将来構想部会(第9期~)(第5回) 議事録

1.日時

平成29年9月20日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,村田治の各委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,黒田壽二,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)伊藤文部科学審議官,常盤生涯学習政策局長,中川総括審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)轟寛逸長野県県民文化部こども・若者担当部長,柴田幸一松本大学・松本大学松商短期大学部事務局長,受田浩之高知大学地域連携推進センター長,兼雄明利北九州市産業経済局企業支援・産学連携部長,吉江修早稲田大学理工学術院大学院情報生産システム研究科研究科長兼情報生産システム研究センター所長

5.議事録

(1)高等教育機関が育成する人材について,長野県,松本大学,高知大学,北九州市,早稲田大学からそれぞれ資料1から5に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。
【永田部会長】  おはようございます。第5回の将来構想部会でございます。前回は,大学分科会と本部会の合同会議という形で,地域における質の高い高等教育機会の確保に焦点を当て,連携・統合の可能性を議論するための様々な背景について議論をいたしました。その議論の中で,更に詰めるべき観点があるという認識であったと思いますので,今回は地方自治体と地域の大学の関係について具体的な例を御報告いただき,我々の議論を深めていきたいと考えております。
 本日は,5名の先生方にお越しいただいております。まず,長野県の轟こども・若者担当部長と松本大学の柴田事務局長に御発表いただきます。轟様が途中退席されるとのことですので,一旦そこで御質問等を受けたいと思います。その後,高知大学の受田地域連携推進センター長,北九州市の兼尾企業支援・産学連携部長,そして最後に,早稲田大学の吉江情報生産システム研究科長より御発表いただきます。おおむね,お一方10分ずつで御発表いただきたいと考えておりまして,議論も含めて1時間半程度を考えております。その後,小林委員から,県・地域を越えた広いエリアや国公私別の観点からの進学状況について,高等教育の将来像を考えるに当たり有益なデータをおまとめいただいていますので,これについて御説明いただき,議論したいと考えております。
 それでは,資料の確認を事務局からお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】  配付資料については議事次第のとおりでございます。加えまして机上資料が4点ございます。まず,早稲田大学の関連のパンフレットが2部ございます。また,A4横の「地方創生に関する教育機関への支援について」という,千葉委員からの配付資料が1部ございます。それから,全体の配付資料の下に「人生100年時代構想会議」と書いた資料をお配りしております。9月11日に,総理を議長,文部科学大臣も副議長として参加して議論が開始されており,その第1回の会議の配付資料でございます。特にその中で,リンダ・グラットン英国ロンドンビジネススクール教授のライフ・シフトという考え方が今回の会議の一つの柱にもなっております。その資料を添付しておりますので,後ほど御覧いただければと思います。以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは早速ですけれども,御発表をお願いしたいと思います。最初は,長野県から,轟こども・若者担当部長にお越しいただいております。それでは,轟部長,よろしくお願いいたします。
【轟長野県こども・若者担当部長】  おはようございます。長野県のこども・若者担当部長の轟寛逸でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 お手元に資料1-1という形で,本県の資料をお配りいただいておりますけれども,10分という時間でございますので,パワーポイントで作らせていただきました資料を御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。ほかの資料は,少し詳細なデータを載せさせていただいておりますので,適宜併せて御覧いただきたいと思います。スクリーンの前の先生方には,大変スクリーンが見づらいのですが,一応スクリーンも動かしてまいりますので,お手元の資料を御覧いただきながらお聞きいただければと思います。
 まず長野県内の大学・短期大学の状況でございます。詳しくは資料の表を御覧いただきたいと思いますけれども,現在9大学21学部ございまして,入学定員にいたしますと3,428人ですから,大都市圏の大規模大学の1校分程度しかないという形でございます。加えまして,来年の4月から長野県立大学が加わりまして10大学23学部になる予定になっております。また,9短期大学で19学科ございます。
 次のスライドでございます。長野県立大学でございますけれども,グローバルマネジメント学部とそれから健康発達学部,2学部3学科,定員240人ということで予定しております。ここでは,下の方に3点特徴を挙げさせていただいております。一つ目は1年次が全寮制になります。それから二つ目に,海外プログラムが義務付けられておりまして,2年次は全学生が海外で短期研修をするということになります。三つ目に,ディスカッションによる教育の推進ということも力を入れていきたいと思っておりまして,全体としてリベラルアーツを重視した大学になっていくと考えております。
 次に,長野県の支援の体制でございますけれども,実は長野県が高等教育振興に本格的に取り組み始めてから,まだ歴史が浅く,専門の担当部署を設置いたしましたのは平成26年4月でございます。県民文化部私学・高等教育課という課を設置させていただきました。これが初めての担当部署ということになりまして,私がその初代の課長をやらせていただきましたけれども,この課の設置を待っていたかのように,長野県内では公立化ですとか新学部設置等の動きが次々出てまいりました。私も課長をやっておりましたので,こんなにたくさん出てくるのかということでびっくりした経過がございます。
 次のスライドでございますけれども,本県の高等教育の課題を三つほどまとめさせていただいております。一つ目は,県外流出率ということでございまして,今年の数字を見ますと83.9%ということで,全国で6番目に高い数字になっております。二つ目は,その裏腹でありますけれども,収容力が全国最低水準ということでございまして,17%で全国45位でございます。昨年は47位でございましたから,2位だけ上がっておりますが,まだ最低水準でございます。三つ目に,私立の高等教育機関に関しては定員割れの状況がございまして,おかげさまで私立の四年制大学に関しては,近年の取組もあって全体とすれば定員を超えているわけでありますけれども,私立短期大学,私立専門学校については85%,55.1%ということで,かなり定員割れがあるような状況になっております。
 それから次のスライドでございますけれども,本県では,高等教育振興を進めるために,高等教育振興基本方針というものを策定させていただきました。右側にございますように,社会の変化への対応ということで,知識基盤社会への移行と長野県の競争力の確保,それから人口減少社会への対応ということに着目し,信州創生のためには高等教育が不可欠であるという位置付けの下で,この基本方針を策定し,取り組んでいるところでございます。
 次のスライドでございますけれども,その基本的な方策として四つほど盛り込んでおります。一つ目は高等教育の魅力向上ということでございますけれども,例えば学部・学科の再編による教育の向上ですとか,既存の県内大学にない学部や大学院等の設置の支援を県としても行わせていただくということでございますし,先ほどお話をいたしました新たに長野県立大学の設置をさせていただきます。それから,二つ目として,大学間連携ということで,県内大学の相互連携,それから県外大学との共同研究や単位互換といったものを促進していこうと思っております。それから三つ目として産学官連携ですが,信州産学官ひとづくりコンソーシアムを2016年に設置いたしまして,人材が県内に定着するような取組を進めております。それから四つ目といたしまして,高校生等への県内の高等教育機関の魅力発信もさせていただいているところでございます。
 次のスライドございますが,当然長野県も18歳人口がどんどん減っております。グラフを付けてございまして,全国的にそうですけれども,現在踊り場状態というところで,再び平成33年ぐらいから減少していくということは長野県も同様でございます。
 そうした中で,なぜ収容力をあえて長野県は拡大するのかというところでございます。その次のスライドにありますように,むしろ先ほどの長野県の課題,それからこういった特性を逆手に取って,長野県は収容力を伸ばそうという考え方を取っております。ここに三つの伸びしろと書いてございます。まず一つ目に進学率でございますけれども,まだ全国平均より低い状況になっておりますので,今後更に上昇すると見込んでおります。それから二つ目といたしまして,先ほど申し上げましたように県外流出率が高いわけですので,その学生の一部が県内にとどまれば県内大学への進学者は増加するであろうと考えております。それから,少し古いデータになりますけれども,2010年に県内の高校生にアンケートを採りました。そうすると県内に進学したいという高校生が25%以上いたにもかかわらず,現状16%ですので,まだまだ県内に学ぶ機会があれば県内の高校生は県内に進学してくれるだろうと考えているところでございます。こうした伸びしろもございますので,一層収容力拡大を図っていきたいと考えております。
 それから支援のための機関として,昨年の4月に信州高等教育支援センターを設置いたしました。スライドにございますように,県内の各大学がそれぞれ直面する課題は一様ではございませんので,違った課題に対して異なる支援方策が必要になってまいります。そこで,これらに個別に対応するための機関として,信州高等教育支援センターを設置した,ということでございます。職員は,私学・高等教育課の職員が兼務しておりますほか,信州産学官ひとづくりコンソーシアムの事務局の職員がこのセンターの職員として仕事をしております。
 平成28年度の取組といたしまして,一つは大学改革・学部設置等の支援ということで,長野大学の公立大学法人化を一緒に考えさせていただきました。それから後ほど柴田事務局長から詳しいお話があると思いますけれども,松本大学教育学部の設置に当たりまして,松本市と一緒に費用の一部の補助をさせていただくといったような支援をいたしております。また,ここには記載がございませんけれども,お聞き及びのように,ほかにも長野県内では諏訪東京理科大学が公立化の計画を持っておりますし,長野市内の私立大学の看護学部設置の動きもあるということで,非常に様々な動きがございます。それを個別に支援させていただいているということでございます。
 それから次のページでございますけれども,大学・地域連携事業ということで,私立の大学・短期大学が行う地域課題解決の取組に対しまして,1事業400万円を上限に10分の10の補助をさせていただいております。それから長野県の高等教育機関の魅力発信もさせていただいております。さらに,インターンシップのマッチングということでございますけれども,大企業については既にインターンシップを個別にやってらっしゃいましたので,特に受入れが難しい,今まで接点がなかった中小企業を中心に,「信州産学官ひとづくりコンソーシアム」が受入れ希望企業を募って,参加希望学生とのマッチングをさせていただいております。加えて,産業労働部で別途行っている県外大学生等のU・Iターンのためのインターンシップの旅費・宿泊費の補助は,1人3万円を限度に旅費等を負担させていただいて,昨年度は255人の学生に御活用いただいております。それから海外インターンシップの参加費の費用の補助も,上限20万円で行わせていただいております。奨学金の給付については,長野県では国に先駆けて返還不要の給付型奨学金の運用をさせていただいておりまして,一つ目の黒ぽつにあります県内大学・短大等へ進学する県内学生への入学時及び修学支援の奨学金に加えまして,児童養護施設の入所者等に対する月額5万円の奨学金を行わせていただいております。平成27年から,県内大学・短大等へ進学する県内学生への入学時の奨学金と児童養護施設入所者等への奨学金を行っておりまして,加えて,昨年度からは県内大学・短大等へ進学する県内学生への就学支援として,年額で文系が15万,理系が25万という支援を行っているという状況でございます。
 最後のページでございますけれども,現在,次期の長野県総合5か年計画を策定しておりまして,この中でも県内大学の各地域において担う役割を明確にしていく予定でございます。
