将来構想部会(第9期~)(第28回) 議事録

1.日時

平成30年10月17日(水曜日)10時00分~12時30分

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第二講堂

(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長) 永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,石田朋靖,金子元久,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,鈴木雅子,伹野茂,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉,吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)山脇文部科学審議官,義本高等教育局長,白間私学部長, 伯井文部科学戦略官,山﨑文教施設企画・防災部技術参事官,下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),玉上大臣官房審議官(高等教育局担当),森大臣官房審議官(高等教育局担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,淵上国立大学法人支援課長,井上私学助成課長,石橋高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)全国知事会佐竹文教環境常任委員会委員長,  一般社団法人日本私立大学連盟田中常務理事,公益社団法人経済同友会小林副代表幹事・教育革新委員会委員長,独立行政法人国立高等専門学校機構谷口理事長,全国公立高等専門学校協会東会長,一般社団法人国立大学協会山極会長

5.議事録

(1)「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申案)」に関して,資料1から8に基づき,全国知事会,日本私立大学連盟,日本私立大学協会,経済同友会,国立高等専門学校機構,全国公立高等専門学校協会,国立大学協会からヒアリングを行い,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  おはようございます。定刻になりました。第28回将来構想部会を始めさせていただきます。御多忙の折,本当に御出席ありがとうございます。
 いつものとおり,カメラ等の撮影については,議題に入るまでとさせていただきます。
 今回も,前回の会議に引き続き,各関係団体からのヒアリングを実施させていただきます。
 議事に入る前に,事務局に異動がございましたので,御紹介をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。事務局の異動がございましたので,御紹介させていただきます。
 まず,白間高等教育局私学部長でございます。
【白間私学部長】  白間でございます。よろしくお願い申し上げます。
【石橋高等教育政策室長】  次に,玉上大臣官房審議官(高等教育局・高大接続担当)でございます。
【玉上大臣官房審議官】  玉上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  続きまして,森大臣官房審議官(高等教育局・科学技術政策連携担当)でございます。
【森大臣官房審議官】  森でございます。よろしくお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  次に,ポストの異動ではありませんが,職名が変わっておりますので,御紹介いたします。山﨑大臣官房文教施設企画・防災部技術参事官でございます。
【山﨑文教施設企画・防災部技術参事官】  山﨑でございます。引き続き,よろしくお願いします。
【石橋高等教育政策室長】  続いては,異動でございます。井上高等教育局私学部私学助成課長でございます。
【井上私学助成課長】  井上です。引き続き,よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 続いて,本日の配付資料についても御説明願います。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。本日の配付資料は,基本的に各関係団体の皆様から頂いたヒアリングに関する提出資料でございます。資料1が全国知事会,資料2が日本私立大学連盟,資料3が日本私立大学協会,資料4が経済同友会,資料5が国立高等専門学校機構,資料6が全国公立高等専門学校協会,資料7が日本私立高等専門学校協会,資料8が国立大学協会からの提出資料で,資料9が今後の日程でございます。また,参考資料としまして,答申案の要旨と本文を付けております。不足がございましたら,お申し付けください。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,早速ヒアリングに入らせていただきますが,今お聞きのとおり,本日は7つの関係団体からヒアリングを行う予定となっております。そこで,時間について,是非とも御協力を頂きたいと思います。各団体10分ないし5分で御発表いただき,その後の意見交換会は概ね15分を想定しております。いろいろと意見は出ると思いますが,ヒアリングにおいでいただいている方々の御都合もございますので,発表時間は制限させていただくことになるかもしれません。
 それでは,早速ですが,全国知事会から,文教環境常任委員長でいらっしゃいます秋田県知事,佐竹様においでいただいております。お忙しい中,どうもありがとうございました。それでは,御発表よろしくお願いいたします。
【佐竹委員長】  おはようございます。全国知事会の文教環境常任委員長という立場が1つと,私の県も2つの県立大学を持っています。また,私自身,理系の人間ですけれども,現在も母校の関係の研究に少しは携わって,昔から公設の試験研究機関の関係の仕事をやっていたものですから,特に理系の大学との具体的な関係が非常に多かった,そういう経験も踏まえて,少しお話を申し上げたいと存じます。
 まず,人口減少の問題ですが,これは言うまでもなく,秋田が一番の人口減少県ということで,秋田の状況が今後数十年の間には全国に広がることになろうかと思います。
 秋田県内の高校の卒業生は,毎年2%前後減少してございます。そうした中で,大学の進学者数については,進学率は少しずつ上昇してございますが,やはり卒業生の減少に伴いまして,緩やかに大学の進学者数の絶対数は減っているという状況です。県内に7つの大学がございますが,過去5年間の県内大学の志願者の推移で見ますと,平成25年には1万1,000人の志願者だったものが,4年後の29年には8,500人まで落ちております。これは程度の差こそあれ,全国的な少子化の影響を受けているものと認識してございます。
 また,県内に4つの短期大学がございますが,これは特に県内出身者が9割以上を占めております。ただ,慢性的な定員割れが生じている短大が多く見られます。これはどこの地方にもあると思いますが,その地域の短大というのは,かつて,高卒ではだめだと,ただ,四大まではということで,地元の女子学生の受け皿となっていたものがたくさんございます。ただ,大半が家政系,福祉・介護系である関係で,特に保育関係は今でも大変倍率が高いですけれども,看護系,介護系,これは4年制の方においても,介護系は特に倍率が低い状況です。
 これはやはり介護系の卒業後の待遇,この関係が非常にあるのではないかと思います。ですから,やはりそういう方々は,今までよりも別の情報系,あるいは,今,女性でも機械,建築,そういうところに向いているところがあって。ですから,必ずしも人口減少と倍率の相関関係が全てあるというような状況ではないのではないかと。やはり将来の職種との関係で,将来性のあるところにはやはり行くという,そういうことであろうと思います。
 ただ,全般的に今のデータをトレンドしていきますと,いずれ非常に厳しい状況になるということで,特に大学自らが,その規模,置かれた地位,地元との関連の中でこれを改革する。また,特に私ども,県内の大学でコンソーシアムをということで,大学間の話合いの中で連携を進めております。例えば,特に昔からの国立大学の秋田大学,これは資源系が非常に強い。ただ,途中から資源系から工学系に一部移ったんですけれども,やはり資源分野が強いということで,様々な広い分野にはなかなか及ばないと。そこを,理系の県立大学,これはバイオ農業系と一般の理工系で,ここがややカバーする。ですから,国立大学法人と県の地方大学法人が連携を深めて,この中で研究の役割分担,学生の交流も行いながら,総合大学まではいきませんけれども,総合的な理系のシステムを作っているという,そういう状況でございます。
 そういう中で,今,特に一番懸念されるのは,特に農村部では所得が低いものですから,子どもを東京に出すというのは非常に金がかかると。ですから,できれば地元でというのが多い。そのときに,一定の受皿がないと,やはり東京に出ざるを得ない。ですから,単に頭数だけで再編しますと,地元に全くない学科が生ずるという,そこをどういうふうに解決するかということが非常に大きな問題になろうと思います。
 例えば,今,東工大と秋田大学がユニット研究室ということで,例えば,同じテーマの研究のため,研究室を秋田大学に置いて,東工大から先生に時々来てもらって,一緒に成果を出すという形で,首都圏の大学との連携を進めています。また,私,東北大学の工学部の出身ですけれども,東北大学には全学部あります。ですから,東北大学と地元の企業を結ぶときに,途中に秋田大学,あるいは県立大学が入る。そういう大学間の,昔でいう旧帝大と二期校との連携,これをどういうふうにやるかというのが非常に重要かなと思う。ですから,やはり地方でも,企業によっては,地元にない技術を望みますので,そういうところを含めて,これを再編するかという。
 ただ,あくまでも,全くその地域,あるいは,隣県あたりまで含めて,ある程度そこら辺の,余り広域でなくて,例えば,北東北だったら北東北3県の中で一定の大半が揃うという。
 また,医学部関係,介護・福祉,これは地元からの要望が,地元への人材の供給です。これが外へ行きますと,もう帰ってきません。ですから,我々のところは,定員充足がかなり厳しくても,やはり医療,福祉,介護,看護系,これは地元に置かないと,あとは帰ってこないんですよ。ですから,これは非常に難しいところですけれども,やはり地域の関係,地域の課題,そういうものを含めて,数合わせというよりも,お互いに交通の利便性,県民性,周辺の様々な企業の集積,あるいは,医療資源の集積,こういうものを踏まえた上で,やはり個別に,相当きめ細かな議論の中でこれを進める必要があると思います。
 いずれ,地方の大学を,公立・私立にかかわらず,余りにも縮小,再編し過ぎますと,これは地方創生と全く逆の効果が出てきますので,そういう点については皆さんと一緒に,我々も地域も,十分にその点については今議論を進めておりますので,是非,そういう点をお含みおきの上,議論を進めていただければ幸いでございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,委員の方々から御質問ございましたらよろしくお願いいたします。
有信委員,どうぞ。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
 地域の問題はここでもいろいろ議論されていますけれども,今の御説明の中で,大きく大学の問題と,それから,いわば地域の雇用吸収力の問題と,2つの問題があるような気がします。
 大学で学生が集められたとしても,結局,卒業して,今最後におっしゃったように,県外に出てしまう。つまり,地元に雇用吸収力がなければ,そのまま外に行ってしまう。ただ,大学にいる間中は,その地域と大学の連携で地域の活性化に役に立つと,こういう視点が1つあります。
 それから,もう一つは,これから先の,今,2040年に向けた高等教育の在り方の検討ということで議論をまとめていますけれども,これから2040年に向けて,現在ある職業の半分はもうなくなってしまうと言われていて,そうすると,なくなった職業に対する新しい雇用,これはもう別に地域であろうが首都であろうが同じ話になるわけです。そこに向けて地域が努力をするときに,大学がそこに連携をしつつ,新しい構造を作り出すというような試みをやっていかないと,今,介護等々の問題はもちろん重要だとは思いますけれども,地域を活性化するという意味では,新しい職業は,特に別に都心になくてもできるような職業になってくるはずなんですね。そういうことは,大学が,その知を入れつつ,地域と協働で考えるという施策を,地域の行政がしっかり取り組んでいくことが重要ではないかと思っています。
 それから,大学は,別に国が,「人口が減るから大学を縮小しろ」などとは,とても口が裂けても言える話ではなくて,これは大学御自身の御判断でやるべき話で,大学の魅力がなければ学生は来ない,大学の魅力があれば学生は来るというスタンスにもう一度立ち返って,大学としても様々な施策を打つべきだというふうに,両輪でやるべきだと思います。特に,地方の行政で,大学と連携して,今言ったようなことを進めていこうとされておられるのかどうかということを。
【佐竹委員長】  特に理系の関係ですけれども,今,秋田,非常に多いのが,ソフトウェア分野の首都圏の企業の進出です。あともう一つは,例えば,東北にトヨタが工場等を置くなど,車関係,この関係が非常に多い。ですから,もう既に秋田大学,県立大学,その他の高専などが,もう県との通常のいろんなコンソーシアムの中で,県立大学,秋田大学に航空関係,輸送機,情報関係の分野を拡充する。他の分野もありますけれども,そういう動きは既にかなり取っています。
 ですから,地方においても,大学も生き残りですので,やはり地域の産業との関連で,いろんなことをやっていますし,それに県もいろんな面で応援するという,そういう仕組みは相当必要です。やはりそういうことがうまくいき,既に情報系では非常に成果が上がっていますので,その時には,先生方の供給,これがなかなかすぐいかないですね。ただ,そこは,やはりトヨタやそういう大企業の場合は,相当教育陣もいますので,講師で来ていただいてその中でこなすという,そういうことを今やってございます。
