将来構想部会(第9期~)(第2回) 議事録

1.日時

平成29年6月28日(水曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省旧文部庁舎6階 第二講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)村田治委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,金子元久,小杉礼子,佐藤東洋士,鈴木典比古,鈴木雅子,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉,吉見俊哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)戸谷事務次官,義本総括審議官,村田私学部長,浅田大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見高等教育企画課長,角田大学振興課長,浅野専門教育課長,蝦名私学行政課長,牛尾文部科学戦略官,堀野高等教育政策室長 他

オブザーバー

(オブザーバー)井上経済産業省経済産業政策局産業再生課長,伊藤経済産業省経済産業政策局産業人材政策室長,飯村経済産業省産業技術環境局大学連携推進室長

5.議事録

(1)我が国の高等教育の将来構想について,事務局から資料1に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  第2回将来構想部会を始めます。
 審議に先立ちまして,事務方から資料の概要について,御説明いただきます。
【堀野高等教育政策室長】  配布資料につきましては,議事次第に記載しているとおりでございます。加えまして,資料1の後に,鈴木典比古委員からの資料を1枚お配りしております。また,その後に,本日御欠席の有信委員,石田委員からの資料も配布しております。不足等ございましたら,事務局までお願いいたします。
【永田部会長】  ありがとうございます。議事次第を御覧いただきますと,議題は「我が国の高等教育に関する将来構想について」及び「その他」となっています。資料2,3として,大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会の中間まとめや,新産業構造ビジョンを用意しました。「その他」の中で,この資料2,3に基づいた議論を行いたいと思っております。3分の2ぐらいは,将来構想の部分に時間を割きたいと思っております。その後,今申し上げた資料2,3を中心に,お話をさせていただきたいと考えています。
 それでは,将来構想についてでございますけれども,平成17年に「我が国の高等教育の将来像(答申)」という中央教育審議会の答申があって,しばらくその方針に従って,高等教育施策が進んできました。今回,我々は,もう少し先を見据えた新しい将来構想を練っていこうというスタンスにあるということを,まず共有しておきたいと思います。
 つまり直近の課題については,例えば2040年に目指すべき姿に鑑みて,今現在,解決しなければいけない課題は何かという議論はありますが,これを切り離して来年どうするかという議論をするわけではないという点を,まず念頭に置いていただきたいと思います。
 それから,本日は将来構想の本格的な検討を開始するに際し,将来構想に関するお考えを述べていただきたいと思います。
 このように申します意図は,将来構想を考える上で,資料1に我々が議論しなければいけない事項が明確になっています。その重要な論点の一つに,高等教育機関全体の規模も視野に入れた地域における質の高い高等教育機会の確保の在り方について,があります。この最も重要なポイントである規模について,皆さんに御意見を伺いたいと考えております。
 高等教育の規模についてですが,まずは国公私立という設置主体や分野の問題を抜きにして,我が国の高等教育全体の規模をどのように考えていくか,という趣旨です。我が国が直面している課題としては,少子化はもちろん,奨学金や授業料免除,高等教育の無償化という学生の経済状況に関わる課題も出ています。これ以外にも様々な要因があるので,これから委員の先生方には高等教育を受ける側(がわ)の視点から規模をどう考えるべきなのかについて御意見を伺います。つまり,義務教育のように全員が高等教育を受けることを理想とするならば,それを前提に考えることになります。そうではなくて,大学が持つ本来の機能はこうであり,今様に変化した大学の在り方と将来を見据えて大学教育はこうあるべきという意見も当然出てくるであろうと思います。何が良い悪いではなくて,理想像として,我が国の高等教育における大学教育,あるいは高等教育全般が,どれほどユビキタスに,あるいは学生にフィージブルにするべきであるのか。そのような大前提の話をしたいと思います。
 その際,「大学とはこうである」という議論が必ず出るはずであって,それも是非とも述べていただきたいと思います。その上で,次回以降,具体的に意見を交わしていく題目が見つかるであろうと思っています。言ってみれば将来構想を描くときの最初の段落に当たることですけれども,分かりやすく,教育を受ける側(がわ)の視点から規模を考えていこうではないかということです。さらに,それを支えるために,我が国の高等教育が全体としてどのような構造,役割分担,それぞれの規模であるべきか,といった議論になるんだろうと思います。
 抽象的でも構いません。今申しましたように,根本的な大学論そのものになるかもしれません。それは重々承知の上で御意見を頂きたいと思います。
 それでは,鈴木委員。
【鈴木(典)委員】  お手元に1枚ものの資料を差し上げてございます。これに基づいてお話をさせていただきたいと思いますが,2040年ということですから,25年後ということで,よほどの変化が生じているに違いないと想定しなければならないと思います。もちろんもう既に起こっております18歳人口の減少ということも一層進むでしょうし,また,それに連れて,私は現在の存在している大学の数というのは維持できないであろうと思っております。
 それから,学位プログラムが国際通用性を持っていなければいけないということと,その土台となる質保証の国際標準化が起こっているであろうと私は思います。また,教育の無償化ということも,今,話題になっておりますけれども,25年後には,教育というものが社会的にも利益があるという観点からしますと,無償化が起こっていて,それが進む限りにおいて,今あるような国公私立別の学校種というのは,その種類が消滅していくのではないかと考えています。大学というものを一つの単位として考える必要があるということです。
 それから,AI化が進みまして,教員の授業の役割,教員の在り方が大きく変化してくるであろうということ。それから,全員が大学に進学するという可能性も出てくるわけで,その場合の大学教育の質の保証が非常に難しくなってくるのではないかということ。それから,恐らく25年後には,各国大学の相互の分校の進出といいますか,そういう意味での国際化がなされているであろうと私は想像いたします。
 そういう中で,より具体的にどういうことが起こり得るであろうかということを考えたときに,まず,学生を今のように一つの大学で4年間囲い込んで卒業までキープしておくということが,非常に問題になるのではないか。それを打破するために,学生は在学中に複数の大学に在学して単位を取得していく。特に一般教育の受講において,そういう可能性を開いていかなければいけないと思います。複数の大学に在学するということを義務化するぐらいの融通性を持った方がよいのではないでしょうか。当然のことながら,それは大学間の教育プログラムの標準化を行わなければいけないということを意味します。そのようなことにより,学生を通じた大学教育の評価・比較が,より顕著になってくるのではないかということになります。
 それから,2番目に,認証評価機関の国際連携ということを通じて,各国の大学教育の標準化ということを進めていくということであります。学位の国際通用性の確保のために,認証評価機関の国際間の相互評価を行うということも必要になってくるのではないか。それから,認証評価機関と企業,この場合,国内企業及び外資系企業も含みますけれども,連携による人材の育成と高等教育の国際通用性への示唆ということも必要になるのではないか。また,大学が海外の認証評価機関の認証評価を受けるということも出てくるのではないか。その場合には,この大学は国際的な通用性を持った教育を行っているという,特別な確認が必要ではないかということです。
 それから,3番目に,今のように1年間あるいは1学期間の授業料ではなく,1単位ごとに授業料を設定する。したがって学生は,毎学期,受講単位数分の授業料を払うことになり,4年間で卒業する必要がなくなります。つまり,124単位分のお金を払えば,5年,6年,7年かけて卒業していくということが普通になってくるのではないかと考えています。
 それから,教員の流動化と教育の質保証ということで,今,国公私立大学間で教員の流動化ということが余り起こっていないわけですが,国公私立の区別が余りなくなれば,あるいはなくすために,一定年間の教員の互換を行うということも出てくるのではないかと。それから,海外大学で教職の経験を積むということを強く要望されるようになるのではないか。また,テニュア審査への外部審査員の参加ということも,教員の質保証という観点から必要になるのではないかと思います。
 それから,最後になりますが,高等教育の将来方向性を決めるための,中立的な第三者機関による高等教育の将来方向性の提言と助言ということも必要になるのではないか。それから,こういう第三者機関を海外の同種の機関と連携して,国際的な高等教育の方向を見極めていくということも可能になってくるのではないかと想像しております。
 雑駁(ざっぱく)ですが,以上です。
【永田部会長】  大変有益なお話でした。今の話の中には,かなり具体的な事項も含まれていました。他の委員の先生方は,今の御意見にとらわれずにお話しいただければと思います。
 もう一度戻りますけれども,この国の高等教育を受ける側(がわ)の視点から規模がどうあるべきか,それをもう一度,頭に思い浮かべてみてください。どうぞ,福田委員。
【福田委員】  本日は,高等教育に関する将来構想について,一人3分間ぐらいでということでしたので,考えてきました。受ける側(がわ)の立場から見てというテーマを中心にということでしたので,飛躍的な発言になって恐縮ではありますけれども,意見申し上げます。
 将来においては,日本だけの問題ではなく,最低でも東アジアぐらいを俯瞰(ふかん)して,学習成果のターゲットを考える際に,職業教育や国家資格にフォーカスする必要があると思います。今現在は職種ごとに,例えば看護一つとっても,大学と短期大学と専門学校と,各々が同じ国家資格を出しているわけです。しかし,専門学校を卒業した人たちが,将来になって更に幅を出そうと思ったときに,学習成果として職業教育や国家資格のターゲットが決決まっていれば,30歳になっても50歳になっても,そこからまたショートプログラム等々でキャリアを付けていくことが可能になると思っております。
 10年先,20年先,ICT,IoT,人工知能にしても,現在分かっている範囲の延長線の議論しかできないのかもしれませんが,今の想定できる範囲の中で,学習成果としての職業教育や国家資格のターゲットを決めていくことが必要ではないでしょうか。そして,高等教育機関として,短期・中期・長期のスパンでどのようにそこに近付けていくかということを示すことが,一つの方策ではないかと考えています。