 スライドは以上でございますけれども,配布資料の1-2という5枚ほどつづってある資料がございます。その中の4ページを御覧いただきたいと思います。長野県内の大学・短期大学の現況について細かな数字を入れさせていただいておりまして,三つ表がありますけれども,その真ん中に県内出身者の志願・入学状況という表がございます。一番右側に入学者の県内割合,中段に大学の計とありまして,それを御覧いただくと平成28年度が44.9%,平成29年度が40%ということですから,40%から45%ぐらいが県内出身者で占められているわけですが,それが就職するときにどうなるかということがその下の表でございます。3番の卒業生の就職状況について,右端の方を御覧いただきたいと思います。中段に大学計がありますが,29年度の数字では卒業者のうちの就職者の県内就職割合は55.9%です。
 そういたしますと,2の表と比べていただきますと10ポイントぐらい上がるという形になります。これは,当然のことながら約4年のタイムラグがありますから,単純には比較できませんけれども,4年補正いたしましても,大体過去の状況を見ますと10ポイントぐらい上がるという形になりますので,長野県にとって,人材定着の観点から県内の高等教育機関に進学していただくということが大変重要だと考えております。
 ただ,今,私どもが悩んでおりますのは,この卒業者の就職状況の表で言う55.9という数字が,このところの好景気でだんだん下がってきているということであります。ここでも大都市圏との競争がありまして,平成25年は58.8%でありましたから,約3ポイント下がっております。大学間の競争においても,就職における人材獲得の競争においても,地方は大都市圏との競争にさらされているという状況であります。
 そうした中で,長野県は一生懸命知恵を絞って,高等教育振興に取り組もうと考えております。是非国におかれても御検討の上,御支援いただければ有り難いと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします。以上でございます。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。轟部長には長野県の事情を御紹介いただきました。
 続きまして,松本大学の柴田事務局長から,大学固有のお話をお聞かせいただきたいと思います。それでは柴田様,よろしくお願いします。
【柴田松本大学事務局長】  松本大学の柴田と申します。どうぞよろしくお願いします。
 お手元の資料を御覧いただきたいと思います。テーマは「地方を支える小規模大学の役割と評価のために」としました。ここで大事なことは二つです。役割と評価,この二つがポイントだと私は思っています。もちろん評価の中には自己評価それから外部評価があるわけですが,そういう中でやはり信頼と実績を生んで好循環につなげることが一つのパターンだと思っております。
 次のスライドに参ります。松本大学はどんな大学か。実は松本大学のことを「地域必需品大学」とみんなが呼んでくれます。私たちもそう呼ぶようになりました。その背景に少し触れさせていただきます。一つ目は丸1にあるように,大学と松本市のコンセプトの共有です。これは平成14年,大学開設時に,共通の概念を持とうということでスタートしました。それは,「地域の若者を地域で育て,地域に戻す」。今はこのことは普通になりました。しかし,私たちは15年前にこれを芯に置きました。イコール若者の地元定着,地域の労働力の提供といったところに帰結するという格好になっております。
 では,どんな学科を創ったらいいか。これも大学としては非常に大事なところだと私は思っています。本学は松本市の政策やスローガンと共通しているという点があるんです。まず,松本市は歴史的商都。これにより総合経営学科を創りました。それから観光都市が観光ホスピタリティ学科に,それから健康寿命延伸都市が健康栄養学科やスポーツ健康学科に対応しています。そして学都。これは,この4月に認可を頂いてスタートしておりますけれども,学問の都市ということで学校教育学科。こういった構成になっております。定員は1学科80人ですので,非常に小さな大学であります。
 では,丸1を実践するためにどういう教育をしたらいいかということが,私たちの課題だったわけです。方法として,地域資源を教育に活用するという独自の地域連携教育,後で少し触れさせていただきますが,そういった展開をしております。大ざっぱに言って,開講科目は300ぐらいあると思います。そのうち教員がシラバスの中で地域をテーマにこういうことをやるぞと,明言している科目が70くらいあります。もちろんそれ以外の科目でも,地域を意識しているという構成になっています。それから松本市の活性化。これはやはり松本市が私たちの主なフィールドですので,松本市民の住民活動が活発な風土と大学の教育力。こういったものがあいまって,最終的には学生の地域理解,地域愛といったところに通じるという格好になっております。
 次のスライドへ参ります。「教育を核とした地域連携」と書いているものです。松本大学のキーワードは「まちづくり,健康づくり,人づくり」。真ん中に学生と教職員。教職協働で地域連携教育を実践する。これがいつも私たちの合い言葉です。図を描けといえば,全員がこの図をすぐに描くことができます。そこが私たちの特徴的なところかもしれません。みんなが同じように,これを描きます。
 教職員の共通認識として,やはり大学が教育の場であるということは大前提です。そして,地域活動にどのように教育的な意義を見出(いだ)すか。ここに一つの肝があります。それともう一つ,最終的に学生をどのように育てるか。常にこういう意識で全員が同じベクトルで持っているというのが松本大学と御理解ください。ただ,これは私の私見ですが,今,政策的な様々なことが大学に持ち込まれているように思えます。ただし,大学は地域活性化の一つの歯車ではなく,その使命は教育を通じて若者をいかに育てるか,やはりこれに尽きると私たちは思っております。
 続いて,実践例を少し紹介します。次のスライドですけれども,これは総合経営学科,観光ホスピタリティ学科の実践例です。図を説明しますと時間が掛かりますので簡単に言いますと,卒業生が本学の地域総合研究センターというところに研究員として所属しています。松本市の地域づくりセンターが市内に35か所あります。これは昔で言う支所や出張所というところです。それが今,地域づくりセンターとなっています。そこにこの研究員が3年間,各センターに入る格好で,「地域づくりインターンシップ戦略」を松本市と連携しながら進めています。
 研究生たちは,週1回は地域づくりイノベーター講座ということで,大学で先生と一緒に研究します。ですから,大学院の研究生のようなイメージを持っていただくと重なるのではないかと思います。これは3年間,松本市の意向と大学の意向を受けて,そのような人材を実際に現場を経験しながら地域で作っていきます。
 一番下の囲みの中に委託料1,582万と書いてありますが,これは初年度に5名の卒業生がこのインターンシップに入ったときの予算です。今は,11名が活動していますが,1回目の人たちが終わろうとしている中で,来年確実に一つの起業がある動きです。こういった成果も見えているということです。
 次のスライドへ参ります。これは健康栄養学科の取組です。皆さん,御存じかと思うのですが,30・10運動。これは松本市から発足したものです。下の飲食店版というのがありますけれども,乾杯後の30分間はしっかり食べて,終わりの10分間もしっかり食べることで,食品ロスをなくそうというものです。注目いただきたいのは,上の家庭版というところです。これは健康栄養学科の教育が生きた結果です。毎月30日は冷蔵庫クリーンアップデー,10日はもったいないクッキングデーとなっています。次のスライドを御覧いただきたいんですけれども,もったいないクッキングレシピの開発,「いただきます!!」プロジェクトと言いますが,これは学生のプロジェクトです。こういったプロジェクトを組んで,サンクスレシピというものを開発したんですね。これによって,市と連携して各戸に配ったり,あるいはホームページに掲載した結果,これが実践されて,家庭の生ごみが26%減少したというところに松本大学の教育がつながっております。今,県外からも本学,松本市に多くの問合せが来ております。
 次のページです。これはスポーツ健康学科の取組で,健康づくり講座というものです。これは学生たちが,地域住民を対象に,自治体と連携協定の下に自分たちで企画・運営して,しかも授業の一環として位置付けている講座です。こういう中で,学生は非常に育ちます。地域のおじいちゃん,おばあちゃんと話す機会が非常に少ない学生たちが物すごく生き生きとして,物すごくコミュニケーション能力を身に付けます。その結果,卒業生が,健康運動指導士という資格の専門職として雇用していただいているというところにつながっています。これは,カリキュラムの中で取れる資格なんですね。この結果どうなったか少しリサーチした結果が,下の緑の囲みの中です。松本市の実践者の医療費2割削減。これは,これを実践している人だけを対象に統計を取ったところ,医療費が2割削減されているというような結果が出ております。
 次のスライドへ参ります。プロサッカーチームの松本山雅の名前は,皆さん御存じかと思うのですが,これも授業の一環として組み入れている一つの表れです。授業の中では,C級審判を取れるようなプログラムを組んでおります。この写真は,天皇杯の準優勝のときです。それから右側は,健康栄養学科がこのスタジアムで売るお弁当を業者と開発しており,今20種類以上開発しています。相当な収益になっています。このような成果が出ています。
 次に,ここから学生の声なんですけれども,「COC学生アンケート」から見えてくるものがあります。これは,4年生のアンケートです。最初の質問は,授業科目の中で,地域に関する科目を受けたことがあるか。ブルーとオレンジを足すと88%です。これは,本学からすれば普通のことです。それから,その知識・理解は深まりましたか,という設問について,「はい」が83%です。注目していただきたいのは次なんですね。そういったことによって,長野県の企業や自治体に就職したいきっかけになったかという設問ですが,これについては,そう思う,ややそう思うというものを足しますと,60%になっています。具体的にどんなことを言っているかというと,赤文字にしたところを御覧ください。これを見ますと「県外に出ることしか考えていなかったが,県内も視野に入れたい」「地域の活性化につながる事業をしたい」「地域のために何ができるか考えたい」」「地元で就職し,知識を役立たせたい」とあります。ストレートに学生たちがこういう自分の言葉で書けるようになっているというのが,大きな成果だと思っております。
 次のスライドへ参ります。これは,では実際の就職の状況はどうであったかというのを,過去2年間統計を取ったものです。大ざっぱに見ますと,グラフでは減っているように見えますが,これは割合で示していますので,実数は増えています。1学年350から400人足らずの小さな大学ですので,パーセントで表しておりますが,ブルーが長野県出身で長野県に就職した人,茶色が県外出身者で長野県に就職した人です。御覧のとおり,かなりの割合で長野県に就職している。これは,やはり地域を愛して,地域で仕事をするというのが根付いているという一つの証左だと思っております。
 最後に,これは小さな地方の大学から,小さな提言とさせていただいたんですが,地方の大学というのはそれなりの役割もあるので,それは一様ではないと思います。それは先ほど申しましたように,どういう若者をどういうふうに教育して育てるかということに尽きると思うのです。そういう中で比較されるのは,やはり,都会と地方という地理的な比較なんですね。そういう意味で,是非地方の大学と首都圏,あるいは海外の大学の交流の場を創設していただけたらという提案です。例えば青少年自然の家の都市版をイメージしてもらえば分かりやすいと思います。私の思い付きで,「学生若者未来創造国際センター」とありますが,自治体あるいは国が支援して,遊休施設の経費を転換するといった発想はないだろうか。企業の抱える寮や廃業の旅館・ホテルの転換支援。こういったものから期待される効果としては,資源の有効活用,学生の交流,若者の成長,若者の一定期間の定住,大学間の単位交換ということを挙げておきました。
 もう一つは,リカレント教育の学費です。正規学生の奨学金や学資については今いろいろと動いていますので,少しこの提案は角度を変えてみました。少子高齢化の中では,やはりリカレント教育がまた脚光を浴びてくるのではないかと思うんですね。そういう意味では,本気で学ぶ社会人,このような人の就学支援をする仕組み作り。これは,小回りが利く地方大学にとっても一つの責務になるだろうと思っております。例えば,学校教育法の第105条に履修プログラム制度があります。こういったものが,やはり埋もれています。大学関係者ですぐにこれが出てくる人は,私が知っている人でもそんなにはいません。せっかく法律を作っても埋もれているように思います。そういったものをきちんと位置付けて,ただ厚生労働省の職業訓練給付金のようなものではなく,しっかり教育としてやるということが私は大事だと思っています。
