制度・教育改革ワーキンググループ(第20回) 議事録

1.日時

平成30年10月25日(木曜日) 10時~12時

2.場所

TKP赤坂駅カンファレンスセンター ホール13B(東京都港区赤坂2丁目14-27 国際新赤坂ビル東館 13F)

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(委員)日比谷潤子委員
(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,鈴木典比古,伹野茂,濱名篤,福島一政,本郷真紹,宮城治男の各委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長,玉上大臣官房審議官(高等教育担当),森大臣官房審議官(高等教育担当),平野大臣官房審議官(総合教育政策局担当),岩本文部科学戦略官,蝦名高等教育企画課長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,時刻になりました。委員の先生何人か,まだお出でになっていないかと思いますが,所定の時刻になりましたので,第20回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。御多忙の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 報道カメラ等のカメラ撮影は,議題に入る前までの冒頭部分のみとさせていただきますので,よろしくお願いいたします。
 前回は,宮城委員から主体的な学びを確立するための実践的な教育改革の方向性について御説明をいただきまして,委員の皆様から御意見を頂戴いたしました。また,制度・教育改革ワーキンググループの審議まとめ(案)について,委員の皆様から御意見を頂戴いたしました。
 本日の議題は,我が国の高等教育に関する将来構想についてです。本ワーキンググループの審議まとめの内容が盛り込まれた答申(案)につきましては,10月5日に開催されました中央教育審議会総会の審議を経まして,10月10日からパブリックコメントを実施しております。
 本日は,答申(案)全体について,ワーキンググループの皆様の御意見を頂きたいと思っております。
 まず,事務局の異動がありましたので,御紹介をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。10月16日付で局に異動がございましたので,御紹介させていただきます。玉上大臣官房審議官,高等教育局・高大接続担当でございます。
【玉上大臣官房審議官】  玉上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  森大臣官房審議官,高等教育局・科学技術政策連携担当でございます。
【森大臣官房審議官】  森でございます。よろしくお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 それでは,事務局から,本日の配布資料についての確認をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。本日の配布資料の確認をさせていただきます。資料1が,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申(案)」の要旨,それから資料2が,答申案の本体でございます。また,資料3で,このワーキンググループの審議まとめをお配りさせていただいております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  お手元にございますか。
 それでは,議事を進めます。冒頭でも申し上げましたように,2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申(案)であります。
 それでは,事務局から御説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申(案)」について御説明をさせていただきます。基本的には資料2に基づいて御説明をさせていただきます。なお,この答申案をまとめるに当たって,制度・教育改革ワーキンググループの方でおまとめいただきました審議まとめ,資料3でお配りさせていただいておりますが,これを,そのとき御出席が鈴木主査はかないませんでしたので,小林主査代理から将来構想部会の方に御報告をしていただきまして,それも踏まえて,この答申案に盛り込まれているという状況でございますので,まずそれを御報告させていただきます。
 では,資料2に基づいて内容の御説明をさせていただきます。めくっていただきまして,目次でございます。「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」から大分たっておりますけれども,中間まとめから大きく変わったところというのが,「はじめに」というのが非常に長いものに中間まとめではなっておりましたけれども,まず「はじめに」はコンパクトに2ページぐらいに収めまして,一つ目として,大きな1のところで「2040年の展望と高等教育が目指すべき姿―学修者本位の教育への転換―」ということで,ここに書いてあります1,2,3というような整理をさせていただきました。冒頭に来ておりました社会変化の方向は,2のところの「2040年頃の社会変化の方向」というところで整理をし直しておりまして,まずどのように高等教育がなっていくべきかということを,目指すべき姿というところで書いた上で,社会の変化の方向,それから高等教育と社会の関係ということで整理をさせていただきました。
 二つ目と三つ目,大きな2と3のところが,特にこのワーキングで御議論いただいたことが基本的にベースとなって入っているところでございまして,ここも最初は「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」のときは多様な教員から始まっておりましたが,学生本位,学修者本位ということを考えますと,学生からスタートするべきだろうというような整理のし直しで,学生,教員,それから柔軟な教育プログラム,ガバナンス,そして「強み」の強化というように整理をさせていただいております。
 三つ目が「教育の質の保証と情報公表」というところで,これもワーキングの議論が中心になっているところでございます。それ以降が,将来構想部会本体で議論がされてきたところでございまして,「18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置」についてが四つ目,それから五つ目が「各高等教育機関の役割等」で,そこには大学院部会での御議論も入っているというところでございます。
 六番目が「高等教育を支える投資」について,そして七番目が「今後の検討課題」,「おわりに」ということで整理をしたところでございます。
 本文に入りまして,2ページ目からでございます。「はじめに」というところでございますけれども,「はじめに」の最初の方は高等教育の多様性,それから必要性ということを整理させていただいた上で,めくっていただきまして3ページ目のところで,三つ大きくどのようなことを述べているかということをまとめているところでございます。
 一つ目が,高等教育機関がその多様なミッションに基づき,学修者が何を学び,身に付けることができるのかを明確にし,学修の成果を学修者が実感できる教育を行っていること。このための多様で柔軟な教育研究体制が各高等教育機関に準備され,このような教育が行われていることを確認できる質の保証の在り方へ転換されていること。これが3ページの2段落目からでございますが,そこがまず一つでございます。
 それから次のところが二つ目で,18歳人口が2040年には88万人に減少して,現在の7割程度の規模となる推計を前提に,教育の質を維持向上するための規模の適正化を図った上で,社会人及び留学生の受入れ拡大が図られていることが二つ目でございます。
 それから三つ目が地域の関係でございますが,地域においても高等教育のグランドデザインが議論される場が常時あり,各地域における高等教育が地域のニーズに応えるという観点からも充実し,それぞれの高等教育機関の強みや特色を生かした連携や統合が行われていること。このような観点から整理をされているというところを「はじめに」に入れております。
 4ページ目からが本体に入ってきますけれども,まず2040年の展望と高等教育が目指すべき姿,学修者本位の教育への転換というところで,2040年に必要とされる人材というところを,OECDをはじめとする様々なところで議論をされている21世紀型スキルや汎用的能力,このようなことが必要ではないかというような整理を4ページ目はしているところでございます。
 当然,中央教育審議会においても,めくっていただきました5ページの冒頭で平成20年12月24日中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」ということで,学習力の参考指針も整理をされているところでございます。これに加えまして,データサイエンスを含めた基礎的な素養を持っていく必要があるというのを,その下の段落に「なお」以下で書かせていただいておりまして,このような人材をどのように育てていくのかというところを,次の6ページ以降に,まず「我が国の世界における位置付けと高等教育への期待」というところにつないでいるところでございます。ここも中間まとめからそれほど大きく変わっておりません。
 めくっていただきまして,7ページ目で高等教育が目指すべき姿ということで,これは中間まとめのときは本体の「はじめに」の後に書かれていたところを前に持ってきておりますけれども,目指すべき姿として,「個々人の可能性を最大限に伸長する教育」に転換していくというところで,そこに五つで書いてあるようなことを各大学では取り組んでいただく必要があるのではないかというような整理をさせていただいているところでございます。
 それから「2040年頃の社会変化の方向」が8ページ目からでございまして,SDGsが目指す社会,めくっていただきまして,「Society5.0第4次産業革命が目指す世界」,それから10ページ目で「人生100年時代を迎える社会」,「グローバリゼーションが進んだ社会」,そして11ページ目が「地方創生が目指す社会」というところでございますけれども,特に10ページ目の,「人生100年時代を迎える社会」というところにおきましては,段落が二つあるうちの二つ目のところですけれども,このワーキングの中でも御議論がありました単線型のキャリアパスではなく,マルチステージの人生への変化が予測される中で,様々なキャリアの可能性を時間を掛けて模索する時間と柔軟性を持つ仕組みづくりが重要であるというようなことも入れさせていただいているところでございます。
 それから,めくっていただきまして11ページから12ページのところでございますけれども,「2040年を見据えた高等教育と社会の関係」というところで整理をさせていただいておりまして,まずは「学問の自由」「大学の自治」というようなことも,また「建学の精神」「ミッション」ということは12ページに書かせていただいておりますが,13ページをめくっていただきまして,ここは,これまで入っていませんでしたけれども,研究力の強化と社会との関係性を一つのパッケージとして加えているということと,産業界との協力・連携の在り方,特にここもこのワーキングを踏まえて書かせていただいておりますけれども,14ページ目の「さらに」以下のところですが,「インターンシップ」それから大学と企業の間などを行き来しながら,複線型にキャリアを形成していくということ。また海外などで見られる大学での学修と企業での勤務を両立させるような学び方を検討することも必要であるということも入れさせていただいております。ここは注で英国の事例も紹介させていただいております。
 もう一つは,「地域との連携」という段落も,これも将来構想部会の方で,また大学分科会の方でも特に地域との連携は厚めな記述が必要ではないかという御意見を踏まえまして,入れているところでございます。
 15ページ以降,これは教育研究体制の部分になります。「教育研究体制―多様性と柔軟性の確保―」というところでございまして,ここは先生方がずっと御議論いただいたところが全て入っているという形でございます。「18歳で入学してくる学生を中心とした教育体制(18歳中心主義)」とか,「学内の出身者を中心とする教育研究体制(自前主義)」などから脱却をしていく。多様な学生,多様な教員,それから多様な価値観が集まるキャンパスにおいて柔軟な教育プログラムを提供していくという形で整理をしていくのはどうかということで,冒頭書かせていただいておりまして,「多様な学生」のところは,大きくいえば「リカレント教育「,それから「留学生交流の推進等」というところと,めくっていただきまして,「高等教育機関の国際展開」ということで,我が国の大学の海外校の設置,海外協力校との連携など,このようなところはワーキングの議論を入れさせていただいているところでございます。