【永田部会長】  今後,高等教育及び大学に関わる要素を全部考えていかなければなりません。規模の議論について,そう何回もできるわけではないと思いますので,先生方には遠慮なく御発言いただきたいと思います。それでは,佐藤先生,どうぞ。
【佐藤委員】  今回の検討事項として提案されているのは,大きく分けて四つの項目ではありますが,議論を始めると,各論にどんどん入っていくのではないかという気がしています。
 2040年に,18歳人口が88万人ぐらいになるということですが,よく考えてみると,そのときには自分は96歳ぐらいですから,果たしてそれを見られるのかどうかというのも分からないと思います。ただ,過去どのような流れで来たか,それから現在のことと,未来に対する予測というものを,きちんとすることが大切であると思います。
 例えば,国連で今,UNAI,United Nation Academic Impactという取組があって,世界中で1,500ぐらいの大学がそれに取り組んでいます。日本では,13ぐらいの大学がそれに加わっていると思います。10の原則をそれぞれの学校が担当していきましょうということで取り組んでいるわけですが,その原則の一つに,将来に向けて人類は,機会を得たいという者は誰でも高等教育にアクセスができるようにしようではないかという議論が,一つあります。私はかねて,社会人に対して,高等教育で学ぶ機会というものは,棺桶(かんおけ)に片足を突っ込むまでの間に,いずれか学びたいものがあった場合に,それが資格とかそういうことに結び付くことでなくてもいいから,生きていくために学ぶという状況が来ればいいなと思っています。そんな発言もしてきたのですが,そういう意味では,学びたいという意欲がある者に対しては,アクセスはどんどん広げたらいいと思います。幾つかの科目だけしか学ばなくてもいいし,別に学位を取らなくても良いのではないか。そこに大学の使命というのは一つあるのではないかと思います。
 それから,当然のことながら人口動態は人為的に変えることはできないわけです。そうすると, 18歳人口が約88万人に到達する中で,我が国の高等教育機関を,例えば大きさによって議論をしたり,あるいは国公私立という区分でもって議論をするのではなく,永田部会長が言われたように,全体としてどうするのかということをまず議論しなければならないということが,私も必要であると感じています。
 その上で,多少例を言えば,アメリカの大学は約3,200校ぐらいあるのですが,アソシエーションオブアメリカンユニバーシティーというのがあって,その加盟校が,ここ10年ぐらい,ずっと62校しかありません。この62校がユニバーシティーの中のユニバーシティーという感じで評価されていて,それは州立カルテックみたいなところから,UCバークレー,UTオースティンもあれば,スタンフォード,ハーバード,プリンストンもありということで,リサーチユニバーシティーと私たちが称しているような学校かもしれませんが,その数というのは余り変わっていませんし,この約3,000の大学というのは,それぞれの役割をきちんと果たしているわけです。
 それぞれのミッションとして,アメリカの大学というのは,カタログを取れば,最初にミッションステートメントというのが出ています。この学校は何をするところですよということが出ているわけです。日本の場合,どうしても建学の理念とかそういう話になってしまうんだけれども,その学校がどういうミッションを持っているかということをはっきりさせていく必要があるのではないかと思います。アメリカは3,000の中で62ということですが,日本だったらどうでしょうか。数的に言えば30ぐらいの大学が,強力に国を引っ張っていくような大学であって,それ以外は,広く私たち国民を,高等教育の世界の中に巻き込むかもしれない。
 そういう面から考えると,昨日専門職大学等の制度設計等に関する作業チームの第1回が開催され,職業大学の設置基準について話が始まったわけです。その議論の中で,今の大学・短期大学,それぞれの設置基準に合わせた形で,専門職大学等の固有の部分だけを変えていこうと思っているのですが,大学設置基準自体は昭和31年に省令として整備されて,もう既に61年がたっています。それぞれの時代に合わせて改正をして対応しているものの,設置審査における,学部の分野や,専門委員会の今の審査の構成というものは,今の,あるいはこれからの高等教育機関の持続的発展に対応することができるのかと若干感じています。
 それから,参考までに,インターネットで検索すると,大学設置基準が英語に翻訳されたものが見られますが,英語で読むと,内容がよく分からないのです。あるところでteacherと言ってみたり,facultyと言ってみたり,それから,教授会をteachers meetingとかteacher organizationと表現されていますが,割と公式な英語訳だとして,別表に至るまで全部翻訳されています。ところがこれを見ると,大学とは一体何だろうかということがよく分からないようなところがあって,この辺は,基本に戻って,自分たちが目指すものをどのように作らなければならないかということを,考えるチャンスなのではないかと思っています。
 したがって,学位についても,分野の数が600や700もあるということを言われていますが,設置基準も,そのままで行くのか,それとも,設置基準自体についてもきちんと整備して,これからの時代に合わせるようなことに変えていくのかというところまで踏み込んで考えた方がいいのではないかなと思っています。
 抽象的な話で申し訳ありませんけれども,以上です。
【永田部会長】  ありがとうございます。村田先生,早めに退席されるということなので,どうぞ。
【村田委員】  ありがとうございます。本日は2分か3分,話をするということだったので,少し考えてきたことを,規模ということでお話しさせていただきます。
 基本的に,18歳人口が2040年には約88万人,少し推計に修正がありましたけれども,今後減っていきます。その中で,特に重要なのは,もちろん人口動態もありますけれども,AIの発達が,日本の,あるいは世界の職業の動向にどういう影響を及ぼしていくか。例えば,今,使われているあるAIに対してどれだけのデータを,きちんと理解した人間が対応できるのかという,そういうようなところが非常に重要になってくると思います。
 そうしますと,先ほど永田部会長から高等教育というお話がありましたけれども,高等教育の定義にもよりますが,専門学校まで入れた高等教育ということでは,今,もう既に18歳人口の80%ぐらいが進学していますから,今後恐らく100%近くになってくる,あるいは,そうならないと仕事に就けなくなるのだろうと思います。高等学校までの教育では,恐らくもう仕事に就けない状況になるだろうなと思います。
 では大学と絞った場合,今,佐藤委員から職業大学の話も出ましたけれども,AIが発達してくると,専門的なスキル,知識というのは,逆に本当に要るのかなという状態になってくるわけです。5年ぐらい先はいいとしても,20年先を考えた場合に,どこまでをAIがやって,どこまで人間が,コミュニケーション能力だとか,あるいはクリエーティブな能力でやっていくのかという,教育の在り方が根本的に変わってくるんだろうと思います。
 そのときに,大学の定義も含めて,学部ももちろん,整理されてくるんだろうと思いますし,そのようなことを考えた場合,今よりも大学に進学する学生の数が増えていかざるを得ない。そうでないと仕事に就けないんじゃないだろうかというような気がしております。
 そのときに,先ほど鈴木委員からもございましたように,国立だとか公立だとか私立だとか言っていられないような状況で,きちんと子供が仕事に就けるようにするためには,高等教育をきちんと受けていないと駄目であると。逆にそうでないと,物すごく格差が開いた社会になってしまってしまう。格差が開くということは,社会にとって非常に大きなマイナスであるわけです。これは経済学的な観念から幾らでも言えるわけで,そういう意味では,格差が開かないような形で,大学,あるいは高等教育に,ほぼ全ての者が進む,正にユニバーサルだと思うんですが,そうなっていかざるを得ないのかなとは思っております。一つは,AIの発達というのが大きなキーポイントではないかと思ってございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 益戸委員。
【益戸委員】  この中央教育審議会将来構想部会は,全体で23名の委員の先生方がいらっしゃいます。その中で民間企業から出ているのは二人,鈴木委員と私です。将来,この中央教育審議会が2040年も続いていたとしたら,そのときの委員の構成はどうなっているだろうと考えておりました。明らかに教育機関のステークホルダーへの意識が変わって,教育議論のポイントが変わっているのではないかなという想像をしました。したがって,民間企業からの委員の数は増えます。私は10年間,日本の銀行に勤務し,その後30年間,外資系金融機関にいます。日本の銀行での社会人教育と外資での教育は明らかに違っていました。
 今後どうなるのか。日本に寄るのか。それとも海外に寄るのか。これはなかなか難しい。御参考になるかどうか分かりませんが,日本の株式市場は最近随分と海外の株主が増えました。これは日本企業のガバナンス改革が行われて,海外の投資家から見た日本企業は,閉鎖的な企業ではなくて,改革が進んでいると判断されました。投資家として株主として資金を投資する価値があるという判断で,株価が上がりました。
 グローバル化の進展の中で欧米にひきずられる形で,日本は今後ますます改革が進んでいくのではないかとの予想が自然でしょう。先ほど来,先生方から出ている産業革命や人工知能がそれを後押ししていくのではないか。それと同時に,様々なライフスタイルというものが出てくるわけです。
 最近,日本生産性本部が,若者に対して,上司から飲み会に誘われたら付き合うかどうかというアンケート結果を発表しました。3分の1の方だけが付き合うとの結果です。私が20代だった頃は,上司から言われたら100%ついて行きます。行って,夜中の12時に会社に帰ってくる。「益戸,朝までにやっておけよ。」と言われ,「分かりました。」と。その頃当たり前のようにやってきたことが,今や当たり前ではなくなった。
 欧米型か日本型か,様々なライフスタイルの問題か,産業革命的な人工知能といった問題か。そして,人口動態からして,高等教育機関というのはどのように変わっていくのか。
 高等教育機関というのは決して大学だけであるわけではありませんから,様々なライフスタイルがあるからこそ,大学の特色が生きたり,短期大学,専門学校の特色が生きたりということになります。18歳人口が減るわけですから,規模感,すなわち大学の数は減るのではないかと思います。
 しかし,様々な生き方を支えるためには,教育の質が保証されていかないといけない。私が冒頭に申し上げたステークホルダーの観点からすると,中央教育審議会の委員の構成が変わっていくのではないかと申し上げました。教育機関と企業ないしは行政との間の人事交流,人の移動がもっと進むことによって,お互いのことがよく分かった上で議論することが自然となるでしょう。
 企業では,専門人材,専門人材,と言われていたところから更に一歩前へ出ています。専門性があるだけでなく,隣の仕事をどこまで理解できてプラスアルファのインプットができるかが勝負です。かつての人事異動は,人数調整だったり年齢構成や仕事の繁閑をベースに起案しましたが,今では,違う仕事を理解し,更に生産性を高める目的を持つことも重要な要素となっています。