【永田部会長】  福田委員,どうぞ。
【福田委員】  ありがとうございます。
 一言だけお願いを申し上げます。今お話ございました地方,県内の人材,それと,育成と定着というようなことで,特に医療,そして介護について挙げられておられました。これは大学のみならず,専門学校でも人材養成をしており,なおかつ,国家資格という意味では,質の差といいますか,グレードの差というものがそんなに大きくないというふうに考えてございます。
 情報に関しましては,やはりそれだけのニーズがある地方,そうでない地方,また,それによってこれからのAI・IoT等々に対する技術者の養成の学校がないところも専門学校ではあろうかと思いますが,今申し上げました医療,介護につきましては,3年制,4年制,専門学校も各県にあると思いますので,そういった中で,大学等の中にしっかりと専門学校も含めて,人材の育成と定着をどのようにしていくかということをお考えいただければ大変有り難いと思います。
 以上です。
【永田部会長】  佐竹知事,いかがでしょうか。
【佐竹委員長】  特に私どもも,その点については非常に危機意識を持っています。この種のものは,定着率もいいですし,地元で教育し,地元の風習,あるいは,いろんな状況,これを分かっている人が一番,地元の,特に福祉・医療系はいいんですね。ですから,そういうところで,専門学校の役割も非常に大きいものですから,我々も,専門学校との協議もしながら,バランスをうまく取るという,そこら辺が非常に必要だと思います。
【永田部会長】  それでは,吉見委員,どうぞ。
【吉見委員】  ありがとうございました。
 秋田の場合には,国際教養大学のようなグローバルな,ダイレクトに世界とつながっていくという取組をされていて,これはかなりインパクトがあったわけでございますけれども。秋田とか,大分とか,そういう地方の大学がグローバルなつながりにダイレクトにつながっていくという,そういう方向については,知事はどのようにお考えになられていましたでしょうか。
【佐竹委員長】  今,学長もいらっしゃいますけれども,秋田県の国際教養大学の場合は,まさにそれを狙って県で設置しました。
 また,幸い,秋田大学は資源系です。今,資源系は,国内の資源開発というのはほとんどないですから,国のJOGMECの研修所もございますので,そういう意味では,今やっていることとその学科と国際性,これがマッチングしますと,必然的に外との連携というものが進む。
 また,国際教養大学の場合は,学科というよりも,国外から留学生がたくさんおいでになっているということが,小さい地域社会の中では非常にいろんな面で刺激,異文化交流,この意識が高まるという良い面もございますので,やはりいろんな面でそこをどう生かすかということは,行政もバックアップする,そういう体制を整えることが必要だと思います。
【永田部会長】  鈴木委員,どうぞ。
【鈴木(典)委員】  ありがとうございます。
 今,知事がいろいろ説明をしていただきましたけれども,「大学コンソーシアムあきた」というところは,秋田大学,県立大学,それから,市立の公立美術大学というのがあって,それに,私どもの国際教養大学が加わって,それぞれに特徴がある大学も,分業体制といいますか,それを統合して秋田県にある高等教育ということを意識的にやっておりますので,その意味では,知事のリーダーシップを頂いて,バランスの取れた高等教育というものをやっているのではないかと思っております。
 特に,資源,医療,農業,美術,そして,我々の国際系というところで,なかなかできないところを,一校一校がそれぞれに努力して,特色を出しているということで。4つの大学,国公立大学のコンソーシアムの学長会合というのも,年に3回から4回ぐらいやっておりまして,その意味でも,連携を強めているというところであります。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございました。古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  秋田県は,小中学校の学力が非常に高いことで有名なんですけれど,一方で,大学進学率が全国平均をかなり下回っている現状がありまして,知事としては,大学進学は全てではないんですが,進学率を上げるために何かこういうことが必要だというお考えはありますでしょうか。
【佐竹委員長】  特に秋田の特色,女子を受け入れる文系の4年制大学,これが非常に少ないんですね。ですから,そこであきらめるか,外へ出るかという。ですから,秋田県の人口問題で一番なのは,女子の流出であると考えます。秋田大学は教育文化学部が基ですので,それ以外について,ほとんどないものですから,そこが非常に弱点かなという,そういうふうに思っています。
【永田部会長】  最後に1つだけお伺いさせていただきます。
 現在,今年生まれた子供が大学を卒業する2040年に向けたグランドデザインを考えています。そのときに鑑みて,今,秋田県の事例を大分出していただきましたが,知事会全体として意見交換されていますでしょうか。
【佐竹委員長】  必ずしもそこまでの議論はできていません。2040年という将来の産業構造,就業構造,これも意識はしますけれども,やはりどうしても今後10年ぐらいの,そこに焦点が当てられる。これは,大学の再編というのは非常に短いうちに行われるのではないかという,そういう意識も知事の間にはあるのではないかと思います。ですから,2040年となりますと,まず全く構造が変わりますので,そこら辺が,私なんかは技術系で,今でも研究にある程度携わっていますので,分かります。
【永田部会長】  佐竹知事は,知事会の中でこうした議論をリードされていると思いますし,また,理工系御出身ということで心強いところでありまして,是非とも,少し先々のことを考えて御議論いただければと思います。連携・統合した後で,もう一回また連携・統合し直すということは不可能だと思いますし,2040年に例えば介護や看護を取り巻く状況が本当に今と同じかというと,私は違うと思います。ですから,知事会でも,各地域の御事情があることは重々承知しておりますが,そうした将来の社会の姿を根本から考えて議論を深めていただき,また御意見を伺えればと思います。今日は本当にありがとうございました。
 お忙しいところ,本当に佐竹知事には感謝を申し上げます。
 続きまして,日本私立大学連盟,田中常務理事から御意見を伺います。田中理事,お忙しいところ,どうもありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
【田中常務理事】  まず,高等教育の将来構想について議論を重ねられて,そして,このたびの答申案を取りまとめられたことに,日本私立大学連盟は敬意を表します。極めて多面的な検討をしてこられたと拝察します。とりわけ,多様性と柔軟性の確保を強調されたことは,私立大学の在り方の根幹を支えるものとなりますので,感謝申し上げます。
 今後,基本理念の具体化に当たって,更に論議が深められますように,私大連からの意見を申し上げます。
 資料をお配りしていますが,時間が限られておりますので,ここでは一部のみを申し述べます。
 まず資料2の総論に述べた事柄の意図をお話しします。
 私立大学は,学部学生の約8割を教育しております。したがって,国民の知的水準を底上げするためには,私立大学が今後の高等教育の基幹であることを明確に位置付けることで,私立大学の教育研究のリソースを最大化することが必要だと考えます。
 リソースを最大化するためには,学生一人当たりの公的支援における国私間の格差の改善と投資の拡大が必須です。その際に,このたびの答申案が重要視した多様性の理念に基づき,私立大学の自由な取組への支援が基本となるべきだと考えます。
 その多様な教育研究体制の確立のためには,「リカレント教育」「留学生交流」「イノベーション創出」などを,高等教育機関だけの課題と捉えるのではなく,政府,地方公共団体,産業界とともに取り組むべき社会的課題であることを明確に打ち出すべきだと考えます。答申案の13ページでは,産業界との協力・連携の必要性を強調していただいていますが,さらに,政府・地方公共団体の協力,そして,社会全体の理解があってこそ達成できるものと考えます。
 また,大学の使命は,今後20年間の社会ニーズへの対応だけではありません。人類の未来に向けて,人間社会はどうあるべきなのかを考えることも,使命の一つです。答申案の6,7,8ページでは,その理念を書いていただいていますが,さらに,その課題を洗い出し,克服に向けていかなる能力が必要なのかを,産業界,政府,そして,社会全体と連携して追求していくことが重要だと思われます。
 以上をスピード感を持って実現するために,大学設置基準の見直しと高等教育機関への新たな公的支援を検討すべきであると,私大連は申し述べたいと思います。
 次に,答申案全体の中から,幾つか改訂案を申し上げます。
 「グローバル化」「グローバリズム」「グローバリゼーション」「国際化」という言葉が混在しております。これらの整合性や言葉の違いについて再考していただく必要があると考えております。
 また,4ページに,「OECDにおけるキー・コンピテンシー」について,「これは将来においても陳腐化しない普遍的なコンピテンシーであると考えられている」とありますが,「これは」が何を指すのか不明で,なぜこれが普遍的なのかという説明がされておりません。さらに,後段において,「OECDではキー・コンピテンシーの改定作業を行っている」とあり,そこに矛盾が見えます。そこで,現在行われている改定作業に期待するのであれば,「これは」以下の一文を削除することを提案します。
 また,11ページの「地方創生が目指す社会」においては,地方創生を実現するために,生まれ育った地域で生活することのみが強調されています。しかし,この流動化の時代に,その生き方を強く求めることは現実的とは言えません。地方での活動のみならず,大都市圏と地方との人的好循環が必要であること,地域が産業の拠点になる可能性のみならず,AIの進展等によって,大都市圏からでも地方創生の可能性があることにも触れる必要があるのではないでしょうか。
 また,16~17ページの「リカレント教育」「留学生交流の推進等」は,大学だけの課題ではなく,企業等が社会人をどのように評価,処遇するのかということが重要となります。例えば,修士・博士学位が評価される国際的人材育成や獲得競争においては,大学院での学びや学位を評価・処遇へ適切に反映させることが大きな意味を持ちます。45ページには,大学院の課題としてそれが書かれていますが,リカレント教育,留学生の課題としても加筆すべきではないかと考えます。
 第2章では重要で具体的な施策が示されていますが,これを実現させる巨額な経費についても言及していただきたく思います。「政府による公的支援の拡充と各大学の財政努力」という文言を第2章に付記することを提案いたします。
 実務家教員や学外理事の登用の推進については,今後,私立大学の教育研究プログラムへの過度な介入となったり,私立大学の自主性を尊重する私立学校法に抵触することのないよう,慎重な議論が必要だと考えます。その点で,誤解を招くことのないよう,48ページ終わりから6行目にある「実務家等も含めた」という部分を削除することを提案いたします。
 実務家教員について,私大連としての意見を申し上げます。専任教員として登用するのであれば,単に実務における経験を話すだけでは不十分です。専任教員となる実務家教員は,自らの実務的経験を学術的あるいは高度な専門的な文脈から位置付け,再構成して教育に生かしていく力量が必要となります。国際認証では,実務家教員の相当比率を修士以上の学位取得者とすることを求めています。このような基準を設定することも検討に値するのではないでしょうか。
 情報公表について,30ページ,33ページの「国は,全国的な学生調査や大学調査を通じて整理し,比較できるよう一覧化して公表」との記述は,削除すべきだと考えます。情報公表は積極的に進めるべきであり,情報公表の比較項目,指標は,正確・公平で意味のあるものにしなければなりません。しかし,項目を数値化するのは極めて難しく,実態が反映されない不正確な情報が流通すると,ダメージは取り返しのつかないものとなります。大学ポートレートなどにおいて検討が続けられていますし,情報公表の主体は何よりも大学自身とし,国の役割は,公開の支援・後押しであるべきだと考えます。
 31ページ,33ページ,定員管理の方法について述べます。学問そのものが文理横断的になっており,文系学部の単位の半数をデータ処理などの理系の授業が占めることもあります。答申案に示されているとおり,時代に合った学部の再編を可能とするためにも,定員管理の方法については,学科や学部単位から大学単位にするなどの大学設置基準の見直しを早急に求めたいとの記述を加筆することを提案いたします。
 49ページに,「授業料減免と給付型奨学金の拡充を行う方針が決定した」という記述があります。日本私立大学団体連合会が,2018年2月に「高等教育の機会均等に関する要望」にて申し入れているとおり,まずは国立大学と私立大学の間の公的支援,それから,学生納付金の格差是正を検討すべきです。このままでは,国の無償化政策は格差固定化につながりかねません。個人補助と機関補助をどのように捉え,国公私間の公的支援を考えるのかを提示すべきであると考えます。
 最後に,「9.その他(全体についての意見)」というところが資料の中にあります。その意図を御説明申し上げます。
 昨今の高等教育政策は全体の整合性が欠けているのではないかという印象を,私大連では持っております。
 例えば,学生が勉強しないという批判がある一方で就職活動の早期化を食い止めようとはしていません。これは大学での学修成果は就職に何の関係もないというメッセージにつながりかねません。また,入学定員の厳格化に向かって規制を強化していますが,“入りにくいが卒業しやすい”という日本の大学の欠点を維持・拡大させる懸念があります。
 また,「多様な学生」と言いながら,AO入試や推薦入試の募集を9月以降に規制しています。これは,夏休み期間に慎重に書類審査をしなければならない評価より,ペーパーテストを重視する姿勢を示しているのではないかと考えます。
