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将来構想部会(第9期~)(第6回) 議事録

1.日時

平成29年10月4日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,金子元久,黒田壽二,小杉礼子,佐藤東洋士,鈴木雅子,千葉茂,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)戸谷事務次官,小松文部科学審議官,義本高等教育局長,常盤生涯学習政策局長,村田私学部長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),塩見文部科学戦略官,蝦名高等教育企画課長,堀野高等教育政策室長,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長 他

5.議事録

(1)高等教育機関が育成する人材について,資料1に基づき吉岡委員から,資料2に基づき金子委員から説明があり,その後,意見交換が行われた。
【永田部会長】  おはようございます。定刻になりましたので,第6回の大学分科会将来構想部会を始めさせていただきます。
 前回は地域という観点から,地方自治体と大学の連携の話題を中心に有識者の方に御発表いただきました。さらに,小林委員からは都道府県に加え,より広いエリアや国公私別の観点を入れた御発表をお聞きしました。
 この将来構想部会は本日で6回目を迎えました。我々としては簡単ではありませんが,そろそろいろいろな骨格を決めながら,具体的な方策を議論する段階に来ております。そういう意味合いで,教育内容の改革,あるいは認証評価等の教育制度自体の改革を含む高等教育の構造改革といった観点を議論してまいりました。
 本日は,その議論の前文に当たる部分の議論をもう一度させていただこうと思い,委員の中から立教大学の吉岡委員,筑波大学の金子委員のお二方にそれぞれ御発表いただきます。その詳細はもちろん先生方からお聞きいただきたいのですが,基本的には近い将来,それから少し先の2040年の人材を育成する観点で,どのように考えていくかという話になるかと思います。
 それから,後半部分では,前回の小林委員から御発表いただいたエリア別国公私別の観点での将来データについて,以前文部科学省で作った都道府県別の規模データを含めた形で,今度は分野も含めた地域単位で,現在どのように日本の中に分布していて,今後人口変動等によってどのように変わるか,というデータについて御説明させていただきます。
 もう一度元に戻りますが,外形,骨格を作るという中で大変重要な問題を,3点述べさせていただきました。もう一つ上のことで言えば,例えば科学技術の発展を牽引(けんいん)して,それを社会へ実装する人材の育成といった大きなタイトルになると思います。こうしたことが念頭にあって,今現在の科学技術の発展を推し進めなければならず,それがいかに効率よく社会に実装されていくか。それはひいては我が国の国力,あるいは経済力を上げていくことにつながっているわけです。我々高等教育の側(がわ)としては,そういう科学技術の発展を牽引(けんいん)する人材を育てることと,それをもう一段進んだところの社会実装にまで結び付けられるような人材をどうやって育てるか,について述べる責務があると思います。
 今のタイトルは仮のタイトルです。それに向けて先ほど言ったように,教育のコンテンツの改革,教育の制度の改革,高等教育の構造の改革といった観点で,これからだんだん話が煮詰まっていくだろうというわけであります。その中の今回は特に,どのような人材を育てていこうかという観点からお二人の方に御説明いただきます。
 それでは,配布資料について確認をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  資料につきましては,議事次第に記載してあるとおりでございます。不足等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【永田部会長】  それでは,早速ですが御発表いただきます。なお先生方のお手元には資料3として,これまでの中央教育審議会の答申における高等教育機関が育成する人材に関する提言の抜粋を載せております。これらを御参考にしながら,これに縛られることなく先ほど申し上げたような大きなテーマの議論をしていきたいと思います。
 それでは,まず吉岡委員から御発表いただききたいと思います。よろしくお願いいたします。
【吉岡委員】  おはようございます。立教大学の吉岡です。よろしくお願いします。
 お手元に資料1という,長い資料が付いております。これは報告文を作り始めたら長くなってしまって,それをほとんどそのまま載せております。メモの延長ですので混乱しているところがあると思います。本来これは短くなるはずだったのですが,そのままお出ししています。これをこのまま読み上げますと,時間が長くなりますので,更に要点をお話しすることにいたします。全体は後でお読みいただければと思います。
 今の永田部会長の話との関係もありますが,人材像という思考がどのようになっているか,ということから考えてみたいと思います。人材養成をめぐる議論は,まず現状を分析して将来状況を予測して,将来こういうニーズがあるだろう,それに必要な人材像はこういうものだと描いた上で,その養成の仕組みをどのように組み立てるかと,通常我々は発想するわけです。この思考法は,基本的には商品開発の思考と共通しているだろうと思います。
 しかし,人材というものは人間でありまして,商品とは決定的に違うと思います。一つは時間の問題で,商品開発で必要とされる時間スパンはそれほど長くはありません。したがって,将来予測も短期で良いのですが,人間の成長は非常に時間がかかります。子供の頃からであれば大学までが20年,大学からいっても20年,30年が必要になってきます。結果的に,将来のニーズに合っているかどうか分かるのは非常に先になります。特に,現代では変化が非常に激しいわけです。例えば,10年後の社会はどのような人材を要請しているのかという想定は,非常に困難であると思います。
 そもそも人材像を策定するときに,これが正解だろうと考えるというのは,我々が今問題にしている正解を求める思考法に我々が陥っているのではないかという気がします。いずれにしても,それが正解であったどうかが分かるのは未来の時点です。
 そのことに関連していますが,2番目に,人材の生産工程に当たる教育課程が果たして適切であったかの検証も非常に難しいわけであります。効果的,合理的に目標とする人材が生産できていたのかは,10年後,20年後に検証して後戻りできる話ではありません。これは人間が非常に可塑性,可変性に富んでいるからで,実際に生産工程を組んだつもりであっても,それが想定したものとは違う人材が生産されてしまうということは,我々が日常的に経験していることであります。逆に,同じことの繰り返しになりますが,そのように可塑的で可変的なので変化に対応できる,人材像がピント外れだったとしても時代に適応,対応できる人間が育っているとも言えるだろうと思います。
 3番目に,製品が不良品であった場合や過剰生産をしてしまった場合に,製品であれば廃棄することができますが,人間を廃棄するのはそう簡単なことではありません。
 それでは,これまで人材像をどのように考えてきたかということですが,私の資料の6ページ目からの部分に幾つかの抜書きをしております。これの資料6を御覧ください。これはグローバル人材育成戦略の審議のまとめです。
 これはなかなか面白い文章の構成になっています。要素1に語学力・コミュニケーション能力があります。要素2は主体性・積極性,チャレンジ精神等々が入っています。要素3は異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティーになっています。これは語学力と異文化に対する理解を除くと,ほとんどが普通の社会人に必要とされる資質であろうということができると思います。また,この「日本人としてのアイデンティティー」は非常に有名な「期待される人間像」以来,繰り返し人材像の中に入ってきているものであります。
 見方を変えますと,人材像は変化への対応力や常識等を核にして,つまり社会人として一般に要請される資質を核にして,加えて,それを作っているときに見通せる範囲で必要とされる様々な技能を想定している,そういう仕組みになっているだろうと思います。
 このように人材像を想定するのだとすると,我々が考えようとする正解の一例として,グローバル化の更なる進展と科学技術の急速な進歩,例えばAIの発達や生命科学の発達に十分に対応できる人材を作ろう,そういう議論が結論として想定されることになります。
 しかし,最初に言いましたように,10年以上先の期待される人材像を想定して,それに合わせて教育課程を構築することにどれだけの意味があるのか。どのように考えたらいいのかは残るわけです。しかも,繰り返しこれが大事だと言われている,常識ある社会人に求められる「柔軟性」,あるいはこの資料6のところにも書かれている「単一の尺度では測り難(にく)い」と言われる資質をどのように育成するのかが,問題として残るのです。
 例えば企業の就職の担当の方々とお話しすると,結局のところ大切なのは人間力であるとおっしゃるわけです。そうすると,人間力人材というような人材像を考える必要があります。これは大変に難しいことであると思います。
 さて,そのように人材像を先に想定して,その生産工程として教育課程を組み立てる思考法は,いかに教育課程を効率化して合理化していくかという発想に展開するだろうと思います。これは教育機関の選別装置としての機能を強化する側面を持たざるを得ないだろうと思います。御存じのように,プラトンの『国家』の中には,人間には生まれる以前に金,銀,銅や鉄という資質が埋め込まれているという「高貴なうそ」という話が出ています。統治者の最大の仕事はそれを選別する能力である,それが国をきちんと作り上げるための最大の仕事であると,そういう論理であります。人間を資質によって分別するのが教育であると単純化してしまうと,プラトンは怒るかもしれません。しかし,そういうプラトン的な思考と,教育を人材の生産過程だと考える思考が結び付いてくると,結局のところ素材をいかに効率的に分別するかという思考が中心になっていくことになります。繰り返しですが,選別装置としての教育機関が強調されていかざるを得ず,人材像は選別の基準になっていくと思います。
 しかし,これも繰り返しですが,人材像は実は多くの要素を含んでいます。そういう意味では,結局のところ基準としては常に曖昧なものにならざるを得ないわけです。曖昧な基準が適用されることで,例えば就職採用の現場で必要なのはコミュニケーション力と人間力だと言われます。ホームページ等にも企業はそのように書くわけです。そうすると,就職採用で落ちた学生たちは「自分は人間力に欠けた欠陥品である」と思うことになっていきます。実のところ「就職うつ」になる学生たちが続出することも起こってきます。
