制度・教育改革ワーキンググループ(第3回) 議事録

1.日時

平成29年8月29日(火曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 学位プログラムを中心とした大学制度について
  2. 社会人の学び直しについて
  3. 将来構想部会での議論について

4.出席者

委員

(臨時委員)安部恵美子,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,
篠田道夫,鈴木典比古,福島一政,本郷真紹,前田早苗,
前野一夫,溝上慎一,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育長,村田私学部長,
瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),
蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,角田私学行政課長,
小山国立大学法人支援課長,堀野高等教育政策室長 他

5.議事録

【鈴木主査】  それでは,所定の時刻になりましたので,第3回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。委員の皆様,御多用な中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 本日は,先般の諮問事項の2点目,「変化への対応や価値の創造等を実現するための学修の質の向上に向けた制度等の在り方」から,1,学位プログラムを中心とした大学制度について,それから,2,社会人の学び直しについて議論をいたします。また,本ワーキンググループが設置されている親会議であります「将来構想部会」の現在の議論の状況について,事務局から御報告いただきます。
 それでは,事務局から配付資料を確認してください。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第に記載しているとおりでございます。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,議事を進めます。
 一つ目の議題は,学位プログラムを中心とした大学制度についてであります。これまでも,学位プログラムにつきましては,様々な提言・指摘がなされておりまして,最近の大学分科会等の議論の中でも,委員の先生方から多くの御意見を頂いているところであります。本日は,この学位プログラムについて,現行制度の状況の大学における取組,課題等について,整理した資料を準備しておりますので,それらをご覧いただきながら,御議論いただきたいと思います。
 それでは,事務局から説明をお願いいたします。
【石川大学振興課課長補佐】  大学振興課の石川でございます。資料1に基づき,学位プログラムを中心とした大学制度に関しまして,本日の議論の参考になる資料を準備しておりますので,御説明をさせていただきたいと思います。
 まず,資料1,1ページ目,1をご覧いただければと思います。
 学位プログラムにつきましては,これまでも中央教育審議会の議論の中で度々話題に上がっているところでございますが,まず,定義について,共通理解を図るために御確認をさせていただければと思います。
 こちらは平成21年の大学分科会の配付資料から抜粋したものでございますけれども,「学位プログラム」とは,学生が短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位といった学位を取得するに当たり,当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力が明示され,それを修得するように体系的に設計された教育プログラムをいうということでございます。
 また,「学位プログラムを中心とした大学制度」とは,従来のような学部や研究科等の組織に着目した大学制度ではなく,学位の取得を目指す学生の学修の視点に立って学位を与える課程,学位プログラムの実施に着目した大学制度でございます。
 この学位プログラムを中心とした大学制度につきましては,これまでも中央教育審議会等において議論が積み重ねられたところでございまして,主な提言として,2番で御紹介させていただきたいと思います。
 まず,平成17年の将来像答申の中でも,教育の充実の観点から,学部や大学院といった組織に着目した整理を,学士・修士・博士・専門職学位といった学位を与える課程の中心の考え方に再整理していく必要があると提言を頂いたところでございます。
 また,平成24年のいわゆる質転換答申の中でも,学生の能力をどう伸ばすかという学生本意の視点に立った学士課程教育へと質的な転換を図るためには,教員中心の授業科目の編成から学位プログラム中心の授業科目の編成への転換が必要であると提言いただいたところでございます。
 また,昨年3月に三つのポリシーの義務化を図りましたが,その際に作成いたしましたガイドラインでは,大学教育を充実するためには,三つのポリシーを起点とするPDCAサイクルをポリシーの策定単位ごとに確立し,教育に関する内部質保証を確立することが必要であるとされています。例えば,三つのポリシーの策定単位が学位プログラム単位の場合は,2ページ目でございますけれども,各ポリシーに基づいて実施される入学者選抜及び体系的で組織的な教育を通じて達成されたかどうかを自己点検・評価し,学位プログラムについて必要な改善・改革を行っていくサイクルを回していくことが求められているとされたところでございます。
 こういった過去の提言,議論を踏まえた中で,今回の高等教育の将来構想の諮問においても,学問の進展や社会の変化に対応した教育や学生本位の視点に立った学修を実現していくためには,学位を与える課程,学位プログラムに着目した在り方をより重視していく必要があるとされています。こうした「学位プログラム」の位置付けなど,学修の質を向上させるための課題について,設置基準,設置審査,認証評価,情報公開の在り方を含めた総合的かつ抜本的な検討が必要ということで,本日も含め,中央教育審議会において御議論いただいているところでございます。
 続きまして,学位プログラムを取り巻く大学の現行の制度を整理をしたのが2ページ目,3.になります。
 まず,制度といたしましては,大学には学部を置くことが常例であると学校教育法において規定しておりまして,学生と教員が所属する学部・学科の設置について,文部科学大臣の認可に係らしめることにより,質を担保しております。具体的には,学部・学科が授与する学位,当該学位に応じた教育カリキュラム,当該教育カリキュラムを教授するための専任教員の資格や数,当該学部・学科に必要な校舎面積等を設置認可,設置基準に基づき審査をするという形で質保証をしております。
 従いまして,基本的には,学生の所属する組織,教員が所属する組織,提供される学位プログラムというものが1対1という関係になることが現行の設置基準の考え方かと思います。新しい学位プログラムを実施するためには,新たな組織を設置していくというのが原則となっていくことかと思っております。
 また,昨年の3月,学校教育法施行規則の改正により,ディプロマ・ポリシー,カリキュラム・ポリシー,アドミッション・ポリシーのいわゆる三つのポリシーを策定・公表することということが義務付けられております。また,同時に行いました細目省令の改正によりまして,認証評価の基準として,三つのポリシーに関すること,内部質保証に関することが追加をされております。
 こういった現行制度の中で,これまでの提言も踏まえ,学位プログラムを中心とした大学制度の在り方に関する取組について,幾つか紹介をさせていただきたいと思います。
 まず,現行制度におきましても,専任教員は,一つの学部・学科にした所属できませんが,兼任教員として他の学部・学科や大学で提供する別の学位プログラムの授業科目を担当するということは現行制度でも認められております。
 また,こういったものに,もう少し組織に着目してまいりますと,参考としましては,9ページに,九州大学の学部,研究院,学府の構成という資料を載せておりますけれども,例えば,九州大学のように,総合大学のような大学院におきまして,認可された学部・学科とは別な形で教員組織を組織しまして,異なる組合せ,より教育がやりやすい形での教員組織の構成としております。例えば,この9ページの参考2で申しますと,典型的,一番上で考えますと,文学部として認可されたのは,文学部に必要な教員が当然認可されているわけですけれども,この認可された教員を,九州大学では,より効果的に実施するために,人文科学研究院と人間環境学研究院に,教員を分けて配備しているというやり方を取っている,こういった大学もございます。
 また,次に,参考としまして,10ページに,新潟大学の例を載せておりますけれども,こちらでは,全ての授業科目を,例えば全学開設科目という全学科目化いたしまして,それぞれの学部が開設する学位プログラムに最も必要な授業科目を,学部・学科の垣根を超えて,大学全体から選択して配置するような例と,こういった取組も見られるところでございます。
 また,最後に,11ページに,九州大学の21世紀プログラムの運営体制の図を載せておりますけれども,この21世紀プログラムでは,既存の4年生学部・学科の定員を1名程度ずつ活用いたしまして,20名程度のプログラム定員を設けて,21世紀プログラムの授業と,既存の学部が開設している授業科目を組み合わせた21世紀プログラムという学位プログラムを作り,プログラムに合わせて,複数の組織から担当教員をしっかり配置することで,学部・学科を横断したプログラムを設計しております。
 また,この九州大学の21世紀プログラムにおいては,全ての学部・学科で,学士(学術)の学位を出せるようにすることで,このプログラムの修了生に対して,現行制度の中でも適切な学位プログラム,教育プログラムを作るための工夫もされております。
 こういった現行制度を踏まえまして,主な課題として,3ページ目,(3)として整理をさせていただいております。
 現在の学部・学科という組織を設置,認可するという制度の中でも,学位プログラムごとに三つのポリシーを策定しまして,この三つのポリシーに基づく内部質保証を徹底するということにおいての学位プログラムを中心とした大学教育の実施は一定程度可能かと考えております。
 一方で,現行制度は学位プログラムを実施する組織を置くことを前提とした制度となっておりますので,組織の変更を柔軟に行うことや学際的な領域のカリキュラムに合わせた組織編成は困難であること,あるいは,カリキュラムが硬直的になりやすいといった指摘もあろうかと思います。
 また,教員は専任教員としては一つの学部・学科にしか所属することができませんので,その点において,教員中心の授業科目の編成となりやすく,あるいは,複数の大学等で教員を活用することが難しいということもあろうかと思います。
 こういった現状を踏まえまして,本日御議論いただきたい観点としまして,4.論点として,上げさせていただいております。
 一つは,学位プログラムの制度上の位置付けに関しまして,三つのポリシーの策定・公表の義務化,また,これに基づく内部質保証認証が制度化されてきましたけれども,さらに,学位プログラムを中心とした大学制度へ転換していくという意味について,どう考えるかということについて御意見を頂ければと思います。
 特に,4ページ目,一番上になりますけれども,なかなか学位プログラムを中心とした大学制度が,大学全体やプログラムを享受する学生,それから,学生,卒業生を受け入れていく社会,あるいは,産業界といったものに対して,学位プログラムを中心とした制度にしていくことのメリットをどう考え,また,どう共有していくかということについて御意見を頂ければと思っております。
