将来構想部会(第9期~)(第12回) 議事録

1.日時

平成30年1月24日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,小杉礼子,小林雅之,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員
          

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長 他

5.議事録

(1)「今後の高等教育の将来像の提示に向けた論点整理」を踏まえた今後の審議事項及び大学の機能別分化の進捗状況について,資料1及び資料2に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  おはようございます。年が明けて少し時間がたってしまいましたが,明けましておめでとうございます。本年初めてとなります,第12回の将来構想部会を始めさせていただきます。お忙しい中,また,雪で足下の悪い中,お集まりいただきまして,ありがとうございます。
 さて,昨年末の部会では,これまでの議論をまとめた論点整理について議論いただき,とりまとめたところです。また同時に,その論点整理の中で,今後引き続き更に議論を深めていきたい内容について,また,余り御意見の出ていない,これからより検討を深めていかなければいけない事項についてもお示ししたところです。その上で,前回,次回までの宿題ということで私の方から各委員の先生方に一つお願いをしておりました。それは,論点整理の中で出てきた今後の検討課題を踏まえた上で,高等教育の将来像について,とりわけて連携・統合といった観点から率直な御意見を伺いたいというものでした。後ほど各委員には5分程度で御意見を賜ろうと考えております。
 また本日,皆様に御議論いただくために,これまでの大学の機能別分化の経過について御説明をして,その上で今後どうなっていくのかという観点からの御議論の材料にしていただきたいと考えております。
 最後に,東京23区における大学等の定員抑制について,事務局から現在の状況を御説明いただくということにしようと考えております。
 議事に先立ちまして,事務局の方に異動がございましたので,御紹介をお願いします。
【堀野高等教育政策室長】  大臣官房審議官(高等教育局担当)であった松尾が退任いたしまして,新たに信濃が就任をしております。
【信濃大臣官房審議官(高等教育局担当)】  信濃でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【永田部会長】  それでは,早速,議事を始めさせていただきます。まずは資料について説明をした後,各委員の先生方から御意見をそれぞれ賜ろうと思います。
 それでは,事務局から資料1及び資料2について御説明をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料1と資料2について御説明をさせていただきます。
 資料1は,年末にも一度御覧いただいたものを修正したものでございます。まず「引き続き検討を進める事項」といたしまして,一つ目に,高等教育機関の規模,中でも将来の進学率の予想,それだけではなく,更に大学設置の在り方も含めた全体としての方向性といったことも議論すべきではないかという御意見があったところでございます。それから二つ目に,国公私立の枠を超えた大学との連携・統合の方策等々。また三つ目に,地域の高等教育機関が産業界や地方公共団体とともに将来像の議論や具体的な交流等の方策について議論する「プラットフォーム」の具体的な仕組み,それも,どのような単位で作っていくのか,といったことについて再度具体的な設計を議論していく必要がある。また四つ目には,国公私の設置者別の役割分担の在り方,ということでございます。
 そして,「今後検討を始める事項」といたしましては,「機能別分化」の考え方の進捗状況として,今後の展開をどう考えるか。また,大学院教育の在り方,これについては前回,学部との役割分担も含めてという御意見があったところでございます。そして,大学等における研究との関係。また,新たに制度化される専門職大学・短期大学を含めた高等教育機関全体の相互の接続関係の在り方。そして,教育研究の高度化を促進するための基盤的経費,競争的資金の充実や配分の在り方,また,前回明記されていなかった学生への経済的支援の充実など教育費負担の在り方。こういった事項について検討事項として残っているということでございます。
 米印については,制度・教育改革ワーキンググループで引き続き議論されるものとして,学修の質保証,学修成果の可視化と情報公開,学位プログラム,認証評価制度,学位等の国際通用性,国際展開,それからリカレント教育,といった7点について引き続き議論が行われていくということでございます。
 続きまして,資料2を御覧いただきたいと思います。平成17年の将来像答申の一つの大きな提言が大学の機能別分化ということでございました。1ページ目に,平成17年の答申ですけれども,(2),大学の機能別分化として,高等教育機関のうち,大学は,全体として,これら七つの各種の機能を併有する。そして,「各々の大学は,自らの選択に基づき,これらの機能のすべてではなく一部分のみを保有するのが通例であり,複数の機能を併有する場合も比重の置き方は異なるし,時宜に応じて可変的でもある。その比重の置き方がすなわち各大学の個性・特色の表れとなる。各大学は,固定的な『種別化』ではなく,保有する幾つかの機能の間の比重の置き方の違い(=大学の選択に基づく個性・特色の表れ)に基づいて,緩やかに機能別に分化していくものと考えられる」といった将来像が描かれたわけでございます。
 2ページ以降は,その後の進捗状況ですけれども,まず国立大学については,大きく言えば三つございます。一つ目が平成25年から26年にかけて行われたミッションの再定義ということで,各大学と文部科学省の意見交換を基に,各大学の分野ごとの強み・特色・社会的役割を整理し,公表したというものです。そして二つ目に,「三つの重点支援の枠組み」ということで,国が提示した三つの枠組みのうち,大学自らが一つの選択をするというものであり,現在,国立大学は三つに分かれているわけでございます。詳しくは後ほど,後ろのページで御説明いたします。最後,三つ目に,指定国立大学法人制度というものが始まったと,こういう動きがございました。
 次のページから参考資料がありますが,この最初の25年から26年頃に行われたミッションの再定義につきまして,3ページには人文・社会,学際・特定分野,4ページには教員養成,5ページには理学,6ページには工学,7ページには農学等々と,分野別に各大学が示した機能強化の例というものを文部科学省において取りまとめたものでございます。このようなミッションの再定義が行われたということでございます。
 続きまして,12ページの参考2を御覧いただきますと,国立大学法人運営費交付金改革による国立大学改革の促進ということで,「三つの重点支援の枠組み」とございます。一つ目が,地域のニーズに応える人材育成・研究を推進で55大学。それから二つ目が,分野ごとの優れた教育研究拠点やネットワークの形成を推進で15大学。三つ目が世界トップ大学と伍(ご)して卓越した教育研究を推進で16大学ございます。こういったことに基づき,具体的なビジョン,戦略,KPIを大学が定めまして,その評価結果に係る外部有識者からの御意見を踏まえて,運営費交付金予算の重点支援に反映しているということでございます。
 次の13ページでは,指定国立大学法人制度ということで,教育研究水準の著しい向上とイノベーション創出のために,世界最高水準の教育活動の展開が相当程度見込まれる国立大学法人を指定国立大学法人として指定する制度を設けております。現在,3法人が指定されており,さらに,右下の4法人については条件が整った段階で再審査することとされているところでございます。
 続きまして,14ページからは私立大学でございますけれども,その一つ目に書いておりますのは,私学助成の特別補助を通じて,各大学の機能強化の取組を促進してきたということ。二つ目に,その中でも機能別分化の強化を図るため,平成25年度から「私立大学等改革総合支援事業」を創設し,各大学の特色化・機能強化に向けた取組を支援しているということで,現在,タイプ1から5までございます。そして三つ目,その他については,国公私を踏まえたCOC等やスーパーグローバル大学等の取組があるということで,その具体的な内容について,次のページ以降お示ししております。
 まず,15ページには私立大学等の改革の取組として,下の部分で特別補助によって支援をしてきたという部分について書いてございます。次に,16ページの私立大学等改革総合支援事業ですが,タイプ5の将来構想部会でも議論が行われている複数大学間や自治体・産業界との連携を図るためのプラットフォーム形成ですとか,タイプ2の産業界との連携,タイプ3の他大学等との広域・分野連携,タイプ4のグローバル化,タイプ1の教育の質的転換といったものについて補助を行っているところでございます。
 次のページは,これらについて実際に参加している大学の数をお示ししております。
 18ページからは国公私を通じた補助金ということで,地域貢献,地方創生という機能強化につきましてはCOCプラスという事業で,19,20ページに一覧となっている国公私立大学が参加をしているところでございます。
 22ページは,スーパーグローバル大学創成支援事業ということで,現在,23ページに記載されている大学が採択され,活動しているという状況でございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,最初に少し私から申し上げさせていただきたいと思います。
 資料1に「引き続き検討を進める事項」,「今後検討を始める事項」と大きく二つに分けられていますけれども,これは相互に極めて関連している内容だと思います。例えば高等教育機関の規模という問題を考えたときに,18歳人口が減るからこれにあわせて減らせばいい,というだけの議論ではいけません。この国の将来像を考えたときに,例えば社会人のリカレント教育あるいはインターナショナルスチューデントの増加等も含めて考えなければいけませんし,特に地域においては,高等教育機関の規模を一体どのように設定していけばいいのかということは,非常に重要な問題だと思います。それから,今,機能別分化ということで資料の説明がありましたけれども,そのような中で,例えば今まで議論されていない大学院教育について,学部との役割分担や学部との接続という観点から考えたときに,どのような在り方が今後求められていくのかということもあります。また,高等教育の規模や,連携・統合のことを考えたときに,新たに制度化される専門職大学や専門職短期大学あるいは高等専門学校の問題も一緒に含めて,どのように考えたらいいのかということも大変重要な問題だと思います。
 この論点整理も参考にされながら,この国の全体のフィロソフィーはもちろんあるわけですけれども,その連携・統合の方策を中心に御意見を頂きたいと考えています。その際,当然ながら,基本的には我が国の教育研究力の充実・向上を目指してということが大前提となります。資源のない我が国が科学技術立国として発展していくための人材育成と研究力強化が大変重要なポイントであり,それに資する連携・統合でなければ全く意味がないということになります。また,地域というもう一つの観点がございます。それは,現在,ICT等の活用が進む中で,一極集中という古いモデルではなくて,各地にいろいろな産業や文化の塊ができ上がっていくということは必然であるという考え方に立ったときに,各地域や地方の中核となるべきものとして非常に重要な役割を果たすのが大学であろうということであります。そのような我が国の立場あるいは地方の立場を含めて,教育研究の向上・充実ということを主眼に考えなければいけません。
