専門職大学院ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成28年3月9日(水曜日)17時~19時

2.場所

旧文部省庁舎 6階 第二講堂

3.議題

  1. 専門職大学院制度の現状・課題について
  2. その他

4.出席者

委員

(臨時委員)有信睦弘(主査),川嶋太津夫(主査代理),玉腰暁子の各臨時委員
(専門委員)青井倫一,大竹由希子,片山直也,上西研,杉本徳栄,添田久美子,松﨑佳子,宮脇淳の各専門委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局審議官,北山専門教育課長,塩田専門職大学院室長,川﨑専門職大学院室長補佐,真保専門教育課専門官

5.議事録

【有信主査】  定刻となりましたので,第4回中央教育審議会大学分科会大学院部会専門職大学院ワーキンググループを開催いたします。本日は前回までのプレゼンテーションや議論を踏まえ,論点ごとに審議を進めたいと思います。それでは,事務局より配付資料の確認をお願いします。

【事務局】  それでは,配付資料の確認をさせていただきます。まず,資料1が,前回のワーキングでの指摘を簡単にまとめたものでございます。資料2が,専門職大学院制度の見直しについて,事務局の方で議論のたたき台として作成させていただいたものでございます。

以上でございます。

【有信主査】  はじめに,事務局が前回の議論をまとめてくれていますので,説明をお願いします。

【事務局】  それでは,前回ワーキンググループにおいて各委員から御指摘を頂きましたポイントについて整理しましたので,御説明いたします。

まず杉本委員から,「公認会計士試験の受験者減少の影響により,会計専門職大学院への入学志願者が著しく減少している。また,学生の会計離れが生じている。コアカリキュラムを策定しているが,その中で提示された,授業で取り上げるべきテーマと内容がほとんどの科目で多岐に亘ることから,講義時間数で対応できない場合もある。また,国際教育基準の新設・改訂に準拠した,会計専門職大学院の教育プログラムが必要である。公認会計士の養成にとどまらず,リカレント教育や企業,自治体における会計専門家の養成に取り組むことが必要である。公認会計士試験の受験資格が定められていない。受験資格の制限がない。」との指摘がございました。

また,松﨑委員より,臨床心理の分野につきまして,心理師の処遇について,もっと活躍の場を広げることが必要じゃないかというような話ですとか,研究者教員と実務家教員が共同授業をするなど,補完しながらやっているという話,また,新たな資格である公認心理師につきまして,それに特化した制度であることが必要であるという御指摘がございました。

また,片山委員より,法科大学院につきまして,法学部との関係を見直す必要があるのではないかというような御指摘,また,法曹リカレントの関係で,新たな法律系の専門職大学院の設置が必要であると。その際,必要専任教員数の軽減措置が必要ではないかという御指摘がございました。

また,添田委員より教職大学院につきまして,学生の確保が難しいというような御事情ですとか,現職の教員学生につきましては何らかの負担軽減の措置が必要ではないかという御指摘。また,学部新卒と現職教員との力の差が大きくて,同じ授業で学び合いがうまくいかないという現状,また,最低必要専任教員数は11人ですが,なかなか網羅できないというような現状の御説明がございました。

また,大竹委員より企業側の立場といたしまして,裏のページでございますけれども,大手企業は基本的に会社で育てる意識が強くて,特に文系につきましては学歴に重きが置かれていないのではないかという御指摘。また,日立グループといたしましては,海外のMBA取得を支援していると。また,アメリカのような転職が当たり前等々の環境があれば,専門職大学院の仕組みは馴染むのではないかという,そういうような御指摘がございます。

以上でございます。

【有信主査】  どうもありがとうございました。それでは,ただいまの説明を聞いて,何かご質問等がありましたら。

それでは,今までの議論とかプレゼンテーションをもとに,事務局で論点の整理をしてくれていますので,まずそれについて事務局から説明をお願いします。

【事務局】  それでは,資料2を説明させていただきます。

まず,総論ですが,この枠囲いの中が第1回のワーキングで提示されておりました論点について主に書いたものでございまして,その下の丸がこれまで各委員から御発言があったことをまとめたもの,矢印が事務局の方でそれについての対応案というのを書いております。

総論の(1)でございますが,社会との連携や社会のニーズに対応する形での人材輩出ということでございます。これまで,ここにありますように社会のニーズを把握することの必要性ですとか,不足している分野やクロスオーバーの必要性等々の御指摘があったところでございます。

それにつきまして矢印で,社会(「出口」)との一層の連携による人材養成機能の強化を各専門職大学院に促すとともに,適切な形で専門職大学院制度にも位置づけることが必要ではないか,また,こうした取り組みや積極的な情報提供を通じて理解を得ていくことが必要ではないか,こういうことを書いてございます。

(2)の修士課程との役割分担につきまして,まず参考として,これまでの答申を書いてございますが,14年度の答申につきましては,高度専門職業人養成という目的に一層適した柔軟で弾力的な仕組みとするのだということがうたわれておりまして,その下の矢印ですが,とはいえ,既存の大学院の課程においても高度専門職業人養成はやられておりますので,一律に専門職大学院に移行することは適当ではないのだと,こういったようなことが書かれてございました。

また,次の平成17年の答申でございますが,制度のところでございますが,専門職大学院の実績を見つつ,修士課程及び博士課程との関係を踏まえて,その在り方については今後検討すべき課題であります。平成17年当時は今後の課題だということで書かれているものでございます。その際に修士課程の位置づけは,①で高度専門職業人の養成ということで言われてございます。一方,専門職学位課程につきましては,「特定の高度専門職業人の養成に特化し,国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する課程である」,こういったような位置づけが当時されていました。

それを踏まえまして,ワーキングの方からは,専門職学位課程の独自性を制度上で位置づけるべきじゃないかというような御指摘を頂いております。社会(「出口」)との連携強化という観点から制度の在り方を見直して,理論と実務の架橋とか国際的に通用する能力,こういったような目的に一層適した柔軟で実践的な制度とすることによりまして,修士課程との差別化を図ることが必要じゃないのかというような定義をしてございます。