 そういった意味で,期待される効果としては,健康寿命延伸,それから医療費の削減,結果的には地域の活性化,新たな労働力の創出。厚生労働省の関係者の方もいらっしゃるかもしれませんが,女性労働者のM字カーブの解消・改善。こういったことを掛け声だけではなくて,大学の教育としてきちんと位置付けて,先ほど申し上げたようにただの歯車ではなくて,しっかり役割を果たしていくということを私たちは標榜(ひょうぼう)しております。以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,轟部長が途中退席されますので,長野県の取組に対して御質問がありましたら,先にお受けしたいと思います。柴田事務局長は最後までいらっしゃると思うので,後ほど御質問いただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは,前野委員,どうぞ。
【前野委員】  本当にありがとうございました。とてもすばらしい,担当課の設置以降の発展がよく分かりました。
 1点,質問させてください。私,木更津高等専門学校に所属する者でございます。長野には長野高等専門学校という高等教育の担当機関がございます。たしか科研費の代表者件数でも,恐らく25件くらいで,理工系では信州大学に次いでの数だと記憶しているのですが,全くその点についての記述がないので,もしできましたら,そこも入れていただければと思います。以上です。
【永田部会長】  轟部長,いかがでしょう。
【轟長野県こども・若者担当部長】  今,長野工業高等専門学校の御質問を頂きましたが,本日資料を持っておりませんので,データについてお答えできないんですが,高等専門学校も含めまして,長野県内の高等教育機関の役割全体を,先ほどお話ししたような新しい総合5か年計画の中でもより明確にしたいと思っております。高等専門学校も当然視野に入れて,特に長野市,北信地域を中心にした役割というものの中で,より明確なものを我々も考えていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【永田部会長】  日比谷副部会長,どうぞ。
【日比谷副部会長】  御説明ありがとうございました。
 今の柴田事務局長のお話の最後にリカレント教育の話が出てきたんですが,こども・若者担当部長の肩書の方に伺うことでないと思うんですが,この部会でも,人生で大学に3回行く時代に入っている。30歳,60歳でも行くという話が以前ありました。長野県は大変お元気な高齢者の方も多いと認識しておりますが,長野県として,長いスパンで社会人が大学に戻ってくる,あるいは楽しみのために学ぶということについては,何か政策を取ってらっしゃるんでしょうか。
【轟長野県こども・若者担当部長】  問題意識としては非常に強いものを持っておりまして,次の総合5か年計画の中でも「学習県」というのが非常に重要な柱になると思います。その学習の中には,社会人の学びということも入ってまいります。今までは,各大学としての受入れ体制もありますので,社会人のリカレント教育については具体的な施策というものを打っておりませんけれども,今後,教育委員会とも連携しながら,生涯学習の中でどういうふうに位置付けていくのかというところから,より鮮明にしながら取り組んでいきたいと思っております。
【永田部会長】  福田委員,どうぞ。
【福田委員】  ありがとうございます。
 今,お聞きしまして,地方創生の切り口を含めてかと思いますけれども,長野県に1点お願いしたいのは,高等教育の中で専門学校が数字としても全然出てきていないということでございます。恐らく今お示しいただいた県内の就職状況の中で,大学55.9%,短期大学88%。短期大学は平均的に各都道府県,県内就職率はこれぐらいかと思いますけれども,大学はいい方ではないかと思います。ただ,専門学校の場合は恐らく60%から70%が地元企業へ就職するというのが一般的な数字ですので,その辺も含めて是非お考えを頂ければと考えてございます。よろしくお願いします。
【永田部会長】  今の福田委員からの御発言について,本日の資料には数字がありませんので,正確にお答えすることが難しいと思います。したがいまして,ここでは御意見としてお受けしたということにしたいと思います。続いて,小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  ありがとうございます。
 時間がないので端的にお伺いします。県の産業政策や雇用政策をやってらっしゃる部署と本部署との具体的な連携などは,どのように働いていらっしゃいますか。
【轟長野県こども・若者担当部長】  産業労働部や農政部,林務部等との連携という形になりますけれども,先ほどのインターンシップでございますとか,県外からのU・Iターンについては,先ほど申し上げたような形で連携が入ってまいります。それから次期の5か年計画につきましても,各県内地域の産業分野において大学とどう連携していくのか,それに当たっては,産業労働部等の施策と絡めながら大学にどのように関わっていただけるのかを一緒に関係部局と考えていきたいと思っております。それに限らず大学とのいろいろな連携協定を結んでおりますが,それに当たり産業関連部局はたくさんの連携項目を持っておりまして,その連携協定の事務局は私学・高等教育課が持っておりますので,常に連携をさせていただいているということで考えております。
【永田部会長】  村田委員,どうぞ。
【村田委員】  ありがとうございました。
 2点ございます。1点は,先ほどの資料1-2のところで御説明いただきました入学者の県内割合が44.9%。そのうち,また就職が55.9%。トータルで大体県内からの学生の25%ぐらいが県内に就職するとなると,先ほどの松本大学のお話とも含めて今の小杉委員の御発言と関係するんですが,結局就職をしたいと思っても県内にそういった産業や労働に対するニーズがなければ意味はないと思うので,そのあたりの施策はどうされているのかというのが一つ目の御質問です。
 それからもう一つの質問は,長野大学を公立化されまして,次に長野県立大学の設立がある。県の財政として,これだけの奨学金を出されたりして財政的な逼迫(ひっぱく)度,あるいは財政赤字にならないのかと若干心配したりもするんですが,そのあたりはいかがなのか教えていただければと思います。
【轟長野県こども・若者担当部長】  まず当然県内に就職先がなければ,なかなか定着しないということでございますので,これは永遠の課題ではありますけれども,産業振興については取り組みながらやっています。ただ現状として,求人はあってもなかなかそこに学生が就職してくれないということも,こういう状況下ではありますので,やはりインターンシップの取組の中で,中小企業であっても大変有力な企業があるんだということを学生に知ってもらって,定着してもらうといった取組を我々とすれば進めたいと思っております。
 それから公立大学の関係でありますけれども,長野大学は上田市立の大学ですが,直接的な経常的な経費に対する県の支援は行いません。それから上田市も,基本的には地方交付税の範囲内でしか交付金を出さないということになっておりますので,基本的には財政的に圧迫することはありません。それから県立大学についても,同じ構造の中で運営をしていくという形になっておりますので,財政的には大丈夫だろうと。その中でいかにいい大学を作っていくのかというところに意を用いていきたいなと思っております。
【永田部会長】  それでは安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。
 一つだけ質問したいのですけれども,基本的方策の中の方策2の中に,大学間連携がありますが,これについては,松本大学で単独にすばらしい取組をなさっています。そして新たに平成30年4月に長野県立大学を開学予定ですが,長野県内全体の大学の連携について,県としてどのように考えるかを教えてください。
【轟長野県こども・若者担当部長】  高等教育支援センターの取組として,この連携を是非進めたいなと思っております。ただ,現状におきましては,個々の大学による大学を超えての連携というのは,まだ進んでいないというのが現状だと認識しております。,例えば松本地域であれば松本大学のほかにも信州大学の本部がありますし,松本歯科大学もございます。それから短期大学も幾つかあります。そういった地域ごとに幾つかの大学があるわけでありますので,今後,繰り返しになりますけれども,新たな5か年計画の中でも地域ごとにテーマを設定させていただいて,それについて取り組んでいただけるような方策を,まず糸口として考えていきたいと考えております。それをはじめとして今後県としても,大学間の連携が進むようにできるだけコーディネート役を果たさせていただきながら進めていきたいと思っております。
【永田部会長】  それでは,益戸委員,お願いいたします。
【益戸委員】  行政と教育機関とのチームワークについてはすばらしいと思ったのですが,少し分からなかったのが企業との関係です。県内の経済同友会,商工会議所や中小企業経済同友会との連携はどのようにされていますか。大学の定員を増やすとか学科を変えていくというのは,教育界,行政側の設備投資です。その設備投資を利用して結果を出すのは,受け取る側(がわ)の企業です。大学定員増加や学科変更は,県内経済の発展や県民所得の向上など,何かプラスの結果につなげる事が重要ですよね。産学連携などの話合いの過程で,行政,教育機関側から経済界,産業界に対しての不満といったものがあれば教えていただきたいと思います。
【轟長野県こども・若者担当部長】  産業界との連携につきましては,先ほどの説明にございました人づくりコンソーシアムが,産学官,産業界も加わっていただいて結成している組織でありますし,産学官連携を以前から進めさせていただいております。そうした中で,当然のことながら,産業界とすれば,ベースとしてやはり県内にいい人材,県内企業はいい人材を欲しいというニーズがありますので,そうした観点で県内大学に対する県内の企業の期待というのは非常に大きいと我々は認識しております。そうした中で,従前に引き続いて産学官連携の取組につきまして,私どもとしても産業関連部局と一緒になって取り組ませていただきたいと思っているところでございます。
【永田部会長】  時間が参りましたのでここまでにさせていただきます。益戸委員の御発言を言い換えますと,長野県はどの水準のどの分野の大学が欲しいのか,それを明確にしていただく必要があるのではないか,ということです。要するに,これだけいろいろな分野があって,県内に点在しているけれども,県内高校生の自県大学への収容率が思わしくありません。この状況で,大学を増やすことをお考えであるならば,産業界の要請なども含めて,長野県の振興のためにどの水準のどの分野の人材が欲しいのか,を明確にしていただくことが,何よりも大前提であると思います。是非とも,これからいろいろとお考えになることだと思いますので,またお話を聞く機会があればと思います。どうも本日はありがとうございました。
【轟長野県こども・若者担当部長】  ありがとうございました。
【永田部会長】  それでは,続きまして,高知大学の受田地域連携推進センター長からお話をお伺いします。それでは,受田センター長,よろしくお願いいたします。
【受田高知大学地域連携推進センター長】  皆さん,おはようございます。高知大学で地域連携担当の副学長をしております受田浩之と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは,お手元のハンドアウトで説明を申し上げます。
 私,この12年間にわたって地域連携担当の副学長を務めておりまして,恐らく日本で一番長く務めているのではないかと。この長いというところを信頼関係の醸成といかに結び付けていくかが肝かと思っております。
 2ページ目をめくっていただきますと,本学の概要と高知県の概要というものがございます。高知大学については,御覧いただいている構成になっているんですけれども,後ほど申し上げますが,平成27年度に地域協働学部を立ち上げております。総定員とそれから教職員の数を足しますと約7,300名です。これは,下を御覧いただくと,高知県の人口のほぼ1%に相当します。我々は1%で県を変えられると思って,地方創生に取り組んでいるという状況です。高知県の現状は年間約1%ずつ人口減少しております。高齢化,少子化,これは言うまでもございません。今,県としては一丁目一番地の政策・施策として産業振興計画を平成20年度に立ち上げまして,この9年間その推進を知事のリーダーシップの下で進めております。私が策定のときから現在に至るまでフォローアップ委員会の委員長をずっと務めておりまして,昨日も知事と県を挙げてこの協議をやってまいりました。