 新しい時代に適合した教育システム・教育内容の創設が求められていると思われますが,東京23区の大学の学部学科新設や定員増を原則禁止しています。これによって,東京23区内の私立大学は,新分野に挑戦するための原資としての学生納付金収入を増やすことができず,大胆な改革・改編を推進することが非常に難しくなっております。
 社会の変化の速度が速まっている現代において,政策相互の整合性を欠く事例は数多く存在しています。大局的な観点から高等教育の整合性を検討するということも「グランドデザイン」の大きな役割であると考えます。
 以上です。
【永田部会長】  大変よくまとまった御意見,ありがとうございました。
 指摘いただいた御意見の中で,学生の定員管理に関する問題等については,当然今後引き続き検討すべき問題として考えております。その検討の際に大変有益な御意見かと思います。
 それでは,委員の方々から御質問あるいは御意見をお願いいたします。
小林委員,どうぞ。
【小林委員】  田中先生,ありがとうございました。
 私も,大学の情報公開は大学がまず主体となるべきだというのは全く同感ですけれど,他方で,大学ポートレート等を推進してきたという立場もございます。それで,先生もよく御存じですけれど,実際,この5年間,大学ポートレートにしても,大学情報公開にしても,特に私立大学は積極的だとは言いかねるわけです。そのことが,むしろこういった中央教育審議会の場で情報公開を,大学が主体ではなくて国がやるというような方向に向かわせているという,そういう面もあるわけです。そのあたりのことは,先生,どのようにお考えでしょうか。
【田中常務理事】  情報公表について,私立大学が消極的だとは思っておりません。大学によって違いがあるということはあるのかもしれません。しかし,基本的に公表すべき項目というものは認識しておりますし,それに従って,可能な限り公表していると考えます。
 ただ,大学ポートレート等の議論でも話題になりますのは,実際に受験生や学生がどのように調べたらいいのか,つまり,項目別に検索ができないなどの課題あると思います。
 それから,世界から日本の大学を調べようとしたときに,うまく比較できないという問題があります。また,比較するときに,どのような項目を比較することが公平なのかという課題が常につきまとっています。先ほどの意見でも申し上げましたように,どのような基準で数値化すべきなのかということを,より慎重に検討し決めておく必要があり,そのような作業が進めば,現在,情報公表に消極的な私立大学においても,基準に沿って公表していくという姿勢に変わっていくのではないかと思います。
 御指摘のように,私大連としても,公表の方法について,より議論を詰めてゆく必要があると思っております。ありがとうございました。
【永田部会長】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今の点に関連してですが,私立大学が消極的ではないと思っていらっしゃるということですが,しかし,この5年間に私立大学の情報公開が進んでいるかと言えば,進んでいないと思います。私立大学連盟は,情報公開に関しては積極的にやるべきだという意見を出されたんですけれども,私立大学連盟としては,今おっしゃっていることをお聞きしますと,個別大学はやっているからいいではないかというふうにお聞きできるんですが,私立大学連盟として,何か積極的に加盟大学に対して働きかけをするということはあるんでしょうか。
【田中常務理事】  私大連では『未来を先導する私立大学の将来像』を4月に公表しております。その将来構想の中で,私大連の加盟校に対し,積極的に情報公開をすべきであるということを述べています。つまり,加盟校自身がやるべきことの非常に重要な一つの項目として位置付けています。
 おっしゃるように,今後は,更に具体化して,加盟校が情報公開を推進するよう働きかけていく必要はあると思っております。
【金子委員】  ただ,今のお話ですと,呼びかけているというふうには聞こえますが,それが進まないということが社会の不満を生み,このように削除すべきだとおっしゃっていますけれども,この審議会でもこういったことを言わなければならないという状況に今あるのではないかと思いますが,それについてはどうお考えでしょうか。
【田中常務理事】  そのような状況に鑑み,情報公表について記述したいう意味はよく分かります。しかし,「国は,…公表する」という表現には違和感を覚えます。国が,情報を整理して公開にこぎつけるまでは非常に長い時間がかかるのではないかと思いますし,現実的に可能なのだろうかとも思います。むしろ,国は,情報公表の項目を数値化するときの基準のようなものを作る方がよいのではないかと感じています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 社会から信頼を得られる高等教育の実現を念頭に,公表に値する資料の在り方について考えていただきたいと思います。
 そのほか,いかがでしょうか。よろしいですか。
 田中先生,どうもお忙しいところ,ありがとうございました。多々参考になるところがありました。どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,日本私立大学協会から,同協会副会長でいらっしゃいます佐藤委員の方から御発表いただきまして,ディスカッションをさせていただきます。それでは,佐藤委員,よろしくお願いいたします。
【佐藤委員】  ありがとうございます。今日は,日本私立大学協会の副会長として,私立大学連盟に引き続いて,協会としての意見を申し上げたいと思います。
 私立大学協会では,私立大学基本問題研究委員会というのを置いていて,そこで地方創生に関する小委員会,あるいは,私立大学の振興政策に関する検討小委員会等を作って,同じように高等教育の将来構想(グランドデザイン)についても,この秋の総会で最終的な報告をまとめたいという作業をしているところであります。その内容については,本日提出した資料3に添付の最終報告案のとおりです。
 それから,ちょっと申し上げますと,協会の提出資料に答申案のページが書かれています。これは今まで本分科会でも将来構想部会でも何回か答申案についてブラッシュアップをしているので,ページが若干ずれているかもしれませんが御了承いただきたいと思います。
 私立大学協会そのものは,現在,385法人,405大学でありますが,どちらかというと,連盟と比べると,地方の小規模な大学が多いものですから,全国7つの支部に分けて,それぞれ活動をしているというのが現状であります。
 それで,先ほど田中先生の方からもありましたように,平成29年3月6日の諮問を受けて以来,審議会が精力的な審議を重ね,答申案を取りまとめてこられたことに対しては,敬意を表したいということであります。
 しかしながら,高等教育の8割を担う私立大学にとっては,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」への踏み込みは十分ではないのではないかという意見もありますので,今日は,若干のそういった意見を申し上げたいと思います。
 全体としてのポイントは,今申し上げましたように,高等教育のグランドデザインと標榜しながらも,グランドデザインの踏み込みがもう少しあってもいいのではないか。それから,提言も,将来を見据えたというよりも,比較的短期的な視点によるものが少なくない。また,もう一つ気掛かりなところは,大学に対して干渉が過度になっているのではないかというようなことも懸念している。それぞれの大学がオートノミーを持っているということであれば,そこの判断というものについても,もう少しきちんと考えていただきたいと。事細かになり過ぎると,なかなか新しいものが出てこないのではないかということを懸念している。
 それから,本協会の意見書においても,先ほどの私立大学連盟からも,私立大学を基幹とした高等教育政策の必要性について触れさせていただきましたが,これについて一般の社会の中には,ひょっとしたら違和感を覚える方がいらっしゃるかも知れません。しかしながら,これは国立,公立,私立がある中で,単に私立大学をその中心に据えよということではなく,やはり私立大学が8割の学生を抱えている,特に学士課程で抱えているということから言えば,私立大学の活動というものがもっともっと活性化するような方法を考えていただく必要があるのではないか。そういう意味で高等教育政策のパラダイムシフトを求めたいということであります。
また,幾つかの場で私立大学の役割についてということが言われているわけですが,それも多少違和感を持っているところがあります。 
 その違和感を持っているというところがどういうことかというと,私立大学の役割の中で,例えば,この現状認識としての記載の中に,「多様性に富み,実践的な教育を行う役割を担っている」のが私立大学であるという記述がありますが,実は,私立大学は実践的な教育のみを担っている高等教育機関だけではないということであります。当然ながら,高度学術研究を行っている大学も多く,私立大学が担う教育を「実践的な教育」という枠組みにはめるという記述であってはいただきたくないということであります。
 もう一つは,同じような段落の中だったと思いますが,「労働生産性を大幅に引き上げるため」に「中核人材の教育機会を保障」する役割があるという記述もありますが,私立大学の教育が中核人材の労働生産性を引き上げることのみを目的とするかのような記述にも,やはり違和感がある。実際には,ほとんど芸術系の大学は私学が担っていることや,スポーツについてもそうでありますし,我が国の文化や学術の広い裾野を支える中核人材を育むこともまた私学の教育の重要な役割であるということから言うと,それについては工夫をしていただきたいと思っております。
 それから,もう一つあるのは,「我が国の高等教育の中核基盤を支える方向で改革を進める」とありますけれども,私立大学において,我が国の中間層に対する教育だけではなくて,今後においても,我が国の未来を切り拓くリーダー人材養成など,各私立大学の「建学の理念」を源泉とする多様な人材養成機能を有することが私立大学の重要な特性であるので,その点についても記述を加えていただけないかということであります。
 それから,国公立大学の在り方についてということについて,この中では触れているわけですが,国立大学法人運営費交付金が毎年1%減額し,私立大学等経常費補助金の補助割合が漸減する中にあって,同じ国民の税金を源泉とする地方交付税が充当される公立大学の新設や私立大学の公立化が相次いでいるという現状があります。グランドデザインを描くに当たっては,国の財政負担を伴う公立大学の在り方についての抜本的な検討が不可避でありますので,その際には,経済的合理性を持つ私立大学の活用・支援が併せて検討できないかということを考えているところであります。
 いずれにせよ,先ほど田中先生から連盟の立場から意見を述べていただいたわけですが,同じような意見を様々入れてあるということであります。2040年に向けた高等教育のグランドデザイン答申の原案について意見を求められているわけですから,その範囲内で考えて,まとめているということを御理解いただきたいと思います。
 私立大学では,これまでも歴代の答申における改革提言に真摯に向き合い,教育研究の充実強化に取り組んできたところであります。このたびの答申案で示された社会の急激な変化を受け止め,今後も継続して教育研究の更なる充実と改善に努めていくというのが,私立大学協会の姿勢であります。
 一方で,大学における教育と学修の成果を最大限に高めるためには,大学や学生の努力だけではなくて,経済界や産業界をはじめとする社会全体で,学生の「学び」を尊重し後押しをする社会を構築しなければなりません。そういう意味では,こうした社会の醸成を,私どもも形成をしていきたい,リカレント教育をはじめとする人生100年時代における「学び」についてもしっかりと取り組んでいきたいということであります。
 ひとまずここまでとさせていただきます。
【永田部会長】  佐藤委員,ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御発表について,御質問,御意見等,よろしくお願いします。
有信委員,どうぞ。
【有信委員】  どうもありがとうございました。
 質問ですけれども,最初におっしゃった,大学のオートノミーをもっと尊重すべきで,国が余り手を入れるべきではないという趣旨のお話に関してです。今回の提言の中には,かなり慎重に大学の自主性・自律性を担保するという視点が盛り込まれているような気がするんですが,これをもう少しフリーにするとすると,例えば,こういう考え方があると思うんですが。要は,私立大学のそれぞれの盛衰は,もう市場原理に任せると。つまり,市場での大学間競争によって,潰れるものは潰れ,生き残るものは生き残ると。極端なことを言うと,市場原理というのはそういう話になると思うんですけれども,そこまで徹底的に認めるか,今回,そうは言っても,教育で様々市場原理に任せることによって,不利益を被る人たちをある部分救済しなければいけないという観点で,国がどれだけの手を差し伸べるかという,こういう視点の話になっているような気がするんですけど。それでも,まだもう少し自由に市場原理側によるべきだという,こういうふうにお考えになっているのか。あるいは,この辺の仕切りをどういうふうにお考えになっているのか。難しい話で,私も悩んでいるんですけど,お考えがあればお願いいたします。
【佐藤委員】  まず,当然ながら,オートノミーということに対して,大学の使命とは何かということが,まずはっきりとそれぞれの機関が認識をして,それに対応していくということがないと,市場原理で今この分野が求められているからする,そこに数を増やしていくというようなことだけでは,いい教育ができるのかどうか。やはり学生の立場,それから,今は2040年というところの人口減のところについて議論をしているわけですけれども,それに向かって,では,どういう質の教育制度をつくっていくのが社会から認められるかと。それも決めるのはそれぞれの大学ではないかなと,私自身は思っています。
