法科大学院等特別委員会(第82回) 議事録

1.日時

平成29年10月2日(月曜日)13時00分~15時00分

2.場所

霞が関ビルディング35階 東海大学校友会館 朝日・東海・三保の間

3.議題

  1. 平成29年司法試験の結果等について
  2. 法科大学院教育状況調査ワーキング・グループの設置について
  3. 共通到達度確認試験について
  4. 法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムについて
  5. 法科大学院等の教育の改善・充実について
  6. その他

4.議事録

【山本座長代理】
 所定の時刻になりましたので,第82回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開催いたします。
 本日は,井上座長が所用にて若干遅参されるということですので,私が代わりにそれまで議事進行役をさせていただきます。
 本日は,平成29年司法試験の結果等について御報告を頂くとともに,中心的な議題としましては,これまでの議論に引き続いて,法科大学院教育等の改善・充実方策について御議論を頂きたいと思います。本日も,活発な御議論を頂ければと思います。
 まず,委員の交代につきまして,事務局より御紹介をお願いいたします。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に資料1を御用意願います。法務省大臣官房司法法制部司法法制課長の人事異動により,佐伯恒治委員に代わりまして,吉川崇委員に御就任いただいております。

【吉川委員】
 司法法制課長の吉川でございます。よろしくお願いいたします。

【山本座長代理】
 よろしくお願いいたします。
 続きまして,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【大月専門職大学院室長】
 議事次第を御覧ください。4に配付資料がございますが,資料1から資料7-3と参考資料。あと,本日御欠席の日吉委員より机上配付資料がございます。
 不足,落丁等ございましたら,お気付きの際に事務局までお知らせください。よろしくお願いいたします。

【山本座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは,議事に入りたいと思います。まず,議事1ですが,平成29年司法試験の結果等についてということです。9月12日,御存じのように,平成29年司法試験の結果が法務省より公表されましたので,それにつきまして,吉川委員と事務局から資料の御説明をお願いいたします。

【吉川委員】
 それでは,御説明をさせていただきます。
 先月12日に発表されました平成29年司法試験の結果についてでございます。法務省からの資料は,資料2-1から2-9まででございますので,順次御説明させていただきます。これらの資料は,前年ベースを基本的に改訂したものとなっております。
 まず,資料2-1を御覧ください。これは,法務省のホームページにも掲載されております,今年の司法試験の採点結果でございます。具体的に申しますと,「1 合格者数等」の「(1)合格者数」のところに記載されておりますとおり,合格者数は1,543人であり,昨年の合格者数から40人減少しております。
 合格点につきましては,短答式試験の得点と論文式試験の得点による総合評価の総合点,1,575点満点中800点以上であり,昨年の合格点880点から80点下がっているという結果でございます。
 合格率,すなわち受験者数に対する合格者数の割合につきましては,ここには記載されておりませんけれども,計算いたしますと,今年が25.86%であり,昨年が22.95%ですので,2.91ポイント上がっているということでございます。
 また,「(2)合格者に関する情報」のうちのエに記載していますとおり,司法試験受験回数につきましては,1回目の受験で合格した者が870人と最も多く,合格者全体の半数を超えております。
 1枚めくっていただきまして,2ページ目です。「2 得点の状況」,(1)に記載のとおり,平均点は780.74点と昨年の829.52点より48.78点下がっております。
 3ページから14ページにかけましては,総合点の得点分布,論文式試験の合計点及び科目別の得点分布を示した表を,参考資料として添付しておりますので,後に御覧いただければと存じます。
 また,15ページから18ページまでは,法科大学院別の受験結果を示した表でございます。これらにつきましては,後ほどの資料と重複する部分も多いものですから,ここでの御説明は割愛させていただきます。
 そして,この資料2-1の最後の19ページがございます。資料2-2の直前のペーパーでございます。「平成29年司法試験受験状況(予備試験合格者)」と題する資料でございます。これは,予備試験合格資格に基づく受験状況についてまとめたものでございます。
 予備試験合格資格に基づく受験者数は400人で,うち290人が合格しており,合格率は72.50%でございます。ここには記載していませんが,昨年と比べますと,受験者数では,昨年が382人ですので,18人の増。合格者数は,昨年が235人ですので,55人の増となっております。
 合格率は,10.98ポイント増。昨年の合格率は61.52%で,今年が72.50%ですので,そのポイントの増となっております。
 次に,資料2-2を御覧ください。これは,今年の司法試験受験者数や合格者数などにつき,性別や受験資格などを属性別にまとめた,ある意味総表的な表でございますので,後ほど御参照いただければと存じます。
 次に,資料2-3を御覧ください。これは,今年の司法試験における法科大学院別の結果を,合格者数順に並べたものでございます。一番下に予備試験合格者の枠も設けております。
 オレンジ色を付しておりますのは,合格者数が50人以上の法科大学院であり,合計8校でございます。これら8校と予備試験合格資格に基づく合格者数の合計を足しますと,1,081人であり,合格者全体の約70%を占めております。
 これに対して緑色は,合格者数が5人以下の法科大学院で,合計40校でございます。
 資料2-4を御覧ください。これは,法科大学院別の結果を,合格率順に並べたものでございます。同じく,一番下には予備試験合格者の枠もございます。
 オレンジ色は,合格率が全体の平均合格率である25.86%以上の法科大学院であり,合計11校でございます。これら11校と予備試験合格資格に基づく合格者数の合計は1,134人で,合格者全体の約73.5%を占めております。
 また,緑色は,合格率が全体平均の半分以下,つまり12.93%以下の合格率となっている法科大学院であり,合計40校でございます。
 続きまして,資料2-5を御覧ください。これは,法科大学院ごとに各年の司法試験の受験者数,合格者数,合格率を全体と既修,未修別に記載したものでございます。
 今年のデータにつきましては,資料2-5の最後のページ,4枚目に記載されています。この平成29年の欄の一番下のところを御覧いただければと存じます。既修者の合格者数が922人,合格率が32.66%,未修者の合格者数は331人,合格率は約12.06%となっております。
 続きまして,資料2-6でございます。これは,法科大学院ごとに平成17年度から平成28年度までの修了年度別の修了者数,修了者に占める累積の合格者数及び修了者に占める合格者の割合をまとめたものでございます。
 各修了年度について,修了者に占める合格者の割合の上位10校にグレーで色を付けております。2枚目の一番右の枠が直近であります,平成28年度修了者の合格状況です。ピンク色を付けた合格率50%以上の法科大学院は,合計7校。緑色を付けました合格率10%以下の法科大学院は,合計30校でございます。そして,合格率10%以下の法科大学院のうち,合格者0人という法科大学院が合計24校ございます。
 次に,資料2-7を御覧ください。これは,平成17年度から平成28年度までの各法科大学院の全修了者のうち,現行の司法試験を1回以上受験した受験者実数に対する司法試験の合格者数の割合を計算し,これを累積合格率順にまとめたものです。全体の累積合格率は,一番右下でございますが,51.81%となっております。
 次に,資料2-8でございます。これは,予備試験合格資格に基づく本年の司法試験受験者と合格者について,予備試験に合格した年ごとに,その数をまとめたものでございます。
 最後に,資料2-9を御覧ください。これは,予備試験合格資格に基づく本年の司法試験合格者について,最終学歴別にまとめたものでございます。この表につきましては,昨年のこの会議におきまして,法科大学院について,既修,未修別のデータの提示を求められましたし,大学については,各大学の内訳が分かるデータの提示を求められたものと承知しております。これらのデータにつきましては,集計が間に合いませんでしたので,次回の会議で御提示させていただきたく存じます。
 私からの説明は以上であります。

【大月専門職大学院室長】
 続きまして,事務局から資料2-10に沿って,一言御説明申し上げます。法科大学院修了生の司法試験の合格率については,資料2-2にありますように,22.5%ではありますけれども,これらの数字を使って,新聞報道等を読むと,法科大学院に入学しても,結局2割しか司法試験に合格できないと読んでしまう可能性がありますので,文部科学省としては,正確に理解していただこうということで作っている資料でございます。
 既修者につきましては,募集停止・廃止校を除く,今後,学生が入る可能性がある39校を対象にした場合には,平成28年度の修了者,1年目受験者については,47%が合格されている。3年目時点,平成26年度修了者に関しては,累積で67.6%合格している。平成27年度の政府の推進会議決定においては,累積合格率7割を目指すということが定められておりますけれども,既修者に関しては,3年目時点でほぼそれを達成しているということでございます。
 一方で,未修者コースについては,修了後5年目時点での累積合格率が5割ということで,まだまだ課題があると認識しております。
 また,一方で既修者についても,本特別委員会で委員から多数御意見を頂いておりますとおり,修了1年目から合格できるように充実した教育,また期間短縮等の御議論を引き続きしていただきたいと考えております。
 以上でございます。

【山本座長代理】
 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明につきまして,御質問等があれば,御自由にお出しいただければと思います。
 どうぞ,長谷部委員。

【長谷部委員】
 大変詳細な資料を頂きまして,どうもありがとうございます。予備試験の合格者について,昨年より更に資料を追加していただいたと思うのですけれども,これだけ予備試験の合格者数が増えてまいりましたことと,回数も相当重なってきましたので,更に情報を頂ければと思うのです。
 これらの方々について,例えば,資料2-1にありますのは,合格者全体についての平均年齢であるとか,司法試験の受験回数などですけれども,予備試験の合格者について,全体と比べて特別な傾向があるのかどうかということを知るという観点から,平均年齢や司法試験の受験回数がもしお分かりであれば,御提示いただけると有り難いかなと思っております。

【山本座長代理】
 いかがでしょうか。

【吉川委員】
 ありがとうございます。今,持ち合わせがございませんので,御趣旨に従いまして,提供できる資料がございましたら,次回に提供させていただきます。よろしいでしょうか。

【長谷部委員】
 はい。

【山本座長代理】
 よろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。

【笠井委員】
 よろしいですか。

【山本座長代理】
 どうぞ,笠井委員。

【笠井委員】
 今の長谷部委員の御質問に関連して,同じく資料2-9の一番下から2番目の欄,大学卒業61名と書いてある欄です。これは,試験委員会で大学卒業者の内訳等について,もしデータがあれば教えていただけないかと思います。

【山本座長代理】
 いかがでしょうか。お願いいたします。

【吉川委員】
 この大学のところの内訳につきましては,前回御指摘を受けたところだと思います。大学卒業者につきまして,詳細なデータがあるかどうか,確認した上で回答させていただきます。

【笠井委員】
 済みません。質問が余り正確ではなかったのですが,大学卒業と書いてある中に,社会人経験のある社会人の方が随分いる可能性もあるかと思いまして,社会人かどうか,それから,社会経験が何年以上の者という形でもしデータが取れるのであれば,知りたいなと思った次第です。