 それから,学位プログラムの実施に係る教育課程に関しまして,例えば,学位プログラムの単位をどう考えていくかということについて御意見を頂ければと思います。例えば,現在,法学部という単位で考えたときに,学科レベルのようなもので考えていくのか,それとも,もう少し細かいコースレベルのようなもので考えていくのかということについて御意見を頂ければと思っております。また,既存の学部・学科において行われる教育課程を,学位プログラムとして名実ともに機能させるためには,より三つのポリシーの具体化,実質化を進める必要があるのではないかと考えております。
 また,こういった学位プログラムを中心とした大学制度を推進していくことになりますと,学位プログラムに合わせて,学位も授与していくことになってこようかと思いますので,学位に付記する専攻分野の名称の多様化ということにも繋がるのではないかと考えているところでございます。
 3番目として,学位プログラムを中心とした大学制度とした場合の質保証の仕組みについて,どうあるべきかということについて御意見を頂ければと思います。
 幾つかの検討の視点としては,まず,「学部・学科」,又は,これに準じる教育研究上の組織に着目した設置認可をする代わりに,組織横断的に行われる教育課程を,学位プログラムというものを制度上にどう適切に位置付けるべきか,また,その際に,例えば,医学部,歯学部,獣医学部のように職業の養成,資格と密接になっているものについてはどう考えるかということについての御意見を頂ければと思います。
 また,学位プログラムを中心とした大学制度とした場合,現在も行っています教教分離が進むことが一定程度考えられますけれども,学位プログラム,学部を置くことを常例とした教育研究上の基本となる組織の在り方についてどう考えるか,あるいは,学生が所属する組織というものについてどう考えるのかということについて御意見を頂ければ幸いでございます。
 また,教員中心の授業科目の編成から転換していくためには,一つの学部・学科での専任教員となれる仕組みを改めるべきではないかということと,一方で,その代わりとなる学位プログラム運営に係る教員についての仮の何か担保する観点ということについてはどのようなことが考えられるかということがあろうかと思います。
 また,派生してくるものといたしまして,学位プログラムを中心とした大学制度としていった場合に,現在,学部・学科単位で管理されている入学定員,収容定員というものをどう考えるか,あるいは,校地校舎面積基準など,基本的に学部単位で設定されている設置基準をどのように考えているか,このようなことが学位プログラムを中心とした大学制度を進める上では,クリアしていかなければいけない課題であると考えております。本日は,ここに上げられた検討の視点例も含め,広く御意見を頂ければと思っております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの資料や事務局からの説明を踏まえまして,皆様の御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。お願いします。

【本郷委員】  8年ほど前に,中央教育審議会の下に,学位プログラムの検討ワーキングができまして,舘先生が座長だと思うのですけれども,そのときに,かなり突っ込んだ課題,それから,方向性等についての答申と申しますか,報告が出されたと思います。
 ただ,当時の状況からしますと,まだまだ一朝一夕にそれを実行するに足るだけの条件が整っていないということで,結局,十分にそれが反映されたことがなかったと思うのですけれども,その代わり,三つのポリシーというようなことも出てきて,かなりその環境というか条件が変わってきておりますので,そのとき,もう8年も前で,その辺の書類がどの程度手元にあるかというのは定かではないのですけれども,もしそういうことがございましたら,また御提示いただきましたら,何か参考となるべきことがあるのではないかというふうに思います。かなりの頻度で催されたというふうに記憶しております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。いかがでしょうか。それは本日でなくてもいいですよね。
【本郷委員】  そうです。
【鈴木主査】  8年前からということで,学位プログラムは平成12年と書いてありましたか。いや,私の記憶が定かではありませんが,かなり以前からそういう意識,認識があって議論されてきたという経緯がございまして,ここで改めて学位プログラムについて,どのように持っていったら,考えたらよろしいかということを考えていただいているわけですけれども。
【川嶋委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  問題提起ということで発言させていただきます。この問題を考えると,あるところをつつけば,別のところに影響するというような複雑な問題だろうと思いますけれども,まさにこの資料1のタイトルにある大学制度に関わる大問題です。つまり大学というものをどう考えるかというのが一つ大きな論点になるのだろうと思います。
 欧米圏の大学では,大学として設置が認められると,学位授与権がその大学に与えられて,自律的に,質保証も含めて,運営できるという,そういう制度です。日本の場合は,御説明の2ページ目にあったように,要するに学部・学科という、いわば学位プログラムごとに設置認可しているので,大学の地位を与えられても,自らの責任で新しい学位プログラムを開設するということはできない。その点をどう考えるか。
 もちろん,アメリカでも,州によっては,新しいプログラムを開設するときには州の認可を得なければいけないという,そういう州もあるようですけれども,そもそも,その大学というか,学位授与権というものをどう考えるかというのが一つ,大きな論点になると思います。
 それから,もう少し具体的な論点になりますと,本日御紹介していただいた筑波大学とか九州大学とか新潟大学といったような大学は,総合大学ということもありますし,既に設置されている大学における工夫だったと思いますが,今後,学位プログラムという観点から大学の在り方を見直していくと,先ほどの大学をどう考えるかということに関わって,全く新しい大学を作るときに,設置基準や学位授与権をどのように理解すればよいか。
 一度大学として設置が認められれば,先ほど申したように,学位授与権をもう完全に授与されていると考えれば,その後はそれぞれ大学の創意工夫と,あと,質保証に対する責任,例えばTP比できちんと質の保証を考えていけば良いわけです。イギリスでは,国による定員管理はなくなったので,この前,ブリストル大学で聞いてきた話だと,学生定員を16人増やすと,1名教員を増やすという形で質保証しているということでした。
 ですから,繰り返しになりますが,学位プログラムの考え方を導入したときに、全く新設のの質保証をどう考えるかというのが二つ目の問題だと思います。
それから,既設の大学でも,今,御紹介いただいた大学などでは,工夫して新しいプログラムを解説していますけれども,認証評価等ではそれぞれの学位プログラムごとに,必置教員数はきちんと確保されているということを確認しているわけです。教員が一つの教育組織にしか所属できないということが、この資料の4ページ辺りに記載がありますけれども,本日の午前中に開いた専門職大学院ワーキングでは,専門職大学院と学士課程のダブルカウントを認めてはどうかというような議論をしたところです。そこで、ダブルカウントを認めた場合、教員組織の在り方はとりわけ質保証と関連してくるわけですが,その場合には,先ほど言ったTP比で管理するとか,そういう観点,切り口も,論点もあるだろうということです。
 日本の場合,教員については,特に専任教員の定義について,余り十分議論されてない,共通理解がないので,今後,複数の教育プログラム,学位プログラムを必置専任教員として担当してもよいというふうになると,教員の教育負担が増えるというような懸念も出てきます。これは鈴木先生の前任校のICUでお聞きしたところでは,教育負担は、単位数でコントロールされていると言うことでした。何単位だったでしょうか。
【鈴木主査】  18かな。
【川嶋委員】  18クレジットです。他の大学とは異なり,コマ数ではなくて,単位数で教員のエフォートを管理するということで,学生の学習量を単位数でコントロールするということと同じ仕組みです。ですから,複数の学位プログラムで専任教員となった場合,専任教員の教育ロードという,教育責任をどう捉えるかとか,いろいろな論点があるのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 では,金子委員,どうぞ。次,前田委員,お願いします。
【金子委員】  こういった検討が始まるべきだと私は非常に主張してきましたので,始まったことはうれしいと思います。ただ,ここに書いてあるいろいろな疑問はこのとおりだと思いますが,私はそれぞれの点について全て言いたいことはあります。問題は,これからこれをどのように議論していくおつもりなのか,こういう書き方であると,それぞれについていろいろなことを言っていれば,そのままいくのか,それとも,何らかの段階でどういうことが必要なのかということについて整理して,新しく議論の進め方を考えていくのか。
 まずお聞きしたいのですけれども,今,簡単に出てきていますように,この学位プログラム制は,設置基準上の今の規定自体がもはやかなり現実,伝わらなくなっているという点もありますし,設置基準の書き方自体,外形的な基準,学生数,教員数等々についての設置基準,外形的な基準を一定の枠組みと併せて明確化するという書き方自体が,もはやかなりいろいろな点で合わなくなっていると,できなくなっているという点があります。
 それから,もちろん,もう一つ,学生定員とかの問題,それから,教員の任務形態,それから,エフォートの管理,そういった点についても,ただ,これだけ,ここの学位プログラム制だけではなくて,例えば専門職大学とか専門職大学院,あるいは,大学院との兼任等々,あるいは,それから,非常勤教員の増加といった点についても,雇用形態にさかのぼって規定を考え直さなければいけない点もいろいろとあると思います。
 それから,ガバナンスについても,例えば,現在の教授会というものは必ず設置されなければいけないという規定が,例えば組織が二重化したときにどこに適用されるべきなのかとかいうような問題ももちろんあるわけです。それから,認証評価についても,どこの単位を認証評価の単位とするかと。この書き方ですと,認証評価はプログラムごとにやるというのが原則であるかのごとく書いてありますけれども,必ずしも今の認証評価はそういうふうになっていないわけです。
 非常に体系的に現代の高等教育制度の根幹に関わるところの全てに関わる問題がここにはあるわけで,それが特に一番下の基礎単位である学位プログラムを考えるときに,全て出てくるわけです。
 これをどのように整理して,どのように改革の道筋を考えていくのかというのは,私は一種の戦略が必要だと思うので,一般的にぱらっと問題を出されて,本日はいろいろな問題,出すのが目的なのかもしれませんけれども,将来にわたって,どのように議論していくのか,それについて,見通しをお聞かせいただけないでしょうか。
【鈴木主査】  これはいかがでしょうか。金子委員からの,事務局というか,文部科学省に対する御質問でもあるというふうにも解釈いたしますが。あるいは。どうぞ。
【三浦大学振興課長】  大学振興課長でございます。 本日の議論としては,ただいま御指摘がありましたように,前期から引き継いだ課題について,まずはいろいろな課題について,このワーキングの回数を重ねておさらいをするという目的で今回はお示しをしていますので,その意味では,今御指摘があったように,ぱらっと出しているという御指摘がございましたけども,考えられる論点を挙げさせていただきました。もちろん,そのほか,例えば前回御議論いただいたような話,あるいは,これから御議論いただくような話とも当然大いに密接に関連することでありますので,まずは,その論点をさらした上で,今後の方向性,もちろん,制度改正等で対応できるものがあれば,できるだけ早く対応したいとも思っておりますが,それはまさに今,学位プログラムのこのここに書いてある問題だけやればいいというものでも,問題でもないと思いますので,一通り論点の整理が終わった段階で,また御相談させていただきたいと思っています。