 もともとの資料では3ページ目の2のところで,「補論」として,研究職における人材養成について少し書きました。同じようなことが研究職においても起こるわけですが,選別性はより高くなってしまう。それは研究職のポストが限られていること,研究費はどんどん削減されていることから,競争は激化してしまうわけです。そうなりますと,効率的な養成をしなくてはなりません。そうすると,早い時期に素質のある若手研究者をリクルートすることを目指さざるを得ないことになります。これは学生の側(がわ),あるいは修士の学生等から見ると,要するに先が見えなくなるわけで,そもそも研究者になろうというモチベーションが減っていくことになります。
 また,研究の側(がわ)から見ても,まず早熟な秀才に依存していくことになります。これは当然ですが,これが多様性を阻害していくことになるでしょう。このような考え方の中だと,パラダイム転換を起こし得る革新的な資質は非常に見出(いだ)しにくくなっていくのではないかと思います。
 研究というのは,結局非常に多様な人材が関与しないと動かないものです。理系はもちろんですが,文系であってもいろいろな人材が関わっていることが必要です。しかも,チームで動くような場合には,研究者としての技能とずれるかもしれませんが,マネジメント能力やリーダーシップが非常に重視されることになります。
 したがって,研究職の分野に多様で多数の人間が関与しないと研究は進歩しません。それぞれの領域で自らの能力を伸ばして発揮していくことができる。そのことが全体として研究を引き上げていくわけです。その中からトップの研究者も生まれてくることになるだろうと思います。そうでないと,トップの研究者のベースになる部分にそもそも入ってこない人間の中に,才能のある人間がたくさんいる状態が起こってきてしまうだろうと思うわけです。
 では,どうするかということで具体的なお話ができるわけではありませんが,少し発想を変えてみようという話になります。3番目の知的誘惑の組織化です。今申し上げたように,あるべき人材像を策定してそれに基づく人材養成過程の設定ですと,設計するのは我々なので,基本的には歴史的現在は越えられません。今言いましたように,本質的な意味でのイノベーティブな才能がそこから生まれてきにくいわけです。しかも個々の可能性の領野を狭めていってしまうのではないか。
 先ほど言いましたように,人材像に共通に含まれている中核的な要素は,非常に基礎的で普遍的な知的な技能であります。例えば,論理性や批判的思考力や広い視野やコミュニケーション力や他者との共生の力などいろいろ言われているものです。これは何かというと,基本的には変化に対応する能力を育てることだろうと思います。様々な能力を発現させていく,その源泉となるような能力がここで言われているものだろうと思います。
 最近,リベラルアーツ教育の重要性が強調されているのは,こういう能力を開発することが必要だという考え方と結び付いているからだろうと思います。現代において,リベラルアーツ教育というのは教養教育があって,それから専門教育があってというよりも,この両方を通じて行われていくべきものだと思います。リベラルアーツというのは,もともと世界がどのような仕組みになっているのかということを知るための基礎知識です。それを学ぶことによって,その中で自分はどういう役割を果たすのか,どこにいるのかを知るという羅針盤的な技能を身に付けるものです。
 したがって,専門教育の基礎になると同時に専門教育を通じてそれが具体化,具現化され,高度化されていくことだろうと思っています。それがもともとの自由人の知性の訓練であることも考えると,このリベラルアーツ教育は高度な科学技術を基礎とする現代の社会的,倫理的な諸課題に向き合うための公共的な知性,実践的な知性としても非常に重要であることになります。
 したがって,専門教育と教養教育とを組み合わせた多様性に満ちた教育プログラムの編成をどのようにすればいいのかということが重要です。そのことを考えるということ,それが学生の知的関心を引きつけていくカリキュラムの策定と結び付いていることが必要ではないか。そのような意味では,多様性をどう創り出すかが大切であって,それがあって初めて教員も学生も思いもよらなかった能力を開花させていくことにつながるでしょう。
 この教育課程を人間の知的成長の中に位置付けていくことを考えるときに大切なことは,成長過程の中にいる,あるいは教育課程の中にいる学生の視点から考えることだと思います。学生がそれぞれの段階で自分の位置を把握できて,そこから先を見通すことができること,それが未来へのモチベーションを生み,意志を持続させていくことになるだろうと思います。
 今抽象的な言い方をしましたが,これは近年のキャリア教育の考え方の中で,かなり共有されてきているものではないかと思います。つまり,就職という話ではなくて,大学における様々な教育・学習の過程を人生全体の中で位置付けていくという発想です。就職もその中の一段階であるという考え方です。これは学位プログラムを定着させていくために,非常に重要な考え方となります。これを進めていくためにはアドバイザー的な役割をする仕組みが必要だろうと思っています。
 また,先が見通せるという中には経済的な展望も当然含まれます。非常に大きな役割を果たすという意味で,財政的な支援が必要だろうと思っています。これは研究職についても同様で,その領域に関心を持つ学生の視野を広げていく,学生が将来を見通すことができることが非常に重要です。早い段階から業績によって選別されてしまうのではなくて,一定程度研究を続けることができることが見えるということです。それから,例えば自分はこれは向いていないと思ったとき,研究の方向を変える,あるいは職業を変えるときの複数のキャリアパスを整備していくことが必要だろうと思います。
 チームで研究を支える場合には,繰り返しになりますが,多様な能力の関与が不可欠です。選別的な少数精鋭主義が組織全体,研究全体の劣化を生まないようにしていくことが非常に重要であります。研究者間の格差や差別などが生じると,チームは瞬く間に機能しなくなります。
 また別な話ですが,学位に対する日本の企業の評価が非常に低いということも,問題です。研究者として育っていく人間にとって先が見えないことは非常に大きな障害です。これは企業,それから社会全体の意識改革,制度改革を進める必要があるだろうと思います。
 大学で学ぶことの見通しが見えてくるということからすると,これはもう大学だけの問題ではないことは明らかです。初等・中等・高等教育の一貫した学びの課程として捉え直すことが必要です。小さいときから,例えば自然に触れることが研究者の動機になっていくということはよくあることです。そういう学びの一貫したパースペクティブというものを作っていく。これは学校教育の順番、段階に従うものではありません。こういう知的な刺激を与えることが非常に重要です。そのためにも,初等,中等教育と高等教育の内在的な連携が必要であろうと思います。
 これは繰り返しになりますが,例えば飛び級ということをこの審議会で言っているのではなくて,むしろ飛び級という形で早い時期から選別をかけることとはむしろ違うことを考えるべきだという意味でございます。
 あとは,社会生活を送っている中で関心が広がることで,ここでも繰り返し語られていることですが,社会と大学の往還の道を広げることが大切だろうと思う次第です。
 非常に大雑把(おおざっぱ)な議論ですが,あとはお読みいただければと思います。ありがとうございました。
【永田部会長】  ありがとうございました。委員の皆さんが頭の中でいろいろと考えを巡らせていた部分の一部を理解しやすい形で御発表いただいたかと思います。
 次に,金子委員から「大学教育と人材需要」について御発表いただきます。職業への接続という観点で御講演をお願いしたいと思います。
 それでは,金子委員,よろしくお願いいたします。
【金子委員】  金子でございます。よろしくお願いいたします。私は今の吉岡委員の高邁(こうまい)な話と違いまして,具体的な転換点からお話したいと思います。私は,「人材需要というテーマで誰か話せる人はいないだろうか」と事務局に聞かれたので,「それは私でしょう」と言ってしまいました。考えてみれば余計のことを言ったもので,ただこれからの人材需要はそのような余計なことを言う人材も必要とされるのではないか,という例として申し上げて,皆様の御批判を頂きたいと思います。
 私の話したいことは4点あります。一つ目は大学教育,それから知識,職業との関係です。まず,人材需要を語ることは極めて難しくなっていると申し上げたいと思います。それはこの図に描きましたが,大学教育というのはもともと医学部,法学部,神学部でそれぞれ医者,法律家,聖職者を作るところだったわけです。これは非常にストレートな関係でした。しかし,現代社会ではこの関係は非常に錯綜(さくそう)しています。それはなぜかというと,一つは採用者側が企業組織になっていて,その中で具体的な職務や知識の使い方が管理され,組織されているからです。戦後,高等教育大衆化のときに,なぜこれだけ大卒が増えたのかとガルブレイス先生に聞いたら,需要があったわけではなく,たまたま企業が組織を拡大してホワイトカラーが要るようになった,そのときに学生が増えていたからそれを使っただけだと言っています。多分そうであったと思います。何か特定の知識需要があったから拡大したとは必ずしも言えない。それは一つの問題です。現在更にそういう傾向が強くなっていて,それは要するに,組織の中で知識を作り,共有し,また伝達することが非常に重要になっているからです。
 同時に,先ほど吉岡委員のお話にもありましたが,社会で使える能力も単に学術的な能力や職業的な能力だけではないことも強く認識されてくるようになりました。汎用的能力,コミュニケーション能力,それから人格的な成熟それ自体も,実は働く上で極めて重要であるという意見も非常にこの頃は強調されております。
 日本では,こうした意味で大学教育と職業との関係の非一貫性が,これは歴史的な経緯があって,非常に強い例があります。ただ,これが非常にアブノーマルである。これに対してアメリカがジョブ型であって,非常に単純な関係であることを今まで言われたのですが,これは実は必ずしもそうではないかもしれません。
 それはなぜかと言えば,現代社会では組織の中で情報が極めて重要な意味を持っています。それは組織の中で作って,共有し,伝達していくことが必要になっているからです。ですから,簡単なジョブ型への分解は,実はそんなに起こっているわけではありません。常にこういった複雑で錯綜(さくそう)した関係はこれからも続いていくものではないかと,私は思います。ある意味では,この傾向がもっと強くなる可能性があります。
 二つ目は,大学から職業へのルートが現在の日本でどのように結ばれているかということです。今職業と教育との関係は非常に錯綜(さくそう)していると申し上げましたが,大卒生に関しては基本的には大きな三つのルートがあります。一つ目は事務営業系です。これは,日本の大卒者で就職する人は50万人ぐらいいますが,その6割ぐらいです。二つ目は,技術系というルートで就職する人で,これが4分の1くらいです。三つ目に大卒専門職とありますが,入ったときからこういった専門の人が欲しいといって就職させている場合があります。これは全体の1割くらいです。