 四角の中が,正にワーキングで御議論いただいたことを詳細に専門的な見地から御議論いただいた部分を入れさせていただいているところでございます。
 その次が「多様な教員」というところでございます。多様な教員に関しましては,中間まとめのときはそこまで記述が多くなかったのですけれども,これはどちらかというと将来構想部会,大学分科会の議論の中で,先生方が必要な研修や業績評価,教育研究活動を行うことができる環境の整備をきちんとしていく中で,エフォート管理などの配慮も必要でございますけれども,ともに高等教育改革を担っていっていただくというようなことを,メッセージとして入れるべきではないかということで,そのあたりの記述が増えております。
 四角の中は,ワーキングで御議論いただいたところが入っているところでございます。
 21ページでございますが,「多様で柔軟な教育プログラム」というところで,まず初等中等教育における変化なり,これからの改革のことを踏まえまして,接続の部分を入れさせていただいております。特に今回,22ページの真ん中のところでございますけれども,「文理横断,学修の幅を広げる教育」ということが大事になってまいりますので,その観点をここに入れさせていただいております。
 また,「多様で柔軟な教育プログラム」に関しましても,その下のところで,文理横断的なプログラム構成や,また,幅広い授業科目の中から柔軟に選択できるようにしていくこと。複数の大学間でリソースの効果的な共有などが必要というところも書かせていただいておりますし,単位互換等の制度運用の改善については,ワーキングでも御議論いただきましたので,その旨を入れさせていただいております。
 23ページをめくっていただきまして,情報通信技術(ICT)に関しましても御議論いただきましたので,そこが加わっているというところでございます。四角の中に,その具体的な方策を書かせていただいております。
 23ページの下からが「多様性を受け止める柔軟なガバナンス」のところでございます。ここは大きく変わっておりません。具体的な方策に書かれているようなことを今後進めていくというところで,整理をさせていただいております。
 26ページの「大学の多様な「強み」の強化」も,これも中間まとめから変わっていないというところでございますので,そのまま飛ばさせていただきます。
 28ページのところで,「教育の質の保証と情報公表」のところでございますが,これもワーキングの議論を基本としている整理にさせていただいております。まず「我が国における質保証の取組状況」というところで,改革をやってくださっている大学もあるけれども,なかなかできないというところもあるというようなことを書いた上で,保証すべき教育の質というところで書かせていただいているのが,29ページの真ん中のところでございます。二つ目の段落の後半にございますけれども,何を学び,身に付けることができるのかが明確になっているか,学んでいる学生は成長しているのか,学修の成果が出ているのか,大学の個性を発揮できる多様で魅力的な教員組織・教育課程があるかといったことは,重要な質保証の要素ではないかということで整理をさせていただいております。
 大学が行う「教育の質の保証」と「情報公表」というところで,そこに当然第一義的には大学が自ら質保証については率先的に取り組むことが重要ということを書かせていただいた上で,三つの方針(卒業認定・学位授与の方針,教育課程編成・実施の方針,入学者受入れの方針)の観点,それからその後でございますけれども,教学マネジメントの確立の観点の整理のところを書かせていただいておりますし,また情報公表の観点も入れさせていただいております。
 最後には,産業界においてというところで,産業界における取組についても触れさせていただいております。
 国が行う「質保証システム」の改善のところでございますけれども,30ページの後段からは,今の質保証の在り方ということを整理した上で,31ページの段落としましては四つ目ぐらい,2040年に向けてというところでございますが,現在の設置基準を時代に即したものとしてというところで,例えば定員管理,教育手法,施設設備等について,このような見直しが必要なのではないかということを書かせていただいております。これに関しましては,更に中央教育審議会で議論が必要であるということを「なお」以下で書かせていただいているところでございます。
 31ページの箱の中は,御議論いただきました「全学的な教学マネジメントの確立」,「学修成果の可視化と情報公表の促進」というところを入れさせていただいております。
 それから35ページからが,ここからは将来構想部会の本体の方が議論をしてきたところになりますけれども,「18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置」というところで整理をさせていただいておりまして,まず「高等教育機関の進学者の推計」であるとか,「進学者数の規模を踏まえた高等教育機関全体の規模」などを,35ページ,36ページに掛けて書かせていただいております。
 36ページの一番下の段落でございますけれども,18歳人口が約88万人,現在の規模と比較すると74%になり,大学進学者数は約51万人に減少することが予想されている中で,18歳中心主義ということを維持したままでは,現在の規模を確保することができないということを認識した上で,いかに学生の可能性を伸ばすかということの教育改革を進め,規模の適正化について検討する必要があるとしております。
 めくっていただきまして,37ページの冒頭は少し厳しいことも書いておりますけれども,教育の質を保証することができないというような機関については,撤退という事態に至ることも覚悟しなければならないということ。
 ただ一方で,留学生であるとか,社会人を受け入れていくことは非常に重要な観点ですから,この観点からの規模の拡大は期待されるということを,その次に書かせていただいております。
 大学院の規模に関しましても,まずは早急にという2段落目からでございますけれども,大学院教育の体質の改善ともいえるような取組を進めていくことでというようなところを書かせていただいております。これは大学院部会の議論が素地になっているところでございます。
 37ページの2のところは,「国公私の役割」でございまして,国立大学,それから公立大学,私立大学,39ページ,40ページに掛けましてそれぞれの設置者別にそれぞれの役割を整理させていただいているところでございます。特に国立大学に関しましては,39ページの冒頭の「このため」のところでございますけれども,国立大学と議論を図りつつ,学士課程教育,大学院教育等においてそれぞれの大学の強み・特色や地域の事情等にも留意しつつ,どのような課程や分野で,どのような規模で役割を果たしていくのかという点について,一定の方向性を検討することが必要であるということで,最後については,今後そのような方針を検討するということで整理をさせていただいております。
 40ページの真ん中,「3.地域における高等教育」のところでございますが,これはデータを整理してまいりましたので,そのことを書かせていただいた上で,41ページでございますけれども,「国が提示する将来像と地域で描く将来像」ということで,具体的な方策などにも入っておりますような「地域連携プラットフォーム(仮称)」,それから「大学等連携推進法人制度(仮称)」,このようなことを検討していく必要があるのではないかということで整理をさせていただいておりますが,「はじめに」のところでも書いたように,地域で高等教育がどうあるべきかという御議論が常時行われているというプラットフォームをきちんと作っていく必要があるだろうと考えております。
 43ページからが,「各高等教育機関の役割等」についてでございまして,これも専門職大学,専門職短期大学,短期大学,高等専門学校,専門学校,それから大学院ということで,それぞれの学校種なり課程に特有の課題,それからどのような方向性を出していくべきかということを整理をさせていただいております。大学院につきましては,大学院部会の御議論もございましたので,少し長めでございますけれども,3ページにわたって記述があるというところでございます。
 47ページからは,「高等教育を支える投資」のところでございますけれども,まず高等教育の投資に関しては,非常に重要であるということは明確にさせていただいた上で,国それから民間というところからも,それぞれからきちんと投資をいただけるような形でやっていく必要がある。そのときに,二つ目の段落でございますけれども,高等教育というものは,人材育成ということは主軸にありますけれども,それ以外にも社会の様々な活動に影響を与えている大きな効果を出せる教育機関であるということを明確にさせていただいております。
 その上で,「あわせて」というところでございますが,高等教育機関の教育コストや研究コストはなかなかまだ明らかになっていないという課題もございますので,情報公表と併せてやっていく必要があるのではないかということと,例えばイギリスにおいては,高等教育全体の社会的,経済的効果を社会に示すような試みを行っているという事例もございますので,このようなことも検討すべきではないかということを書かせていただいております。
 そのような形で,48ページには高等教育に対して寄附をどのように考えていくのかということを,三つ目の段落あたりでも書かせていただいているところでございます。
 49ページには,学生支援の観点ということで,奨学金の今の状況なども書かせていただいておりますけれども,加えて,その上のところで,今回いろいろな課題を整理させていただいて,各高等教育機関にお取り組みいただくというところでございますので,どのようなことが必要で,それに対してはどれぐらいの投資が必要なのかということも,全体的に示していく必要があるのではないかということを整理させていただいております。
 最後,50ページでございますが,「今後の検討課題」ということで,中央教育審議会において今後も御議論いただくということが上の二つでございまして,質保証システムについての見直しを全体的に行っていくということと,教学マネジメントに係る指針の策定を行うというところで,二つ書かせていただいております。
 その上で国においてはというところでございますが,「地域連携プラットフォーム(仮称)」,「大学等連携推進法人制度(仮称)」,これらのことについても具体的な制度設計であったり,ガイドラインというようなものであったりを作っていくということ。それから国立大学に関しましては,先ほど申し上げましたような一定の指針の件。そして国立大学の一法人複数大学制度等における必要な制度改正,それからこのワーキングで御議論いただきました種々の制度改正につきましては,その下の四角の中に合計9点入れておりますけれども,これらを速やかに制度改正に着手していくということで,検討課題として整理をさせていただいております。
 最後,51ページでございますが,「おわりに」というところで,質保証が非常に大事であるということ,それから生涯学び続けていくということは,中央教育審議会からのメッセージとしても出していく必要がございますけれども,高等教育機関だけで出来るということではなくて,初等中等教育段階それから,その後の社会においても学修成果がきちんと適正に評価されていくことが必要であるということ。それから,是非今学修している方々にも,この高等教育の改革に参画してほしいというようなことで整理をして入れさせていただいております。
 駆け足でございましたが,御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございました。非常に大部の答申(案)でございますけれども,今,室長の方から説明をいただきましたように,非常に多様な内容を持っております。
 それでは,ただ今の事務局の説明及び資料を踏まえまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。
 濱名委員。
【濱名委員】  最初に質問したいのですが,今日これを,要するにパブリックコメントも求めている状態で,このワーキングに提示されて,修正なり反映する余地があるのですかということなのです。それがなければ,ほとんど意味がないと思うのです。
【石橋高等教育政策室長】  当然,パブリックコメント中でございますけれども,パブリックコメントも踏まえて最終的な修正案というものを,11月に入りまして将来構想部会,大学分科会で御議論いただくことになっておりますので,御意見を賜れればと思いまして,今日ワーキングの方に説明させていただいたところでございます。