【鈴木主査】
  継続してこの意識を持っておいていただきたいと思います。
 では,前田委員,どうぞ。その後,福島委員,お願いします。
【前田委員】  金子委員から,とても大きな問題が提起されたので,その前から,一応,札は立てていたのですが,もう少し現実的なことでお話をさせていただきたいと思います。
 まず,認証評価において,大学設置基準で決まっていること以上のものを,自分たちの基準で見ていくというのはなかなか難しいことですね。特に教員の件というのはそうだと思います。
 設置基準の教員数を学部がそれぞれ満たしているかどうかという話なのですが,もう既に,一般教育の必要専任教員数が収容定員の大学全体で必要な数になっているので,実態は見えにくく,最後に合計で足りているかどうかというような形になってしまっているということが一つあります。
 それと,三つのポリシーに関しては,大学全体として大体は立てていて,その後,学部なり学科なりに細分化していく形を取っています。そこで一番大元では,教養教育が大事だと掲げられているのだけれども,学部や,もっと小さい単位で作られているポリシーをみると教養教育が抜けていっているということがあります。 1年生から4年生までを通したものを見通して考えることの重要性からしたら,学位プログラムの考え方の方が合っていると思います。
 ただ,今度は,学位プログラムになったときに,例えば認証評価で必要な教員をどう考えるかというとき,大学全体として,またプログラムとして,教員対学生の比率をしっかりと見るということは,これはやはり重要だと思います。学位プログラムに十分な教員がいるのかということと,大学全体として同じ教員がすごく忙しくなっていて,非常にバランスが悪い,十分に教員がいるのか見えにくくならないこと。その辺りの兼ね合いに留意が必要だと,思います。ただし,さっき言ったように,教養教育をどう位置付けるかというのははっきりしてくるとは思います。
【鈴木主査】  福島委員,どうぞ。
【福島委員】  率直に言って,学位プログラムが分かったようで分からないというのが感想なのですけど,これは学位プログラムを中心とした大学制度ということは,学部・学科をなくすということなのでしょうかね。
 もしなくすということであれば,それが学部・学科とどう違うのかなと思いますし,ただ,いわゆる学力レベルが高い学生が所属する,行けるような大学の場合には,学部・学科があった上でこういうものを作るというのは効果があるのかもしれないと思うのですが,私どものように,いわゆる分厚い中間層の大学,分厚い中間層の学生が来るような大学の場合には,要するに,今,私どもが取り組んでいる学生一人一人の成長に責任を負う,そういう教育システムをどのように作るかと考えている大学にとっては,これが両方絡み合うというのはなかなか難しいなと思います。
 質保証ということがすごくこの間,言われているわけですけれども,もしそういうことであれば,前回のときに申し上げたように,卒業の段階での検定ですとか,検定制度ですとか,そういうことを考えた方がいいのではないかなと個人的には思うのですが,もっと深いところで学位プログラムというのが検討されてきていると思いますけれど,先ほど,本郷先生がおっしゃったような,以前にもうかなり突っ込んだ議論をされているということなので,その辺りも含めて分からないと,どうも余り突っ込んだ議論がしにくいなという感じがしております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  私からは質問と意見です。
 質問というのは,今回のこの学位プログラムのこの議論というのは何年先を見据えた議論なのか,我々は議論しているのか,していくべきなのかというか,事務局の方でどのようにお考えになっているのかということがあると思います。
 つまり,それは大きく言えば,この人口減少社会というのはもうはっきりと分かっていて,その中で人材を育成していくということのほかに,やはり今度は教える側の人たちを確保しておかなければならなくて,社会の全体の人が少なくなったとき,どういうところにどういう人,人員が配分されていくのかということと大きく関わると思います。 そのときに,一方で,余りここの中では議論に出てきていませんが,情報インフラというかデジタル環境とか,はすごい勢いで変わっているわけです。そうすると,大学そのものがどうなっていくのかとか,その制度,設置認可の制度自体も変わるはずだと思います。例えばオープンエデュケーションとかMOOCで認定証が出ていけば,企業とか社会の方はそれでいいとして,大学というのはもしかしたら意味がなくなってくるのかもしれない。
 そういう中で,今あるこの制度をどうしていくのかということを考えるのでしたら,今あるものを小手先の改善等を積み上げていくというフォアキャスティングではなくて,あるところに何年後に向けての制度改革であるということであれば,そのときにどうなっているのか,どうあるべきかというそのバックキャスティングのような形で,今のところからそこに向けて,どのようにランディングさせていくのかという議論が必要だと思います。これは何年後,どういうことを目指した議論なのかということです。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 先ほども金子委員の方から,新しくこれをやるつもりなのかと,あるいは,予定なのかというようなニュアンスの御質問がありまして,今,美馬委員からも,何年先を見据えてやるのかということで,そのための,何ていいましょうか,工程というものを考える必要があるのではないかというふうなニュアンスの御意見を頂きました。
 そのほか,いかがでしょうか。溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  よくよく御理解されていると思うのですけれども,抜けるといけませんので,個人的な考えとして述べておきたいということなのですけれども。
 今進められている範囲での三つのポリシーとか学修成果,質保証というのはそれなりには肯定的に受け止めていて,やはり昔と違いますので,例えば京都大学でも,学修をしない学生に対して,無責任に,あんなのはどうでもいいよとか,そんなことを言う先生は大分減っていますし,しんどい学生に対するケアとか,そういうことも大分,学内としては意識が高まっていますが,やはりその高まった意識をどこで具体的に実際の何かしらの作業に落とし込んでいくかといったら,アクションが起きないですよね。
 そういうときには,こういう今回の質保証とか,三つのポリシーとか出てきましたので,そういう意味で,4年間,あるいは,6年間を掛けて,あるいは,大学院だったら,修士とか博士とか,こういう形で育てていく,そして,途中,途中にいろいろなチェック機能を付けていく,そして,最終的には成果を可視化して出していくという中で,かなりしんどいところもありますけれども,私は,かなり教育現場が前に進むという印象を強く持っています。
 その上で,今の進められている範囲のところではかなりの理解を私としては持っているつもりですけれども,本日立てられている議題で,こういうことはどうなるのかとずっと思っているのは,やはり研究室といいますか,日本の教員も学生も,私たちが育ってきた課程も,所属意識って非常に強いですよね。学生もプログラムで,私は心理学とか教育学が専門ですけど,そういう意味では,学位プログラムとか,コースで考えることができるかもしれませんけれども,それでも,やはり例えば教育学部に所属しているということの方がやはり大きくて,その中で心理学を学んでいるとか,こういう何か意識が多分多くの教員であったり,学生であったりはあると思います。
 それがプログラムを超えたところで,特に研究室で最後,仕上げていくという,そういう言い方を,私たちの教員,よくしますし,私はそこはいいのだけれども,もう少し,前田先生がおっしゃったような,教養とかGS辺りが抜けているのではないですかとか,いろいろ話してきましたので,出口だけでいいという話はしないのですけど,ただ,出口の最後の後半に向かって,プログラムを超えて学生を結構育てているところがあります。
 そこら辺が所属意識とやはり関連していると思っていて,そこが,何かしら,しっかり含み込まれた施策になっていけばいいのですけれども,この点だけ,考えとしてお伝えしておきたいと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】  御説明を伺っていて,大学の目標がかなり特定をされて,学生の成長によりシフトした機能が可能になるというようなことで,少人数単位で丁寧な教育が行われる,これからの学生の成長につながるシステムの可能性というか方向性というのがあるのではないかなと思いますので,そういう編成ができるように,設置基準を,教員の所属だとか,学生の所属とか,柔軟にしていくという方向については方向としては多分いいのではないかと思うのですけれども。
 やはりその際にもやはり気になるのがガバナンスの問題とか教学マネジメントの問題で,これも先ほどの御発言では,例えば川嶋先生が学位授与権のことだとか,金子先生も教授会の在り方というというふうに触れられていましたけれども,教育の実際の単位をどのように置いていくのかというところで,どうなるのかというのは今全部を見通すということはできないわけですけれども,大きな転換が多分要るのではないかと。
 つまり,教学マネジメントとか内部質保証システムをやっていく単位というのを学位プログラム単位に移すということになりますと,今の法令では,学部とか学科単位で教員の管理をするというか動かしていくような仕組みになっているわけですけれども,基礎のところが学位プログラムに移るということになると,学位プログラムの責任者というのが教学のPDCAをしっかり動かしていく,つまり,教員の,あるいは,教育の評価をして成果が上がるようにしっかり機能して管理をしていかなければいけないということになってくると,むしろ基礎単位はそこのところ,そうなると,学位プログラムの責任者の権限とか役割とかという問題は当然,そこが機能しないと,実効性がない。
 そうすると,学部長とか学科長とか,旧来ある例えばコース長があるとすると,その辺りの権限の関係で,余り中間層がいっぱいいるということも管理ができないわけですので,そうすると,実効性ある教育を作っていく上で,学位プログラム単位の管理体制と学部長あるいは学長の全体の整合性のあるような管理の仕組みというのを,あるいは,権限や役割,ある程度,これ,法令で示していかないと,学部というのが今,現に学校教育法に決められた強力な体制としてあるわけなので,それだけれども,学位プログラムにした場合には,学部単位でPDCAを回していくというよりは,プログラム単位で基礎的に回していくのをベースに置いて権限委譲していかないと,多分成り立っていかないというふうにも思いますので。
 本日の御提案で,最後の方に,学内の運営組織の在り方というふうに課題として出されておりますけれども,この辺りのところを相当詰めて検討していかないと,実際にシステムを重視するといっても,その運営システムなり権限というのを確立しない限り,実際には機能していかないと思いますので,その辺りのところを含めて,深い検討が要るのではないかというのが一番目の感想です。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。今まで学部・学科に所属した教員や学生を,要するに,3ポリの策定が義務化されて,質保証がされた教育課程の中での学位プログラムで教育していくというのは非常にいいことだと思います。特に,大学教育をどう考えるかという御意見がありましたが,今回,大学の仲間の一つに専門職大学,専門職短期大学というのが入ってきますと,そもそも,学位プログラム,いわゆる,専攻分野別の質保証というのが非常に重視されるということにもなります。
