人同士の環境にいるわけですが,社会に出ると,上は60,70歳の人までいます。しかも,意見も自分にとってプラスの人もマイナスの人もいるという中で専門知識をどう活用して結果に繋げていくのかというのは越えなければいけない重要な問題です。
 初等中等教育において学習指導要領の改訂があったときに,アクティブ・ラーニングについては随分議論があったと思いますが,私たちのこの議論を進めていく中で新しい体系や新しい考え方が出来上っていく。その中にどうやってこのアクティブ・ラーニングやコミュニケーション能力向上の方策を取っていくか,意見の違う相手と専門知識をどう意見交換していくかの指針があればと考えます。私の学生の頃は,そういったコミュニケーションの向上の鍛錬の場というか、訓練の場というのはゼミでしかなかった。あとはほとんどが大きな階段教室での一方的な授業でしたが,最近は随分違っていると聞いていますが,一方的な大きな階段授業の中においてもコミュニケーション能力が必要なものもあるとも思います。その点について是非御議論を頂きたいと思います。
【日比谷座長】  佐藤(浩)委員,お願いします。
【佐藤(浩)委員】  今の点に関連する意見が1点と,もう1点ございます。
 まず1点目なんですが,5ページの今の御指摘のアクティブ・ラーニング,それからその下はICTの活用という欄がありますが,これは教育方法について言及されている部分かと思うんですね。もちろんアクティブ・ラーニングは非常に重要ではあると思うんですが,ここで大事なのは,目標に応じた適切な教育方法を選択すべきということを書くべきであって,レクチャーでもあっても目標に合致していればそれは構わないと思います。少しこの書き方を検討した方がいいんじゃないかなという印象です。
 それから,そこの同じページの1つ前の○のところに,個々の科目の到達目標について「「何ができるようになるか」を意識して設定すること」という表現が出てまいります。これは2ページの最初の○の丸1の中にも同じ表現が出てくるんですが,この話は最初の学修目標の設定というところに持っていくべきであって,ここは教育課程の編成をする際にはどういうことに気を付けるべきかという編成の原理について書いた方がいいのではないかと思っております。例えばカリキュラム論の大家と言われるタイラーというのがいますけれども,彼が1940年代に言っているのは,カリキュラムには統合性が非常に重要であるとか,連続性が大事であるだとか,反復性が大事であるということです。,目標を効率的・効果的に達成するためにそういった原理に基づいて編成するのが大事だということを書かれるといいと思います。以上でございます。
【日比谷座長】  それでは,溝上委員,お願いします。
【溝上委員】  溝上です。今の佐藤浩章委員の話とほぼ同じなんですが,アクティブ・ラーニングは私はとても大事だと思ってきました,推進してきましたので。言うまでもないんですけれども,今益戸委員がおっしゃったコミュニケーション力なんかも本当に大事で,特に世代間とか大事なんですが,教学マネジメントの指針といいますかそこに落とし込んでいかないといけないので,書き方の問題だと思うんですが,そういうアクティブ・ラーニングが非常に大事だと思う人間においても,そこはちょっと落としてやっぱりDPとか学修目標に位置付けた形で,結局アセスメントをいろいろな層でしていくという話だと思うんですね。グランドデザイン答申を受けてこの委員会ができているという最初の御説明だったんですけれども,さっき沖先生の説明の資料にもありましたアセスメント・ポリシーですね,これは濱名先生が一生懸命おっしゃってグランドデザイン答申に残ったのだと思うんですけれども,その言葉をやっぱり入れた方がいいなと思います。いろいろな層でのアセスメントが全体であったりカリキュラム,授業のレベルでありますけれども,やっぱりそこを全体で落とし込んでいく言葉はアセスメント・ポリシーだと思いますので,そこから各レベルに落とし込んでいくということをどこかで書いていく書き方だと思うんですけれども,お願いできればと思います。
 それから,もう一つは簡単なことですけれども,先ほどの皆さんの事例の報告を伺っていて改めて思いましたが,教学マネジメントというのは非常に抽象度の高い指針になっていきますので,やっぱりこういう事例集ですね。特色GPなんかが法人化の後に結構取り組まれて事例集がたくさん出て,たくさん事例報告会がなされたと皆さんも記憶にあると思うんですけれども,あそこは結構全国の教育改善が進んだところだったと思うんですね。ですから,何かそういうのを併せてお願いできればなと思います。以上です。