続きまして,各論でございます。教育課程等につきまして,(1)で社会が求める教育課程,授業の提供ということでございます。それで,時代に合わせたカリキュラムの革新が必要だというふうな御指摘でございまして,矢印の方は,新たな高等教育機関で言われている論点を挙げたものでございます。社会との連携によって教育課程を編成する体制の整備の義務づけ,こういったことが新たな高等教育機関の方で言われていますけれども,それを専門職大学院制度にも導入することが必要かどうかということ,また,同じくインターンシップ等の実習等々の授業について,一定時間,割合以上の実施を義務づけるということが言われていますが,それも取り入れることが必要かどうかということでございます。

御存じのように,(1)の枠囲いの中の米印で書いてございますけれども,現行の専門職大学院設置基準におきましては,ここに記載のある程度の書きぶりになっておりまして,先ほど御説明したようなことは義務づけはされていないということでございます。

続きまして,(2)核となる科目,共通的な到達目標の明確化ということでございます。コアカリキュラムにつきまして,そういった概念がなくて,ある程度の分野特化が必要であるとか,社会的認知を得るためには策定が有効だというようなお話,また,認証評価機関との連携強化が必要と,こういったような御指摘がございました。これを踏まえまして,教育の質保証と可視化の観点から社会と連携した上で国際的な動向も視野に入れながら,各分野でコアカリキュラムを策定し,必要に応じて更新することが必要ではないか,また,認証評価によって策定したコアカリの導入を促進することが必要ではないかと,こういったような整理をしてございます。

続きまして(3)必要単位数の在り方ということで,現状は米印で書いているとおりでございます。ワーキングの方からは,社会人学生には40単位程度が限界ではないかという御指摘がございました。これを踏まえまして,矢印で各分野でのコアカリの策定に合わせて,社会人学生に配慮しつつ,各分野において必要な学修量の検討をするということが必要じゃないかということで書いてございます。

(4)でございます。分野に特化した経営人材の養成機能の強化ということで,ワーキングの方からは不足している分野や必要な分野があるのではないか。また,クロスオーバーが重要,こういったような御指摘がございました。それを踏まえまして,各専門職大学院がいろんなニーズを踏まえながら,自らの強みや特長を伸ばすための取り組みを行う,こういうことを促進するための制度見直し,特に専任教員が考えられますが,そういった制度見直しが必要ではないのかというようなことを書いてございます。

(5)で,継続教育につきましては,仕事を続けながら通学できる仕組みづくりということで,ノンディグリーのプログラムですとかICTの活用,社会人が修学しやすい仕組みづくり,こういった必要性を指摘してございます。

(6)で,世界基準の教育課程の開発ということで,アジアの市場を取り込むべき,こういったような御指摘がございました。それを踏まえまして,通用性のある分野につきましては,国際的な認証評価機関の受審などを通じまして,海外からの留学生を想定した教育課程の開発が必要じゃないかと,こういったようなまとめをしてございます。

続きまして,教員組織でございます。実務家教員につきまして,いろんな意見を頂きました。最初の丸でございますが,実務家教員が大半という大学もあり,これは問題じゃないかという御指摘,また,実務家教員といっても長期間実務に携わらないと不適切,適正性は欠くんじゃないかと,これを認証評価でチェックすべきではないかと,また,みなし専任教員の活用をすべきじゃないかという御指摘がございました。

それを踏まえまして,矢印でございますが,現状では実務家教員が3割以上という指摘だけがあるのですけれども,よりバランスのとれた教員組織とするための措置が必要ではないかということでございます。また,次の矢印は新たな高等教育機関で言われている論点でございますが,研究能力を合わせ有する実務家教員の配置を義務づける,これを本制度でも取り入れることが必要かどうかという論点。また,実務家教員の適正性を認証評価でチェックする必要性があるかどうかということ。また,社会との連携を構築いたしまして,最新の知識を有する実務家教員をローテーションによって派遣してもらう,こういったような体制づくりが求められていないかということ。また,みなし専任教員の要件,具体的には枠囲いの最後ですけれども,1年に6単位というものがございますけれども,それを一定程度緩和することが是が非かというような御意見でございます。

続きまして,(2)ファカルティ・ディベロップメントでございます。ファカルティ・ディベロップメントについては,現状ではなかなか機能していないんじゃないかとか,実務家教員のFDが必要じゃないかと双方からいろんな御指摘がございまして,矢印としては,研究者教員と実務者教育の連携によって双方の教育力の向上を促すFDの実施が求められているんじゃないかと,こういったようなことを継続的に続けるかどうかということを論点として書いてございます。

(3)専任教員数の在り方ということでございます。御指摘としては,専任教員数のハードルが高くて,なかなか移行が進まないというような御指摘,また,軽減措置が必要じゃないかという御指摘がございました。それを踏まえまして,先ほどと重複いたしますけれども,社会や地域のニーズを踏まえて,自らの強み等を伸ばす取り組みを促進するために,教育の質を維持しつつも,専任教員数の在り方を見直す必要があるんじゃないかというような論点を挙げてございます。

3,認証評価でございます。社会との連携による認証評価ということで,社会の意見を踏まえるということが必要じゃないかと。実はこれにつきましては,既に省令改正案が検討されておりまして,認証評価機関は評価の過程において,地方公共団体,民間企業等の関係者の意見を聞かなきゃならない,こういったような省令改正案が実は現在,認証評価制度自体の全体を見てなされているというところでございます。

(2)でございます。先ほども御説明しましたけれども,コアカリキュラムをつくった後に,認証評価においてその導入状況を評価するということが必要じゃないかというような論点でございます。

(3)が機関別評価と分野別評価の重複についての考えということで,特に大学院大学の専門職大学院につきましては,効率的な受審ということを考えることが可能ではないか,こういうふうな論点でございます。

次のページの(4)でございます。国際的な評価機関の評価の在り方ということで,規定といたしましては,米印に書いてございますように,大臣が指定する国際的な評価機関の評価を受ける場合は国内の認証評価を免除するというような規定がございますが,現状としてはそういった指定がなされた実績はございません。現在,そういう状況でございますけれども,国際的な評価機関の認証を得た場合に,国内の分野別評価との重複を今後どう考えていくべきかというような論点でございます。