 そうすると,当然,学位の分野,名称というのも非常に多様化するというのはもうある程度予測できるわけです。専攻ごとの,さらに専攻の融合,その中での主専攻,副専攻の違いも考えていかなければならない。特に専門職大学の場合は,クラス単位の人数が普通は少ないです。その中で教員の兼任の許容範囲だとか,あるいは,施設・設備の共用の面で,要するに,弾力性を持った大学というのを作らなくてはいけないということになってくるのではないかと思います。
 ただし,その際にどう考えるかということなのですけれども,弾力性を付加したときの大学制度の質保証というのをどのように考えていくかというのはとても大事なことになっていくのではないかと思います。大学とは何か,その質というのはそもそもどういうものをもって大学というのかということに帰ってくるのではないかと感じております。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがでしょうか。小林委員,どうぞ。
【小林主査代理】  本日はいろいろ意見を出すということなので,方向性というのは今日のところでは出せないと思うのですけれども,ただ,一つ,これから考えていかなければいけないこととして,どうも今のところ,コンセンサスが得られてないのは,既存の学部とか学科を残した今までのやり方を取る,その上で,学位プログラムというものを認めていくようなものを作っていくのかという話なのか,それとも,福島委員が言われたように,既存の学部・学科というものを全部,学位プログラムに移行して,学位プログラム中心の大学にするのか,これはアメリカ型の大学に近くなると思いますけど,そういうような議論をしているのかどうかということははっきりさせなければいけないと思います。
 もし,既存の学部・学科を全部,学位プログラムに移行するというようなことになると,これは物すごく大きな話になりますから,これは美馬委員が言われたことですけど,この将来構想というのは2040年を見据えてということだということになっていますので,2040年までにそれをやるというような構想を立てて,金子先生が言われた戦略を考えなければいけないわけで,その辺りのことを,このワーキンググループとしてやはりどういう方向を向かっているかということは少し検討する必要があるかと思います。
 私としては,いきなりそれを目指すのはかなり難しいことだと思っています。学位プログラムに近いものを幾つかの大学がもう作られているわけで,本日,その紹介があったわけですけれども,そういったものをやはり参考にして,なぜそういうものを作ってきたのか,それで,そのプログラムとして何ができないのか,設置基準上の問題がどういうことがあるからできないのかとか,そういう議論をまずもう少しする必要があるかと思っています。
 多分,今,質保証が設置基準と,それから,認証評価という,これも二重でやっているわけで,これがかなり限界が来ているというか,本来は質保証は認証評価の方に移行するというのがもともとの発想だったと思いますが,そういうふうにできていないというようなことと同じような問題が起きる可能性があるわけですね。
 ですから,設置基準による学部・学科,それから,学位プログラムという二重体制を取ると,いろいろな問題がまた起きてくると思います。その辺りのことをどう考えるかということをこれから検討していく必要があるのではないかというふうに思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 前野委員,どうぞ。
【前野委員】  私も,今,いろいろ御議論いただいたところに賛同しているという状態ですけれども,学位プログラムと既存の組織をどのように併存させるかというのは相当やはり長期にわたって議論しなければいけないことではないかと思います。
 現段階では,やはり,現在の例えば大学学部なり学科の組織を基にして学位プログラムを考えていくと,そういう状態ですので,いわゆる学位プログラムの長所,短所,両方あると思うのですが,長所は見えているという状況かなと思います。それはやはり横断的であること,あるいは,縦断的であることとか,そういったところは非常に長所で学位プログラムを取ることに脚光を浴びているということだと思うのですけれども,一方で,現行制度では,学位プログラム,提供される学位プログラムと教員が所属する組織と学生の所属する組織がイコールという,そういう議論が1対1の関係の原則という大前提を置きますと,これはかなり難しいことになるのではないかと思います。
 先ほど,いろいろな先生がおっしゃっているように,やはりプログラムはプログラムなのですけれども,一方で,学生がいて教員がいて,また,職員がいて,あるいは,学費を出している保護者ですね。ステークホルダー的な人がいるということですので,そういった組織の要求を全て満たすようなものが学位プログラムにまだあるかどうか分からないと思います。短所もありますので。
 具体的に,例えば高専ですと,非常に小さな単位で学科を構成しています,40名ですので。したがって,横断的な学位プログラム的なものは,JABEEも併せて,取ることが可能ですけれども,一方で,いろいろな学生がおりまして,様々な問題が起きてくると,そのプログラムの範囲ではカバーできなくなって,元いた学科の先生に相談してくださいということになるのだと思います。
 ですから,そこはすごく問題で,やはり学生の立場から考えると,自分はどこに所属していて,かつ,自分のやりたいことは何であるかという二つの面がありますので,それをうまく満たすような組織の議論をしていただかなければいけないかなと思います。
 また,同じく,学位プログラムに必要な特性として,やはりアーカイブが取れること,つまり,20年たっても,30年たって,その学位プログラムがあったといういろいろなデータをしっかり保存すること,それはどこが保存するのだろうかと,そういうことがあると思いますし,また,永続性もかなり問題になってくるのかなという気はしております。
 どうしても学位プログラムはテンポラリーなイメージが少しありますので,そうでないようなことをしっかり考えなければいけないのかなと思っております。また,三つのポリシーもやはり学位プログラムごとに策定すると,例えば,そのときはよく社会情勢によく合っていると思うのですが,時代が変わるとまた変わって,それが学位プログラムのいいこと,いい面でもあると思うのですが,逆に,弱い面でもあるかなと思います。100年たったときに,その学位プログラムがどういう評価を受けるか,OBがどういう評価を受けるか,そういったことはなかなか見えてこないのではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがでしょうか。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  本日は初めの方の議論ですので,かなり今の出てきたお話の中で,一番,一つの議論の要点は,なぜ学位プログラム化が必要と考えるのかということだと思うのですけれども,私は三つくらい理由があると思いますが,一つは,やはり大学を出てからの人生と大学教育との関係というのが,今までは何か一定のものがあると,あるかのごとく仮想していた,仮想というか,あると思われていたわけですけれども,それをある程度具体的にイメージしなければいけない,つなげるということが要求されている。
 それは必ずしも要求していない人もいるかもしれませんが,しかし,かなりの人たちが要求するようになっている。特に今度の専門職大学をめぐる過程を見ても,きちんと将来のキャリアが見えてないと,一定の教育ができないのではないかという人たちが非常に多いわけです。これはこれなりに私は全く否定すべき,頭から否定すべき議論であるとは思いません。逆に,教養があった方がいいという人もいます。それから,何とか学,法学とか経済学とか学を学ぶことによって,将来の基礎ができると考える人もいるわけだと思います。
 そういう意味で,キャリアと大学教育との関係にかなり濃淡ができて多様性が作らざるを得ない。そのときに,一定のものについてはやはりかなり具体的に将来のキャリアと教育とは結び付いていることを示すということができるようにする。そこに一定の学生が来るということができるようにすると,そういうような仕組みを作っていくということは非常に重要ではないかと思います。
 特に,率直に言って,最大の問題は,日本の大学の進学率は,就学率は今,50%を超えましたが,その半分以上は人文社会系です。社会科学系の教育が,法学,経済学,経営学等々と言っていますこの学というのがキャリアとどう結び付いているかといえば,一般のホワイトカラーに入った後で全部育て直すという建前でできているわけです。これでいいのかどうかという問題,それに,それの枠内ではもはや対応できないのではないかという議論も非常に多い。そこにどうやって対応するかというときに,やはり教育プログラムというのも考える必要が私はあると思います。
 それに関して,既存の学部とどう関係があるかというのは私は一般的には言えないと思います。一部の学部や一部の分野では学部を残す,あるいは,学科を残すということが当然あり得ると思いますが,しかし,もう一つ,一定のところでは,あるいは,大学の選択によっては,一定の領域に,学部に相当するような組織を作って,その中にプログラムを幾つか設定していくというやり方もあるだろうと思います。そういったやり方を両方とも許容するのをどうやって作っていくのかというのが私は重要だと思います。
 それから,もう一つは,選択はやはり私は非常に重要だと思うので,今までは大学に入るときに,学部・学科の単位で高校生は選択して,そのまま動いてはいけなかったのですね,基本的にはほとんどの大学で。しかし,今の学生を見ていると,中での選択というのは当然あり得るわけです。
 今まで,日本の大学教育というのは,何といっても供給側が決めていたと思います。学部・学科というのは先生の組織の論理で,それを試験のときに入試のときに学生が選ぶだけで,これは,しかし,偏差値か何かで大体決まっていた。大学に入ってから,学生が選ぶ権利が非常に制限されている。その学生が選ぶ権利をやはり作っていくというのはプログラム制のやはり非常に大きな意味であって,そういう意味では,ある意味の学生の選択というのにいかに力を持たせるかと,それによって大学が活性するかということはもう一つの問題の視野に入っていると思います。
 それから,もう一つは柔軟性で,基本的にはやはり大学のニーズが多様化,流動化しているので,それに応じた教育内容を考える。それが変化した場合には,やはりそれに応じて一定の改廃ができるような柔軟性を備えさせていくということだと思います。
 先ほど,今のお話で,そうすると,自分が学修したことの価値が何十年後かには分からなくなってしまうというようなことがありました。確かにそうかもしれません。しかし,今の学問体系で得た知識が20年後にどれぐらい価値を持って評価されるかって,私はかなり疑わしいと思います。
 そういう意味で,そういった記録を残すことは重要ですけれども,しかし,やはり今望まれているのはやはり柔軟性,多様性をいかに大学教育の中に導入していく。特に,御存じのように,今,大学生の就職先って5割以上はサービス業なのですね。サービス業の中身ってめちゃくちゃ多様なわけです。これにどうやって大学教育は対応していくかといえば,やはり学部・学科というその学問の既存体系によって規定されているのではなくて,きめ細かく一定の対応の仕方を様々な形で探っていくということしか私はないのではないかと思います。
 そういった意味で,私は学位プログラム,ないし,私は教育プログラムと言ってもいいと思いますが,学位プログラム制にしたら,全部それに変えてしまうということはむしろあり得ないと思うのですが,学位プログラムを今の言ったような意味で,意味がある学位プログラムをどのような形で既存のシステムと矛盾しない形で導入していくのかというのは課題ではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,ございますでしょうか。本日は,この学位プログラムに関する多様な御意見といいましょうか,先ほど,2040年という,何ていいましょうか,時間軸の中でも考えなくてはいけないということで,横断的,あるいは,時系列的に両方考えなくてはいけないということがあるかと思いますけれども,もしございましたら。どうぞ。