 とすると,教育機関の皆さんが企業の中に入っていただいて,経営陣が株主からのどのような収益責任を負っているのか,どうやって応えるのか等をよくお分かりいただいた上で,研究や教育に生かしていただく,一方で企業側から教育機関に行くことによって,研究のプロセスや研究費の仕組みをよく理解することなどが重要でしょう。人事交流が企業からの寄付の増加につながると確信いたしております。グローバル人材の議論では,ダイバーシティー,多様性の理解が必要だと言われます。お互いのことをよく知ろうということです。我が国の高等教育機関の将来像というのは議論では,大切な要素と考えています。
【永田部会長】  ありがとうございます。お名前の挙がりました鈴木委員,先にどうぞ。
【鈴木(雅)委員】  鈴木と申します。民間のただ二人のうちの一人のでございます。私は社会に出て40年ぐらい,ずっと企業におりますので,皆さんと感覚が違うかもしれませんけれども,何点か経験上からお話しさせていただきます。
 まず,義務化教育とか無償化という話がありましたけれども,実際に私は今,人事もやっておりまして,高卒の人,大卒の人,両方を採用しています。結論としては,高卒までは義務化すべきと思っています。ただし,大学については,義務化は必要ないと思っています。大学については,奨学金をきちんとルール化して,正しく必要な人に付与していくべきだと考えています。
 よく学生と話をしていますと,大学時代,何を一番やってきたのか,何に一番思い出があるかと聞くと,残念ながら,8割以上の人はアルバイト経験だと言います。その理由は何かというと,社会に出てからコミュニケーション力が必要だと言われている,そのために,飲食等のサービスで働いたりしている方が多いのです。要するに,人と接する仕事に就くために,サービス業を希望する方が多いのです。
 人事の立場から考えると,本来なら大学で,きちんと学んできてほしい。社会に出てから学ばせるのではなくて,きちんと学業を学んできてほしいという期待がありながら,大半の人がアルバイトに時間を費やしているというのは,とても残念だと思います。であれば,本当に学びたい人にきちんと奨学金を与えて,学びたい人に,そこに手が届くようにする。逆に,大学には取りあえず入りました,ただし,アルバイトで4年間終わりましたという人が,職業に就いて社会人になるというのは少し違うと思います。
 そういう意味では,ゆとり教育もありましたけれども,学生に対しては,もっと厳しく我々含め世の中全体が見ていってもいいのではないかという判断をしております。大学教育の意味を学生には理解をしてほしいと思います。そういった点で,義務化はすべきでないと考えます。
 また,大学の数ですけれども,よく最近,定員割れという言葉を耳にします。民間から考えたら,定員割れしてまでなぜ維持するのか疑問です。そうであれば,もっと学生が集まるような工夫をすべきではないかと思うのです。そういう意味では,今後,私立大学だろうが国立大学だろうが,工夫がなければ学生は来ないと思います。
 それから,大学は,学生が選ぶ時期に既に入っていると思います。ですから,両親とか高等学校の先生が,この大学は君に合っているからいいよと言うのではなくて,学生自身が選んでいると思います。
 また,日本の社会の中の経済が,すごくスピードアップしています。以前でしたら,30年周期といって,一つの企業が30年もてば次の30年があると言って,100周年を迎える企業がありましたけれども,今,シリコンバレーでも10年切っています。ですからそれを考えると,大学教育の中で,もっとスピードアップをした改革であるとか,それから大学側の新しいスピード感や柔軟性を持ったものを,いかに広報戦略のアピールを使って世の中の学生にきちんと伝えていくかということが大切です。この辺のところをきちんとしていくことによって,大学の在り方がもっと明確に見えてくるのではないかと思います。
 企業に入ったからといって一生安全ではなくて,企業の中というのは最近どんどん淘汰(とうた)されていて,頑張っていないと若い社員が上司を追い越すようなシステムになっています。ですから,のんびりとそのまま年功序列という世界は,ほとんど企業の中ではもう見えなくなってきていますし,一方では,ダイバーシティーがかなり導入されていて,男女平等で,いろいろな意味で学生時代から社会性を身に付けるということはとても大事だと思います。
【永田部会長】  安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。冒頭,永田部会長から,規模のことと,それから受益者は誰なのかということについて意見を述べよということでしたので,私は短期大学教育を長くやっている者の立場から,地方の小規模の高等教育機関の存続の必要性と,それから,高等教育第一世代の人をどうやって高等教育に取り込んでいくかということについて,短期大学の視点からお話をしたいと思います。
 今回の2040年をにらんでの高等教育のグランドデザイン構想には,短期の高等教育の役割と機能の強化を是非盛り込んでいただきたいというのが主たる意見です。日本の短期大学は,平成17年の将来像答申の中に示す大学の機能分化の中で,幅広い職業人養成や総合的な教養教育,あるいは地域の生涯学習機会の提供としての機能に取り組んでまいりましたが,近年は,学校数は最盛期の半数,学生数に至っては4分の1以下と,縮小の一途(いっと)をたどっております。しかも,ほとんどが入学定員が500人未満の小規模校であり,国立の短期大学は皆無,公立も十数校,95%以上は私立の大学法人によって運営されている状況です。
 しかしながら諸外国においては,短期の高等教育は,アメリカのコミュニティーカレッジなどの例に見るように,国家的施策として整備されております。日本の高等教育における議論の中で短期の高等教育に言及したものは,平成26年8月に出ました「短期大学の今後の在り方について」の中央教育審議会の審議まとめや,また直近では,2年プラス2年の区切りを付けた専門職大学と専門職短期大学の構想が5月に中央教育審議会に出されて,学校教育法の改正が行われ,従来の四年制大学が持ち難(にく)いとされる実践的職業教育機能を強化する高等教育機関の制度化などがございます。
 高等教育機関というのは,いつの時代にも,あらゆる分野のイノベーションを牽引(けんいん)する研究や,それに貢献するハイレベルの人材育成の機能を充実させることが第一義的な使命だということは言うまでもありませんが,それに加えて,人づくりの面から特に,知識基盤社会を生きる上で適切な高等教育を修めていることが,個人の生涯生活を豊かにすること,職場や地域社会を担う人材の質の向上につながるのであるとすれば,人生前半期の教育の機会均等という社会保障的な機能を高等教育は強化すべきではないかと,私は短期大学の教育をやっていて考えます。
 私の短期大学にも,自分の人生を作るために,経済的にも厳しい状況の中,進学して学んでいる学生もたくさんいるところでございます。特定の専門分野の職業教育や,ジェネリックスキルを身に付ける職業教育や,学士課程への編入制度が充実して,地方に根付く人材育成を通じて地方創生にも貢献している日本の短期大学をはじめとする短期の高等教育機関の教育改革や,先ほどから出ております学生への学費支援等を更に進めることで,これまで高等教育にアクセスしたことのない高等教育第一世代の人々の参入を促すべき時期に来ているのではないかと思います。長く短期大学教育に携わってきた者としましては,冒頭申し上げました短期の高等教育の再構築を,今回の高等教育の将来構想に是非盛り込んでいただきたいと思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 吉岡委員,どうぞ。
【吉岡委員】  今までの議論のある種の前提に関わることかもしれないんですが,規模にも,それから受益者にも関わるんですが,そもそものテーマが「我が国の高等教育に関する」ということですけれども,高等教育,少し狭く大学と言った場合の,一つは,「日本の大学」というときの日本という枠組み自体が,多分もう変わりつつある。どこに日本の大学ということの成立の基礎があるのかということ自体が変わってきているというのが一つです。それから,大学という形を考えた場合の大学が何であるのか。どこまでが大学なのかと言ってもいいかもしれませんが,大学の定義ということも変わってきているというところで,日本の大学を考えると意外と難しいなというのが印象の一つです。
 つまり大学とは,もともと非常に普遍的な価値や学問を扱っているという意味で,国境を越えて存在しているという面があります。もともと大学はそういう形で成立してきたと思うのですが,ただ,そこで育った人間はそれぞれの地域性を持っていて,中世なんかの大学でも,そこで育った人が次の国民国家を作っていくときの基礎になったりしていくわけです。そういう非常に普遍的なところと地域性というのを,もともと持っているものだと思います。
 今後,規模を考えるときに,例えば定員が足りないところの大学とか小さな大学であれば,例えば留学生を入れるということも,既にたくさん起こってきているわけです。外から学生を入れるということ,それから,学生が外に出ていくということ。日本の高等学校から海外の大学に出るということもどんどん起こってきているので,そういう意味では,日本の大学という枠組みを考えるというのが,まず設定の前提の部分を常に考えていなければならないのかということが一つです。
 それから,二つ目は,二十何年先にどんな社会になっているのかということはもちろんですけれども,やや積極的に,どういう社会を作っていこうとしているのか,それに向かって大学はどのようにあるべきなのかという視点を入れないと,ああなるかもしれない,こうなるかもしれないという議論が続くのではないかという気がしています。
 三つ目は,今のことに関連していますけれども,何を目指すのかということが重要かなと思います。例えば非常に明確に研究成果を出すとか,ある成果が目に見える形で社会に役に立つということをするための一つの方法は,ほとんど全てをプロジェクト型にしていくということだろうと思うんです。
 つまり,これをやるんだということを決めて,それに対するファンドレイジングができる人を集めて,そのプロジェクトに合う人を集める。教育の場合だったら,それに必要な学生を集めるという形です。10年20年たったら,解散しているということを覚悟してやっていくという,そういうやり方もあり得るのではないかと思うんですね。現にそういう方向というのは効果を出していくだろうと思います。
 ただ,10年,20年の単位で動き,作られては壊れていく組織というのは,大学なのか。最初の問題に戻りますけれども,大学という形で考える,あるいは高等教育機関という形の組織性というのはどこで担保されるのかということに関わる問題であるのかなと思います。
【永田部会長】  大変な本質論です。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  規模というお話でしたので,規模の話に限定しますが,規模というと,大学に何人ぐらいの人たちが行くべきか,あるいは大学にどれぐらい収容力があるべきかという話がまず頭に来るわけですけれども,同一年齢で大体何%が大学に行くべきかという議論が,昔ありました。戦後すぐアメリカでそういった議論がありまして,そのとき出た結論は42.5%という議論でした。
 どのように算出したかというと,大学に行っている人を調べてみて,その中で,大学の中できちんと成績を取っている人が何割ぐらいいるのか,それが人口全体にとって何割ぐらいかということを計算すると,大体そのぐらいになるということです。これは結構重要な結論で,その後,アメリカの高等教育の拡大政策,大衆化政策の一つの論拠になったわけです。その頃は,42%というのは非常に過大な数字だと思われていました。
 そこから考えてみると,今,大体四年制大学は5割になっていますから,その線には行っている。それから短期大学や専門学校等を入れますと約8割で,これは国際水準よりも少し高いぐらいではないか,アメリカよりもちょっと高いぐらいではないかと思います。