 一方,物理的にどうしても避けられないのは,先ほど述べました18歳人口の減少です。いよいよこの2018年から再び18歳人口が減少期に入りましたけれども,これを機にしっかりと考えていかなければいけません。
 それから,高等教育の予算をもっと増やして欲しいというのは当然のことでありますけれども,我が国の財政状況を考えたときに,それは青天井で増えるものでもないわけですから,効率よくお金を使えるような仕組みにしていかなければいけません。非常に難しい問題であって,幾つもの問題を解決する回答が必要です。先ほど平成17年の将来像答申における提言の話がありました。現在,大学はこの七つの機能を持って特色を出しているけれども,それぞれの大学においてこの七つの機能を均等に持っているわけではなくて,強いところ,弱いところ,それぞれを自覚しながらやっていただきたいと提言されていました。これと同様に,今回の提言も,今後10年あるいは20年の指針となるわけですから,我々としては,その辺に留意して考えていかなければいけないであろうというわけです。
 本日,ミッションの再定義について資料2でお示ししましたが,これはなかなかよくできておりまして,各大学側の決意がよく見えます。例えば8ページを御覧ください。医学系のミッションの再定義についてまとめたものですが,その左の一番下の琉球(りゅうきゅう)大学では,島しょ循環型の医師派遣をやるのだ,それから沖縄の地域特性を生かした健康長寿研究をやるのだと,こう明確に書いているわけであります。そのほかにも,一つ上の農学であれば,山梨大学はワイン科学をやるのだと,というように書いてあるわけです。それぞれ,このミッションの再定義の文言による発信力が今のところ余りないように思えますけれども,それぞれの大学はそれぞれの特性に鑑みて教育や研究の内容を明確に表してきているということであります。このようなことも前提にしながら,それぞれ自覚をしながら改革を前に進めていこうとしているところだということでございます。
 余分なことを申し上げた部分もあるかもしれません。言いにくいこともあるかもしれませんが,なるべく率直に御意見をお伺いしたいと思います。
 それでは,益戸委員から順番に御発表いただきたいと思います。益戸委員,よろしくお願いいたします。
【益戸委員】  宿題の発表は先にした方が楽だというのは過去の経験に基づいております。よろしくお願いいたします。
 私は肥後銀行の社外取締役をお引き受けしていますが,1月の肥後銀行取締役会で決議された教育子会社について,皆様の御参考にと思い,まず御説明させていただきます。現在でも銀行内で研修はあります。また,学び直し的な制度があり,選抜された者が熊本大学やシステム会社などの外部講師の方々から統計学,IT,英語など最新の知識・情報を得て勉強しています。しかし,研修を受ける人数や専門性,地方経済発展に必要な知識,マネージメント力など行内人事部での研修では足りない状況です。そこで,専門の教育会社でやろうということになりました。さらに,この子会社を発展させ,地元の中小企業の皆様のためにも教育・研修のお手伝いをしよう,という理由で教育子会社について取締役会で決まりました。
 議論の過程では,地方銀行の教育子会社では,世の中の最先端スピードにはついていけないので,大学などに任せるべきとの意見もありました。しかし,日本の最先端を走る大手グローバル企業と地方経済を担う企業では必要とされる知識が違う。長い間,地元の牽引役であった経験で,そこはよく理解しています。また,最終的に地元経済を引き上げるためには,肥後銀行だけがどんどんレベルアップしても,地域で浮いてしまうだけで,地元経済を引っ張ることにはなりません。自らの教育ノウハウを持って,地元中小企業の皆さんのために役に立っていくという選択をいたしました。講師は熊本大学,九州大学に限らず,首都圏のビジネススクールであったり,IT関係であれば直接コンピューターメーカーに頼んだりと様々なところに依頼します。総じて,この手の教育子会社というのは赤字になりがちですが,地元経済全体を引っ張り上げることは,銀行グループ全体で考えれば収益向上に資するということで決断をいたしました。
 ちなみに,熊本県内に本社を置く上場企業は6社です。株式会社数は約1万9,000社。それ以外にもたくさんの中小企業があります。筑波大学のある茨城県は,上場企業は14社。株式会社数は約3万1,000社,全国で一番上場企業数が少ない県は島根県で3社。株式会社数は約4,700社。九州で少ない県は,長崎県の上場企業3社。株式会社数が約1万社です。地域と一言にいっても経済キャラクターが非常に違うことを認識する必要があります。
 次に,先ほどのミッションの再定義でも触れられていましたが,国から大学への資金の流れ方についてです。この機能別分化進捗状況の最後の方のページに全国の様子が書いてありますが,本当に機能しているのかと心配です。それは,国立大学法人運営費交付金や私学助成金という出どころの違う資金が出ているからです。分野によっては,資金の流れを一本化しないと成果に結び付かないのではないか。地域のプラットフォームや産学連携の仕組み,それに基づく研究は,同じ資金が一本化されていないとやりにくいのではないか。そして,明確な責任を持ったリーダーシップは発揮しにくいのではないかと感じます。
 論点整理の中で,「地域連携などのプラットフォームについては構築していく必要がある」とありますが,そのためには,きちんとした別法人が必要で,資金の流れを一本化すべきだと思います。リーダーシップあるいは責任は,どこで持つのかについてですが,国立大学がふさわしいと思います。かつて国立大学は,地域の教育の機会均等のために,最低でも各都道府県に一つ設置されました。現在も,法人化されたとはいえ,国と一体感を持って進んでいる教育機関だと思います。そうだとしたら,国立大学は,明快な説明責任と結果責任を負ったリーダーとなるべきではないかと考えます。もちろん,国立大学以外でも,その地域において,自分たちもできるという私立大学,公立大学,高等専門学校などがあれば,そういう皆様は手を挙げていただいて共同責任を負っていただく,共同代表として連携するべきと思います。
 地域連携の範囲については,先ほど上場数や株式会社数をお話ししましたが,地域で随分違いがあります。従って,県別の場合や広域で行われるところもある。かつ,リーダーの手腕やそれによって資金の額も当然変わってくるということです。
 また,そのプロセスでは,まずは話し合わなければいけないのは教育機関と企業です。企業も教育研究も常に新しいものを追っ掛けます。しかし,総じて行政機関というのは前例がないことには大変慎重ではありませんか。先にリードする企業と教育機関をサポートする仕組み作りを行政機関が責任を持つ。地方行政機関の長(おさ)である知事とか市長は政治家です。ですから,当然,主義・主張も,その手腕レベルも大きく違うわけですから,それによって地域格差が生じるということだってありますし,トップが交代することによって180度方針が変わることもあります。普遍的な安定したリーダーシップと仕組み作りが重要だと思います。
 最後にもう一つ,現在の国立大学,私立大学,高等専門学校あるいは専門学校というくくりの境界やグルーピングについてです。設置主体別ではなく,その存在目的別に機能的に分かれたグルーピングも今後は検討すべきなのではないか。その中で切磋琢磨(せっさたくま)していく。もはや自分たちの業界を守るためにあるグルーピングというのは時代遅れです。これにも踏み込む必要があるのではないかと思います。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。先ほど責任ある法人という言葉が出てきましたけれども,連携する際も同様で,各々が資金を持ち寄るかたちの連携では十分な成果はあげられない,ということもあります。
 それでは,福田委員,どうぞお願いいたします。
【福田委員】  まず,「引き続き検討を進める事項」の「高等教育機関の規模」で米印がありまして,「大学設置の在り方も含めた全体としての方向性」とございます。その中で,専門職大学と従来の大学の中身が実際にはどう違うのかということがあります。大きく違うところもありますけれども,もう既に職業教育に特化している大学も多々あると思っています。そしてそういった大学では産業界との連携体制を構築・整備されているところもありますし,最新の知識や技術等の研究,そして教育を行っているところもあります。また,外部の実務家を教員として招聘(しょうへい)していらっしゃいます。さらには,昨今の人生100年時代構想会議でも声高らかに言われているような社会人の学び直し,リカレント教育の推進というような背景の中で,現行の大学設置基準が教育研究の質を保証するものと,一方で,質保証という観点では根拠がはっきり見えない定量的な基準,具体的には校地・校舎面積等が挙げられるかと思います。やはり社会人の学び直しや留学生の問題ということを考えたときに,適切な立地や施設の確保といったものを前提とした中での設置基準というものを,できるだけ早急に見直すための議論をしていただければと考えております。
 そして,同じく「引き続き検討を進める事項」にございますが,私立大学においては学部・学科単位での設置者の変更手続の整備とございます。このことについては,国公立であれば割と簡単な話かもしれませんが,学校法人が全て別々の中で大変難しい話ではあり,先ほどの設置基準の変更以上に急いでいただきたいと思います。後ろ向きの話かもしれませんが,年末の新聞の中でも,この二,三年でもたなくなる大学が20ぐらいあるといった話が出てきております。このような数字は,当然日本私立学校振興・共済事業団や,文部科学省の方でも私学経営支援企画室をはじめとして情報共有されていることと思いますけれども,やはり大学が破綻してしまってから方策を立てていては,様々なところに波及もしてまいりますので,そのような意味も含めて是非速やかに進めていただきたいと考えております。その上で5年,10年の中での破綻はやむを得ないと思っております。しかし,ソフトランディングができるような形は,以前から御検討されているとは思いますけれども,この点は是非お願いしたいと思います。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 次に,小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  ありがとうございます。私も大学の外の人間として感じていることをお話しさせていただきたいと思います。
 私は,大学の教育研究能力を高めることも大事ですが,それを社会に還元することが十分ではない,持てる力を十分発揮していないのが今の大学だと思っています。それが端的に分かるのは,やはり社会人に対する教育機会をどれだけ提供しているかということなんですが,こういう話をすると,日本の大学が18歳中心になってしまったのは,一方で日本の企業社会のありようがあると言われます。いわゆる日本型雇用というものですね。新卒で採用して,企業内で人材育成をするから外には求めていない。こういう企業の在り方との関係の中で今の大学が創られてきたということは確かなのですが,では,この先20年,30年先を考えたときに,やはり,企業社会の在り方が今後どうなるのか,ということを考えないで大学の将来は語れないだろうと思うのです。