【日比谷座長】  それでは,森委員,吉見委員,大森委員の順でお願いいたします。で,その次,松下委員。
【森委員】  今,溝上委員がおっしゃったアセスメント・ポリシーに関しては私も賛成です。ただ,ポリシーっていつも何となくよく分かりにくくて記述語になっているので,私はアセスメント・プランの方がいいのではないかなと思ったりしています。ただ,ちょっとこれはハードルが上がってしまいますので,要検討かなと思います。
 私が申し上げたかったのは,先ほどの大学全体の話ってどうするのというところで,これは全部ロジックの話になるので,いきなり学位から始まると,じゃあ全部単科大学なのみたいな話になってしまいますので,もちろん枠外でいいとは思うんですけれども,大学全体の教育目標の明確化とか,あとはコンピテンシーの策定みたいな話は少し入れるということが必要なのではないかと思っています。
 あと,どうしてもちょっと気になるのは,私立としましてはいわゆる特徴である,例えば準正課であったり正課外であったりとか,もっと言えば教養教育の部分も,あれもプログラムなんですね。正に学位課程というのはくさび型等で皆さん作られているその一翼を担っているわけですから,今ここ全体では学位課程プログラムという名前で全部来ているんですけれども,これは教育プログラムレベルということと実はイコール――学位は出ていないですが――イコールではあると,レベルは少し小さくなりますが。そういう意味では,学位プログラムのなかでもいろいろな教育プログラムがくるくるPDCAが回っていますので,何となくそういう構造性が見えたらいいなと思っています。
 そういう意味では,平野さんが頑張って作ってくださったこの資料3なんですけれども,私とすればもう一歩かなと思ったりいたします。以上でございます。
【日比谷座長】  吉見委員,お願いします。
【吉見委員】  2点意見を発言させていただきたいと思います。一つは,先ほどの3ページの真ん中辺りの○ですけれども,従来の専攻を超えた幅広くかつ深いレベルの教育が求められる。主専攻・副専攻の活用などという文言がございます。
 ここで恐らく重要なのは,なぜ従来のディシプリンを超えた教育,あるいは主専攻・副専攻が必要なのかという理念,あるいは理由だと思います。私は学問体系といいますか,現代社会における学問の在り方そのものは大きく変容しているということが根本にあると考えています。グローバルに複合的で流動的な社会,その中での学問というのは従来のように単線的で,そして垂直的な学問だけでは成り立たないということが多く認められていることでございます。従来の単線的といいますのは,19世紀以来例えば物理学とか化学とか社会学とか経済学とか,これはもう縦の体系的として発展してきた学問で,これはこれでとても大切なんですね。だけれども,今私たちが直面している課題というのは,例えば環境であったり情報であったり高齢化であったり都市だったりいっぱいあります。これらの課題に対して我々が学問体系を作っていこうとすると,縦だけではだめだ。じゃあそこを横幅広くやればいいのかというと,それだけでもだめで,やっぱりそれぞれのイシューオリエンテッドな学問の知というものをそれぞれの学生たちが身に付けていく。そのためにはやはり従来の専攻を超えた学問,あるいは従来の専攻をまたいだ教育の仕組みが必要なのだということだと思います。
 そうすると,必要なのはやっぱり先ほど森委員が言ったことと重なるんですけれども,学部・学科,あるいは教育プログラムレベルでどれだけやっても,それはそれぞれの学部・学科のことを一生懸命やりますけれども,それを超えたデザインというのはできませんから,大学全学のレベルといいますか,ユニバーシティのレベルでの仕組み作りというかディプロマ・ポリシーをどう作る仕組みを作るかという,ユニバーシティレベルのディプロマ・ポリシーの設定が決定的に重要になってくると思います。