【溝上委員】  いろいろ皆様の御意見を伺っていても,やはり所属意識というのは大事だなってもう一回伝えたいなと思うのですけど,ただ,学位プログラムに対して,私は大事だと思っている気持ちもあって,聞きながら思い出していたのは,ナンバリングを各学部で,全学で進めたときに,どうしても学位プログラムの話が入ってきます。学部ごとにナンバーを打ったって仕方がないので,分野をある程度共通してナンバリングを打っていくということがあって,でも,学部の先生たちは,ナンバリングのそのナンバーの前に,どうしても学部の,何ていうんですか,アルファベットを置きたくて,これを置いたらナンバリングの意味がないので,それを,例えば,大学としては負けてしまって付いてしまうのですけれども。
 ただ,小林先生が,学部・学科を廃止するのか否かの前提をはっきりさせた方がいいとおっしゃっていたのは本当にそのとおり,そこはとても大事な問いだと思うのですけれども,その上でも,残った上でも,そういう所属意識,最後はどこかという,誰がこの学生たちを,最後,いろいろこぼれていくところ,たくさんありますので,そこを面倒見る教員がやはりどこかには責任所帯として必要かなと思うのですけれども,教育プログラムだけでいくと,これが抜けてしまう危惧があって,日本はやはりこれまでここで進んできましたので,何かここを崩してしまってもう一回作り直せるかという危惧があって,こんなことをしつこく言っています。
 学部・学科がある程度前提になって,最後,学位プログラムをどのように,質保証も併せて作り上げていくかという難題はありますけれども,でも,それを前提としながらも,何かナンバリングの過程で見えた学位プログラムへの柔軟な対応というのですかね,というのもあるのかなと思いましたので,その点だけ。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,ございますか。
【福島委員】  1点だけよろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【福島委員】  立命館大学でインスティテュートという仕組みがあったと,今もやっておられますかね,やっていませんね。それとこういうもの,これとはどう違うのか,あるいは,一緒なのか,その点だけ。
【本郷委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【本郷委員】  いい質問ですね。国際インスティテュートから,文理総合インスティテュートから,いろいろな形で学部・学科の枠を超えた学びということで幾つかプログラムを提供して,それも,非常に多様にやっていたのですけれども,ところが,やはり最終的に,先ほど議論が出ています帰属意識の問題でありますとか,あるいは,どこが責任を持ってその到達を保証するか,質保証するかというようなことで,次第にかなり問題点が出てまいりまして,結局,最終的に,現時点ではもうインスティテュートは全部なくなってしまいました。
 ただ,学内で,この教学改革の議論が起きましたとき,必ずこのことがやはり出てまいりまして,やはりもう少し十分に考慮した上で,同じような仕組みを再構築する必要があるのではないかと。これだけ多様性ということが声高に叫ばれる中では,当然のことながら,学生の,先ほども出てまいりました選ぶ権利,いろいろなことから学ぶ権利,一緒にやはりコラボするというその活動の中で,彼らは成長を遂げていくということを考えたら,がんじがらめにファカルティがとじ込めてしまうのではなくて,やはりもう少し柔軟にインスティテュート的なものを復活させるべきではないかという意見も非常に強くなっております。
 現時点ではそういうところでございます。
【川嶋委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】  今の話に関連して,金子委員は教育プログラムと言っていましたけれども,その教育プログラムが学位を出せるかどうかが決定的な課題です。新しい教育プログラムとしては,立命館大学のインスティテュートのように,横断プログラムは作ることは今でもそれは可能ですね。立命館大学だけではなくて,いろいろなところで実施されていると思います。
 今回,少しこういう学位プログラムが問題になってきた背景の一つとして,リーディング大学院プログラムというのがあります。例えば大阪大学では超域プログラムと言いますけれども,オールラウンド型のリーディング大学院プログラムがありますが,教員も学生も各複数の研究科から参加しています。研究科を横断するような教育プログラムを提供しているのですけれども,この教育プログラムは学位を出せるかというと,それは不可能であって,結局,学生の所属する研究科,専攻でしか学位は出せないということになります。教育プログラムとしては非常にすぐれていて,社会からも高く評価されていても,今の仕組みだと,その新しい教育プログラムの中では学位を出すことができないといったような課題も最近の大学改革の中で出てきているということがある。このリーディング大学院の課題も、学位プログラムの議論をしなくてはいけない背景にあったように記憶しています。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 なお,この学位プログラムに関する議論につきましては,今後もう一度御議論を頂く機会を設けたいと考えておりますので,本日の議論を次回につなげていきたいと思います。
 どうぞ,お願いいたします。
【小松文部科学審議官】  次の次第に議論が行くと思いますので,今そういう方向でこの議論を動かしていかれると理解をいたしましたけれども,前々から,この学位プログラムを中心とした大学というのをどのようにしていくかということは中央教育審議会その他で重要な問題意識の一つになっているわけですね。
 本日,いろいろお話を伺っておりますと,裏を返すと,現時点での大学,我が国の大学なり大学制度が学位プログラムを中心としない大学制度であるという前提に立つかという問題があると思います。学位プログラム中心でない大学であるという認識はどういう点をもってそう考えるかということと裏腹の問題ですので,その点を私どもの方も,本日出た御議論,あるいは,過去の御議論などを含めて,現状認識とか,どこが問題になっているのかというのをもう一回整理を,可能な限り,してみたいと思います。これが1点です。
 それから,やはり同じく,本日の御議論を聞いておりまして,例えば川嶋先生がおっしゃった,日本は学位プログラムごとに認可をしていると。言われてみると,そういうことも確かに正しい御指摘だと思います。そういうふうに考えますと,その限りにおいては,学位プログラム中心の大学とも言えると思います。
 この問題は,何といいますか,今御議論になっている学位ごとに物すごく迅速に組織を離合集散させて,場合によっては大学自体も消滅したり,どんと作ったりということを目指すという極端な議論と,それから,今の在り方,学部・学科とかに所属していたりする在り方にプラスアルファしていくという在り方との間にいろいろな議論があると思いますので,この点は整理しなければいけないと思うのですが,ただ,各国によってもかなり事情が違うと。
 例えば,ヨーロッパでいえば,かなりの職業,プロフェッションや,あるいは,大学の学位を認めるかどうかの審査についても,国家試験があったり,職業団体試験があったりするという中において,かなり自由に大学の中で学位を動かしているというのがあって,これは歴史的に形成されたものですから,日本とは少し違うだろう。
 あるいは,アメリカのやり方は非常に注目に値すると思いますが,一方で,学生,教員,事務職員,あるいは,そのほかの一般の人にとっても,あるプロジェクトがあれば一気に集まってきて集団を形成して組織化して達成し,目的が終わったら,別のところに移っていくという労働市場の在り方の中でマッチしている部分がありますから,安定的な教育研究集団の運営という意味では,社会的な背景とかもまた違う面があるだろうと。
 こういったことを視野に入れて,少し何が問題なのかということを整理してみなければいけないなということを考えました。
 もう一点申し上げますと,例えばこの問題は,ファカルティと学位プログラムを一致させようというのが基本的な何か日本の大学制度なのかもしれませんけれども,そこが問題なのか,あるいは,そのファカルティと一致させるのは余り問題ではないけど,そのファカルティの大学としての要件を備えているかどうかの審査の仕方とか要件が古過ぎるという点が問題なのかとか,これはいろいろと御議論を頂いていることの中をもう少し具体的に,何が一番問題意識の元になっているかということを整理して,再度,御議論に供するという作業が必要かと思っておりますので,それは試みますが,そう簡単にできないかもしれませんから,またその過程で,個別にもいろいろ御意見とか,こういう方向がむしろ今実現すべきではないかというようなことをお伺いしたりしたいなと思いますので,どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 私も主査としても余り意見を申し上げても何だかなと思うのですが,本日は日比谷委員が来ておりませんので,彼女の意見も聞きたいというところもありますが,私の前任校でありましたICUでは,六つの学科がありましたのを廃止して,32のメジャーシステムに置き換えたということがありまして,そこで,学生たちは,もうどのメジャーに行ってもよろしいのだということで,教員も,そのメジャーごとに区分け,配属,所属されるようになっているということで,そのメジャーも,何年間か学生が余り集まらないという場合には,ほかのメジャーと協力して新しいメジャーを作るとか,そういうことも話し合っているはずですので,日比谷先生がおいでになったら,また御意見でも聞いてみたらよろしいかと思っております。
 以上です。
 それでは,続きまして,「社会人の学び直しについて」に進んでいきたいと思います。社会人の学び直しにつきましては,かなり前から議論がなされてきておりますけれども,決定的な対応が取れておりません。前期,すなわち第8期の大学分科会等でも議論されまして,論点整理中の「短期大学」の中の今後の方向性として記載したところであります。引き続き,今般の諮問の中で,「社会に出た者が何度でも学び直せる環境の整備」について,検討が求められていることに加えまして,現在,安倍総理が掲げる「人づくり革命」の中でも,無償化を含む教育機会の確保等と並んで,社会人の学び直しが上げられておりまして,重要なテーマとなっております。
 本日は,社会人の学び直しについて,現在の取組や課題等について整理しておりますので,まずは事務局から説明をお願いいたします。
【福島専門教育課企画官】  専門教育課でございます。資料2を使って説明をさせていただきたいと思います。そういう意味で,今,主査がおっしゃったように,決定的なアイデアはまだない状況でございますけれども,まず,この資料に沿って現状を説明させていただきます。
 今,主査のお話にもございましたが,資料2の9ページをご覧いただきますと,スライドの資料がございまして,その中の下段の方の資料でございますけれども,社会人の学び直しに関する政府の方針等というふうにしております。いずれも本年の閣議決定等でございますけれども,社会人の学び直し,あるいは,リカレント教育というものについて,こういった中で上げられていると。
 おめくりいただきまして,10ページをご覧いただきますと,今回の内閣改造後の話でございますけれども,経済再生・人づくり革命担当の記者会見を引用しておりますけれども,この中でも,やはりリカレント教育といったものが掲げられているということでございます。
 資料の1ページにお戻りをいただければと思います。そういう意味で,本日の資料では,1番で学び直しに関する取組,2番目で課題,それから,3番で対応というふうにしておりますけれども,話としましては,今まで出てきておりますけれども,BPのようなプログラムのより短期のもの,そういう短期のプログラムをどうしていくのかという話と,それから,今ご覧いただきましたような人生100年時代とか,そういったものに対応する上で,社会人の学び直しというものをどうしていくのかという話が二つ入っているというところでございます。