 あと2割は高等教育機関へ行かなくてもいいのかということですけれども,現在大学に行っていない人にはいろいろな理由があると思いますけれども,一方で,学力の問題は非常に重要です。PISAの学力テストは,1から5までの段階で測定していますが,1というのは全く問題自体を理解していないという評価で,2も相当低い。要するに,1や2は学力に相当大きな問題がある。15歳段階で見てみますと,大体下から二,三割ぐらいは学力に問題があるレベルです。大学に行って学習することができるのか,利益があるのかどうかについて,相当疑いがあるという層が生じているわけです。
 私は,この人たちは高等教育に行かなくていいと言うつもりは全くありませんが,しかし,日本の教育全体を考えれば,大学に入れればいいものだというのは全く当たらないと思います。むしろ初等・中等教育までに遅れて,基礎的な学力が付かなくなっている人たちに対する手当てが非常に少ない。それこそが日本の将来にとっては非常に大きな問題であって,それを高等教育の進学率でもって解決しようというのは,全く間違いであると思います。そういう意味で,教育体系全体としてどのような問題があるのかということを考えに入れて,議論すべきではないかと思います。
 そこから出てくるもう一つの話は,規模感を単一尺度で測っても仕方ないのではないか。進学率が5割とか8割とか,ある程度,行くところに来ているのかもしれないし,まだ上がるかもしれません。四年制大学の進学率は,私はもう少し上がるのかもしれないと思っていますが,そこは余り焦点ではなくて,むしろ高等教育にとっての規模感は,尺度が単一で測れるものではなくなってきたわけです。履修の利益が非常に多様化している。その中で,高等教育がどのような効果を上げて,個人に意味を持つものになるのかということが問題になっており,規模感を単一尺度として捉えるというのが時代に合わなくなっている。このことを認識することは非常に重要であると思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。今の御意見の中で一つ質問させていただきます。金子委員のおっしゃっていることの中で前提が一つだけあって,初等中等教育を充実させるというのは当然だと思いますが,その何割が高等教育に進学するのかという視点は,初等中等教育と高等教育の間に何かの線引きがあるから出てくる御意見だと思います。それは,高等教育はこのぐらいの学力が必要というのが前提にあるとして,それは,小学校から中学校に進学する段階でも,中学校から高等学校に進学する段階でもあります。それでも義務教育は全員入学していることと比較して,初等中等教育と高等教育の間にある線引きの意味をどうのようにお考えでしょう。
【金子委員】  そういう意味で,逃げるわけではないですけれども,高大接続の議論が,妙なところに行ってしまっていると思います。本来の議論は,高等学校まででどういう学力を身に付けていて,それが大学にどう結び付くかということをきちんとチェックしようという議論だった。今,大学の入学者の半分以上は,学力チェックを全く受けていません。これでいいのかというのがもともとの議論だったのに,最近発表された中間報告などを見ていると,そういう議論がほとんど抜け落ちてしまっているのではないかと思います。その意味で,高等教育改革と初中教育改革と,それから高大接続改革というのは三位一体だろうと思うんです。永田部会長の御質問に十分答えていないかもしれませんが,私はそういう意味では高大接続の重要性は非常に大きいと思います。
【永田部会長】  よく分かりました。
 吉見委員,どうぞ。
【吉見委員】  先ほど永田部会長から,大学の全体としての規模,これがいかにあるべきかという単刀直入な御質問がございました。私は,かなり単純な議論ではございますけれども,これに対して,まずそれぞれの方が明快に答えるということから議論を出発させるというのが,この場の土俵かと思いますので,それをまずしたいと思います。
 その前提として,私は,大学の質が全体として維持されるべきだと思っています。それからもう一つは,マスで見たときには,高校生の質はそうは変わらないと思います。長い時間,20年,30年,40年見てもですね。そうだとすると,1990年の時点で,18歳人口は約200万だったわけです。そして,現時点で約120万です。2040年だったら90万弱です。当然ながら,質を維持しようとすれば,日本人の18歳人口を相手にする限りにおいては,この規模の縮小に応じて,大学は縮小されざるを得ないという結論に当然たどり着きます。
 大学の数で言えば,1945年の時点で日本の大学は48校しかありませんでした。1990年前後の時点で500校ぐらいに増えました。今は800校近くまで増えているわけです。現在の人口との対比で比例して,大体4分の3に人口が減るわけですから,大学も800校が600校ぐらいに減る。あと200校以上が減るという結論に,どうしてもたどり着きます。その結論は望ましい結論ではないかもしれませんけれども,そうではない形を考えようとすれば,18歳人口以外の層が大学生の主要なメンバーであるという形を大学の中に作らない限り,私は不可能だと思います。
 そうではないとすると,どうなるかというと,18歳以外の人口ということは,具体的に言えば,私は自分の本の中でも,30代と60歳前後だと申し上げました。人生で3回大学に入るのが当たり前の社会をどうやって作るかということです。つまり,今の18歳人口の層がかなり減って,半分から3分の2ぐらいに減る。そうすると3分の1以上が,例えば30代ないし60代の人たちが,自分たちのキャリアチェンジの転換点として,つまりギアとして大学に入ることが価値があるというような大学を作る以外にないではないかと。
 もう一つは留学生ですけれども,留学生はなかなか難しい問題があって,言葉の問題とか,それから文化の違いの問題,いろいろあります。この問題を超える仕組みを大学の中に作るしかないではないかと思います。そのための構造改革をどのようにやっていくことができるのかというのが未来の大学の制度設計であって,それをしない限り,つまり18歳人口以外の層を主要なメンバーとして構成員として入れて,その人たちの能力を伸ばしていくような,あるいは人生にとって,キャリアにとって,キャリアパスにとって価値がある大学に構造転換をしていく改革がない限り,今の4分の3ぐらいに規模は縮小するしかないというのが当然の結論だと私は思います。
【永田部会長】  吉見委員は,次回以降の答えというか,意見まで述べられていますけれども,800を600にしなくても,クオリティーを保つために800がそれぞれ縮小するという選択肢もあります。現時点で言えることは,大学が18歳のみをターゲットに考える限り,大学全体の収容定員は減らざるを得ないということですね。
 小杉委員,どうぞ。
【小杉委員】  吉見委員の御意見にかなり賛成しているんですが,私は就業の立場から大学について考えてきたのです。就業と就学との関係をドラスティックに変えていく以外にないと思っていました。OECDの統計の中で,School-to-work transitionsがあって,その中の最近のもので,15歳から29歳人口のうち,どのぐらいが就学しているかという統計で,29歳まで入っていますから,日本はこれが42.9%でした。それがOECD平均だと,47.5%。高い国では,60%を超えています。それだけ20代に学ぶということが,多くの国ではもっと普通に行われているわけですよね。
 ただ,60%まで学んでいるというところの在り方は,その学んでいる学生の半分は就業しているんですよ。就業しつつ就学するという在り方が,日本では余りにも少な過ぎました。ここが大きな問題点で,これを変えていけば,18歳人口に対するみたいな形で言えば,150%にも200%にもなる可能性が十分あるんだろうと思います。
 実際に今の社会が要請しているものというのは大きな転換点にあって,変化が大きい社会の中で次々に学ぶことというのを,今,既に労働市場にいる人たちが求められているという状況です。これに対して大学は的確に持てる能力を発揮してきたかというと,まだまだ隠しているところがたくさんあって,十分それが発揮されていないというのが今の日本の現状だと思っています。
 そのためには,一つ,大学教育自体が変わっていく必要がありますが,もう一つ,学ぶことと物やサービスを生産するという生産活動,これを同時並行に行うことができるような仕組みというのが必要で,例えば職業大学みたいな新しいものというのは,最もそれがやりやすいところだと思うんですよね。ワーク・ベースド・ラーニングというのがすごくやりやすくて,そのワーク・ベースド・ラーニングの中に,生計費をそこで稼げるという仕組みが組み込まれてもいいと思うんです。そうすることによって,二十歳を過ぎた20代の学生という人たちが,親の金とか奨学金で生活するんですかという話になる。それだけの物や財やサービスを生産する能力を持ちつつ学習するわけですから,一方で,自分で生産に半分片足を突っ込みながら学ぶ,こういう仕組みが高等教育の中の普通になるべきだと思います。それがあったときに規模感という話になれば,18歳人口をベースにすれば,その1.5倍とか,そのぐらいの規模が十分だとなると思います。
【永田部会長】  ありがとうございます。吉見委員の話とも関連していて,18歳で入学するクラシカルな学生層と学び直しの社会人などを含むノンクラシカルな学生層を併せて考えていくことが前提ではあります。
 千葉委員,次どうぞ。
【千葉委員】  ありがとうございます。今回は,専門職大学というプロフェッショナルラインとアカデミックラインというのが一つ整ったということは,これからの若い世代にとっても大変朗報であろうと思うんですけれども,次の段階としては,それぞれの学種間・学校間のダイナミックな連携の実現ということが必要だと思っています。多様な学びによって多様な人材が生まれて,多様な仕事に対応できるという形になるのではないかと私は考えております。
 日本の国は,人口減少社会の中で,1億総活躍社会ということをこれから目指していくということになるわけですけれども,これからの我が国の発展というものには,就職前の最後の教育をする高等教育機関の役割というのは大変重要だと思っています。1億総活躍社会というのは大変壮大な構想ですけれども,これを18歳という1年齢世代というところで切ってみると,これは100万人とか,40年ということになると80万人ということになるのですけれども,その100万なり80万人という1世代の人間を活性化させるということを,我々高等教育機関は考えるべきで,先ほど金子委員がおっしゃっていた言葉をかりれば,高等学校の1年生の90万人も,高等学校2年生の90万人も,それぞれの世代の人たちをどのように活性化していくのかということが重要なことだと思っています。
 しかし,現状を見てみますと,これから第4次産業革命,あるいは各委員の先生方がおっしゃっているAIという時代がやって来るにもかかわらず,現在,工業高等学校の学生は25万人ぐらいしかいないんですね。一時は50万人を超える生徒さんがいたわけですけれども,それが今,25万人ぐらしかいない。2040年になったときには,もしかしたら10万人台になっているかもしれない。そのような中で,我々の高等教育機関が,普通科に非常に偏っている高校生,そしてサポート校や通信制高等学校や様々な学びの形をとっている高校生をどう受け入れて,それをどう育てていくのかということを考えると,今の高大接続という一辺倒の考え方ではなくて,高等専門学校,短期大学,大学,専門学校,そして多様な高等学校というものを,高専大連携という形でダイナミックに連携すべきではないか。自由に学びたい道を選べる,自ら学ぶということから,これからの時代に必要な創造力や発想力というのが生まれてくるのではないかと思いますので,その地域による高専大連携を進めることで,それぞれの個性や,あるいは事情を乗り越えて,それぞれが満足のいく学習をできるという形にしていかなければいけないのではないのかなと思っています。