 それからもう一点ですけれども,これは2ページに戻っていただいて,丸ポチの最初のところに出ている,要するに学修者本位の教育の観点からというところですね。教学マネジメントの議論というのはどうしてもトップダウンになりがち,つまり,いろいろな仕組みを作って,上からこういう仕組みで先生方にそれを御納得していただくということ,これはもちろん必要なんですけれども,しかしこの委員会で議論すべき一番ポイントは,先ほどの日比谷先生の冒頭のお話にもございましたが,学修者本位のプログラムをどういうふうに作っていくのか。学修者本位ということはどういうことかというと,学生の能力,それが1つですね。それから学生が勉強のために使える時間,それから学生の意欲。つまり,学生一人一人の能力と時間と意欲というものをベースにした教育というものがどこまでできるのかという見通しが必要なんだというふうに思います。毎回申し上げていることですけれども,今の教育プログラムの体系は,まったく学生,学修者本位になっていない。学生が無限に可能性を持っていて,無限に時間があるかのように作られているということですね。学生の時間は無限ではありません。バイトもしているでしょうし,それからサークルもやっているでしょうし,そうすると限定された時間の中で学生たちに最高の学びをさせるためには,やっぱり幾つまでの科目が限界なのか。学生に教える科目,1週間に学生が学ぶ科目の限界値はどこか,学生たちがこういう形なら意欲を持つというものは一体,ピーク意欲を引き出すためには何なのか。これは何らかの出会いだと思いますけれども,先生との出会いだったりフィールドとの出会いだったり,テーマとの出会い,それをどういうふうに埋め込んでいくかという,この観点がないとやっぱり上からの仕組みとしてトップダウンで落ちてくるんだけれども,学修者本位には最終的にはならないと,こういう危惧がございますので,是非その観点を入れていただきたいと思います。
【日比谷座長】  では,松下委員,お願いします。
【松下委員】  2ページに書いてあるカリキュラムマップとカリキュラムツリーのことなんですが,京大ではカリキュラムツリーは作成してもらっていますけれども,カリキュラムマップは作成を求めていません。カリキュラムマップは往々にして非常に形式的になりやすいと思っております。一教員として見たときにもそういうふうに感じます。
 というのが,先ほど沖委員の御発表の中で,例えばハーバード大学のこのくらいのシンプルさが望ましいというふうにおっしゃったんですが,例えばこのぐらいのシンプルさでDPを作成したときに,そのDPに各科目がどれだけ寄与しているのかというふうに丸を付けても私は余り効果がないと思うんですね。scopeがカリキュラムマップで確定できるというお話だったんですけれども,このくらいの抽象度の高いものですと,そこには内容に関わるものが何も入っていないので,それによってカリキュラムのscopeを確定することは難しいと思います。その上の工学科の例ぐらいですと,もしかしたらscopeを確定するのに寄与するのかもしれませんが。ですので,今望ましいと言われているくらいの抽象度を持ったディプロマ・ポリシーでカリキュラムマップを作った場合には,私は先生方に非常に形式的でうんざりする作業を強いることになってしまうと思っています。実際,京大では,カリキュラムマップの作成はお願いしていません。教学マネジメント指針に盛り込むべき事項として,カリキュラムマップとカリキュラムツリーが併記されていますけれども,どちらも作成しなさいというようなことになると,かなり反発が出てくるのではないかと予想しております。これには異論のある先生方もいらっしゃるかと思いますので,御意見をお聞かせいただければと思います。
【日比谷座長】  失礼しましたが,大森委員。それで,佐藤東洋士委員,清水委員,小林浩委員,浅野委員でお願いします。
【大森委員】  ありがとうございます。
 私も2ページのところなんですけれども,ちょっと細かい話になりますが,2点ありますが1つは意外と議論に出てこないナンバリングです。ナンバリングに関しては,もちろん学生が分野と系統を把握しながら履修に資するということが1つ重要なポイントだと思うんですが,もう1つというか2つというか,大学間の科目のやりとりというか,そういうところのレベル感。それからもう1つは社会にお示しするGPAの質保証というところなんだろうと思うんですが,これはどこまで行くのか。つまり,今本学でもナンバリングは済んでいますけれども,やっぱり本学独自の形でのナンバリングがなされていてと思うんですね。そこを共通のものにしていくのか,いや,日本ではまだしないんだということならそれでオーケーだと思うんですけれども。そうすると,系統のためだけということになるとツリーができればナンバリングがなくてもいいんじゃないかなとか,そんな気もしてくるわけで。ただ,ほかの大学との整合性とかGPAの質保証という意味なんだよということであれば,ある程度の指針があって,そこに沿ってみんなの大学がやっていくという必要があるので,そこをちょっと議論が必要なんじゃないかなと思っていることが1つです。