 どうしても抑制的でなければならないということですが,入り口のところは全く自由にしてしまって,その後のことを何かコントロールしようと思っても難しいのではないかということでありますから,そういう意味では,総合的に設置基準の在り方についてなど,全体をきちんとまとめていかなければならないというのは,オートノミーの反対側にあることではないかなと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  先ほどの私大連盟の方とも共通した話なんですけれども,やはりこの2040年に向けてというところにおいては,Industry4.0,Society5.0,社会が変わるということを前提に,高等教育の在り方を検討しているわけですけれども。同時に,大学といいますか,特に大学を取り巻く環境というのも変わるということを前提に検討していかなければいけないと思うのですが,これまでのように,日本人を入学させて,日本の企業に就職させるというような,そういう形というのは,もう恐らく間もなく変わってくるのではないのかなと思いますので。そういう中で,学問の自由,あるいは,助成金の増額というようなことに対して,やはり評価の仕方というものも変えていかなければいけないのではないかなと思いまして,質保証というところでは,1つの方法は認証評価ということになるんですけど,そういう自由と助成を増やすということの裏側の認証評価についての厳格化,あるいは,ペナルティの強化とかというような話については,協会としてはどのようにお考えになっているのかということもお聞きしたい。
 それから,もう一つは,優秀な留学生を受け入れるということもやはり考えていかなければいけなくて,私,詳しいわけではないですけど,アメリカのITはインド人,中国人が支えているというお話もありますけど,恐らく日本のITも日本人だけでは支えられなくなってくるので,やはりそうなってくると,大学の機能分化みたいなこともある程度必要になってくるのかなということも思うのですけれども,意見があれば教えていただければと思います。
【永田部会長】  佐藤委員,お願いいたします。
【佐藤委員】  余り意見を持っているわけではありませんが。いずれにせよ,外国人学生をもっともっと受け入れなければならないという現実はあると思います。ここ数年で見ると,急激にベトナム人が増えるなど,それぞれその時代時代によって変わっていっているところがあると思います。一方で,受け入れたはいいけれども,出た後どうするのかということも,やはり考えなければならない。日本の社会の中で受け入れるのか,それとも,もっと幅広いところで戻して仕事をさせるのかとか,それも含めて考えなければならないと思っています。
 それから,協会として,今,御案内のように,部会長が会長を務めておられる大学基準協会と日本高等教育評価機構が2つ,主に私学が認証評価を受けるところについてはあるわけですが,特に日本高等教育評価機構については,私学がほとんどであります。中に多少新しい独立行政法人的な大学も,その中に評価を受けるということで入ってはきているようでありますが。基本的に言うと,やはり何のために評価するかと言ったら,それぞれの学校がきちんとした教育をできるかどうかということだと思います。それが現在は,設置基準に基づいて評価をするということなので,それから余り足を踏み出していないということであると思います。
 余り時間がありませんけれども,私立大学協会として,この認証評価については,外から見て分かりやすい評価の内容に何とかできないかという意見があるということです。
【永田部会長】  有信委員の御質問,千葉委員の御質問,それから,佐藤委員からの御回答に共通して言えることは,やはり設置と認証評価から成る質保証のサイクルを統一的に見直すべきである,ということになると思います。この点は,答申案の最後に書き込んでいる部分であります。
 それでは,小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  ありがとうございます。
 私は地域連携プラットフォームに大変関心があって,これから大きな役割を果たせる機関になるのではないかと期待しているのですが,連盟の方は一言も触れてくださいませんでしたけれども,協会の方は大きく触れていただいているのとともに,すごく危惧を感じていらっしゃるので,こういう危惧は一体どこから生まれているのか,何をどうしたらうまくいくのかと考えていらっしゃるのか,教えていただければと思います。
【佐藤委員】  危惧を感じているということが正確なのかどうか分かりませんけれども,基本的に地方の私学は,大体は地域の要望によってつくられた私学が多いのではないかというふうに私どもは感じています。したがって,その中でこのような記述があるのは,地方創生あるいは地域連携というようなことを考えた場合に,現実として,自治体も含めて,基幹となる組織をやはりどうしても国立・公立がそのベースになっていくという考え方が多いのではないかということが一つ気になっているのではないかと思います。
 ですから,早く言えば,私学,頑張っているところはあるのですが,一方で,公設民営のようなものについては,どんどん公立大学化されてしまっているということ。それから,やはりどうしても行政的に言っても,そこにプラットフォームを作ると,自治体との関わりから言ったら,やはり公立・国立の法人を中心にしているという現実があるような気がします。それについての危惧だと思います。
【小杉委員】  ありがとうございます。
【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  私立大学協会に対する直接の質問ではないのですが,今の議論の中にあったことで,前々からちょっと気になっていたことです。こういう国と大学との関係ですけれども,先ほど有信委員がおっしゃったようなことなんですが,国の規制か個々の大学の自由競争かという二方向ではないと思うんですね。つまり,例えば,認証評価にしても,あるいは,設置の審査にしても,これは大学同士のある意味ピアレビュー的な要素が強いと思うのです。個々の大学が競争してどうなるかという話と,それから,国がそれをどう規制するかという間に,大学間できちんと連携を取りながらピアレビューをしていく,支え合うというところもあり,お互いに批判もできるような,そういうシステムというのがもう少し発達するようにしていくべきだと思います。これは大学側の役割だと思いますけど,やはり国の役割でもあるだろうと思います。
 今日のこういう場でも,国大協であったり,私立大学連盟であったり,私立大学協会であったりという,そういう大学団体が出てきているわけですし,先ほどお話があったように,その中で,例えば,公表が進んでいないというようなことがあるならば,それはやはりそれぞれの団体が積極的に進めていくようにしていくべきだし,それは我々,中央教育審議会のようなところも必要ですし,それを国が支援していくという,そういうような方向に向かう方がいいのではないかと思ったので,一言申し上げたいと思いました。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。よろしいですか。
 設置あるいは認証評価については,先生がおっしゃるように,各大学や各大学団体の取組からそれを支援する国の役割が指摘されるようになり,いよいよ法的な整備も考え直さなければいけないという段階かと思います。
 それでは,鈴木委員,どうぞ。
【鈴木(雅)委員】  佐藤委員,ありがとうございました。
 これは1つ確認ですが,今,私大が全体の80%を超える大規模な数があるとすると,今回の40年構想の中には,リカレント教育についてかなり出てきたと思いますが,そうしたときに,地方は地方だけで固まってしまうのではなく,もっと国内の中のグローバルを考えたときに,私大はもう少しリカレント教育に力を入れて,少子化対策に対しても何か手が打てるような気がしていますが,その辺のところは,私大としてはどのようにお考えですか。
【佐藤委員】  今,協会として何か,リカレント教育は,これから大切な役割を占める部分であるという考えはあると思いますが,それこそそれぞれの大学で取り上げていること。ただ,全体で考えれば,やはり18歳から22歳までの学生だけを相手にしていることでは,もう大学そのものが成り立たなくなっているという意識はあると思います。その中で,どういう工夫をしていくかということであると。
 かねてから私が個人的に言うのは,単にリカレント教育というのが,職業なり専門性を高めるだけではなくて,自分の生きがいのために学ぶというようなことがあっても当然いいわけですから,それは全く無視するわけにいかないだろうと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そのほか,よろしいでしょうか。佐藤委員,ありがとうございました。
 それでは,続きまして,経済同友会からお招きしております,小林副代表幹事・教育革新委員会委員長です。お忙しい中,小林副代表,ありがとうございます。早速お願いを申し上げます。
【小林副代表幹事】  経済同友会で教育革新委員会の委員長を務めております小林です。本日は説明の機会を頂戴し,どうもありがとうございます。
 早速ですけれども,経済同友会の意見を説明させていただきます。お手元の資料4を御覧ください。
 はじめに総論ですが,答申案は,2005年1月以来,約14年ぶりの将来構想の見直しであり,皆様の議論の貴重な成果であると,同友会としては受け止めております。
 ただ,枠組みを拝見しますと,第1章でグランドデザインが描かれている反面,第2章以下で述べられている具体策は,既に顕在化している課題への対応にとどまっていて,2040年のあるべき姿に通じる道筋が見えにくいという感じがいたします。中長期的な課題の更なる洗い出しが必要ではないでしょうか。また,答申案を高等教育改革に着実につなげるため,中央教育審議会として,政府に対して,答申を踏まえた改革メニューの全体像と具体策,工程表の明示を求めるべきではないかと考えております。
 さらに,答申案には,文部科学省のみならず,各府省に関わる改革が盛り込まれておりますので,政府としての責任主体を明らかにし,進捗管理を行う必要があると考えます。
 続いて,具体的な論点につきまして,幾つか指摘させていただきます。
 論点1の教育の質の保証と財務の健全性評価についてです。
 答申案は,実現すべき高等教育改革の方向性として,高等教育機関が,「学修者が『何を学び,身に付けることができるのか』を明確にし,学修者が学修の成果を実感できる教育を行っていること」や,「このような教育が行われていることを確認できる質保証の在り方へ転換されていること」を挙げております。
 2040年までに,高等教育機関が「社会課題を特定し,価値創造に向かって解決へと導ける人材の育成機関」となるためには,教職員の意識改革を含む高等教育機関のガバナンス強化に加えて,文部科学省による設置認可基準及び認証評価制度の見直しが不可欠であると考えます。
 これらのうち「設置基準等の質保証システム」の見直しについて,答申案は,中央教育審議会において引き続き検討することとしていますが,その際には,是非,まず1点,卒業生のトラッキングをシステムの中に組み込むこと,2番目として,学校法人単位の財務状況のみならず高等教育機関単体の財務の健全性も評価の対象とすること,そして,3つ目に,オンライン教育の進展をはじめとする経済・社会環境の変化を踏まえ,高等教育の目的を達成する観点から,校舎面積に係る要件ですとか運動場,体育館等の必要性云々,施設・設備に関する設置基準を見直すということが必要と考えられます。
 続いて,論点2,大学経営のガバナンス強化についてです。
 答申案の目指す「学修者本位の高等教育」を実現するためには,高等教育機関をより開かれたものとすることが重要であり,例えば,我々企業がこの何年間か取り組んでまいりましたコーポレートガバナンス改革等も参考に,情報公開の徹底や複数名の学外理事設置の義務化などを早急に進めるべきであると考えます。
 3点目のリカレント教育について述べたいと思います。
 「リカレント教育」は,社会人の知識やスキルのブラッシュアップのみならず,人材の行き来を通じて,産学が相互理解を深めるツールの一つにもなり得ると私たちは考えております。しかし,その目的や具体的内容について,学修者,高等教育機関,企業,地域,政府等の認識が一致しているとは言えないのではないでしょうか。皆さんがそれぞれの定義でリカレント教育ということを言っていますけれども,じゃ,当国におけるリカレント教育をどのように定義するのかということについて,やはりしっかりと一致させていく必要があると考えております。限られた財源を真に必要な教育・研究に効果的に充当するためにも,答申案において,リカレント教育の定義や目的の再整理・明確化を行う必要があると考えます。
 また,大学・大学院に蓄積された「知」を活かして教育プログラムを提供し,社会が求める人材を育成するという観点では,社会人の経験のない学生とリカレント教育を希望する社会人に大きな違いはありません。カリキュラムやシラバスが,社会や地域の要請,産業界の中長期的なニーズを踏まえて体系的に策定されていることこそが重要であり,単に社会人向けの夜間コースを新たに設けるのではなく,入学者選抜や履修証明制度に柔軟性を持たせる等,社会人が他の学生と一緒になって受講しやすい環境を整備することを軸に検討を行うべきであると考えます。
 なお,人口減少・高齢化が加速する日本において,働く個人の生産性をいかにして高めるかは,リカレント教育の充実をはじめとする教育改革のみで対応可能な課題ではなく,社会保障制度や労働法制等を含めて,産学官全てが責任を持って対応すべき課題であると考えます。
 最後に,論点4の産学連携の深化と高等教育機関間の役割分担についてです。
 産学連携の重要性はかねてから指摘されているものの,産学双方に課題があり,十分進展しているとは言えません。例えば,求める人材像について,産業界は繰り返し発信しているつもりではおりますけれども,依然,産学の隔たりは大きく,相互理解の促進に向けた一層の取組が必要であると認識しております。
 高等教育機関には,産業界との議論を通じ,社会のニーズを踏まえた特色ある教育プログラムを提供するとともに,学修成果の可視化等,卒業生の質の保証の強化を求めたいと思います。
 また,地域の国立大学が総じて総合大学化する必要性は小さく,高等教育機関間の役割分担の中で,優位性のある領域に集中的に資源を投入して世界トップクラスの研究を行う等,各々が特色ある教育・研究に取り組むべきではないでしょうか。一覧性の高い情報公開が不十分なこともあり,産学連携を進めようとしても,共同研究を行い得るテーマ・研究者がどこに存在しているのか,求める情報を見つけ出すのが難しいという現状です。