【濱名委員】  よろしいですか。そうすると,この審議まとめと答申の関係もはっきりさせていただきたいという気もするのです。我々が審議まとめの議論をする段階で,質保証については二つの論点のすり合わせを大分してきたと思うのです。要するに均一化,画一化,国のコントロールが非常に強くなっていくという印象が強い答申にはしない方がいいと。各大学がDPを定める権限,自律性を持っているわけだから,アセスメントポリシーを各大学が説明責任の方針を決めて,きちんと説明していく必要がある。
 社会から見れば,非常に国が画一化,均一化の方向へドライブしているという印象が強く持たれている。途中の段階で某社が新聞報道で,教学マネジメント指針で中退率まで含めて向上するということを,このワーキングが認めたというような報道までなされて,そのような印象が非常に強くなっていることを懸念して,多分審議まとめの議論をしてきたと思うのです。
 ところが,最終的な案を見ると,例えば29ページから質保証と情報公開のところのトーンを見ると,教学マネジメント指針については事務局の原案が出て,それを具体的な審議,意見がいろいろ出たので,出たものを再度ここで審議したことは一度もないわけです。にもかかわらず,そこの部分は事務局の原案が例としてずっと出された状態である。それに対して質保証の話についていうと,29ページから30ページのところの話の中で,アセスメントポリシーの話は完全に落とされていますし,32ページでも落とされているのです。それで具体的な方策を31ページから見ていくと,具体的には教学マネジメント指針が物すごく強調した形でのトーンになっている。
 つまり各大学が自らの責任で方針を決めてアセスメントをしていく,それに基づくPDCAが教学マネジメントであるということは,審議まとめでいうと24ページに明確にそのような方針で審議まとめをしていたのに,それとは全く別物の,文言として見ると大幅に削られているわけではないのですが,しかしレトリック的に見ると非常に各大学に対するコントロールが強化される印象が強い文面になってしまっている。
 アセスメントポリシーに至っては,質的転換答申の中で明確にあったものが,注扱い。これはいかなる見識なのかということについては,私は非常に疑問を持たざるを得ないし,これまでのワーキングの審議は何だったのかと,正直驚いている状態なのですが,この辺の経緯を教えていただければありがたいです。
【鈴木主査】  いかがですか。どうぞ。
【石橋高等教育政策室長】  濱名委員の御指摘でございますけれども,事務局としてまとめていくときには,基本的に大きく方向性を変えたというつもりはありません。その中で,もし言葉が足りていないというようなことがございましたら,御指摘いただければと。今の御指摘も踏まえて,そうなのだと思いますけれども,一方で,アセスメントポリシーという,その言葉に関しましては,大学分科会,将来構想部会の中で御議論がございまして,それは「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー),「教育課程編成・実施の方針」(カリキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)の三つのポリシーと違うものだと扱うべきではないかという御指摘を頂きましたので,平成24年の「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて~生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ~」答申の中に入っておりましたので,今後注の中で扱わせていただくということで整理をさせていただいたところでございます。
【濱名委員】  よろしいですか。アセスメントポリシーの議論は質的転換答申のときも,要するに義務化されているものと,アセスメントに対する,私もちゃんとこのワーキングで報告をさせていただいて,その御了解の下に大体案が作られていたと思うのですけれども,上の将来構想部会はどれだけの審議をされたのか。
 答申であるとか,あるいはワーキングで主に総務省と情報公開を専門的にこのワーキングで議論してきた話が,中間まとめとか審議まとめの段階で出なかったものが,最後になってひっくり返されて,これは同等ではないというどのような御意見が出たか知りませんが,そのような形でひっくり返されていくのであれば,ワーキングで議論している意味はどこにあるのかと。
 ましてアセスメントポリシーは質的転換答申の中で明確に書かれているものが,ここの段階で,我々の議論の中でいうと,それが出来ていないから質保証とか情報公開ができていないのだという議論をしてきたにもかかわらず,それが後退するかのような印象であるとするならば,非常に私は遺憾に思います。
【鈴木主査】  今,濱名委員からコメントを頂いたわけですけれど,失礼いたしました,義本局長どうぞ。
【義本高等教育局長】  石橋室長が今申しましたように,基本的な思想は変わっていないと思っています。先ほど濱名先生がおっしゃいましたように,24年の答申以降,四つとおっしゃっていましたけれども,三つについては設置基準に位置付けてやっていこう。一方,課題として残ったのは,それをどのように回していくかについてのアセスメントをどうするかという問題で,それを情報公表と併せてデータを取った上で考えていきましょうというようなところの流れの中での議論であるということだと思います。
 それを回していく一つの方策として,指針を作っていこうではないかという御議論をいただき,その具体の中身については,むしろピアの中での議論をこれから進めていこうというところの話で,アセスメントポリシーも,その中でしっかり,基本的には大学の独自性の御判断の中で整理していくということがベースである一方,それを全体として考えていく中においての一定のアカデミアの方々を中心とした議論をちゃんと整理しながらやっていこうということで,決して国が一律に押し付けるわけではなくて,今後恐らくマネジメント指針の御議論があると思いますけれども,柔軟で,ある程度のルール作りを図っていく中で考えていこうというような思想でやっていくこと自身が,ここのワーキングでの御議論の話だと思っています。
 そのような理解の下で,今後専門的に御議論をいただく話になるのではないかと思っています。
 一方,アセスメントポリシーという用語については,これは1回の議論ではなくて,2回,3回と部会あるいは分科会の中で御議論いただきまして,位置付けとしては,確かに質的転換答申の中でも入ってはおりますけれども,三つのポリシーと同じ軸よりも,むしろそれをどのように回していくのかということでの位置付けということで,用語はポリシーという言葉を使うということについては,複数の委員の方々自身がそれについては異論があったということがありまして,最終的には先ほど石橋室長が申し上げましたように,注の中で経緯も含めてちゃんと書くことによって,その思想を考えようと。
 ただ,濱名先生のポリシーというお言葉に対するこだわりというようなことは受け止めましたので,その点については今後関係する委員の先生方と更に調整して,適切な整理を図っていく必要があるかと改めて思いました。ありがとうございます。
【濱名委員】  31ページの最後の丸のところから話が,今義本局長が言われた背景を盛り込んでいるといわれるとしたら,そのように絶対読めないです。要するに,ここに書かれていることは,このようなPDCAサイクルは大学全体,学位プログラム,個々の授業科目のそれぞれの単位で有効に機能している必要があるとしか書いていないのです。これで今まで進んでこなくて,我々が諮問されたスタートラインに戻るだけではないですか。そのようなことに対するメッセージが,この文面を受け取る各大学関係者がどのように考えるのか。僕は負のメッセージであり,我々は諮問された事項の質保証と情報公開,情報公開の部分も,この後のピアといわれるところに送って,我々は実質的に何もそこで議論していないわけです。ということは,我々の諮問事項の二つのうちの一つについて,ほとんど何の答えもなくワーキングとしてやったとしたら,我々ワーキンググループとしての,私はミッションとして果たせなかったというように受け取らざるを得ないと思うのです。
【義本高等教育局長】  今の御指摘も踏まえまして,今パブリックコメント中でございますので,この意見も含めてどのような形で今の趣旨をもう少し丁寧に御説明するかについての文案を,事務局としても引き続き主査と相談させていただきながら,その過程で濱名先生とも再度御相談させていただくこともあるかと思いますけれども,考えていきたいと思います。ありがとうございました。
【鈴木主査】  小林委員。
【小林主査代理】  先ほど事務局から御報告がありましたように,私が,このワーキングの審議まとめについては,将来構想部会,大学分科会に報告しましたので,そのとき,今の事務局と,それから局長が言われたとおりですけれど,もう少し補足いたしますと,間違っていたら議事録がありますから,後に訂正していただきたいと思いますけれど,全体として一つ,濱名委員が言われたことで,このトーンが強過ぎるということに対しましては,大学のオートノミーというものが重要だという議論は出ています。それは,そのような形では出されています。
 ただし,言葉の遣い方については,かなりいろいろな意見が出まして,これはアセスメントポリシーだけではなくて,ほかの大学の強みという言い方自体も非常に曖昧な言葉であるとか,いろいろな意見が出まして,その中で三つのポリシーに加えてアセスメントポリシーというものを加えるということについて,現場が混乱するのではないかという意見が非常に強く出まして,もう少し,仕組みとか,そういった言葉に変えるべきではないかという意見も出たのですけれど,それは今局長の方からありましたように,今後考えていけばいいことなので,全体として言葉遣いのようなところが非常にまだ練れていない部分があるということについては,かなりいろいろな意見が出ています。
 そのようなことがありますけれど,ここで議論したことが全く生かされていないというのは言い過ぎだろうというように私は思っています。
【濱名委員】  生かされていないというよりは,伝わらないということ。逆に,先ほどのあれでいうと審議まとめと答申はどのような関係なのですかということなのです。答申はきちんと製本されて出ていくのだろうけれど,我々の議論した内容と微妙にずれているところはあるわけです。そこのところの審議まとめと答申との距離を考えていったときに,僕はこのトーンで答申を出されるのであれば,はっきり言って徒労感を感じるという。
 結局,もともとはアセスメントポリシーの作成率が14%というのが私学事業団がやったデータであって,そのことに対して国が奨励していないのかというと,各種の競争的資金の項目の中に入っていたりするわけです。それは国として行政的には行使していながら,概念がはっきりしない,混乱するというのは,定着していないということが問題の方であって,アセスメントプランに変えてもいいというのは,僕は国際通用性でいうとアセスメントプランという言葉の方だと思うのですけれど,この表現で,要するに何をもって自分たちの点検評価の方針に基づくものを体系的に,組織的にやってもらうのかというメッセージは,今の表現では全く伝わらない。伝わらないとしたら,誠に残念である。1年以上もこの議論をやってきて,非常に私としては遺憾なことだと考えましたので,生かされていないというのが適切でないとおっしゃるのであれば,伝わらないというように言葉を置き換えたいと思います。
【石橋高等教育政策室長】  1点,事務的な観点だけです。この「今後の高等教育の将来像の提示に向けた審議まとめ」に関しましては,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」の後ろに当然一緒に製本させていただくということになります。
【義本高等教育局長】  恐らく目指すべき方向としては,私どもの受け止め方としては,それほど違いがあるとは思っていませんので,そこを上手に,丁寧に表現をし,この答申の中にしっかりそれが読む人にとってみれば伝わるように,表現を考えていくというのは大事だと思いますので,そこはもう少し整理させていただいて,御相談したいと思います。ありがとうございました。