続きまして,4の情報公開でございますが,出口,社会に対する情報公開を促進するということでございまして,矢印といたしましては,学教法上,就職等の状況につきましては情報公開するのを求められておりますけれども,修了生の活躍状況等,こういったことも併せて積極的な公開を行うことが必要ではないかと。また,アドミッションポリシーのようなものは今,義務づけられていますけれども,社会との連携についてポリシーの策定ということも必要じゃないのかということ,また,各魅力の発信というようなことを書いてございます。

続きまして,職業資格試験との関係でございますが,各資格におきまして,ここに書いてございますような指摘があったところでございます。それを踏まえまして,高度専門職業人養成の観点から資格試験との望ましい連携の在り方を検討するとともに,所管省庁と連携して,各資格との関係性を個別に検討していくことが必要ではないかということを書いております。

続きまして,6で,後継者養成ということでございますけれども,後継者養成についてうまくいっていないという御指摘がございましたので,矢印といたしましては,専門職大学院修了生がスムーズに博士後期に進学できるように方策が必要じゃないかということを書いてございます。

7,その他ということで,さらなる機能強化のための方策ということで,以上,説明してきた取り組みに加えまして,社会との連携を一層促進すると,そういったことを目的として,こういったような特徴,強みを伸ばすような方策が何らか求められるんじゃないかということを書いてございます。

説明は以上でございます。

【有信主査】  ありがとうございました。

それでは,時間の関係もありますので,きょうは具体的に個別に論点のとおり議論をやりながら全体問題を考えていくということで進めたいと思います。お願いします。

それでは,最初に総論の部分で何かご意見等ありましたら,どうぞよろしくお願いします。

はい,どうぞ。

【片山委員】  総論で,社会のニーズ,出口との関係,連携という点ですが,専門職大学院が専門職養成の中のどこに位置づけられるのかという問題になるかと思います。専門職養成の入り口部分を基本的に担って,あとは社会の企業などの業界での人材育成をやっていただければよいとするのか,その後の例えば業界団体との連携も視野に入れ,専門職大学院がどのように連携していくべきかという議論になるかと思います。法科大学院でいえば,最近は法曹リカレント教育の重要性が説かれております。専門職の養成は,一種プロセスとして行われるべきであり,その中のどこで専門職大学院がどのようにかかわるべきかという位置づけを明確にしていく必要が出てくるのではないかというように思っております。それは会計とか法科大学院ですと,資格取得との関係でリカレント教育という位置づけになりますが,資格と関係ない専門職大学院においても,プロセスとしての人材養成と専門職大学院とのかかわりという切り口での議論が有用であるのではないかと思いました。

【有信主査】  ありがとうございます。今までの日本の一般的な考え方は,さっき御指摘があったように入り口の部分だけで,そこをパスすれば,その後は具体的にそれぞれでというような感覚でいるのですけれども,具体的に見ると,そういう例って余りないと思います。特に日本でも継続教育というのは相当厳しく言われてきていて,その継続教育の観点から,具体的な能力をどういうふうにどうつくるかという議論も必要である。それから,法律に関しても,例えばアメリカの弁護士だと一定期間ごとに,たしかテストを受けなければいけないと聞いています。つまり自己研さんで継続的に自分自身で新しい遠隔教育を受ける,そういう全体の流れにもなっているという中でどう考えるかということ。何かほかに御意見あれば。

【青井】  議長,よろしいですか。ビジネススクールは資格とは基本的に関係ないと思います。MBAというのはビジネスの世界でやっているけれども,入門編だけを徹底してやります。その意味ではここに出ている我々にとってコアカリキュラムというのは必須科目です。どれを必須科目にするかは検討しなければ駄目です。その中でMBAをフランスあたりと議論しますと,多分20代の後半にMBAをとり,30代の後半にエグゼクティブプログラムを持つ各ビジネススクールへ,40代になってくると今度はリーダーシップと戦略という形でビジネススクールは3段階ぐらいのサービスを提供しなければなりません。だからMBAだけとって,そのままジェネラルマネジャーになれるとか,そんな甘い世界ではないと思います。

その意味では,例えばロースクールとか教職とかいろんな,多分この中で若干変わっているのはビジネススクールとMOTだと思います。これは基本的に資格とは関係ない世界です。その意味ではこういう人たちを高度専門職と定義するべきか伺いたいです。

ただ,高度専門職をプロフェッショナルという英語に変えるなら我々として異論はなくて,ビジネススクールも御存じのようにディフィニティ,ロー,メディスンに対して,自分たちもプロフェッショナルだという,プロフェッショナルスクールとして認めてもらうためにアメリカではここ何十年も苦労していますが,基本的には,多分ローとか教職は違って,やっぱりその専門性でやっていくというわけでは必ずしもないので,そこのところは若干,設計の仕方が多分違ってくるんだと思います。

それと,もう一つは出口と関連しますと,多分ビジネススクールからすると,よその分野も出口がはっきりしているんじゃないかと思います。ここで間違っていること,出口戦略というのをよその分野でやる議論ではなくて,やっぱりビジネススクールのときは出口というのは非常に苦労しているのは,今まではビジネススクールというのはマーケティング,ファイナンス,アカウンティング,ストラテジー,オーガニゼーションというファンクショナルなところを強化していればビジネススクールはうまくいくという信念のもとできましたけれども,どうもこのごろはそうでなく,やっぱりこの学校はどういう人材を育てたいのかというのを明確にするという意味では,出口という形が必要になってきて,明治大学の場合にはファミリービジネスというか,小さい企業の経営者を育てるというところで出口を設定しています。その意味では慶應大学,早稲田大学のように大手企業のスタッフとか,ゆくゆくは経営者を育てるという発想では多分ないという形で,一種のギャンブルですけれども,非常に明確で,あと起業家,スタートアップビジネスをやっていくという,そういうところに合わせてあのカリキュラムも編成し直します。