【吉川委員】
 確認の上で,また御回答させていただきます。ありがとうございます。

【山本座長代理】
 よろしくお願いいたします。
 それでは,磯村委員,どうぞ。

【磯村委員】
 お答えいただきにくい質問かもしれないので恐縮なんですけれども,この資料2-9を含めて,予備試験の合格者については,全体の司法試験合格者が減っている中で,むしろ予備試験の合格者は非常に増えている。しかも,その試験の合格者の属性が,この最終学歴を見ても,受験願書に基づく情報ですので,合格の時点では1年ずれているというところがございますけれども,法科大学院生であったり,あるいは法学部在学生であったりということが非常に多いという状況について,試験の実施を所掌される省として,こういう問題をどのように見ておられるのか。これは,そういうものだと淡々と見ておられるのか,あるいは,やはりそこに運用上の問題があるとお考えなのか,その点について確認をさせていただければと思います。

【山本座長代理】
 お答えいただける範囲で。

【吉川委員】
 なかなかお答えが難しいのですけれども,常々本省から申し上げていると思いますけれども,推進会議決定では,予備試験について,平成30年度までに行われる法科大学院の集中的改革の進捗状況に合わせて,予備試験の本来の趣旨に沿う者の受験を抑制せずに,かつ法曹養成の理念を阻害しないよう,必要な制度的措置を講じることを検討することとされたところでございます。
 法科大学院の集中改革が進むことによって,法科大学院修了資格による司法試験受験者の増加も期待されるところではございますので,この会議の議論を踏まえた改革の進捗を踏まえながら,必要な検討を行っていきたいと,このように考えている次第でございます。

【山本座長代理】
 よろしいでしょうか。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。あるいは,まだまだ内心ではあるかもしれませんが,それでは,恐縮ですが,今の議事については,この程度にさせていただきます。
 ここで,バトンタッチをさせていただきます。

【井上座長】
 済みません。遅れまして,申し訳ありませんでした。ここからは,私が進行役を務めさせていただきます。
 次が,教育状況調査ワーキング・グループの設置についてという議題でございます。
 昨年も,客観的指標に照らして課題があると認められる法科大学院に対する教育状況の調査を本特別委員会の協力の下に,文部科学省が行ったところですが,今年についても引き続き調査を行うということですので,そのためのワーキング・グループを設置したいと思います。
 事務局から資料の説明をお願いします。

【大月専門職大学院室長】
 資料3を御用意願います。「法科大学院教育状況調査ワーキング・グループの設置について(案)」というものでございます。
 1の「所掌事務」にありますとおり,平成27年の推進会議決定及び昨年度の教育状況調査結果等を踏まえまして,法科大学院教育の質の向上のため,客観的指標に照らして課題があると認められる法科大学院に対して,昨年同様,専門的な調査・分析を行うとしております。
 「2.委員等」でございますが,ワーキング・グループに属すべき委員等につきましては,座長が指名するとしております。
 「3.設置期間」でございますが,設置された日から平成31年2月14日までとする。
 「4.法科大学院特別委員会への報告」でございますが,審議状況を報告するということとしております。
 以上でございます。

【井上座長】
 以上が設置の趣旨でございますが,ほぼ昨年どおりだと思います。
 ただいまの説明について御質問,御意見等があれば,御発言をお願いします。
 特に御異議,御意見がないようですので,ワーキング・グループを設置することとしたいと思います。
 主査は,昨年に引き続き,重ねてで恐縮ですけれども,磯村委員にお願いしたいと思いますので,よろしくお願いいたします。
 その他の委員等につきましては,今後,速やかに調整させていただきます。
 次の議題が,今年度実施予定の共通到達度確認試験第4回試行試験の準備状況についてでして,これは,事務局の方から報告をお願いします。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に資料4-1を御用意願います。「はじめに」の1ページ目でございますが,共通到達度確認試験は,平成24年に未修者教育の質保証を図る観点から構想されたものであります。これを,既修者にも適用できるものとして,基本設計について検討されてきたところでありまして,その下の丸でございますが,平成26年度から試行が開始されているところでございます。
 ワーキング・グループでまとめていただいた第4回試行試験の目的と科目等については,2ページ目以降でございます。2ページ目でございますが,「第4回試行試験の主目的」ということ。これまでの試行試験で得られた成果を踏まえて,以下の点を主眼として行うということでございます。
 二つ目のところにありますが,進級判定に当たって必要となる,判定基準の設定の在り方について検証・分析すること。
 原則として全ての法科大学院の学生が受験することとなる本格実施時の実施体制や運営の在り方について検討すること。
 また,3ページ目の下のところで,「3.対象者・試験科目」でございますが,対象者は,1年次(法学未修者コース)及び2年次の学生とするとしております。
 4ページ目でございますが,試験科目は,憲法・民法・刑法の3科目とするということで,考え方で,一つ目の丸が,1年次学生のみならず,2年次学生を対象とすることが適当である理由が書かれております。
 試験科目については3科目。第3回の試行試験は7科目で行ったところでございますが,なぜ3科目にするかということでございます。3科目ができる方は7科目できるという強い相関関係が見られたこと,また,民事訴訟法,刑事訴訟法,商法,行政法に関しては,法科大学院によって学修の進度が大きく異なり,2年次までに共通して修得すべき水準の設定が困難であることなどから,この3科目を実施するということとしております。
 4の「出題範囲・難易度」でございますが,共通の問題とするとしております。
 その理由が,以下に記載されておりますけれども,割愛させていただきまして,5番が「受験者情報の把握・取扱い」について,5ページの下でございます。二つ目の丸でございますが,試行段階にあることを考慮し,今年度の試行結果は受験者の進級判定等に利用せず,確認試験の結果分析や学修指導のために使用することとするとしております。
 また,6ページの上でございますが,各法科大学院において,司法試験短答式試験合格状況等と確認試験の結果との相関関係を分析できるようデータを保管するとしております。
 また,6ページ目の下,6の「実施方式」。試行試験は,平成30年3月15日に実施するとしております。
 説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 ワーキング・グループ主査の山本委員から,何か補足はございますでしょうか。

【山本座長代理】
 特にないんですけれども,1点だけ。先ほどのような経緯ということで,民事訴訟法,刑事訴訟法,商法,行政法においては,試行試験としては1回限りということになりました。この場を借りまして,各科目について,試験作成あるいは分析に当たっていただいた先生方,決してその作業が無駄だったわけではなくて,先ほどのように強い正の相関が見られた結果,憲法・民法・刑法だけで十分だということになったので,非常に意味があったということでございます。私からも御礼を申し上げたいと思います。

【井上座長】
 それでは,ただいまの説明につきまして,御質問あるいは御意見等があれば伺いたいと思います。
 御意見等ございませんでしょうか。特にございませんようですので,次に進みたいと思います。
 次の議題は,司法試験の結果等を踏まえて,平成30年度の「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラム」の基礎額算定率が決定したということですので,事務局から資料の説明をお願いします。
 また,来年度の法科大学院の入学定員の見込みについても取りまとまったということですので,これも併せて事務局から説明をお願いします。

【大月専門職大学院室長】
 お手元に資料5-1と5-2と5-3を御用意願います。
 まず,資料5-1でございますが,いわゆる加算プログラムの平成30年度の基礎額の算定率が決定いたしました。平成29年度の入学者選抜状況と,先月発表されました司法試験の合格等を踏まえまして,このように決定されたところでございます。
 また,資料5-2でございますが,入学定員の状況でございます。平成29年度は,2,566人であったものが,平成30年度には募集停止校が出る等により,2,330人になるというものでございます。
 また,資料5-3でございますが,今後の加算プログラムの見直しについてでございます。「検討の必要性」というところでございますけれども,二つ目の丸でございますが,文部科学省では,平成27年度の政府の推進会議決定等を踏まえまして,本プログラムによる公的支援のメリハリある配分などを通じて,法科大学院の組織の見直しの促進や教育の質の向上,経済的・時間的負担の軽減などに取り組んできた結果,一定の改善が見られつつあると認識しております。
 一方で,法科大学院と法学部との連携強化,法学未修者に対する教育の在り方,地方における法曹養成など,残された課題も存在し,各法科大学院の置かれている状況は様々であり,法科大学院の機能分化を促す必要があることから,本プログラムに適切な修正を加えて,平成30年度以降も当面は存続することが適当であるとしております。
 2ぽつが「現行プログラムの概要」でございますので,省略させていただきまして,1枚おめくりいただきまして,「3.考えられる見直しの方向性」を御覧ください。現行プログラムについて,以下の方向で検討してはどうか。なお,本特別委員会で行われている法科大学院等の教育の改善に関する議論の動向を踏まえ,改善方策の実施を促進することができる形としてはどうか。また,必要に応じて,現在の指標等について経過措置を置くこととしてはどうかとしております。
 「基礎額算定率の設定方法」でございますが,機能分化等の促進を考えまして,以下のように記載しております。各法科大学院の置かれている状況は様々であり,基礎額の指標について,現在の教育力を評価するため司法試験合格率等を重視するなど簡素化しつつ,一方で,目指すべき法科大学院の機能分化を促す方向で見直してはどうか。
 また,法科大学院教育が抱える課題に対応するプログラムとしてはどうかという形でございます。
 なお,法科大学院の機能分化に関しましては,また適宜この委員会でも御議論いただきたいと考えておりますが,事務局においては,例えば,法科大学院教育を先導されてきた大学,一方で,地方における法曹養成の拠点になっているようなところ,また,夜間を開設することによって,社会人の受入れ等に力を入れる大学,また,他の大学等と連携をして教育力の向上を図っていく大学,このような形が考えられるのではないか。ただ,これに限定されることではないと考えております。
 続きまして,「加算の考え方」でございます。これまで各法科大学院の個別の取組提案に対して,先導的な取組に加算することにより,大学間の教育連携,各法科大学院の未修者教育,早期卒業・飛び入学,学部との連携等,様々な取組が行われてきたということでございます。今後は,これらの取組がより多くの法科大学院で継続して行われることが重要であることから,毎年度,法科大学院から個別の取組を提案していただくのではなくて,改革に向けた中期的な方針,これらの課題,各法科大学院の課題を解決するような取組の方針を出していただいて,その進捗状況をチェックする形としてはどうかと考えているところでございます。
 以上でございます。

【井上座長】
 今後の見直しについても説明を頂きました。
 まず最初の,決定した基準,平成30年度の基準額算定率についての説明と,来年度の入学定員の見込みについて資料を用意していただきました。これについて,何か御質問等があれば,伺いたいと思います。
 よろしいですか。それでは,最後に資料5-3について説明していただきましたが,これまでの加算プログラム,これは一定の成果を上げてきたことは御承知のとおりですけれども,残された課題に対応することが更に引き続き必要となる。その意味で,加算プログラムについても見直しに向けた検討が必要かという趣旨で文部科学省に用意していただいたものです。
 本日は,これについて御意見を頂き,それを踏まえて,文部科学省の方で見直しについて検討していただく。そういうことですので,皆さんから忌たんのない御意見,あるいは御質問でも結構ですが,御発言いただければと思います。
 どうぞ,松下委員。

【松下委員】
 資料5-3の1ページの1ぽつ,「検討の必要性」の最後の丸です。この最後の行に,「平成31年度以降も当面は存続することが適当である」という記載がございます。平成30年度までが集中改革期間ということで,それが終わった後も,まだ続くという趣旨だと思います。具体的に年数を書けないから,「当面は」と書いてあると思いますが,大体どのぐらいのことをお考えなのか。もし現時点で何か見込みがあれば,お聞かせいただければと思います。