 当時に,産業界の反省としては,「求める人材像」を行政当局や高等教育機関等二十分に伝える必要があると考えております。AI等の技術革新を踏まえれば,2040年には,全ての学生が高等教育を終えるまでに,物事の本質を見極める意識を持って行動し,変化に対応する柔軟性を身に付けることを期待しています。また,経済・社会のグローバル化が進展する中,高等教育機関には,多様な価値観を受け止めて,覚悟をもって決断するグローバルリーダーシップを発揮する競争力ある人材の育成も強化すべきであると考えております。この点については,産業界も,インターンシップの機会の提供や改善,そして,採用に際して学修の成果を適切に評価することを通じ,高等教育機関とともに将来世代を育成する役割を担ってまいりたいと思います。
 今回の意見は,経済界という視点からの意見であります。
 以上で説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。
【永田部会長】  小林副代表幹事,大変有益な御意見,ありがとうございました。
 それでは,委員の方から御質問,御意見をお願いいたします。では,金子委員からお願いします。
【金子委員】  3ページの中ほどに,地域の国立大学が総じて総合大学化する必要はないというふうな御意見のようですが,ただ,教育機会の均等という観点から言えば,これは所得階層による相違とか,地域による相違をなくすということも重要ですが,もう一つは,興味・適性に応じた教育機会というのは,ある程度地域的に分散しているということも非常に重要であると思います。そういう意味で,近くに通えるところに自分の好きな分野の大学教育が提供されているということは,私は,これは1つ,非常に重要なのではないかと思います。
 それから,もう一つは,学術研究の立場からも,世界的な先端という観点からすれば,集積した方がいいという考え方もあり得ますが,しかし,今必要とされているのは,むしろ地域のニーズとマッチした教育研究,学術研究だと思うわけですけれども,そういったニーズに応えるためには,やはり様々な専門領域,研究活動が地域で行われているということも重要ではないかと思います。この点について,どうお考えでしょうか。
【小林副代表幹事】  当然のことながら,適正な教育機会をできる限り近いところで提供する必要はあるかと思いますけれども,ただ,これについて言わせていただければ,今のオンライン教育の進展といろいろな新しいツールを使って,他大学の教育も取り入れるというようなこともできるかと思いますので,2040年の構想ということを考えますと,そういった新しいAIとIoTを使った授業の在り方というのも抜本的に考えていけるのではないかと考えております。
 それから,学術研究ですけれども,確かに,地域に必要な研究というのも,これも重要な大学の要素であるとは思いますけれども,ただ一方で,それぞれの地域地域にやはり特色があるわけですから,そこを軸にして研究開発を進めていくというような視点から,全ての大学が様々持っていく必要はないのではないかと。地域の特性を活かし,そこの産業界と相まって研究開発を進めていけるようなところにむしろ資源を集約して,そして,他の大学と連携していくというような考え方でネットワークを作れるのではないかと考えております。
【永田部会長】  それでは,村田委員,どうぞ。
【村田委員】  ありがとうございました。
 私から2点,御質問をさせていただければと思います。
 1つは,論点1のところで,設置の認可基準及び認証評価の見直しが不可欠と書かれておりますが,これは,どういう方向を具体的に念頭に置かれているのか,もう少し具体的にお教えいただければと思います。
 もう一つは,リカレント教育に関してでございますけれども,確かに,産業界の方からも,こういう人材が必要だということは発信されてきているとは思うんですけれども,実際にリカレント教育,もう90年代からずっと言われながら,全く進んでいないというのが現状だと思うんですね。
 そのときに,実際にニーズとして,例えば,大学の学部レベルの教育なのか,あるいは,大学院レベルの教育なのかというところ,あるいは,ここでは履修証明制度という,むしろかなり短期間の履修証明制度を使ったような教育ということもありかと思いますが,産業界でも具体的な分野によって違うんでしょうけれども,ざっくりと,大学院なのか,学部なのか,あるいは,どういう分野なのかというところは,何か具体的なお考えなどがあれば,お教えいただければと思っております。
【小林副代表幹事】  ありがとうございます。
 まず1点目の設置基準についてですけれども,もちろん,それぞれの大学がいろいろな特色を持っているわけですから,一律にということではないですけれども,ただ今,世界を見回してみますと,いろいろなタイプの大学が実際に教育の機会を提供していて,中には非常に面白い教育を提供しているような大学,例えば,これは1つの例にすぎませんけれども,アメリカのミネルバ大学のようなところもあるわけで,今の基準ですと,そういった大学がもし日本でも構想があったとしても,なかなかそういった大学が大学として認可を受けることができないという事実がありますので,そういうところにもう少し柔軟性があってもいいのではないかと考えます。
 認証評価の方につきましては,我々としては,まだ細かいところまで議論はしていませんので,今日はコメントは控えさせていただきます。
 それから,リカレント教育ですけれども,これはざっくりとしたイメージといいましても,企業の中でもいろいろな人材が必要です。例えば,そんな高度な研究開発を担うような人間につきましては,やはり大学院あるいは博士課程というようなことになりますし,ただ一方で,多くの企業で働いている人たちにとりましては,これからAI等の進展によって,今行っている仕事がなくなっていく中で,やはり新しい技術ですとか新しい知識を身に付けていかなければいけないとなりますと,これは学部,あるいは,場合によっては,テクニカルな部分であれば,短期の授業の履修というようなことも考えられると思います。
 ですから,こういうことも含めて,リカレント教育は何なのか,どういうことが,どういうニーズがあるのかということをやはりオープンに一度しっかりと議論をして,共通の理解を進めていくことが必要ではないかと思っております。
【村田委員】  そういう意味では,ニーズは産業界からきており,実際,まだ具体的にそういうことが本当にマッチングできているのか。できていないと思うんですね。そこをやはりやっていかないといけないと思いますのでね。
【小林副代表幹事】  そうですね。産業界の方でも,リカレント教育,リカレント教育とは言っていますけれども,具体的にどういう教育が社員の今後の成長に必要なのかというところまでしっかり見ているわけではありませんので,この辺は,リカレント教育ということについて,日本の産官学一緒になって考えていく新しい課題であると考えております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,石田委員,お願いします。
【石田委員】  ありがとうございます。
 3ページ目の論点4の上の方に,社会ニーズを踏まえた教育プログラム,さらには,質の保証という観点があります。これは全くそのとおりだと思っております。
 ただ一方で,若干苦い思いがございます。といいますのは,御存じかと思いますけれども,20年ほど前に,技術者教育の観点で,JABEEというものがスタートしました。これは専門的な能力に加えて,人間力など様々な幅広な能力も含めた教育プログラムを求め,それを認証するシステムでございました。そして,これはアメリカのワシントン・アコード等とも相互認証をするような形で,国際的な質保証システムとなり,技術者教育の分野ではかなり苦労したところです。
 ところが,これはなかなか広まらなかった。なぜかというと,大学の方では非常にしんどい思いをしながら,産業界の方とも一緒になって作ったわけですけれども,結局,出口で産業界から評価されない,あるいは理解されていないということで,大学の方としてはしんどいだけだからやめようというようなことになって,欧米のように国際的な質保証システムとして広がっていきませんでした。
 このような苦い経験から,今後,この出口の質保証をしっかりやるという観点については,大学と産業界が十二分に意見を擦り合わせながらやる必要があるとは思うんですけれども,この辺についてどうお考えでしょうか。
【小林副代表幹事】  これにつきましては,産業界の責任も非常に大きいというふうに。特定のJABEEの件だけではなくて,学生の採用に当たりましては,これは産業界の責任,いまだに大きいものがあると考えております。
 これは抜本的な考え方として,やはり学生の採用,そして,まさにリカレント教育というようなものが進んでいくに当たって,出たり入ったりというようなことがもっとオープンにできると。単純に新卒一律一括ということではなくて,やはり何度も何度も学び直しができる,そして,その過程で一人一人の質というものを理解しながら,産業界で活かしていけるような人材の採用の仕方という,ここの根本的なところに関わってくると思いますので,そのあたりは,今回いろいろな議論が行われていますけれども,産業界としても,徐々に,一括採用だけではなくて,通年採用というような方向に向かってきておりますので,この点については,今後また更に深い議論をしていくべきことと考えております。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  短く,1つコメントだけ。今日は,ありがとうございました。
論点2の「大学経営のガバナンス強化について」のアンダーラインの部分にいろいろ必要なことが書かれていて,例えば,複数名の学外理事設置の義務化などとありますが,実際には,例えば,とても規模の小さなところも,大きなところも,みんな同じようにはいかないような気がする。それは,例えば,企業でもコーポレートガバナンスで外部取締役を入れるといっても,株式会社といっても様々の数ですから,それに全部同じメジャーを作るというのは非常に難しいのではないかなと。
 ここで若干義務化というようなことが書かれているので,例えば,大学全体で100人とか200人の大学もあれば,数万人の大学もあるということですから,これを一つ全部義務化しようというふうにすると,やはり制度的におかしくなるのではないかなと思うものですから,それをちょっと指摘だけさせていただきます。
【小林副代表幹事】  企業の方のコーポレートガバナンス・コードも,上場企業かそうでないかによって制度が違いますので,当然のことながら,我々も一律に学外理事設置の義務化ということを申しているわけではなくて,これは1つの例として申しているだけです。
 ただ,その根本にありますのは,やはり学内の目だけではなくて,学外の外の目で経営を見ていくというような視点を,何らかの形で入れていく必要があるのではないかと。ですから,学校の規模に応じていろいろなやり方はあると思いますけれども,その精神の部分は,中の議論に終始しないよう,外からどのように見えるのか,外からの考え方を取り入れるような経営であるということが,コーポレートガバナンスの我々の真意でもございますので,同じような考え方を高等教育機関においても踏襲するべきではないかというのが,ここの意見の本意でございます。
【永田部会長】  益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  小林経済同友会副代表幹事からは,経済界の改革の経験に基づいたご意見を頂いたと思います。御存じのとおり,日本企業はどんどん海外に出て,海外で勝負をしていかなければいけなくなった。もう随分前から大きく企業体質を変えないといけなかった。これは大企業に限らず,中堅中小企業もそうだったわけですね。企業の生き残り,存続の為には,時代に合わせ,更に先取りした改革をしなければいけなかったという経験があります。
 思い起こせば,去年の春,この部会が始まった頃,アカデミアの皆さんと民間企業側の隔たりは,かなりあったのではないかなと思います。しかし,部会だけでなく,この会議の内容が報道され話題になる事により,様々な場で意見交換が活発に行われました。その結果,随分お互いの理解が深まったのではないでしょうか。先日の経団連,そして先程の経済同友会の御意見もそうですが,今回の答申をベースに一緒に更なる改革のスタートラインに立って,もっとお互いに寄って行こうとの提案に受け止めました。
 ですから,細かな議論はこれからですが,今後,経済界はもっともっと御協力を頂けると理解したのですが,小林さんいかがでしょうか。
【小林副代表幹事】  まさに我々,グローバルな市場の中で競争していくに当たって,やはり人材,それから研究,そして再度何度も新しい,これだけすごいスピードで世の中が変わっていく中で,やはり社員といえども,何度も学び直しをしないと生きていけない,そして,企業も生き残っていけないという中で,やはりここは今までの溝をしっかり埋めて,そして,経済界と学が一緒になって日本の国,経済,そして,人を盛り立てていかなければいけないという。ましてや人口が減少していくわけですから,どうしても一人一人の生産性,そして質というのを上げていかなければいけない。これは企業の努力だけでできるものではなく,そして,その成果というのを学の世界だけで享受できるものではないので,ここのサイクルを何とかうまくスパイラルが回るような形にしていきたいというふうに,これまでもいろいろ経済界は申してきておりますけれども,今は本当にそれを強く感じてきております。
 ですから,今,益戸委員がおっしゃいましたように,経済界の方も一緒になってやりたいという気持ちが非常に強いということを御理解いただきたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,最後,日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】  ありがとうございます。
 私も,お互い寄っていこう路線で,1つコメントと質問をしたいと思います。