 現在,日本型雇用の今後については様々な議論があるんですが,私どもでもいろいろ調査して,一つ,いわゆる世論調査のようなことをすると,日本型雇用の根幹と言われる長期雇用とか年功賃金とかいうものへの支持は年々上がっているのです。そういう意味ではこの先もその傾向が続くのではないかということはあるのですが,一方で,現実をデータで調べていくと,正に日本型雇用の中心というのは大企業において典型的なものなんですが,その中で,例えば賃金カーブを見てみますと,間違いなく年々傾きは緩やかになっています。つまり,勤続によるメリットというものを個人が感じにくくなっている,そういう変化があります。
 あるいは,教育訓練について,大企業はずっと提供はし続けているのですが,その提供の仕方は変わってきています。一つのポイントは選別的になっていることです。早期に一定の経営層に行く人たちをなるべく早く選別するような方向,あるいはそれぞれの特性に応じた能力開発の在り方というものを全体にボトムアップで上げるというよりは,選別的に,選択的に行う,そのような変化が見られます。
 それからもう一つ,いわゆる非正規雇用の問題です。この4月から,非正規雇用から正規雇用への転換を促進する法的な裏付けもできて,正社員のような長期雇用の方の中にも職務限定型の長期雇用の方というのが間違いなく増えていく中で,期限のない雇用の中にも様々な種類の方が出てきます。そのような変化がこれから先の社会,その延長上で起こってくると思います。
 そのような変化を考えたときに,長期雇用に価値を置くという意識は変わらないとしても,現実的には,企業に頼ったままではキャリアが築けない人たちが間違いなく増えてくる中で,やはりキャリアチェンジとして大学を使う,あるいはキャリアアップの機会として短い期間で学ぶことができるプログラムを使う,こういう需要というのは増えてきて,これに対して大学が持てる研究教育力をどう提供できるのかということは,これから先,求められてくることだと思います。そうすると,これまでもありましたように,プラットフォームを作っていくような方向性は間違いなく必要だと思いますし,それから,小さな単位で教育を提供できるようにすることも必要だと思います。あわせて,時間ベースで単位を出すというのはどうなのかと思っています。職業人というのはそれぞれ経験が違いますから,必要な部分というのは18歳で入学する学生と違ってかなりポイント化されるんですよね。それができるような提供の在り方,要するに,時間ではなくて成果による単位の出し方というものも考えなければいけません。今,日本版MOOCがいろいろやられていて,私も幾つか視聴してみたんですが,やはり見方として2倍速や3倍速で簡潔に見るところもあるし,ところどころ繰り返し見たりすることもあります。社会人の学び方というのはそういうものだと思うのです。それに対応するような形で大学も単位を出すといった方向性も必要なので,社会人の需要に応じた形で,内容も単位の出し方についても工夫していく必要があるのではないでしょうか。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは次に,安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。私,今回の宿題について,意見を3点申し上げたいと思います。
 まずは,地方の高等教育機関としての立場からですけれども,今後の18歳人口の減少というのは御案内のとおり地方ほど顕著です。将来の進学率を少し高く見積もったとしても,地方の高等教育の規模の縮小は避けられません。単純な競争原理に基づくと,地方小規模私立大学・短期大学が最初に淘汰(とうた)される高等教育機関であると思います。現在も大学等への進学率には大きな地域間格差がありますが,地元から進学できるなど,地方の人々がアクセスしやすい高等教育機関が減少してまいりますと,高等教育の機会の格差がますます拡大し,地方の若者は都市部へ流出していくことが予測されます。また,若者の流出だけではなく,地方の産業振興,地域コミュニティの担い手である成人層の学び直し等について,地方の大学がこれまで果たしてきた役割が低下していくことで,地方の働く場や生活する場としての魅力の低減につながることは大変大きな問題であるといつも思っています。したがって,地方の将来には質の高い高等教育機関の存在が引き続き不可欠だと思います。
 しかし,短期大学を含めて地方の小規模の高等教育機関の多くは単独での存続がだんだん難しくなります。そこで,国や文部科学省による大学間の連携・統合の方策とその展開が提起されているわけです。これは本部会の検討課題になっていると認識をしておりますが,大学等の連携・統合については,国公私立の枠を超えて行われる場合においても,国公私同じ設置者間においても,ともにその促進には非常に大きな課題があると感じております。特に連携の先に統合があるというイメージは,特に私立大学の連携へのインセンティブを著しく低下させるというのが現状ではないかと感じております。地域の高等教育の機能強化と魅力のアップのために大学が力を合わせるという,大学間連携の本旨をもっと強調する必要がまずはある,といつも思っております。
 今回,検討が求められているプラットフォームは,地方の高等教育機関が協働で地域のニーズに応えるために,地域の産業界・自治体との本格的な議論をする場です。これまでは確かに,地方では高等教育機関と産業界,自治体,そしてそれを構成する人々との交流は,多様な分野・レベルを網羅して,系統的に,組織的に,計画的になされていたとは到底言えないと思います。今後,各地で形成されるプラットフォームが高等教育機関と地域のステークホルダーを結ぶワンストップの基地となるために,別法人設立等を目指したその運営に関しての指針と必要な支援を検討することが不可欠であると思います。私は地方の小さな短期大学の学長でありますが,短期大学にとっても,プラットフォームは地域の皆様に学びやすい短期高等教育の役割を認識していただき,地域のニーズを掘り起こすための装置になると考えております。地域の人々のために,必要に応じていつでも学べる生涯学習機関を地域の大学等が協力して創っていくことは,地域人材の能力開発,キャリアチェンジ,キャリアアップにつながることと信じています。プラットフォーム事業の中で地域の短期大学がコミュニティカレッジ機能の強化を図ることを私は期待しているところです。
 二つ目に,今般の専門職大学・専門職短期大学の成立に伴って,高等教育全体の接続を考える際に,いわゆる高等教育の複線化の中で設置目的の異なる学位授与機関の間の接続のみならず,非学位授与機関と学位授与機関の接続についても,検討や整理が必要ではないかと思います。短期大学と専門職短期大学で授与する短期大学士は学位ですが,高等専門学校で授与するのは準学士という称号,また,専門学校は専門士,高等専門士という称号を出すという,国内的にも国際的にも非常に複雑で分かりにくい構造が温存されたままになっています。高等教育の質が担保された2年また3年の高等専門学校・短期大学という教育機関では統一した学位を授与することが必要であり,その準学士という称号を短期の高等教育機関の学位とした上で,高等教育全体相互の接続を考えていただければと考えます。
 最後に,高等教育の質に関して,今後は,どのような人にどのような高等教育が必要になるかという議論がますます重要になると思います。ユニバーサル化・大衆化が進めば,高等教育に対するニーズは一律ではなくなります。そのときに,先ほど論議された大学の機能分化の強化が求められると思います。その中では,高等教育としての学修成果について政府や納税者が納得できる説明の必要が高まりますし,高等教育機関は学修成果の可視化を更に進めることで高等教育の振興に必要な資金を獲得するということをしなければならないのではないかと思います。
 同時に,高等教育の大衆化が進めば,高等教育を受けないことの不利はますます大きくなりますので,経済的理由などで高等教育を受けることができない状況を極力減らさなければならないと思います。学生への経済的支援の拡充を,四年制大学よりも修学に困難な家計状況を抱えている学生の多い地方の短期大学の関係者としては切に望んでおります。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。安部委員も言いにくいことをおっしゃっていただきました。地方での現状から近未来予想まで今お話しいただきまして,その中で連携を強化したときに,人・物・金が統一的にある理念の中で動かせるようになれば,それは一つのやり方であるというふうに受け取れる御発言だったと思います。
 それでは次に,村田委員,よろしくお願いいたします。
【村田委員】  それでは,私は,論点整理の「引き続き検討を進める事項」と「今後検討を始める事項」の順番にお話をさせていただきます。
 まず「引き続き検討を進める事項」の,高等教育機関の規模に関して,当然これは今後の大学進学率がどうなるかということが大前提になりますが,私個人的には少なくとも60%以上にはなるだろうと考えております。その理由としましては,一つ目が専門職大学の新設です。これは恐らく専門学校からの転換がありますので,四年制大学の進学率は間違いなく上がってきます。それから,二つ目は奨学金です。この4月からの奨学金制度を含めましても,親の所得が300万未満の世帯の進学率は28%ぐらいである一方で,親の所得が1,000万以上の世帯の進学率は62.5%以上ですので,ここに奨学金が投入されることによって,当然,四年制大学の進学率は上がってくることが考えられます。
 また,経済学的に考えましても,前提として生徒に能力的な違いがあると考えたとしても,人口が減少するということは,それに伴い大学進学率が上がるということを理論モデルで簡単に考えることができます。それでは,どこまで四年制大学の進学率が上がるのかという推計を前提にして考えないといけないのだろうと思います。もちろん,高等教育全体の進学率は今80%ぐらいですが,これが90%まで届くのかどうかということはなかなか難しい問題かと思いますが,その内訳はどうなのかということを考えてから,少し慎重に考える必要があるのではないかと思います。
 さらに,その場合に,推計を都道府県別で行うのかどうかに関しましては,私は,関西,中国といったようなブロック別で考えるべきではないか,都道府県別というのはなかなか難しいのではないかと考えてございます。
 また,先ほどから話題になっております大学等の連携・統合につきましては,むしろ連携ではなくて統合を進めていかざるを得ないと思っています。例えば,私は今,大学コンソーシアムひょうご神戸の副理事長をしております。ここには国公私立,様々な大学が入っていますけれども,教育プログラムは一緒にやっていくというような,一番重要なところは実はうまくいっておらず,残念ながら学生が参加できていません。これは日本全国のどのコンソーシアムにおいても,この一番大事なところがうまくいっていないのです。それは,質の違いがあるということを前提に考えなければならないところを,質の違いがないかのようにして,一緒にやっていきましょうとなってしまっているからです。永田部会長が言いにくいことを言ってもいいと言っているので,あえて言っていますが,そういう意味では,連携はうまくいきません。統合をどう考えていくかということを考えざるを得ないと思っております。