 3ページ目を御覧ください。ここがコンセプトですけれども,地方創生に対する大学の役割として,四つの象限のうちの第1象限に教員,学生,地域が高い専門性と強い当事者意識を持って協働する姿がある。これを理想としていくべきだと思っております。ところが,教員は一般的に第2象限にありまして,専門性はあるんだけれども当事者意識が希薄である。それから学生は両方とも弱い。地域はというと,当事者意識は本来強いはずなんですけれども,それが脆弱化(ぜいじゃくか)している。これをそれぞれ第1象限にどうやって持っていくかという具体的なツールとして,例えば文部科学省の施策でありますCOCの事業,あるいはCOC+の事業,また,学部教育,あるいは社会人の専門人材の育成等を通じて,これを第1象限に持っていくということをやっております。
 それぞれを少しずつ御説明申し上げます。4ページを御覧ください。これがCOCの事業です。簡単に言いますと,高知県のマップがありますが,大学は中央に鎮座していて東西に長い高知県の中で目配りできていない。すなわち敷居が高く存在が遠いのです。これを解消するために,県の産業振興計画にのっとった産業振興監を配置している4か所の地域振興本部に,大学のサテライトオフィスを作りまして,大学の教員を常駐させております。ここにサテライトの教室も作り,生涯学習あるいは産業人材の育成の教室を常時開設するということを今,手掛けているところでございます。このコーディネーターをユニバーシティーブロックコーディネーターと言い,UBCと言っております。今年度でこのCOCの事業が終わるんですが,この4名をパーマネントで雇用いたします。この規模を更に拡大していきたいというのが,今,大学の思いでございますし,地域の願いでもございます。
 5ページを御覧ください。地域において当事者意識を醸成するために,出前公開講座の充実を進めております。これは各大学一生懸命やっておられるのと同じだと思うんですけれども,右下に円グラフがございまして,対象を御覧いただきますと3分の2が50代以上,いわゆるアクティブシニアでございます。このアクティブシニアを中心とした大学連携型のCCRCの構築というものも今コンセプトとして考えております。私自身,政府の「生涯活躍のまち」構想を取りまとめた日本版CCRC構想有識者会議の委員を務めていた関係がございまして,大学連携型のCCRCの構築というのを今,県を挙げて議論しているところでございます。
 6ページですが,COC+の事業もこれに関連して推進しております。左側が学生メニューで,ローカル資格ですけれども地方創生推進士というのを資格認定しております。ここでは企業とのマッチングを図っていくために,例えば社長インターンシップであるとか,様々な事例を参考にさせていただきながら,地域に触れ合うということを進めております。右側が地域の社会人に対するメニューです。後ほど御紹介申し上げます食品産業の人材育成のプログラムであったり観光の中核人材の育成というものを,プログラム化して進めていこうとしております。なお,先ほど質問もございましたような県内大学については,一枚岩になって進めておりますし,右下を御覧いただくと経済団体とのコミットメントも十分取られているという状況でございます。
 次のページに行っていただいて,ここからが社会人教育システムでございます。これも,10年前に文部科学省の科学技術振興調整費をスタートにいたしまして,地域の食品産業の人材育成の学校として,大学の中に土佐FBC,フードビジネスクリエーターの人材の育成の学校を作りました。5年たって,これはサーティフィケートも出しておりますし,また食の6次産業化プロデューサーの育成プログラムにもなっております。8ページを御覧いただきますと,年間約3,600万の予算を県内から集めまして,自立をしております。これ全部県内です。来年からは新しいバージョンへ展開をしていくということで,今,準備をしておりますが,年間予算は5,000万に膨らませようと思って,今,死に物狂いで努力をしているところでございます。
 次の9ページでは,FBCの成果ということで,アウトプットとアウトカムを御覧いただけます。経済波及効果も単年度で5億円を超えていまして,今年度の単年度目標商品開発に携わった関係で9億4,000万というミッションステートメントも挙げております。県内で425人の育成を進めております。かなり定着し,34市町村ほぼ全域から受講生を集めているという形でございます。
 次のページを御覧いただきまして,学生の当事者意識と専門性を高めていくということで平成27年度から地域協働学部を立ち上げまして,今,学年進行で3年生がおります。60名に対して24名で指導しておりますけれども,県内全域をフィールドにしながら3年間で600時間の演習をやっておりまして,非常にみんな大変ではあるんですけれども,我々も土日構わず現地に出ているという状況でございます。成果としては,既にベンチャー創業という学生が出始めております。必ず地域の雰囲気を変えると思います。
 最後に,こういったところの評価が11ページ,それから12ページ,13ページにございますので御覧いただきたいと思うんですけれども,我々が非常にうれしいのは,例えば12ページあるCOCの中間評価になるんですけれども,全国でもそれほど数がないS評価を頂いたことと,優れている点として国立大学法人と地方公共団体の連携を進める場合の模範と高く評価していただいたことが一つ励みになっております。13ページに初代の地方創生担当大臣,また2代目の山本幸三前地方創生担当大臣にも高知にお越しいただいておりまして,いろいろな意味で関心を持って御覧いただいております。
 最後に14ページを御覧いただきますと,今後,地方創生の加速に向けて我々が考えていること,また,御支援いただきたいことを少しだけ箇条書にしております。やはり教員の研究力を上げないといけない。ここが肝だと思います。地域課題の解決ソリューションを求めていく方向で,基礎から応用へというところで,しっかり研究力を磨いていくことが肝になると思っております。この財政的な基盤をいかにしっかりと構築していくかという点,加えて学生の,特に地域に対する当事者意識を高めていくプログラムの充実に関して,経費も含めて問題になっております。最後,地域に対しては,先ほど申し上げました「生涯活躍のまち」構想,あるいは中核人材の育成プログラムの充実というところを,もっともっとニーズに対応できるような形でマーケティング視点を持って進めてまいりたいと思っているところでございます。
 以上でございます。
【永田部会長】  分かりやすい御説明,どうもありがとうございました。
 それでは,続きまして北九州市の兼尾企業支援・産学連携部長から御説明をお願いいたします。
【兼尾北九州市企業支援・産学連携部長】  北九州市産業経済局で,企業支援と産学連携を担当しております兼尾と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 私からは,北九州市における産学連携の取組について説明をさせていただきます。
 お手元の資料をめくっていただきまして,まず3ページを御覧ください。まず北九州市について紹介をさせていただきます。北九州市は1963年,五つの市が合併して誕生しました,九州初の政令指定都市でございます。北九州を中心として円を描きますと,東京,それから中国の大連,上海が同じ1,000キロの位置になる,非常にアジアに近い町でございます。現在の人口は95万人でございます。
 5ページを御覧ください。北九州市の産業都市としての発展でございます。1901年に官営の八幡製鉄所ができました。これがものづくりのまちの始まりでございます。この後,窯業,化学,それから電気機械など素材型の多くの工場が立地しまして,ものづくりのまちとして発展してまいりました。現在は自動車や産業用ロボット,それから環境産業なども発展が期待されております。
 次の6ページを御覧ください。北九州市の人口増減の推移でございます。直近の国勢調査でも北九州市は人口減少日本一ということで報道されまして,ピーク時は昭和54年に106万人の人口がおりました。今は95万人ということで,10万人以上のマイナスになっております。このグラフは,棒グラフで表しているのが人口増減,折れ線グラフは赤が自然増減,緑が社会増減でございまして,私ども市が注目しているのはこの社会増減の部分でございます。近年は二,三千人のマイナスとなっておりますが,昭和60年から平成初めを御覧いただきますと,1年間で1万人以上減った年もございます。ちょうどこの時代に鉄鋼不況で鉄冷えがございまして,八幡製鉄所の機能が全国各地に集約されて,人口が流出した時期でございます。
 そういった状況も受けまして,北九州市として産学連携をどう考えていくかということで,次に産学連携の取組の紹介をさせていただきたいと思います。9ページを御覧ください。先ほど申し上げました60年代からの鉄鋼不況で,人口が急激に減少してまいりました。この状況の中で,北九州市は大企業に依存する態勢ではないか,やはり地場の中小企業が技術を持つということが大事ではないかという考えに至りました。そこで,市の西部に北九州学術研究都市というものを作ろうということで,平成13年4月にオープンいたしました。目的としましては,大学の知を生かして地域産業・学術を振興していこうということです。この学術研究都市では,国・公・私立大学を同一キャンパスに集積しまして,研究成果を生かして地域企業の技術の高度化を目指すという取組をしております。
 次の10ページを御覧ください。学術研究都市でございますが,現在一つの学部,四つの大学院が立地してございます。この4大学は垣根がなく一つのキャンパスに立地しておりまして,図書館や体育館,食堂,それから研究施設等も共同で利用する効率的な運営を行ってございます。この学術研究都市の学生は2300人でございます。また全学生の4分の1が留学生という非常に国際的なキャンパスとなってございます。
 次に11ページを御覧ください。この学術研究都市の中には,産学連携のコーディネートをいたしますFAISという財団を置いてございます。市が100%出捐(しゅつえん)いたしました公益財団法人で,基本財産は2億円でございます。
 次に,少し飛びまして,15ページを御覧ください。本市の特化した取組ということで,次世代自動車技術拠点化の推進ということで,この学術研究都市内の3大学で連携大学院を作っております。これは自動車工学につきまして,3大学が共通のカリキュラムを学ぶという取組でございます。自動車メーカーからも講師を派遣していただきまして,修了生の多くが自動車関連企業に就職してございます。
 16ページを御覧ください。北九州アップデート・モビリティ研究というものでございます。これはソフトバンクグループのSBドライブさん,それから第一交通さん,西鉄さんと学術研究都市の3大学が連携いたしまして,自動運転バスを利用した新たな交通システムの構築に向けましたプロジェクトを進めているところでございます。平成30年度に自動運転バスの公道での実証走行を目指しております。
 それから17ページでございます。介護ロボットの実証実装でございまして,これは本市に世界的な産業ロボットメーカーであります安川電機がありますし,国内唯一の産業医科大学がございます。こういったところに御協力いただきまして,平成28年1月に国際戦略特区の指定を受けまして,ロボットやIoTを活用いたしました先進的介護の実証実装に取り組んでおるところでございます。
 それから次に18ページでございます。インフラ点検ロボットの実用化支援ということで,公共インフラの老朽化,それから技術者が今後不足してまいります。そういったところで,ロボットやIoTを活用しましたインフラ点検の実用化に産学官で連携して取り組んでおるところでございます。
 少し飛びまして,21ページを御覧ください。ここからは人材育成や地元定着の視点からの産学官連携の御紹介でございます。1点目がCOC+の取組でございます。これは,お隣の下関地域とも連携した取組でございます。文部科学省のCOC+に採択していただきまして,北九州市立大学が申請校となり地元就職,若者の地元定住を促進する取組を行っております。本市としましては,この取組によりまして地元定着率を10ポイント上げるというのを目標にしてございます。
 それから22ページ,産業人材育成フォーラムの取組でございます。これは理工系の学生に特化した取組でございまして,一つは地元ものづくり企業の認知度を高める,それから地元就職を促進するということで,地域の大学・高等専門学校それから経済団体,地元企業と協働いたしました地域人材育成フォーラムを運営いたしております。主な活動は,中小企業と学生をマッチングしまして,二,三週間のインターンシップを実施いたしております。
 それから次の2枚は,早稲田大学さんから後ほど説明がございますので,説明は省略いたしますけれども,北九州市としては優秀な若者の地元定着につながる取組として,非常に歓迎をいたしております。
 それから25ページが北九州市ゆめみらいワークという取組でございます。これは,平成28年は8月に2日間開催いたしました。地元企業の仕事内容を直接学生が出向いて聞くことができ,体験できるキャリア教育イベントでございまして,来場者が6,500人,企業,団体,学校から131ブース出展されております。平成29年度も同じような取組をやっております。