【大月専門職大学院室長】
 御指摘のとおり,平成30年度までが推進会議における法科大学院の見直しの集中期間でありまして,現在の加算プログラムは,そのことも踏まえて行われているところでございます。この加算プログラムに関しましては,従来で考えれば,平成31年度の指標については,来年度の入学者選抜等の数字を使うということから,この時期に検討いただいて,12月ぐらいに決めて公表するという形にしていたことから,あと平成30年度の集中改革期間の状況で何ができるのか,何ができたのかということを踏まえないと決定はできず,そこの見通しが不透明ではあるものの,このような記述にしております。
 以上でございます。

【松下委員】
 様子を見るということですね。

【井上座長】
 ほかの方はいかがですか。
 どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】
 現行プログラムの概要は,資料5-3の2ぽつで御説明のように,冒頭のところにあるのを簡単に言うと,現在の公的支援の額の枠内での再分配ということになっていて,これは,恐らく見直しの方向性の中でも変えることはないと理解しております。
 振り返って考えますと,加算プログラムは,有り体に言いますと,教育方法の改善,法科大学院の教育の改善を通して,組織見直し,組織改編を促すという一つのツールとして使われてきたと私は理解しています。
 そうであるならば,今後もゼロサムゲームでもいいのかという気がします。今後,法科大学院がより良くなっていく方向で加算プログラムによってインセンティブを掛ける。多分そういうインセンティブになっていくんだと思います。そういう中で,難しいとは思うんですけれども,現行の公的支援の枠内での再配分でやることの適切性はどうなのかという感じがしないわけではありません。
 聞くところによると,国立大学と私学では原資が違っていて,間違っていたら撤回しますけれども,原資が足りなくなって,ある国立大学ではせっかく加算率百何十%を取ったのに現実は完全にはお金が来なかったというところがあるやに聞いております。こういう事態では,法科大学院に改革の方向に向けて大きく歩んでもらう制度として果たして適切なのかと少し疑問に思っていますので,意見として申し上げます。

【井上座長】
 それでは,片山委員。

【片山委員】
 資料5-3の3ぽつの「考えられる見直しの方向性」のところですが,機能分化の促進という,「機能分化」という表現が気になりました。加算の基本的な考え方として,各ロースクールで様々な先導的な取組を行って,それに予算を配分するということではありますが,最後の「加算の考え方」の下の二つのぽつとも関連しますけれども,様々な取組の中で,やはり今後の法科大学院制度が進むべき方向性がある程度提示されているということになりますと,各法科大学院で引き続き先導的な取組を自由にやってくださいということではなく,今後,この委員会でどのような取組を法科大学全体として積極的に取り入れていくべきなのかという点を議論していくことが必要だと考えます。
 最後のぽつのところも,この文章の趣旨がよく分からない点がございます。より多くの法科大学院で継続して行われることが重要だということですが,最終的には,各法科大学院が中長期的な方針を出して,それを評価していくということだけでなく,ロースクール制度全体の推進すべき取組ということで位置付けて,様々な政策に落としていくという議論をここでやっていく必要があるのではないかと思っているところです。その点についてお伺いできればと思います。

【大月専門職大学院室長】
 3の「考えられる見直しの方向性」というところで,「現行プログラムについて,以下の方向で見直す方向で検討してはどうか。なお」ということで,この委員会の議論を踏まえて,改善方策の実施を促進することができる形が適当ではないかということでございます。また,加算の考え方,各法科大学院に中期的な方針を作成いただけるわけでございますが,制度として改善ができるような,よい方向に向かう形で実施したいと考えております。

【片山委員】
 関連してよろしいですか。
 恐らく,例えば,この中で挙がっている取組ですと,早期卒業・飛び入学,学部との連携。これに関しましては,恐らくこの後で,ここで積極的に議論されるということですけれども,その問題を取り上げるということをどこで議論したのかということになります。幾つか挙がっている取組の中で,これが重要な取組だから,ここを全体として議論しましょうという選択をする場がどこかであった方がいいのかなと思った次第でございます。

【大月専門職大学院室長】
 次回についても,また本日の御意見を踏まえまして,これをリバイスするような形で御提示したいと考えております。

【鎌田委員】
 よろしいでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【鎌田委員】
 済みません。感想だけ2点です。一つは,先ほど大貫委員のお話にもあったところですけれども,基本的には,国立大学法人に関しては運営費交付金の枠内で,私立大学については私学助成の枠内でという区分があって,しかも,ほかのところで減額したものが加算の方に積み増されるんだけれども,募集停止や閉鎖となった部分は,翌年度以降の加算分として蓄積されていかないんですよね。そうなると,結局,加算プログラムでプラスと言われても配分原資がほとんどないし,私立大学の助成金は,今でも調整率が六十数%ですから,本来の補助金額の6割とか7割まで縮減されているということなのです。私も,法科大学院全体のレベルアップを図るというんだったら,それは設置形態別に分けるのではなく,国立私立を対等に輪切りにした横串を刺すような発想を入れてもらいたいということを前から希望していますので,なかなか難しいかもしれませんけれども,是非そういう観点を入れてほしいというのが一つです。
 それから,もう一つは,少なくとも私の理解では,この制度を導入したのは,放っておくと,結局司法試験の合格者数,合格率以外に法科大学院の評価の指標がない。これでは,公認予備校化していくので,本来の法科大学院に期待されるような役割をどれだけよく果たしているか。それを果たすことをもっと奨励するために,加算プログラム制度が導入されたと,私はずっと理解していました。しかし,この「考えられる見直しの方向性」の中で,基礎額の指標については,司法試験合格率等を重視する方向に変えていくかのような表現になっている。そうすると,やはり今の法科大学院の喫緊の課題は,要は司法試験にもっと早く合格できるようにすること。これが,法科大学院にとっての最大の課題であるという認識が表明されている感じで,法科大学院の今後を考えていく上では,若干寂しい感じがするということを,感想だけですけれども,述べさせていただきます。

【井上座長】
 どうぞ,土井委員。

【土井委員】
 私からは,資料5-3の2ページ目,「加算の考え方」について,少し具体的な意見を申し上げさせていただきます。
 最初のぽつの2行目あたりに,大学間の教育連携,各法科大学院の未修者教育等々に触れられています。未修者教育の改善については,この後,議論がなされるとは思いますけれども,未修者教育の現状に鑑みれば,未修者教育のいわば容量を一定程度制限して,その質的改善を図る。選択と集中の方針が議論になり得るところだろうと思いますし,それを実現するということになりますと,未修者教育の拠点化等々も選択肢になっていくのかなとは思っております。
 ただ,いずれにしましても,未修者教育の質的改善をより一層進めるためには,未修者教育の内容,方法の見直しを進めないといけませんし,とりわけ1年次におけるきめ細やかな指導が必要になるのではないかなと思われます。そのためには,教育能力の高い教員,あるいは学修補助者を確保していくということが非常に重要になってくると理解しております。
 そこで,そういう人的,物的資源の効果的な活用という観点からしますと,例えば,未修者教育の拠点化を図るにしても,単独校だけで実施するというよりは,必要かつ適切と認められる場合には,拠点校を作って,複数の法科大学院で連携実施していくということも考えられ得る仕組みだろうと思います。特に未修者1年次の教育については,拠点校や連携校と共同実施ということも考えられ得るところです。その場合,カリキュラムの調整等が問題になりますけれども,先ほどお話にありました,共通到達度確認試験が本格的に実施されれば,1年次終了段階での学力の保証も図られていくということになろうかと思います。
 その意味では,これまでどうしても法科大学院間の連携といいますと,統廃合の問題がちら付いていて,なかなか進まなかったところでありますけれども,そういう未修者教育の在り方とも結び付けて,そういう連携を実施していくということが,今後の法科大学院の在り方にとっても有益だと思いますので,そういうこと等を含めて,今後の法科大学教育の在り方を踏まえて,加算の考え方をお考えいただければ有り難いというのが私の意見でございます。
 以上です。

【井上座長】
 ほかの方はいかがでしょうか。
 どうぞ,局長。

【義本高等教育局長】
 複数の委員の方から御意見を頂きましたので,多分,次に御議論いただきます,今後の法科大学院特別委員会での議論とも連動していますけれども,今の時点での考え方を事務局なりに整理してお話ししたいと思います。
 この加算プログラムにつきましては,大貫委員,鎌田委員のお話がありましたように,基本的に今ある私学助成,あるいは国立大学運営費交付金の枠の中での,いわゆる再配分の中において支援,あるいは改革を促していこうということをベースにしております。ですから,対象が変わってくるという中においては,いろいろな個別の部分においては課題が出ますので,お話がありましたように,全体として横串を通すような議論ができればよいのではないかという話はそのとおりでございます。一方,財政的なインプリケーションも掛かる話ですので,少し我々としても研究させていただく必要があるかなと思います。
 ベースとしては,対象の大学に対しての支援策をどう再配分するかということをベースにしながら,その分,乗せていくことについて,何か考えられないかどうかについては,研究する必要があるかなと思っております。
 それから,このプログラムにつきましては,御覧のとおり,やはりいろいろな改革を促していくにおいては,組織見直しだけではなくて,それぞれの大学において,例えば,特色化を図っていくとか,国際的な展開をするとか,あるいは担当する教員の養成をしっかりやっていくとか,あるいは早期プログラムなど,いろいろな課題に対する対応を頂きまして,それぞれの大学において,ある意味においては一定の定着を図るということもできるのではないかなと思っております。
 一方,先ほどお話がありましたように,今後の課題としては,この委員会でも御議論いただきますように,かなり論点としてはフォーカスされてきたのではないかなと思っております。特に未修者の教育をどうしていくのか,あるいは学部との連携をどうしていくのかということが,この法科大学院制度をしっかり安定させて,より質の高いプロセス養成をしていく肝だということについての御議論を頂いております。そこを何とか応援していけるような仕組みを考えていかないといけないという意味もありましたものですから,この3ぽつにございます柱書きに書いてあるような,この委員会での御議論,動向を踏まえて,そういう議論も促進していくための取組も考えていくことを中心に課題として御議論いただけましたら有り難いです。
 また,土井委員から具体的な提案を頂きましたけれども,そこも今後,この委員会での御議論を踏まえた上でのプログラムの在り方についても,更に御議論を深めていただければ,私どもとしては,それを踏まえた上での見直し,あるいは考え方について整理していきたいと思っております。
 以上でございます。

【井上座長】
 特に付け加えて御発言がないようでしたら,今,高等教育局長からも御発言がありましたけれども,本日の議論を踏まえて,文部科学省の方で更に御検討していただければと思います。
 次に,前回までに引き続きまして,法科大学院教育の改善・充実についてでございます。
 前回までに,法科大学院と法学部との連携強化の方策の在り方について議論していただきました。本日は,仮に法学部に仮称「法曹コース」を設置して,実質的に5年以下の教育を行うこととした場合に,満たすべき要件や振興方策について御議論いただければと思います。
 事務局で,これまで頂いた意見を整理したまとめと,仮称「法曹コース」や5年一貫での教育の在り方に関する資料を用意していただいております。まず,これについての説明をお願いします。