 それから,大学の規模との関係ですけれども,これまでは国公私立という設置者別で主に議論がされてきたかと思いますが,むしろブロック別に考えて,特に人口密度についてどう考えていくかということを含めて考えていかざるを得ないのではないかと思います。と申しますのは,これも何回か申し上げましたけれども,教育というのは,これは集積のメリットが働く産業だと思います。例えば,首都圏や都市圏に関しましては,成人の教育が非常にうまくいっている。それは,お互いの競争,お互いの学び合いがうまくいっている結果,教育のメリットが出てくるのだという研究があります。そのようなことを考えた場合に,人口密度をどう考えていくかということが重要だと思います。
 その意味では,何回も申し上げますが,これからは設置者別の役割分担ではなくて,むしろ,設置者を超えたどのような大学間の連携あるいは役割分担をしていくかということが重要だと思います。例えば一つの例といたしまして,旧帝国大学に関しましては,研究を中心にして,学部の学生を半減してもらう一方で,むしろ研究に重点を置いていく。例えば運営費交付金のうち,どれだけの割合が研究に向かっているのか,どれだけの割合が教育に向かっているのかということはなかなかはっきり見えてきません。そのあたりの研究と教育の区分をきちんとした上で,その費用対効果を分析した上で研究にシフトしていくというようなことが考えられるのではないかと思います。
 あるいはもう一つの重要な観点といたしましては,ある地方にある公立大学とその県にある国立大学の役割は,ほとんど同じだと思うのですね。同じ役割を課せられているのです。これは,本当にその二つがあっていいのかという問題があります。そのようなことを考えた場合に,設置者別ではなくて,やはりブロックやエリアごとにどのような機能を考えていくのかということを抜本的に考えていかざるを得ないのではないかと思ってございます。
 それから,二つ目の「今後検討を始める事項」に関しましては,まず,機能別分化に関しては,ブロックを考えて,設置者を超えた形でやっていくべきだということでございます。
 また,大学院教育についてですが,例えば大学と研究の関係は非常に重要なポイントだと思っております。よく研究を前提とした教育と言われておりますが,むしろそのような古い言い方ではなくて,アクティブ・ラーニング一つとっても,アクティブ・ラーニングをする前提としては,やはり知識をきちんと持っていなければならない。1年生のゼミでディベート体験をさせるのと3年生でディベート体験をさせるのでは,全くレベルが違ってきます。特にこれからの教育は,とことん考え抜いて,考える力を付けていく。そのときには,かなり高度なテーマを与えた上でやっていく必要があります。例えば,私は大学院生が読むような論文を学生に読ませるのですが,初めは理解できないのです。理解できないのですけれども,それをきちんとある程度理解できるように考え抜いていく。あるいは,このレベルに達しないと専門家と言えないという厳しさといったものも教えていく必要があるという意味では,新しいアクティブ・ラーニングという教育法が出たとしても,研究と教育というのはある意味では不可分であろうと考えます。
 次に,専門職大学等を含めた高等教育機関全体の関係なんですが,先ほど少し出ましたように,今,日本の大学の在り方はいわゆる単線的に考えています。ところが,この専門職大学の創設によって少しそこが変わってきますので,むしろ専門学校と専門職大学の間をどのように考えるのかということが一つ課題になってくるかと思います。
 また,海外の経済学の論文が幾つかあるのですが,今イノベーションが早く進んでいますけれども,それに対してキャッチアップをしていく能力には,企業特殊能力あるいは専門的な能力ではなくて,むしろ一般的な能力が必要であるということも研究の中で分かってきております。そのようなことも含めて大学間の関係を考えていくことが必要かと思います。
 それから,基盤的経費,競争的資金等につきましては,先ほども申し上げましたように,運営費交付金における研究と教育の在り方,その区分をきちんとしていく。一律に中身関係なしではなくて,そこをもう少し精査していくということが,私学助成も含めて必要だと思います。
 学生への経済支援の充実等につきましては,やはり最終的にはHECS型の後払い制度をしていく必要があると思います。このことは哲学の根本的な変換でありまして,日本と韓国だけが家族・家庭負担になっている学費を本人負担に切り換えていく。そうすることで,恐らく学生は将来自分が後払いをしていくことによって,より経済的にシビアになりますので,勉学に対するインセンティブも働いて,少なくともアメリカの大学の学生の学修時間と日本の学修時間の差が今よりもう少し埋まるのではないか。さらに,リカレント教育に関しましても,今,18歳人口が中心になっていますが,これは大前提として,家計負担であるために18歳からしか行かないわけで,これを本人負担に変えていくことによって,社会に出てから自分が何をしたいということを考え直し,大学に入り直すというようなこと,あるいは少し区分をして大学に入っていくというようなことも考えられますので,ある意味,家計負担から本人負担へという哲学の変換をしていくことが,大きな流れの変更になるのではないかと考えております。このことが経済的支援にもつながっていくと考えています。
 以上でございます。
【永田部会長】  村田委員,ありがとうございます。言いにくいことを優しい言葉でおっしゃっているんですが,研究と教育の関係性の問題は文部科学省の組織の構造にも問題があって,縦割り行政を変えなければいけないということを,実は言下に含んでいるととらざるを得ないと思います。それ自身も新たな改革をまた生んでいくだろうと思って聞いておりました。
 それでは,日比谷副部会長,どうぞ。
【日比谷副部会長】  ありがとうございます。2点申し上げたいのですが,一つ目は規模の話です。進学率について,それから社会人教育についても御意見がいろいろと出ましたけれども,先ほど少し永田部会長がインターナショナルスチューデントとおっしゃったんですが,私は,国公私立を問わず,日本の大学が今後どのぐらい留学生を受け入れていくかということが,この問題を考える大変重要なポイントの一つであると思っています。政策研究大学院大学の田中学長を座長として高等教育機関における外国人留学生の受入推進に関する有識者会議がございまして,私もその委員の一人として審議に参加しておりましたけれども,そこで様々な提言をいたしました。中央教育審議会の場でも配られておりますけれども,例えば,大学院教育の在り方というところで考えると,本当に最先端のプログラムを持っている大学院に,世界の優秀な人をどうやって呼んでくるかというような視点もあれば,いいプログラムであれば自分でお金を払って日本の大学に来たいという人もたくさんいるわけですから,そのような人たちにとって魅力的なプログラムをどのように作るかとか,さらには,日本の大学を卒業した後,日本で就職するということもあるのではないか,そのための様々な方策を幾つも提言いたしました。一年前ぐらいの前期の大学分科会で,その報告を配っていただいたんですが,少し共有する時間を持っていただき,インターナショナルスチューデントの今後の在り方について是非考えるということを含めて規模の話をしていただきたいということが1点目です。
 二つ目は,国公私立の枠を超えた大学等の連携・統合についてです。実は永田部会長の筑波大学と私どもICU(国際基督教大学)は協定を結びまして連携をしています。本日,お配りいただいている資料2の一番後ろにスーパーグローバル大学の採択校の一覧表があり,大変きれいに作っていただいておりますが,赤い字が私どものような私立学校となっており,幾つか例外はございますけれども,我々の大学は圧倒的に学生数が少なく,入学定員が620人の大学でございます。そのような大学にとっては,国立大学や大規模大学との連携ということが今や不可欠になっています。特に筑波大学との連携では,これまでにも幾つかのことをしてまいりましたけれども,ちょうど来週に,筑波大学で任用される助教がICUに着任します。この助教は100%,ICUで教える人として来られます。そして,4月になりますと筑波大学に入学するインターナショナルスチューデントがICUに来て,学内の寮に住んで,ICUの学生と一緒に学びます。この筑波大学の任用の助教は,もちろんこの学生のグループの面倒を見るという役割はありますけれども,それ以外ではICUの学生を教えるし,卒業研究も見るしといったようなことで,私どもにとっては大変有り難いことです。しかも,筑波大学はとても寛大な大学でして,「ICUさんで欲しい分野の人を採ってくださいよ」とおっしゃっていただきましたので,今,私どもが人事上最も必要と思っている分野の助教を配置することができまして,その分野の教員は大変喜んでおります。そのようなわけで,国立大学と私立大学あるいは規模が違う大学というと,本当にうまくいくのかなと思われる節もあるかと思いますが,逆に性格が異なるものを併せた方が良い結果が生まれると思いますので,そのような意味で,このようなところと組んだらいいのかなということを,殻を破った考え方を持って連携をしていくということが重要なのではないかと思っております。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。今,留学生の話が出てきました。国公私立いずれにしても,我が国の国民の税金を使っているというところがあるのは事実ですけれども,優秀な留学生が大学で学んだ後に我が国の企業で働き貢献をすることになれば,税金を留学生のために使ってはいけないという理屈は成り立たないと思います。要するに,それぞれの大学の個性に合わせたニーズの学生を世界基準で競合して選んでこなければいけない,という時代に既に突入していることは間違いありません。その辺りはどのようにこれから考えていくかということは大変難しい問題かもしれませんが,インドから来た方がアメリカでITを作って,抜群に企業の力を上げたところで自分は本国に戻って起業するというパターンもあるわけです。それはそれで結構なことでありまして,財産として新しい技術であったり,テクノロジーというものが残っていくわけです。そのような実情も踏まえ,留学生の問題についても議論を深めよう,というのが日比谷副部会長の御意見でございました。
 それでは,有信委員,よろしくお願いいたします。
【有信委員】  かなりいろいろ意見が出ていますので,私は大学院教育との関連で少し話をしたいと思います。
 平成17年に「新時代の大学院教育」という答申では,そのときに大学院生が,謂わば,ただ働きの研究員として教員に使われていて,本来なすべき教育が行われていないという状況をどう変えるかということが書かれています。さらに,それにグローバル化を見据えて,どのような形で大学院教育を変えていくかということが議論されました。一方で,同時期に,COCN(産業競争力懇談会)で,製造業を主体とした産業側の大学に対する様々な要望に関するアンケートをとった際に,絶滅危惧学科という言葉が出てきていました。これは,本来,産業界で必要とされている教育に関する学科がどんどん消えてしまっていて,文部科学省の研究費が特定分野に傾斜配分されるので,大学院の研究がそちらに寄ってしまう。そのために,そこから外れる必要な基盤的な教育を担っているような学科が,名称変更してどんどん衣替えをしてしまうということにあります。名称変更すると,当然,教える内容も変わります。そのような問題点が一つと,もう一つは,生き延びている学科に関しても,主として工学系ですけれども,期待されるべき知識を身に付けずに卒業してしまっている状況です。これも,一つは大学院サイドの影響が大きくて,大学院の教員は自分の研究室に学生をできるだけたくさん持ってきたい。当然,ただの労働力が増えるわけですから。そのために,大学院重点化で大学院の教員が学部で教えるという構造をとっていますので,学部教育においても,教える側(がわ)に影響が出てきているということもあって,必要な知識がきちんと身に付かないまま,先端的な知識だけ身に付けて研究をやっている。これがいわばポスドクになっても転身できないということの一つの遠因になっているわけです。そのような状況があって,学部教育そのものがかなりおかしくなっているのではないかということが産業サイドの懸念でした。