 また,大学における社会人教育が,諸外国に比べて極めて少ないわけですけれども,それは,国が求める,社会が求める人材を作るという意識が低いからではないのかなと思うんですね。専門学校の場合には,どちらかというとそういう観点で教育をしていますから,社会人が学んでいる率が大変高いわけですけれども,今度の専門職大学を含めて,社会が求める必要な技術者・実務者を送り出していくということを実現していくと,高等教育全体のボリュームというのは増えていくのではないかと思います。
 また,専門学校の学生も,今,60万人ぐらい全国にいるわけですけれども,この方たちも,人口減少社会の1億総活躍社会の中では,高等教育の最終段階の学歴として,学位が付与されるところまで全員が進む形にすることによって,その数というものは,ある程度今のものを守っていけるのかなというのが私の意見でございます。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 次,両角委員,どうぞ。
【両角委員】  今回,規模についてということなので,そこについてのみコメントさせていただければと思います。まず,18歳のところのお話につきましては,行きたくても行けない人がいる。それが必ずしも学力だけの問題ではなくて,経済的な理由で,行く行かないが決まっているということについては,望んだ人が行けるような形にしていくべきではないかと思います。
 ただ,私が大学生と授業などでこの手の議論をしていますと,大学の数も増やさなくてもいいし,これ以上大学に行く必要はないんじゃないかと考えている学生さんが本当に多くいます。なぜそうなのかということを突き詰めていくと,就職のために必要だけれども,そんなに何か身に付いたという実感がない,というようなことを言うんですね。それはすごく深刻なことだと思いまして,行きたい人は行けるようにするということは当然ですけれども,あわせて,しっかりと質をどこまで担保できるかという,質の向上といったこととセットでそれは実現されるべきだなということを,日々,危機感として感じています。
 規模について言うと,私も,18歳人口以外の社会人のところも,行きたい人が行きたいときに行けるようになるべきだと考えています。私は大学院で,社会人が多く学びに来るところで教えているんですけれども,必ずしも学位取得だけじゃなく,科目等履修生であったり,様々な形で学びたい方はたくさんいる。ただ,なぜ学びに来ないかと聞くと,自分を雇用している方から理解が得られない,何で早く仕事をやめて学びに行くんだ,というところが相当大きいということで,企業も変わっていただいて,社会人がもう少し大学に行けるようにしていくべきではないかと思います。
 一般に社会に出たときに,例えばコミュニケーション能力とか,いろいろな汎用的な能力が必要だという話はあるんですけれども,実際に,いろいろな年の方がいらっしゃいますけれども,今,目の前の仕事をもっと良くするために知識であるとか考え方を深めたいということで学びに来ていて,そういう需要というのはかなりあります。また,そうした人たちに教育していこうと思うと,私たちがやっている教育研究の内容もおのずと変わってくるという,そういう様々な良いサイクルがあるのではないかと思っています。
【永田部会長】  ありがとうございます。
 前野委員,どうぞ。
【前野委員】  それでは,高等専門学校教育にタッチしている者としてのお話をさせていただきたいと思います。幾つかポイントを用意してきたのですが,特に規模ということでお話をということでございますので,少しそれに限って話させていただきます。まず背景として,私どもは理工系の早期高等教育機関と言える15歳からの教育をやっているのですけれども,特に近年,アジア各国,シンガポールとかマレーシア,中国,台湾,あるいはインドでは,実践も含めた,かなりレベルの高い理工系教育を受けた人材を輩出しています。我が国としては,そういった人材に伍(ご)して働ける人材を送り出すこと,これは非常に重要なことかなと思っております。
 一方,その背景のもう一つの面としましては,何人かの先生方から今,御指摘あったように,AIあるいはIoT,それから情報セキュリティーといった問題は,非常に速い勢いで,我々の想像を超える勢いで広がっておりまして,従来の情報工学だけに限った範疇(はんちゅう)から,全ての人間活動の領域に浸透している,マージしているという状況が来るのではないかと思っています。これは理論的な背景なしに,ビッグデータですので統計的にどんどん入ってくる形ですから,よく分からないまま入ってくるのが実情かと思っております。
 こういった背景の下で我が国の高等教育を考えるとすると,現在の議論は,例えば大学でのこと,大学院のこと,短期大学のこと,あるいは高等専門学校のことと限定されており,特に高大接続,先ほど千葉委員からも御指摘あったように,そういったものは一旦18歳で切るという入試論で終始しています。恐らくもう少し長いスパンで考えると,入試論から一般教育論,あるいは一貫教育論といった形にシフトしていいのではないかと考えております。
 つまり,15歳から早期の高等教育を受ける分野はどんなものなのか,全員ではなくて,ある限られた割合ですけれども,早く始めることが必要なものがあるのではないか。ただ,早く始めると偏った教育になりますので,そういった場合に,例えばどのようにリベラルアーツ的なことを教えるか,あるいは,年次を重ねるごとにどんな教育をしていくかといったことが必要なのかなと思っております。
 このような背景で考えますと,今,国立高等専門学校は,公立や私立もそうですけれども,各地域に根差しておりまして,こういった高等専門学校のような15歳からの早期高等教育,それから,進んだ形で,専攻科でバチェラー,学士を取っておりますので,こういった理論と実践を兼務した高等教育が必要なのではないかと思います。もちろんマスター・ドクターの教育は重要でございまして,そちらは大学院で,今,特にドクターの数,我が国の日本人の学生が足りないという問題は深刻でございますけれども,実質,ドクターにいる何割かの学生は,高等専門学校のOBが比較的多くなっています。
 そういった形でも,きちんとした学士の人材あるいは準学士の人材を供給すること,これはとても重要だと思いますし,今,よく言われておりますように,STEMであるとか,あるいはアクティブラーニングは当然そうですけれども,プロジェクト・ベースド・ラーニング,あるいはワーク・ベースド・ラーニングといったものと同時に,リサーチ・ベースド・ラーニング,これをしっかり押さえないと,STEMは完成しないんですね。
 ですから,リサーチ・ベースド・ラーニングということはとても時間が必要ですし,手がかかります。従来の卒業研究だけに済ませている,あるいはマスター・ドクターの研究室だけに限った研究はなかなか難しく,一研究室のみではない,幾つかの研究をリサーチとしてやる,こういったこともとても重要なのではないかと思います。したがいまして,そういったところは早期からの教育も併せてやっていくことは,とても重要なことかと思います。
 私の立場から申しますと,高等専門学校は,今,1%弱の割合ですが,もう少し規模の拡大があっていいのではないか。これは相対的な規模で,実現するかどうかは分からないところですが,私の個人的な希望としては,少し拡大した方が,各国のかなり優れた高等教育機関を修了した外国の人材と一緒,あるいは伍(ご)して実践的に働ける人が増えるのではないかという気がいたしております。
 そのためには連携が必要かと思っておりまして,他機関と連携した教育の高度化ということは重要であると考えています。先ほど千葉委員がお話しされたように,15歳からの高等学校との連携,あるいは専門学校,高等専門学校,それから大学,大学院といった,かなりロングレンジでのつながった教育でどういった人材を育てるかということが意味のあることではないかと思っております。もちろん,そういった連携におきましては認証評価というのが重要でございまして,認証評価同士で「行われたことの連携」が必要なのかなと思っております。
【永田部会長】  古沢委員,どうぞ。
【古沢委員】  高等教育の将来構想について考えるときに,私のような大学関係者以外からの視点で見た場合も,永田部会長のおっしゃったような高等教育の規模とかサイズは,できるだけ具体的に示すことが必要ではないかと思います。今までも,国としてどういう規模を目指すのかというのは,基本的に規制緩和の流れというのはあると思いますけれども,余り具体的に示されてこなかった,曖昧な部分が大きいかと思います。
 私としては,もしニーズがあるのであれば,現状に近い規模を高等教育全体として維持していってもいいのではないか,可能ではないかと個人的には考えるんですけれども,少子化の中でも進学率を上昇させるということだと思うんですが,その場合,当然,質の担保というのは不可欠になりますし,役割分担は今以上に必要なのは明らかで,専門職大学が創設されると思いますが,先ほど前野委員からシンガポールという話も出ましたけれども,職業教育について強化ということを本格的に考えなければならないと思います。
 地方大学振興を目的に23区内の定員を制限するとか,高等教育の無償化ということが提言されるのであれば,なおさら大学全体の規模・在り方について,細かい数字ということではないですけれども,土台となる考え方というのを打ち出すことは必要だと思います。具体的には,現在の設置認可とか開設後の評価がうまく機能しているのか,定員割れが4割に上るという現状にどう対応していくのかということにも,踏み込んだ議論が求められるかと思います。
 諮問事項にもあるようですが,各地域で自治体や産業界と連携して,その地域ごとの高等教育の将来像を中長期計画的なものを打ち出すということは大切になってきて,その中で,設置者の枠を越えた再編の在り方についても検討していくべきではないかと思います。
 各地域を担う人材を育てることと同時に,学生の流動性を高めることも重要な課題になると思います。その一つの方策として,大学の一極集中と言われますが,地方から大都市だけでなくて,大都市から地方への流れというのを作るためにも,経済的に厳しい学生を支援するためにも,海外の大学のように寮とか,あるいは適切な住宅を何らかの形で提供するということも有効じゃないかと思います。今年,東京大学が女子学生のための住居というのを準備して,非常に話題になりました。また,米国のように大学間の流動性を高めるために,転編入の機会を増やしていく方策として,例えば各大学が転編入の枠を拡充することを何らかの形で支援していくことも考えていいのではないかと思います。
 もう一つ,全く諮問事項にはないんですけれども,なかなか入試改革が進むのは難しい現状とか,海外との交流ということも踏まえて,将来的な課題として,秋入学の導入というのも検討する価値はあるのではないかと思います。
【永田部会長】  麻生委員,どうぞ。
【麻生委員】  永田部会長がおっしゃいました,受ける側(がわ)から見たサイズをどうするかという観点でいきますと,私は,大学の数の問題ではなく,パーセンテージとしましては,100%を目指す必要はないと思います。なぜこういう考えを持っているかといいますと,私は地方の山口県で短期大学をやっているんですけれども,山口県が主導した形で,進学進路フェアをやっております。是非短期大学や大学に参加しないかということで,全ての加盟大学がアピールしています。一つは経済的理由で大学等に行けないというのもありますが,行かないじゃなくて,行く必要がないとおっしゃる方もいらっしゃいます。