【大月専門職大学院室長】
 資料6-1をお手元に御用意願います。
 本日,座長からお話しいただいたように,これまで最も御議論いただいてきた個別論点の中の2ページの2の「時間的負担の軽減」の法学部と法科大学院の間で,当該コースを事実上の5年一貫コースとしていく際の課題等について,資料6-2を参照しながら,集中的に御検討いただくことを考えております。そのことを踏まえまして,これまでの議論を思い出していただけるように,なるべく6-1は簡単に説明させていただきたいと考えております。
 1の「法科大学院の目指すべき方向性」。繰り返しお話しさせていただいておりますが,要点として,二つ目の丸,プロセスとしての法曹養成制度により質の高い法曹が多数養成・輩出されるよう,法科大学院について,優れた資質を有する志願者の回復に向け,多様な法曹の輩出や地方における法曹養成機能に留意しつつ,学生の資質・能力に応じた期間で法曹になることができる道を確保するなど,その制度改革を進めるべきという考えの下で,2の「個別の論点」の「1.法科大学院と法学部等との連携強化について」。
 1の「組織の在り方」の「論点」の二つ目の丸,法科大学院と法学部・法学系の大学院の有機的な連携の強化,又は組織の一体化を促進することとしてはどうかというところでございます。
 2ページ目,「改善の方向性」。二つ目のぽつでございますが,法学部・法学系の大学院との連携の実効性を高めるため,教育の質保証を前提として,専門職大学院の必置教員が学部や大学院の専任教員となることを一定程度認める方向でということで,後ほど,資料7等を使って御説明いたしますが,専門職大学院ワーキング・グループで御検討いただいて,一定程度認めるのが適当ではないかということになっております。今後は,大学院部会等で御検討いただくこととなっております。
 二つ目の(2)「時間的負担の軽減」。「論点」として,優れた資質を有する法学部生が,学部3年次終了時点で法科大学院既修者コースに入学する仕組みの対象者を更に拡大していく上で,どのような課題があるか。その課題を解決するために必要となる方策とはどのようなものか。
 二つ目の丸の途中からでございますが,特に法学部と法科大学院の間で当該コースを事実上の「5年一貫コース」として運用していく際に,どのような課題があるかということでございます。
 3ページが,「改善の方向性」でございます。前回の御意見を踏まえて書き加えた部分は赤字にしております。二つ目の丸で,具体的には,法学部に「法曹コース」を設置することを奨励し,法科大学院1年目において修得するべき学力・能力や法学部教育と法科大学院の1年目の教育との関係を整理した上で,例えば,一部を先行して履修することや,法学部生に法科大学院未修1年次の授業を履修させること,学部教育を改善して全体として教育の充実を図ることが考えられるのではないか。
 その下の丸でございますが,法学部に「法曹コース」を設置することとした場合には,大学の自主性に配慮することや,大学において活用できる教育資源に限界があることを踏まえることが必要ではないか。
 その下の丸でございますが,学部に「法曹コース」が設置されたとしても,法科大学院の進学に結び付かなければ有効に機能しないと考えられる。そのため,一定程度の推薦枠を設けるなどの対応が必要ではないか。
 また,赤字の部分でございますが,一方で,法科大学院と法学部が連携して編成する教育課程に合わせて,当該法科大学院における学修に必要な学力・能力が身に付いているかを確認するしっかりとした,これまでどおりの入学者選抜の実施も考えられるのではないかとしております。
 一番下の丸で,これらの方策を通じて,優れた資質を有する学生が,学部3年次終了時点で法科大学院に進学する制度の活用を促進しつつ,学生の資質や能力に応じて,学部4年と法科大学院2年の合計6年間の教育課程において十分な学力・能力を身に付けさせるべきではないかとしております。
 続きまして,資料6-2を御覧ください。「5年一貫コースのための法学部『法曹コース』として満たすべき要件等について(案)」というものでございます。
 まず,別紙の図を御覧ください。法学部と法科大学院内で,当該コースを事実上の5年一貫コースとして運用する際に,どのような課題があるか,これまでに議論を重ねていただいております。なかなかこのような図がないと,御議論していただく上でのイメージの共有を図ることが難しいと考えられるために,御議論を基に事務局で用意したものでございます。
 現在でも,飛び入学や早期卒業により,事実上の5年間の教育を受けている学生が出始めているわけでございますが,最初から5年間と考えれば,学生はより効果的に学修することができるのではないかという認識の下で,これを進めるにはどのような課題があり,その課題をどのようにすれば解決できるかということを御議論いただきたいと考えております。
 法科大学院では,皆様御承知のとおり,「法律基本科目群」,「基礎法学・隣接科目群」,「展開・先端科目群」,「法律実務基礎科目群」,これらが必修科目とされているわけでございます。事実上,5年一貫にすれば,法学部の教育と法科大学院の教育を適切に整理することにより,法科大学院で履修していた科目を学部で履修することや,逆に学部で履修していた科目を法科大学院で履修することも考えられます。
 ただ,学部を早期卒業して,法科大学院に入学するとなれば,学部で求められている124単位を3年間で修得する必要があり,学部段階では,それほど余裕があるわけではないと考えられること。また,委員からも御意見がございましたけれども,法科大学院における双方向,多方向的な法律基本科目,学部では法律基本科目に相当する科目となると思いますが,これらを学部で実施することは困難であると考えられることから,法科大学院で行っている法律基本科目は,これまで同様に法科大学院で実施することが基本ではないかと考えております。
 また,「法律実務基礎科目群」も,理論と実務を架橋する法科大学院の特徴であり,法科大学院で実施することが基本ではないかと考えております。
 なお,弁護士などの実務家が,法律が現場でどのように使われているか,また,実務家の仕事の紹介など,より多くの学部生が法曹に関心を持ってもらえるような授業は各大学の方針により進めていただければよいかと考えております。
 一方で,法科大学院の必修として開設されている「基礎法学・隣接科目群」については,「法曹コース」の段階で学修すれば,大学の判断により,法科大学院に必要な単位を取得したとみなせるのではないかと考えております。
 また,「展開・先端科目群」の中にも,そのような扱いをしてもよい科目があるのではないかと考えております。これまで,法曹志望の法学部の学生は,基本六法を一通り学部で学修していたわけでございますが,実質的に5年一貫ということを考えれば,大学の判断により,基本六法の一部を法科大学院で初めて学修することもあり得るのではないかと考えております。
 続きまして,資料6-2の1枚目の文章で書かれた部分を御覧ください。今,御説明したことをまとめたものでございます。「検討の視点」の部分でございます。法曹志望が明確であり,優秀な学生を対象に,実質的に5年一貫コースとしていくための具体的方策について,満たすべき要件,設置を促す方策等について検討いただくということであります。
 「『法曹コース』として満たすべき要件(案)」。「法曹コース」の修了要件としては,法律系の科目のほか,外国語科目をはじめとする教養科目について,学生が適切な範囲でバランスよく履修できるよう工夫・配慮すること。
 また,法科大学院と連携して,教育課程が体系的に編成されていること。この部分については,現在,来年度以降,募集が継続される39校のうち,37校は法学部を有しておりますので,法学部等と連携を図ることができれば,法学部に「法曹コース」を設置することができるわけでございます。法科大学院を設置していないような大学においても,法科大学院と連携することによって,「法曹コース」を設置してもらうことができるのではないかと考えております。
 要件としては,取りあえず,この資料としては二つしか書いておりませんが,そのほかに「法曹コース」が,法学部の法曹志望者の積極的な学修を促し,法科大学院進学につながるように設定すべき要件としては,どのようなものがあるでしょうかということとしております。
 また,「法曹コースの設置を促すような方策(案)」でございますが,先ほど説明した図を御覧いただきながら御説明したことでございます。法学部の教育と法科大学院の教育を適切に整理した上で,例えば,「法曹コース」での基礎法学・隣接科目や,相当する科目の学修により,法科大学院に必要な単位を修得したとみなす制度,現在もありますが,この上限を一定程度緩和することを検討してはどうか。また,法律基本科目や,相当する科目の履修を法学部と法科大学院のどの段階で行うかは,大学の判断において工夫することを認めることを検討してはどうか。
 また,実質的に「5年一貫」で接続した教育を行うため,他大学も含め,「法曹コース」出身者を対象とした推薦入試を法科大学院の入学定員の一定割合を限度に認めてはどうかとしております。
 ただ,資料6-1にあるように,これまでどおり,しっかりとした入学試験を行うことがあってもよいと考えております。
 続きまして,資料6-3でございます。6-1は,6-3の主なエッセンスを取り入れたものでございますが,6-1では書き切れないような多数の御意見を頂いているところでございます。
 一番上でございますが,法学部と法科大学院の接続が制度的に認められるようになれば,その点をメッセージとして発信する必要がある。学生の確保ということが喫緊の課題で,そのために議論していることから,メッセージとして発信することが必要であるということだと思います。
 目先の時間的負担は法曹志望者にとって大きな問題であり,これを軽減する方向性での検討が必要。
 一方で,「法曹コース」がどの程度魅力的になり得るかということを検討すべきではないか。ただ,「法曹コース」を設置すれば,学生が来るということではないのではないかということだと思っております。
 法学既修者の能力も向上させる上で,学部との連携や学部教育の充実には意義がある。
 その下,特に飲み込みの早い学生にとっては,時間的な短縮が必要である。一方で,大多数の学生にとっては,4年,2年という学修期間が適当ではないかという御意見。
 コース制の導入は有効ではないかという御意見。
 その下,このようなコースを作っても,志願者の回復等につながらないと意味がないことから,法科大学院を修了して法曹となることと付加価値の高さを伝えることが重要ではないかという御意見がございました。
 あとは,2ページ目でございますが,連携方策のところでございます。法学部においてコース制を導入する場合,学部においてどのような人材を育成すべきか示す必要がある。
 その下でございますが,修了して1年目に安定して司法試験に合格することができるよう,教育を行うためにはどのような方策が必要かを主眼として検討すべきではないか。
 未修1年次で行われている授業を「法曹コース」の学生に履修させることも考えられるのではないかということ。
 また,その下にある,教育の人的資源に限りがあるということも御意見で出ております。
 また,3ページ目の一つ目の丸でございますが,先ほどの御意見に対しまして,学部と法科大学院では各科目の配当単位数が異なるため,未修1年次の学修内容を単純に法学部で実施することは不可能ではないかという御意見。
 修了後1年目に司法試験に合格できることを目標として,それに必要となる年限や入学者選抜の在り方等は,各大学の実情に合わせて柔軟に対応できる形とし,実証的に検討できるようにすべきではないかという御意見。
 また,「法曹コース」においては,かなり集中して法律に関する学修を行うべきではないかという御意見に対しまして,その下の真ん中ぐらいでございますが,法学に関する学修のみに注力するのではなくて,多様な経験を積み,広い視野を身に付けることができるよう配慮が必要ではないか。
 その下でございますが,余り厳格な要件を課したコース制を創設するのは困難ではないかという御意見。
 また,下から四つ目の丸でございますが,特定大学の学部と特定の法科大学院との間で連携を行うことによって,他大学の学部からの進学や,他大学の法科大学院の進学が困難になることは避ける必要があるのではないかという御意見等を頂いております。
 最後に,資料6-4を御覧ください。法学部教育の実施状況調査を文部科学省の責任においてかけた結果,取りあえずの速報でございます。
 コース制というのは,学生の進路希望等に応じて,必修科目や選択必修科目を指定することによって,必要な科目を受講させるものから,履修モデル等を示すなど,幅広いものがございます。
 調査を掛けた52校のうち,73%がコース制を実施中と回答している。1ぽつのところでございます。丸の一番下で,コース制を実施している大学38校のうち,7校はコースに応じた特別な科目を設定している。24校は,特別な科目は設定していない。11校は,履修モデルを示していると回答がありました。
 その下が,コース制の実施理由。続きまして,コース制を実施したけれども,廃止した理由。コース制を導入しない理由等があります。
 また,最後のA3の紙でございます。各大学において実施されているコースの例でございます。A大学でございますが,特別な科目を設けるコース制ということで,学部を3年で卒業して,法科大学院進学を目指すコースというもの。また,4年で卒業して,法科大学院進学や国家公務員等を目指すコースというものが設置されておりまして,「その他」の部分でございますが,特別な科目を設定しているというものでございます。
 Bを飛ばしまして,Cでございますが,特別な科目を設けているコース制ということで,これは法曹志望,あとは公務員以外にも多彩なコースを用意しているというもので,「その他」の部分でございますが,法曹志望者向けのコースに関しては,かなり手厚く法律基本科目等の演習を実施するとしております。それ以外のコースについては,分野に応じた実践演習2単位を課している。そのため,「法曹コース」に関しては,1学年40名以内で選抜を行っているというものでございます。
 B大学は,コースは示しているけれども,特別な科目を設定はしていない。
 D大学は,履修モデルを設定しているというものでございます。
 説明は以上でございます。