 北九州市でございますが,こういった様々な取組を通じまして若者の地元定着を図り,まずは社会動態をプラスに持っていきたいと考えております。こういった取組でにぎわいのあるまちづくりを目指しております。私からは以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 それでは,北九州市からの御報告の中にありましたが,早稲田大学の吉江情報生産システム研究科長からお話をお伺いします。よろしくお願いします。
【吉江早稲田大学情報生産システム研究科長】  早稲田大学の吉江と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日,私がお話し申し上げるのは,早稲田大学の中の理工系でございます,理工学術院の中の更に北九州にある一つの大学院の取組についてお話しするという,それ1点でございます。
 北九州市からお話がありましたけれども,学術研究都市というのが北九州市にありまして,そこで2003年に私どもの大学院がスタートいたしました。情報生産システム研究科といいます。その名のとおり,情報と生産とシステムを融合した研究・教育領域をターゲットとしている大学院でございます。
 お手元の資料5,それから別途配付させていただきました大学院のパンフレット,それから入試に特化しましたパンフレットの3点で,本日はお話をさせていただきます。
 大学院についてもう少し補足させていただきますと,情報生産システム研究科,これは名称が長いので我々は,インフォメーションのI,プロダクションのP,システムのSでIPSと言いますけれども,情報処理のアイデアを練るところから,ものづくりへの適用,システムとしての実装ということを一気通貫でやるような大学院でございます。30名教員がいます。1専攻としては比較的大きな大学院だと思いますけれども,学生数は,修士1学年が200人でございます。トータルで400人。それから博士後期課程は1学年20名で,3学年ありますので60名。あわせて500人ぐらいの小さな所帯でございます。
 場所は北九州市にございます。私自身も17年ほど前に東京から北九州市に引っ越しまして,今はどっぷりつかっており,なかなかいいところだと思います。それで,産学連携と言うまでもなく,ものづくり文化というものが脈々と今も受け継がれておりますので,そういう意味では,実験場としても,非常に実データが得やすいということで,我々の領域にぴったりのところでございます。
 もう一つはグローバル化。これは,アジアへのゲートウエイというキーワードで,我々,北九州市にキャンパスを作りましたけれども,その成果は14年ほどたって,少しやり過ぎかもしれませんけれども92%ぐらいが今,留学生となっております。授業はほとんど英語でやっております。2003年当初からそういうコンセプトでやっておりました。ですから,9月入学・卒業ということもスタートの時点からやっておりました。
 そういう大学院ですが,一方,早稲田大学は全国区の大学でいたいと思っていますけれども,実際のところを見ますと今7割ぐらいが首都圏から来る学生です。ここで地方の早稲田大学というものをもう一度そういう言葉を思い返すと,我々には北九州市に実際にキャンパスがあるではないかと。東京から例えば学生を募集するとか奨学金を出すとか,そういうレベルではなくて,この既に存在するキャンパスを使って何ができるかということを考えたわけです。
 何を考えたかということは,この後,少し御説明させていただきますけれども,私が実際に進めて感じたことが3点。これを先に申し上げてしまいます。一つ目は,地域とやっていくときには,いろいろな意味があると思いますけれども,そこに既に存在している文化との間合いの取り方が非常に大事だということを実感しております。これは,文化の中で例を幾つか挙げますと,その地域における教育への考え方,御家庭で高等教育機関,大学院まで行くことをどう考えるかということ。それから,高等学校の進路指導の先生方が,例えば国立大学に何人入れたという,もしそういう評価で見られているならばその辺をどうするかということ。
 それから,今度は就職先,産業界との関わり方ですけれども,そこに学生が本当に行きたいと思う企業があるかどうか。これは学生の目線です。片や産業界からの目線で言いますと,留学生であるかとか,大学あるいは大学院出の学生をどう扱うかという準備ができているか,アイデアがあるかと。そういったいろいろなことで,その辺がうまくいかないとうまく地域で大学が力を発揮するということができないわけです。そこに自治体とタッグを組んでやらせていただくメリットがあると思っています。学術研究都市というのは一つの例でして,産業界への働き掛けでありますとか,そういったことを大学だけでやるということは限りがあると実感しております。
 二つ目は,ここで改めて,大学は何をやるのかということです。もちろん教育,研究,社会貢献ですけれども,学者を育てるわけではないということを,当たり前かもしれませんけれども再認識してみました。ほとんどの卒業生は学者になるわけではない。我々は研究を通して学生を育てている。なぜかというと,それは我々が研究が一番得意だからである。ただ,研究の中には,社会に出ても大事なことという要素はたくさん詰まっていまして,どこに問題を発見する余地があるかとか,それをどうやって改善するかとか,どうやって評価するか,ということは社会に出てからも大切なことですので,研究を通じて人材育成をするということは決して悪いことではありませんけれども,それにしても,例えば論文の書き方ばっかりだったり,研究者を育てるという教育は少し考え直さなくてはいけない。それが2点目です。
 3三つ目は,学生パワーです。先ほどもお話がありましたけれども,教授が前に出て会社とまず共同研究の話をするというと,もうそれでサイズは決まっているんですね。学生のパワーというのは,非常に未知数のものがありまして,我々の考え方は,特に地域となじんでいくとき,そこの地場の企業と話をするときには,学生パワーをむき出しにするということが非常に大事なのではないかと感じています。
 その辺のことで,全体の漠としたお話をずっとしていても仕方ありませんので,具体例を挙げてみます。それが,一つはコンソーシアムを作ったということなのです。この資料5の1枚目には,「早稲田大学IPS北九州市コンソーシアムについて」と書いてあります。このコンソーシアムがよくある話だなと思われるかもしれませんけれども,実際そうなんです。30から40ぐらいの企業が集まってくれました。地場の企業もたくさんいますし,全国区の大きな企業も集まってくれました。1対N,早稲田大学とA社,早稲田大学とB社,早稲田大学とC社というのは,これがたくさんあるわけではなくて,その参加企業の間も一緒にやるという,企業同士も結ばれた,それが本当のコンソーシアムだと思っているわけなんですけれど,それが大分うまくいっています。
 それから,先ほどの学者を育てるわけではないという,そこに結び付きますけれども,産業界から教員を招きました。これも冠講座であるとかいろいろありますけれども,もっと強いやり方で,産学連携教員という枠を作りました。必ずしも研究,論文何本で評価されるような教員ではなくて,いかに地域を引っ張っていくかとか,いかにこのコンソーシアムで活躍してくれるかという視点で教員を採用する,評価するという枠です。そこで,その先生には研究スペースを持ってもらって,そこで学生を育てる。そうすると双方にメリットがありまして,学生の方は,意外と地場の中小の企業を知らないから敬遠しているというところもありますので,その先生,どうもあそこの会社から来ているぞというと,そこの会社のことに詳しくなるわけですね。で,就職の際に,1年ぐらい掛けてじっくり会社を選ぶことができる。それから,会社の方も,教員をそこに派遣しているわけですので,これも15分や30分の面接だけではなくてじっくり実力を見られるということで,これは産業界からも評価を頂いています。なかなかいいのではないかと言われています。そんなことで,コンソーシアムを作りました。
 ところが,コンソーシアムというのはこれだけで閉じたお話ではありません。これは入試のお話になりますけれども,パンフレットを開いていただきますと,我々の大学院と東京の基幹理工学部がタッグを組んで作ったプロジェクトです。北九州市,あるいは福岡,九州,山口には非常に優秀な高校生がいますけれども,一旦は東京に行ってもらって,基幹理工学部で1年生から3年生まで勉強します。そして4年生の卒業研究のときから北九州に移ってきて,卒業研究とそれからさらには7割ぐらいが大学院に行きますので,大学院で勉強する。もっと勉強したい人は博士後期課程まで行くというプログラムです。
 ですから,九州から東京に行って,戻ってくるというやり方をしているというところがキーであります。そのときに,戻ってくるインセンティブとして奨学金を使うというのがありますけれども,やはりこの企業コンソーシアムで,本来のここの産業というのは実は面白いんだとか,ここで自分が活躍できるんだということに早くから気付いてもらって,そしてその力で引き戻すということが何より大事だと思っていますので,そのコンソーシアムはそのためにも一つの働きをします。そういうこのコンソーシアムと地域連携型の入試というのは別々の話ではありませんので,連携した話です。
 本日は時間が過ぎましたので,これぐらいにしておきますけれども,早稲田大学の一つの小さな大学院はこういう取組を行っておりますという御報告でございました。どうもありがとうございました。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。
 それでは,委員の方々から御質問,御意見等を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
 有信委員,どうぞ。
【有信委員】  いろいろ地方で努力されている説明,どうもありがとうございました。
 最初に印象なんですけれど,基本的に地方で展開するときに,益戸委員の質問にもありましたけれども,やはり一番抜けているのがマーケティングだと思うんですよね。つまり,地域で何が求められているかという検討に対して,どういう人材を提供するか。それから,例えば進学率が低いというのが何で低いのかというと,基本的に所得水準と大きく関連をしているというところがあります。そうすると所得水準が上がらないと進学率も上がらないということで,短期的には学生に対して援助するという方策があると思いますが,実際に地域の基本的な戦略と,人材育成とをどういうふうに結び付けるかという説明が,北九州市はかなり戦略的に取り組んでいるという説明だったんですけれども,長野県の方は若干少なかったような気がしました。ただ,北九州市の戦略というのは,いわば全国区的な戦略で,特に北九州の地域で具体的に人材育成と産業振興を含めて,ある種のシステムができるという説明にはなっていないので,そこの部分についてどうお考えなのでしょうか。あるいは,例えば松本大学で取り組んでおられるときに,基本的に長野県は雇用吸収力があるというお話だったんですけれども,吸収力があるところに人材を供給するときに,本当にマッチングした形で人材を供給されているのでしょうか。つまり,マッチングした形で人材が供給されていれば,雇用吸収力があるところで生産性が上がって,そこの所得水準が上がるという,いい循環が生まれるような長期的な戦略に基づいた人材育成の形が考えられているのか,といった点について少し御説明いただけますか。北九州市の兼尾部長には,地域の独自の,いわばアジア圏という説明が最初にありましたけれども,そこを含めた戦略があれば教えていただければと思います。
【兼尾北九州市企業支援・産学連携部長】  北九州市でございます。
 地域の戦略と人材育成ということで御質問いただきました。非常に我々も悩ましいところでございまして,先ほど説明をさせていただいたように,地域の企業の技術の高度化のために学術研究都市を作りましたという説明をさせていただきましたが,北九州市は,理工系の学生がたくさん卒業するんですけれども,実は余り地元定着していないという現状がございます。私どもで,いろいろと分析をしましたら,やはり理工系の学生が活躍できる場が少ないということで,今回の北九州市のまち・ひと・しごと総合戦略の中でも,そういった企業の研究施設,本社機能等を新たな助成金も作って誘致する取組を一つやっております。
 それから学生の就職のギャップを見ますと,文系の学生については,事務系を希望する学生が非常に多いのですが,やはりそういう職が少ないというところもございます。事務系の職を増やすというのはなかなかすぐには難しいんですけれども,情報通信系の企業は首都圏で人材が大変不足しておりますので,例えば情報通信系の企業を誘致してくる。営業は首都圏でやって,作業は地方でもできるということで,このような企業誘致によって雇用の場を新たに創出するといった取組も行っているところでございますが,なかなか決め手に欠けるところではございます。以上でございます。