 もう一点は,前回の議論とそれから今の副専攻とかの議論と絡むんですけれども,マップというのはカリキュラムを見直すための,学生にとってはもちろん指針として有効ですけれども,マネジメント上は手段ということになると思うんです。結果としていいカリキュラムができていくためのものだとしたときに,DPに向かっていこうとすると、これまでのぎろんでも、その記述も幾つかあるわけですけれども,余計な科目はどんどん排除していくことになる。すると科目の多様性というのがどんどん圧縮されていく中で,全部必修科目になっていくというのが究極の姿なんだろうなと。そして科目数も減らしていくと。そういう,何かそこら辺がまだしっくりこないという感じですね――というところが実はありまして,その辺が何か,つまりそういう専門の人がいない大学の方が多い中でしっくり来るような説明がガイドラインの指針の中でできていくといいんだろうなと思っているところです。以上,2点でした。
【日比谷座長】  じゃあ,佐藤東洋士委員,お願いします。
【佐藤(東)委員】  長くなってはいけませんから短く。
 きょうの資料の3ページのところに,やはり○のところに「一般教育・共通教育においても幅広い」云々というのがあるんだけれども,実は設置基準からいうと,1表の教員と2表の教員というのがあって,2表教員は大学に共通する教育をと言っていたんだけれども,最近の設置そのほか学校の形態を見ると,この精神が余り生かされてないんじゃないか。大綱改以降の話になると,この2表教員というのはどういうふうに扱うのかということはこれからちょっと課題なのかなと思っています。
 それから,全体で言うと,やはり今日本の大学,国公私立全部で768かな。今度専門職大学なるものが3増えて,大学というカテゴリーで言うとどんどん増えている。それぞれ規模も全く違う。そのときに,議論として言えば,それぞれの大学でそれこそ吉見委員の言われるように,学生本位でカリキュラムを作って教育課程を作るというのはとても大切なんだよね。その中で何となく教える側,大学側がカリキュラムツリーとかカリキュラムマップみたいなものを定型的に作っていくよりそれぞれの学校がやはりある程度そこはしていかないといけないかな。そんな感じがするんですよね。もちろんこれはそれぞれ取り組んでいることですからそれでいいんだけれども,そうしたい。
 それから,先ほど沖委員からハーバードのコアカリキュラムの例があったけれども,これは高等教育の指針というのは国内だけを見ていればいいのかどうかといったら,やっぱりグローバルな視野も置いていかなければならないとしたら,日本の中のケースのみじゃなくてもう少し諸外国でどういうふうにこの学生本位の教育というのをしているのかというようなことをきちんと,まだこれは1年間ぐらい今期の任期は終わって後でもあるわけだろうから,そこで是非議論をしていただけたらいいなと思う。参考になると思いますね。
【日比谷座長】  じゃあ,清水委員,お願いします。
【清水委員】  この間,欧米のシステムが限りなく入ってきて,今日の資料でも欧米のシステムがふんだんに見られますけれども,一つ発想を変えて日本の大学が誇れる大学産業は何かというふうに考えた場合,大学体育あるいはゼミや卒業論文が該当すると思います。
 卒業論文は御存じのように戦前は科目の外にありましたけれども,戦後,専門の科目となって入ってきました。その卒業論文は大学の学修成果を図る上での重要な位置を今でも占めていると思います。今、およそ8割の大学・学部で実施されています。今日の授業科目・教育課程という項目の中に,その卒業論文という言葉が1つも出てこないというのはまずいなと思います。日本が誇れるものはもっと頭出しをして,これを教学マネジメントの充実の上で生かすことも私は必要だと思います。ゼミとか大学体育もありますけれども,少なくとも卒業論文というのは学修成果の可視化の測定にもつながるものでありますので,是非そのあたりは入れてもらいたいというのが意見です。
【日比谷座長】  では,小林浩委員。