【井上座長】
 ありがとうございます。
 それでは,まず御意見を伺う前に,今の説明につきまして,御不明な点等があれば,御質問を頂きたいと思います。
 どうぞ,片山委員。

【片山委員】
 大変詳細な資料をありがとうございます。
 最後に調査結果が速報で出ておりますけれども,これは大変参考になる資料かと思います。今回,匿名で資料を出されておりますけれども,今後,各ロースクール,各学部が研究するに当たって,名前を公表されるという御予定なのか。それとも,あくまでも匿名アンケートということになっているのでしょうか。その辺り,よろしく御確認お願いします。

【大月専門職大学院室長】
 名前まで公表するとなれば,各大学に確認する必要がありますので,その点も,委員等から公表することが求められれば,各大学に確認した上で公表することを検討したいと思っております。

【片山委員】
 是非公表の方向で検討いただければ有り難いですけれども。

【井上座長】
 御希望があったということで。
 ほかにございませんでしょうか。
 それでは,意見交換に入らせていただきますが,どなたからでも積極的に御発言いただければと思います。今回は,特に資料6-2の「法曹コース」の在り方を中心に御意見を頂きたいと思います。
 磯村委員,どうぞ。

【磯村委員】
 法学部制度と法科大学院制度の連携を図るというときに,二つの局面を区別する必要があるのではないかと思っています。一つは,制度全体として,法学部と法科大学院で,従来ですと,既修者を前提として,4年プラス2年掛かるというのをどうやって短縮化していくかということで,これについては,短縮化にある程度対応することができる学生については,短縮する方向は望ましいということであったかと思います。その点については,私も異論がありません。
 もう一つ,資料6-2との関係で,5年一貫コースというのが,何をイメージしているかという点ですが一つの大学の中での法学部と法科大学院の連携というものが主眼として考えられているとすると,それはやや危険ではないか。それは,法科大学院設立前に,かつて法学部5年制ということが検討された,その当初の構想に戻ってしまって,なぜ法科大学院が学部と独立して作られたかということの理念に反する結果になるのではないかという気がします。
 もっとも,資料6-2の1ページ目のところでは,他大学も含めた「法曹コース」出身者を対象とした推薦入試と考えておられて,同一大学に限定するという趣旨ではないということはその資料からも読み取れます。
 しかし,2ページ目のパワーポイントの図で示されている法学部で,例えば「展開・先端科目群」を勉強して,それが法科大学院の単位になるということになると,各大学の学部でカリキュラムの状況が全然違ってしまうので,こういう制度を実現するためには,事実上,同じ大学でのカリキュラムの連携ということにならざるを得ないのではないかという懸念があります。
 もう一つは,そこに挙がっている「展開・先端科目群」の話ですけれども,例えば,倒産法という科目が展開・先端科目であるとされるときに,民法の十分な知識なしに倒産法をやるというのは,多分,倒産法の先生方から見るとナンセンスであって,民法の十分な知識なしに履修できる倒産法というのは,法科大学院の展開・先端科目としてあるべき倒産法とはいえないというのが私の認識です。
 そうであるとすると,そういう科目を学部で先取り的に履修させた上で,法科大学院に入ってから法律基本科目の民法をしっかりやるというのは,もともと履修を段階的に組み上げていくという法科大学院のカリキュラム理念と矛盾するのではないかという懸念があります。学修期間を短縮化するという方向と,一貫性を,とりわけこういう形で実現しようとする方向というのは,ややずれがあるのではないかという印象を持ちました。
 以上でございます。

【井上座長】
 ほかの方,いかがでしょうか。
 どうぞ,大貫委員。

【大貫委員】
 大変重い課題で,大分整理が付いてきたんですけれども,まだ理解が及んでいません。もし間違っていれば御修正願いたいです。
 まず,きょうは特に3プラス2が中心的にということだと。多分,前の委員会でも申し上げた記憶があるんですけれども,私は4プラス2ということが原則ではないかと思っています。今からの発言は,4プラス2という「法曹コース」も可能であるという前提で考えてみたということです。
 まず,連携を進めるという考え方の目的はどこにあるのかということだろうと思います。まず,第1点は,法曹志望で法学部に入る人は多いわけですけれども,そういう人はそのうちに進路を変えてしまう。そういう学生さんたちを逃さずに法曹志望,法曹の道に来ていただくというのが第1点。それから,「法曹コース」を設けて,既修者の法的能力を向上させる。そして,司法試験の合格率を上げていくということだろうと思うんですね。この論点との関わりで,先ほど磯村委員がおっしゃった論点と密接に関わるんですけれども,法科大学院での学修内容を一部法学部に下ろしていく。それで,効率的でじっくりとした学修を積んでもらう。最後かどうか分からない。3プラス2によって,時間的,経済的負担を軽減して,志願者増による有為な人材を確保するという複数の目的が考えられてきたように思います。
 こう理解するとすれば,既に何度も申し上げてきたことの焼き直しなんですけれども,やはり大学によって相当事情が異なるので,連携の在り方は相当変わってくるのではないかと思っております。
 まず,法科大学院がある大学と学部だけの大学で大きく分かれるんだと思います。法科大学院がある大学でも,非常に教育がうまくいって,実績も上がっている大学を念頭に置くと,自校の学生がロースクールに多く進学したがっている。そういうところでは,3プラス2ということで,連携を図ると非常に効率的な良い教育ができるんだろうと思います。
 他方で,今申し上げた大学ほどの実績を上げていないところですと,必ずしも自校の法科大学院に行きたいと思っている人ばかりではないという現実があって,その際に3プラス2を原則にしてやると,どういう結果がもたらされるかというのは,大変危惧されるわけです。この2番目のカテゴリーの場合には, 自校と連携した3プラス2は,それほど中心ではないという形になるのではないかと思っております。
 最後に, 3プラス2を設けるのが難しい大学も多分あると思うんですね。これまでの志願者を考え,それから,これまでの司法試験の実績などを考えると,やはり4プラス2で教育をするという大学が考えられる。こういう大学で3プラス2をどう扱うか。多分,ここは4プラス2を原則にして,3プラス2というのは例外的に選択するということになるのではないかと思います。
 最後に,法科大学院がない大学ということになると,これは3でも4でもよろしいんですけれども,この場合には,先ほど磯村委員がおっしゃったことが関係してきます。ここに「法曹養成コース」を設けても,ほかの法科大学院と接合しないとうまく進学できないということになりますので,「法曹コース」を設けたときに,法科大学院から降りてくる科目などをきちんと整理しないと,「法曹養成コース」を設けたと仮定しても,うまくロースクールに進学できないという事態になるかと思います。ですから,法曹コースのカリキュラムの標準は,磯村委員は難しいとおっしゃったんですが,私はやらないと大変かなと思います。
 少し長くなりましたけれども,要するに,各校によって相当事情が違うので,そこを考慮して,「法曹コース」のコンセプトは柔軟に考えて,先ほど冒頭に申し上げたいろいろな目的を各校で達成できるようにしていただきたいと思います。もちろん,時間の短縮ということは非常に重要だと思っています。ただ,1点申し上げておきたいのは,時間の短縮という観点から3プラス2だけを設けるということになると,司法試験に合格しなければ意味がないわけですから,その辺は注意しないといけないと思っています。3プラス2に行っても,結局司法試験に合格するまで何年も掛かるのでは,何の時間の短縮にもなりませんので,そこら辺は少し気を付けなければいけないかなと思っています。
 以上です。

【井上座長】
 今の点ですけれども,何が原則で何が例外かは,なかなか難しいと思うのですね。学制の組み方としては,学部は4年ですし,法科大学院は3年,既修者コースはそれを2年に短縮しているという組立てになっているわけですが,それ自体を崩すというのはなかなか難しいかもしれませんね。それを前置にしながら,違うメニューもあるということで柔軟化する。あとは,各校が,それぞれの事情に応じて,それらを組合せで使っていくということしかあり得ないかもしれませんが,その場合に,本来何が原則で,何が例外かということと,事実上どうなるかということは,また別問題だろうと思うのですね。
 だから,我々として議論するのは,法科大学院及び法学部の制度全体としてはかなり固く定まっているのを,柔軟化していく。それを正面から取り上げて,踏み込んでいく。そんなイメージで考えているのですけれども。
 どうぞ,笠井委員。

【笠井委員】
 先ほどの磯村委員及び大貫委員の御意見とオーバーラップしますが,磯村委員が御指摘のように,学部連携・接続の問題というのは,現状に合わせた形での接続・連続でなくてはならないという施策であると理解しております。この問題は,元々の司法制度改革及び新たな法曹養成制度の理念との関係で言うと,いささかこれと矛盾するところがあり得ると思うのです。
 すなわち,先ほどの御指摘のように,自大学一貫5年コースといった場合には,自大学が優秀な既修者を囲い込む傾向を生む可能性が当然あるわけで,現に予備試験制度との関係で言うならば,資料2-9のように,超優秀層及びそのように自己評価している受験層は,予備試験を受験する。他方で,平均的な層というのは,もう少し時間が欲しいということで,予備試験を逆に回避することになるとすると,5年一貫コースが,本当に時間短縮の方向で機能するのか,これを多数の学生が選択するのか。これは予想の問題ですから,うまく行くように機能させていくことが必要だということは重々分かっていますが,先細りに陥る危険性があるのではないかという危惧を抱きます。
 その場合に,当然考えなくてはいけないのは,このような問題を踏まえつつ,新しい法曹養成制度の理念を生かすという観点から,ロースクールを廃止した,あるいはロースクールのない地方における法曹志願者の希望をどうやって吸収していくのか。それが,仮に3プラス2の5年一貫コースという形で再編成されたロースクール制度を全国的に普及させるとした場合でも,この吸収ができるような形での再編成を考えなくてはいけない。
 推薦入学制度に,大貫委員も磯村委員も言及されたように,その点を踏まえつつ,やるのであれば,その点を――「その点」というのは,理念を生かしていくという意味での「その点」なんですけれども,是非検討し,やっていっていただきたいと思います。
 カリキュラム編成等については,具体的な個別的な論点とも言えるわけですので,更に今後の詳しい検討が必要になるかと思います。
 少し重なりましたが。私の意見です。