これは私が台湾ナショナルの理事と話したときに,やっぱり台湾ナショナルも出口を明確にしていると学生が増えたそうです。それ以来,従来のようなアメリカ流のファンクショナルを強化して,うちにはいいマーケティングの教師がいる,うちにはいいファイナンスの教師がいるという形のやり方では多分,今はうまくいかないと思います。

【有信主査】  基本的には医者とか法律家に要求されることとは違う。MBAを持っているからといってビジネスもそれで成功するか,するようなスキルを身につけているかということは,実際にはその保障はできないわけですね。

【青井委員】  有信主査が言われるとおりです。私の不満は,日本の場合ですと,MBAを持っている社長がMBAと言わないことですね。ある社長さんもハーバードのMBAを出ているというのですが,対外的に言わないですから。割と若手の人は,MBAを持っていると言う人は増えてきていますけれども,やっぱりある程度,日本の場合にはMBAというのを隠すということはないですけれども,余り言わないです。その意味では,そこのところがビジネススクールのプロモーションにはネックになっているかなという,個人的には気がします。

【有信主査】  その辺の違いを少し頭に入れておいた方が,例えば臨床心理にせよ,法律にせよ医者にせよ,それはある種の特殊なスキルを身につけていて,MBA,MOTでそういう特殊なスキルが実際コアカリキュラムの中できちんと身につけられるか。それはまた実際に議論を進めていく中で検討していきましょう。

【川嶋委員】  この資料の1ページ目の一番下に,一般の修士課程と専門職学位課程の違いが書かれていて,修士課程は高度専門職業人の養成で,専門職学位課程は特定の職業教育という形容詞がついているので,基本的には専門職大学院というのは取得可能な資格も含めてだけ考えると,どういう人材を育成しようとしているのかということを具体的に明確にしないと,一般の修士課程と高度専門職業人でそれぞれ養成しようとする高度専門職業人の違いが見えてこないだろうと思います。その点,専門職大学院を新たに設置する際に,その専門職大学院が養成しようとしている具体的な行動専門職業人像をきちんと確認するということが必要です。

次に,資格であれ就職であれ,出口がきちんとあるということも当然確認すべきですけれども,この社会(「出口」)という言葉がざっと10箇所以上出てきて,専門職大学院というのは,そういう意味でやはり社会という実業界,産業界との結びつきというのが非常に重要だということはわかるんですが,しかし,そこが同時に一番のネックで,前回,大竹委員の方からも日立のお話があったかと思うんですけれども,この社会や産業界との関係の強化をどう具体化していくかというところが一番難しい。社会の中には高度な専門職業があるということの明確化と,そのような専門職業人をどういう教育をしているのかということを改めてまた社会の中で認知してもらうという,そのところが専門職大学院の今回の議論にとって,一番重要なポイントであると同時に,難しい課題なのかなというふうに感じました。

【有信主査】  そこが多分,一番重要なことの1つだと思うんですね。それをどういうふうに議論していくか。法曹だとか医者,臨床心理は明確にはなっているんだけれども,その出口側とのつながりは不明確という感じで,いろいろありますので,そこを含めて,後の個別議論のところで御審議頂きたいと思います。

ほかに御意見ありますか。

それでは玉腰委員。

【玉腰委員】  今,医者の話がありましたけれども,公衆衛生に関わるものは全部医者だということではありません。公衆衛生系専門職大学院としても本当に広い範囲を見ています。前回御指摘いただきましたけれども,どういう教育をするかということが求められていると思います。けれども,もう一つは,そのニーズのところで,公衆衛生というのは必ずしも企業,産業界だけでなく行政に関連が強いものとなります。そのため,恐らく教職なんかもそう思いますが,そういうところは是非公務員とか,この行政系の方のニーズをきちんと把握するとともに,連携をとる,次につながるような仕組みをつくっていただくということが大事だなと思っております。企業はむしろ個々の企業単位でやっているので,全体としては難しくても,ある企業が出口・採用に関してある決断をするということはできると思うんですが,行政というのは一律に横並びです。そのため,資格を取っても何のメリットも行政側からは示されないという状況がずっと続いていますので,そのあたりのところの議論というのも1つ必要なのかなというふうに思います。

【有信主査】  公衆衛生士の資格を持っていなければできないというものはないのですか。

【玉腰委員】  全く。あったから何か特別なことがあるわけでは,全くないです。

【有信主査】  それは変ですね。

【玉腰委員】  なので,わざわざその一度起用した人たちを外に出しに行こうという話にもなかなかつながっていかないですし,その人たちが自腹を切って,その資格を取って戻っても,全く前の仕事と変わらないというのが現実で,非常に大きな問題だと思います。

【有信主査】  それはそのとおりです。それも後で議論しましょう。

【宮脇委員】  公共政策の場合は,先ほど青井先生が言われた点とほぼ共有する部分が強くて,対象となる人たちについても普通の公務員を受ける人から政治家あるいはNPOの経営者といったような形で非常に多様化していて,一方でその対象領域についても非常に間口が広いという状況にあります。私が御説明申し上げたときに,そのコアカリキュラムの必要性といったようなことも指摘をさせていただいたんですけれども,公共政策においてやはりもう少し,それぞれの大学においての対象領域のニーズの絞り込みということが非常に必要なんではないかと。そのことが最終的なニーズというところにも結びついていくと見える化がするわけで,現実に今の公共政策でも,そういった流れというのが少し出てきているというふうには感じております。

ですから,これは各論部分の議論にもなろうかと思うんですが,コアカリキュラムをつくる,あるいはその専門性というところを議論するときでも公共政策の場合には少し間口を,視野を広げ過ぎていて,少しターゲットを絞っていくといったようなすみ分けというのを大学ごとでできるような,そういう仕組み設計というのも必要なんではないかなというふうには思っています。