【小林(浩)委員】  大学の外から見た視点という点で2点お話をさせていただきたいと思います。1つは森委員,吉見委員がおっしゃった大学全体レベルというところがやはり気になりまして,特に私立大学は建学の精神があって教育の理念に基づいた教育目的,目標を持ってやられているわけですけれども,外から見たときに,この大学レベルの文章だけ読んでそういったところが見えているかというと,やはり見えてこないような気がします。特にこれから大学の個性というのは非常に重要になってくると思いますし,先ほど吉見委員がおっしゃった主専攻・副専攻ということだけではなくて,教養教育というのも大学独自の教養教育というものが改めて見直されていたり,やはり企業から見てもどういった人材を育成するかというところがそういうところに理念として表れていると思いますので,こういったところもやはり入れていく必要があるんじゃないかというのが1点です。
 もう一点は,大森委員もおっしゃったところに近いと思うんですけれども,ナンバリングのところで,学内外に教育課程の体系性を明らかにする観点からという言葉が入っているんですが,学外から見たときにそのナンバリングというのが大学独自のナンバリングなのか,例えば経営学なら経営学を取るための標準的なナンバリングなのかというのが、ちょっと外から見たときに分からなかったものですから,ここら辺の議論が必要なんじゃないかと思った次第です。以上です。
【日比谷座長】  浅野委員,お願いします。
【浅野委員】  時間も限られていますので,手短にお話しいたします。
 本日提示された資料3の図について,実践している者といたしましては,先ほど説明いたしましたことと非常に合致していると思います。
 他の委員も御指摘されていましたけれども,基本はやはり学位プログラム,教育プログラムというのがベースになるんだろうなというふうに思います。そうなると,カリキュラムツリー,カリキュラムマップなどをどこまでガイドラインで具体的に書くかという話ですが,教学マネジメント上,やはり避けて通れないツールだと考えています。と言いますのは,目標があってカリキュラムがどう対応しているのかというのは何らかの形で示さないといけませんので,手法はいろいろあると思いますが,次回以降,議論になるであろう学修成果の可視化を考えますと,具体的な目標がなければ測定しようがないという問題に直面することになります。そのため,カリキュラムツリー,マップなど名称はいろいろあろうかと思いますけれども,こういったツールを用いてCPやDPを具体化し,そのうえで学修成果を可視化していくことが重要であると捉えております。
 ただ,一方で,作成にはそれなりの負担を要するため,容易でないのは事実です。しかしながら,実際に実践して感じますのは,学内で教育改善やカリキュラム評価において,重要なコミュニケーションツールになります。要は,大学全体のレベルと個々の授業科目レベルをつなぐことができ,教育についての抽象的な議論だけでなく,具体的にカリキュラムがどうなっているのかということを議論するうえで,非常に良いツールになります。
 先ほど佐藤委員がおっしゃっていたことに絡めると,国際通用性という点からも重要ごとが増してきております。少なくともアメリカの実情を見ていますと,適格認定団体の半数はカリキュラムマップの提出を必須としています。これを出さない限り,適格認証が得られないというような状況になってきておりますので,そういったことからも,日本の大学においても重視していく必要があると考えているところです。以上です。
【日比谷座長】  どうぞ。
【小林(雅)副座長】  いろいろきょう意見が出て非常に参考になったと思いますけれども,幾つか非常に重要な点としてやはり多くの方がおっしゃっていたことは目標と手段の関係ということで,ここで議論しているのは多分に手段的なこと,あるいは道具的なことが非常に多いわけですけれども,いわゆる目標との関係でどうするかということが非常に重要だということです。
 きょうの中でも,例えばこういうことをやること自体がFDになるとか大学教育の改善につながっているという意見が出ていますし,それは非常に重要な指摘だと思います。それから,余り細分化しても意味がないというのもこれも非常に重要な指摘だと思いますし,その辺りは各大学が工夫すればいいというのがやはり最終的な合意だと思いますので,ここでは余り細分化する必要はない。ただし,余り抽象的なものでも意味がないので,その辺をどうするかというのが大きな課題だろうと思います。