【井上座長】
 では,酒井委員。

【酒井委員】
 私から2点,申し上げたい点がございます。1点目としては,3プラス2のコースをどの程度の規模感,原則なのか,例外なのか,どのような位置付けにするかという議論が今ありましたけれども,その点についてが1点と,後半,カリキュラムについて1点述べたいと思います。
 まず,前半ですけれども,先ほど,ほかの委員の先生方からも出ているとおり,やはり自校以外のロースクールに進学したいということを考える学生も多くいるという状況の中で,3プラス2を各校どの程度設けるのかということを考えるときに,必ずしも自校だけの学生の受験動向を考えて規模を設定するということだけでは足りなくて,全体としてどの程度の学生が3プラス2への進学を望むのか。いや,自分は4プラス2で行きたいと考えるのかというところは,ある程度見通しを立てながら制度を組んでいく必要があると思います。
 現状,第1回の会議だったと思いますが,既にある飛び入学・早期卒業の制度をどの程度の学生が利用しているかというデータが示されたかと思うんです。やはり現状では,希望者は非常に少ないという状況がある中で,ただ,はっきりと3プラス2ができますという枠が示されることで,魅力が伝わって増えていくという側面はあると思います。
 ただ,飛躍的にいきなり増えるということは,現状では余り考えられないのではないかなという気が私はしています。そこを踏まえて,各校,全体を見据えて適当な規模感を設定するということは必須かなと考えるところです。
 また,1点,学生側の感覚として,早期卒業を選択することが,必ずしも魅力的ではないと考える学生もいるのではないかというところがございます。というのも,卒業ということになると,法律科目以外にも卒業の必須単位は取得しなければいけないということになると思います。法律の科目に力を入れて勉強したいと思う学生ほど,ほかの科目に3年の段階でかなり力を入れて,しっかりした成績を取って卒業しなければいけないということになると,それが非常に負担だということが,現実問題として出てき得るのではないかと考えるところです。そのあたりの学生の受験行動も視野に入れて,慎重に数の設定をしていく必要があるのではないかと考えるところです。
 また,別の観点で,科目の問題が幾つかほかの委員の方から御発言がありましたので,補足で述べさせていただきたいと思います。やはり私も展開・先端科目が学部に下りていくというイメージが余りできません。というのも,ロースクール在学中に展開・先端科目は,法律基本科目や実務基礎科目がある程度固まったところで,その上に乗ってくる,深めていくというタイミングで学んだと思いますし,それで初めて身に付けることができた科目群という意識があります。そちらが学部に移っていくというのは,同じ科目としては余りイメージしにくいなというところがあります。やはり学部では,法律基本科目を非常にしっかりと学修してきてもらうという方が,非常に自然にイメージできるカリキュラム設定かなと思います。
 一方で,法律実務基礎科目は,確かにロースクールで学ぶべきというところはあるかと思うんですけれども,学部と法科大学院の連携ということを考えるときに,やはり学部の段階で法科大学院を卒業して,実際,実務家になっている法曹,私もそうなわけですけれども,そのような法曹に科目を一つ持たせてというのは,余り現実的ではないのかもしれませんが,学部段階でアプローチできる,出会える,触れられるということは,非常に大きなモチベーションになると思います。それが必須要件にまでなってくるのかどうかというと,またここは議論があるところかと思います。そういった科目を実務入門科目といいますか,実務家にアプローチする科目としてあるというのは,一つ非常に意義があるのではないかなと考えるところです。
 以上です。

【井上座長】
 最後の点は,事務局で用意したものも,ロースクールで言う実務科目ではなく,実務家が参加する学部の授業として展開するということはあり得ると,そういう趣旨のものだと思います。
 鎌田委員,どうぞ。

【鎌田委員】
 済みません。前にも申し上げたことがあるかと思うんですけれども,一つは,近年,私は法学部教育が随分劣化していると思っていますので,法学部教育をしっかりと立て直すニーズが一方である。他方で,4年プラス2年の時間をかけなくても,どんどん進んでいける能力を持った人たちがいるので,この人たちにはもっと短い期間で法科大学院のよさをしっかりと身に付けていただくようなシステムを考える必要がある。
それぞれのニーズは分かるけれども,他方で,この制度を作っても,今の飛び入学・早期卒業はなくならないんですよね。そうなると,学部に「法曹コース」を作ってやることの学生にとってのメリットとして何かを提供しなければいけない。法科大学院の入学試験を受けなくていい,あるいは単位の先取りができるとしないと,わざわざ「法曹コース」まで作ることの意味がなくなるということなのではないかなと理解しています。
 他方で,これも空理空論の類いかもしれないんですけれども,大学の自己改革,自助努力を評価して,それに一定の得点を与えるという加算プログラムの発想と,先ほどまで議論していた共通到達試験の発想は,正反対なのではないかと思うんですね。
 共通到達試験というのは,うちに来れば,誰でも既修で入れてあげますよとか,すいすい卒業させますよというものが,正に悪貨が良貨を駆逐する形で法科大学院制度を崩壊させるので,そこに品質保証を外部から入れていくという考え方で考えられているんです。法曹コースに入ると,法科大学院に入学するときに,既修にふさわしいだけの能力があるかどうかのチェックは自己点検でいいとなるんだとすると,少しアンバランスな感じがしてくるので,その辺の調整をどうしていくのか。これを全部自ら適切にやって,法科大学院の修了認定も適正にやれるのであれば,共通到達試験をわざわざお金をかけてやらなくてもいいのではないかという感じも持っているので,その両方の発想をどの辺りでうまく調整を付けていくかということも,一つ御検討いただければと思っています。

【井上座長】
 今の点は,逆にうまく組み合わせれば,自由度を認める代わり,チェックは入る。チェック・アンド・バランスで,余りルーズになると,共通到達試験で駄目になって,外部的な評価が低くなる。多分,そのような関係なのかなと思うのですけれども,どうぞ,岩村委員。

【岩村委員】
 ありがとうございます。きょうの全体の議論を私が理解しているところでは,5年一貫コースで全部をやろうという話ではなくて,先ほど少し室長からも話がありましたように,未修者の部分については,例えば拠点化するという形で,そこはそこで,まず一つちゃんとやりましょう。それから,特に法学部を出ている既修者については,法学部の「法曹コース」との間の連携という形で,場合によっては3プラス2というものを入れていきましょう。それ以外に,4プラス2というのも,多分あり得る話だろうと思っています。
 先ほど大貫委員もおっしゃったように,各大学,それぞれ実情はばらばら,いろいろなので,そこのところをどういう形で全体としてベストミックスを作っていくかという話かなと思います。やはり法科大学院制度が直面している一番大きな問題は,私の理解では,最終的に,仮にストレートで受かるにしても,司法試験に受かって,修習に入って,法曹資格を取得するところまでに,かなりの時間とコストがかかってしまうというところが,多分,今,大きな問題で,それに我々は直面していて,それをショートカットするルートがほかに存在してしまっている。その結果として,点よりも線で法曹を養成していきましょうというもともとの法科大学院が考えていた法曹養成の在り方そのものが,だんだん脅かされ,足元を崩されてきているという状況にあるだろうということだと思うんです。
 そうしますと,一つ大きく我々として真剣に考えるべきは,時間とコストがかかり過ぎるという点について,どういう解決策を提示するのかということであり,その中で,一つの大きな有力な案として考えられるのは,学部と法科大学院との連携を取ることによって,時間とコストを短縮する。かつ,ここが私は重要だと思うんですが,線での法曹養成を崩さないようにすることが一番大事なところではないかなと思っています。
 そういう点で考えると,幾つかの,場合によっては三つぐらいの法学部と法科大学院のつなげ方のタイプがある。そういうものを併存させていく中で,特に5年一貫を考えたときに,どういう制度設計が考えられるのか。
 そのときに,是非お願いしたいのは,余りかちっとした枠組みを決められてしまうと,先ほど少し出たような,大貫委員もおっしゃった,各大学,いろいろ実情が違うので,余りかちっと決められてしまうと動きが取れなくなってしまう。したがって,3プラス2がやりにくくなってしまう。そういう意味では,非常に微妙なかじ取りだと思うんですが,一方では必要な教育内容,とりわけ法科大学院レベルでどういう教育が必要かということをきちんと考えつつ,他方で,ある程度自由度を認めてもらえるようなところを考えていただく,検討する必要があるかなと。そういう意味では,各種科目,法律基本科目や展開科目をどういう形で配置するかといったことについて,ある程度自由度を認めてもらえるような柔軟性があった方がいいだろう。
 それから,推薦入試や他学部など,後から入ってくる人たちにどうするかということについても,余りかちっと決められてしまうと,これまたそこで動きが取れなくなってしまうので,各大学,そこはきちんと考えてねと。後から入ってくる人たちについても,きちんとしたプログラムが提供できるように,そこはきちんと考えてくださいねということを,くぎを刺すというか,「考えろ」と言うとか,そういうふうにした上で,この法学部と法科大学院との一貫でやっていくことについて,きょう,資料6-2で幾つかポイントも挙げていただいているので,今後議論を深めていっていただければなと私自身は思います。

【土井委員】
 よろしいでしょうか。

【井上座長】
 どうぞ。

【土井委員】
 私も,今,岩村委員がおっしゃったように,5年一貫コースの議論をしなければならない出発点は,やはり法科大学院教育と予備試験が競合していることにあると思います。本来,教育課程と試験を競合させるのは非常におかしな制度だということは,繰り返し申し上げてきておりますけれども,事実としてそういう制度があるわけです。そして,予備試験の合格者について,法学部生,あるいは法科大学院生の,とりわけ筆記試験で手際よく成果を出せるという層が多くを占めているということも現実です。
 この層に,できる限り法科大学院教育を受けてもらう。できれば,最後まで教育課程を修了してもらえる形に持っていって,予備試験を本来の社会人等々に門戸を開く制度にしていこうと思えば,やはり学修期間の短縮は必要になるわけで,これは真剣に考える必要があるだろうと思います。
 制度設計としては,学部3年,法科大学院2年の学修でも,法曹にふさわしい能力,資質を身に付けることができる教育課程を検討して整備する必要があるのだろうと思いますし,今,多くの委員から出ているような早期卒業をめぐる問題,あるいは教育課程の組み方の問題等について,検討,議論していただく必要があるんだろうと思います。
 ただ,これは井上座長もおっしゃったように,このコースの標準修業年限を3年にしない限り,結局,実際5年で教育課程を終えることができるかどうかは,学生の意志と能力にかかっています。多くの学生がこれを望んで,また,最終的には司法試験に合格できる能力を身に付けて,法曹として活躍してくれるのであれば,この制度は広がりますし,また,それは望ましいことですので,我々が止める筋合いの話ではありません。
 しかし,逆に学生の能力が必ずしもそれに追い付かない。学修に困難を生じたり,あるいは,最終的に司法試験に直近で受かるのが難しいという事態になったりすれば,それはそれで対応を考えないといけません。また,一挙に5年一貫に移行することになりますと,移行上の問題もありますので,そのあたりは現実的,段階的な対応も視野に入れて考える必要があろうかと思います。
 ただ,やはり法科大学院制度を安定的に維持するためには,法曹志願者の確保が重要な目標になりますので,検討の段階では,可能な限り,この5年の学修で教育課程を修了すれば法曹になれるという制度を整備するんだと。それに向けて努力するんだという姿勢を示すことは重要で,実際にその制度設計ができた後に,現実的,段階的にどう対応していくのかを考える際には,実情を視野に入れることは必要なんだろうと思います。