【有信主査】  ありがとうございます。大分問題の範囲が見えてきたような気がしますね。出口といっても,公共政策とかMBAとかMOTのような明確な職業資格という形の資格が準備されていないところと,それから,法科大学院や会計大学院,それから臨床心理師,公衆衛生士のように,それぞれ国家資格として専門分野という資格があるものについての,それぞれのまた設置が問題だと思いだということになっておりますので,大きくまとめ,頭に入れながら議論しなければならないのかなと思います。

はい,どうぞ。

【杉本委員】  「1 総論」の専門職学位課程の説明のところで,特に2枚目の1行目になりますが,「国際的に通用する高度で専門的な知識・能力を涵養する課程」とありますが,資格試験,国家試験と連動する専門職大学院について,国内でのみ通用する資格,それと国際的に通用するもの,これは全く違います。例えば会計専門職大学院の場合,公認会計士という資格と連動しているところがありますけれども,この日本の公認会計士という資格が果たして国際的に通用するかというと,これは制度上,通用しません。逆にアメリカの公認会計士の資格は日本国内では通用する制度になっています。会計専門職大学院で公認会計士資格の取得を要請するという,これが唯一の目的ではありませんけれども,そこのところと完全にリンクして解釈されると困るというところが会計専門職大学院の立場からはあります。ですから,資格試験の受験に向けた教育以外での会計の専門的な知識,これに関しては国際的に通用するものについては教育をする。しかし,その一方で,これは困ったところがあるのですけれども,日本の公認会計士資格そのものが果たして通用するかというと,これはまた日本国内の制度の問題でもありますので,そのあたりも切り離して考えていただければなと思っています。

【有信主査】  今の話は,GATTがWTOに帰ったときにTBT,要するに物の移動だけではなくて,人の提供するサービスの移動に関しても合議するという流れの中で,ジェネラルアグリーメント,これは基本的には各国の持っている専門的な職業資格や相互に通用する,平たく言えば,それぞれの持っている資格がお互いに通用するように認め合いましょうという基本的な合意ができているんですね。したがって,会計士も将来的にはその方向で,アメリカの公認会計士は日本では認められているけれども,日本の公認会計士の方は認められていないという問題がまず出ております。だから,今言ったような資格の方は資格の方で,それぞれの専門的な職業資格を持った人たちの団体が逆に国際的に通用するような形でやらなければいけないのと,あわせて,そのベースになる教育内容がやっぱり国際的に見て同等性を持っていないといけない,そういうところもあるので,そこでどう伝えていくかが,先を読んで進めていく必要があるんですね。

それから,修士課程とというのが曖昧だと言っているんですけれども,今正式に修士課程と言っている課程がどれぐらいあるのか。ほとんどが博士前期課程,後期課程とまとまっていて,ここで言っている修士課程というのは博士前期とは違う。独自の修士課程ということで, 17年当時のときの議論を大きく分ければそういったようになる。多少混乱しているかもしれないですね。

はい,どうぞ。

【青井委員】  修士課程と,それからここの専門職を分けるときに,専門職は早稲田ビジネススクールが専門職で,慶應は修士課程です。マーケットは慶應と早稲田は,専門職だから,それとも修士課程だからと分けているかというと,分けていないです。その辺もやっぱり修士課程と専門職と分けるときに余り理屈の世界で分けていくというのは,ビジネススクールにとっては意味が余りないというところになる。ただ,アプリケーション,その他もあれですけれども,やっぱり最後はビジネススクールが決めて,潰れる云々というのが出るんだと思いますけれども,やっぱりその前にウォーニングを出す必要があるので,チャンスがあるとしたら,こういうところを修正していけば生き残れるかもしれませんよという形ではアプリケーションとかアドバイザリーボードとか,そういうのはビジネススクールにとっては非常に役立つ。

1つだけ質問してもいいですか。杉本さんですね。明治らしいCPA,前はこうやってつくるんだと,これは必ずしも公認会計士の試験の合格率が高いとか,学生の数がいっぱい,応募者が多いとかいうのとは必ずしも違うんじゃないかと。私は専門家でなくてわからないんですけれども,その辺,杉本さんはどう考えておられますか。

例えば,国際云々と通用するようなCPAをつくるというのも1つの専門職のアカウンティングスクールの役割であることはそうです。もちろん国内の公認会計士養成というのも1つの役割だろうと思いますけれども,どちらかというと,いろんな会計スクールは公認会計士の云々というところに若干バイアスがあり過ぎるかなと。これはロースクールも全部そうですから,試験を受ける学生に向かって,おまえら,長い目で考えろと言ったって,先生,その前に試験に合格したいと言うのは当たり前だろうと。その辺,どうですか。

【杉本委員】  個人的には,国内の公認会計士の資格試験ですね,そちらに合格できるように教育する。これはこれで1つ大きな役割が会計専門職大学院にはあると思います。ただ,会計専門職大学院は,これはあくまで私見ですが,会計専門職大学院が発足してから,ほとんどの会計専門職大学院はこの資格試験に向けた教育だけに特化してきました。これは専門職大学院を発足したときからの,今日もいろいろお話を伺いましたが,理念が全て資格試験に特化してきたというのは,これは余り行き過ぎているんではないかと。専門職大学院については,例えばリカレント教育にしてもそうですし,社会的ニーズに見合ったものを教育していくというところもうたっていますので,もう少しこれにも目を向けるべきだと思います。ただ,ほとんどの会計専門職大学院は後者に重点を置かずに,資格試験に特化してきたというところが実態としてありますね。

【青井委員】  これはやはり,学生の募集とか何かに絡んでいるんですか。

【杉本委員】  絡みます。各大学や会計専門職大学院は資格試験にどれだけ合格したかというのをやはり前面に出しています。次年度以降の入学志願者の確保に生かしていきたいと,そういう思惑もあるでしょう。ただ,一方で会計専門職大学院は,前回御報告申し上げましたけれども,専門職大学院がなかったときは学部生のほとんどが専門学校とダブルスクーリングしていたわけです。実態としては学校で教わらずに,ほとんど専門学校で勉強して,そのまま受験テクニックだけで合格してしまう。これでは日本の公認会計士の資格は取れても資質に関しては非常に深刻な問題が起こるというところの反省もあって,それで特に会計に関しては会計倫理の教育,これが前面に出されたわけです。その会計倫理の教育はどこでするのかというと,学部では今もしておりません。この教育を行っているのは会計専門職大学院だけということになっています。ですから,この倫理教育というのは,ビジネススクールでも倫理教育に非常に重点が置かれていますけれども,同じく会計専門職大学も会計倫理の教育,これを前面に出した上で教育を行うところに特徴があるのです。