 それからもう一つは,そのこととも関連するのですが,やはり言葉がまだ混乱しているところがありまして,これは前回の将来構想部会あるいはワーキングでも出たわけですけれども,教育プログラムというものと学位プログラムですね。これは学位の方が上位にあると考えていますけれども,教育プログラムという言い方も確かにあるし,それが重要だというのも言うまでもないことですから,その辺の整理が必要だということ。それからこれも非常に,前回のワーキングで,あるいは将来構想部会でも,議論になりましたけれども,アセスメント・ポリシーなのかアセスメント・プランなのか,これはアセスメント・ポリシーということが非常に重要だということはきょうの沖委員の発表でもよく分かるわけです。けれども,3ポリシーに加えて4ポリシーにするというのは混乱するというような意見もありますので,その辺はこれからこの委員会で検討していけばいいことだと思いますが,余り混乱がないように進めたいと思っていますのでよろしくお願いします。
【日比谷座長】  皆様,活発な御意見ありがとうございました。
 本日の議題は以上でございます。第9期の中央教育審議会はあしたを持って終了をしますので,この委員会につきましても第9期における活動はひとまず終了ということになります。
 それでは,事務局からお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  本日は本当に活発な御議論を頂きまして,まことにありがとうございました。大変恐縮なんですが,私,資料7の説明をしておりませんでしたので,この場をおかりして少々お話を申し上げたいと思います。
 前回の御議論の中で個々の学位プログラムというもののお話かと思いますけれども,どのようにして必要な水準を確保していくのか,そういった枠組みというものも一定必要ではないかといった御議論がございました。先生方御案内かと思いますけれども,平成20年の答申「学士課程教育の構築に向けて」を受けまして,日本学術会議に高等教育局長から依頼をいたしまして,「大学教育の分野別質保証の在り方に関する審議」を依頼したわけでございます。その後,参照基準の策定というものが提言されたわけでございまして,今策定の審議を学術会議で行っていただいているということでございます。24年の質的転換の答申においても引き続き審議を進めるようにということを依頼しているという経緯がございます。
 この参照基準というものにつきましては,その学問分野というものでどのようなものが学生が身に付ける基本的素養なのかとか,学修方法とか学修成果の評価方法の基本的な考え方,こういったものを盛り込むという形で作っていただいておりまして,各大学がこういったものも参考にしながらしっかりと教育を作り込んでいくということが1つ想定されたわけでございますけれども,現在どういう状況にあるのかということで配らせていただいているものでございます。平成31年の1月30日現在で今31分野ということになっているわけでございます。平成24年8月31日の経営学分野から始まりまして,今医学分野までということになっているわけでございますが,また化学の分野について検討されているという状況でございます。こういったものもしっかりと学術会議で対応していただいてございますので,今後議論をする際には一つの参照する正に基準という形で使っていくということもありうるかなということで御紹介をさせていただいたというのが資料7でございます。
 すみません,質疑応答の時間もない中でこういうことを御説明したのは大変恐縮でございますけれども,以上でございます。
 その上で,先ほど座長から御案内がございましたように,第9期の中央教育審議会はあすで終了ということでございまして,本委員会につきましては,第10期がまた中央教育審議会大学分科会が発足した後にお諮りすべきということではございますけれども,改めて設置を大学分科会でお認めいただいて引き続き御審議を頂きたいと考えているところでございます。
 本日の資料につきましては,また郵送を希望される先生につきましては郵送希望の旨附箋に書いて机上に置いておいていただければ勤務先に郵送させていただくということでございます。第9期,一つの区切りということでございますけれども,活発に御議論いただきましてありがとうございました。
【松下委員】  すみません,今,化学分野についてとおっしゃったんですが,教育学分野も今検討中ですので,よろしくお願いいたします。
【平野大学改革推進室長】  大変失礼いたしました。
【日比谷座長】  ありがとうございました。
 それでは,本日の委員会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。


―― 了 ――

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