 論点4のところで,学修成果の可視化は非常に重要だという御指摘がありまして,それは大学側も本当にそのとおりだと思っています。これまでのような,いわゆる成績表というものだけでは,一人一人の学生が何を学んだかということを適切に評価していただくことはできませんし,本日何回も話題になっていますが,一括採用から通年採用に向かっていくというような中で,個人個人の能力であるとか,大学でどこまで伸びたかというようなことを適切に評価していただくことは非常に大事だと思いますので,これからの話だとは思いますけれども,可視化をどのようにしていくか,どのような評価,あるいは複数の評価の組合せの中で,どんなものがお互いにとって望ましいかというようなことについても,是非積極的に御一緒に議論してまいりたいと思うんですが,今の段階で,もっとこういう評価があったらいいというようなお考えがおありですか。
【小林副代表幹事】  1つは,最初のところで書かせていただいておりますけれども,これまで企業はどうしても大学の名前で採用してきているという傾向が非常に強かったんですけれども,では,実際に企業の中に入って大学の名前で仕事ができるかというと,必ずしもそういうわけではありません。ですから,1つは,卒業生のトラッキング,どこの学校で,どういう研究をして,どういうゼミにいた人たちが,今どのような社会環境の中で活躍しているのか,ベンチャーで活躍しているのか,大企業で活躍しているのか,経営で活躍しているのか,あるいは,研究で活躍しているのか,そういったことのデータが,データというのは一番結果を表しておりますので,やはり1つは,卒業生のトラッキングとそれの開示というのが,我々としては,非常に直近役に立つのではないかと思っております。
 それから,学生の評価につきましては,学校と企業が密に議論をしながら,どんな教育をしているのかということを我々としてももっとよく知っていくということがやはり重要かと思っております。
【永田部会長】  ここまでとさせていただきます。小林副代表幹事,どうもありがとうございました。
 益戸委員がおっしゃったとおりだと思います。産業界と教育界が本音で話し合える状況がつくれれば,きっと良い解決策が生まれるはずです。今後とも御協力をよろしくお願いいたします。
【小林副代表幹事】  ありがとうございました。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして,高専の団体ですけれども,国立高等専門学校機構,谷口理事長,並びに,全国公立高等専門学校協会,東会長にお越しいただいております。それぞれ5分程度の御発表を頂き,併せて15分程度の議論をさせていただこうと考えております。それでは,谷口理事長,東会長,よろしくお願い申し上げます。
【谷口理事長】  今御紹介にあずかりました国立高等専門学校機構,高専機構の理事長をしております谷口でございます。今日はこのような場で意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして,御礼を申し上げます。
 答申案を何度か読ませていただきました。基本構想,将来構想の内容,あるいは,その方向性が大変よくまとめられており,私どもの考え方とよく一致しているということで,このようにまとめていただきましたこと,非常に有り難く思っております。
 特に,今までの高等教育の実績と,これからに向かって,例えば,SDGsでありますとか,あるいは,Society5.0でありますとか,第4次産業革命でありますとか,人生100年,グローバル化,地方創生,いろんな今日の課題を十分に踏まえて,これからどういう人材を育てていかないといけないかと言うことが大切です。私は,人材の材の字は,いつも財産の財の字を書いて,決して材料ではないと,一人一人が大事な財産だという言い方をしますけど,そういう形でうまくまとめられているということに対して,まず敬意を表したいと思いますし,有り難いと思っております。
 私ども高等専門学校は,特にアウトプット,インプットに対してアウトプットだけではなくて,むしろアウトカムズということですが,具体的にそれでもって社会をどう変えるかということをしっかりと考えろという話をいつも学生さんともしますし,アウトカムズを重要視して人材育成をするというようにさせていただいています。学生さんには,いつも,あなたたちは社会をよくするためのお医者さんになるんだという,そういう気持ちを持ちなさいと伝えています。ソーシャルドクターという言葉を作りまして,それをかなり世界的にも広めまして,現在では,結構通じるようになりました。高専という言葉とソーシャルドクターという言葉は結構通じるようになりました。そういう考えに,この案はかなり合っているのではないかなと私は思っております。
 それから,初中教育から高等教育にうまく繋げていきながら,高等教育というのは,やはり社会とつないでいくと言う考え方,すなわち高等教育は,社会にこれから出ていく,あるいは,再出発をされる,そういう方のスキルアップでありますとか,意識改革でありますとか,そういうことにつなげていくというような位置付けに関しても,私どもは全く同感でございます。そのためにいろんな社会からの支援を得ないといけないというようなこともしっかり書かれている。社会にも御理解いただきながら,教育投資ということの重要性というのが大事だという話が書かれている。そういうところは,まず全く同感であるということでございます。
 そういう考えの上に立って,書かれているのですけれど,さらに少しこういうこともはっきりともう一度認識してくださいという点を,幾つかお話をさせていただきたいと思います。
 1つは,知の拠点というのは,当然高等教育の根拠というところはありますけれど,特に高専等の若い学生さんについては,生きる力といいますか,最近はちょっとメンタル的に弱いような学生さんも増えてきて,大学もそうだと思いますけど,メンタル的に弱いところがあるものですから,生き抜く力というか,少々のことではへこたれない,チャレンジ精神,これを高専では高専スピリットという形で教えていますけど,強い精神力が大事と感じております。それに加えて自己管理する力,自分のことをしっかりと分かって,自分の将来を自分で考えられるようにという,そういう自己管理力,こういうものも非常に大事かなと思っております。知の拠点プラス,やはり個人個人の能力,自己管理力ということが大事かなと思っております。そういう点についても,何かの形で触れられると有り難いかなと思っております。
 それから2つ目には,教育というのは効率的にやらないといけないということは確かにあるのですけれど,一方では,やはり習ったことを実際に社会で,あるいは,自分の将来に生かしていくためには,そういうことを醸成する場が要るということと,場合によっては,そのために時間がかかるということもあります。この場と時間ということもやはり考慮していただくと有り難いなと思っております。そのためには,やはり長い目で見ていただいて,支援というのは,特に社会からの許容力のある暖かい支援というのが非常に大事だろうと思っております。
 それから,3つ目には,評価について,高専の場合には,実務能力ということをかなり強調して力を付けさせますから,ただ単なる偏差値とか知識だけではなくて,実際に何かができるという,そういう力もしっかりと評価されるような仕組み,評価方法というのも考えていただければ有り難いなと思います。
 特に,知財のところは,高専はかなりしっかりやっています。知財の話,それから,やはり国際社会に出ていきますと,リーダーシップを発揮して,日本の教育,僕はかなりいいと思っていますけど,それをしっかりと発言して,主張していって,まとめ上げていく,そういう力も大事なのではないかなというのは日頃感じているところです。そういう知財の教育とか,あるいは,リーダーシップをとっていけるような,教育ということも少し書いていただければ大変有り難いと思っております。
 いろんな話になりましたけど,以上三点でございます。よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  続いて,東会長,お願いいたします。
【東会長】  全国公立高等専門学校協会の会長という立場ですが,私は大阪府立大学高専の校長をしております。大阪府立大学から,この4月から高専校長で,本当に超新米です。こうした場での勉強も含めて意見を述べさせていただくという趣旨で参っております。
 御存じのように,国立高専と違いまして,公立の高専というのは,大阪府と東京都と神戸市の3つしかございません。そういった意味では,今回の将来像に関しましては,公立高専は非常にウェルカムです。特段大きな課題とか,将来像に対してどうのこうのということはありません。逆に,我々,設置者等が地方の行政ということもありまして,地方創生ということに関して本質的に関わり合ってきたという,長い歴史の中で,今後更にどういう形で地方創生に絡みながら,如何に行政との関係を進めていくかということが非常に大きなポイントになっています。
 御存じのように,大学の方は,大阪府,大阪市,両大学(市立大学,府立大学)統合ということで,もう来年の4月から法人統合も決まっておりますし,大学統合もその先にあります。そういう状況の中で,私ども高専の方でも,どういう形で運営していくのか議論しております。
 そういった中で,今回私ども,ひとつ今後のことでお話を申し上げたいのが,財政の支援ということになります。地方行政はなかなか苦しい状況ですので,以前大学におりましたとき,GPというようなことで,公立大学にも財政支援等があったのですが,高専の方は,(谷口理事長が,横におられるので申し上げ難いのですが),どうも国立高専の方しか,と言ってもいいぐらいかと思うのですが,全く財政的な支援はないということです。そういった意味で,今回は地方創生を支えていくという公立高専のミッションにも少し目を向けていただけるのかなということで,期待をしているところです。
 協会の取りまとめの中で,国公立の枠組を超えた連携の検討ということで,「大学等連携推進法人(仮称)」に非常に興味は持っておりますが,この話が高専にも適用できるのかというところが,公立高専の皆さんの分かりにくい点だということで,少し聞いてきてくださいということでした。
 あともうひとつは,大学との連携等を含めて,高専の教育の高度化ということですが,高専単独では,なかなか資源に限りがあるということで,大学との連携を非常に各公立高専とも重要視して進めております。私どもも,都立も,設置者が各々同じで,法人も同じという事で,色々なことができるという利点を活かすことで,今後様々なことができるのでは,と考えております。その意味では,大学との連携を非常に強くする中で,本来,高専の存在意義のミッションと少し相反する部分が出てきていると感じています。私どもの方も,その意味では,現状で設置しております専攻科という,本科の5年の後に2年あるのですが,この必要性も考えながら,大学との連携との中で,専攻科を如何に発展させて,高等教育機関としての立場を進めていきたいと考えております。
 また,他の高専でも,大学との連携などの高専教育の高度化が今語られていますが,その背景というのがよく分からないので,今回聞いてきてくださいと言われています。

 以上でございます。
【永田部会長】  谷口理事長,東会長,どうもありがとうございました。
 それでは,委員の方から御質問,あるいは御意見あれば,お述べいただければと思います。麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  ありがとうございます。
 学校教育法上,高等専門学校は一条校で,様々な評価をされて,特に,今おっしゃった大学との連携については,十分果たされてきた役割はすばらしいと思っております。これから将来に向けては,高等専門学校の設置基準等が,ほぼ大学設置基準や短大設置基準に準拠しています。ただ,大学ではありません。そこで専攻科という話が出てくると思いますが,高等専門学校自体が,大学の機能を持った大学として,これから将来にわたって考えておられることがありましたら教えていただきたいですし,もう高専は高専という,そのままでその機能を強化していくというようにお考えになっておられるのか,それを伺いたいと思います。
【谷口理事長】  国立高専の場合,大学と一緒に連携はします。高専だけではできないこと,それから,大学だけではできないことを,高専と一緒にやればできるということについては,人材育成に関して,例えば,いわゆる共同教育課程というのもありますので,そういうものを使って発展させていきたい。
 ただ,大学と一緒になってしまうと,大学と何が違うのかとなりかねない。そういう話にならないように,高専は高専としての特徴を明確にしておきたい。僕は,外国へ行っても,KOSEN is KOSEN,高専は高専だという話で,高専のいいところ,強みや特徴がいろいろあるんですね。さっきも言いましたけど,専門力に関して実務的,実務的な力をしっかりと持っています。最近は,いろんな国際展開もできるようになって,実践的な専門力だけではなく,いわゆる一般教養でありますとか,語学でありますとか,それも実用的なということをかなり考えた内容の一般教育をかなりさせていただいています。
 ですから,大学と一緒にやったら,今までできなかったことができることについては,一緒にやらせていただきます。大学との連携は,全然拒否する話ではないですけれども,そもそも,専攻科が,私ども国立高専の場合には既にあり,そこには15%ぐらいの学生さんが行きます。あと25%ぐらいはいろいろな大学にお世話になって進学する子もいます。一方で,やはり高専の良さをしっかりと残すというか,しっかりと守るというか,そうでなかったら高専は要らない話に僕はなると思っているので,高専と大学とは違いますということを明確にした上で,連携をさせていただきたいと思います。
【永田部会長】  東会長,いかがですか。
【東会長】  全く同感でございます。そういった趣旨の方向は,本当に高専としての存在意義等を含めて,今,谷口理事長の仰ったとおりです。
 あとは,どうしたら国公私の違いを出せるかと,色々考えています。例えば,当大学では,高専を大学附属の工業高校にしようかという議論もあったのですが,ナンセンスという意見をいっぱいあちこちから頂きました。そういった意味で,やはり従来からの高専の社会貢献も含めて,高い評価を頂いております。逆に,2040年に高専としてあるべき姿は何だろうというようなことで,公立の3校も集まりまして,高専の将来像というようなことについてもかなり真摯な議論を進めさせて頂いている状況です。