【青井委員】  ありがとうございます。ですから,これは片山さんのロースクールもそうですけれども,有信さんが言われている日本は学部というのをどう定義するかというところがしっかりしていないので,アメリカのように,いい悪いは別として,プロフェッショナルにしたってメディカルにしたって学部教育でやるというのはどうですか。これは1つすっきりしているんですけれども,日本は学部が強いので,慶應でも余りあれ,ビジネススクールというのは専門職というよりは独立大学院というコンセプトはすごいんですけれども,なかなか日本は独立大学院というコンセプトを大学も余り前面に出さないで,学部というものに振り回されているところが問題かなと。

【有信主査】  もともと日本の学部教育がある意味,相当よくできていたものだから,そこにずっと重点があった。今は現状,随分変わっているんですね。学部の学生の質が変わっている。資質能力が変わっているかどうかはわかりませんが,性向等々は変わっています。それが多分,工学系だとほとんど全員が修士課程に,修士課程という言い方はおかしいんですけれども,というようなことにもなる。その辺はまだ過渡的なので,大学の先生たちはまだそこに踏み切れていないというのが現状だと思います。

大体,全体のアウトラインはわかっていただけたと思いますので,それでは各論のところでいきたいと思います。

最初に教育課程等についてということで,そこをまとめていただいていますけれども,特にここでカリキュラムの問題だとか単位数の問題だとか,養成機能の話等々,出ていますけれども,これについて何かご意見は。

【松﨑委員】  少し前に戻りますが,臨床の場合は修士課程に指定大学院という制度があり,臨床心理師の資格試験を受けるための大学院のカリキュラムが定められています。

【有信主査】  この前,申し上げましたね。

【松﨑委員】  はい。それでいきますと,専門職大学院と指定大学院の差は少なくて,出口としましても臨床心理師の試験を受けると後は同じといったように思います。専門職大学院をなぜ学生が選ぶのかということになりますと,やっぱりカリキュラム実習が非常に多いというところとかを,学生が選んでくる状況がございます。なので,やはり専門職大学院の中身と,それから,それがきちっと専門職とつながっているというところが明確に仕組みになっていくことがとても大事なことと思っております。

指定大学院がなかなか専門職大学院にならなかったというところもやっぱり課題というのはあるのかなと。同じものを目指しているにもかかわらず指定校160校のうち専門職大学院になった大学が6校であるというところも,やっぱり専門職大学院が抱えている課題と思っております。

【有信主査】  それは多分,厚労省と文科省の方針の違いが下におりてきたということかもしれないですけれども,はっきりこの指定大学院というのはお役所アイディアですね。

教育課程について何かご意見を。さっきコアカリのようなものは絶対に必要だという御意見がありましたけれども。

はい,どうぞ。

【添田委員】  前回,報告させていただきましたように,教職大学院の場合は学部新卒者だけを固めたコースというのが全ての教職大学院に設置されているわけではないのですが,入学してくる学生に聞きますと,やはり学部の新卒者だけを集めたコースをつくっている大学院というところを探してきましたという学生さんもいまして,一部一緒に学ぶのはいいけれども,何もかも一緒にということに関しては若干,新卒者としては不安があるというようなところもあるんだろうなと思います。

前にも申し上げましたように,教職大学院の場合は共通科目が10科目,20単位に設定されているということで,大分,出口ということでいいますと,教職の採用試験に受かっていない学生と受かって5年ぐらいの学生と10年,20年の学生がみんなが同じ1つのカリキュラムを学んでしまっているというところにまず問題が大きくあると思うので,やはりつくって10年近くたちますので,このあたりで先ほど青井委員がおっしゃっていたみたいに,どこで絡んでいくのかということを明確にして,もう一度カリキュラム編成をやり直す必要があるんじゃないかなと。教員の場合は初任研とか10年研とかいう法定研修がありますので,そういったものを1つのターニングポイントとしてかかわっていく教育課程というものをはっきりさせる,そうすると出口というのもおのずと見えてくるんじゃないかなというふうに思っています。

【有信主査】1つは年齢や経験の違う人たちが同じ授業を受けるというのは教育効果が高いというのが一般的な考えなんだけれども,全く同じような職業の人たちで経験が違って,バックグラウンドは同じなんだけれども,経験が違う人たちが一緒に教育を受けても,むしろマイナスが多いという,マイナスというか,そういう抵抗感が多いということですか。

【添田委員】  一緒に学ぶことで学び合える部分もあると思うんですが,その度合いだと思うんですね。ですので,全部のカリキュラムのうちの,例えば今ですと45単位が修了単位になっていますが,そのうちの例えば10単位であるとか,つまり3科目ぐらいを一緒に学ぶということであれば効果的かと思うんですけれども,やはり重なりの部分が大きければ大きいほど,ついていけない部分,あるいはこちらが合わせないといけない部分というのが出てくるということで,教職大学院ができ上がったときには経験が違う人たちが学び合うというのは非常にいいということで,学校自体もそういう経験の違う人が学び合うようになっているわけですね,教職員も。だけれども,それだけでは深まらない部分も,それぞれのニーズによって合わせて深めたいというところも受け入れないと,なかなかいかないかなという気はいたします。

【有信主査】  それはかなり教職大学院の在り方の問題にもつながるし,どちらかというと,もう少し違う議論も必要ではないかという気がしますね,それは。

【青井委員】  教育課程の中の時代に合わせたカリキュラムの発信が必要というところで,若干気になるのは,その2つ目が一定時間,割合とか何かの実施を義務づけることが必要か否か。義務づけられると,辛いところがあります。あくまでビジネススクールとしてですが。