【永田部会長】  大変難しい問題です。この点については,別の機会に企業のお立場から益戸委員に意見をお伺いしたいと思います。
 古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  どうも御説明ありがとうございました。
 まず高知大学の受田センター長にお伺いしたいんですけれど,地域協働学部は,非常に注目度が高いと思うのですが,先ほど教員の研究力を高めることが課題だとおっしゃっていて,具体的にどのようなことを考えていらっしゃるのかということと,地域人材の活用に関して,教員として登用したり,あるいは企業などと連携した講座などを開いている取組がありましたら教えていただきたいと思いました。
 関連して,早稲田大学の取組について,非常にいろいろ御紹介いただいたんですけれど,産学連携教員というのが資料にあったので,これをどのような形でされているのか知りたいと思いました。以上です。
【受田高知大学地域連携推進センター長】  研究力に関しては,もうこれは一言で答えることはなかなか難しいんですけれども,これまで地方創生を目指して,文部科学省的に言うと機能別分化をやって,多くの国立大学法人が御承知のとおり地域を標榜(ひょうぼう)して活動しております。それ以降,現状を見ておりますと,これまでの大学のストックを地域の課題解決に使っていく,あるいは消費していくという傾向が顕在化してきているように思います。これまでの大学の持っている知のストック,あるいは人材としての研究力を含めた様々な資源を活用するというところがメーンになってしまっていて,インプットの部分が少しずつ消耗しかけているということを実態として感じます。
 やはり我々大学人としては,研究力あるいは専門力,ここの部分とそれに関わるネットワーク等の部分が,常に進化をし続けていくというのが本来の姿ではないかと思っております。この姿をもって,地域課題に対して当事者意識を高めながら,いかに自分自身の価値,存在意義を高めていけるかということがポイントだと思いますので,そういう意味で,本来的な研究力を更に磨いていくというところに,少し視点を移すべきではないかなと思っております。
 それから,教員として今いろいろな力を私たちもお借りしております。先ほどCOCの事業の中で4人のUBCというコーディネーターを雇用したというお話をいたしました。この4人もバックグラウンドはそれぞれ多様なんですけれども,社会でいろいろな意味で現場を中心として活躍をしていた方々で,この方々を任期制で採用し,そしてその結果,高い評価とそれから我々自身も彼らの力を更に活用していきたいという思いで,テニュアとして採用することにいたしました。先ほどマーケティングの視点もありましたけれども,今後もこういった社会との接点を,いろいろなところで我々はシャワーのように浴びながら,しっかりと将来を見つつも,今求められていることに対して的確にお応えできるように最大限努力をしていく。その一環として教員についてもそういう取組で今進めているところでございます。
【永田部会長】  早稲田大学の吉江先生,お願いします。
【吉江早稲田大学情報生産システム研究科長】  産学連携教員について御質問いただきました。
 企業から教員として来てもらうということなんですけれども,ポイントは,我々30人でできないことを教えてくれる教員を招きたいということです。ですから,先ほど学者を育てるわけではない,卒業生は学者になるわけではない,と申し上げましたけれども,我々30人でやっている限りは,そういうことからなかなか脱却できないわけで,それ以外の,例えばリーダーシップ論であるとか,イノベーションのマネジメントに関するものであるとか,そういったものを教えてくれる教員という意味です。
 この人たちが,例えばこのコンソーシアムの中で企業といろいろディスカッションを始める,又はプロジェクトを始めると,学生はそこに参加をして,ここが学生をむき出しにするという意味なんですけれども,それに積極的に絡んでいって彼らの若い力を爆発させる。今後,既存の仕事の種類とは全く違うものが出てくると思いますので,そういったことを遠くに見ながら,産学連携教員,これは,教員の構成であるとか,評価法であるとか,そういうことにも関連すると思いますけれども,そこの一角を崩したと,そんな思いでおります。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは次,金子委員,どうぞ。
【金子委員】  発表していただいた先生方,どうもありがとうございました。大変面白かったので関心いたしました。
 ただ,お聞きしていますと,大体地域と大学との関係は三つくらいのタイプがあるのではないかと私は感じます。一つ目は,先端産業クラスターを中心として,その連携を行うタイプ。これは今の北九州が典型的な例ですが,富山など幾つかあります。それから二つ目に,地域連携センターを中軸としたタイプ。これは高知などが先端ですが,ほかにも幾つか文部科学省のCOCとしてできています。これらは非常に先端のところを行って非常にすばらしい成果を上げていると思います。三つ目は,地域連携学部といいますけれど,学部自体を地域連携を中心として組み立てようとするところで,これが実は量的には最も今大きく普及しています。ですが,松本大学にお聞きしたいんですけれども,今の話を聞いていますと,地域を題材にしたり地域に入っていくことによって,まず学生に対してモチベーションを起こさせる,地域に対する興味を湧かせるということはあるんですが,それがどのような就職に結び付いていくのでしょうか。
 私,幾つかそういう大学を伺うと,どうも典型的にはやはり自治体とか福祉関係とかということになってしまって,新しい就職先を作ることになるのだろうか,あるいは,特に地域学部で教えていることが新しい産業に結び付く,役に立つというか,少なくとも関係があるということはどういうふうにやって作っていくのだろうかと。これは先ほど有信委員がおっしゃったことにつながるんですが,要するに供給が需要を作れるかどうかということだと思うのです。実際,どうやって起こっているのだろうか。どういうところに問題があるのだろうかということを伺いたいと思います。
【永田部会長】  では,松本大学の柴田事務局長,お願いします。
【柴田松本大学事務局長】  私どもも地域連携の窓口で,例えば地域づくり考房「ゆめ」というものを持っていますが,実は大学として教育をやるときにそれが全ての窓口ではないんですね。よく地域連携センターを作って,そこに職員を配置して,そこを窓口にというケースがあるんですが,それは一つの部署にすぎません。私たちは大学全体がそういう認識ですので,教員一人一人が地域の題材を教育に生かすということをいつも考えているということが一つですね。
 それから御質問の,そういったことがどのような効果があって,どのように就職に結び付いて,あるいは産業とどう結び付くのかという点ですが,例えば幾つか例はあります。健康分野で言えば,聞いたことがあるかもしれませんが長野県に池の平ホテルというホテルがあります。そこで健康維持と長寿のために健康運動を取り入れて,散策しながら様々な科学的な分析をするということをビジネスにしました。これが今すごく脚光を浴びて,全国からも視察が来るということになっています。そこに本学の卒業生が就職をして,新しいシステムを作って,健康プログラムという新たな分野に着手しているということもあります。
 それから,病院でも医学産業の分野とは別に,健康運動を取り入れた病院がもう出てきています。これは新しい分野ですね。これは他県のことですが,埼玉県の戸田中央病院ではこれまで本学の卒業生を定期的に採用していただき,現在15人が働いており,新しい健康維持のパートを拡大しています。また,食文化でも,農林水産省から表彰を受けましたけれども,蕎麦(そば)の実の捨てているところを利用した商品化に成功しました。実際,共同開発した企業にも就職しています。
 このように大企業の理系の開発という分野ではないんですけれども,大学での教育が実際の仕事に結び付いて,就職してからそこで拡大していっているということが,幾つか出てきているという状況があります。
 それともう一つ,前の質問とも関わるんですが,長野県は,比較的製造業が多いのです。細かい数字は持っていませんけれど,新潟,山梨,群馬,埼玉,静岡と比べても,求人数だけは長野県トップという背景もあると思います。先ほどの御質問のように,戦略的な県との連携という点は少し後れていると思いますけれども。以上です。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 両角委員,どうぞ。
【両角委員】  大変興味深いお話をありがとうございました。
 幾つかあるんですが,まず松本大学の柴田事務局長にですけれど,先ほどから出ていますが,長野県の場合は割と入学のときには結構出ていくけれど,就職の時点で定着するという話があったかと思います。先ほど轟部長の話でも,好景気になると少し悪影響というか出てくるという話だったんですが,松本大学の方でいろいろ努力されて県内就職率が極めて高いんですけれども,それが大学の努力だけでどこまで増やせるものなのか,あるいは先ほど景気の影響を県全体では受けたという話でしたけれど,大学独自で見たときに,そのあたりどうなのかということをお聞きしたいと思います。それが1点目です。
 次に,高知大学のお話ですけれど,地域貢献に専門性も当事者意識も高いところにみんなを導いていきたいということで,先ほど教員の話が出ていましたが,教員の専門性はあるけれど当事者意識がないというのをどう高めていくかという話で,財政的基盤を作ることが重要だというお話をされていたかと思います。今までも,例えばCOCにしてもCOC+にしても,いろいろな補助金を獲得されて様々なプログラムをやってきたわけですけれど,そういったもので教員がどう変わってきたのか。それは資金的なものが大きかったのか,あるいは無理やり参加させたことが大きかったのか。あるいは一部の動きなのか,全体なのか。そのあたりの教員に対する影響についてお聞かせいただきたいと思います。
 あと北九州市の話で,ここのコンソーシアムにいろいろな大学がたくさん集まってきたという話で,地域との連携もそうですが,なかなか進まない大学間の連携も自動車のこの分野のところで,かなり連携大学院などの面白い取組をされているなという印象を受けました。一方で,例えばこの連携大学院というのは,どこがどういうふうに主導したらこんなにいろいろな大学や企業がうまく参加してくれるのか,という点が気になりました。大学間連携というのも,ほっといたら勝手に大学が連携するものなのか,やはりそこは北九州市が関わっていったことでうまくいっているのか。そのあたりの感覚を教えていただきたいと思います。
 多くてすみません。以上です。
【永田部会長】  それでは,松本大学,高知大学,北九州市の順番にお願いいたします。
【柴田松本大学事務局長】  先ほどの質問は,大学の教育力だけで地元の就職率を上げることができるかということだと思うんですが,実は,御承知のように長野県は所得水準から言ったら決して高くはないのです。ですから,その背景には親の所得というものが非常に大きな影響を持っています。先ほど景気に左右されるというのは,仮に都会の私立大学に行ったとすると,1,000万から一千二,三百万,長野県ですと住宅のこともありますので,そのぐらいのお金が掛かるわけです。そのときに,地元だったら信州大学,あるいは,ほかの私立大学といったときに,私たちが選ばれる私立大学にならないと,借金してでも奨学金をもらってでも,やはり都会の大学へ行くわけです。本学での奨学金を借りている学生の率も今30%後半です。全国平均は33から35%ぐらいだと思うのですが,本学ではいずれ4割超えてくるかもしれません。若干高いです。ですから,そういった意味で,先ほど申しましたように,地元で育てて地元で返すというのは,私たちの願いでもあったわけです。お金が本当にない。しかし,高等教育を受ける機会を子供に与えたい。地元でしっかり働いて家庭を持ってほしいという親の願いと,大学のコンセプトが重なっているということがあります。
 そういう意味で,ほかの地方の大学とは違うスタンスをどうやって作るかということが私たちの一番の目標だったのです。ですから,松本という土地柄といいますか,風土といいますか,長野県のこの構造というのは,多分ほかの大学とは環境が違うんではないかなと思っております。結果として,地域連携教育を受けた学生たちが,先ほどお話ししたようにアンケートで自分の考えをストレートに書いています。今まで東京に目が向いていたんだけれども,今は地元に目を向けているというのは,松本っていいところなんだ。有り体の言葉ですけれど,やはり地域に愛情を持つという教育を目指しているということが,私たちは一番大事なところだと思っています。以上です。
【受田高知大学地域連携推進センター長】  御質問ありがとうございます。