 まず,1ページの社会人の学び直しに関する取組というところでございます。一つ目の丸につきましては,ここにあるとおりでございますけれども,社会に出た後も学び続けるということが不断に求められるということで,三つ目の丸でございますけれども,文部科学省におきましても,平成27年でございますが,「職業実践力育成プログラム」,いわゆるBPと言っておりますけれども,こういう制度を作って,社会人の学び直しの選択肢を見えるようにすると。それから,体系的,それから,魅力的なもののプログラムを増やしたいということで取組をしております。これにつきましては,今年の4月現在で,180課程ということでございます。
 具体的には,例えば7ページをご覧いただければと思いますけれども,事例についてということで,1,2ということで,ここでは八つの例を挙げておりますけれども,様々な大学で分野も様々ございますけれども,取組が進められておるというところでございます。
 その上で,もう一度,1ページにお戻りいただければと思います。こういう形で進めてきているわけでございますけれども,2.でございますが,課題等というところでございます。課題,文部科学省の方で,昨年3月に調査研究をやったところでございますけれども,企業に対するアンケート調査ということでは,大学等に実施してほしいというところで,40%強が夜間,土日,休日等の時間帯での授業の開講,あるいは,36%が短期間で修了できるコースの充実,こういったものが出てきていると。
 2ページをご覧いただければと思いますけれども,一方で,学び直しをこれは経験したことのない社会人に対するアンケート調査でございますけれども,学び直しをしようとする際の障害ということで,費用の問題,それから,期間の問題について回答が上がっております。
 併せて,大学の方に対しても同様の調査をしておる中で,履修証明制度の改善すべき点というのを聞いておりまして,その中では,約20%ですけれども,法令で規定されている総授業時間数,これは省令で規定しておりますけれども,120時間以上,これが長過ぎるので,より短期間での修了が可能な制度とすべきだというような回答を頂いているというところでございます。
 そういう状況を踏まえて,どのような対応をしていくのかというのが3番目でございます。人生100年時代を見据えた「人づくり革命」に向けた検討というふうに書いていますけれども,先ほどご覧いただいたような閣議決定等で社会人の学び直しというものが掲げられておるわけですけれども,2にありますような課題があるということで,3ページをご覧いただきたいと思います。
 今後,こうした課題,目の前の課題に対応していくということと併せまして,年齢等にかかわらず,誰もが人生を再設計する社会に向けて,国や大学というものが社会人の学び直しというのにどう向き合っていくのかという観点で大学改革を進めていくことが求められるのではないかということで,本日は本当にもう具体的な論点の,論点しかありませんけれども,三つ書いております。
 1点目,2点目,これはある意味,同じ話を大学の方から書くか,プログラムの中身から書くかというような話でございますけれども,大学の役割というところで,企業等と連携をしながら,ブラッシュアップや学び直しを推進していく。もう一つは,高等教育の中で,最先端のテーマにより重点を置いた形で学び直しに関わっていくという在り方,それはプログラムの方で申し上げれば,特定の職種に必要な専門的知識・技能を習得するような内容,それから,最先端のテーマに重点を置いた内容,どういうプログラム,これは学生のニーズがどういうニーズかというのにも対応した形になると思っています。
 そういう中で,利便性の向上のための検討ということで,国と書いてありますけれども,より短期の専門的・実践的なプログラムの認定制度の創設ということがあるのではないかということを書いております。
 その箱囲みの中でございますけれども,いわゆるBPでは,認定要件の一つとしまして,正規課程,それから,履修証明プログラムであることを求めておりますけれども,その中で,履修証明につきましては120時間以上となっております。これの規定の見直しを検討してはどうだろうかというのが1点目。それから,もう一つは,経済的負担の軽減ということで,教育訓練給付金との連携の検討をしてはどうかというのを書いております。これがいわゆるBPの見直しに関する話でございます。
 それから,次の4ページをご覧いただきたいと思いますけれども,社会人の学び直しを促進するためにどのような環境整備が必要かということでございます。大学からすると,課題というと,第1点に出るのは学生の確保,それから,講師の確保をどうしていくのかという話が出ますけれども,そういったことを踏まえて,学び直しに積極的な大学,あるいは,教職員というものの評価の在り方というのを一つ考えています。
 それから,2点目は,学び直しに関する社会人の学生,それから,企業の費用負担の軽減と。これは単にお金の額というよりは,費用対効果のようなものですね。それから,もう一つは時間的な負担というのが両方あると思いますけれども,それをどう軽減していくのか。
 それから,三つ目は,履修証明プログラムの利便性,あるいは,社会的認知度・評価向上のための方策と。これは文部科学省の広報もまだ十分でないのもあるのですけれども,やはりなかなかまだ知られていないということ,そこをどのように改善をしていくのかということ。
 それから,4点目は,放送大学,あるいは,MOOC等の一層の活用方策と。実際,MOOCの中のJMOOCさんは,例えば理工系の基礎科目について,若手技術者の話を聞いて,科目の提供等も始めておるわけですけれども,そういうその活用方策。
 それから,最後の5点目が,これが全体がうまくいくために必要だと思いますけれども,社会人の学び直しへの企業の積極的な参画を促すための方策というのを掲げております。
 BPが始まってまだ間もないのですけれども,我々がもう少し事例の分析もしながら,やっていければというふうに思っております。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  それでは,ただいまの資料,あるいは,事務局からの説明を踏まえまして,皆様の御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。
【福島委員】  まず,一つ質問ですが,「職業実践力養成プログラム」の八つの大学の事例が載っていますけど,これの受講状況といいますかね。実際にどのくらい受講者がいるのかという点を,後で結構ですけど,教えていただければと思いますが。
 それと,社会人の学び直しということでいきますと,いろいろデータからしますと,いつでも,どこでも,誰でも学ぶことができるということと,費用を安くしろということと,長期,短期,いずれにも対応できるようなプログラムが必要なのではないかということだというふうに思うのですが,そういうことを満足させようと思うと,やはりICTを活用した形のものが,ネット上でしっかり展開できるということがすごい大事だなというふうに思います。
 そうすると,やはり通信制の,通信教育の柔軟な運用といいますか,あるいは,もう少し発展的なことを考える必要があるかなというふうに思うのですけど,今,通信教育部の設置基準がどうなっているかというのは,私,よく分かりませんけど,基礎学部があれば,いろいろな課程の設置だとかが容易になるようなことができないのかなというふうに思ったり,あるいは,先ほどの議論ではないですけど,通信教育こそ,何か学位プログラムというのが何か有効なのかなというふうに思ったり,そんなことも考えたりします。
 今,通信教育部がある大学というのは,通信教育部というのは多くが資格課程があるところだと,資格を取るということが目的のところが非常に多いと思いますが,そういう中でも,たまたま関西にあるので時々見掛けるのですが,奈良大学が地元の,それこそ若い人からお年寄りまで,かなりバランスよくというか,かなり50代以降に偏った形で学生が入って,それなりにしっかりやっておられるというふうに聞いておりますけれども。
 そういうようなことも考えますと,それぞれの大学で,既設の学部を基礎にして,いろいろなことができるはずですので,そういうことがもっと多様にできるような何か支援策といますか,そういうことが最も何か手っ取り早いのかなという感じをしておりますので,検討の材料にしていただければというふうに思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがでしょうか。安部委員,どうぞ。
【安部委員】  最初に質問させていただきたいのですが,社会人の学び直しということですけれども,この学び直しは,大学等の高等教育機関を一旦修了して社会に出た人の学び直しのものになるのか,あるいは,一度も高等教育に,要するに大学に行ったことがない人を社会人になってもまた大学の方で学ばせるという,どちらに捉えたら,両方なのか,それを教えていただきたいです。
【鈴木主査】  どうぞ。
【福島専門教育課企画官】  まず,2点目の方から,今のお話からいきますけど,学び直しそのものにつきましては,当然,両方を射程に入れた議論になるかと思っております。ただ,履修証明につきましては,大学相当のたしか資格が必要だと思いますけれども,社会人の学び直しということについては両方射程に入れた議論ということでございます。
 それから,1点目,先ほど御質問いただいた件でございますけれども,受講状況につきましては,実は認定後3年後に調査をするというふうになっていまして,文部科学省としても,実際に,個別の人数,個別ごとの人数については把握をしておりませんけれども,私どもがアンケートで聞いた範囲では,それで回答が返ってきたところということですけれども,145プログラムがあって,受講者数が大体3,448人ということですね。単純に割るというのは難しいのですけれども,そんなに規模の大きな,一つ当たり,そういう状況があるというふうに考えております。
 それから,通信の話につきましては,今回の通信について,資料を有しておりませんけれども,これまで随時,制度の見直しをしてきておりますので,その辺も含めて少し整理をさせて,また報告をさせていただければと思っております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。
【安部委員】  それをお伺いしましたので,いわゆる高等教育に参入したことがない人を,社会人になってから,再び大学等で学ぶということに関して,特に地方では,高卒で仕事をしている人,つまり18歳のときに大学に行けなくて,高卒で仕事をしている人たちです。その人たちを大学で学ばせるということで,先ほど,短期大学での学び直しということも篠田先生から言っていただいたのですけれども,特に地方の20代とか30代の方たちが高等教育への学び直しをすることはとても大事だと思います。
 先ほど,2040年には産業構造がどうなっているか分からないという話もあったのですけれども,高等教育で学んで,学ぶことによって,視野を広げて,自分のキャリアアップにつなげていくということをやはり地方ではやっていかなければいけない。特に地方における高等教育の学び直しについては,地方の企業や,地方の自治体と連携して,例えば,高卒で社会に出た人に,良質な内容で個別の学生支援的な対応もできるような高等教育体験の第一段階,あるいは,短期の職業訓練だとか,そういうのを社会人の学び直しの一つのアイテムに加えていただきたいと思います。