 棒グラフで示しておりますが,文系の学部はほとんど事務営業で就職しています。ここは典型的に法学を学ぼうが,経営を学ぼうが,会社の中でやることはそんなに大きく変わらないというタイプです。理系学部はそのまま大学で習った専門知識を使わないとしても,近隣分野への基礎力があるものとして,それが評価されていると思われていました。しかし,この頃は理系でも事務営業職への就職がかなり増えています。工学卒で2割,理学卒で3割,農学卒だと4割くらいが事務営業系で就職しています。それから,先ほど申し上げたように,大学での専門分野を指定して就職する人,これは健康関連と教育あるいは心理が多いですが,大体1割です。こういう関係で就職しているわけです。
 三つ目ですが,その中で産業構造の転換がどのように起こっていて,それがどういう意味を持つだろうかということは具体的な関心になるわけです。これは,新規大卒者の産業別の分布を1970年から2017年までとったものであります。これを注意してみますと,大きな分極点が二つあることが分かります。一つは1990年のバブル前後,ここでかなり大きく産業構造が変わっています。それから2010年,これはリーマンショックの前後です。リーマンショックの前後に非常に大きな変化が起こっていることが分かります。
 一つ目の分極点では1990年から製造業が減少を始めました。これは技術部門だけではなく,管理部門も直接的に採用される人たちが減ってくるわけです。1990年までは,製造部門が日本の大卒者の最大の就職先でした。それが今は半分くらいになっています。一方で,2010年のリーマンショック以降には,また大きな変化が起こっています。それは1990年くらいから起こっていたのですが,サービス業が非常に大きく拡大してきているということです。同時に,商業金融もある程度拡大して,特にリーマンショック以降にある程度カムバックしている傾向があります。それから,建設運輸通信は景気に左右されることと,明らかに2000年くらいからIT関係のIT技術者ではない,IT関連の事務や販売が増えています。それはそこらを歩いていて,スマホの販売店を見れば大体分かります。そこら辺の雇用が非常に増えているということが分かります。
 結果として,今年の春の速報ですが,大卒者の就職者のうち,サービス業が36%,商業金融が28%,これを合わせると6割以上がこの二つの部門で就職していることになります。これは大卒の労働需要に何を意味するかというのは,実は私ははっきり申し上げてよく分かりません。今日お話したのはよく分からないということを言いたいわけです。
 というのは,サービス業と言われているものの内容は極めて多様です。先ほど申し上げたように,健康関連,教育関連が多いのですが,それ以外は極めて多様化しています。しかし,一定の性質でもって一括することは非常に難しいのです。あえて言えば,社会や人間の直接的なニードにこれまで対応していなかったところに対応する方法が,幾つか形成されていると言えるのかもしれません。
 それから,商業金融は景気に左右されています。ただし,この分野がこれ以上拡大するかどうかはかなり疑問ではないかと思います。AIはAI人材の需要で特に話題になりますが,ある銀行がAIを使うことによって,銀行の専門職を4,000人減らす計画を出していました。そのような減少がむしろ非常に多くなる可能性があると思います。余計な話ですが,日本の女子の高卒者の就職先が減った最大の理由は,1980年代から90年代にかけてメインフレームコンピューターが導入されたことです。それに似たようなことが起こる可能性があるだろうと思います。
 それから,IT産業についても,雇用自体の拡大にどれくらいつながるかどうかということは分かりません。ただ,どの程度の規模になるのか,これから全く分からないと申し上げたいのではありません。これからどれかが特に大きくなるということは必ずしも言えないのではないかと思います。一つ言えるのは,余り認識されていませんが,リーマンショックでの大卒需要の落ち込みは非常に大きく,大学卒業時点で就職しなかった人が3割近くいたわけです。現在ではかなり回復していて,今はかなりいい状況です。今後,大卒で就職する人の数は50万人ぐらいで移行すると思います。この中の構成は余り変わることはないかもしれません。
 この中でどのような知識・能力が必要となるか,ということです。これははっきり言って余りよく分かりません。というのは,どのような労働需要や,特定の産業部門が拡大するか,ということは余りよく分からないからです。先ほど申し上げたように,多様な社会や人間のニードに対応して様々な企業組織ができます。つまり,組織全体も多様化するわけです。その中で様々な職分ができていくことが必要なのではないかと思います。
 一般的に,この中でどのような知識が必要かを議論しても意味がないと言いました。意味はありますが,考えてもどれが正解であるかがそれほどに分かるわけではありません。具体的な知識も必要なところはあると思います。ただ,先ほど吉岡委員もおっしゃったように,むしろ変動する時代にとっては一般的な能力が必要だとも言えます。ただ,その場合に必要な一般的な能力が何かということについては,実はそんなに簡単に分かるわけではありません。多様なアプローチが必要だということです。
 そして,四つ目のポイントは,そのような中で何をすべきかということです。今高等教育改革の中で何が行われているかは,私は三つぐらいタイプがあると思います。
 一つは,専門分野別に知識修得基準の標準を形成することです。一種のアクレディテーションもそうだと思います。分野別参照基準もその一つだと思います。そういう意味ではチューニングも学問分野別の標準を作るための努力をしていて,その中で一部雇用者側の意見も聞くことを行っています。ただ,この場合,専門分野が極めて多様化するたびにどうするのかという問題が出てきます。分野別参照基準は,日本では日本学術会議で30分野ぐらい作っていますが,今イギリスでは70分野ぐらいです。ですから,職業分野別にスタンダードを作っていくというアプローチが,本当にフィジブルかどうかは大きな問題です。
 2番目の考え方はアメリカなどでやっているように,rubricなどを用いて,むしろ一般的な能力について達成目標を明確化することです。3番目は,教育プログラム型,要するに専門分野をかなりフレキシブルにして,市場のニードに合わせて作る,あるいは,合わなければ潰すという考え方です。それに学生が選択できる余地を作る問題です。
 私自身はどれもそれぞれやっていいと思います。一つ日本では,教育プログラム型のアプローチが非常にやりにくい。アメリカやドイツなどはもっと固く作られているのかと思ったのですが,ドイツなどはむしろ教育プログラム型がかなりやりやすい改正が行われているのではないかと思われます。
 時間ですので,最後に申し上げますが,私は現在の学部という枠組みはいずれ修正しなければならないのではないかと思っています。特に,社会科学系は有名大学では今でも何とか学生を確保できているかもしれませんが,それ以外の大学では相当厳しい状況です。実際大学のカリキュラムを見ますと,実質的な学位プログラム化,教育プログラム化をやっているところがかなりあると思います。その点で言えば,私は異なるタイプの教育プログラムが並存する形が考えられると思います。例えば,従来型の学問分野を対象とした学部や学科の組織も必要だと思います。あるいは教養型もあり得ると思いますし,今までの専門職だけではなくて,私は流動的専門職と呼んでいますが,非常に少数で構成されるような専門職ができてくる。そういったものが許容される形になることが望ましいのではないでしょうか。
 それぞれについて,教育課程と学修過程,それからその後の学生のその中での学修もリテイリングして,自己改善に結び付くシステムを大学の中と大学の外からエンカレッジする仕組みが必要になってくる。そういう形で対応することが明確に将来の方向が見えない社会にとっては極めて重要なのではないかと思います。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。
 お二人の先生の御発表について,これから御質問を受けたいと思います。基本の部分では非常に似ている話が展開されているという印象があったと思います。御意見もあるかと思いますが,まずは御質問をお受けします。
 先に私から簡単な質問ですが,金子委員の御発表におけるデータで付け加えていただくと非常に有り難いものがあります。一つが学士課程,修士課程,博士課程という観点です。もう一つは,地域と東京で同じ傾向になっているかどうか,という観点です。これらについて,先生は既にまとめられているのでしょうか。
【金子委員】  このデータで問題があるのは,工学部です。今,工学部は半分近くが修士課程に就職しています。修士卒がどのようなところに就職しているかと言われると,たしかに技術系の就職がもっと増えますが,修士卒でも技術系へ就職しない人もかなりの数でいます。ですから,その変化はそんなに大きいものではないと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。今のは私からの質問でした。
 それでは小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  二つあります。1点目は,今,職業を卒業という出口のところだけで捉えられていらっしゃいますが,それで良いのだろうかという話です。私は就業構造基本調査を使って,20代から30代前半の層の大卒の職種分布を調べたことがあります。現在大卒男性の2割はブルーカラーに就いているというデータも出てきています。入り口だけではなくて,キャリアを考えるのであったら,大学教育のインパクトがどこまで続くかということであったら,学校基本調査で捉えられる出口のところからもう少し進んだ,先の就業状況まで視野に入れるべきではないかと思います。そこをどう考えるのか,これが第1点です。
 2点目は,最初のジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の話の中で,むしろメンバーシップ雇用の方が強くなるのではないかというようなニュアンスのことをおっしゃったのですが,それは本当だろうかと疑問を感じています。最近のAIの話もおっしゃっていましたが,インダストリー4.0などそういう中でしきりに言われていることは,一つの企業を超えた知識の大きなインパクトがあって,それに合わせてどのように日本の雇用慣行を修正していくか。ある程度修正しないとそのインパクトを受け止められないのではないかというような議論があります。そのことに対して,先生の意見が真っ向から反対しているように見えたのですが,いかがでしょうか。
【金子委員】  まず1番目ですが,「先」というのは,要するに大学を卒業するときにどうしているかということですか。
【小杉委員】  卒業時点の,22歳のときの就職先だけではなくて,もう少し先までキャリアと捉えるのであれば,どういう仕事に就いているのかということは出口のタイミングだけでは捉えられないのではないかということです。