【井上座長】
 それでは,有信委員。

【有信委員】
 一応,専門職大学院の中でいろいろ議論をしていますけれども,法科大学院に関しては,ここでの議論をベースにしてということで進めてきています。
 それで,ここでの議論の中で,今ずっと話を伺っていると,5年一貫コースにしても,土井委員の非常に苦渋に満ちた発言がありましたけれども,どうしても法学部中心の議論なんですね。笠井委員からも指摘がありましたけれども,もともとの理念は,井上座長もさんざんおっしゃっていたことですが,要は多様なバックグラウンドを持つ法曹をいかに育成するかということで来ているにも関わらず,一応,数字の見掛け上は,法曹未修者の合格率は50%になったと言っていますけれども,実際には志願者が減っているわけですよね。つまり,本来は法曹がより魅力的で,それを志望する人たちを増やして,幅広いバックグラウンドを持った法曹を養成していくという部分の議論を,もう少しやる必要がある。
 先ほど話がありましたように,法曹が魅力的であるというところを広げていかないと,どんどん減っている中で,優秀な学生を一生懸命囲い込む。これはこれで重要なことなんだけれども,そこに余り意識が集中すると,やはり本来の法曹制度改革の理念が何となくどこかに飛んでしまうような気がします。やはり法曹の魅力をいかに喧伝(けんでん)し,いわゆる法学部出身者でない人たちをもっと志願者を増やすということを併せて,並行して議論する必要があると思います。
 以上です。

【井上座長】
 本日ここまでは,事務局で用意していただいた法曹養成コースなるものを中心に議論してきましたが,未修者教育をどうするかというのは,非常に大きな課題であることは,前から皆さん御承知のとおりです。
 当初,未修者コースは,すごく熱気があり,社会人や他学部・他分野の卒業生などもかなり多く入学してきたわけですけれども,それが急速に減ってしまっている。どういう原因があるのかについては,いろいろなことが言われていますが,やはりハイリスクでリターンが低率過ぎるのが現実で,危険を冒して職を投げ打ったり,専門を変えたりしてまで挑戦してくれない,というところが大きい。そういう状況は,法科大学院だけで解決できるものでないわけですけれども,しかし,法科大学院としても,果たして本来の理念に適したようなシステムになっているのかどうか。カリキュラムなどを含めて根本的に見直すということを,更に突っ込んでやり,かなり思い切った手当を講じる必要があることは否定できないと思うのですね。
 これまでも,集中制や拠点校などのアイデアが出ましたけれども,それはいわば形であって,教育の中身をどうするかという議論もより深める必要がある。それを並行して進められれば良いのですけれども,段階を踏んで議論していくというか,分けて議論しているわけで,まとまっていけば全体としてバランスの取れた形で提示できるようになる。そんなイメージでいますけれども,多分,有信委員がおっしゃっていることとそんなに違わないのではないかと思います。

【片山委員】
 よろしいですか。有信委員を含め,今までの議論とかなり重複はしておりますけれども,2点申し上げたいと思います。一つ目は,未修者教育の重要性という話です。これまで,一元的な仕組みで,未修者原則でロースクール制度を構築して,十数年過ぎたわけですが,ここで新たに法学部との一貫コースを議論するということは,法曹養成を二元的な制度として考え直すということに,恐らくなってきているんだと思います。
 そうしますと,まずはその点は明確にすると同時に,本来,未修者教育の方を先に検討してもいいかとも思いますが,後になってもその点は必ず議論します。第1部,第2部に分かれていて,第2部の方も,年度末までにきちんと確実に議論して成果を公表するということを前提に,まずは第1部を今議論しているということを明確にメッセージとして出していかないと,結局,中心は法学部との連携だと世の中に捉えられてしまうと,それは大いにマイナスだと思います。その点を,まずお願いしたいと思います。
 2番目は,第1部の話に限定しますと,やはり期間の短縮化という点では,是非3プラス2コースを,少なくとも優秀な学生を対象にした限りでは,積極的に推進していっていただきたいと思います。その際に,推薦入学をどこまで入れるかという話はありますが,なかなかそれは難しいと思います。やはり入試を受けて接続していくということになりますと,例えば,今私どもの私立大学では,ほぼ夏休みに入試を実施しています。そうすると,2.5年の段階で評価をするということになり,2.5年では若干短いのではないかという懸念が出てくる。その場合には,やはり法律7科目の基本科目を全部評価するということではなくして,一部の科目での既修者認定も検討に値すると考えております。ちなみに,慶應義塾では,この4月から,学部の方で3年卒業を認めてくださったのと並行して,取りあえず4科目で夏に受験できます。残りの2科目は春に入学するまでにしっかり勉強してください。3月に認定試験をやりますという形で,優秀な学生層が集まっています。
 そのような形で,入試の在り方も是非連動して議論していただきたいという点が2点目となります。

【井上座長】
 最初の一元的と言われたのは,必ずしも共通の理解ではなかったので,3年かけ学修してもらう未修者を受け入れて教育する以上,学校制度としては3年を基本にし,既修者については,それを1年短縮して2年にするという形で組まざるを得なかったというだけで,既修者については,もともと2年で完結することが想定されており,3年と2年のどちらが原則ということではなく,併存だというのが,少なくとも私などの理解で,その考え方は別に排除されたわけではないので,誤解のないよう,申し添えたいと思います。

【丸島委員】
 片山委員をはじめ,それぞれの委員がおっしゃったことと関連しますが,学部と法科大学院との連携,そして,「法曹コース」を設置するという議論は,5年一貫コースの問題としてまずは議論されています。それは,一定の学生について期間の短縮ということとして理解もし,そのための検討も必要であろうと思います。
 そこで,教育現場の実情についてお伺いしたいのですが,恐らく法曹を育てるということについて情熱を持って取り組んでおられ,様々な教育手法についてもこの間研究をされ蓄積をしてこられた先生方の多くは法科大学院におられるのだろうと思います。そして,このような教育力というものが,一挙に多くの教員に広がるというわけでもないのだろうと思います。
 学部に「法曹コース」を設置するという議論は,どのような方々がそこの教育を担うことになるのか,今一つよく分からないところもあるのですが,恐らくは,法科大学院の先生方が,学部に設置した法曹養成コースの通常の4年と2年の連携した教育を担い,その期間を短くした3プラス2の一貫コースを担い,そして,他方では,有力校と言われているところが未修者教育の拠点として目されていますから,その教育を担い,あるいは,他校からの学生を受け入れるということも担う。先生方にとっては,かなり大きい負担も重なってくることになるのではないかと思います。
 そうすると,今,3プラス2の議論を進めて,後に未修者の議論をしようということは理解しましたが,その議論の中で,必ずしも余裕があるわけでもない教育力,教育資源をどのように配分するのかを考えたときに,未修者教育の拠点となる学校,恐らくは有力校の先生方はそうなると思うのですが,そこのところも併せて考えておいていただかないと,3プラス2のところの議論が進み,そこにかなりの資源を投入して,結局なかなか未修者教育には手が回らないということになりはしないのかとの懸念も指摘されていますので,そうした全体像を見据えた議論が必要だろうと感じております。
 また,現状の法学部の状況について,私も幾つかの大学の現場のお話などを伺いますが,それぞれに,いろいろな海外留学のプログラムや,あるいは濃密なゼミなど多様なプログラムを用意しておられて,3年生,4年生もこうしたプログラムに取り組んでいるとか,あるいは,本格的な論文,卒論などを課される学部もあると聞いております。それは,多彩な学問的基盤や論理力など,リベラルアーツ的な内容も含めて法曹を養成する上で基本となるような力を付けるという意味では,非常に大事なことに取り組んでおられるなと思います。全体が3プラス2に動き始めるとすると,その中で,どうしても3プラス2を作らなければいけなくなって,それぞれの学部の貴重な財産が損なわれることになってもいけないのではないかという思いもあります。
 そのような意味で,学部の現状,とりわけその積極的な面をも十分に見据えて,また合わせて,未修者教育をしっかりやることを含めた上での改革論議を是非お願いしたいと思います。
 最後に1点追加させていただきますと,本日の会議で,法曹人材の,あるいは法曹の活動の多様性について議論がされました。本日の資料でも,グローバル化の進展や我が国の成長を担う人材というようなことが書かれており,法曹の活動の広がりと法曹人材の多様性の確保の重要性が指摘されています。私は,今,法テラスの運営に関わる仕事をしておりますが,そこで強く感じておりますことは,最近,スタッフ弁護士の希望者が大幅に減少しその採用が大変難しくなっているということです。国際分野の人材や経済活動を支える人材の確保の重要性は指摘のとおりですが,これからの時代の変化を見据えて,高齢者や障害者,女性,子供,外国人を含め広く地域社会で市民の傍らにあって役割を果たす法曹人材の確保についても,グローバル化等の問題と併せて同時に極めて重要だということを強く感じておりますので,その点も指摘しておきたいを思います。
 法曹人材の多様性確保の問題は,理念的なことだけにとどまらないのであって,現実の社会から求められ要請されている問題としても,是非お考えいただけたら有り難いと思います。

【井上座長】
 では,髙橋委員。

【髙橋委員】
 学生の動向というのは,なかなかこちらが想定しているとおりに動かないというところがあるかと思います。こういうコースを作ったとしても,途中で民間企業への就職などを選択するという学生も出てくるでしょうし,あるいは予備試験のみを受けて法科大学院への進学を考えないという学生も少なからずいるのではないかと思います。コースの在り方については,そういった学生たちの動向も併せてシミュレートして考えていくことが必要なのではないかと思っております。その点で,様々なタイプの学生に対して必要十分な教育を確保するためには法科大学院と法学部との間でカリキュラムの設計は,全くの自由というよりも,やはり最低限の標準化が必要ではないかと考ます。
 それから,幅広い知見を持つ法曹の養成,あるいは法学生の最終的な進路の多様性を考えると,従来法学部で教育してきた法律基本科目以外の多様な科目であるとか,あるいは学際的な科目といったところを縮小するという形でのカリキュラムは,余り好ましくないと思っております。
 本来,この3プラス2を利用してほしい優秀な学生というのは,従来のカリキュラムに加えて,こういったコースを作ったとしても,ある程度対応できるぐらいの学生なのだと思います。ほかの科目の学修を縮減していくという形にならないようになると良いと考えております。