【鈴木主査】  それでは,表現の在り方等々も,多少議論する余地があるかと思いますが,今,濱名委員の御意見等も加味しながら,これをまとめていくということを続けていきたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 そのほか,いかがですか。篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  私も濱名先生と多少共通する現状認識をしているところがあるのですけれども,このグランドデザイン,冒頭の「はじめに」のところでタイトルに学修者本位の教育というように書いてありますので,グランドデザインの最大の目標というのが,学修者本位の教育を確立するということ。そうなりますと,3番目で強調をしております教育の質保証と情報公表というあたりのところが非常に中心のテーマになってくるというところだと思いますし,これから厳しい時代を大学が迎える中で,教育の質保証,教育の質を高めていくというのは大学の本丸中の本丸で取り組まなければいけない最重要のテーマでありますし,それに向けて中央教育審議会が一定の方向性を示すということについていえば,非常に重要なことだと私自身も思っておりますけれども,具体的にこれを提起したときに,各大学の受け止めというのは,これで一体何を具体的にやらなければいけないのかというところに関心が集まっているといいますか。
 たまたま先週,私は日本私立大学協会の部課長が集まる研修と,それから日本私立大学連盟の金曜会といっていましたので,首都圏の大手の大学の局長だとか部課長が集まる研修会に呼ばれて,大学マネジメントについての話をした。このテーマではないのですけれども。質問は,ここのところが非常に多かったわけです。それはなぜかというと,どのようなグランドデザインの中で法令が改定をされて,大学に何が求められてくるのかというところ。それは第3クールで認証評価が始まって,新たな基準で質保証が重視をされて,どのようなところが具体的な評価のポイントになってくるのかというところにも関連をしておりますし,それから補助金の方の質保証のところで,何が求められてくるのかということについても,このグランドデザインの提起,あるいは教学マネジメントの指針の具体的な中身というのが連動しているので,そのようなところに関心があるということは,ある意味,理解ができるわけですけれども,そのときの受け止めが,何か法的に規制をされたから,それについて最低限対応しなければならないような指針だというような受け止め。これではなかなか本当に教育改革にはなっていかないと思うわけです。
 ですから,そのときにどのようなメッセージを中央教育審議会で出していくかというところで,先ほど濱名先生も挙げられた,例えば審議まとめの方の25ページ,全学的な教学マネジメントの確立のところの,25ページの一番下の7行あたりのところです。つまり教学マネジメントというのは大学自らの責任の下で,各大学の事情に合致した形で構築すべきものであり,教学マネジメントに係る指針は特定の取組を大学に強制するものではない。あるいは他大学の取組の模倣や,当指針を咀嚼することなく学内で実施しようとすることは,大学としてふさわしい主体性を発揮したものとはいえず,各大学が創意工夫を行い学士課程の質的転換に向けた取組を確立すること。これを周知する必要があるというように提起をしているわけで,私はこの文章は非常に重要だというか,この文章と併せて具体的な取組についてのいろいろな法律上の強化,このようなものも絶対必要だと思いますけれども,それを活用して大学が自らの目標,自らの質保証をどうやっていくかという構築が重要なのだというメッセージを発していかないと,主体的な受け止めにならない。
 つまり何かやれ,やれと言われていて,それについて嫌々というか,抵抗感を持ちながら対応するというのでは,外部からの強制にはなっても,内部質保証にはならない。だから私の意見としては,このような文章を,できればグランドデザインの本文の中にも生かした形で,あるいは教学マネジメントの指針の中に書き込むとしたら,是非そのようなことを,最後の方でも結構ですので,周知をするということが非常に重要ではないかと思います。
 それから,続いてもう一つだけ。教学マネジメントの指針というのが,大学では非常に関心が高いわけです。当然だと思います。そうしますと,我々のグループの審議のまとめのところでも,例えば6の教育課程の改善だとか,指導方法の改善だとか,9と10と11のあたりの最後の結論で,これは教学マネジメント指針に書きますというようなことが書いてあって,いろいろな書きぶりがあるのです。目安として示すとか,この項目については事例として示すとか,望ましい在り方を示すとか,示し方まで書いてあるわけです。そうしましたら,できれば教学マネジメントの指針の事例の中に,おおよそこのワーキングの結論としては,そのような形で示しているわけですので,整理して全部入れ込んでいただいた方が,大学の理解といいますか,教学マネジメントの指針の書かれる内容について,いろいろ憶測ということではなくて,今の段階で方針がはっきりしていることについては全部まとめて提起をしていただいた方が,分かりやすいのではないかという意見です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  非常にたくさんあるのですけれど,今さらという感じもするので,これまでも指摘させていただいたことの繰り返しになるかもしれませんけれども,コメントさせていただきます。
 一つは,先ほどの濱名委員のアセスメントポリシーの件ですけれども,今回この30ページとか,下の注を見ると,考え方や尺度と書いてあるのです。ポリシーで尺度というのはおかしいと。すごく違和感を覚えます。ポリシーは方針,基本的な考え方なのに,何で非常に具体的な尺度という話が出てくるのか。
 それで,先ほど濱名委員が熱弁を振るわれました,転換答申を改めて見て,そのときの用語集を見ると,学生の学修成果の評価,各アセスメントについて達成すべき質的水準及び具体的実施法などについて定めた学内の方針という記述が用語集にあって,そこには尺度という用語は全然出てこないのです。
 だから答申にいろいろ出てきていますけれども,もちろん変えるべきところは変えるのでしょうけれど,同じ用語を使うのであれば首尾一貫した使い方を是非していただきたいというのが1点です。
 ここからは私のコメントになりますが,まず2ページの「はじめに」のところで,下の方で,昭和29年以降いろいろな答申42本出されているけれども,十分取組が進んでいない。そのような取組が十分でないものについて,今回の答申では強調するというように書いてあるのですが,その上に,教育機関の取組が進んでいるが,様々な要因や制約の中で全ての高等教育機関の取組に至っていないものもあると書いてある。これは本当に数語しか書いてないのですけれども,本当に改善をしようと思ったら,この様々な要因や制約の中というのを具体的にきちんと分析した上で,どこが足りなかったから,ここを改めていきましょうとしないと,全く実質感が伝わってこない。
 これまでも私は何回かこのようなことを言わせていただいたと思います。これまでの改革なり,政策の分析,反省がないところで,更に上に新しい答申を作ってきても,全くそれは改善しない,前に進まないのは当然だろうと思います。
 私も別のところで今,文章を書いていますけれど,正にここに書いてあるとおりで,私なりの原因は分析させていただいております。
 それからもう一つは,「はじめに」のところを見て,次の3ページのところで今後の実現すべき方向性は,以下のとおりであるということで4点,行を変えて書いてあるのですが,全て高等教育機関に対する実現すべき方向性で,ここを見ても,この前お話しさせていただきましたけれど,国が全然出てこないのです。国はどうするのですかという話なのです。
 そもそも答申は大臣から諮問を受けて,大臣に対して,このようにしてはどうですかというのを審議会が具申するわけです。書いてある内容は,国については最後の方の制度改正に関わるところだけで,正にこれは篠田委員もおっしゃった,個々の高等教育機関に向けてこうしなさい,した方がいいのではないですかという中身になって,本当にこれで国の答申として,このような内容でいいのか。少なくとも大学に対してメッセージを出すのであれば,国はこのようにすべきであって,それを基に個々の大学はこのようにした方がいいというように,きちんと役割といいますか,アクターを書き分けないと答申にならないと思います。
 そのように思って読んでみたら,国の今後の方向性としては,36ページの真ん中あたりから将来像答申と同じように,計画から政策誘導へという政策変更を示したけれども,2040年に向けても計画ではなくて政策誘導していくという文言が,ここにようやく出てきて,国としては高等教育については,このような考え方で今後も進めていくのだと,ようやくここに出てくるわけです。このようなものは,もっと前に出して,全体の答申のトーン,ベースラインは何かということをきちんと明示すべきであろうと思います。
 更にこの将来像答申以降,計画から政策誘導ということで何が起きたかというと,大学に対して具体的な取組の指示する内容が,その後の学士課程答申,質的転換答申含めて多くなってきている。今回も教学マネジメント指針を項目化する。これは篠田委員がおっしゃったように,あくまでもガイドラインだから,それをちゃんと各大学が真摯に受け止めて,自分たちの置かれた状況に応じて必要なことをやることが前提かと思うのですが,ここに書いてあることを見ると,一種の初等中等教育の学習指導要領の意味合いが非常に強くなっていて,一方で大学の自主性ということをうたいながら,このようなことをするのがマストとは言わなくてもベターだという。
 これは結局どのようなことになるかというと,政策誘導ということで,どうやって誘導するかというと,補助金とかでこのような方向に向けて誘導するわけです。
 ですから,まずは答申というのは国としてどのように高等教育をこれから変えていこうとしているのか。その中で,個々の大学はどうあるべきかということをきちんと書き分ける必要があると私は思います。
 最後に,そのような点でいくと,財政的な支援のこと。これも以前ほとんど書かれていないのですということを指摘させていただいたと思います。47ページですけれども,これまでの答申を見ると,日本の高等教育に対する公共投資というのがOECD等の国際水準から見て半分ぐらいしかない。教育そのものに対しての投資も少ないのですが,高等教育に対して投資がOECDの半分ぐらいしかないということを常に主張してきて,何とか国から公的な資金を出してもらおうという主張をしてきた。
 もちろん一方で,今高等教育の無償化ということで,高等教育に対する投資を増やそうという政策もあるのですが,ここでは国の財政が大変だから国に期待するのはやめましょうというようなメッセージ性しか出てこないのです。あるいは民間からの寄附とかです。財政的な投資についても,国としてどのように考えているのかということを明確に打ち出さないと,2040年までのビジョンを示すといったときに,もちろん現実に1,000兆を超す財政赤字を抱えていることは分かりますけれども,関係者としてはそのようなことを主張していかないとなかなかお金が回ってこないのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがですか。福島委員,どうぞ。
【福島委員】  幾つかあるのですが,一つだけに絞って申し上げさせていただきますと,率直に言って,高等教育機関だけにこのようなことを求められるということだけでは,なかなか難しい。例えば,高等教育が目指すべき姿ということで,個々人の可能性を最大限に伸長する教育といわれるわけですが,当然大学としてはそのようなことを目指して,私どもでも文字どおり一人一人の学生が成長できるようにするにはどうしたらいいかということを考えているわけですけれども,その前提の問題として高校教育がどうなっているのか。
 高大接続改革のプログラムのところで,高校教育と大学教育と高大接続というのは三位一体で改革をするというようになっているわけですけれども,大学についてはこのような形で,いろいろまだ議論はあるところもあるとは思いますけれども,このような形でこの先やっていこうということになるとすると,高校教育と高大接続のところについて,ここに触れないと,大学だけで何とかしようと思っても,実際に大学に入ってくる高校生たちの実態のことを見ますと,それによって大学教育の中身もまた変わってくるわけです。実態を克服しなければいけないわけですから。その辺が,この答申だけではなかなか見出せないといいますか,そのあたりをどこかで少し触れておく必要があるのではないかと思いました。
 その点だけ申し上げておきます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。このワーキンググループでもずっと大学教育全体の質保証を担保する仕組みについて,教学マネジメント指針を出すための検討を重ねてきました。質保証システムについての見直しを行うことが,今後の課題になっておりますけれども,この質保証の仕組みに関しては,中身を見ると学士課程のみが中心になっているような感じが,短期大学関係者としてはするのです。
 ローマ数字5で示された今後の各高等教育機関の役割として,多様性と柔軟性がより求められる高等教育においては,学士課程以外の教育機関の質の保証も重要になってくるのではないかと思います。