 なぜかというと,日本は当然,AIやIoTや科学技術,最先端を行っていると私は思いますし,その反面,日本の文化を支えている職業というのもたくさんありまして,いわゆる職人のような世界です。具体的な職業名は挙げませんけれども,そういったものというのは,中学を卒業してでも,親方の後ろ姿を見ながらコツコツと学んでいくというのもまだあると思います。こういった方に本当に高等教育が必要かというと,早くそういう技術を修得し,手に職を付けたいという方もいらっしゃいます。
 数十年前と今の大学の在り方については,例えば中学校を卒業しても仕事に就けるわけですし,高等学校を卒業しても職に就けるわけですし,大学,それから大学院でもそうです。早いうちに職業に就くことは決して悪いことではないと思いますし,それに応じた,また伝統文化もあるわけです。その構造が少しずつ変わっているのは事実かもしれません。考えるべきところは,義務教育が終わった後,それから高等学校を卒業した後,さらに大学,大学院を卒業した後どうするかです。その中で,大学や短期大学の教育がどうあるべきかというものに着目した上で,今後,大学教育の在り方を,2040年に向かって考えていく必要があると思います。
【永田部会長】  麻生委員,ありがとうございます。麻生委員も金子委員と同じように,どこかで高等教育は別物だというお考えでしょうか。
【麻生委員】  別物だという区切りを我々が付けているだけであって,例えば職人の方を養成するシステムが大学教育,高等教育にあれば,別ではないかもしれません。今回の専門職大学は,ある意味ではそういう要素が入ってくるかもしれません。
【永田部会長】  御意見の趣旨がよく分かりました。
 日比谷委員,副部会長としての御挨拶も兼ねて,このセッションの最後にお願いいたします。
【日比谷副部会長】  ありがとうございます。前回,どうしても都合がつかずに欠席いたしましたけれども,副部会長を仰せつかっております日比谷潤子でございます。この度の諮問は,我が国の高等教育に関する将来構想ということですけれども,既に何人かの委員から御発言がありましたように,高等教育は別物ということはお考えとしてあるかもしれません。しかし,初等・中等教育の上に乗っかっているものですので,特に中等教育にある程度踏み込む,中等教育でどんな資質を育ててほしいかということも併せて検討しないと,高等教育の将来は描けないと思いますので,高大接続という御発言もありましたけれども,少し幅広く捉えて,この将来構想部会で皆様と議論を深めていきたいと思っております。よろしくお願いいたします。これを副部会長としての御挨拶とさせていただきます。
いろいろな御意見が出ましたので,最後に過激なことを言おうかと思うんですが,18歳人口が減ったって怖くない。私は人口動態を全く無視してものを考えていいと思っているわけではありませんけれども,この話のときに,とにかく18歳人口が減るということを言い過ぎていると,常々思っております。
 それはなぜかというと,よく御存じのとおり,日本の大学というのは,18歳プラス数年で入ってくる人のパーセンテージが余りにも高いという,世界の中では極めて珍しい国になっておりますが,そこを根本から考え直すことが,日本の高等教育の将来の規模を考えることにもつながると思います。受益者が誰かということ,年齢の高い人もありますし,それから海外から来る人というのも含めれば,もっと違った視点が生まれてくると考えております。
 ただし,仕事に一旦就いた人がキャリアアップのために来たいとか,あるいは,先ほど60歳とのお話がありましたけれども,もう次の仕事はもしかしたら余り考えていないんだけれども,純粋に自分の興味を満足させるためにお金を払っても行きたいという人は,いないわけではないと思います。それから海外から来る人もそうですが,そういう人たちに是非大学に行きたいと思ってもらうためには,質の保証,それから魅力的なプログラムを作ること。これは必ずしも学位取得を目指さない方も多いと思いますので,科目のレベルでもそうかもしれませんが,そこをしっかりすることが最も重要なことだと考えておりますので,特に質保証であるとか,それから認証評価の在り方,それから設置の基準について,かなり抜本的な議論をこの部会でできればと思っております。
【永田部会長】  ありがとうございました。私も委員として一言述べさせていただきます。誤解を招かないように先に申し上げますと,実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関について,私自身が部会長として関わってきたわけですが,もう一つ本音があります。それは,衣食住だけで人は生きていけるか,ということです。宇宙のあちらに何があるかということを知りたい人は当然いるだろうし,それに類することは,宇宙でなくてもほかにもあるはずです。文学でもいいんです。人の心の奥ひだのあちらに何があるかでも結構ですが,大学はそういう探究心に応える機能はどこかに残っていなければいけないだろうと思います。全部の大学がやる必要はありませんが。
 もちろん,職業教育も大切ですし,イノベーション創出も大切だけれども,宇宙の向こうに何があるかといったことを知るすべは個人の能力を超えていて,探求するためにはいろいろな装置が必要であったり,いろいろな幅広く深い知識が必要であったりということもあるわけです。これをできるのは大学だけだろうと思います。
 それから,大学の数のことについては,私は余り今,言及すべきではないと思っています。一方で,質を担保していかなければいけないという点については,すでに何人かの委員からも出てきた意見でもあり重要な点だと思います。それから多様性は,先ほど述べたように,いろいろなニーズもデマンドもありますから,それに対応するのも大学だと思っています。次回以降は,こういったことを踏まえながら,高等教育の規模の問題は,どこかの段階で責任を持って,ある一定のことは言わざるを得ないだろうと思います。
 本部会の役割は理想論ではなく,この国全体としてどうやって高等教育を支えるかという現実的な施策の方向性を示すことまで含まれています。その上で,いかにして施策の実施のための支援を得るかというのが4番目の課題,つまり,十分な財源を確保できるか,ということを問われているわけですから,本部会にはそこに責任があると思っています。
 それでは将来構想について,本日はここまでにさせていただいて,次回以降は,もう少しまた具体的なところに踏み込んで,一から議論をしていただきたいと思います。


(2)大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会の中間まとめ及び新産業構造ビジョンについて,事務局から資料2及び資料3に基づき説明があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  それでは,その他の事項として,委員の先生方と情報共有を含めて進めておきたいことが二,三ございます。最初に,「大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会の中間まとめ」というのが出ておりまして,その内容について事務局から御説明いただいて,御質問と若干の議論をしたいと思います。
 それでは,事務局からお願いいたします。
【浅野専門教育課長】  専門教育課長でございます。お配りした資料の資料2に基づいて御説明させていただきたいと思います。順番が逆になるんですが,最後の10ページ目を御覧いただければと思います。
 大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会は,1月に文部科学省に設置されまして,産業界,それから大学側と,半数半数のメンバーで構成された委員会で,第4次産業革命や超スマート社会の実現に向けて,AI,ビッグデータ,IoT,こういった技術革新を社会の実装につなげていくような,そして産業構造改革を促すような人材育成,そして,その先,第4次産業革命の先をまた考えていくような工学系の人材を育成していく必要があることから,現在の教育のシステム等について検討を行ったところでございます。昨日,この取りまとめがまとまりまして,その内容について御説明させていただきたいと思います。
 2ページ目に戻っていただければと思います。2ページ目では,工学教育の歴史が書いてございます。明治4年に工部省が工学寮を設置して,土木,機械,造家,電信といった,今の工学部の学科構成をとっている工学寮を作って,その後,それが東京大学の工学部につながっていくわけですけれども,帝国大学,そして専門学校という形で,戦前に工学系の大学が作られていったわけでございます。
 戦後,対日工業教育顧問団の報告書では,工学教育は一つの広い一般的産業のうちの狭い分野における専門化を避けるべきで,学者との違いに言及して,工学は生産過程や機械について,工業的問題の解決と同時に経済的な解決が必要と指摘はされていたんですが,戦後,大学における工学部の新設が相次ぎ,工学教育が徐々にアカデミックの方へ寄りつつあったのではないかという状況の中で,1970年には情報工学科が初めて設置されまして,工学の中に,初めて情報の学科が作られてきたわけでございます。
 次の3ページ目では,工学系の学部の入学者の割合が書いてございます。平成2年度と平成26年度の24年の比較でございますが,機械,電気,土木,応用化学という形で,この明治時代に作られた学科構成の入学定員の枠が,ほとんど大きくは変わっていないという状況があるわけでございます。
 一方で,次の4ページ目をおめくりいただければと思います。それぞれの学科を出た人たちが,どういう就職先に勤めているかということでございますが,これは同じ平成2年度と26年度で比較したものでございますが,製造業が大幅に減り,運輸・通信業が大きく伸びているわけでありまして,産業構造の変化がかなり顕著に表れているわけですが,先ほどの入学者の割合というのは大きな変化がないという状況になってございます。
 その次の5ページ目では,工学の全体の入学者数についての推移でございます。工学系は大体9万人から10万人で推移していて,一番大きな規模の社会科学の次の規模ではありますが,社会科学,人文科学に比して,工学系の領域については人数が減ってきているという状況がございます。
 その次の6ページ目では,その推移を更に割合で出した数字でございまして,1980年代は20%弱であったものが,工学系の占める割合は,2015年に14.8%になっているという数字でございます。
 その次の7ページ目では,国際的な比較で見ますと,理系の卒業生の割合が,諸外国に比べて低いのではないかという数字でございます。
 こういった状況の中で,次の8ページ目でございますが,この第4次産業革命やSociety5.0といった,こういった産業構造の変化に伴って,工学教育の革新が喫緊の課題であるという認識を持って検討を進めてきたわけでございます。輩出すべき人物像として,スペシャリストの養成というのは今まで非常に力を入れてきたわけですけれども,ジェネラリストとしての幅広い知識,俯瞰(ふかん)的視野を持つ人材の育成も,併せて必要なのではないか。それから,異分野との融合,学際領域の推進ということも,必要な要素ではないかということです。
 そして,最後のぽつですが,これだけIoTであるとかAIとかいった時代になってきて,リアル空間だけではなくて,バーチャル空間,これをそれぞれ俯瞰(ふかん)できる,把握できる人材が必要なのではないかという観点から,下に講ずべき具体的施策として,学科ごとの縦割り構造の抜本的見直しということで,先ほど数字を見ていただきました,かなり学科の縦割り構造が非常にきつくなってございますので,この学科や専攻の定員設定の柔軟化や,この縦割り構造の見直しが必要であろうということ。