 以上であります。
【永田部会長】  そのほかはいかがですか。
 今最後におっしゃったところをもう一度確認したいのですが,現在の高専は,育てた方々は社会で非常に高い評価を受けており,世界からも,我が国固有の高専システムが強く望まれていることは強く認識しています。
 しかし,2040年を見据えたときに,さらに伸ばすべきことと,変えなければいけないことあると思います。2040年という社会が,今とは随分職業構造が変わっているという観点から考えたときに,高専が将来果たすべき役割は極めて大きいと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。
【谷口理事長】  やはり将来に向かって,高専の役割も今までの延長上にはないと思っています。教育課程も,今,例えば,国立高専の場合には,3分の2は基本的なところというので,MCC,モデルコアカリキュラムといいますけど,3分の2については,どの高専を出てもここまではできると,それを保障する,いわゆる質保証する。ただし,残った3分の1は,それぞれの強みとか,それぞれの地域の特性とか,そういうものを十分に考慮した教育になるような形をとらせていただいています。
 それぞれの地域の地域創生は,高専が自分たちで担うという,そういう自信と責任を持つということでやらせていただいている。教育の3分の1は,この高専はこういう特徴,こういうところ,地域とこうつながっていく,そういう形のものにさせていただいて,ただし,3分の2については,教育の質保証ということをしっかりやらせていただくということです。また高専は,例えば,せっかく,15歳からの若い学生さんが来るんですから,情報セキュリティなど,もう大学に行っていたら遅いかもしれないというような分野の人材育成に関するところは,高専にとっては非常にアドバンテージです。そういう部門についてはしっかりとやらせていただく。
 それから,今までは工業・工業と工業分野を中心にやってきていましたけど,工業技術を使って,ほかの全く違った分野との連携も進めています。連携分野は農業でももちろんできますし,畜産であっても当然できます。そういうものを本当に実務レベルで,実際の社会に落とし込んでいくというのは得意としていますから,そういうところから新しいコトをつくっていこう,変えていこうというところに焦点を置いてやらせていただいています。
 社会との新しい連携の進め方については,大学ももちろんしっかりやっていただかないといけない。私も40年も大学にいましたから,大学はしっかりそれなりにやっていただかないといけないし,やっておられるんだけど,高専は高専としてのやり方がある。高専は実社会とつながって社会実装の観点からやらせていただきますというところはやはり大事にしたいと思っています。
【永田部会長】  東会長,どうぞ。
【東会長】  谷口理事長は,国立高専の立場で,全国的な視野の中での地域創生のお話をされたと思いますが,私ども公立高専は,その地域創生のために作られております。
 今,議論を進めるに当たり,当然,大阪府,大阪市の今後の動向の中での話ですが,現在,公立大学法人大阪ができるわけですが,その中で,今までの教育,研究,社会貢献に加えて,行政等のシンクタンク機能,さらには,地域の活性化ということで,インキュベーション機能が法人の新たなミッションになっています。
 高専がこうした法人のミッションをどの様に進めていくか,を検討する中で,他の2校も同じ方向かは分かりませんが,私どもの方は,一度高専の原点に戻るというようなことと,もうひとつ,ものづくりの視点から,産業技術全般的なIoTやAI辺りの教育を基盤とするインキュベーション活動へも対応できるような体制を考えています。今,どちらかと言うと,あれもこれもと,専攻科もそうですが,色々なことをやってきたのですが,今後私どもの高専は,これらを絞って,少しドラスティックな形で少し変貌する方向で話を進めております。
 具体的に言いますと,機械,電気を,もっとオリジナルな分野を中心に,多様化に対応できる人材をもう一度しっかりと,総合工学を進めてきた中でのひとつの反省点ということで,こうした高専の原点へもう一度戻るということを,このタイミングで進めております。
 以上です。
【谷口理事長】  もう1点,大切な観点として,ここにも書いていただいていますけど,教育の質保証とともに,国際展開があります。国際展開というのは,ただ共同研究の展開とか,そういうことではなくて,それぞれの国の発展に我々が貢献する。それは,ひいては日本から出ていっている企業の発展にもつながる。あるいは,高専そのものの国際化にもつながっていくことになります。そういうことを一体でやっています。今,アジアの国をはじめとして,中南米,あるいは,北ヨーロッパ,アフリカ,いろんなところから,高専のような教育でもって,それぞれの国を発展させたいという御希望が大変多くございます。
 幸いにも,私,昨年,タイの国会に呼ばれて,高専について国会で1時間半お話させていただきました。そうしたら,タイ国が高専というものを正しく理解していただいて,我々のスピードよりもずっと速いスピードでタイに高専を作るんだという話が動いています。
 高専を創るには相応の先生が必要ですよという話もさせていただいていますが,それぐらい,今,熱心にアジアの国は,高専のように,実務的で,かつ,将来まで見通す力を持った人材を育成したいと考えています。高専生は,クリエーターでもあるんですよという話もします。また,日本では,高専というのは高等教育ですよという話をします。ただ単なるトレーニングスクールではありませんという話もさせていただくので,高専教育に対して非常に興味を持っていただいて,高専を創りたいと言うことになっています。一所懸命に皆さん高専教育の導入を考えておられるんで,私どもも,それに貢献できるところはやらせていただこうというのを軸に据えて対応しておりますので,それも併せて申し上げておきます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 谷口理事長,東会長,貴重なお時間を頂きました。ありがとうございました。
 それでは,最後になりますが,国立大学協会から,山極会長をお招きしております。お忙しい中,ありがとうございます。山極会長,よろしくお願いいたします。
【山極会長】  おはようございます。貴部会において,答申の策定へ向けて精力的に審議されていることに対しまして,まずは深く敬意を表します。また,本日御意見を申し上げる機会を頂き,ありがとうございます。
 2040年に向けて,高等教育のグランドデザインを建てるということは,その名のとおり,将来を見据えた我が国の高等教育改革の全体構想を示す重要な提言となると認識しております。
 国立大学協会におきましても,本年1月に「高等教育における国立大学の将来像(最終まとめ)」を取りまとめ,我が国の高等教育の在り方を含め,国立大学に求められる使命を確認し,自らの将来像を提言して,その実現に向けた方策を示したところでございます。
 このたびの答申案の方向性は,そのかなりの部分において,当協会の将来像と軌を一にしており,当協会としても基本的に賛同いたします。
 そこで,まずは,本答申案に示されたグランドデザインの実現に向けた今後の国の施策の在り方について,当協会の基本的な考え方を意見書に沿って述べさせていただきます。
 まず国立大学の規模と役割についてですが,1ページの中ほどからです。
 答申案では,国に対し,「国立大学において,それぞれの大学の強み・特色や地域の事情等にも留意しつつ,どのような課程や分野で,どのような規模で役割を果たしていくのか,という点について一定の方向性の検討」に速やかに着手するように求めております。
 この点について,当協会の取りまとめた将来像においては,将来の国立大学の方向性の重要なポイントとして,1,全国的な高等教育機会の提供及び今後の地域・地方活性化の中核として期待される役割を踏まえること。
 2,高い水準の研究を推進し,大学院の充実を基盤とした高度の教育研究を国際的競争力を持って展開すること。
 3,産業界及び自治体との連携を強化し,地域との教育研究両面における本格的な協働による社会のイノベーションを先導すること。
 4,優れた日本型教育システムの輸出を含む国際貢献を強化すること。
 5,これらを支える大学運営・経営の効率化と基盤強化を図るために,「全国各都道府県に国立大学を置く」との原則を維持しつつ,各種大学間等の多様な経営的な連携・融合を進めること。この5つを挙げております。
 特に,「規模及び経営形態」につきましては,当協会の将来像では,国立大学全体の規模は,留学生,社会人,女子学生などを含め優れた資質・能力を有する多様な入学者の確保に努めつつ,少なくとも現状程度を維持し,特に大学院の規模は各大学の特性に応じて拡充を図るとともに,学部の規模につきましては縮小も検討する必要がございますが,進学率が低く国立大学の占める割合が高い地域にあっては,更に進学率が低下することのないように配慮する。
 全都道府県に少なくとも1つの国立大学を設置するという戦後の国立大学発足時の基本原則は,教育の機会均等や我が国全体の均衡ある発展に大きく貢献してきたものであり,この原則は堅持する。
 国立大学の1大学当たりの規模につきましては,スケールメリットを生かした資源の有効活用や教育研究の高度化・シナジー効果を生み出すために,規模を拡大して経営基盤を強化することを検討するとしております。
 これらは,国立大学のそもそもの設置の目的,これまで果たしてきた役割,国立大学を取り巻く国内外の社会変化の動向を踏まえて提言しているものでございまして,今後の国における施策の検討に当たっては十分留意していただくようお願いいたします。
 続きまして,大学の連携・統合等でございますが,答申案では,国に対し,「地域連携プラットフォーム(仮称)」,「大学等連携推進法人制度(仮称)」,国立大学の一法人複数大学制度等について,速やかに施策の立案に着手するよう求めております。
 当協会では,将来像に基づきつつ,中央教育審議会等の動向を踏まえて検討を進め,本年6月には「国立大学の機能強化を促進させる組織・ガバナンスとそれに資する法・制度改正等の在り方(論点整理)」を公表してございます。
 この論点整理におきましては,「限られた資源を有効活用して,全都道府県に少なくとも1つの国立大学(キャンパス)を維持しつつ,多様なニーズに応える教育研究機能を強化し,イノベーションの創出を促進するためには,国立大学間のみならず公私立大学との協働が必要であり,…各大学が最大限の機能強化を実現するためには,その特性や地域性等に応じて,多様な連携・統合を可能とすることが不可欠である」との基本的な考えの下に,具体的な提言を行っております。
 連携・統合の目的は各大学及び大学総体としての機能強化であり,その実現のためには主体性・多様性の尊重を基本とすべきことを述べているものであり,今後の国における施策の検討に当たっては十分に留意していただきたくお願いをいたします。
 続きまして,グランドデザイン実現に向けた社会全体を取り込んだ取組でございますが,答申案では,2040年頃の社会変化の方向として,SDGs,Society5.0と第4次産業革命,人生100年時代,グローバリゼーション,地方創生などのキーワードを用いて展望した上で,その中での高等教育のあるべき姿を描いておりますが,その実現のためには,政府全体はもちろん,産業界や地域社会を始め社会全体のビジョンの共有と連携協働が不可欠であると考えます。例えば,産学連携によるオープンイノベーションの推進,地域連携による地域の活性化,留学生の受入れと我が国における活躍の場の確保,社会人のリカレント教育の推進など,様々な面において,高等教育機関と社会の各方面との相互理解と連携協働を進めていく必要がございます。
 国におかれましては,こうした観点から,グランドデザイン実現に向けた社会全体を取り込んだ取組を推進するため,この答申案について広く各方面に分かりやすく情報発信を行い,各種の環境整備に努められることを期待しております。
 当協会の意見書の3ページ以降では,答申案の具体的な記述に関する意見を述べておりますが,高等教育を支える投資―コストの可視化とあらゆるセクターからの支援の拡充―についてのみ意見を述べさせていただきます。
 本項目の第1~3段落におきましては,「高等教育は国力の源であり,必要な公的な支援を確保」する必要性を述べつつ,「公的な支援については,社会全体の負担により行われるものであり,…効果を最大化する形で投入されるべき」と記述している点には賛同するものであり,当協会としても,社会の理解を得られるよう国立大学の教育,研究等の成果に関する情報の収集・分析を行い,それらを分かりやすく発信するよう一層努力をしていく所存でございます。国におきましても,諸外国の事例も参考にしつつ,我が国の高等教育全般に関する各種のデータを総合的に提供するシステムを構築されることを期待しております。
 一方,48ページ,上から3つ目,「また,高等教育機関の」で始まる段落におきましては,「大学も公的な支援だけに依存することなく,主体的な努力により,…民間からの投資も意欲的に確保し,財源を多様化することが重要である」と指摘しており,この点につきましても当協会としては十分に認識し,各大学においては様々な努力を行っているところでございます。国におきましては,知識集約型社会において知的資産が重要な資源であることを踏まえ,「知」を高度に集積する高等教育に投資を呼び込む新しい資金循環メカニズムを構築するための制度設備をお願いしたく存じます。例えば,国立大学法人におきましては,既に認められた株式の保有や土地等の貸付けに加え,不動産の利活用や寄附税制の更なる柔軟化,出資対象の拡大,長期借入れや債券発行の要件緩和などが考えられます。
 また,49ページの上から2つ目の段落におきましては,「学生支援という観点から」として,「大学等の授業料減免と給付型奨学金の拡充を行う方針が決定した。」と記述しておりますが,もちろん経済的に困難な学生に高等教育を受ける機会を保証する施策の拡充は歓迎するところでございますが,我が国の研究力を支える大学院生の支援の充実についても,引き続き検討し,実施に移していくべきと考えます。