 それで,今後の質保証システムの見直しに関しましては,是非学士課程以外の短期の高等教育について,例えば中等教育と連携した高専制度だとか,また実践的な職業教育を行う専門職大学,専門職短期大学,そして大学の一つとされている短期大学等の質の保証についても,別に検討していただきたいというか,その役割についてまた,高等教育全体の中でどのような位置付けなのかということについて,今後検討していただきたいと思います。
 感想でございます。以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,もう一度ですか。
【濱名委員】  今まで触れられたところで,少し補足なのですけれど,先ほど川嶋委員が言われた3ページの四つの方向性で,多様で柔軟な教育研究体制が各高等教育機関に準備されてというのが方向だとするならば,先ほど篠田委員が指摘されたところの補足になるのですが,審議まとめの25ページで最後の丸を先ほど篠田委員は言われたのですけれども,その一つ前の丸は見事に落とされているのですが,答申の方でいうと32ページで,答申案として中教審が国に出す場合には断定系で,審議まとめでは,例えば各大学へ一括して示す必要があるというような言い方をしていたのが,国がいかにもお達しをするかのごとくの断定系の表現でほとんどの項目,括弧が書かれているのも気になるのですが。更に言うと,教学マネジメント指針に盛り込む事項の例の下のところに,審議まとめの25ページのところは,これらに示す内容は各大学の実態を考慮した提示の仕方を考える必要があるというのを,我々が審議したときには付けていたのです。ところが,それがカットされていると,教学マネジメント指針で,もう全部一律に規制しますというトーンに,完全にそのトーンが変わってしまうのです。
 最近のでいうと,大学関係者の間では,例えば私立大学総合改革支援事業の項目などを見ていると,一定の方向に物すごく強力なドライブを掛けている。要するに,工学系を持っていないと産学連携などはできない。あるいは大手大学でないとカバーできないような項目がどんどん新たに加えられている。そうすると非常に一律かつ国がこうしろという方向に物すごく強烈に方向付けをしているというトーンを,私立大学関係者は感じ始めているのに加えて,このようなトーンでやられると行間から伝わっていくものは,先ほど局長が言われたものとはほど遠い印象を与えてしまうと思いますので,その辺の表現はそれぞれもう少し工夫していただかないと,先ほど川嶋委員が言われたように,中央教育審議会が大臣に答申するとしたときの書きぶりとしては,少し書き過ぎている部分が多いのではないかという気がします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
【川嶋委員】  すみません,全く関係ないことなのですけれども,お聞きしたいのです。ずっとワーキングでも履修証明書プログラムを120時間から60時間に短くする要望が非常に強いから,そのようにしようという話。それから単位累積制度を活用して学位につながるようにしてはどうかという話で,やった方がいいという論調で進んできたと思うのですが,具体的な制度改革というのはいつ頃考えていらっしゃるのですかということ。幾つかの大学で履修証明書プログラムを立ち上げたいという,大阪大学も含めてそのような要望を聞いているものですから,制度改正は具体的にいつ頃になるのかということを是非お聞きしたいという非常に具体的な質問でございます。
【三浦大学振興課長】  今,御指摘をいただいた事柄,それに加えて例えば学位プログラム,組織の枠にとらわれない学位プログラムの考え方の整理と,この答申がまとまっていただいた後に速やかに,もう少し具体的に言うと年度内ぐらいには制度改正につなげていきたいと思っています。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 そのほか,いかがですか。小林委員。
【小林主査代理】  幾つかあるのですけれど,私もたくさん言いたいことはあるのですけれども,今まで出てきたことに関連して,少し補足したいのですけれど,初めに篠田委員が言われたことは,そのとおりなのですけれど,先ほど濱名委員が言われた,新聞にこのような記事が出て,これが決定したということだということで,それはある意味,ここで決定したというだけであって,それはまだ上に持っていって変わるわけです。ですから,そのあたりの政策決定過程の在り方が,今問われていると思うのです。そのような中で,もう1回確認しておきたいことは,一つは,私はこのワーキングの審議で確認したのですけれど,ここに書かれている枠組みの中に書いてある,例えば中退率だとかいろいろなことが書かれていますけれど,それはあくまで例という形で書かれているので,例ですねということは確認したと思います。
 ただ,そのような形でマスコミで報道されたときには例ではなくて,あたかもこのようなことが決定されたかのように言われてしまっているというのは,先ほど川嶋委員が言われたように,本来の在り方ではないわけですから,その辺はもう少し配慮が必要かなと思います。それが第1点です。
 それから,川嶋委員が言われたポリシーの検証ということについては,これも何回も申し上げていて,私も嫌になるほど言っていると思いますけれど,中央教育審議会の北山会長も,これをやるべきだとおっしゃったので,それは何らかの形で反映させていただきたい。特に私も冒頭に持ってくるのがいいのではないかということは,将来構想部会の方では申し上げていますし,それから最後のところの諮問の4については非常に薄いので,財政については将来構想部会では余り議論していないとはいうものの,支援が必要であるとか,そのようなことも出ていたと思いますので,そういったことはもう少し書いていただきたいと思います。
 全体として,非常に事務局が難しいと思うのは,これも将来構想部会では申し上げたと思うのですけれど,大学人が見ている見方と,社会が見ている見方が,非常に分断されているといいますか,分かれてしまっているのです。ですから私はたまたま両方出ているので分かるのですけれど,どうもそのあたりが事務局としてはどのようなトーンが書いていくのかというのが難しくて,ここは高等教育の関係者が多いわけですから,当然そのような批判が出るということなので,そのあたりはもう少しくんでいただければと思います。
【鈴木主査】  いかがですか。どうぞ,本郷委員。
【本郷委員】  1点だけお願いですけれど,多様な学びを奨励するという方向性の中で,今までの議論でもございましたし,ここのワーキングでもやりました,例の単位互換あるいは単位の積算制によるところの学位授与ということについて,学位プログラムとの関係でもかなりここで議論されましたし,答申そのものは更に踏み込んで,大学間連携から設置主体を超えた組織編成の可能性でありますとか,地域プラットフォームによるところの大学間連携というようなことを,かなり強く強調されているところがあると思います。
 ただ,そうした場合に,ワーキングのときにも出たと思いますが,要するに,これまで大学に対して強く求めてきた,あるいは学部に対して求めてきた三つのポリシーとの関係はどうなるのかという問題です。整合性というものが当然問題になってきて,組織体を変える場合には新たなポリシーに組み替えるのか,そうではなくて従来の特性というものをある程度反映させた形での連携というものを考えるべきなのかというようなことが,大学にとってみたら非常に大きな課題になっております。
 むしろ逆に教員の在りようにとっても,これまで,ポリシーというものが隠れみのになって,自分たちだけで取り込むというようなスタイルを取ってきた部分は必ずあると思いますので,そのあたりをどのように克服していくのかということについての指針的なものを含めていただければ非常にありがたいと思いますので,御考慮いただきたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  そのほか,いかがですか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  特にここを変えろというわけではないのですが,この答申を見ていると二つテーマがあって,一つは大学の質的な改革です。もう一つは,18歳人口減少をどのように捉えるかという。最初の将来計画部会は人口の方から入っていっていろいろなことをやったわけですけれども,はっきり言って,そこから何か具体的に引き出されるという問題が出てきたわけではない。最終的には,むしろ質的な改善の方が正面に出ているという構造になっているわけです。
 ただ私は,ここまでまだ語られていない問題があって,それはこの二つの間にどのような関係があるのかということが,必ずしもまだ明確に語られていない。それは量的な縮小といいますか,再編をするときに,質的な改善を図るのにどのようなメカニズムが必要かということとなのです。それは多分今までの考え方と少し変わってくるところが本来あるのではないか。
 そのような意味で,先ほど篠田委員から意見がありましたが,大学の実勢を看板といっては失礼ですが,非常に正面からいう。これはこれで誰も反対しないのですが,それだけで18歳人口が減少する局面に対処できるのかという問題があるのだと思うのです。しかも,ただ単に組織の力が非常に強かったり,規模が大きかったりするところだけは独り勝ちするというような状態に陥っていいのか。質的な内容がいい大学がうまく成長するような状況をどうやって作っていくのかというのが非常に大きな基本的な問題で,その意味で,この報告はどういったことをいうのかということが問題になっているのだと思います。一方で,確かにおっしゃるように,今まで問題になっていましたように,32ページのところは私も少し細か過ぎるのではないかと思うのですが,ただ,一定のことを政府が言わざるを得ないということもある。
 質的保証が各大学でポリシーをちゃんと作っているところは少ないという話でしたが,ポリシーという必要は必ずしもないと思うのですが,具体的なものを作っているとは必ずしもいえない。それは補助金の項目にされてしまうので,むしろ押し付けになっているということも事実だとは思いますが,しかし放っておいてそれが進んでいくかというと,私はどうもそうでもないように見えています。
 そのような意味では,何かの形でこういった教学マネジメントもせざるを得ないということは言う必要があるのではないか。
 それから客観的な指標をある程度作って,それを標準化することも,画一化というよりは,むしろ画一化を防ぐためにはそういったことが必要なのではないかと思います。例えば認証評価も,私は基準協会の認証評価委員会に出ているのですが,認証評価の基準がPDCAが回っているかどうかを基準にするという方向に大きく動きつつありまして,それはなぜかというと,結局教育課程が非常に多様化したために,客観的な基準で評価するのが非常に難しくなっているのです。だからある意味では手続的なところで評価するという話になってしまっていて,それを補完するメカニズムはどこにあるのかというと,私は客観的な指標のシステムとか,そういったことも必要なのではないかと思います。
 私が申し上げたいのは,基本的にはこれはこれで一応このように書いてありますけれども,次の問題として本来議論すべき問題はそのようなところにあって,今の段階でそれを全面的に展開するのは難しかったのだけれど,それは次の問題として深刻に考えるべき問題なのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,ございますか。まだ時間はございます。上田委員,どうぞ。
【上田委員】  どうも,いろいろありがとうございます。私はこのワーキングに新参者として入ってきて,物すごくたくさん勉強させていただいたのですけれども,この1時間が一番勉強しました。この答申案が出てきて,皆さんがどのようなことをおっしゃるのかということで,この1時間のお話は,私は相当勉強になったところがあります。
 気付いたことなのですけれども,この答申というのは誰が誰に対して出すものなのかという,誰が誰に対して答申をして,それがどこに届くのかということが私も分からないまま送られてきたものを読んでいて,いいことがたくさん書いてあるなと,だけれどもこれが本当に実現するのか。あるいは,これをもらった,これを読んだ大学は,本当に何をやろうと思うのか。また,これをやらないと補助金を切られるのではないかとか,いろいろと考えてやるのか。また,競争的資金を取るときに,このようなものを前文に盛り込みながら書いていけば通るのかとか,いろいろなことを考えていたところです。
 だから濱名委員とか川嶋委員とか,このような答申が出続けているけれど実現してこなかった経緯を長年知っておられる方は,そのメタの部分に物すごく関心がおありになる。答申をたくさん出し続けているけれど,何で変わらないのかといういら立ちが非常に伝わってきて,私もそこのところを今の1時間で学んだというところがあります。