【金子委員】  それは一般的にそのとおりです。先ほど申し上げたように,少し良くなっていますが,2割弱くらいは大卒でも終身雇用の枠に入っていないと思われます。その中の半分くらいは年収100万円に達していないのではないかと思われています。これはかなり問題です。その人たちがそのままずっと低雇用に留(とど)まっていることもあると思います。
 それから,日本の場合,定職が必ずしも職業状況がよくなることにつながらない,逆の場合が多いのです。その場合,ほかの必ずしもいい職業に就いていないことが出てくる。これも非常に大きな問題であると思います。ただ,取りあえずこの知識との関係で言えば,その問題は余り直接関係ないと思ったので,強調しませんでした。
 それから,ジョブ型雇用の問題です。私が最初に申し上げたいのは,要するにジョブ型雇用は仕事本位で採用している。仕事があるなしでもって辞めたり,次に移る形の雇用が日本でも一つはできるべきだという議論,できるという議論はこれは錯綜(さくそう)して30年ぐらいずっと言っていたわけです。経済学者はずっとそれを言っていて,私が自分で話したいと思った一つは,少なくともこれは結局嘘(うそ)っぱちだったということです。最近少し増えてきたという話はあります。しかし,これは日本の中で非常に強い。
 それはなぜかと言うと,最近スティグリッツという人の「情報時代の社会」という本を読みました。基本的に,今企業が売れているのは企業が持っている情報で売っています。企業の競争力は情報からできているのです。そのときに持っている情報にクリティカルに関わるような人については,簡単に移動させません。非常にオープンにどこでも使えるものに対しては移動させるかもしれません。そういう意味で,ジョブ型もある程度はできるかもしれませんが,それが日本的な異常さで一挙に崩壊するのは間違いであると私は思います。
 ただ,問題はジョブ型かそれ以外かという問題だけではなくて,むしろサービス業の場合にはもう少し異なった,自分から固有の仕事を探すタイプの仕事の仕方が必要になってきて,それがどうやってできてくるのかが問題ではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。御質問だけではなくて,御意見があれば簡潔に述べていただいて,関連して委員のお二方から簡潔にお答えいただきたいと思います。
 それでは,益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  私なりに感じたことを述べさせていただきます。文系であっても理工系同様に,その人の得意専門分野で何を学んできたかは非常に重要なのではないかと思います。80年代,90年代,2000年代,いつの時代でも,企業が求めてきた人材の採用レベルは,企業が置かれている経済環境や競争のレベルによるところが大きかったと思います。
 私は昭和55年から60年まで銀行で新卒採用を担当していました。当時採用した方々が今役員になっています。すなわち,どんな能力や適性があった方が役員になったのかよく分かります。
 少し話を面白くお話しすると,バブルに向かう頃は気合と根性と体力が重要な要素だったかもしれません。バブルが崩壊してからは学業成績もよく見られます。今は「あなたは何が強いのですか」ということを問われるようになっているのではないかと思います。
 私は日本企業と海外企業の勤務経験がありますが,明らかに海外企業の方が専門性について言及されます。それはそもそも「あなたは何をやりたいのですか」という質問が起点です。
 実際,何が最近起こっているのか,非常に分かりやすい例があります。人口減少の中,日本企業が日本のマーケットだけでは食べていけなくなったので,海外にどんどん展開するようになりました。比較的その波が遅れていたのが金融です。最近の金融機関のトップにはどのような方がなっているかというと,海外部門を経験した方や運用・市場部門を経験している方たちです。それ以前は企画畑や人事畑という人たちがエリートコースと言われていました。言い方を変えれば,リベラルアーツ的な方です。気合と根性,体力,プラス社会人になっても更に勤勉だった方々です。
 大手企業だけでなく,中堅企業においても大きな変かがあります。私は本日の日本経済新聞に出ていた記事に注目しました。日本の内需企業が海外販路を求めてM&Aを活発化している,海外ファンドから直接情報を収集する中堅企業が増えてきたという記事があります。従来,中堅企業は大手企業からの情報やアドバイスがなければ,なかなか海外展開を推進することはハードでした。ところが,いよいよ自分たちでもやりだしたということです。ちなみに,この2017年の4-9は前年同期比プラス14%,339件というM&Aが,現実に起こっています。そのための人の手当も進んでいることでしょう。
 企業が人を採るときには将来を必ず予測し,採用計画を立てます。本来なら企業側は,高等教育機関に対して具体的将来像,ビジネスプランをもっときっちり示すことが重要だったかもしれません。ところが,新卒採用では,高等教育機関と企業の関係は「採っていただく」「採らせていただく」というような関係で,より深いビジネスプランや教育についてのコミュニケーションはなかったのではないでしょうか。
 今後は,文系であってもリベラルアーツ系であっても,専門的な教育はより重要であって,更にそこを突き詰めると,文系の大学院ももっとスポットライトを浴びるかもしれませんし,企業は専門性のある文系大学院だからこそ採用したいと思うかもしれません。今後の様々な環境変化を考えると,産業界,経済界,教育界が,将来について,とことん議論する場やその制度化が必要ではないでしょうか。是非,それを行政でバックアップしていただきたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 益戸委員は,いつも産業界の代表のような感じになってしまいますが,実は大変深い示唆に富んだ御意見です。多くの場合,産業界の代表として聞こえてくる意見とは違う論調ではないか,と思って聞かせていただきました。
 では,有信委員。
【有信委員】  私は基本的には今の御意見に賛成です。もともと戦後高度成長期の過程の中で必要とされていた人材と現在の人材が違うのは当たり前です。ただ,高度成長期の成功体験に基づいた慣性力で来ていたために,気がついてみるとあらゆる分野で日本の生産性が後れをとっています。生産性が低いことは基本的に個人が生み出す付加価値が少ないということです。付加価値の源泉は知識やスキルなどであって,今の益戸委員の意見は全くそのとおりです。現実に,吉岡委員の話の中で,選別が既存の枠組みで行われる限り出口がないことを言っておられます。産業サイドは今既存の枠組みを変えつつあって,それに対応していく必要があるのだろうと思います。
 それに対して教育側の問題は,例えば一つ象徴的だと思われるのは,ある企業の新入社員が,研修のときに「研修の答えに至る道筋を教えてくれ」と上司に言って,「そんなものは教えられない」と返された上に,周りの同僚からも馬鹿にされたことがパワハラだと言って,その新入社員の親が企業を訴えた,という事件があります。これは今の教育の在り方を典型的に示しているような気がしてします。
 世の中には解がない問題が当たり前のようにありますが,それに対応するような人材を育てることができていないのではないかという心配が出てきます。基本的にそういう状況を踏まえて,ベースとしての専門的な知識は必要で,そのために制度改革が行われた専門職大学等が必ずしも適切かどうかという議論はあると思いますが一つの方策と思います。あるいは,初等中等教育でも国語教育の見直しがそれぞれの都道府県で行われたり,既に教育側でも進んできてはいます。だから,これがうまくハーモナイズする形にすることが重要です。
 それから,吉岡委員の話の中で「可塑性」という言い方がありました。先ほど例に挙げた訴訟の例は,ある意味では可塑性が全くなくなっているわけです。つまり,可塑性をいかに保つような教育をやるか。それから,社会に出て行く上で基本的な要件は何かをきちんと整備する必要があります。
 ただ,基本的な要件を整備すると,ここの「期待される人間像」にあるように,これらの項目を全部満たすような人間などはっきり言っていないわけです。そういうことを踏まえて,可塑性はそこまで踏み込んで戻って考えて基本的な要件と,それから必要とされる専門性は当然変わっていくのだけれども,その時々に変化に対応して変わり得るような形で専門性を身に付けさせる手立てを考えていくべきだろうと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。吉岡委員のお話,大変面白く聞かせていただきました。
 それで,その中で4ページの中段辺りに未来へのモチベーションを生むことについてのコメントがあります。私はここに非常に興味を持っています。そこに「学生がそれぞれの段階で自分の位置を把握でき,そこから先が見通せることが」と書いてあります。私の意見は,その前提として目的を持って学校を選び,興味のある分野で学ぶことが付いてくるべきではないかと思っております。
 ともすれば,日本の若者たちは何を勉強したいということよりも,「立教大学に入りたい」と入試を受ける例もあるのではないかと思います。これをどのように変えていくのかについて私は答えを持っていません。この学生のモチベーションを上げるためには,興味のある分野で学ぶことを進めていくことが必要ではないかと思っています。
 それから,もう一つだけ時間を短くお話をさせていただきます。全体のトーンとして就職がゴールということが感じられました。これからの大学は,就職がゴールということではなくて,違った目的を持ってやっていかなければいけないのではないかと思います。
 今ニューヨークで働く社会人の33%がフリーランスだと,最近読んだ雑誌の中に書いてありました。これはジョブ型雇用となるのかもしれません。そういうような時代を考えると,企業のために人材を育てていくのではなく,企業とともに学び続けられる人材を作っていくことを考える必要があるのではないかと思っています。
 そのようにしていかないとグローバル人材にもつながっていかないのではないでしょうか。先ほど「立教大学を」と言っていた若者と同様に,「トヨタ自動車に」など特定の企業に就職する,ということから変わっていかない限りグローバル人材も育っていかないと考えております。
【永田部会長】  村田委員,どうぞ。
【村田委員】  私からは2点お話させていただきます。
 一つは質問です。先ほど益戸委員から,生産性の低下やバブルの崩壊後の人の専門職などいろいろな話が出ました。恐らくバブル崩壊後に日本型雇用が崩壊したために大きく変わってきたのだろうと思います。生産性の低下につきましては,サービス産業だけではなくて,製造業も我が国は非常に低いわけです。その辺りは一体何が原因か,本当に考えていかないといけないわけです。例えば一つに,非製造業の割合が増えたためにそこでの生産性が低いことが言われたりもします。あるいは,高等教育への支出が低いことと関係があるのではないか。あるいは,大学院修了生が先進国に比べて極めて少ない比率のために生産性が低いのではないか。様々なことを言われています。その点は非常に重要です。