 ただ,産業界というのは常に勝手なことばかり言っていますから,一方で,先端的な分野を切り開く部分も足りない,という要求もしているわけです。つまり,この両方をどうやってきちんと満足させていって,日本の大学をしっかりと見直すかという点で,縦方向の機能分化は,それぞれうまく機能し始めているような気がしますので,その中での教育もそれぞれの大学が工夫をしてやっているのだと思いますが,横方向に見てみると,学部教育が本当に必要なことを教えられているかという視点があるわけです。産業サイドは,当然それは大学の見識の中でやっているのだと信じているのですが,今申し上げたような批判が出るということもあって,基本的に,学部教育,それから大学院教育あるいは専門職大学院,さらに専門職大学も制度化されておりますけれども,横方向の機能分化をもっと明確にして,いわばベースとして教えるべきものの内容をきちんと整理し直すことが必要ではないでしょうか。従来のように先端的な研究に結び付いたことに特化したとしても,先端知識の部分だけではなくて,ベースになる基礎の学理の部分が身に付いてないと,結局,先々伸びないわけですね。ですから,そのようなことがやれるようにということで,例えば大規模大学のシラバスを御覧になるとよく分かると思いますが,似たような科目がたくさん並んでいます。これは要するに,教えなければいけないことを教えているというよりは,むしろ教えたいことを教えているということの表れではないか。学生が賢い場合は,その中から基本的に自分が学ぶべきことを選択して学んでいますが,少なくとも履修モデルすらきちんと示されていないような現状です。米国の大学では明確に履修モデルのようなものが何種類も示されていたように記憶していますが,そのような意味で,戦後70年間,非常に成功を収めていた日本の初等・中等・高等教育の枠組みをもう一度根本的に見直す。その中で特に,先ほども議論ありましたけれども,一番足かせになるのが設置認可の問題です。設置認可によって,大学や学部という箱の定義がされているものだから,中身を見直そうと思っても箱が破れない。箱を変えようと思うと,また認可し直さなければならないというようなことがありますので,そのようなことも含めて,実際に議論することになっていますが,そのときの議論の視点として,やはり横方向の機能分化をどのように明確にしていくかということを考えねばなりません。17年の大学院答申の中でも多少議論はされていますけれども,今言ったように,本来の産業サイドの要求は矛盾しているようには見える一方で,やはりどちらも必要な話なので,その双方をきちんと生かしていくということを,大学人の知識・知恵をベースにしながら組み直していく必要があると思っています。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。反省も含めて,教育がプログラムとしてまだ完全にでき上がっていないということを御指摘いただいたのだと思います。根源的な作りを変えていくことで全体も変わるだろうという御意見でした。
 続いて,麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  それでは,既に様々な御意見が出ましたけれども,私から少し切り口が違うかもしれませんが,意見を申し上げたいと思います。文部科学省が作られている,または政府が出している様々な資料に,例えば大学という言葉と大学等,また高等教育若しくは高等教育機関という言葉が使われております。先日,内閣府から出ました「新しい経済政策パッケージ」の中で,括弧書きの大学等という中に大学,短期大学等が含まれているのは分かるのですが,専門学校も含まれておりました。定義としてはその定義でよろしいと思いますし,私は昭和51年以降,専門学校が18歳以上の方々の教育に資してきたものは,素晴らしいと思っております。一方で私どもが関係している短期大学等も,努力はしてきましたが,今,大変厳しい状況にあります。そこで,高等教育という言葉をどのように定義していくかということと,現在約20%の18歳以上の方を教育している専門学校を抜きにして議論できないのではないかということを考えています。
 では本当の高等教育とは何かということについてですが,以前,私は,国際通用性ということでプレゼンテーションさせていただいたことがありますが,それはハイヤーエデュケーションとポストセカンダリーの違いではないかと思います。例えば,英語で何とかカレッジと書かれた専門学校もありますけれども,外国の方がカレッジを見ますと,これは大学なのかなと思うこともあるでしょう。大学でも,ユニバーシティーなのか,カレッジなのか,インスティテューションなのか,様々な表現がありますが,最近は設置認可の際にその英語表記もチェックするようになっています。しかしながら,都道府県所轄の専門学校が大学校やカレッジという文言を使われているというのも現状です。それがいいか悪いかは別として,専門学校の皆様方も含めて,18歳以上の教育に資しているということを含めた形で議論しないといけないのではないでしょうか。大学のデータに関する資料を出しますと専門学校は入ってきません。一方で,大学等ということになると,専門職大学や専門職短期大学も含めて大学ですので,そのようなものを今きちんと定義しておかなければいけないのではないかと思っております。国によって違うのでしょうけれども,ハイヤーエデュケーションには,大学の目的に「深く専門の学芸を教授研究し」ということが頭に書かれています。これは,短期大学もそうですし,高等専門学校もほぼ同じような表現になっています。これがやはり一つのポイントで,研究に基づく教育ということがあって高等教育と言えるのではないかと思います。その研究のレベルや教育のやり方というのは様々な在り方があると思いますので,この辺のところを一旦きちんと整理した上で,専門学校のあるべき立場,これは場合によっては機能別分化なのか,それぞれのミッションの再定義なのか,あるいは短期大学や4年生大学若しくは専門学校との連携も含めて考えていかなければいけない時期に来ているのではないかと思います。
 さらに,先ほどお話にもありました専門職大学と専門職短期大学には,学校教育法上も「深く専門の学芸を教授研究し」という言葉が入っています。その後に職業教育ということが来ることになっております。これも大学として認知するということになりますので,ここを含めて,私は,今後議論されるであろう研究学位,認証評価,教育財務情報の公開,教養教育の在り方,専門教育の在り方,さらに学修成果をどのように取り扱うのかということを明確にした上で,今後の高等教育の将来像を議論していく必要があると思います。
 最後に,学位のことももう一つ申し上げます。高等専門学校は深く専門学芸を教授していますが,中等教育が高等専門学校には入っているために,大学と呼んでいないわけです。今,高等専門学校で得られるのは,準学士の称号です。短期大学においては短期大学士の学位です。これは,学位規則があるのでなかなか難しいと思いますが,今,高等専門学校がやっている研究教育というのは,学位機関として相当だと思っておりますので,準学士という称号を学位に変えるような方策はないのかということです。
 それから,短期大学士については,機関名が学位名になっていることに私は少し違和感を抱きますので,例えば准学士の学位にするといったことも議論していただきたいと思います。学位の国際通用性という観点から,准学士の場合はアソシエート・ディグリーであると思いますが,こういったものを明確化した上で,今回の答申では,国際的に見て分かるものにしていただきたいということが感想でございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  はい,ありがとうございました。
 それでは次に金子委員,どうぞ。
【金子委員】  私が申し上げたいのは,この部会では量的な拡大がいろいろと話題になってきましたけれども,基本的な視点として非常に重要なのは,むしろ「量的な発展」から「質的な改善」へのシフトということが議論の焦点になるべきではないかということです。国際的に見ましても,2000年代に入ってから各国の高等教育行政は,むしろ質的なシフトをどう行うかというところに焦点が集まっていると思います。
 そこで一つの問題は,質的なシフトを行うということは,実は制度・政策から見るとかなり難しいことで,例えば中央教育審議会とか文部科学省の行政にとっては実はかなり新しい分野ではないかということにあります。例えば制度・政策で言えば,日本の高等教育の質は設置基準によって支えられているということになっています。あるいは,前向きの施策改善については政府の補助金,GP,その他の補助金によって行われるということになっています。ただ,数の時代は,日本の大学生は,大学,大学院,その他を入れて大体300万人,大学としては約800校,という数を数えていればよかったのですが,質の問題は個々の大学生や大学ということを考えなければいけません。それはどのように機能しているかということが非常に大きな問題になってくるわけです。実際に重要なのは,ガバナンスの在り方や組織,あるいは教員がどのような義務を与えられていて,どのように仕事をするのかといったかなり細かい問題について,どのように考えるかということが重要になってくるわけです。例えばアメリカは日本と非常に違う組織をとっていますが,ドイツはもともと日本と非常に似たところがありました。しかし,ここ20年くらいで非常に大きく変わっています。そういったことを日本がどのように考えるかということは非常に重要ではないかと思います。言ってみれば,大学の自治に関わることではありますけれども,それが変わらなければ,学生の基本である密度の濃い学修をするという方向へ向かっていくことは非常に難しい。それがなければ,20年後の日本の経済的な活性度は非常に疑わしいものになっていくだろうと思います。そういう意味で,制度・政策による変化ということのパースペクティブ自体を少し変えていく必要はあるのではないかと思います。
 二つ目の問題は財政でありまして,日本の大学というのは財政的な準備ができないうちに急速に量的に拡大して大衆化してしまいましたので,それをいまだに克服できてないわけであります。けれども,これを確保するために,相当な資源の付加的な導入を行って条件を確保する必要があるということは事実だと思います。大学生一人当たりへの財政の掛け方は,日本は平均してみたら大体アメリカの3分の2くらいです。中国の大学は主要大学については財政公開しないからよく分からないのですが,中国と比べてもみても,日本の方がかなり低いだろうと思います。こういう環境の中で作られる人材がこれから10年,20年後にきちんと国際競争の中で戦っていけるのか。これは常に言われていることですけど,真面目に対処してない,リアルな問題として対処してないのです。しかしながら,2040年頃を考えたら,いろいろな社会の活性化から考えて,やはりそのような知的訓練を受けている人や知的訓練の程度が問われます。そのことを忘れてはいけないのではないかと思います。それから,類型化も,ある意味では日本の大学の先生は教育と研究ばっかりやっているから,研究だけをやろうというところ,あるいは教育をやるところをきちんと分けようという発想は分からないことはないわけですが,先ほどもお話にあったように,ここまでの教育はちゃんと確保しておこうという最低限の条件は絶対必要なわけで,それにはやはり一定の財政的な条件が加味されているということは必要だと思います。