 それから,二つ目に,その次のページの9ページ目を見ていただければと思いますが,従来は,学部4年で卒業する方,それから修士・博士に進む方,五年制で進む方という形であったんですけれども,今回,他領域の学習を幅広く勉強していくためには,4年間では十分でない部分も出てくるであろうということで,学部・修士の六年一貫制の教育システムを作るべきではないかということで,御提言を頂いているところでございます。
 そういったことが実現しますと,8ページ目に戻りますが,メジャー・マイナー制の導入という形で,主たる専門の分野以外に,もう一つ,マイナーとしての学習を積むことができるのではないか。それから,産業界から非常に強く,基礎教育の強化ということが言われております。これまで学科縦割りで行われてきた基礎教育を,工学全体で基礎教育を展開するということで,特に情報やデータサイエンスといった部分も基礎教育に含めてしっかりやるべきではないかと御議論いただいております。産業構造が変化しても,基礎教育がしっかりできていれば,どんな産業の変化にも対応していける人材が養成できるだろうということでございます。
 それから,情報科学技術の強化でありますとか,それから産業界との人材交流,そして,博士課程に企業の方が社会人として入って,共同研究を通じて博士課程を取っていくプログラム,そういったものも開発をしていく必要があるのではないかといった議論が行われてきたわけでございます。
 今後,今年度中に具体的な制度改正等の検討を進めまして,来年度から事業の実施,組織の整備の準備というものを進め,2019年度から本格的に制度改正を踏まえた体制作りをしていくという流れで,今後のスケジュールは考えております。
【永田部会長】  ありがとうございます。もう一つの方も,先に説明をしていただいた方が分かりやすいかもしれません。新産業構造ビジョンが出ております。経済産業省の諮問機関である産業構造審議会で1年弱かけて議論をされた取りまとめということでございます。本日は,経済産業省から井上産業政策局産業再生課長においでいただいていますので,御説明をお願いしたいと思います。
【井上経済産業省産業再生課長】  井上でございます。本日は大変貴重な機会を頂きまして,誠にありがとうございます。お手元の資料3に基づきまして,簡単に御説明を差し上げたいと思います。
 新産業構造ビジョンと表題がございますが,関係省庁とも御議論をさせていただいて,それぞれの省庁からも,担当の管理職の方にずっとオブザーバー参加していただいて,約2年間,議論をしてまいりました。全体像は非常に膨大なものですから,本日はその一部だけ,簡単に御説明させていただきたいと思います。
 まず,今,専門教育課長の御説明にもありましたけれども,今,何が起こっているのかというところを,簡単に御説明申し上げます。ページをめくっていただきまして,右下に2と書いてあるところでございますが,現状として大変な技術のブレークスルーが起こっていると認識しております。IoT,ビッグデータ,人工知能,ロボットという言葉が非常にもてはやされておりますけれども,これらのどれか一つが物すごく変わっているわけではなくて,四つ全てがとても大きなスピードで変わってきているというのが現状であると思われます。
 2ページの下にございますとおり,データ量の増加は2年ごとに倍増していますし,ハードウエアの処理性能は,ムーアの法則で,2乗,2乗でどんどん上がってきている。また,人工知能については,この議論を2年前に始めたときは,まさか人工知能が囲碁の棋士に勝つとは思っていなかったわけですけれども,もはやこのような状況になってきていて,人工知能の中でも,ディープラーニングと呼ばれる技術領域については,大変な進歩が進んでいるということかと思います。
 3ページで,人工知能についての動向を俯瞰(ふかん)しております。上のディープラーニング革命と言われるところが,現状,すごく動いている。
 こうした技術の発展によって,次のページでございますが,今まで機械あるいは人工知能と呼ばれるものであってもなしえなかった様々なことができるようになってきていまして,例えば画像認識は,かなりもうできるようになってきた。次は運動の習熟ということができるようになっていき,さらには,言葉の意味を理解できるまでになっていくのではないかと言われています。その結果,上に書いてあるような,様々な人間でしかできなかったようなことが,どんどんできるようになっていく可能性があると見込まれています。
 そして,5ページでございますけれども,こうした人工知能あるいはロボットという技術は,それだけではなかなか社会が変わらないようにも思えるんですが,全体に通じた共通基盤技術ということですので,全ての分野の技術と,あるいは全ての分野の関連データと掛け合わされることで,全ての分野で全く新しいサービスや製品を生み出し得る可能性が出てきていると考えられております。
 6ページですが,世界には,国際連合の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にも書かれていますが,日本では余り問題になっていないような水とか食料といった問題から,エネルギー・環境制約,あるいは日本で特に大きな問題になっている少子高齢化など,多様な課題があって,これについて,今まではなかなかアドレスし切れなかったものが,この新しい技術やデータで,どんどん対応可能になってくるという時代になっていくと考えられます。
 そうすると,7ページでございますが,こうした社会ニーズに対応する新たなバリューチェーンが,大きな塊で生まれてくると見込まれておりまして,例えばこの表に書いてあるのは,自動走行やドローン関連でございますが,今までは考えられなかったようなサービスや製品が,木々の葉っぱのようにどんどん生まれてくる。それが関連産業あるいは雇用への影響をどんどん与えていくといったような世の中になっていくと見込まれております。
 そういう中で,8ページでございますが,産業構造自体,先ほどの専門教育課長の御説明にもございましたが,とても大きく変わるだろうと見込まれておりまして,業種の壁というのはどんどんなくなっていってしまうのだろうと考えられております。その中で,産業再編,例えば自動車製造業の中では,三菱が苦しくなったので日産が吸収しました。それとも,グーグルが勝つんだろうか,トヨタが勝つんだろうかといった議論がどんどん出てきていて,従来は自動車製造業なら自動車製造業の中だけの再編だったんですが,今後は,右側の縦のバリューチェーン全体を飲み込むような大きな再編が起こっていくということになるんだろう。下に書いてございますとおり,既に自動車業界ではそういうことが起こっていて,今までの業種の壁で守られていた競争関係ではなくなっていくということかと思っております。そういう意味では,産業構造が抜本的に変わっていくと見込まれております。
 その中で,9ページ,10ページでございますけれども,当然のことながら,今までの日本のとても大切なボリュームゾーンであった仕事,従来型のミドルスキルのホワイトカラーの仕事というのは,残念ながらどんどん大きく減っていくんだろうと。そうすると,これに応じた教育とか人材といったものは,かなり厳しい状況に置かれていく。他方で,オックスフォード大学とかが,2030年になると人工知能で仕事の半分がなくなりますというのが出て,話題になっていますが,これには増える方の仕事が全然入っていません。なので,この9ページ,10ページも,まだ荒いんですけれども,新しい時代には新しい仕事がどんどん生まれていくはずでして,逆に言うと,それを増やしていかないと,なかなか厳しいことになってくるんだろうと思われます。
 11ページはマクロ試算をしたところですが,現状放置ケースと変革ケース,それぞれ押さえますけれども,どの業種というより,どういう仕事の類型かで分けて見ていますが,現状放置の方だと,もともと物すごく減り幅が大きい,減ってばかりというところが,変革ケースで頑張ると,仕事の類型によっては,減らなくて増えるといったところを生み出すことができてくるだろうと見込まれております。こういった仕事をどうやって産業界と一緒になって増やしていくかということですし,そういうところにニーズがあるので,人材もそういったところに移動していくということが必要になってくるのかなと考えております。
 12ページが模式図でございまして,なかなか今のままで行きますと,多くの仕事が人工知能やロボットに代わられてしまったり指示されてしまったりする低賃金化する仕事になっていくので,そうでない,右側のような,機械や人工知能をむしろ使いこなすような人材が増えていく社会になっていかなければいけないのではないかということでございます。
 こういう中で,政府といたしまして,産業政策の観点から何をこれからやっていくかということでございますけれども,13ページ,次の14ページをめくっていただきます。今まで第4次産業革命技術がどんどん進んでいく中で,この国際競争の第1幕は,ネット上のデータをめぐる競争でありまして,これはアメリカで言うとGAFA,グーグル,アップル,フェイスブック,アマゾンですし,中国で言いますとBAT,バイドゥ,アリババ,テンセントといったデータプラットフォーマーが大変大きな力を持っておりまして,正直に言うと,日本の産業は大負けに負けているというのが実態かと思います。
 他方で,データが物すごく大事になっていくこの新しい時代において,日本はもう駄目かというと必ずしもそうではなくて,これからのデータをめぐる主戦場は,2行目に書いてありますけれども,健康・医療・介護とか,製造現場とか,自動走行等,現実の世界にあるリアルデータ,これをどうやって集め,活用していくかというところに移ってきていると見ております。これは,アメリカであるとか,欧米であるとか,政策当局,あるいは産業界の皆さん,みんなそういう認識だと思います。誰もここを取れていない,活用し切れていないところを,誰がどうやって上手に活用して,勝つだけじゃなくて世界に貢献するのかというところがすごく大事になっている。
 その中では,我が国の強みというのを3点整理しておりまして,実はこのリアルデータというのは,日本は物すごく豊富にあって,蓄積もいっぱいしています。例えば健康の部分で言うと,電子カルテとか,あるいはレセプトとかいいますけれども,レセプトを96%電子化されて,しかも個人個人のデータでひも付いている国なんて,ほかにありません。あるいは介護のデータも,まだ鉛筆書きですけれども,ここまで一人一人についてデータが蓄積されている国はなくて,実は現実世界でも,スタンフォードの人工知能研究所が物すごく関心を持っていて,今,共同開発をしているとか,いろいろな形でリアルデータが,使い切れていませんけれども,日本にはたくさんあります。
 また,二つ目は,「モノ」の強さというところが伝統的にあって,この新しい時代はソフトだけでは駄目で,ソフトとハードが結び付かないと現実世界を変えていけないので,そういった意味では,この「モノ」の強さというのも大変な可能性を持っている。
 そして,三つ目ですが,少子高齢化をはじめとする社会課題が大きいということは,実は大きな利点でもあって,この国でデータを使いながら少子高齢化にトライしていかなきゃいけない。いけるというところが,すごく意味があるんじゃないかと。これは諸外国からも非常に強く指摘されているところです。
 この3点を踏まえて,モノの強みを生かしたアプローチとして,赤囲いしていますが,一つ目は自動走行等の「移動する」という分野,二つ目は,「生み出す・手に入れる」,これはスマートサプライチェーン,ものづくりの分野ですけれども,こうした二つの分野は,日本が世界に貢献し,勝っていける分野であるので,ここに官民の投資を集中してはどうだろうかという議論をしております。