 特に金子委員に,もしお分かりであればお教えいただきたいのですが,先ほどサービス産業が多様化している,そしてサービス産業の比率が高くなっている。それとAIができたときに更にその点と関係で,どのような仕事がこれから出てくるのか。あるいはそれに対してどのような人材を作り出していくのか。恐らくこれはリベラルアーツ型といいましょうか,むしろ汎用性能力を持った人たちを育成していく必要があるだろうと思うのです。つまり,サービス産業というのは基本的に対人で物を売ったり,ということをしているわけです。そういった能力とAIとの兼ね合いをどう考えていくかということが,極めて重要になってくるのだろうと思います。
 もう一つは,これは益戸委員から話がありましたように,専門教育で言いますと大学院の話が重要になってきます。大学院での専門的な教育,更に職業と結び付く教育をどうしていけばいいのかというところが非常に重要です。専門職大学院も含めて,産業とのマッチング,企業とのマッチングが今の日本ではできていないわけで,特に社会科学系で修士を出ても全く企業は評価をしません。先ほど文系も評価されるようになるかもしれない,という話もありました。しかし,どうすればそうなってくるのか。企業のニーズがあるのかも非常に重要な問題です。実はこのことはリカレント教育をどうしていくのか,ということにも関係しています。汎用性能力の必要な部分と専門的な知識が必要な部分と切り分けながら,AIとの関係も含めて考えていくことが極めて重要であると思います。その点で言うと,柔軟なカリキュラム,あるいはプログラムにしていくことと,レイトスペシャライゼーションのような学位プログラム全体を柔軟な形にしておくことが極めて重要であると思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 金子委員,何かあれば簡潔にお願いします。
【金子委員】  簡潔に言いますと,私はいつも企業から出てくる先生方と議論になるのですが,企業が要求しているものに大学は答えていないとおっしゃいます。企業が要求されるものが本当に大学や学生に見えるように現れているのかについて,私は非常に疑問を持っていて,それについてはこれからまた議論していければと思います。
 ただ,日本の雇用全体から考えて一番大きいのは,今大学進学率が52%になっているのです。かなり大きな理由の一つに高卒の就職が余り大きくなくなったことがあります。それは比較的簡単な,高卒が就いていたサービス業がもうなくなってきている。ある意味では高度なサービス業に転換しなければいけません。このときに村田委員がおっしゃったように,AIが出てきたときに高度のサービス業はどういうところに出てくるのか。そのためにどのような能力が必要になるのか。
 これは非常に大きな問題で,誰か偉い人が分かる問題ではなくて,既にいろいろな大学でいろいろなことを私はやっているのではないかと思います。そういったことをいろいろと見つけてくることも非常に重要なのではないかと考えます。
【永田部会長】  それでは,鈴木雅子委員,どうぞ。
【鈴木(雅)委員】  たくさんの御意見が出ましたが,ほとんど皆さんと一緒です。企業側からの意見をさせていただければと思います。
 先ほど人材という言葉が出ましたが,一般的に企業が採用するときにはテクニカルスキルとヒューマンスキルという二つの観点から見ています。テクニカルスキルは大学で学んできたもので,企業の中でも本当に必要とされている技術や資格が身に付いているかどうかです。これが高ければ高いほど,上の研究職になっていくと思いますがほんの一握りだと思います。
 大半で必要とされているのは,どこのリクルーティング採用ブックを見ても,求める人物像と謳(うた)っているのがヒューマンスキルに近いことです。ですから,企業が本当に求めている人は何かというと,会社の中で協調性を持って仕事ができるか否かです。最近特に,大学の真の教育と,これから企業が大きくなっていくに従って必要とされるテクニカルスキルとがマッチしているかどうかという点について,なかなか情報共有ができていない気がします。
 特に企業の中では今,働き方改革ということで,働くこと自体が大きく変化しようとしています。ただ単に就職したからといって安泰ではなく,今一番必要なのは仕事の中身をいかに効率よく行っていくか。そして,企業の収益をいかに上げていくかという点に注力しています。そういった点では単に勉強ができて,単に入ってきたからすぐに即戦力になるわけではないということが一番大きいと思います。
 もう一つは,グローバル化の点です。グローバル化というと,英語ができて海外に少し行ったことがあればいい,という学生さんも多いです。実際に留学したのは3か月や6か月で,語学もまだできず,そして国のことも分からずに帰ってくる学生さんが10人中8人います。そのような方々も必ず履歴書には「留学」と書いてあります。その期間が大体長くて半年,短くて1か月から3か月,という方が大半です。グローバル化した会社に入っても,学生が本当についていけるのか,そういった点で,実際評価されている学生はとても少ないと思います。
 これからこの将来構想を考えていくときに,学生のどこのレベルに合わせて教育を考えていくのかがとても重要だと思います。現状では,学生の上の方のレベルで考えているように見受けられます。実際の学生はそうではなくて,とてもまばらになっていると思います。そのまばらになっているものをいかに中堅に固めて,底上げして上に持っていき,企業の中,社会の中で貢献できる人材を作ることがとても重要であると,企業側からは強く感じています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 ここで,先ほどの益戸委員からリベラルアーツと教養という視点から御発言がありましたが,両者の違いについて一言申し上げます。この二つの違いは非常に重要でして,リベラルアーツは専門の集団であり,ゼネラルエデュケーションとは随分意味が違いますので,念のため付け加えさせていただきます。
 では,吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  今私は基本的に,企業系の委員の方のお話に賛成をしています。発表のところでリベラルアーツということを言ったので,そのように聞こえたかもしれません。私は専門性というのはむしろ重要で,今回書きましたがリベラルアーツというのは専門性を通じて発揮されていきます。これは日比谷副部会長が強調されていることです。立教大学の教育理念は「専門性に立つ教養人の育成」でございます。
 それから,これは村田委員がおっしゃったことですが,文系の修士はこれから重要です。大学側の問題としては,研究者を育てるようなシステムのままずっときている,これは非常に大きい問題です。ただ,例えば経済や法学部など実践的に外に出て行く人間が多いところであっても,企業での給料が全然上がらない,全然評価してくれない,単に2年遅れたぐらいで扱われる,これは非常に大きいだろうと思います。
 それから,モチベーションの話です。中等教育との連携を申し上げたのはそのことです。大学に入る前にどの大学に行きたいかということとは別に,小さいときからこういうことをやってみたいということを身に着けるような教育は高等学校で進めることができます。これは面白いということができるようにすることです。これは大学側がもう少し関わっていくべきことだと思います。立教大学では,「立教大学に入れればよかった」という,入りたいだけの学生が,入った途端に何がやりたいかを見出(いだ)せるような教育をしたいと思います。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。このようなテーマでの意見交換は活発に行われるということがよく分かりました。確かに,非常に重要なテーマであると思います。
 私も指針を少しだけ申し上げます。私が学生を育てているときに,Ph.D.とは,例えば,必要があれば明日からでも流行(はや)るラーメン屋ができるということと同じである。それができなければ,私の教育が不十分であったということだ,と学生によく言っていました。つまり,学士レベル以上の幅広いリベラルアーツを持っていて,一方で,世界で初めてのことをやらない限りPh.D.にはなれないということです。修士,学士についてもレベルは違いますが同じことが言えると思います。例えば,こうしたイメージを持っていただければいいと思っています。
 この議論の続きは実は先ほどお約束しましたが,既に事務方にも指示してあります。今日出てきたような議論の中で,また有識者の方に講演を頂く予定にしています。また改めて議論したいと思います。
 それでは,いったんこのセクションはこれで終わりとさせていただき,次回以降改めてとさせていただきます。

(2)地域別・分野別の将来像データについて,資料4-1~資料5に基づき事務局から説明があり,その後,意見交換が行われた。
【永田部会長】  続いては,先ほど申し上げました地域別,分野別の将来データについてです。前回の小林委員の御発表,それからその前にお示ししていたデータを更にエリア別に拡張させた形で再集計して,若干の推計値を入れたデータを用意しました。それでは事務局から御説明いただきます。
【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料4-1を御覧ください。高等教育の地域別・分野別の基礎データで,1枚めくっていただきますと地域という目次があります。北海道,東北,北関東,東京圏,甲信越,北陸等々という形で地域別に分けて集計をしております。
 具体的には,6ページの北関東のページで御説明いたします。
 まず,地図がありまして,その左上の円グラフが北関東全体の国公私別の定員の割合です。緑が国立大学,青が公立大学,黄色が私立大学でございます。その一つ右の円グラフが,この北関東地区の国立大学にどのような分野が配置されているかということで,下に凡例があります。赤色が人文科学,オレンジ色が社会科学,紺色が理学,その下の紫色が工学,緑色が農学,青色が保健,黄色が教育,茶色がその他となっております。その国立大学の下に私立大学がありまして,北関東の場合だと社会科学,保健の定員が割と多いことが分かります。そして,その左に公立大学のグラフがありまして,社会科学,工学,保健といった分野が用意されています。これはエリアによって多少違いがございます。
 そして,この分野の分け方ですが,学校基本調査の二次利用申請をしていまして,そこで大分類とされているもので分けております。実は,その上の地図に都道府県別の議論の際に示させていただいた配置図があり,ここも色分けされていますが,このときは二次利用申請までしていなかったので,文部科学省内で分類したものになっております。そのため,ここの地図にあるものと今回の分類は少しずれが生じております。後々いろいろなデータを整理する中で改めて整理させていただきたいと思います。