【井上座長】
 樫見委員,どうぞ。

【樫見委員】
 まず,1点は,この「法曹コース」の設定については,やはり学生にとっては魅力的な選択肢であろうかと思います。
 ただ,この6-2の資料の中で,「法曹コース」の設置を促すような方策と書いてある中で,例えば「法曹コース」の学生に関しては,いわば単位の修得について特権を与えるということになるんだと思うんです。やはり「法曹コース」だけではなくて,法学部との連携ということを考えた場合には,ここの箇所のプラスアルファの点については,法学部の学生についても広く与えるべきではないかなという点を,私自身は思います。
 と申しますのは,「法曹コース」に入るということ自体,成績や様々な枠が課せられるかと思います。しかも,場合によって1年から「法曹コース」へ入ると確信的に考える学生は,今の学生のように,進路変更ですとか,余り自分の進路にきちんと向き合っていない学生を多く見ている私からしますと,このような学生だけではなくて,漫然とであれ,法学部に進んだ学生で,それなりに学んだ学生については,「法曹コース」に限定しないということを考えた方がいいのではないか。
 とりわけ,2番目のぽつで推薦入学の際の,これも特権になるかと思うんですが,他大学もというときに,他大学に「法曹コース」がない場合には,非常に不利な場合も出てくると思いますので,この点については,「法曹コース」だけの取扱いというよりは,一般的な法学部で学んだ学生にも広く与えるべきではないかなというのが意見でございます。

【井上座長】
 では,吉川委員どうぞ。

【吉川委員】
 総合的な意見を少しだけ述べさせていただきます。
 本日議論いただいております5年一貫コースという方向性自体は,法曹志願者減少の大きな要因とされる時間的負担や,それに伴う経済的負担の軽減策として,やはり有効であろうと思います。
 ただ,先ほど来,議論のございました,原則にするか,例外にするか,あるいは本当に優秀な者だけを対象とするかということを考えますと,5年一貫コースに進める学生のボリュームが少ないと,結局,経済的負担や時間的な負担の軽減を受ける学生がかなり限られてくるというメッセージを与えてしまいます。そうすると,法曹志願者の数を回復するという方向には,十分には寄与しないのではないかなと思うところがございます。
 いずれにいたしましても,現在の法曹志願者の減少が深刻な状態にあると認識しておりますし,御承知のとおり集中改革期間も残り少なくなってきておりますので,本日のような御議論をより加速して御検討いただければと思っております。
 以上でございます。

【井上座長】
 では,あとお二人で最後にさせていただきます。

【瀬領委員】
 同志社大学の法学部長の瀬領と申します。今回,出席は初めてでして,今まで本学の日程と合わなくて出席できませんでしたので,1点だけ。
 基本的に3プラス2というのは賛成なんですけれども,ここでたくさん出ていた意見と同様に,制度に関しては,各大学にかなり委ねる形で柔軟性を確保していただかないといけないのではないかと思うことと,丸島委員等がおっしゃったように,法学部の実情に合った形を考えていただきたい。特定のタイプに誘導するような施策は望ましくないのではないかと思うところです。
 なぜかと言いますと,これは一例ですけれども,同志社大学では,2009年から早期卒業制度を実施しています。これは,既存の法学研究科でして,法科大学院は2014年から実施しております。これは,志望者を3年の春の段階で募るんですけれども,近年は30人から40人程度希望者がいますが,実際に早期卒業する学生は,15名から20名程度。3分の1から5分の1は進路を変更するんですね。
 これは,ほかの進路に進む学生が結構多くて,先ほどの学生の動向が読めないというところなので,3プラス2を作って,確信的な学生を取り込むというのであれば,また状況は違うのかもしれませんけれども,かなりそこら辺は,コースを作ったときに,どれだけそこで定着するのかが読めないところがあります。
 したがって,そのコースの作り方も,定員を設けるということになると,いわゆる入学定員管理等の関係でいろいろ問題があると思いますので,制度は柔軟にしていただいた方が,より良いのではないかと思います。基本的には賛成なんですけれども,これは今までの経験を踏まえた意見ということです。
 以上です。

【井上座長】
 では,染谷委員。

【染谷委員】
 法務省の吉川委員も発言されましたので,司法修習の立場から,多少発言させていただきたいと思います。
 現在,司法修習を担当しておりますし,私自身もいろいろな立場から法曹養成制度改革に関与させていただきまして,やはり今直面している大きな問題は,岩村委員,土井委員からもありましたように,法曹離れの大きな問題として,法曹となるまでに時間がかかり,それから,コストもかかるというところがあるかと思います。
 今回,提唱されております5年一貫コースといいますか,法学部とロースクールの教育を連携させるという点に関しましては,時間的な負担の軽減という点だけでなくて,より良い教育がされる,教育の充実という点からも有益なものではないかと考えております。
 司法修習も期間が短い中でカリキュラム,科目間の連携を高めて,高い教育効果を上げられるように努力をしておりまして,今回の法学部と法科大学院の連携も,より充実した法曹教育をするという点で大きな意味を持っているのではないか。
 そうすると,そういった利益をなるべく多くの学生が享受できるように,各大学の実情はもちろんあるかと思いますし,今回の議論に出ていますように,その制度をどのようにミックスさせて,うまくワークさせていくかというところが大きな問題と考えておりますけれども,積極的に検討してよいのではないかと考えております。
 以上です。

【井上座長】
 ありがとうございました。
 この議論は,これで終わりではなく,引き続き,また次回以降にお願いしたいと思っていますので,本日はこのぐらいにさせていただければと思います。
 事務局におきましては,本日までの議論を踏まえた上で,更に議論が深まるよう,論点等の整理をお願いしたいと思います。
 最後にもう一つだけ,事務局から報告があるということですので,お願いします。

【大月専門職大学院室長】
 資料7-1,7-2,7-3を使っての報告の前に,今の議論の関係で,2点御報告がございます。
 冒頭,日吉委員から配付資料があるということでありました。それについて,5年一貫ということは,前向きに検討してもよいと思われるけれども,原則としてということになるのであれば賛成できないという御意見でございます。
 また,文部科学省においては,法学部と法科大学院が一貫した教育課程の内容についての委託研究を行うこととしており,現在,事業者を公募しております。事業者は,本委員会の議論を踏まえて,具体的には教育課程の内容等について策定することになっており,本委員会においては,次回以降,引き続き5年一貫コースのための法学部の「法曹コース」として,満たすべき要件や,そのための課題解決に向けた基本的な考え方について御議論いただきたいと考えております。
 続きまして,資料7-1は割愛いたしまして,資料7-2の5ページ目の下から7行目のところを御覧ください。これは,法科大学院を含む専門職大学院制度の改正。法律改正が行われて,省令も交付されたところでございます。
 「教育課程連携協議会」。専門職大学院は,産業界との連携により,教育課程を編成し,及び円滑かつ効果的に実施するため,教育課程連携協議会を設けることとされております。これは,平成31年4月から施行されることになっております。
 6ページ目の冒頭でございます。構成員でございますが,学長又は当該専門職大学院に置かれる研究科の長が指名する教員その他の職員。また,イ,関係する団体の全国で活躍されていて豊富な経験を有する者等が構成員となりまして,2の「留意事項」のところでございます。既に同様のものが設けられている場合には,名称については,教育課程連携協議会としなくても差し支えないということ。
 また,構成員については,丸2の部分でございますが,構成員の過半数は,当該大学の教職員以外の者とすることを基本とするということ。
 7ページ目の丸5,教育課程連携協議会の役割について規定しております。産業界との連携による教育課程の編成・実施に関する基本的な事項等を審議するものであり,教授会,その他の審議機関との適切な役割分担により,教育研究機関としての自律性を確保しつつ,産業界等と連携した教育の推進に向け積極的な機能を果たすことが期待されるものであるとしております。
 資料7-3,これも専門職大学院制度全体に関わる話でございますが,資料の後ろから2ページ目,「専門職大学院の教員組織のダブルカウントについて(改正方針案)」というものでございます。本委員会で,法学部と法科大学院等の連携方策について深めていただいている中で,教員組織の見直しについても検討する必要があるのではないかというところで,専門職大学院制度としての見直しの検討を行っているところでございます。
 その過程でございますが,「見直し案」という下の部分でございます。「恒常的措置」というところで,既存の修士課程については,博士課程のみならず,学士課程と全員兼務可となっておりますけれども,専門職学位課程については,後期課程は全員兼務可でございましたけれども,学士課程は一切兼務が認められていない。今後,学部との連携を深める上で,また,その他の分野についてもそのような状況があることから,研究者教員の人数の範囲内について,兼務を認めてはどうかということで,今後,大学院部会等で議論いただくこととしております。
 なお,これらの人数の範囲内で,各大学の判断によって,実務家教員を兼務させることも可能とすべきだと考えております。
 また,「時限的措置」ということで,今後,専門職学位課程を設置する場合には,同様に研究者教員の範囲内で5年間に限り専門職学位課程と修士課程を含めて兼務可能ということで,今後,大学院部会等で検討されることになっています。
 「(2)ダブルカウントについて」でございます。これは,二つ目の丸にありますように,既存の修士課程においては,複数の分野で設置する場合には,必置教員数については軽減されることとなっておりまして,専門職大学学位課程においても,一研究科に法科大学院と法学分野の専門職大学院を設置する場合には,同様に軽減措置をするということで,今後,大学院部会等で検討されることになっております。
 最後でございます。3の「みなし専任教員について」でございます。必置教員のうち,法科大学院は2割以上,実務家教員の配置が必要とされておりますが,実務の最新の動向を熟知している実務家の参画,積極的に大学運営等にも関わっていただく観点から,必置実務家教員数の3分の2までは,年6単位以上の授業科目を担当し,かつ,教育課程の編成等に責任を担う者であれば,専任教員に算入できる措置,みなし専任教員が設定されております。
 これについて,6単位というのが非常にハードルになっているということから,先ほど申し上げたように,専門職大学院制度については,教員課程連携協議会という新たな制度が設けられることも踏まえまして,みなし専任教員については,6単位を4単位とすることで検討してはどうかとしております。
 なお,議論の過程においては,6単位を4単位よりも,教育課程の編成に責任を持つことの方が重いので,そちらを軽減すべきではないかという議論がございましたけれども,そちらにより良い実務家の方に入っていただくために軽減するものでありますので,それは現行のままとしております。
 以上でございます。

【井上座長】
 今の報告ですが,特に何か御質問がありますか。よろしいでしょうか。
 それでは,最後の専任教員のダブルカウントについては,大学院部会等と言われたのですけれども,主として大学院部会でしょうか。

【大月専門職大学院室長】
 はい。

【井上座長】
 そちらの方で,今後も検討が進められるということですので,それについても適宜,本特別委員会に御報告をお願いしたいと思います。
 これで本日の会議を終了とさせていただきます。
 次回の日程につきましては,改めて事務局から連絡を差し上げると思いますので,よろしくお願いします。
 どうも本日はありがとうございました。

お問合せ先

高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

(高等教育局専門教育課専門職大学院室)