というのは,ここに出ているインターンシップの実習,事例研究,現地調査。インターンシップというのはビジネススクールでいえば,産業スパイと裏腹の議論になってくるわけです。既に経験を持っていますから。インターンシップというと,普通はアポがとれない会社に堂々と学校の名前で入っていくというのがあって,アメリカでは90年代来,問題になったところがあると。その意味では,インターンシップというのも単純にやるのはビジネススクールとしては命取りで,事例研究というのもハーバードのロースクールから学んでビジネススクールがスタートしましたけれども,これも70年,80年たっているんですが,今更事例研究とロースクールやビジネススクールで言われても,あまり参考にならないと思います。

アメリカのビジネススクールは今,力を入れているのは実地調査だと思いますが,海外に学生を持っていく。そこでいろんな形で,日本だったら,例えば東北にハーバードの連中が来ていますんで,いろんな形で海外に行って,そこで学んでいくということをしています。ただ,どういう教育のやり方がいいんだろうかということを真剣に考えなきゃ駄目なんですけれども,やっぱり少なくとも教室でいて教員と学生だけで議論するだけでは,多分これから先10年もたないだろうというので,どういうのが必要なのか。

例えば,この後の方に出ています。ICTを使ってどうやるか。いろんな形での実験が多分これから必要になってくる。前にもお話ししたと思いますけれども,バウソンは起業家精神をやるためにダンスとミュージックとドラマか何かを必須科目にしている。アジアの学生はがっくりします,何で俺がボストンまで来てダンスだというようにします。やっぱり自分の殻を自分で破るために何か必要なんだという,その一種の実験だろうと。うまくいかなかったら途中でやめるといいんです。その意味では,その中のコンテンツ,コアカリキュラムとともに,やっぱり学ぶ環境というのをどう設計していくかというのも多分,時間,リソースをかけてやる必要があると。後のビジネススクールの教師は悪い癖があって,自分が王様だと思っているから,あの壇上の真ん中でやるというのが好きですけれども,これが果たしていいのかどうかというのは,個人的には疑問だと考えています。

以上です。

【有信主査】  ケーススタディが主流でやっていたことというのが多分,限界になっているというのは非常によく理解できますね。現実に理念そのものが大きく変わってきているし,過去の例が昔のように役には立たない。それで,それが役に立つレベルまで抽象化できているかというと,それは相当の力がないと抽象化できないとうので,多分いろんなバイアスができますので,その辺も,今そういう意味ではビジネススクールは大変ですよね。

【青井委員】  大変です。有信さんが言われるように,2010年のアップルとかいってケースをやっている最中に,学生は何かインターネットで見て,今の二千十何年のアップルがどうなっているかということを見ていますから,そこで質問をとしてくるときに,昔なら教師がケースに書いていた中での議論にとどめてくれと言っているんですが,今はそうはいかないですから,やっぱり対等の立場に立って議論する。そうなってくると,今度はFDも含めて,教員の能力をどう開発していくかということと多分絡んでくるんだろうと思います。

【有信主査】  そこまで来ると,ここで議論できないかもしれませんが,ほかに。

はい,どうぞ。

【片山委員】  教育課程等の問題の1つとして,先ほどの出口の話とも関連するのですが,学位の問題も重要ではないかと思っております。先ほどのビジネススクールのお話でも,あるビジネススクールは大企業,他のビジネススクールは中小企業とか,あるいは起業,すなわち新しい事業の立ち上げに特化してというような話がございました。そこでは,それぞれの専門性というのは,今のところ学位自体に反映はしてはいませんが,MBAでのシニア向けのエグゼクティブのディプロマなどは考案されているようです。法律の分野でいいますと,アメリカのLL.M.となりますと,例えばタックスのLL.M.とかIP(知財)のLL.M.とかというように,学位名にそれが反映する形で専門性を示していて,20も30も40もあるという状況ですね。

法科大学院の関係でいいますと,法科大学院自体は3年間で90単位を超える大きな枠の専門職大学院(学位はJ.D.)ですけれども,それと別個に,より柔軟なLL.M.を専門性に応じて多様な形態で作り出していくニーズが極めて高いのではないかと推察しています。

ビジネス系の専門職大学院に関してはいえば,MBAとMOTとの関係には,一種の親戚関係があって,そうするとMBAのあるところでMOTを開設するならば,専任教員の数も柔軟な対応が可能となるのではないかと思っております。

【川嶋委員】  先ほどの青井委員と同じ意見ですが,この最初のところにインターンシップや実習の義務化,新しい高等教育機関でのお話の流れで御紹介されましたけれども,これを専門職大学院にも義務づけるというのは時期尚早かと思います。先ほども話がありましたけれども,インターンシップということですと,社会人学生にとって非常に難しい。働きながら別の企業にインターンシップに出ることが,スパイだというかどうかは別にして,仕事と学習を両立させることは非常に難しいので,各大学が特色を出す中で,そういうことを求める大学院はそういうカリキュラムをつくればいいだろうというふうに今のところは考えます。

次に,出口との連携で,教育課程編成の際にも,企業等と連携してレベルの高いカリキュラムをつくりなさい,そしてそれを義務づけるという話でしたけれども,例えば資格と結びつくところは出口が明確なので,協力を得ながらカリキュラムを作成することはできるかもしれませんけれども,ビジネススクールはどこと連携してカリキュラムを作成すれば良いのかは必ずしも明確ではなりません。例えばある大学院は日立さんと組んでカリキュラムを組む。また別の大学院は他の企業と連携する。また別の大学院は,更にべつの企業と連携する,ということになりますので,それぞれの大学院の判断で現行の制度でも可能だと思いますので,そういうふうに努めなさいぐらいでよろしくて,義務づけというのは少し行きすぎかと思います。