 その他の答申案の具体的な記述に関する意見につきましては,説明は割愛させていただきますが,今後の審議に際して,是非とも御考慮いただければ幸いでございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  山極会長,ありがとうございました。大変有益な意見をお示しいただきました。
 それでは,委員の方々から御質問あるいは意見などございましたら,お受けいたします。有信委員,どうぞ。
【有信委員】  どうも説明ありがとうございました。
 基本的には,答申案と国立大学協会のお考えの方向性にずれはないと,こういう視点での御説明だったように思います。
 ただ,ちょっと気になるところがあって,この資料の1ページ目の1から5までポイントが列挙してありますけれども,その中に,優れた日本型教育システムの輸出という言葉があって,それから,その次に,2ページ目のポチの2つ目というか,1つ目というか,2段落目のところに,教育の機会均等や我が国全体の均衡ある発展に大きく貢献してきたので,この原則は堅持するというふうに認識が書いてあります。
 この点に関しては,日本の初等中等から高等教育が戦後の復興から高度成長に向けて非常に大きな役割を果たしたというのは明らかなんですが,これが,実は社会状況がその後大きく変わってきていて,しかも,ここで議論しているのは2040年と,またこれから大きく変わる中で,高等教育がどうあるべきかという議論を進めているので,単純に優れた我が国の教育システムと言われても,これ,何のことですかという感じになるわけですよね。
 それから,今まで大きく発展に寄与してきたから,1都道府県1大学という原則を堅持すべきであるという,こういう単純な言い方といいますか,こういう認識で本当にいいのでしょうかということで,ここの部分の認識は,私たちが今取りまとめている答申の基本的認識とは多分大きく違っていると思います。この点については,国大協としてのお考えはどうなっているかということなんですけど。
【山極会長】  ありがとうございます。
 国立大学の将来像の中に具体的には示してございますので,余り詳しく説明はいたしませんでしたけれども,まず,高等教育の教育輸出に関しましては,現在でもE-Just,エジプトですとか,ベトナム,ハノイ工科大学,日越大学ですとか,そういったところに多くの国立大学から研究者支援を行っていて,教育の現場を作っております。これは対インドネシア等々,特にアジアからの要請が非常に強くて,これから国立大学がそういった発展途上国の教育機会を拡充していく,そのために貢献するという役割が非常に期待されております。そのことについて,やはり日本の高等教育は国際的な地位をもっと高めていかなければならない。そのために国立大学は貢献すべきだというふうに考えております。
 それから,各都道府県に1つの国立大学という話ですけれども,これ,特に大都市では,私立大学にかなりの学生が所属しておりまして,国立大学を学部生の比率から見ると,貢献度が小さいように見えますけれども,これから18歳人口が縮小していく中でも,特にいろんな地域では,国立大学に入学する学生というのは非常に比率が高いわけですね。それは,地方には私立大学が余りない,国立大学のキャパシティが相対的に高いということもございます。ですから,地域の社会や産業の核として国立大学が非常に優秀な学生を育てていくというミッションは,これまで以上に高まっていくのではないか。しかも,今後,社会人教育や,これ,リカレント教育といいますけれども,あるいは,留学生を受け入れるといったキャパシティを増加させるという点につきましても,地域の個性,地域の文化というものを確実に国立大学が保持し,その情報を堅持し,それを将来の社会や産業の発展に生かしていくという点については,国立大学の役割はこれまで以上に高まっていく。ですから,国立大学が地域にあるということの重要性というのは,これからの情報社会の中で非常に重要なのではないかと我々は考えております。
【有信委員】  そういうふうに書かれたらどうですか。逆に,ここに書いてあることは全然違う書き方をされているので。
 それから,東南アジアに日本の高等教育システムがどんどん展開をしていってというのは高く評価されているというのは当然だと思いますし,さっき高専の話がありましたけれども,高専なんかも,そういう形でどんどん輸出していますけれども,これは言わば発展途上国に対して従来の成功を収めた教育システムがかなり有効であるということの証しであって,これからの日本の転換の中で,従来の教育システムが本当に有効であるかどうかについては,もう少し慎重な議論が必要なような気がするんですが。これは今回の御指摘ではなくて,国大協さんの認識のところがもう少しきちんと突っ込んだ認識でいってほしかったなという気で,そういう話をしているわけですけど。
 それと,後ろの方は,さっき山極会長が言われたような書き方をしてあれば,地域に国立大学が必要であるということはよく分かるんですけれども,かつて成功した要因と,これから先地域に必要であるということとは,多分同じではないと思いますので。
【山極会長】  ありがとうございます。
 全くそのとおりで,過去の栄光に乗ってはいけないと私も自覚しておりますので,そのように書き改めたいと思います。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そのほか,いかがでしょう。小林委員。
【小林委員】  ありがとうございました。
 5ページの最初の段落,大学の情報公開の関連なのですが,先ほど私立大学連盟の田中常務理事から,これは大学が主体的に行うべきことであるという,本質的にはそういう問題だということでお話があったのですが。ここで協会として努力していくというのは分かるのですけれど,その後に,国においても,諸外国の事例を参考にしつつ,そういうシステムを作るという提案をなされているのですが,これはどういうイメージでしょうか。大学ポートレートのようなもの以外のことをお考えでしょうか。
【山極会長】  ポートレート以外のことを考えています。と言いますのも,実は,現状では大学ポートレートはあまり機能していないと思います。例えば,ドイツやイギリスでは,国立大学協会は,非常に力を持っていて,そこで様々な大学の情報を集約しつつ,産業界に向けても,国に向けても相当なアピールをしています。そこには数値だけではなくて,大学の性格ですとか,あるいは,個性ですとか,そういうものも非常に強調するような戦略を持っています。
 そうしたことをベンチマークとしつつ,日本的なやり方をしていきたい。特に大学の取組内容,特に教育に関しては,情報としてきちんと社会に説明する義務があると思います。その点で,今,情報の集約を進めているところですけれども,これは数値だけで評価できるものではございません。いろいろ質的な問題も考慮しつつ,どのようにそれを社会や産業界や国に向けて発信すべきかということは慎重に議論しないと,非常に偏った方向に導かれてしまう可能性がありますので,そこはしっかり議論したい。情報の質というものを考えたいというふうに考えております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 先ほどの経済団体や私立大学連盟からも御指摘があったように,情報公表は重要だという認識をお持ちです。定性的な部分も含めたデータ化及び使い勝手の良いデータベースの構築や個々の大学の支援体制を含め,御努力をお願いしたいと思います。
 それでは,村田委員,日比谷委員でこのセッションを終わらせていただきます。
【村田委員】  ありがとうございます。
 1点,少し細かい点なんですが,ちょっと違和感があったので。1ページの一番下の白丸のところなんですね。ポツ1のところで,国立大学全体は,留学生,社会人,女子学生などという表現がありまして,本学,約50%女子学生がいるのですが,国立大学協会の大学では,かなり女子学生が低いので,これをという意味なのか,留学生,社会人と女子学生と,ちょっと違和感があるので,意図をお聞きしたかった。細かい質問で申し訳ございません。
【山極会長】  国立大学協会では,以前から男女共同参画委員会を作って,女子学生の増加に努めております。ただ,女子学生枠を設けたりするのはなかなか難しいものですから, 30%台にとどまっているのが実情です。
 それをどのように上げていくか。特に先日,東京医科大の事件もございましたけれども,むしろ女子学生を積極的に勧誘して,試験を受けてもらうということをしたいと思っています。各大学では,在学の女子学生を雇用して,自分の高校に派遣し,是非試験を受けてくださいというような宣伝をしているのが現状でございまして。いろんな学長さんとお会いして比較をしていますが,欧米の国立大学と比べると,まだ日本の国立大学では,女子学生率が非常に低いのが現状です。
 特に理工系が低いんですね。数学,工学分野でまだまだ低い。これは日本のこれからの国力を作っていく上では非常に大きな問題だと思っておりますので,女子学生がそういった方面にきちんと進んでいけることを目指して改革を進めたい。これは国立大学協会のかなり大きなテーマでもございます。
【永田部会長】  日比谷委員,どうぞ。
【日比谷副部会長】  ありがとうございます。
 実は,私も同じところに大変大きな引っかかりを感じまして。こちら,私どもが作っている将来構想の答申の方では,留学生や社会人というフレーズは何回も出てきているんですが,女子学生への言及というのは,全国を見たときに,非常に女子学生の進学率の低いところがまだあるというような現状の説明としては何回も出てきていますけれど,こういうふうに1つのカテゴリーにしていることはないので,これもお作りになったものではありますけれども,女子学生というのが1つのカテゴリーになっていることには,やはり違和感があるかなと思った次第でございます。
【山極会長】  それ自体が差別だったですね。
【日比谷副部会長】  先ほどの山極会長のお話で,現状のことはよく分かったんですけれど,やはり先ほどの御説明ですと,そもそも受ける人が少ないということですよね。
【山極会長】  そのとおりです。というのは,実は,私立大学は文系の学部が多いんですね。そこには女子学生の比率がかなり高い。特に芸術系は高いですね。国立大学は,実は理工系が非常に多いです。工学に特化した大学もございますしね。例えば,私がいる京都大学だと,学生の3分の1が工学部に属しています。ほかに農学部,理学部,医学部といったように,理系の学部がたくさんあるわけですから,もうかなりの部分が理系であると言ってもいい。
 これは大学だけの問題ではなくて,初等中等教育で,理系・文系に早くから分かれて,理系嫌いの女の子が増えているというのが問題ではあるんですけれども。海外で言いますと,そういった理工系を国立大学が担っているということも日本とそれほど変わりませんけれども,実は,理系に進む女子学生は多いんですね。ですから,これは日本の国立大学にとっては非常に特殊な問題だと思っております。
 とりわけ大学院は,理工系が多いものですから,理工系に入ってくる留学生が多いわけですね。これは日本の学生よりも女子学生は多いですけれども,やはり男子学生に偏る傾向がある。
 ですから,日本の国立大学というのは,とりわけ理工系の高度人材を育てるというミッションを多く持っているがゆえに,そこに女子学生を多く入れていくことは,理工系の改革につながると考えておる次第で,これは私立大学とは多分ミッションが違うだろうというふうに考えております。
【村田委員】  よく理解しました。ただ,留学生,それから,社会人と同列で多様性になると,何となく違和感を抱くので,別のカテゴリーで書いた方がいいのかなという感想でございます。
【山極会長】  分かりました。そのとおりだと思います。
【日比谷副部会長】  最後に,今おっしゃったことも大変よく分かるんですが,特に,やはりリードをしている国立大学の先生方,総長も含めてですが,先ほどおっしゃったとおり,大学に入る以前に,かなりもう方向付けが決まっているというのが現状だと思いますし,それは諸外国とのデータの比較でもそうだと思いますが,そういうところでも是非積極的に発信をしていただきたい。そろそろ大学を受けるという人だけでなくて,もっと子供の頃から,皆様で是非,理系の勉強というのはこんなにすばらしいとか,こんなに貢献できるということをもっともっと発信いただかないと,なかなか現状は変わらないと思います。
【山極会長】  ありがとうございます。
 これは産官学一体として取り組まなければならないものだと思います。特に産業界としては,例えば,数学の高い能力を持った人たちをもっと雇用していただいて,そこで女性が活躍できるような現場を作っていただくということが,アメリカなどに比べると非常に重要だと思いますし,経済でも活躍できる人たちは,ICT,情報能力,数学能力を持った人がこれからは必要となるわけですから,是非,そこに女子学生が活躍する現場を作りたいと思っております。ありがとうございました。
【永田部会長】  山極会長,お忙しい中,どうもありがとうございました。
 それでは,全てのヒアリングが終了しました。今後は,前回と今回のヒアリングで頂いた御意見,並びに,現在進行中のパブリックコメントの御意見を踏まえ,次回,11月6日に,最終答申の修正案をお出しして,最終的な御議論をお願いしたいと思っております。
 ついては,今後の詳細について,事務局から御説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料9を御覧ください。
 次回は大学分科会との合同会議ということで,11月6日の16時から18時までを予定しておりますので,よろしくお願いいたします。
 11月20日は予備日ということで予定しており,パブリックコメントや各関係団体の御意見を踏まえ改編した答申案を11月6日にお諮りいたしまして,それでまとまれば,6日を最終審議とさせていただきたいと考えております。
 その後, 11月26日の中教審総会で,答申を大臣に手交する運びで進めたいと考えております。よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  以上の予定になっております。
 本日は,御協力ありがとうございました。

 ―― 了 ――

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