 三つ目は,一方でやたらにお金をばらまくというわけにはいかないかもしれません。そこに規律が必要だと思います。次いでながら申し上げておくと,給付型奨学金にかなり大規模な資源が投入されるかのようなことが今言われていますけれども,それは質に対する投資にはならないんですね。数を増やすことになるかもしれませんが,質に対する投資には結び付きません。そのような意味で,情報開示や大学がやっていることに対するモニタリング,それから評価ということは不可避な条件になるわけであります。しかしながら,このことも10年くらいずっと言われ続けていますけれども,実態としての手はほとんど打たれていないに等しいと思います。ここ2,3日のニュースで,定員を確保してない大学に対して補助金を出さないというようなことを言われていました。それには定員確保してないと同時に授業の質が確保されてないということもやはり不給付の条件となると言っていましたが,なぜそのような大学にしか質の判断をしないのでしょうか。今の日本の大学全般にそのような問題はないのでしょうか。そのようなことを置いておいて,一部の大学だけそういう判断をするということは,あり得ないと思います。給付型奨学金の対象大学についても何かしらの質の判断をするという報道がありますが,これも大学全体についてある程度その判断がなければならないわけであって,一定の大学にだけそれをするというのは非常におかしいと思います。
 それから,少し話は戻ってしまいますが,今,日本の大学で中規模・大規模大学は,こういう状況の中でも規模を拡大しようとする大学がかなりあるのですね。それは要するに,質に対する厳しいチェックがないために,そちらの方に動いているわけです。そのような意味で,教育内容,あるいは条件のモニタリング,情報開示,それから評価は不可欠です。これはすぐにでもきちんとその用意をしなければ,ほかの政策も進みにくいのではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。質という観点から様々な御意見を述べていただきました。今の大学における質の担保については,設置審査と認証評価しかないわけですけれども,こういう問題をどう考えるかということは非常に重要なことであろうという御指摘です。例えて言えば,学食と同じであって,美味しくない質の低い学食を4年間食べて卒業した学生と,きちんと美味しくて質の高い学食で食べていた学生の卒業時の心身の健康状態はどうなるのか,ということと同じです。そのような環境の部分についての御発言も含まれていました。
 それでは,小林委員,よろしくお願いいたします。
【小林委員】  私は,昨年の暮れに今までの議論が悲観的過ぎるというようなことを申し上げて,少し発想の転換が必要ではないかということを申し上げたと思いますが,本日は少し時間がありますので,そのことをもう少し具体的に述べさせていただきたいと思います。特に2040年に向けてということですので,そういう形でお話ししたいと思います。
 現在,政府の高等教育に対する役割としては,大学設置基準による入り口での大学・高等教育機関のコントロールということから,出口チェックによる質の保証に向けていくということですが,現在は,これが移行期であって,過渡期であるというような判断だろうと思います。しかし,このまま本当に質の保証ということを強化していくことでうまくいくのだろうかということについては相当疑問がありまして,この方向も必要だと思いますが,これだけでいいのかと疑問を感じているところです。
 今,設置基準によるコントロールが定員によって行われているわけですけれども,発想を転換すれば,定員が未充足であるということは,逆に言えば少人数教育ができるというようなことだ,ということを前回申し上げたと思いますが,そもそも定員によるコントロールというものが有効なのかということです。これは今までの大学の設置の在り方に対して非常に大きな転換をもたらすものですので,慎重な検討が必要だと思いますけれども,もう定員による管理をはじめとした定員によるコントロールそのものをやめてしまってもいいのではないか,定員を廃止してもいいのではないかということが提案です。これは非常に大きな問題になりますし,だからといって,大学設置・学校法人審議会が必要ではないということではありません。定員によるコントロールをやめろ,ということを言っているだけです。ただ,様々なことを考えなければいけないわけでありまして,なぜ大学設置・学校法人審議会が必要かということについて,今の在り方というのは,高等教育機関にそれぞれ競争させることで質を向上させようということをやっているわけですけれども,市場参入するにはやはり最低限の保証というものが必要でありまして,まがい物が入ってくることを阻止しなければいけないわけです。ですから,大学設置・学校法人審議会は必要だと思いますけれども,定員というものはもう必要ないのではないかと思います。
 アメリカにはもう定員という考え方がありません。オーストラリア,イギリスには定員という考え方がありますが,これはむしろ予算配分の基準であって,日本のような意味・目的ではありません。そのことも考えなければならない問題でありまして,オーストラリアとかイギリスでは,定員を基準に予算を機関補助しているわけですけど,それを個人補助に持っていくという考え方とつながってくるわけです。ですから,その辺りの国立大学の運営費交付金の在り方,あるいは私立大学の私学助成についても再検討することになるという大きな問題になります。このようなことはもちろん一気に持っていくわけにはいきませんので,2040年までにこういうことを考えた方がいいのではないかという提案が1点目です。
 2点目といたしましては連携・統合のことですけれども,これは基本的には,やりたい大学があればやればいいという立場です。そのために余計な規制があるのであれば,それは廃止すればいいという,それだけの話だろうと思っております。
 3点目に,金子委員も触れられましたけど,財政というのは非常に大きな問題です。現在のやり方は,先ほど申し上げましたように非常に競争的な資金による誘導政策で,これは大学間の競争を促すというやり方ですが,これは飽くまで疑似市場で行われているわけです。完全な市場競争ではありません。こういうことをやっていると何が起きるかというと,格差が拡大するという問題が必然的に生じます。特に地域間の格差の拡大はもう既に起きているわけでありまして,逆に言うと,政府の役割というのはむしろこういった市場の失敗を是正するということにあるわけですから,そのためにも,諮問にもありますように,地域の教育機会の確保あるいは向上ということが求められているものであると,そのように思っております。
 この場合,地域の教育機会だけではなくて地域の研究力についても非常に重要なことでありまして,先ほど村田委員から国公立と私立を余り分けない方がいいというお話がありましたけれども,私は,やはりある程度性格やミッションの違いというものがあって,特に研究というところに違いがあるのだと思っています。ただ,私立大学が研究をやらなくいいということではありません。今までの経緯がそうなっているということでありまして,ある程度,国公立大学は計画的に配置されていて,しかもそれは強制的になっているわけです。それに対して私立大学は設置の自由がありますので,それは補助金で対応する等の様々なやり方があると思いますけれども,いずれにいたしましても,このようなことを考えていく必要があるのではないかと思っています。
 非常にいろいろなことを考えなければいけないと思っていますけれど,全部を一度に動かすということは無理ですから,方向性として今申し上げたようなことを検討していただければと思っております。
 以上です。
【永田部会長】  小林委員が今おっしゃった内容は非常に過激でした。ただ,先生がおっしゃるポイントの中で徐々にというのは,先ほどの統合という中でも実は考えざるを得ません。例えば公立大学と私立大学あるいは国立大学と私立大学が統合するとするならば,自由度を認める運営の方式をとれば,非常に強い連携も可能になっていくでしょう。法律については今後考えなければいけないとしても,大学がその機能を高めるための取り組みであれば,可能な限り自由にやれるように考えることが前提だ,という点では,私も同じように思います。
 それでは,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。私の方からは,グルーピングと連携ということに関して意見を述べさせていただきたいと思います。
 現在,高等教育機関の規模につきましては,大学が777校,入学者が約61万人,学生数が約287万人,短期大学が341校,入学者が約5.8万人,学生数が約12万人,高等専門学校が57校,学生数は約5.7万人,専門学校が全国で3,183校,入学者が約30万人,学生数が約65万人ということで,在校生数は合計約369万人ということになります。将来に向けてのこれらの4つの学校種,今後は専門職大学・専門職短期大学が加わりますが,これらに進学する学生さんたちにどのような高等教育のメニューを示すかということを考えるべきで,それぞれの学校種が学生を取り合うというような視点ではなく,どのようなプラットフォームを用意すれば社会へうまく接続できるかという視点で考えることが,高等教育複線化時代の考え方であると思います。
 既存の大学の学術・研究重視に対して,専門学校はプロダクト志向,マニュファクチャリング重視であるということが私の個人としての認識であり,そのように考えております。そして,短期大学と高等専門学校はその両方の性質を持っていると考えております。これも個人の認識です。言うまでもありませんが,大学はリベラルアーツを幹としたアカデミック型の高等教育機関であり,専門職大学等の専門教育機関は実践力重視の高等教育機関である,これがこれからの複線化であると思います。
 一方,高等学校の学修状況に目を向けますと,文化部,運動部などの課外活動が大変活発に活動が行われております。例えば,高校生を対象とした放送コンテストであるNHK杯は1,600校が参加する大変大規模なもので,アナウンスや朗読,ラジオドキュメント,テレビドキュメントなど多彩な制作物をプロダクトして競っております。また,高等学校ロボットコンテストは,全国100校を超える高等学校から130チームが参加する大変大規模な大会となっており,この参加規模は大学の規模を超えている状況でございます。その他の多くのコンテストなども同様であることから,高校生の中にはこうした経験によるプロダクトに興味を持つ学生が多数存在すると私は推定しています。