 例えば大学の改革にしても,大学改革をやってスチューデントセンターと学修者中心で,そして学生の多様性を物すごく高めようというように執行部は言うのですけれども,でも個々の教員は全然多様性を高めることを望んでいないので,自分のラボに入ってきた学生は俺のやり方で染めていく,それは40年前,30年前に俺が前の指導教員からたたき込まれたことなのだという。つまり教員組織は全然変わらないところで,執行部と私などもひたすら多様性を高め,みんなの自学学習能力を高めなどということをやっていても,教員組織は一番変わらない。
 そこのところで学生が,うちは教育改革をやって3年目ですから,来年研究をしたところで,相当な軋轢(あつれき)が学生にかかってきて,ところが前の執行部とかは,そうやってすばらしい学生が教員を変えていくのだと,そこで教員に,前の頭の固い教授たちにたてついて,先生何も分かっていないではないですかという質問が教員を変えていくのだというのだけれど,でもそれは学生がかわいそう過ぎませんかという話で,何かそのことを今思い出してしまったというか。
 各大学にこのように自主性をやりなさいとか,頑張りなさいというけれど,その言い方というのはダブルバインド的で,文部科学省は変わっているのか。これだけ各大学に自主性とか多様性をとか言っているのだけれど,文部科学省の通達の仕方というのが今までと同じような答申で,このようなことをやってくださいと。そうしたら競争的資金もこのように取れるようになりますというような形での誘導の形しかないのであれば,そこでうちの大学でやっているように,教員はかわらないけれど,学生さんたちだけ変えて,でも学生さんたちみんな困らないで突破してくれるとは思っていますけれども,何かそのようなことが起こっているのではないか。
 この中で,一つ一つの高等教育の大学がこうやるべきグランドデザインというのは,このように変わっていくのだということは,割と最初からSDGsとかいろいろ書かれているのですけれど,高等教育を可能にする行政のグランドデザインがどのように変わるのかというのは一切書かれていないような気がするのです。
 だからこれをうちの大学に持っていって,うちの大学などはいろいろと資金が取れているから,それでも成功した大学だと多分思われていると思いますけれど,実際に教授会で何を言われているかというと,また1.6%減少したので,本当にどうしようもなくて,それでどんどん教員も採れなくなって,何もかも出来なくなって,それから,それこそ一つ一つのトイレットペーパーを誰が負担するのかとか,そのようなせこい話までやりながら経費を節減している。何となく景気が悪いという感じの中で頑張ろうと言っているところに,これが舞い込む。そうすると,先ほど川嶋委員がおっしゃったように,その財政的基盤はどうなのだとか,2040年までにどのくらいの投資が大学にされるのかというようなところが一切書かれていないところで,このようなものが出ていく。
 だからこのグランドデザインのグランドデザインというのは誰が考えて,そして我々安心して挑戦できる社会にしようと言っているのですけれど,挑戦と言っているけれど,安心して挑戦できないので,挑戦してだめになったら,おたく潰れるでしょう。はい,終了という,その安心して挑戦できる社会の,その安心というのは行政の部分とかが担保してくれる部分だと思うのですが,そこで我々が教育というものをやっているときに,どんどん挑戦する,だけれども安心して挑戦できるという,その一番の根本のところが何も書かれていない。何となくみんなで頑張って,何となくやっていれば突破していけるのではないかというような感じの,そこの突き詰めのなさというのはすごく感じさせられるところです。そここそが行政が担保しなければいけないところなのではないかと思うので,そこの部分というのがどれだけ書かれるのかというのは,一つ一つの大学にとってはかなり意識として重要なところで,では,やろうというように行くのか,あるいは不安に駆られて,これをやらないと,どうもだめらしいという不安と恐怖の中でやるのかというところが,非常に大きいと思いますので,その部分が私は気になるところです。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】  ありがとうございます。全く違う観点から一つお話ししたいと思います。例えば,世界における位置付けとか,グローバライゼーションが進んだ社会というようなことが書かれていて,それをある程度意識しているとは思うのですけれども,多様で柔軟な教育が,21ページ,22ページあたりのところですが,全体のトーンを通して数理データサイエンスが非常にこれから重要と。それは私は100%そのとおりだと思うのですけれども,このような並びは既にこのようなこととなっているという書き方ですから,この中に並べては書けないのかもしれませんが,外国語の学修と教育というものも,この答申全体が非常に大きいところで目指しているものの中で重要なことだと思うのですが,ほとんど言及がない。
 今,別なところですけれど,入学者選抜で外国語をどうするかということも大変大きな問題になっている中,何かそれについて,これまで実は余り言ってこなかったのに,今さらで申し訳ないのですけれども,もう少し書いた方がいいのではないかということを,今見ていて思いましたので,それは是非付け加えていただければと思います。
【鈴木主査】  伹野委員,どうぞ。
【伹野委員】  私,今高等専門学校にいるものですから,高等専門学校の立場でしか言えませんので,それでこの答申を見て,ほとんど違和感がない。このようなものが教育の一つの形であるだろう。
 高等専門学校は専門教育として非常に分野が限られていて,その中でどのような教育をするかということで,この質保証の問題も,10年以上前から内部でいろいろな議論をしてきています。そして,今までの教育の大きな方針というのが,ここの答申と正しく同じで,何を学び,身に付けたとか,それを教育目標にする,そのような教育の体制を作るということで,それでも10年以上前からこの議論をずっとしています。
 だから今回このような答申が出ても,高等専門学校サイドは国がこのような方針を出してくれてよかったということで,ここから新たに,国際化とかというのは非常に高等専門学校の方に期待されているところがありますけれど,それは我々はもっといろいろなところで努力しなければいけませんけれど,それでは,なぜこの新たな教育の体制が高等専門学校の中でうまくいったか。うまくいったかどうかは,まだ分かりません。まだいろいろな改革の途中ですけれど,それは教育の現場を預かる,先ほどあった教員の問題になる。教員に対してどのような教育をしているかということを,相当お互いにオープンにする。
 ただ,一つの学校とか大学もそうだと思いますけれど,高等専門学校だとなかなかそれが出来ませんけれど,高等専門学校は運がいいことに,全国に51ありますので,51で全部同じ教育をやっている。同じ専門教育の同じ科目をやっているということがありますから,そこを常に情報交換してオープンにする。
 例えば,その中で出口を見たみんなで教科書を書くとか,そのようなことで,ある専門分野の教員の意識をいろいろなことで整理したというところもあって,そのようなことが一つ,どんどんうまくいったというところがあります。
 一番なのは,学生の顔が常に見えた中で教育をしていますので,その学生が今,卒業等すると,非常によく見てもらっているというところはありますけれど,学生が本当に高等学校とか大学を選ばなくて,高等専門学校を選んだということに自信を持ってもらう。そして,よかったと思ってもらうような教育を,そのような雰囲気作りを,特殊な学校ということもありますので,そのような一体感を持ちやすいというところはありますけれど,そのようなことで,ここに書いてあるような答申の内容については,この方向で新たな教育というのが,高等専門学校ではいい方向に動いているというところで,よろしいのではないかという印象を持っているところでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 宮城委員,どうぞ。
【宮城委員】   おお㎜委員の方々のコメントにとても共感するところなのですけれども,特に先ほどの上田委員のお話に,私も同様のことを思っていまして,2040年のビジョンということを考えたときに,2040年に社会がどのようになっているかということは,本当に予測し切れないものであり,ある意味,それを作り出していく側の主体として高等教育はあるのではないかということを思っています。
 予測し切れない変化に対して,いわばこの2040年ビジョンというのは,私たちは高等教育を社会に開き,共に進化していく,進化し続けていく存在であらねばならないということを宣言するような形のメッセージが全体を通して伝わると,すごくこの答申の力が出るのではないかということを思いました。
 そのときに,変化し続けるということに対して国も常に柔軟に対応し,変化し続けていく覚悟を持って臨むというような何か姿勢を示していくことができると,グランドデザインとしての勢いが出るということを思いました。
 実際に書かれていることも,多様に,柔軟にということを何度も述べていただいているように,そこに対して主体的な意思を持って変化をし続けていくということが前提になっていると思うのですけれども,そこに対しての決意のようなものが改めて強調されてもいいのではないかと思いましたし,そこに対しての国としての覚悟のようなことが示されることによって,先ほど上田委員が安心してチャレンジしていいというようなことをおっしゃいましたけれど,私も正にそのようなメッセージが伝わるというか。
 つまり変化をし続けていくというか,社会と対話をしながらともに進化するというようなことは,あくまでもこれまでサブの位置付けというか,そこに対するプライオリティーを高く置くことを,高等教育の機関の中で必ずしも位置付けられていなかったのではないかと思うのですけれども,そのプライオリティーをぐっと変えていくようなきっかけ,そこに対して取り組んでいる,担い手に対しては,国としてもより力を入れてそれを支えていくということ。
 もちろん今までもメッセージとして,今のところ出されていたとは思うのですけれども,2040年ということを考えたときには,改めてそのような強調がされてもいいのではないかと思いました。
 それと学修者本位という言葉が強調していただいているわけですけれども,私が思いましたのは,そのときの学修者の学ぶための力をどのように育んでいくかという視点に対しての強調が,もう少しあってもいいのかなと思いました。学修者の主体があってこそ,学修者の本位に対して高等教育が進化していくことにつながっていくと思うのですけれども,学ぶ力とは何か,それをどのように育まれるのかということに対する議論は,初等中等教育と連携しながら,ともに学ぶ力を育み,私は18歳という視点は今回18歳主義からの脱却ということもありますけれども,ポイントになるタイミングだと思うのですけれども,その時点でどのように学ぶ力を育むかという視点を,今回のこの答申に限らず,より我々としては議論していくべきではないかと思いました。
 そのときに,学ぶ力を育むというためにも,学外学修ですとか,実践的な教育との連動ということを,その角度からもより強調していいのではないかとも思いました。
 それから先ほど18歳主義から多様性というところなのですけれども,年代の多様性ということが,ある意味触れられている面があると思うのですけれども,例えば実業高校からの大学への進学だとか,働きながら学ぶということも含めた多様性というようなところも,改めてフォーカスを当ててもいいのではないかということも思いました。
 最後に地域連携プラットフォームということが,結構何回かに分かれて強調していただいている。これも大変大事なことだと思いました。先ほども申し上げた,社会とともに進化をしていくという意味において,連携プラットフォームというような存在が改めて重要になってくる。一方で,これまでこれに類するような座組みは繰り返し作られてきた面もあると思うのですが,それが必ずしも,ともに進化していくことを支えていく機能として果たされていないというのも実情だと思うのです。それがどうやったら実際に力を持つものになるのかということをしっかりと,ここまで強調していただいたという意味も含めて,向き合うべきではないかということも思っています。
 例えば,具体的に最後の今後の検討課題にも触れていただいているわけなのですけれども,ここに地方公共団体とも協議してというような文言が,地域連携プラットフォームについてあったと思うのですけれども,そこに企業だとか非営利組織だとかというような地域や民間の存在ということも巻き込んでいくということも,あえて加えてもいいのではないかということも思いました。