 社会人の学び直しというと私のイメージですと,都心の駅中での大学サテライトキャンパスで,大企業にお務めになっている大卒の専門職のキャリアアップ志向の強い方の学び直し支援をイメージします。それは学び直しの一つのアイテムで,当然大事ですけれども,高等教育を経験していない人たちというのは,特に今の30~40代ぐらいの人たちに高等教育で学んでいただくということは,地方創生,活性化のためにはとても重要なことではないかと日頃感じておりますので,その視点もお願いしたいと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  一つは,考えていく上で,特に大学に関しては,修士課程あるいは博士課程の正規の大学院への社会人の入学というのを幅を広げることを第一のターゲットとすると,あるいは,履修証明のようなところをもっと広げていくということ,あるいは,意味があるものにしていくということをターゲットにするか,両方なのかもしれませんが,ただ,このデータを見ていても,やはり履修証明の受講者は増えていますし,ところが,大学への入学者はもう10年ぐらい,ほとんど変わらないという状況です。
 それから,もう一つが,やはりこの二つって違うと思いましたのは,本日,アンケート調査の結果が出ていますが,ここで2番目のグラフで,何が障害になっているのかというのを聞いていますと,職場の理解が得られないというのは余り多くないですね。ところが,私たちが8年ぐらい前に2万数千人の大学卒業者に対して調査をやったときは,一番大きいものの一つは職場の理解が得られないで,特に企業,事業所の人事担当者については,大学院通学は基本として認めていないというのが8割でした。
 私は非常に障害が強いと思って,その後,経済団体の人ともいろいろと聞きましたけれども,いや,それはそうでしょうという人も結構多いのですね。なぜかといえば,やはり大学院へ行けば,必ず,かなり一つの理由は,よい意味では視野を大きくするということ,でも,もう一つでは,ほかのところに行きたいからという理由がやはりあるのではないかと。だから,そういうチャンスを与えるためにわざわざ認めるのかという問題はやはりリアルな問題としてはあるということでした。
 ただ,それ自体,私は,それ自体もなくすべきだと思いますが,ただ,履修証明については余り抵抗が少ないものであれば,やはり履修証明をプログラムもやはりもう少し力を入れて拡大するということは非常に重要なことだなと改めて思います。
 履修証明制度ができたので,私は中央教育審議会に入って初めの頃の案件だったので,よく覚えているのですが,私は120時間というのは課題なのではないかと。私は履修証明制度,やれ,やれと言ったのですけど,これはアメリカのサーティフィケイトから出たアイデアですが,120時間は多過ぎるのではないかと言ったのですけど,これは最初は,質を低くしたくないから,なるべく条件を高くしますと,だんだん下げますとそのとき言っていたのですよ。その後,私,何回も聞いて,いつやるんだといって,そのまま今までずるずると来てしまった。
 本来は,もう少しやはりそれは緩くしてもいいのではないか。特に厚労省の書類の関係等では,120時間まで多くしなくても取れるのではないかと思うので,そういう意味では,私はもう少し柔軟にした方がいいと思うんですが。
 それと,それにプラス,やはり単位の蓄積,累積加算制度を明確にすることによって,最終的には修士ないし博士に持っていく,あるいは,学士の場合もあるかもしれない,に持っていくという制度をセットで作るというのがやはりかなり今の大きな具体的な課題ではないかと思うので,これは単に,何ていいますか,学び直しだけの問題ではなくて,単位の累積加算はこれから非常に大きな,いろいろなところで大きくなっていく問題だと思いますし,何ていうのか,部分的には,この専門職大学では,一部の国家資格は単位として加算してしまうとか,いろいろなことをやっているわけですから,いわゆる単位の累積加算,生涯的なキャリアでの学修履歴の加算というのを総合的にやはり考えるべきではないかと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 篠田委員,そして,川嶋委員,お願いします。
【篠田委員】  
 「人づくり革命」ということで,日本の経済再生とか,安倍政権の中で,日本再興計画だとかというのが出されていて,これからますます人口が減少して高齢化になってくると,生涯現役で働いて社会を支えていただかなければいけないということにもなってきますと,やはり学んでいく,学んで仕事を更に続けていただくというのは日本の経済を成長させるとか維持する上で非常に重要だというふうに思いますので,こういう問題というのは私は非常に大切だとも思います。
 一方で,第1回のときでしたか,頂いたこの高等教育の将来に関する参考資料で,進学率というか,18歳人口の表を改めて見させていただいて,これを見ますと,今は2017年は120万いるのですけれども,7年後に急激に減っているのですが, 2024年で106万ですよね。そうしますと,14万人減る。半分進学をするとしても,進学人口7万人減少をする。
 はるかかなたの話というふうに考えていたのですけれども,やはり大学にとってみると,これも本当に存立に関わるような,7万人という数は,定員1,000人の大学が70大学分に相当しますかね。相当,深刻にというか膨大に,しかも,それはそんなに遠い話ではなくて,もう数年後に来る現実だということを考えますと,大学の方にとってみても,この社会人といいますか,というのは,18歳,高校生を対象にした教育というところから大きくやはり転換をしていかないと,大学自身が存立もできなければ発展もできないという点で,非常に重要。
 だから,大学教育というのが18歳人口だけを対象にした,あるいは,大学のいわば本業としての18歳人口という,つまり,社会人教育は副業だというような位置付けではもうこれはやっていけない時代になってくるというふうに考えますと,本日提案をされているような履修証明だとか,いろいろな資格がかなり自由にといいますか,かなり柔軟に出せるような仕掛けを作って,しかも,それが実効性ある,有効性ある,本当に力の付くものに内実を作っていかなければいけませんし,企業の方としてみれば,そういう学んだことがしっかり仕事を続けていく,あるいは,再雇用していく上で有効だということについて認知をして,積極的に雇用をしていただけるというようなこと,これは多分,産業界だとか政府だとかが一体になって努力をしていただかないとできないということだというふうに思いますけれども,日本の多分経済を強くしていくという話と大学の発展ということが両者非常に必要性が喫緊に迫られている問題だと思いますので,私のあれからすれば,もういろいろな方途を考えて,社会人が学べる環境というのが進められるというのは,これはかなり重要な課題ではないかなというふうには思いました。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 川嶋委員,そして,溝上委員。
【川嶋委員】  社会人の学び直しという観点では,先ほどから出ている履修証明プログラムのような短期プログラムなのか,学位プログラムなのかという論点もありますし,それから,二つ目の論点は,資料にも出ていますけど,結局,社会人が増えないのはアクセスと費用の問題があるということです。
 それに加えて,本日の資料で,9ページの上のスライドにありますけれども,一番左が履修証明プログラムの120時間は長過ぎるという囲みがありますけれども,棒グラフで見ると,ここの上の囲みのところに書いてあるように,やはり得た資格といいますか,履修証明書そのものの社会的認知度が低かったり,評価がされなかったりしていることも問題です。もっと具体的には,企業も社員がこの履修プログラムを終えても,処遇に反映しないということで,この社会的評価の問題は,専門職大学院の修了者の問題と共通しています。キャリアアップとして,次の段階の学位を取っても,それが企業とか社会でその後の処遇に反映しないというのが,アクセスとかコストの問題と同じくらいか,それ以上に社会人が大学へ学び直しに来ない大きな原因になっているのではないかと思います。
 それで,そういう意味では,やはり学んだことが可視化できるような仕組みが必要で,企業に適切に評価してもらうためには,履修証明プログラム120時間でどういう知識を理解し,どういう能力が身に付いたかということをきちんと可視化できるということも考えるべきだと思います。
 そこで,一つ参考になるのは,この3ページの,二つ目の論点のところに,「特定の職種に必要な専門的知識・技能を習得する内容」というのがあって,これは一方で,学位プログラムや本日何回も出てきた専門職大学とか専門職短期大学を指しているのかもしれませんけれども,もっと具体的なスキルを獲得するプログラム,もっと短期で,なおかつ,もう本当にスペシフィックな知識や技能を獲得するプログラムというのをどんどん,どんどん大学,大学だけに限らないかもしれませんが,高等教育機関が数多く提供していく必要があるのではないかと。
 その学修内容,成果を可視化するというので,最近,アメリカでは,コンピテンシー・ベースド・エデュケーションの急激な拡大に伴って,多くはオンラインでもやっているのですけれども,特定のスキルを修得する短期プログラムで,それをきちんと修了したら,テスト等ではなくて,きちんと知識やスキルをマスターしたという証拠をデジタルバッジという形で可視化するというのも急激に広がっています。
 マイクロ・クレデンシャリングとか,デジタルバッジとかと呼んでいるのですけれども,このデジタルバッジというのは,要するに,ボーイスカウトのバッジと同じですね。一人でテントが立てられるようになったら,バッジというかワッペンをもらえると。ロープを結べるようになって,そういうスキルを身に付けたら,バッジがもらえると。それと同じで,特定のスキルをマスターしたことの証明書としてデジタルバッジ。
 紙の証明書と違うのは,デジタルバッジというのは,いろいろなSNSとかeポートフォリオに貼り付けて,そこをクリックすると,その裏にURLがあるので,どういうプログラム内容で,最終的にどういうスキルを獲得したかということの情報が見えるようになっている。
 こういうデジタルバッジが急速にアメリカでは普及していまして,同じ企業の中でも,次の職種に移るとか,あるいは,別の仕事に就きたいといったときに,必要な短期プログラムをオンラインで受講し、デジタルバッジの証明書をもらって,それをレジュメとかeポートフォリオとか,自分のウエブサイトに載せることによって,企業とか社会から評価されるという,そういう仕組みがどんどん拡大している。そういう意味で,学んだことの可視化の工夫というのも,やはり日本のこれから社会人の学び直しを考えていく際には,それをどうするのかというのも一つ,論点としてあるのではないかというふうに思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 溝上委員,その後,美馬委員で大体時間はいっぱいになると思います。どうぞ。
【溝上委員】  2点,簡単なことですけれども,コメントしたいと思いますが。
 先ほどから議論に出ていますし,今,川嶋先生がおっしゃったことをつなげるのですけれども,社会人,何かこの資料2のタイトルを見ていますと,「更なる推進」となっていますけど,更なるではなくて,やはり人口減少が非常に進む中で,もっとこのプログラムが,このテーマが,学位プログラムと,あるいは,それ以上ぐらいの重さでもっと出ていかないと駄目なのではないかと思います。
 付録的なプログラムということではないと思いますけど,今,川嶋先生がおっしゃったように,もっと中身を充実させて,本当にこれが国として必要な施策の観点だということが何かもっともっと伝わるような,そういうことを期待したいと思います。
 もう一つは,学び直しという言葉がどうしても気になります。高等教育を受けなかった人とか,受けたけれども,十分ではなくて戻るとか,そんなイメージではなくて,どういう人生を過ごされてきた方にとっても,働きながら,あるいは,社会生活を過ごしながら,発展的に学んでいくというような,直すとか,何か少し後ろ向きな言葉はやめた方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  今,溝上さんがおっしゃっていたことを私はこの頃,自分バージョンアップと言っています。100年生きるのだとすると,常に自分をバージョンアップさせていかなければならないと,そんなことを使っています。 今回のここで議論しているいわゆる学び直しと言っていることですが,3者の関係だと思うのですね。教育機関が何を提供するのか,そして,それを受ける本人がどうであるのか,そして,その人がいる企業とか社会とか,そこで労働する場所ですよね。この3者が三位一体となって意識を持ってやっていかないと駄目ではないか,どこが頑張っても駄目,個別に。