 しかし,その最大の進路である大学は,先ほど麻生委員からもお話がありましたけれども,学術・研究が中心ということになっておりまして,せっかくこのような興味が芽生えた学生が,全て大学にマッチングするかどうかという点については私は疑問があります。一方,高等教育機関でも,専門学校や高等専門学校において,プロダクト教育,これは狭義の物づくりではなく,料理やアニメや作曲や健康づくりや番組づくり,こういったことも含めたプロダクトであると私は考えておりますが,このようなことが盛んに行われておりまして,こうした志向の学生に合わせたカリキュラムと教員を用意して,その受皿になっていると思います。こうした高等教育機関で学ぶ学生の中には,高等専門学校から大学への編入生が非常に多いように,付加的学習を望む者も多く,その卒業生も社会で高く評価されていると聞いています。このような状況を更に発展・強化するために,専門職大学の4年間,2年制専門学校卒業後の必要に応じた大学編入,4年課程の専門学校卒業生の大学院入学など,プロダクトに興味を持った若者に,その興味を一旦ストレートに受け止めて,その上で必要があれば,更にそのプロダクトをベースとした創造力や研究のための編入といったプラスアルファの教育を,大学等との連携を通して身に付ける道も作るべきであると考えます。
 このような観点を盛り込んで機能別分化や接続を考えることにより,よりよいラーニングアウトカムと,これは大変重要な視点だと思いますけれども,何より我々教育機関とともに学びのもう一つの主役である学生のモチベーションを上げることにつなげていくべきだと考えます。そのような意味で,今検討されている高大接続改革は高高接続改革というような形,つまり高等教育機関全体でこの接続を考えるべきであると思います。
 こうした国内の学生たちの興味が,あるいは満足度が上がることによって,留学生やリカレントを求める人たちに対してもよりマッチした制度になると考えております。
 その他,留学生のことも一言だけ申し上げますが,先日,シンガポールの国立大学の見学に行ってまいりましたが,15%の留学生枠を持っておりまして,卒業後に3年間,シンガポールで仕事をした場合には奨学金が与えられます。このような制度を我が国でも考えるときに来ているのではないかと思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございました。理路整然とお話しいただきました。
 それでは,古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  ありがとうございます。先生方からたくさんの論点が出された中で,大学の外の視点から,基本的なことになるかと思いますが,幾つかに絞って申し上げたいと思います。
 この「引き続き検討を進める事項」の中で,将来的な高等教育機関の規模については,前の会議でも申し上げたところではありますが,やはり想定される大学進学者数に応じた適切な規模を大まかに示していくことが必要ではないかと思います。もちろん,社会人や留学生の受入れは,今後,大いに強化していかなければならないことではあるのですが,少なくとも現在の大学数や定員を維持してこのまま増やしていくことが現実的ではないという見方を明確に示して,それを踏まえた議論をすることは避けられないのではないかと思います。
 その際,私は大学設置基準の在り方について,やはり再検討するべきだと思っておりまして,規制緩和によって,この15年間で大学数は100校以上も増えています。定員割れも高止まりしている状況があります。現在は基準を満たしていれば基本的に認可するというのが原則だと思いますが,将来的にその地域で安定的に学生が確保できるのか,教育の質を維持していけるのかということも含めて,より慎重に見ていかなければならないと思います。新規参入を過度に抑制しないということは大切ですが,そこに配慮しつつも,新たな基準の在り方を検討できれば良いのではないかと思います。
 この「検討を進める事項」のプラットフォームというのは非常に重要だと思いまして,地域の実情に応じた柔軟な枠組みを支援していくということが大切かと思います。一定の準備期間やリサーチをした上で実効性を高めていくことが求められるのですけれど,できるだけ継続的なものにするために,どのような実績・効果が上がったかを検証していくことも必要かと思います。
 この国公私立の枠を超えた大学の連携・統合の方策については,公立もそうですが,特に国立と私立の組合せについては,現状どのような課題があるかをまず整理する必要があるかと思います。一方で,既に私立大学の公立化が各地でどんどん進んでいる現状があります。個々の自治体の判断ではありますが,結果的に国の交付金も含めて公費が手厚くなるということもありますし,メリットや課題などを示すことも必要ではないかと思います。私立大学の再編・統合については,より具体的で踏み込んだ対応が求められるかと思います。
 二つ目の今後検討を始める事項についてですが,高等教育機関全体の相互の接続関係について新たな方向性を示すことが大切ではないかと思います。以前の会議でも指摘されましたが,米国などでは短期の高等教育機関からの4年制への編入が盛んに行われているという実態もありまして,日本でも学生の流動性を高めていくことで,教育研究の活性化や,大学入試のみに過剰な重圧が伴う状況が改善されるのではないかと思います。それには教養教育の質や内容をある程度共有する取組なども必要になるかとは思いますが,結果的に社会人や留学生の受入れにもつながる効果があるのではないかと思います。
 最後に,審議事項にもありますが,これまで国公私立については,機能や役割,状況が異なるのに,一括して論議が進められている傾向があったのではないかと思います。設置者や規模ごとに役割や学生のニーズもかなり違う点があることもある程度踏まえた上で,分かりやすい形で提案していく必要があるかと思います。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 続いて,両角委員,どうぞ。
【両角委員】  宿題が出ていることも知らずに,多くの委員の方々の話を聞いて,何を話そうかなと思っているところですけれども,まず,規模についての議論については,進学率をどう予測するかということと,社会人や留学生をどれぐらい取り込めるかということに直結すると思います。私はある程度進学率は上がるだろうと思ってはいるのですけれど,将来の規模がどれぐらいになるのかということを議論すること自体,どこまで意味があるのかなということにも疑問を覚えています。つまり,それは結局,質によるだろうと思うのです。今,高等教育に対する様々な支援が得られなくなりつつある,もっと支援を得られてもいいはずなのに,偏った議論しかなされないというのは,やはり大学教育の質といったものに対しての社会からの支持が得られていないという,そこを根本的に変えていかなければならないわけです。規模がどれぐらいになるのかということを議論するよりは,どのようにして質をきちんと上げていくのか,そして,それをきちんと見える形にしていくのかということを議論していくことが,結果的に規模を増やしていくということにつながるのではないかと考えています。
 あと,大学の連携・統合については,一般的な意味でもあるかと思うのですが,これが論じられるときに,安部委員もおっしゃいましたけれども,何となく厳しくなった私立大学をどうするかというような観点で議論されがちかと思うのですが,それは少しおかしいのではないかというような気が個人的にはしています。無理に統合の在り方を探っていくというよりは,小林委員がおっしゃったことと私の考えも近いのですけれど,やりたい大学があればやればよくて,そのための障害をどう除いていくかということが大事であって,余り枠付けを強くし過ぎるというのは余計に連携の可能性を阻むのではないかと思います。コンソーシアムについては余り機能してないという話も聞きますし,地域連携という意味ではCOC+などの枠組みもありますけれど,特にCOCがCOC+になってから,フレーミングが強過ぎることが逆に連携を阻害しているような面も非常にある気がしています。政策誘導で何かを進めたくて補助金を出すというやり方も分からなくはないのですけれども,少なくともこの問題については,それが余りうまく機能しているようには思えません。ある程度大学を放っておいてやった方が,かえっていろんな形での連携が進むのではないかなというような気がしています。
 将来を考えていくときに,今後経営の厳しい私立大学が出てくるだろうというような話から,それこそ私学助成の在り方のところで,定員割れしているところや,あるいは質を評価して駄目なところを減らしていくという発想がすごく強くなっているように思います。経営が成り立たない大学をどのように退出させるかといった仕組みの整備は必要ですが,私立大学全体に対する枠組みの中でそういう統制ばかり強めるということにも意味がないのではないかという気がしています。韓国での前の政権,あるいはその前の政権などで構造調整政策の一環で,うまくいってない大学を基本的にどんどん追い出す,定員についても,すごくうまくいっている大学以外は減らすというような政策をした結果,何が起こったかというと,大学進学率自体が下がってしまった,市場全体がシュリンクしてしまったというようなことが起きました。そのようなことからも,余り一部の大学を追い出せという発想よりは,やはり良いものをどう育てるか,そして良い大学とは何かというところの議論をしっかりやった方がいいのではないかということを,特に2040年という長いスパンで考えるのであれば,必要ではないかという気がしました。
 あと,財政支援について,政策誘導が強くなっており,競争的補助金で細部にわたり,方向性や目標を示して,改革を進めようとしているやり方はもう少し何とかならないのかなという気がしています。短期の補助金で変わっていくので,いろいろな連携にしても,例えば国立大学と組んだら,国立大学は切れてしまった補助金の人の人件費ばかりで使うというようなことをよく私立大学の方からも聞くのですけれども,それはそういう短期での補助金の出し方をしているからということもあるのではないかという気がします。特に地域のプラットフォームというものは,5年とかのスパンで作れるものではないのであれば,政策誘導していくときも,もう少し長い期間同じような枠組みで見ていくとか,基本的なお金の流れが入るように育てていく必要があると思います。最初の委員の方が何人かおっしゃっていましたけれども,そういう別法人を創るということも一つだと思うのですが,安定的にそのようなものを育てるということを重視した観点での財政的支援といったものが必要なのではないかと思いました。
 以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。今出てきた中で連携・統合については強制的にどうするという問題ではもちろんないので,それは大学間同士で,あるいは大学の集団で考えればいいことだと思います。ただ,そんなにゆっくりしていられることでもなくて,設置審査の書類などを見ていると,私立大学だけではなく,国立大学でも承継職員が専任になってない学部が出てきています。大きい大学ではまだそこまでいかないでしょうけれども,小さい大学の教育研究体制は大変厳しくなってきているので,そのような大学が今後どう運営していくのかというときに,もう連携しか方策がないかもしれません。そういうときに,法律上,やりやすいように枠組みを作っておかなくてはならない,ということだろうと思います。
 それでは,吉岡委員,最後になりましたが,よろしくお願いいたします。
【吉岡委員】  大体皆さんいろいろとお話をされたので,4点だけお話しさせていただきます。
 一つは,これまでの議論と少しピントの外れた議論なのですけれども,そもそも,中央教育審議会大学分科会将来構想部会における議論,それからその結果としての答申というのは,それ自体が日本の高等教育や研究の活性化を促すべきものであって,とりわけそのような答申を読む高校生とか現役の大学生とか大学院生とか若い研究者たちが,将来の展望と希望を持って学ぶことへの意欲を喚起するようなものをここで作っていかなければならないと考えます。そのためには,社会全体の知的な関心を高めるとともに,学問が一人一人の多様な選択可能性を広げて自己実現へと結び付く方途を示すという,その必要があるだろうと思っております。