 今回,学校基本調査の分類を使いますと,前回と異なる点として「その他」が非常に多くなる傾向にございます。法文学部や理工学部など,複数分野にまたがるということでその他になっております。
 そして,右下の棒グラフですが,上の棒グラフが分野別進学者数です。北関東エリアから全国のどこかの人文科学に進学している学生数の平成28年度の数字と平成45年度の推計でございます。その下にある棒グラフが,この北関東地区の大学に入学した入学者数でございます。どういうことが見えるかと言いますと,国公私別にまた色分けがされております。比較的この北関東では工学や農学については,私立大学が余りなくて国立大学のシェアが大きいことが分かります。そして,人文科学と社会科学のところを御覧いただきますと,上の進学者数については非常に多くの方が北関東から全国の人文社会に行っておりますが,この北関東地域で用意されている入学定員,入学者数というのは,下の棒グラフにありますように非常に小さいことになっております。上の東北地区についても,概(おおむ)ねそれに近い傾向でございます。下の棒グラフの入学者数の工学のところを見ていただきますと,東北地区では私立大学の工学部も多数用意されています。これはエリアによって私立大学が多いところ,少ないところがございます。
 その他地域で,次のページをめくっていただきますと,東京圏がございます。東京圏につきましては下の棒グラフ御覧いただきますと,圧倒的に私立大学が多いです。もう一つの特徴としては,相対的に見ると人文科学や社会科学が多く,工学が少なく見えます。
 その下の甲信越地区の一番右下の棒グラフ御覧いただきますと,全般的に比較的国公立大学が多く,社会科学と保健分野において私立大学が,それから公立大学についても人文科学,社会科学,あるいはその他のエリアで比較的シェアが大きいのが甲信越の特徴でございます。
 次のページの上に北陸がございます。これも東北等と近いですが,右下の棒グラフを御覧いただきますと,人文科学の入学者数がほぼ定員と同じですが,非常に少ない状況になっております。一方で,工学については,国立大学,私立大学それぞれに,しっかりと入学定員が用意されていることが見てとれます。
 その下,東海地区は都市部ですが,東海地区であっても人文科学と社会科学,上の進学者数と下の入学者数で比べていただきますと,進学者数の方が多いことから,流出の方が多いということでございます。
 次に四国の右下の分野別入学者数の棒グラフを見ていただきますと,私立大学は少ないということで,定員としては比較的国公立大学がシェアを持っている状況でございます。
 その下,九州につきましても,理学と農学については,多くのところでかなり国立大学のシェアが大きいのですが,教育については私立大学が多いところと少ないところと,エリアによって分かれる配置状況でございます。
 資料4-1については以上でございます。続いて資料4-2を御覧いただきたいと思います。
 1ページめくっていただきまして,北海道があります。一番上が進学者数,北海道から全国の各分野に進学した方の数です。青い部分が入学定員,緑が実際入学した者の数です。注意点として,人文科学や理学の入学定員を見ていただきますと,一番上の国立大学が0となっているのは,北海道大学が1年次入学するときに総合教育部として一つの学部に入学しますので,統計上はこのようになっています。2年生から各学部に分かれていくという,同様のことが,東京大学と東京工業大学でも行われていますが,東京圏では全体の規模が大きいため,余り目立っていません。
 そして,この表から何が分かるかということですが,下の東北の表を見ていただきますと,東北から3,657名が人文科学で全国に行っております。一方で,入学定員については1,605人が用意されています。実際には1,736人が入学していますので,進学者収容力は43.9%,入学定員については埋まっていて定員充足率は108%ですが,今のままの進学率だと将来は80.9%になります。縦に見るとこういうことが分かります。社会科学についても8,477名が全国に進学しますが,東北での入学定員は4,635名でございます。
 続いて,横に見た場合どうかと言いますと,東北地区の進学者数の構成比というパーセントの部分を御覧ください。人文10.4%,社会科学24.1%等々とあります。この進学者数の構成比は全国どのエリアでも大きく変わりません。一方で,その下の入学定員を横に見ていただきますと,人文科学の6.3%というのは全国の13.6%と比べると少なく,社会科学の18.3%は全国の30%と比べると少ないことが分かります。一方で,工学の20.2%というのは全国の11.2%と比べると多いのは,人文社会が少ない分,こちらが多く見えるという側面もあろうかと思います。
 このようにこの表を見ていきますと,例えば東京圏の場合には,当然のことながら進学者数と入学定員を比べますと,入学定員の方が多い,つまり流入しているということでございます。そして,入学定員の工学部のシェアを見ていただきますと8.6%となっておりまして,全国の11.2%と比べると少ないことから,人文社会が多い分,工学の機会が少ないという見方もあろうかと思います。
 それから,7ページをめくっていいただきますと北陸地区がございます。北陸の入学定員を見ていただきますと,人文科学3.1%というのは非常に少ない定員であります。一方で,工学については21.7%なので,ある程度しっかり用意されていると見られます。
 以上が数字の見方です。続いて,資料5を御覧いただきたいと思います。
 こういったことから,各地域において高等教育の将来像をそれぞれ検討していく際に,どういう見方ができるかの論点例を挙げています。例えば,一つ目,学生の進学機会の確保という観点から見ますと,地域ごとに必要とされる分野をどう考えるか。すべての分野において一定規模の定員が地域で用意されるべきなのか。あるいは,流出超過の大きな分野について,地域で確保する定員がどの程度なのかという観点がございます。二つ目に,地域における研究拠点の形成の観点から,全ての分野において地域ごとに一定規模の研究者が配置されるように,ある程度の定員を確保しておくべきなのかという供給側からの観点もあろうかと思います。
 そして,三つ目は上と重なりますが,地方と都市部でそれぞれどう考えるのか。地方においては,人文科学,社会科学の分野の定員が極めて少ない状況についてどう考えるか。また,都市部においては,工学分野の定員の割合が相対的に低い状況についてどう考えるのか。また,分野・規模の在り方などを検討する際に,地域の産業や自然環境などの特性との関係についてどう考えるのか。その他にも様々な観点があろうかと思います。分野そのものについても,工学分野の中身が実際どう変わっていくのか。そもそもその他という従来の伝統的な分け方による分野をまたぐものが増えていることを前提に分野をどう考えているか。様々な観点があろうかと思いますので,どういう見方を議論の材料にしていけばいいかということについて,御議論いただければと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 以前御覧いただいたデータも一部含みながら,全体として見てみるとこのようになっています。当然のことながら,こうした状況であれば流入・流出は当たり前のことで,東京の学生が増えるはずである,というのが最初の感想です。また,分野別に見たときに大きな特徴がなく平均的な配置になっているのが教育や農学,医療関係です。ですから,全体に規模の大小はありますが,どの地域に行っても大体同じ割合で担保されています。分野ごとの違いは,人文社会と工学の割合で説明いただきましたが,よくお分かりになったと思います。
 そうすると,工学分野の学部がない地域でどんなに頑張って産業を興そうとしても,その地域の人は来なくて,当然違う地域からの人が流入してくることになります。それはそれで良いことも当然ありますが,研究の観点から申し上げますと,地元で新しいテクノロジーを創出していくということが非常に難しいことが分かると思います。
 このようなことを資料5でまとめていますが,どこかを話すとどこかが偏るというなかなか難しい議論です。このような現状を踏まえて,様々な地域における今後の高等教育の分野と規模について,どのように考えていけば良いのかを御議論いただきたいと思っています。
 いかがでしょうか。では,吉岡委員からお願いします。
【吉岡委員】  23区の問題のときに申し上げたのですが,男女別の資料はあるかどうかということについて,可能かどうかお伺いします。流動している多くの部分が女性の社会進出と結び付いているところがあって,どんどんと女子学生が増えているのが一般傾向です。特に新しい学部や学科を作ると女性が非常に集まります。古いところもそれに引っ張られていて,そのような傾向もあるため,男女別の変化が分かればと思います。
【堀野高等教育政策室長】  ある程度学校基本調査において,男女別で集計している事項もあります。分野別のところまで男女別でとれるかについては確認させていただきます。
【永田部会長】  それでは,両角委員,どうぞ。
【両角委員】  今御紹介いただいたデータで,教育や保健系のところはどの地域も進学者と入学定員の差が余りないということです。要するに,この辺の分野は地元に就職先があるから,地元で進学した方が就職に有利だから,という状況が反映されているのではないかと思います。
 逆に人文社会系の場合ですと,地方で進学したとしてそれに応えるような企業があるのか,基本的にはそういう問題ではないかという気がしています。そのような分野に行ったとしても,ではどういったところが就職先としてあるのかというと,公務員になるなどかなり限られた需要しかないというのが現状です。本当にそれは変えられないのかということを併せて考えていく必要があります。
 また,最初に出された論点で,学生の進学先の確保という観点で,分野と規模をどう考えるかです。現実的な面を考えると,本当はこれに大学のランクも併せて考慮すべきなのではないかと思います。分野があるから何でもいいわけではなく,地元の国立大学に行ければ入るけれども,そうでない場合に,目指すランクより低い私立大学しか地元になかったら行くかというと,そこには進学せずに,他の地域に出るということが起きています。学生から見ると,分野と規模だけでなく,学力に見合った進学先がきちんとそろっていないからいろいろな動きをするということを,もう一つ併せて議論すべきかと思いました。
【永田部会長】  ありがとうございます。なかなかシビアな御意見ですね。有信委員,どうぞ。
【有信委員】  全体をざっと見て工学部に関して言うと,東京と近畿だけは違いますが,全国的に均一に十何%となっています。これは恐らく高度経済成長の前段階で,工学部の大幅拡充をやって,地方の国立大学で工学部がないところにも工学部を作りました。そのために恐らくそれぞれの各地域で均一に定員が確保された結果が今に引き続いているので,この状況が本当にいいのかどうかという観点での議論も必要だろうと思います。工学部そのものが,工学系人材を育成しなければいけないという話があると同時に,工学系人材の総量規模としてどれぐらいの人材が必要なのかということを併せて議論する必要がある気がします。