 その中で,やはり本日も随分出ていますけど,人口減少社会に向けて労働生産性を上げていくということになると思うのですけれども,特に,女性です。
 いろいろなデータを世界的な比較の,データを見ていても,日本ほど高等教育を受けている女性は,これほどいないのですよ,こんな高い率で。それにもかかわらず,女性の賃金が低いということは,生産性の高い仕事に就けるようになっていない。女性に任されている仕事は,首都圏の一部,あるいは,大企業は別にしても,地方に行くと,窓口業務になっていたり,要するに,潜在能力を過少評価している社会とか企業とか,そういうものがあって,それで,非正規雇用になる。結局,いくらこういうところに自分をバージョンアップしようと思っても,資格を取っても履修証明をもらっても,それが外では評価されないから,自己満足とか,カルチャーセンターで終わってしまうような形になっているということですね。
 こんなもったいない話はないし,日本,国全体としてはかなり大きな問題であると。三位一体の改革というと何か別のことになりそうですけど,そこには企業とか社会のそういった視点というか,そこを一体となって,ある方向を持っていく必要があるというふうに思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 この社会人の学び直しに関する議論に関しましても,今後改めて御議論いただく機会を設ける予定でございますので,引き続き御議論をよろしくお願いいたします。
 それでは,最後に,本ワーキンググループの今後議論を進めていただくことにおいて,議論の方向性の参考としていただくために,この制度・教育改革ワーキンググループの上に置かれております大学分科会将来構想部会の検討状況について,事務局から御報告をお願いしたいと思います。事務局,お願いします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料3をご覧ください。このワーキンググループの親部会に当たります将来構想部会の審議の状況について紹介してほしいという御意見もございましたので,御紹介をいたします。
 資料3にございますとおり,これまで4回開催されておりまして,1回目におきましては,平成17年の将来像答申のフォローアップなど,そして,第2回につきましては,分野別の人材需要について,これは理工系の人材のワーキンググループのまとめですとか,あるいは,経済産業省からも来ていただいて,お話を聞いたということをしております。そして,第3回の部分では,国公私立の役割ごと,ごとの役割ということで,国立大学,公立大学,私立大学,それぞれの立場から,今後の将来像等について発表していただくとともに,地域別の将来,18歳人口がどうなっていくのかというシミュレーションについて紹介をして議論をしていただいております。
 少し見ていただきますと,この机上にありますこのブルーのファイルの中に,この4回分の将来構想部会の資料が出ております。この第3回というのが3と書いてある部分ですけれども,ここから該当のものを見付け出すのが難しいのですけれども,大体真ん中辺りをめくっていただきますと,県ごとに地図が描いてあって人数が書いてあるようなページがこの3という資料の束の真ん中辺りにございます。 その中で,例えば,ここではっきりページ数が振ってありますので,31ページと右下に振ってあるページを見ていただきますと,見つかりますでしょうか。長野県,右下に長野県と書いてあるページがございます。ここに書いてあるデータというのは,長野県の地図の中に現在設置されている大学がプロットされておりまして,真ん中の基礎データという部分には,現在の18歳人口ですとか,大学進学者9,000人,進学率が43.5%であると。そして,所在する大学の数が9校あって,国公私別に見ると,1校,1校,7校である。これを定員で見ますと,3,368人で,国公私の別がこれぐらいありますと。
 そして,県外からの流入,県内からの流出というのが,かなり流出が多い県でございますので,これだけの人数が出入りがありますと。そして,その下の欄に紫の部分で,平成45年の大学進学者の推計ということで,この推計値を書いておりますけれども,例えば6,803人の大学進学者,そして,この大学進学者というのはいろいろな県に行きます。そして,大学,長野県内に入ってくる,最終的に入ってくる入学者数が2,725名だと,平成45年に2,725名だとしますと,真ん中にある現在の入学定員3,368人というのは今後どう考えていかなければいけないのかというような議論になろうかと思います。
 その下には,円グラフで,県内高卒者がどこの県の大学に行っているか,あるいは,入学者はどこから来るのかといった情報,そして,この色が,色別でプロットされておりますけれども,これは分野別に分類をしたものでございます。
 こういったものが全ての県について並んでおりますけれども,今後,こういったものについて,議論の中では,県別で見るというだけではなくて,もう少しエリア別で見た方が状況が分かるのではないかと。あるいは,分野別の分布状況というものをしっかり見ていくといいのではないかと,こういった議論が行われております。
 そして,第4回ですけれども,これも資料4と書いてある資料の後ろの方に黒い帯で大学間の連携等々,統合等々というふうに書いてございますけれども,第4回では,地域における質の高い高等教育機会の確保ということで,大学等の連携や統合の可能性についてということで,これまでの取組,それから,今後検討していくべき課題ということについて御議論を頂いたところでございます。
 資料3に戻っていただきますと,次回以降の日程が並んでおりますけれども,今後,引き続き,各地域における全体規模の在り方ですとか,あるいは,地域の産業界や地方公共団体との連携,ガバナンス,それと,ここに社会人の学び直しとありますけれども,これは誤りでございまして,削除していただければと思います。これはワーキンググループ,この場で議論したいと思います。その他改革を支える支援,財政的支援方策,あるいは,学生の経済的支援の充実など教育費負担の在り方,こういったことについて,引き続き,今後議論していくという予定になっております。
 説明は以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 ただいまの報告を踏まえまして,御意見,御質問等ございましたら,御発言いただきます。
【金子委員】  よろしいですか。
【鈴木主査】  どうぞ。
【金子委員】  今の御説明を聞いていますと,私も一応,将来構想部会に出ているんですが,確かに,人口的な側面から将来構想を考えると,しかも,それを地域別に考えるということは分かるんですが,そこは具体的に施策として,あるいは,制度上どういった問題に結局結び付いていくのか。結局,例えばこのワーキンググループは,ある意味では,個々の大学についての制度の問題,かなりその辺り,大学の内部に関わる制度の問題を扱っているわけですけれども,それと余り特に結び付かない感じがするんですけれども。どういう形で結び付くのか,あるいは,将来構想部会,将来,どういったところの政策課題に結び付いていくのかというのをお聞きしたいんですが。
【鈴木主査】  どうぞ,お願いします。
【堀野高等教育政策室長】  直接的に制度改正に結び付く部分とそうでない部分とあろうかと思いますが,御案内のとおり,10年前の将来像答申になってから,もう高等教育計画の時代ではなくて,定員を,文部科学省の側が定員を管理していくような仕組みでやっていくということではございません。飽くまで,この将来像を示した上で,どう考えていくかを御判断,それぞれの立場で御判断いただくということに変わっておりますけれども。
 それが,更に,今回お示ししているのは,国全体というだけではなくて,もう少し地域別に具体的に見ていったときに,将来どうなっていくのかという姿をお示ししながら,この入学定員というのは,このまま維持できないとすれば,今後,各大学はどう判断するのか,それは個別大学が判断していくだけのことなのか,あるいは,地域ごとにもう少し地域の産業界と一緒に検討するのか,地域の自治体と検討するのか,大学同士で検討していくのか,そういったことをもう少し地域別の中で将来像を示す中で,今後,自らがどう動くべきかということの将来の姿,判断材料となる将来の姿をお示しをするということ。
 そして,その場合に,人口減少の中で,規模自体は小さくなっていくとした場合に,質の高い高等教育をそこで引き続き提供していくという立場から,大学間連携などを進めていく場合に,その制度上の設置基準等々の制度上のなかなか隘路(あいろ)みたいなものがあれば,それは連携,あるいは,統合しやすいように,制度的な障害を取り除いていくといったようなことを検討していくという道筋で,今のところ,考えているところでございます。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 そのほか,ございますか。どうぞ,金子先生,何かございましたら,どうぞ。
【金子委員】  それも一つでしょうが,例えばその将来構想とかいいますと,例えば労働市場との対応とか,人口構造の変化による対応とか,そういった様々な問題があるわけですけれども,そういったものはどのような扱いになるのでしょうか。
【堀野高等教育政策室長】  引き続き,議論をしながら,していってということにはなりますけれども,その労働市場との関係につきまして,経済産業省からもプレゼンテーションしていただきましたけれども,ざっくりとした,これからは情報通信産業ですとか,サービス産業の方がそれは高度化した仕事をするのであれば,需要が増えていくというような,あるいは,保健や介護とか,そういった分野であるということは言われていますけれども,日本全国データだけで議論をしていても,全国に配置されている学校それぞれの立場によって,地域にある産業というのがそれぞれ異なる。あるいは,地域密着の産業だけではなくて,今後はIT等を使って,どこにいてもできる産業というのも出てくるという御意見もございますけれども,いずれにしても,全国データでここの人材需要が増えるから,大学はこの関係の学部を設置してくださいというようなものを国が示すというような形ではないのではないかというふうには考えております。
 そういった意味では,地域の中で,どういう産業があって,今後どういう産業を育てていく,そのために,大学にはどういう人材育成が期待されているというものをもう少し地域別に考えていくというような材料,制度的な支援みたいなことを考えていくのではないかというふうに思っております。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 ちょうど時間が参りましたので,本日の議題は以上とさせていただきたいと思います。
 今後の制度,教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  失礼しました。次回のワーキンググループは,9月22日金曜日,10時から12時を予定しております。場所は調整中でございます。本日の資料について,郵送を希望される委員の先生におかれましては,机上に置いてございます附箋等に郵送を御希望される旨を御記載いただき,机の上に残していただくようにお願いいたします。
 以上でございます。
【鈴木主査】  どうもありがとうございました。委員の先生方,御苦労さまでございました。今後ともよろしくお願いいたします。以上で終了いたします。
―― 了 ――

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