 また,もう一つは,課題解決のためのアプローチということで,青い方の健康・医療・介護,あるいは暮らしといった分野でもやっていけるのではないかと考えておりまして,ここにそれぞれ書いてあるような目指すべき光をきちんと定量的に示して,それを社会で共有しながら対応していくと。
 対応の仕方は,次のページでございますけれども,戦略4分野におきまして,ボトムアップではなくてトップダウンで目標逆算のロードマップを描いて,どんどんいつまでに何をやらなきゃいけないか,特に政府ですので,規制制度をいつまでにやっていくのかということを直していくということと,右側ですが,突破口となるようなプロジェクトをどんどん進めていくということが必要だと考えております。
 次のページでございますが,こうした新たな時代に至る上では,ルールの在り方,人材の在り方,イノベーションの在り方,様々に大きく変えていく必要があると思っておりまして,まず当面やるべきことを問題提起させていただいております。大体今年の政府全体の成長戦略の方に反映いただいてきているのかなと思います。
 その中で,本日の議題との関係だけ付言させていただきますが,人材育成・活用システムのところでございます。17ページから18ページに移っていただきまして,第4次産業革命の中で,今申し上げましたとおり,産業構造・就業構造が,とても大きく変わっていきます。これに対応した人材育成を,国を挙げて再構築する必要があるのではないかという問題意識を持っておりまして,特に圧倒的に不足しているIT・データを使いこなせる人材ということが必要ではないかと。
 これは,このページの下,丸1でございますけれども,全ての方々に基礎的なITあるいはデータリテラシーを備えていただくということ。このために,小中学校からのプログラミング教育の必修化であるとか,大学における数理・データサイエンス教育等の強化といったことが大変有り難いのではないかと思っております。また,丸2,ミドル層では,全ての産業で中核的なIT人材を作るために,学び直し,スキルのアップデートができるようにしていく必要がありまして,政府としても,厚生労働省とも連携しながら,経済産業省が施策を講じてまいりますけれども,こちらでも大学の存在は大変大きいのではないかと考えております。
 それから,丸3,トップ層でございますが,世界で活躍できるトップレベルの人材を育成あるいは獲得するという観点で,指定国立大学,卓越大学院など,大変な機能が期待されておりますし,産学官の連携を進めながら,トップ外国人もどんどん活躍をしていただくということが大事ではないかと,かように考えてございます。
 既にこうした指摘につきましては動きが始まっておりまして,19ページは,政府横断で文部科学省,厚生労働省を中心に,弊省も入らせていただいて,どんな政策が必要なんだという検討が始まっております。
 20ページでは,求められるスキル・コンピンテンシーということで,もちろんデータ・ITだけじゃないというのは当たり前ですが,そこも大事にしながら,ほかにこういった能力が必要じゃないかといった御議論が始まっております。
 また,22ページですが,それぞれ動いているところで申し上げますと,IT・データ人材の需給というのを経済産業省で試算をしておりまして,この22ページの左側ですけれども,現状で,今,IT人材は91.9万人ぐらいおられるんですけれども,まだ17万人程度不足しているわけです。それが2030年になりますと,85.7万人は存在している,これに加えて80万人程度の不足が,現状のままだと見込まれてしまいます。これをどうするのかといったこと。
 こうしたものに向けて既に先行的な動きが出ていまして,23ページは,佐賀大学がマイクロソフトと取り組まれている動きがございます。あるいは,25ページに飛んでいただきますと,滋賀大学でデータサイエンス学部がとられているといった動きが既に出ていると思います。
 こうした動きにつきまして,先ほど申し上げました政府横断の人材育成推進会議の方では,27ページにあるとおり,幾つかこうしたところを変えていくべきじゃないかという問題提起を産業界の座長の方がしてくださっており,28ページに,今年の政府全体の成長戦略に一部反映されているといったところかと思っております。
 29ページ,弊省の目から見ますと,産業界の方でも,求める人材像の明確化,産学連携の深化による人材の流動化など,やるべきことはいっぱいありますが,併せて文部科学省あるいは先生方に御指導いただきながら,高等教育機関には,この丸1,丸2に書いてある点の期待が大きいのではないかと考えております。
 また,ちょっとだけ補足しますが,産学連携という観点から申し上げますと,31ページでございますが,今,安倍総理からも御指示が出ていまして,特に産業界の方ですけれども,企業から大学・研究開発法人への投資を今後10年で3倍に増やすということを,経団連も含めてコミットいただいているわけですけれども,それが実現できるような大学の在り方というものが,今,求められていると考えておりまして,文部科学省や,関係省庁と一緒になって,31ページの右側,当面の取組を進めているところでございます。
 また,併せまして,大学システムという観点では,正に大学はとても大事なので,本当の意味でのセンター・オブ・エクセレンスになるという観点で,資金源の多様化とかガバナンスについての改善を更に進めていただくということが,大変有効なのではないかといった問題提起が,産業構造審議会ではございました。
 32ページは,産学官連携,当面こんなことをやっていきますということで,既に決まっている施策でございます。
 また,36ページは,大学システムというところでございまして,これも今年,少し進んでいくことになっておりますが,緑のところ,大学における多様な資金の獲得・活用という論点と,大学の戦略的な経営力の強化という両方の観点があるのかなと考えてございます。
 38ページは,大学のシステムについて,我々,物すごく勉強し切れているわけではございませんけれども,こういう点は成功しているところなのかなといったところを,外部からのガバナンス,モニタリングも含めて指摘させていただいております。
 このビジョンは1回取りまとまっておりますが,それぞれ実現していかないと意味がないということで,我々も関係省庁と引き続き御相談しながら,しっかり勉強を重ねて,やるべきことをやっていきたいと考えてございます。
【永田部会長】  ありがとうございました。何かここで聞いておきたいことがあれば,御質問いただきます。簡潔にお願いいたします,金子委員。
【金子委員】  大変面白い内容で,学ぶところも多いんですが,私は経済産業省に伺います。こういった計画を進めていく上で,大学と産業との連携が非常に重要だということですが,ここでも大分話題になっていましたが,現在のところ,社会人の大学院での学びというのは非常に少ないわけですね。もう10年ぐらい5万人ぐらいで推移しています。私たちが行いました調査を見てみますと,これは企業が学生を出さないということが最大の理由なわけです。これもかなり口を酸っぱくして,もう何年間も,産業界はいろいろなことを期待するけれども,実際に大学を利用していないではないかと言っていますけれども,これについて,具体的な施策をどう受けていいのか。こういうことを聞きますと,大体何かやりますとかおっしゃるんですが,具体的に何をやるのか,それをどうやって検討されているのか,それを伺いたいと思います。
【伊藤経済産業省産業人材政策室長】  ありがとうございます。経済産業省で人材政策を担当しております伊藤でございます。金子委員がおっしゃった論点は,正に先ほどの人材育成推進会議という,これが各省連携の会議体でございますけれども,その場で毎回,大激論になる論点でございます。それで,一言で申し上げると,働き方改革と教育改革はセットでなければならないというのが,この人材育成推進会議を半年やってきた大体のコンセンサスになってきているということだと思います。
 と申し上げるのは,結局のところ,働く方のスキルであったり,あるいは能力,こういったものが正当に評価されない。現実問題としては,相当な企業において,いまだに職能給であったり,あるいは年功給といった形で,必ずしもスキルが報酬や評価に直結していないと,こういうことになっております。したがって,そういう中では,なかなか企業の側(がわ)からも,人材投資ということで,特に大学も含めたOFF-JTの教育を施そうということになりませんし,何よりも働く本人が,なかなかそういうことになっていないということでございまして,実は今,働き方改革の一つのアジェンダに,同一労働・同一賃金という施策がございます。これはガイドラインも既に発表いたしまして,これから具体的に法制化に入っていくわけですけれども,同一労働・同一賃金というのは,非正規・正規の職業格差是正ということで言われているわけですけれども,本来的な意味としましては,同一労働であれば同一賃金であるということなものですから,結局,同一労働を定義しないといけないということで,実は職務内容の明確化と,それに基づく公正な評価というものが同一労働・同一賃金の大前提ということでございます。政府の公式文書で初めて職務内容の明確化を推進していくと,こんなようなことが今,うたわれてございます。
 そういう意味では,なかなか民間サイドの動きということでもありますので,一足飛びにということではないわけですけれども,政府の施策としては,今,申し上げた同一労働・同一賃金の推進以外も含めて,これ全体的に,ポータビリティーを持ったスキルに対して,しっかりと働く本人が,まずはキャリアオーナーシップを持ち,そして,それに対して企業が人材投資をしていく。それに,大学という存在が大きな役割を果たす。こんな全体像の下で,それぞれ関係省庁及び大学関係者の皆様方,そして様々な関係する機関・企業で,官民併せて,全体をどのように進めていくかということを検討しているところでございまして,また機会を頂ければ,随時御報告をさせていただきたいと思います。
【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。
【千葉委員】  前段の大学における工学系教育の在り方に関する検討委員会の方でお願いがございまして,今,手を挙げさせていただいたんですけれども,それは,この資料にも,高大接続の円滑化や高等専門学校との連携強化等というのが課題に入っているんですが,専門学校も,IT・ICTを中心に,今,工業分野には7万8,000人ぐらい在籍をしておりまして,是非それも御活用いただきたいと思います。極めて就職率がいいので,こちらに行ってくれるかどうかは分からないんですけれども,是非御検討いただいて,ここも連携強化の一つにしていただきたいということで発言させていただきました。よろしくお願いします。
【永田部会長】  どうもありがとうございました。先ほどの工学教育の件もそうですけれども,簡単に申しますと,大学の将来像を議論する中で念頭に置くべきは,発明・発見する人,開発をする人,使いこなす人という,各層の人材を育てなければいけない,ということです。全員が発明・発見するわけではないし,全員がただ使うわけではないので,大学教育はそのバラエティーを持たなければいけないなと思って聞いておりました。少し時間が過ぎてしまいましたけれども,本日は,限られた時間の中で,有意義な議論ができたと思っております。
 それでは,どうもありがとうございました。本日,これでお開きにいたします。ありがとうございました。

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