【永田部会長】  ありがとうございます。千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  一言だけ申し上げます。何回も申し上げておりますが,短期大学,そして専門学校,高等専門学校の地元貢献型の高等教育機関もこの検討の中に入れていただいて将来構想を考えていただきたい,この一言だけでございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。では,前野委員,どうぞ。
【前野委員】  今の資料4-1のところで,18歳人口と分野別の進学者数,分野別の入学者数と書いてあります。これは18歳人口で無次元化することは問題がありますか。もし可能であれば,18歳人口で無次元化するとそれぞれの地方に住んでいる若い方がどれくらいの機会を持って高等教育機関に進学しているか,入学しているかが分かると思うのです。絶対数ではなくて無次元化は可能かどうか,あるいは適当かどうかという質問です。
【永田部会長】  一つずつ計算していけば出せますが,それはデータ処理の問題かと思います。
 古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  私も一言だけ申し上げます。今,有信委員がおっしゃった工学部については,私も全く同じ感想を持って説明を聞いていました。たしかに1県1工学部という,かなり整備されたものが今も続いていることがあるので,結果的に進学する学生が多いという実態はあるかと思います。
 東京圏については,今東京23区の定員は大きな話題になっていますが,このデータを見ますと理工系については意外にそれほど幅広い選択肢があるわけではないという認識を改めて持ちました。
 申し上げたいのは,たしかに興味深い非常に貴重なデータだとは思います。他県に分野ごとに進学している人がこれくらいいるから,この県のこの分野でセーブが必要だというのは,なかなか簡単には言えない,因果関係については慎重に見るべきという印象を持ちました。
【永田部会長】  これは因果関係というか,現状こうであるという事実です。その因果関係がどうなっているかについては,先ほどのような御意見があると思います。たしかに学部を増やす,設置するとそこに人が行きます。その現状が今のデータです。ですからこれを見て将来どうするかを決めなければいけないわけです。
【古沢委員】  誤解を生んだかもしれません。実際のニーズとどこまで関連するかというのは,当然ですが様々な要素があって,総合的に見ていかなければいけないのではないかということです。
【永田部会長】  いろいろな要素がありますが,数字の上では,大学に行きたい人がいて,流出している分と県内に残る分という形で出ているわけです。どこかでは大学へ入学しているわけです。そういう数字がこの資料に載っています。これだけの人が高等教育に行きたいという状況で,それが地域では絶対もう抱えられないという現状や分野がないということが分かるわけです。
 ここで考えないといけないのは,そのような構造の下で我々は今後も高等教育を展開していくのかどうかということです。つまり,我々としては日本の高等教育の構造として何をどう目指すのか,ということを話し合わなければなりません。ですから,その論点例に書いていただいていると思います。例えば,地域で一定の分野が全部確保されるかどうかについて考えなければいけません。また,人文社会や工学の分野の割合が違うということが,地域社会に大きな影響を与えるかもしれないのだとすれば,今後どうするのかを我々は考えなければなりません。それは非常に難しいことだとは思います。
 我々の議論の方向性としては,これから将来何十年かにわたる高等教育の全体の構造について,感想ではなくて,こうしなければならないと言う必要があります。今そのような議論をしないと,いつまでも同じような課題を残したまま物事は推移していくことになります。
 先ほど申し上げたように,教育や農学や医療関係はほぼ分析していただいたとおりで,地元への定着率がよくてこういう結果になっているように見えます。一方で,日本全体で見たときに,一箇所に留(とど)まらないでこれだけ流入・流出があるのは大変結構なことだと私は思います。ただし,学びたくても学ぶことができない可能性が多々ある,という状況も考慮すべきだと思います。
 委員の皆さんに今言わなければいけないことは,どうやって今後,高等教育全体の構造を考えるのか,ということです。これらのデータを皆で眺めながら,いろいろな意見が出ることは構わないわけですが,そのような観点ではいかがでしょうか。
 それでは,麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  分野別データの中で今,人文社会や工学のことが議論されています。意外と見ていて多いのはその他です。その他の内訳はそれ以外の分野と分かるのですが,その他の傾向を分析する必要があるかと思います。その他の数字には,人文社会や工学,理学等以外のものなのか,複合分野が入っているのでしょうか。その中身をよく知った上で,今後の議論につなげていった方がいいのではないかと思います。中身がもし分かれば教えてください。
【永田部会長】  次に,佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  視点が違うかもしれませんが,最近私立大学が公立大学化する例が多く出ています。例えば島根県や高知県は私立大学がなくなりました。そうすると,公立大学の果たす役割についても議論しても良いのではないかと感じています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 市場原理の下で大学が動いている現状を考えると,なくなったり新たにできたりするのは当然ですが,それだけではうまくいかないと思われます。「(高等)教育は百年の計」と言っているのですから,そういう形で本当に国公私立が日本の中にうまく分散して配置できるかどうかは,非常に重要だと思います。つまり,国立大学,公立大学,私立大学の役割,それぞれの良いところをうまく生かしていく,ということです。途中で「儲(もう)からないのでやめました」ということは許されないので,我々としてはそうならないよう方策を必死に考える責務がある,ということだと思います。
 そのほか御意見いかがですか。では,安部委員,どうぞ。
【安部委員】  このまとめ方は,地方は近畿や中国,九州など地域でまとめていただいています。この高等教育人材を地域の自治体等がどう考えていくかについて,普通は教育基本計画などは県別になっております。例えば,道州制などが言われておりますが,もっと高等教育を考える上で,広い地域全体から高等教育人材の養成を考えていくかについて議論する必要がある。どうしても都道府県別になっているところが問題になりますが,もっと高等教育というのは地域を広げて考える必要があるのではないかと,このデータを見ていてそのように感じました。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 これは容易ではない問題を含んでおります。それでは,小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  安部委員のおっしゃることはとてもよく分かります。地域のことを地域が主導で考えなくてどうするのだと思っています。それは恐らくある程度,実際の高等教育というのは,もう少し道州制で言われる範囲で人が動いていることが多いためです。
 以前御発表いただいた長野県の轟部長もおっしゃっていましたが,県として高等教育政策を持っているところはそんなにあるのかと思って,この論点例の4番目の点ですけれども,その地域の産業や自然環境やある意味で労働力,需要側の構造を決めるような部分に対して,地域の人たち,あるいは地域の行政がどういう方向性を持っているのかでかなり変わってくるところがあると思います。そのようなことをこれにどう加えるのかということはとても難しいのです。産業構造といっても一次産業,二次産業といっても仕様がない気がします。
 データとして付け加えるかどうかは分からないですが,地域行政の産業政策や地域産業構造など,そうした要素が将来を考えるときには本当に非常に大きな役割を果たすだろうと思います。むしろ,地域の高等教育政策をきちんと立てろというメッセージが必要ではないかと思いました。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 そういうことも非常に大切ですが,今ここではそういうものを根本的に変えていくために,我々としては強く答申していかなければいけないわけです。
 先ほどリベラルアーツによる可塑性の話が出ていましたが,それを担保しなければいけません。もちろん大きな正規分布があるとしても,人材像としてそれを担保する必要があると先ほど議論しました。ですから,単に収容力がどれだけではなくて,我々はうまくバランスを取って配置しないと机上の空論で終わってしまいます。要するに,工学分野しかない大学しかその地域になかったら,工学しか勉強できないわけです。
 ですから,この分野別で考えていただきたいのは,将来の人材を育てていくために一体どうしたらいいのか。現状のままで課題がないのかどうか,という問題を内包しています。
 それでは益戸委員,どうぞ。
【益戸委員】  正に部会長がおっしゃったことを私は今言おうと思っておりました。だぶってしまって申し訳ないです。人数の調整だけではなくて,質の調整をよく考えないといけません。
 総じて,県庁にお勤めの方は地元の国立大学御出身の方が多いように思います。そうすると,地元の国立大学の格差によって各県の行政レベルが変わっていってしまうという現実があると思います。さらに,中央官庁から県庁に御出向になってお帰りになった方のお話を聞くと,霞ヶ関と県庁の格差はすごいものがあったという御感想がほぼ100%です。そうすると,どんなに教育の機会を均等にしても,地域ごとの質を何とかしないと,そこに生まれ育った子供にとってはかわいそうだと思います。
 ですから,単純に地方と首都圏が連携すればいいのではないかというような話ではないと思います。そこまで突っ込んでいいかどうか分かりませんが,県ごとの高等教育について,私は余り好きではないですが,偏差値がどうなっているのかということは踏み込んではいけないのかと思いました。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 黒田委員,どうぞ。
【黒田委員】  ありがとうございます。今日は本当に重要な御発表をしていただきました。私は吉岡委員の発表は大賛成です。大学が変わる原点がここにあるだろうと私は思っております。
 それで,今の話ですが,公立大学が国立大学よりも増えている状態です。そのような状態で公立のことを議論せずに済ますことは,不可能に近くなってきたと思います。ですから,公立大学が本当に高等教育の中でどういう立場を持っているのか。この辺のことをしっかりと議論しておかないといけないと思います。国立大学は国立としての役割があります。公立大学は公立の役割があるだろうと思います。そのことをしっかりとやっていただくことが必要だと思います。