 高知大学で教員のCOCあるいはCOC+を通じて,どういうふうに考え方等が変わってきているかということに関してなんですけれども,もともと平成16年度に法人化されて以降,地域の大学を標榜(ひょうぼう)するということで,我々,他の大学と比較して,構成員の地域志向マインドというのは高かったと思っています。同時に,今,数字を持ち合わせていないんですけれども,COCを通じてどれぐらい地域志向が高まっているかに関しては,教員,職員,学生,それから地域ということで定点で観測をしておりまして,そのアンケート調査等に基づいて,明らかにほとんどの教員が地域に目を向けているという状態は確認しております。
 ただ,これはスタンスの問題であって,その意識が高まり,行動に変わっていかなければ実質的なアウトカムは得られないということなので,我々としてはここの変化を更に背中を押していかなければいけないと思っています。その際に,やはり目指すものは要ると思っています。COCのメニューの中に,地域志向研究経費という地域課題を解決するための研究公募をやったことがあります。これをやったときに,課題を出して,そのソリューションを研究してくれないかという提案の仕方をすると,これに手を挙げる教員の数が明らかに経年的に増えていきました。
 そういう意味では,やはり目的を明確にし,そしてそれぞれが自分の守備範囲を広げながら,それに対して貢献をして,認知されて,自己実現していくというスキームを描いていくことが,更に求められます。この流れを今,断ち切ることは地方創生に対しては大きな損失になりますので,更に背中を押していくという意味で,先ほどのようなお話を申し上げました。
【兼尾北九州市企業支援・産学連携部長】  北九州市でございます。
 大学間連携について御質問いただきました。私どもが先ほど御説明しました資料の11ページ,12ページを御覧いただきますと,学術研究都市の運営に対しまして,産学官の連携コーディネーターということで,北九州産業学術推進機構という財団を作っております。12ページを見ていただきますと,先ほど説明を省略させていただいたところなんですが,この財団のミッションとしては,学術研究都市内のキャンパスの一体的な運営をやっていくというキャンパス運営センターと,ものづくりのコーディネーター的な役割をいたします産学連携総括センターといった二つの役割がありまして,財団法人が学術研究都市全体の一体的な運営に対して役割を担っているという状況でございます。
 また,15ページに先ほどの連携大学院の取組を掲載しておりますけれども,コースが二つありますが,例えばカーエレクトロニクスコースだったら北九州市立大学が責任を持って主体的にやるとか,ロボティクスコースについては九州工業大学さんがメーンでやるといった,メーン校を決めて,運営をさせていただいております。
 以上でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 今のお話で御確認したいのですが,複数の大学が共同で一つの学位を授与するわけではないですね。大学院なり大学が連携をして,それぞれのプログラムにそれぞれが助けを出すけれども,学位はそれぞれの大学で出すということですね。
【兼尾北九州市企業支援・産学連携部長】  単位認定をしていただくということです。
【永田部会長】  それでは,学位は学生のもともとの所属の大学で授与される,ということですね。
【兼尾北九州市企業支援・産学連携部長】  そうです。
【永田部会長】  分かりました。吉岡委員それから前野委員,時間があれば益戸委員の順で,質問を最後にさせていただきます。それでは吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  大変面白いお話をありがとうございました。
 先ほど吉江先生からのお話に,日々教育の文化との闘いというお言葉がありましたけれども,やってみたら非常に面白い試みというのを,私は地元の,とりわけ直接は高等学校の教育と結び付けていくことが大事ではないかと思うのです。そういう中等教育との連携,広い意味での高大の連携,接続というよりも連携だと思うのですけれども,例えば細かい点では,いわゆる受験生を集めるための宣伝という話からもう少し踏み込んだ連携のようなことを,何か具体的なことを考えていらっしゃれば,教えていただければと思います。
【吉江早稲田大学情報生産システム研究科長】  これまでも非常に苦労して,これからも苦労するところだと思います。本日お話しした内容は,具体的になりましたのは今年の1月11日ですので,まだまだこれからどうなるかというところで,はっきりした成果は出ない中で感じていることを話させていただきます。例えばこの入試で,北九州市の福岡県立何々高等学校から,これで早稲田大学に入学して,東京に行って,北九州に戻ってくるということを進路指導の先生と話すときは,必ず国立大学の話になります。
 それで,もう一つは早稲田大学に入学したときに,教育の場が2か所あるわけですけれども,どういうふうに学生の面倒を見てくれますかという話になるのです。高大接続で,まずはその信頼を,あるいは高校生自身をしっかり我々として把握して手塩に掛けて育てるという姿勢を明確に見せないと,責任を持ってやりますということをきちんと保証しないと,うまくやっていけないと思います。
 実はこの入試は,指定校推薦方式なのです。ですから11月頃に決まってしまいます。その評判で悪いところは,先に決まったからほかの受験生に悪い影響を与えるというのがあるんですけれども,その間はもう学術研究都市に来てもらいます。研究員という資格を与えるかどうか分かりませんけれど,とにかく研究室のゼミにはもう積極的に入って,高校生のうちから大学の準備を始めます。それで,高等学校の先生たちは大分安心してくれるんですね。
 それから,今から振り返ってみると,もっと深い時間を掛けた関わり方というのが必要でした。スーパーサイエンスハイスクールといった次のプロジェクトがありましたけれども,そういうものに我々教員は,早くから絡んでいって高等学校と一緒にやってきた。これが今,実は役に立っているのかな,高等学校の信頼を得ているのかなと思います。要するに,小手先では駄目だと思いました。
【受田高知大学地域連携推進センター長】  高知の取組を少しだけ御紹介させていただきますと,例えば新しく作った地域協働学部では,地域に開かれているということを担保しようとしていて,学生の毎年度の成果発表会といいますか,毎年卒論をやらせている状態なんです。学年末関所というのがあって,そこで毎回発表までさせて,論文も書かせて,それを地域の方にオープンにするんです。その際に,最近劇的に変わったなと思うのが,地元の高等学校の先生方の参加と生徒さんの参加が非常に増えています。ここは,確実にこれまでと雰囲気が変わったなというのが1点です。
 それともう一点は,先ほども早稲田大学の吉江先生のお話がありましたけれども,SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とかSGH(スーパーグローバルハイスクール)とこれを高大連携とうまく結び付ける。さらに,高知県の場合,ココプラという産学官民連携推進センターというのを県が主導して作っていまして,そこに大学のコーディネーターが一緒に机を並べている空間があります。どなたに来ていただいてもいろいろな課題に対して相談いただいて,解決するためのタスクフォースなどを御紹介する。そこに更にSSHとの連携を図って,高校生たちが求めている課題を地域の企業の皆さんと協議をする場を作ったり,今後は高校生の成果をそこで発表してもらうということで,企業の皆さんに対してもそれをアピールする場にしていこうということで,徐々に接続という形に近いものができ始めたかなと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 それでは,前野委員,お願いいたします。
【前野委員】  とてもすばらしいお話をありがとうございました。
 最初に高知大学の受田先生にお伺いしたいんですが,たしか四国,特に高知は光ファイバーが非常に充実していて,津々浦々まで相当いいネットワークができていると思うんですが,そういう情報インフラが,御説明いただいたような高知大学の活動,例えばCCRCとかUBCあるいは将来のIT6次産業とか,観光人材といった育成にどのくらい役立っているか,その感触だけでもいいんですが教えていただきたいのが1点です。もう一点,早稲田大学の吉江先生にお伺いしたいのですが,入り口について,特にグローバルな面で,外国から優秀な人材を集める努力をされているかということと,もう一点,出口側ですが,外国の方で,我が国において,高度人材として定着して日本で働かれるような視野,あるいはプランニングを持っておられるか。それについてお伺いしたいと思います。
【受田高知大学地域連携推進センター長】  では,高知大学からお答えいたします。
 光ファイバーといった通信に関しては,特に四国の中で徳島県がぬきんでて整備がされていて,結果,神山の取組であったり,消費者庁の部分的な移転というところにつながっています。高知県の場合はそこと比較するとやや後れておりますので,情報通信網に関しては,若干まだ背中を見ながらやっているという状況です。とはいいながら,もちろん先生がおっしゃるとおり, ICTを含めて地理的なギャップをいかに解消していくかに関しては,様々な教育プログラムの中でうまく使おうとしています。1点だけ申し上げますと,今回,土佐FBCというプログラムも含めて,県を挙げて土佐MBAという社会人教育のプログラムを大々的に進めています。土佐MBAといいながら,「丸ごとビジネスアカデミー」の略です。専科として土佐FBCというのを進めていて, MBAの教育プラットフォームに関しては,ICTをうまく組み合わせて,遠隔地でもハンディなく受講していただくということをやっております。
【吉江早稲田大学情報生産システム研究科長】  留学生が92%だと申し上げました。これは,ほとんどが非常に優秀な留学生です。40ほど海外との提携校があります。早稲田大学としては,700ぐらいあると思うんですが,我々の研究科だけで40ぐらいの提携を結んでいます。各国御三家ぐらいのところと結ぶんですけれども,中国は例外でして,重点大学ほとんど結んでいます。それが努力です。人間関係を非常に大事にしますので,年に1回はそこを訪ねていくということはやっています。
 ただ,その結果起きたことは,最近その傾向は大分薄れてきましたけれども,中国に帰るんですね。先生はそこを御指摘だと思うんですけれども。その理由は何かといいますと,中国も不景気ですので,就職しに戻るというよりもダブル・ディグリーで,もう一つ学位を取りに帰るんです。以前はそこまででした。ところが,最近はやはり日本で働きたいというので,もう一回日本に戻ってくるというケースが増えています。その後は,追っかけると実は5年ぐらいしか勤めてなかったりするんですけれども,そこは課題です。ただ,日本の企業の処遇ですが,例えばアリババなんかと比べると,給与面を含めてもう完全に負けてしまっています。技術のある人を待遇でどのように扱っているかというのは,少し産業界側にも問題があるように私は感じています。
【永田部会長】  ありがとうございました。
 まだまだ御質問はあると思いますが,審議事項がまだ残っておりますので,ここまでにさせていただきます。松本大学の柴田事務局長,それから高知大学の受田センター長,北九州市の兼尾部長,早稲田大学の吉江研究科長,本当にお忙しい中,貴重な取組を御紹介いただきまして,どうもありがとうございました。

(2)地域別・分野別の将来像データについて,小林委員から資料6に基づき説明があった。
【永田部会長】  それでは,続いてのプレゼンテーションですが,前々回我々が地域のデータを見ながら議論したことを思い出していただきたいと思います。このテーマについて,小林委員の方から,より詳細に解析いただいたデータを御紹介いただきます。先生から概要を御紹介いただいて,詳細はそれぞれのハンドアウトの中で見ていただく,ということでお願いをしたいと思います。それでは小林委員,お願いします。
【小林委員】  時間の関係で,今回は国公私立を含めました大学の進学状況だけにいたしまして,後半に国立大学のものを付けているんですが,これについては割愛したいと思います。
 今,永田部会長から説明があったとおりなんですが,今まで諮問事項の地域の高等教育機会の確保という点につきまして,エビデンスに基づく検討が必要だということで何回か申し上げてきて,事務局にもいろいろな資料を作成していただきました。その中で学校基本調査というものについて,これは実は非常に貴重なデータでありまして,それを基に議論することが必要ではないか。ただし限界もあることは確かなので,そのあたりのことについて,基本的なことをまず確認しておいた方がいいのではないかということでお話ししたいと思っております。
 2ページ目にその内容を書いておきましたが,今回は都道府県別の進学率の問題,それから学生の移動について,幾つかのデータを出したいと思っております。時間の関係で簡単に申し上げますが,3ページ目の学校基本調査についてです。これは非常に長期的に詳細な教育統計でありまして,国際的にも非常に珍しいものです。ただ,指定統計になっておりますので,利用についてはかなり制限がありまして,これはアメリカで同じようなIPEDSという統計があるんですが,これが完全に個票を公表されて膨大な研究を生み出しているということに比べますと,そのあたりにまだまだ利用の価値があるのではないかと思っております。