 二つ目です。高等教育機関の規模の考え方です。学問の新展開,それから科学技術の急速な進歩ということで,社会全体の知的水準を引き上げていく必要というのはますます高まっていると思います。高等教育機関としての大学あるいは大学等の社会的な役割というのは,かつてのように専ら少数のエリートの育成を目指すというものから,研究においても,それから実務においても,自らのうちから知的なリーダーを生み出す,そういう能力を持った厚みのある層を形成するということを目指すというものに変わってきているだろうと考えます。そのような層というのは,リーダーを支える積極的なフォロワーであると同時に,自らがリーダーになる潜勢力を持つというような,多様で,かつ多層的で,一定の広範な層というものでなければならないと思います。その意味では,これからの高等教育機関の規模をめぐる議論においては,教育に対する既存の思考枠組みや制度と,その下での進学率や個別大学における偏差値,あるいは先ほどから議論が出ています単純な定員充足率といったような指標というものを,それを当然のものとしてそのまま用いるということについては慎重でなければならないと思います。
 三つ目は,役割分担の議論についてです。大学というのは,学問共同体として,一方で地域に根差しているとともに,個別の大学とか社会とか国家というものを超えた世界的な知的なネットワークの中で成立しているものです。先ほど疑似的なという言葉がありましたけれども,そういう疑似的な市場原理に基づく競争的な環境が,必ずしも優れた研究や教育上の成果を生み出すわけではないということは,そのような大学の在り方と関わっているのだろうと思います。役割分担とか機能別分化という考え方についても,個々の大学の設置者が国公私立のいずれであるかというような観点からの区別ではなくて,研究教育のネットワークと,それから地域性,この地域性というのは行政単位である必要は全くないわけですけれども,そういう地域性とネットワークというものを基礎として,それぞれの大学が自らの個性に基づいて自発的・内発的な判断を行うべきであろうと思います。それぞれの大学の研究科あるいは学部・学科というものが,今申し上げたような学問総体のネットワークと,それから地域の中における自らの位置というのを自覚するということで,そこで学んでいる学生や,あるいは研究している研究者の選択の可能性を広げることになり,それが学問研究を行う構成員たちのインセンティブを高めていくものになるだろうと思います。
 そして四つ目は,やや補論なのですけれども,特に戦後の日本の知的な環境の基盤形成において,初等中等教育が果たしてきた役割というのは大きいと思います。高校までの教育によって基礎的な知的な訓練を受けた広範な層があって初めて大学はある種のエリート教育というものを行い,知的な指導者層を形づくるということができてきたと言えます。中央教育審議会は,社会の在り方と,それから教育全体の関係というものの中で検討していくという役割を負っています。その際,教育というものを社会の中で人間が成長していくプロセスとして見るということが大切であって,高等教育の活性化のためには,初等中等教育との内在的な連携を再構築していくことが不可欠だろうと思っております。日本の教育行政は初等中等教育と高等教育と縦割りで切り離されていますが,そういう意味でも,教育のプロセスを俯瞰(ふかん)することができるのは,教育制度の最終段階である大学の在り方を検討するこの大学分科会以外にはないだろうと思います。この初等中等教育との関係という点は,直接の論点ではないとしても,常に意識しておくべきだろうと考えます。
 以上4点です。ありがとうございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 多種多彩な御意見が出ました。改革案を含むような御意見もありましたし,ファンダメンタルな課題をもう一度引き出すような御意見もあったと認識をしております。本日の先生方の御意見からキーワードを拾いながら論点をまた考えますけれども,ある意味多様性とか深さというものを保証しながら質を追求するという考え方がその後の規模を決めるだろう,という御意見もありましたので,そういうものを総合的にまとめさせていただいて今後の議論に付していきたいと考えております。
 本件については,本日はここまでといたします。

(2)東京23区の大学の定員抑制に係る暫定的な対応について,資料3をもとに事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。


【永田部会長】  最後に,東京23区の大学の定員抑制に関する今現在の状況というものの御説明をいただきます。
【蝦名高等教育企画課長】  それでは,資料3を御覧いただければと存じます。「東京23区の大学の定員抑制に係る暫定的な対応(平成30年~31年度分)について」という資料でございます。
 東京23区の大学の定員抑制あるいは地方大学の振興といったようなこと,あるいは地方における就職の機会の確保,これら3本柱に基づいて,現在,政府で法案をこの国会に提出をすべく準備をしてございます。それらにおきましては,東京23区の大学の定員抑制の内容も含んでございますが,これは平成32年度以降のルールを定めようということとしてございまして,当面,平成30年~31年度についてはそれに準じた措置をとるというようなこととなってございます。
 資料3では,平成30年の4月,この4月からの収容定員の増,あるいは31年度,来年度の大学の設置,あるいは31年度の学部の新設,あるいは31年度の収容定員の増ということが,30年~31年度,2年度にわたって生じてまいりますけれども,この図の真ん中ぐらいに「昨年9月末に対応した内容」とございますところは,これら今後の30年~31年度の収容定員の増に係る事柄について,まずは30年度,この4月からの収容定員の増,それから来年の31年度の4月からの大学の設置については,それぞれ申請時期が10月でございましたので,これらに係るルールとして,昨年9月に,この「抑制内容・例外事項」という下の欄にございますように,東京23区の大学の収容定員増に係る申請を認可しないということを原則としつつ,既に施設整備等の必要な投資を行うというようなケースで意思決定が行われているケース,それから,23区に所在する専門学校がその定員を活用して専門職大学を新たに設置するようなケース,また,医学部の地域枠については,こうした抑制の対象外とするというような告示を新たに定めたところでございます。これにつきましては昨年10月に報告をした件でございます。
 一方,今回,その際には対象としていなかった31年度の学部等の設置に係る申請時期がこの3月に参ります。また,31年度の収容定員の増につきましては申請時期がやはり3月と6月,2回に分けて参りますが,これらに係るルールにつきましては,冒頭申し上げた法案を検討するための有識者会議が内閣官房に設けられまして,昨年の9月は詳細な例外事項について検討を行っている状況でございましたので,新たに年が明けてからそうした報告がなされた後に,その内容に即してルールを定めようという整理をしたところでございます。今回,この31年度の学部新設,それから31年度の収容定員の増に係るルールにつきまして告示を制定したいということでございます。
 その際に,先ほど申し上げましたように有識者会議における議論につきましては,1ページおめくりいただきまして,3ページ目から有識者会議の最終報告の抜粋をお付けしてございます。この中では,原則抑制ということとしつつ,大学院や専門職大学あるいはスクラップ・アンド・ビルドを行うようなケース,留学生や社会人,それから,既に意思決定を行い,必要な投資を伴うようなケース,また,サテライトキャンパスを1都3県外に設けるといったようなケースなどについては,例外とする必要があるのではないかというような整理となっています。
 今回,こうした整理を踏まえまして,2ページ目になりますけれども,このような形で新しい告示を定めたいということで,現在,パブリックコメントを実施してございます。2ページ目を御覧いただきまして,その概略としては,31年度に開設をしようとする大学の学部・学科等の申請につきましては,原則23区に所在するものにつきましては設置を認めないこととしつつ,一つには,既に意思決定が行われており,施設・設備の整備を伴うといったようなケースについては例外とするということ。また,夜間や通信教育を行う学部・学科については対象外とすること。丸3 としては,授業の半数以上を1都3県以外で行うケースについては対象外とすること。丸4 として,スクラップ・アンド・ビルドによって最終的に増えることがないというものについては対象外とするということとしたいと考えてございます。
 また,(2)として,31年度に行おうとする収容定員増につきましては,(1)と概(おおむ)ね重なってございますけれども,それらに加えて,1都3県内で履修する学生数を増加させないような収容定員増,丸4 のようなケース。それから,丸6 のようなケースで,地域の医師確保のための臨時定員増の場合。これは9月の告示でも同様の内容としてございます。それから,丸7 として,外国人留学生・社会人である学生を増加させる収容定員増というものについては,報告書の内容も踏まえまして例外とするということとしたいと考えてございます。
 これにつきましては,現在,パブリックコメントを行ってございまして,2月の下旬に告示を公布するということとしたいと考えてございます。その上で,それぞれ申請の時期が3月に参りますので,そうしたルールに基づいた対応を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 事情説明だけですが,何か御意見ございますか。よろしいですしょうか。私から申し上げたいのは,この定員抑制の話は今進んでおり,パブリックコメントも行われているということですが,中央教育審議会における我々のこの将来像提示がこれと同じ形になってはいけない,ということです。我々が自ら議論したものを我々が答申の形で示すためには,実はフィロソフィーも大切ですが,本当に具体的にどう施策に反映されるような提言にできるか,ということが大変重要だと思っております。本部会のまとめは秋が時限になっておりますから,当然ながらその少し前,5月の辺りには一定の中間まとめに相当するものを作らないと,到底間に合わないだろうと考えています。御協力をよろしくお願いしたいと思っております。
 次回以降ですが,詳細についてまたそのときに議題は提示させていただきますが,本日,先生方から非常に前向きな,あるいはいろいろな御意見を頂きました。それをどうしたら実現できるのかという具体的な方策を考えない限り,やはり机上の論理になってしまいます。文章にするのはその手前までかもしれませんけれども,そこまで考えてそれぞれの御意見に対して次は更にもう少し突っ込んだ議論をさせていただく予定にしております。
 また,地方の中小企業から大学に期待すること,という御意見を聞いたことがありませんので是非とも聞いてみよう,というお約束をしておりましたが,こちらのヒアリングの準備もしております。
  それでは,本日はこれでお開きとさせていただきます。どうもありがとうございました。

―― 了 ――


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