 本当は更に加えるならば,地域連携を主導していくようなリーダー,プロデューサー,コーディネーターといわれるような人材を改めて育成あるいはアサインしていくというようなことが実はキーになるので,そういったところも含めて,地域連携プラットフォームというようなことをつなげればいいと,座組みを作ればいいということではなくて,実際にそれが機能し,大学,高等教育が社会に開いて,ともに進化していくときの重要な力になっていくということを改めてそこに向き合い,意識していくということをこの機にできれば,2040年に向けて変わっていく,進化し続けていくという意味においてのとても重要な一つの視点になるのではないかということも思いました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 まだ時間はあるのですが。どうぞ,濱名委員。
【濱名委員】  今気が付いたのですけれど,29,30のところのカバーするところなのですが,恐らく三つのポリシーが出来ているかどうかのアセスメントにとどまらないと思うのです。今回,要するに単位累積制もあれば,国際展開もありということを,この答申の中で提案しているにもかかわらず,それらの質保証の検証はどうするのかということについて全く論究していないのです。だから多様性,多様な展開に対する質保証についてのアセスメントの考え方を明確にしてもらわなければいけない。つまり,今までの三つのポリシーはトラディショナルな1年生から入ってくる人たちを想定したポリシーでしか作られていないと思うのです。恐らく編入学型のところとかについてのポリシーを作らなければいけないかどうかという議論も別にあると思うのですが,それ以上に多様な展開を提案しているのであるならば,PDCAが常に後追いになってきたのは,このような新しい提案をしたものまで含めて,アセスメントの在り方ということをしっかり組み込む必要があるという点では,その辺を29,30のこのあたりがいいのか分からないのですが,ちょうど幸か不幸か,それまでの段階で多様性とか多様な高等教育の展開についての提案を全てしているわけですから,それらの取組をする場合を視野に入れてという部分も含めて,入れておく必要があるのではないか。
 そうでないと,三つのポリシーに対する,とりあえずアセスメントは教学マネジメント指針というものが,共通する部分はそれで行けるかも分かりませんけれど,多様な展開についてはそれぞれの説明責任があるという,その合わせ技の中で多様な展開していくことをどのように視野に入れて,アセスメントとPDCAの中に組み込んでいくのかというメッセージは,この段階で入れておくことが必要ではないか。多様な展開は例外であるから,そこは視野に入れなくていいというような状態になると,又次なる課題が出てくることが懸念されますので,その辺についても論究していただいてはどうかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 では,小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  時間があるようですから,幾つか申し上げたいのですけれど,一つは濱名委員の言われた,伝わらないというのは,確かにそのように言われてみれば,そうかなという部分がないわけではないので,その辺は是非よろしくお願いしたいということなのですが,それに関連して言いますと,設置基準に抜本的な見直しというのは非常に大きなことを書かれているのですけれど,これは具体的には中に何を盛り込むかというのは,これからの話だということで書かれていないとは思うのですけれど,私は個人的には定員管理はやめた方がいいとか,標準修業年限はやめた方がいいとか,いろいろなことは申し上げたのですけれど,これは個人的に申し上げているので,別に答申に書いてくれということではないのです。そのようなことでいろいろ行政の在り方についても,いろいろ意見はあるのですけれど,それはこういった答申という形で書くときには,それは全体の合意事項しか書けないというようなことだと理解しております。
 ただ,この問題は,川嶋委員が以前言われた,日本の大学というのは学部を全部基礎にして組み立てられている仕組み自体を変更するものですから,実はかなり大きな変更なのです。そのあたりのことは,もう少し何か,皆さん分かりにくいということだと思うのですけれど,何か変わるのだというメッセージを少し出すのは必要だろうと思っています。
 それから,上田委員が言われたことで非常に印象的に残っているのですけれど,社会のニーズに応えるというのが,上の将来構想とか大学分科会では必ず大学関係者の方以外の委員の方から出てきたり,あるいは意見表明の中でも出てくるのですけれど,社会のニーズに応えるだけではなくて,社会のニーズを作っていくのが大学ではないかという。これは,ここのところでは研究というところで加えてもらった部分に,たしかイノベーションを作るとか,そのようなことが書かれているのですけれど,研究だけではなくて,大学というのはそのような面で全部について知の創造をしているわけですから,そのあたりをもう少し,ただ単にニーズに応えているというだけではないということは,もう少し強調していただければと思います。
 それからもう二つあるのですけれど,一つは小さなことかもしれませんけれど,先ほど来出てきた言葉の問題で,かなり強いトーンになっているということの一つに,今まで大学の情報公開といっていたのが,この答申案では情報公表になっているのです。これは小さなことかもしれませんけれど,公開と公表というのは,かなりイメージが違いまして,公表の方がより強い意味がありますので,ほとんど議論が変わっていると思うのですけれど,その辺,言葉の精査というようなものが要るのではないかということです。
 それから,学生の視点を強調したというのは,この答申案の一番の強調点だと思いますけれど,それにつきまして30ページのところに,学生の調査をするということで,これは前回金子委員が質問されたと思うのですけれど,どのような調査を国としてやっていくべきかというようなことで,そのときの局長の答弁は,これは高等教育部ではなくて総合政策局の方の予算でやるのだというようなお話だったのですけれど,今の時点で,どの範囲までの学生を対象にしているか,お分かりでしたら教えていただきたいのですが,お分かりですか。
【石橋高等教育政策室長】  最後の御質問のみお答えさせていただく形になりますけれども,学生調査の関係に申し上げますと,今まだ具体的にどこの範囲までということまでのきちっとした議論になっているということよりは,一つの提示として考えているのは,例えば1年生の段階と4年生の段階を取って,その変化を見るというようなことをやってはどうかというようなお話には一旦なっておりますが,これも予算が付き次第,有識者会議を立ち上げ,そこで具体的に御議論いただくというような整理でございます。
【小林主査代理】  それでは,これはむしろ要望なのですけれど,この場合,大学調査とか学生調査と書いてあるのですけれど,高等教育全体について,そのようなことをやっていただきたいということで,例えば大学生の調査というのは,大きな全国調査というのは三つあるのですけれど,いずれもここでいっているような意味の調査とはかなり違うものですし,短大についての調査はあるのですけれど,全部をカバーしていない。それから高専についても,私が知る限りは研究者がやった調査はありますけれど,それしかない。それから専門学校については更に調査が少なくて,全国的な調査というのはほとんどなされていないのです。
 そのような意味では,有識者会議で検討されることだと思いますけれど,高等教育全体をカバーしたような学生調査を考えていただきたいと思います。
【鈴木主査】  いかがですか。まだ時間があるわけですから,最後の締めくくりというわけではないのですけれども,2040年に向けたということで,まだ二十数年あるということ。その中で,何がどのように変化してくるかは分からないということで,国も大学も非常に柔軟な姿勢が必要ではないかということが,この2040年に向けたという中に含まれている含意ではないかと思われます。
 それともう一つは,このワーキンググループが,これが最終的な会合になるということで,その中で皆さん今日は非常な熱意と勢いを持って問題指摘的な発言をしていただいたということであります。一つには,文言的な修正をした方がよろしいという意見もありましたし,また,多様性についても,このような中に入れてやった方がよろしいというようなこともありました。
 それから,我々全体を反省するというか,位置付けるという意味で,我々がここで発言している内容は,高等教育に関わっている人たちの意見としての特徴がある。それに対して,社会全体が大学教育に対して持っている印象というのは,かなり違うものもあるかもしれない。そのようなギャップがあるのではないかということも指摘されて,それはこのワーキンググループの,ある意味,反省を必要としているという点かもしれません。
 いろいろこのような形で最後の段階になって,皆さんの御意見が噴出してきたという面があって,これがこのワーキンググループの最初の頃でしたら,それに対して,このような考えをという対応をずっと練ってこられたかもしれませんが,今回これが最後ですという中でいろいろ噴出してきた面がありまして,これをどのように受け止めて,あるいは文言の中に,答申の中に入れていくかというのは,ある意味,主査あるいは事務局の責任といいますか,それに任せていただくということにさせていただく必要があるかなというような受け取り方をしております。
 そのようなことですので,御意見がございましたら,まだ時間がございますので,どうぞおっしゃっていただきたい。
 どうぞ,川嶋委員。
【川嶋委員】  先ほどからも申し上げているように,今回の内容はかなり大学含む高等教育機関に対する提言というか,メッセージ性が非常に強くて,更に全体として,かなり厳しい表現になっている。それはもちろん大学が全ての大学ではなくて,改革の努力をしなかった大学に責めがあることは十分理解できるのですけれども,一方,それ以外の関係者に対する中央教育審議会としてのスタンスというのがどうなのかという観点で見ていくと,最後の51ページの「おわりに」のところで,最初のパラグラフは高等教育機関に対してすごく厳しい言い方なのです。社会からの厳しい評価を受けることとなり,その結果として撤退に至ることもあり得ることを覚悟しなければならないと書いてある。
 二つ目のパラグラフの最後の方に行くと,最後の3行ぐらいに,また,産業界をはじめとした社会においても,学修成果が適正に評価されていくことが望ましいと,トーンが高等教育に対する言い方と,社会に対する言い方が全く違っていて,中央教育審議会として社会に対して腰が引けているのではないかというような印象を個人的に持ちました。
 非常に謙虚であるというのもいいのかもしれませんけれど,もう少し関係者に対するスタンスというものを,等距離外交とまでは言いませんけれども,文部科学省も含めて,もう少し表現を考えていただきたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 どうぞ,宮城委員。
【宮城委員】  今,川嶋委員がおっしゃられたところも含めて思ったのですけれども,このワーキングの議論自体が,ある意味,高等教育の本当に重要な担い手の皆様で構成されているというところで,この答申を発信する主体が,高等教育の担い手の側が主体のようになっているような気はしまして,したがって高等教育に,ある意味厳しい視点になっているのではないかと思ったのですけれども,一方で読む側からすると,文科省が出してきた答申であるという受け止め方になるという,ねじれのようなものがあるのではということも思いました。
 それをどのようにこの段階で調整するや否やというのはあると思うのですけれども,構造的にそのような構造になっていると思いましたので,一方でこれはひとり歩きも当然していくものだと思いますので,どのように見られるか,それをどのように受け止められるかという視点に立ったときに,書きぶりの主体とか言葉を調整する必要があれば,少し検討していただいてもいいのかなと思いました。これは,いわばこの議論の中で出てきたトーンがそのまま反映されていると思うのですけれども,答申としてその形が本当に最適なのかということは少し議論していただく必要があるのかなと思いました。