 本学は工学ですが,工学系は大体全国満遍なく配置されているように思います。この工学に進学する18歳人口の比率で言いますと,ずっと変わっていません。15%から20%の範囲内しか工学には進学しないことになっています。
 ですから,これをいかにして増やしていくか。大体中学生辺りから工学へ進みたいという人たちの気持ちが減ってきています。高等学校へ入りますと,大きく落ちてしまうのです。それは実験や実習をやらなくなってきていることにあります。理論だけで覚えさせるという教育がなされてきたためにそういうことになったのだろうと思います。その辺をどう変えていくか。
 それから,もう一つはこの工学系は特に社会とのつながりが大きいです。社会人の受入れを今後どのように組み込んでいくかということが,工学分野では非常に重要な課題だろうと思っています。その辺も併せて御検討いただければと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 石田委員,どうぞ。
【石田委員】  先ほどの吉岡委員のお話のときに言うべきだったと思うのですが,これはお願いになります。吉岡委員がおっしゃった専門性にたった教養人と最後おまとめになられました。まさに私も大賛成です。どこの大学でもそれをやろうとしつつ,なかなか難しいところがあるのだと思います。それは先ほど金子委員もおっしゃった流動性ある専門職ともつながると思います。これは理屈では分かるのですが,立教大学の例も含め,どうしていったらいいかを今後議論していけたらいいというお願いでございます。
【永田部会長】  それでは,村田委員,どうぞ。
【村田委員】  今日のデータで,人文社会系や工学系の話があります。極端な考え方としてはそれぞれの地方別に大学への入学希望者と,それから収容定員を各分野で一致させるという考え方は,当然一つの例としては出てくるかと思います。一つのベンチマークとして言っているわけですが,それが本当にいいのかということは当然考えなければなりません。
 そうしますと,これから5年ぐらいの間を考えた場合には,分野はそれほど変わらないと思います。しかし,職業との関係で人材需要がどうなっていくかという点では,今の需要とは変わってくるわけです。その中で,今の需要に対して定員をどうするかという議論は恐らく難しいだろうと思っています。
 もう一つは,それを抜きにしても,それぞれの地域で,それぞれ希望する学びができる学部があって,ちょうど需要と供給が一致した場合に,その地域の中の大学に行って,その大学を卒業して完結する,ということが本当にいいのかということです。全国からあるところに学生が集まってきて,エリアを越えていろいろな経験をし,いろいろな交流をしていくことが必要になってくる。正に,そこをどう考えるのかという根本の哲学をどうするかということをまず知っておかないと,この問題には恐らく解がないだろうと思います。まずはそこを議論することが必要ではないかと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 今の村田委員が最後におっしゃったことも重要です。自分が居住する地域の中で好きな分野を学ぶことができれば本当はいいのですが,大学のシステムそのものがそうは簡単になっていません。それから,先ほど石田委員から御発言があった理想的な人材育成については,大規模大学であればいろいろとできるかもしれませんが,小規模大学であればできないこともあるわけです。
 そういう意味合いで,我々は,もちろん何校にするかといったところまで踏み込むことはできませんが,どのような構造を目指して進めていけば少しでも理想に近づけるか,という解を求めていく努力が必要だと思っています。
 今の関連の中で,事務局で回答できる部分があれば,どうぞ。
【堀野高等教育政策室長】  先ほど麻生委員から御質問いただきましたその他の部分です。資料4-1の目次の次のページに凡例のようなものがあります。資料の左下の部分に,文部科学省「学校基本統計」における「学科系統分類表」(大分類)のその他について,教養学,コミュニケーション学等々と例があります。人文社会学という比較的伝統的なものもありますが,ここの例示はほんの一部であります。学位の議論でありましたように,とても多彩な名前のものがその他には含まれております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 佐藤委員,どうぞ。
【佐藤委員】  今の事務局の説明や,先ほど麻生委員からもその他についての御質問がありましたが,今後の議論の上で,将来構想として人文科学,社会科学,理学,工学,農学,保健,教育,その他という分野の考え方を再考しても良いのではないかと思います。
 というのは,例えば保健であれば,看護も,たしかリハビリテーションや理学療法のようなものも両方ともそこに分類されていて,審査上は二つに分野が分かれていたりします。こういう分野について,もう1度考えていく。日比谷副部会長が学長をされているICU(国際基督教大学)は人文科学,社会科学,理学の専門教育を深くされていますが,恐らくその他になっていると思います。そのような意味では,この分野の考え方について審査基準も含めていろいろ考える時期に来ていると思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 この中央教育審議会大学分科会将来構想部会の下に,制度・教育改革ワーキンググループがあります。そこでも,積極的な意見交換がなされていると思いますので,議論を進めていただきたいと思います。
 資料4-2を御覧いただくと,平成45年は進学者数も入学者数も全ての地域でマイナスになるという推計であり,これももう一つの事実です。これを考慮せずに議論することはできません。
 それから本日,産業界も優秀な人材が欲しいという意見がいくつか出されました。優秀な人材がどのレベルかは分かりませんが,高等教育を受けたことでこれだけ伸びた,これだけ優秀になった,という人材を皆さんは求めているわけです。
 そのような中で,先ほど益戸委員から御意見がありましたが,何かしら優秀さを測る物差しは必要です。当然ながら,学士課程を出ただけの学生が製薬会社の研究職はできません。当然ながらそれなりのトレーニングを積んでこなければいけないのです。そういう観点もここには残っています。本日は学士課程の話に関して地域との関係にとどまりますが,大学院になるとグローバル社会との関係での議論になるわけです。ですから,この赤字で示された,特に大きくマイナスになっている部分を皆さんに見ておいていただきたいと思います。

(3)平成30年度に開設しようとする大学又は短期大学の収容定員増及び平成31年度に開設しようとする大学又は短期大学の設置の認可の申請に対する審査に関し,大学,大学院,短期大学及び高等専門学校の設置等に係る認可の基準の特例を定める件について,資料6に基づき事務局から説明があった。
【永田部会長】  最後に,東京23区の大学定員の抑制に関わる暫定的な対応について,ごく簡単に事務局から御説明いただきたいと思います。これは,本日は議論の時間は取らず,説明のみにさせていただきます。
【蝦名高等教育企画課長】  本件につきましては,8月の本部会でもパブリックコメントを実施することについて報告をさせていただきました。それでは,資料6を御覧いただければと思います。
 平成30年度,31年度に大学の収容定員の増あるいは大学の新設,学部,学科の新設を行うものについて,東京23区についてはそれに対する規制を加えるという内容でございます。パブリックコメントを実施いたしました結果を,資料の後ろ3枚に整理をしております。後ろから2枚目を御覧いただければと思います。多数の御意見を頂きまして,賛成という意見もあれば,反対である意見もございました。
 また,賛否もさることながら,地方大学で学びたいと若者が考えるようにするためにも地方大学の振興が必要であるといった御意見や,そもそも地方に仕事がないことが問題の根幹ではないかといった御意見も頂きました。これらについてはこの表に整理しておりますように,内閣官房における有識者会議で,本年末に向けて引き続き検討を行うこととしております。
 また,大学の国際競争力を低下させることになるのではないかといった御懸念や,社会人の学び直しのニーズが高まっている中で規制が適当なのかという御意見も頂戴しております。この点につきましては,当初予定しておりました改正内容を少し修正をするような形で,これらの御意見にお応えしたいということでございます。
 お手元の資料の2ページ目を御覧いただければと思います。今回パブリックコメントに付しました案が一番左側の案でございます。平成32年度以降について,どういった形でこの問題に対応していくかについては,現在,内閣官房の有識者会議で検討を行っております。それまでの間の平成30年,31年の申請分につきまして,当初のパブリックコメントに付しておりました案では,この抑制内容・例外事項に記しておりますように,既に計画が動いていて必要な答申を行う機関決定を行っているようなケースや,専門学校がその定員を活用して専門職大学を設置する場合,また,医学部の地域枠については例外とする,ということを,三つの規制の対象となる申請について同じ規制をかけようということでございました。
 一方,例えば先ほど御意見にございました留学生の取扱いや社会人の学び直しといった辺りをどのような取扱いとするかにつきましては,現在内閣官房の有識者会議で今年度中に結論を出すべく検討が行われております。ここにA,B,Cと振りましたもののうち,もう10月に申請時期が来るものについてはこの検討は間に合いませんが,来年の3月以降に申請時期を迎えます平成31年度の学部等の設置や収容定員の増につきましては,この有識者会議の検討を踏まえた対応を行うことができるのではないかということです。
 このA,B,CのうちAとBについては今回の措置の対象とすることとし,Cについては今後の有識者会議の検討も踏まえて,対応を別途行う形で再整理を行います。今回このAとBの取扱いについて定める告示を行うとした次第でございます。
 また,告示の形式につきましても,従来,既存の大学設置認可基準という告示に改正を加える非常に分かりづらい改正内容になっておりました。このAとBの2点に絞って,新しい告示を制定することで対応を行うこととしたものでございます。
 今回の措置につきましての御報告は,以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。このテーマについては,またいずれ議論させていただくことがあるかもしれません。
 それでは,本日は以上といたします。本日もお忙しい中お集まりいただきまして,ありがとうございました。これからますます議論が活発になっていくと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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-- 登録:平成29年12月 --