 あとは御存じのとおりかと思いますが,進学については高等学校側の調査と大学側の調査がありまして,高等学校側の調査は卒業後の状況調査という形で,現役の進学者のみです。大学側については,卒業年度別で,過年度卒業者,いわゆる浪人を含んだものでありまして,二つあるということです。
 次のページに行きますが,大学進学率についても,今申し上げた二つの調査がありますので,どちらを使っているかということには十分注意する必要があります。かなり傾向が違うものもあります。分母についても,3年前の中学校卒業者数を大体使うんですが,これ高卒者数を使っている例もありますので,これも注意する必要があります。それから更に言いますと,大学進学率といった場合に短期大学を含む場合,あるいは高等専門学校を含んでいる例もありますので,そのあたりも留意が必要です。ここでは過年度卒業者を含む大学進学者について3年前の中学校卒業者で割ったものについて限定して,以下お話ししたいと思います。
 次のページです。まず県別の大学進学率の推移でありますが,これを見ていただくと非常に明確な特徴があることが分かります。1975年から1985年まで,第1次,第2次高等教育計画が作られたわけですけれど,ここで政令指定都市における進学の抑制ということが行われた結果,進学率が大幅に低下いたします。大体どこも同じような傾向があるんですが,若干違っているということも見て取れます。ただ,ここで注意していただきたいのは,この時期は私学助成や専修学校制度が発足しておりますので,ただ単にこの計画の影響だけとは言い切れないところがあります。
 次に1985年以降です。これは第2次ベビーブームに当たるところでありまして,92年がその頂点なんですが,そこで高等教育計画がかなり変わっておりまして,今度は格差がむしろ拡大する方向に行っています。2002年に高等教育計画が終了した後は,格差が拡大しているということになっているわけです。次は,それをブロック別に見たもので,これは大都市圏が高く,北海道・東北それから九州が低いという傾向が出ているということが分かります。
 次に国立大学についてですが,全く現在傾向が違っておりまして,これは南関東ですけれど,非常に国立大学の進学率が低い県と非常に高い県ということで,かなり全体の傾向とは違っていることが分かります。これをブロック別に見ましたものが次のスライドです。これを見ますと一番下の南関東が非常に低く,それに対しまして,ここでは中国・四国あるいは九州地方が高くなっているという特徴があります。
 こういった点につきましては非常に多くの研究がありまして,最近では国立教育政策研究所の朴澤さんの研究等があるんですけれど,ここに多くの先行研究が示されておりますので,それを御覧になっていただきたいと思いますが,どうしてこういうことが起きているのかということについての研究があります。その中でも相関比というものを使いまして,これは不平等の格差の指標の一つなんですが,これを見ますと,実は国立大学については少しずつ上がっていますが,それほど大きな変化がなく,やはり私立大学の進学率の格差というものが非常に大きく影響しているということが分かります。公立大学については設置している県が様々ですので,その影響で少し差があるということです。
 以上が進学率の問題なんですが,それに対しまして今度は学生の移動の問題です。これは,いろいろな分析の手法があるんですが,ここでは第1次高等教育計画に従って同じもので分析しております。これを見ますと,高等学校から大学への進学者について言いますと,外に出ていく,つまり県内から県外に出ていく流出者,それに対しまして県内の高等学校から県内の大学に進学する残留者,それから県外の高等学校から県内の大学へ入ってくる流入者という三つの区分があります。これに従いましていろいろな率が作れるわけです。先ほどの長野県でも同じような率を使っておりましたが,名称は若干異なっております。ここでは,先ほど示しました進学率というのは,流出者と残留者,つまり県内の高等学校から大学に進学した者を3年前の中卒者で割ったものです。残留率というのは,県内の高等学校から県内の大学に進学した者,流入は逆に県外から入ってきた者いうことで見ていきたいと思います。収容率については,これも幾つかの定義がありますが,ここでは県内の大学進学者総数をその県の高等学校の方の進学者の総数で割ったという比率で示しています。
 以下,注意していただきたいのは,次のグラフですが,率で見る場合には,絶対数の違いは無視されてしまいますので,その点は非常に注意していただきたいわけです。というのは,これを見てお分かりのように南関東が非常に大きな割合を占めておりまして,次いで京阪神ということになっています。この左側の流出が右側の緑の今度は流入ということになるわけですけれど,いずれに対しましてもこの二つの地域が非常に大きな割合を占めているということが分かります。
 以下,残留率ということでまず見ていきたいと思います。これは都道府県別のものですが,学生の場合は必ずしも県内,県外ということが重要ではありませんので,ここでもブロック別にしました。次の図を見ますと,南関東はほとんどブロック内にとどまっているということが分かります。それ以外のところは,かなり差がありますけれど,全体としては緩やかに上昇しているということが分かります。つまり,それだけブロック内の大学に進学しているということになります。
 流入につきましては逆の傾向になりますので,ブロック別に見ていただきたいんですが,低下している傾向,つまり外からそのブロックに入ってくる者は少なくなっているということが挙げられます。
 最後に収容率という形で見ますと,これは南関東がやはり非常に低下しているということが顕著です。それに比べましてほかのブロックについては若干上昇して,最近は非常に安定的に推移しているということが分かります。
 時間の関係で国立大学は省略いたしますが,国立大学についてはかなり違う図が描けまして,残留率はむしろ低下している。外に出ているということですね。それから流入率も実は低下しているというふうに,一見すると解釈に難しい状況になっています。
 最後から2番目,24のスライドを御覧いただきたいのですが,非常に簡単にまとめますと,進学率の格差というのは1990年までは縮小しているんですけれど,それ以降は拡大しています。国立大学の進学率の格差は,1990年までは微増していますが,その後は安定的に推移しているということで,大部分は私立大学の格差ということになります。それから,以下はまとめでありますので,御覧いただきたいと思います。ただ,非常に多くの課題が残されておりまして,本日お示ししたのはごくわずかな分析の例でありまして,私立大学については,大体学生数が国公私計の70%以上ですから同じ傾向になります。しかし,国立大学はかなり違っているということになりますが,その要因についてはこれから分析が必要だろうと考えております。
 それから公立大学につきましては,集計表がないため,計から国立大学・私立大学を引くという形で集計することになりますが,若干問題があります。それから,本日お示ししたのは男女合わせた集計ですけれど,これもかなり男女別には傾向が違いますので分析したいのですが,これは設置者別がありません。それから短期大学についても同じ集計表がありますが,これについても分析が必要です。こういった点につきまして,県別でしか今のところ集計表が公表されていませんが,個票によっては,かなり詳細な集計ができることになります。
 それから,より問題なのは,高等専門学校と専門学校についてはこういった統計が存在していないということでありまして,この辺をどうするかということは考えていく必要があります。更に言いますと,本日は学校基本調査でお示ししたわけでありますけれど,学生の移動については,特に重要なのはやはり自宅か自宅外ということになりますが,これについては日本学生支援機構の学生生活調査などの他の調査で補っていく必要があるかと思います。
 非常に駆け足になりましたが,以上です。
【永田部会長】  どうもありがとうございます。小林先生が課題に挙げられた集計ができたときに,この表をもう一度お持ちいただいて,改めて全体を見るという機会を設けられればと思います。本日は御説明いただく時間が少なくなりまして,申し訳ございませんでした。
 各委員におかれましては,もう一度御自身でデータを見ていただくと,大きな傾向を御理解いただけると思います。その傾向を踏まえて,さらに考えなければいけないわけですが,それは今後の議論に残したいと思います。
 それでは,残り時間が少なくなりましたので,本日は小林委員に御質問等をする時間は設けませんが,次回以降も同じ委員のメンバーですので,機会があれば御質問いただけるかと思います。
 今後の予定ですが,今のお話等も踏まえながら,地域別及び学問あるいは学部等の分野別といった点について,データベースに基づいてもう少し議論をしたいと考えています。そのときに,もう一つ,本日の議論を聞いていて思いましたが,時間がうまく作れれば,地方の中小企業のヒアリングをしてみたいと思っています。なぜかと申しますと,まち・ひと・しごと創生本部の「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」に代表される議論には,一部の大手企業の意見が産業界の考えとして取り上げられています。しかし,多数を占める地域の中小企業が何を考えているのか,どういう人材が欲しいのか,という点について,我々はあまり聞いたことがないような気がします。ですから,そういう試みをすることで,地域の高等教育機関がどうあるべきか,という姿が見えてくるのではないかなと思いました。今後,事務局と相談して,そうした観点からヒアリングができる機会を作ることができればと思っております。
 さらに,地域の観点のほかにもう一つ重要な問題は,やはり大学ですので,どういう学生を育てるのか,ということをいつも念頭に置く必要があります。それは,セクター別であったり,あるいは地域であったり,分野であったりという観点で非常に重要なポイントで,恐らく我々が今頂いている諮問に対する答申の頭書きになる内容だと思います。我が国にとって今後こういう人材が必要であるといった下に,例えば地域ではこういう人材が,都会ではこういう人材が,あるいはこの分野ではこういう人材が必要である,といった分析できないと,高等教育全体の構造をどのように見直すべきか,ということが明確にならないと思います。ですから,この観点はもう一度じっくりと時間を取って,議論をしたいと思います。一方で,これ以外にも様々な観点から多くの情報を入れながら議論を先に進める予定ですので,このあたりを是非とも念頭に置いていただきたいと思います。
 最後に,もう一つだけ申し上げます。繰り返しになりますが,この将来構想部会で考えていることは,本部会の下に置かれているワーキンググループも含めてのことですけれども,平成17年の将来像答申以降,しばらく高等教育の将来についての計画ができていません。ですから,ここで高等教育を取り巻く社会の背景や理念を議論することは重要なのですが,我々は現実に実行し得る計画を示さなければならない,ということを,もう一度念頭に置いていただきたいと思います。
 ワーキンググループにおかれましては,更に具体的に何をどうするかということについて,しっかりと御議論いただく必要があります。例えば,教育の質保証についての御議論が続いているわけですけれども,認証評価で不適合が出た場合に適合していない大学にどのように対応するか,ということが常に問題になります。その際に,具体的な対応案が示せなければ,ワーキンググループとして役割を果たしたと言えません。もし,その対応案に法制的な問題があるとすれば,それは文部科学省や政府の責任において検討をお願いすればいいわけであって,教育の質保証のためにはこういうプロセスが必要である,ということをきちんと示すことが我々の役割です。
 また,学位プログラムの問題にしても,いきなり全てを置くことはできずに,併存期間が必要な場合や,できる分野・できない分野が出る場合もあるかもしれません。しかし,教育のあるべき姿に向かって,こういうロードマップで進めるのだということを明確にしない限り,ワーキンググループ案としてのまとめにならないと思います。それをもって,本部会において様々な議論をしなくてはなりません。以前にも一度,本部会で何を議論して,何を決めるのか,という質問がございましたけれども,我々が全部決めなければなりません。我々が決めたことを文部科学省や政府にやっていただく,という気概で臨んでいただく必要があるのだ,だということをあえて申し上げて,本日はこれで終わりにさせていただきたいと思います。
 それでは,本日の会議は,これでお開きとさせていただきます。どうも御協力ありがとうございました。

―― 了 ――

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