 この変化,進化し続けていくということに対する覚悟ということでいえば,もし可能であれば,今後の検討課題のあたりで,例えば変化し続けていくということは様々な今後も論点が出てきて,2040年に向けてそのような新たなアジェンダが出てきて,それに対する対応をしたり,新しく仕掛けていくことの連続になる。そのような時代に突入するのであるという前提に立ったときに,例えばこのような様々な議題を常に募り,そこに対するタスクフォースのようなものが非常に柔軟に迅速に形成され,そのような議論を国と高等教育機関や地域,社会がともに連携しながら,常に変化し創造していくというモードに2040年に向けて入りますというような宣言を,最後のところに入れていただいて,ここに挙げていただいている四角の例というのは,その取り掛かりとしてまず取り組むものであって,別にこれが2040年に向けての正解というよりは,このようなことを皮切りに我々は常にこのように新たにもたげてくる課題であり,可能性に対して議論し,進化,対応していく用意があるというようなことを,文科省の側,国の側として,その覚悟を示していただくようなことができると,何か2040年に向けてということにおいてのムードの切り替えのようなことの契機にもしていただけるのではないかということを思いました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 福島委員,どうぞ。
【福島委員】  時間が少しあるということで,余分なことを言うことになるかもしれませんが,川嶋委員も先ほどおっしゃっていたように,これまでのいろいろな答申が十分に成果が得られていないのはなぜなのかというところなのですが,いろいろあるのでしょうけれども,私なりの考えでは,このような答申だとか,例えば設置基準の大綱化だとか,公立大学の法人化だとかいろいろ規制を緩和したり,あるいはこのような方向性があると示しているにもかかわらず,それを受け止める側の大学の方が十分に生かしていないという側面があるのではないかと思うのです。生かしている大学ももちろんあるわけですけれども,多くの場合そうなっていないというようなことがあって,だからこの答申もどこまで受け止める大学の方が生かしてやっていくことができるかどうかというところが,私としてはこれは行けるという確信がまだないのですけれども,この間,ガバナンス改革だとか,例えば学長のリーダーシップは大事だということで,実際にそのように制度としてもなってきました。それだけでも大学経営全体がうまくいくというようにならないと思うのです。
 大学の経営人材の育成というのが,これからは非常に大きくなってくるのではないか。一つの大学に一人や二人いたからといって,大学経営がうまくいくとは全然思えないので,私がいう大学経営というのは,単なる財務だとか企画だとかそのような領域ではなくて,もちろんそれもありますけれども,大学論そのもの,あるいは教育論,そのようなこともちゃんと踏まえた大学経営人材というものがもっと増えていかないと,日本の大学の経営というのはなかなか難しい。強い大学だけが強くなっていって,そうでない大学はどんどんすたれていくということになりはしないかと思いますので,どこかのタイミングで大学経営人材の育成について,今のところは幾つかの大学の大学院,あるいは大学行政管理学会のようなところでやっていることになっておりますけれども,もう少し広い範囲でそのようなことができるような方策も考えていただくようになるといいと考えております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 上田委員,どうぞ。
【上田委員】  いろいろ申し上げましたけれど,本日最終回ということで,まず感謝申し上げたいのですが,私はこのような審議会に出てきてショッキングだったのが,座っておられる委員の先生方が非常に熱く語っているということで,御自分の大学の経営だけでも大変なのに,日本の教育をこれだけよくしようと思って,これだけいらだって,言いたくないことも言い,厳しいことも言うという席に加えさせていただいて,大変勉強になり,大変勇気を頂いた。そのことに,まず感謝申し上げたいと思います。
 また,文部科学省のお役人の方々も,本当に教育を物すごくよくしたいと思って,お一人お一人はやっているのだなということがよく分かったので,そのことは私は大変な宝になります。
 ただ最後に申し上げたいのは,文部科学省というところのブランディングなのです。大学のブランディングでどのようなものをやる,うちの大学はこのようなことをやるというブランディングということは物すごく言われるし,そのことでどのような発信をしよう。
 だけれども,世間から見ていて,文部科学省という省庁がいけている省庁だと思われているのかどうなのか。本当にこの国の教育を変えて,若者のパッションを引き出し,そしてその多様性,正にこの国の宝である若者を,本当に自由で創造性のあるものとして出していくのだという,省のブランディングとして本当にそのようなパッションのようなものを感じさせることができるのか。
 私はいろいろなところで文部科学省の中央教育審議会をやっているのだと言ったら,へえと,余り尊敬される雰囲気ではないのです。おまえもつまらない人間になったなというような。昔の同窓会とかに行くと,どうなのよと,頭硬くなってしまったのではないのかと,おまえ脳細胞死滅しているのではないかというような。そのような感じで,教育という一番脳細胞が活性化し,みんながわくわくしながらやるところが語られているということ自体が間違っているので,ここは大学一つ一つにそのようなものを求めるのであれば,文部科学省が,ほかの省庁よりもうちは輝いているではないかという,一番創造性に満ちている,イノベーティブだという,そのくらいのことを言っていただかないと,この国の教育は根本的に変わらないし,教育というものに対して本当に期待感がある,ここがこの国で一番重要なところなのだという,そこを醸成するための大胆なブランディングが必要なのです。
 そのような意味では,今までどおりのことをやっていてもだめだし,大学も今までどおりのことをやっていてもだめだ。だけれども,省庁もだめなので,そこでとてつもないスターで若者で,私が教育変えますというようで,この人に付いていこうとか,この世代がやっていくのだとか,何でもいいのですけれども,大学でも何でもやっているので,やれることはやらなければいけなくなっているので,そのような意味では,ぴかっとした何か。すみません,最後にこのようなことを言って。だけど,我々が誇りを持って教育を語れるという素地を作るようなブランディングを是非お願いしたいと思います。
 僭越なことを申し上げました。
【鈴木主査】  どうぞ,濱名委員。
【濱名委員】  じれている代表選手でございますが,冷静に最後の「おわりに」,先ほど川嶋さんが指摘された前後なのですけれど,まず真ん中辺に5行の間に「また」が3回も出てきて,学生のレポートであれば減点対象です。それで,この辺の主語を明確に書かなければいけないのではないか。学修成果が適正に評価されていくことが望ましい。産業界をはじめとした社会において学修成果が適正に評価されていくことが望ましい。この書きぶりでは,すごく弱いのだろうと思うのです。まず主体として出てこなければいけないのは,今日の議論で出てきた,文部科学省や各高等教育機関は本答申を生かして改革を推進して,説明責任を果たすことが重要であるということを書かなければいけないのではないか。
 要するに,学修成果の評価というのは,誰かがわっとしてくるのではなくて,文部科学省や各高等教育機関が説明責任を果たすというメッセージが最後にきちっと出てくるのが一つだと思うし,産業界に何とかしてもらうのが望ましいではなくて,産業界と,もう一つ学修者視点といっていたのに,ここで学修者というのが出てこなければいけないのではないか。産業界や学修者も含めて,社会的コンセンサスを得ていく,その努力が必要であるというような書きぶりになるのではないか。
 つまり説明する立場は,中央教育審議会からすれば文部科学省と各高等教育機関であって,社会的コンセンサスの相手は産業界だけではない。産業界と学修者と両方視野に入れた形で社会的コンセンサスというメッセージで締めくくった方が,トーンとしてはきれいなのではないかと思いますので,その辺,「また」を使わないでうまくまとめていただければいいかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 最後になりますが,どなたか全体をまとめて。
【濱名委員】  是非座長が。
【鈴木主査】  未来の方向に向かって,とにかく。先ほど安心してチャレンジということだったのですが,私は少し違和感がありまして,チャレンジするのに安心はあり得ないのではないかと思います。いろいろリスクもあるし,困難もあるわけですが,にもかかわらずチャレンジをしていく。しかも,それが今濱名委員がおっしゃったように,学修者も含めてチャレンジしていくのだという基本的な哲学といいますか,思想といいますか,それが必要なのだろうと強く思っております。
 そのほか,あと3分,4分ございますけれども,今日の活発な御意見,それから皆さんの熱意を示していただいたということに免じて,3分ほど早いのですが,これにて終了させていただきたいと思います。ありがとうございます。
 11月20日開催の大学分科会,将来構想部会合同会議において最終審議を経た上で,11月26日開催の総会において,答申として大臣に手交される予定とのことですが,本日の御意見等も十分参考にさせていただいて,答申に向けて更に精査いただけるようお願いいたします。
 それでは,本日の議題は以上となります。事務局から事務連絡をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  活発な御議論ありがとうございました。資料については,もし御郵送を希望の方がいらっしゃいましたら,いつもどおりよろしくお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 制度・教育改革ワーキンググループは,本日をもって最後となります。文部科学省から一言お願いいたします。
【玉上大臣官房審議官】  玉上でございます。第9期の制度・教育改革ワーキング,本日最後となります。昨年7月に第1回目をやりまして,20回にわたりまして委員の皆様には本当に活発な御意見を頂きました。このグループは昨年3月に中央教育審議会に対しまして,文部科学大臣からなされました我が国の高等教育に関する将来構想についての諮問を受け,特に制度面に関して専門性を有する先生方を中心に議論を行う場として設置されたものでございまして,具体的にはリカレントですとか学位プログラム,11の項目について本当に御議論をいただきまして,最終的に審議まとめとして取りまとめをしていただいたところでございます。
 審議まとめは現在パブリックコメント中も高等教育グランドデザインの答申案に反映されるとともに,審議まとめ本体は答申の別添として更に整理をいたします。今後の高等教育改革の大きな方向性をお示しいただいたものとして,引き続き必要な周知や制度改正を進めてまいります。
 私は実は先週まで九州大学におりまして,この答申は既にいろいろ読ませていただいておりました。役員会とかいろいろな委員会で随分活用させていただいたり,特に最後に御意見がございましたけれども,高等教育が次の時代を作っていく担い手なのだという自覚を持って,大学改革に取り組んでおる身としましては,特に今回委員の皆様にお書きいただきました括弧書きの部分は具体的で,とても参考にさせていただいたところでございます。
 私は立場が変わって,今いろいろ微妙な段階におるのですけれども,これをちゃんと受けまして,今後高等教育機関とちゃんとコミュニケーションを取って,この答申を基に是非いろいろな議論をさせていただいて,高等教育の更なる改革に進めていく。
 それから文部科学省自体につきましても,先般来大変な御迷惑と御心配をお掛けしているわけでございますけれども,今,大臣以下,末端の職員に至るまで真剣に議論させていただいているところでございまして,正にこれから変わる文部科学省というものを,是非委員の皆様にも御支援と御理解と御指導を賜りたいということでございます。
 鈴木主査,小林主査代理をはじめとして,委員の皆様方の御尽力に対しましては,この2時間の議論で私は最初で最後であったわけでございますけれども,本当にいい勉強をさせていただきました。引き続き委員の皆様には御指導賜りますように,よろしくお願いいたします。
 本当にありがとうございました。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 委員の皆様におかれましては,昨年の7月から本日まで,20回にわたり活発な御議論をいただきまして,ありがとうございます。最後に私から一言ということなのですが,ここに書いてあるとおりです。我々,先ほど高等教育を担っていく者として,社会とのかい離があまりないような,しかしダイナミックに柔軟に取り組んでいかなければいけないということは非常に重要だと思いますので,それぞれの大学を率いていく責任者として,我々も元気にやっていきたいと思いますので,文部科学省とも一生懸命仲よくやっていきたいと思います。
 それでは皆さん,本当に御苦労さまでした。今後ともよろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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