2つ目のコアカリキュラムについては,認証評価で何らかの形で確認するということをしないと,せっかくのコアカリキュラムも活用されません。例えば学士課程の方ですけれども,日本学術会議で分野別の参照基準をつくっていますけれども,ほとんど活用されているようには思えません。当初は認証評価の際に確認しては,という話になっていたんですけれども,今のところ,そういうことを確認することにもなっていないので,大学にとってもほとんど活用するインセンティブが働きません。参照基準の二の舞にならないためにも,コアカリキュラムをつくった場合には何らかの形でそれを活用しているか,活用していなければ,どういう考えでカリキュラムをつくっているんですかということの説明を認証評価で確認するようにすべきです。イギリスで聞いたのは,”comply or explain”,要するに従わなければ自分でちゃんと説明するという,そういうようなことを認証評価でやっているということでしたやる。

最後は質問なんですけれども,(4)のところで成長が見込まれる分野に特化した経営人材の養成機能の強化というものがあるんですけれども,1つは,これは前にお聞きしたところ,産業競争力会議か,どこから出てきた話だというふうに説明を受けていたということがあるんですが,専門職大学院に関して,ある産業の経営分野の専門職の育成ということに重点化するということなのか。もしそうであるならば,これまでは特定の分野での専門職大学院については,その分野に特化した細かい分野で認証評価が行われていることが1つの課題になっていますので,この場合,特定の産業に特化した経営人材の育成機関であるけれども,その質保証はどういうふうにしてやっていけばよいのか。それから,その経営人材といったとき,新しい高等教育機関に関する机上資料に関連して,そういうある特定の分野での経営人材は専門職大学院で育成し,第一線で活躍する人材はこの机上資料にある新たな教育機関で育成するという層構造で構想されているのか,2つの教育機関の関係について文部科学省のお考えをお聞きしたい。

【有信主査】  何かありますか。そこまで考えてない。

【事務局】  まず,経営人材というふうに書いたのは,先ほど先生がおっしゃった産業競争力会議等々の流れでそう書きましたけれども,事務局として改めて言うと,無理に経営というふうに現実に書かなくてもいいのかなという気はします。

その分野に,各矢印のところに書いてございますように,自らの強みや特長を伸ばすというような取り組みが各専門職大学院に必要ではないのかというような観点で矢印が書いてありますので,余りに経営人材というふうに限定して書く必要はなかったのかもしれません。

【有信主査】    ただ,そこは多分違うと思う。経営人材と書いてあるところに意味があって,何かこういう言葉が出てきたかというのを慮ると,要するに日本の今の企業,産業競争力の停滞というのは,1つの見方としては経営側の経営能力にあるという認識なんですよね。つまり,経営者を育てているんだけれども,今のままでは,それの限界があるのではないかという話があって,それでMBAをもっと強化しようという話につながる。つまり,そういう意味でより一般的,抽象的な意味で経営能力を涵養した人材を育てて,その人たちがもう少し日本の産業競争力を高めるような企業経営をやるというぐらいの期待が多分あるので。

はい,何か。

【事務局】  補足で説明させて頂きますと,例えば観光は今後,恐らく産業としてかなり成長が見込まれているというふうな雰囲気ですけれども,日本の場合はどちらかというと,観光学部とか観光の分野の研究が中心とかがかつてございまして,もちろんアカデミック風になっている。一方,欧米の一流のどころについては,やっぱりMBAないし経営をベースにしながら,例えばホテルとかであれば,オペレーションのマネジメントをどうしていくかとか,マーケティングをどうするか,その辺のところをターゲットに置いたようなところが全く今のところないので,一部あるようですけれども,その辺を評価してはどうかなんというような議論がありますので,主査がおっしゃっていただいた話は,そういう分野でも。

【有信主査】  でもあるということですね。

【青井委員】  日本では前にもお話ししたように,美容師とかデザイナーとか非常に能力のある人がいるんですけれども,経営という発想は全くない。これがやっぱりいい人が出ても,欧米流の会社は,今度は経営という視点で出てきて,ひっくり返される。その意味では美容師でも理容師でも,いろんな世界で経営人材が必要であると。ただ,問題は結局,そこがビジネススクール的につくると小さくまとまった形になるので,ここをどう解決していくかで,ある意味では,私としては経営はビジネススクールに行ってもらって,専門学校は専門性で出てきて,この専門学校の強みとビジネススクールとの融合をどう考えるかというのは,これは1つの多分,案だと。これがいいかどうかは別としてですね。

その意味では常にその出口というのは,例えば教職と公衆衛生のような世界ではなくて,どうとか違って,我々は生きる,ターゲットは時代に合わせて変えていくと。そのために柔軟な戦略と組織はビジネスにとっては必要になってくると。これが全てのビジネススクールの理事が同じ考えかどうかは別だろうと思いますが。

【有信主査】  そういう意味でビジネススクールに関してはまたそれぞれの戦略があると思います。教育課程等に関しては,出口に卒業資格があるところが,卒業資格と具体的に密接に関連したカリキュラムをある程度やれているところは会計専門大学院ではあると。ただ,そうは言いながら,公衆衛生だとか臨床心理士のようなところはまだもう少し密にやって内容の特徴を出す必要があるのと,もう一つ別に,その比較そのものの意味合いをどう考えていくかということもあって,それは別の考え方でいくか。

教職大学院に関して言うと,やはり従来の教育の常識が通用しないようなところで,従来の教育の常識に基づいた手続がやられているので,ここの部分をどういう形に持っていくか。それから,公共政策とMBAとMOTは,ある意味で,そのカリキュラムというところの具体的な出口が明確に定義できないので,ある程度の能力というか,その資質能力をその中に示すために,具体的にどういうようなカリキュラムによって,その人の能力を育てますということを明確にしていくという形をどうつくっていくかということになる。

大学ごとのまた格差がいろいろあるので,そこはまた別に議論する必要があると思いますけれども,全般的に教育課程に関してはそういう形です。

【杉本委員】  インターンシップ等の話で,会計専門職大学院についての事例を御紹介したいと思いますが,日本公認会計士協会と大手監査法人の御協力を受けて,会計大学院協会がインターンシップを毎年行っています。ただ,当初はインターンシップの希望者の充足率が高かったのですけれども,今現在は希望する学生が半減しております。なぜ半減しているかというと,その理由としては,公認会計士試験ですとか,そういった資格試験を受験するために会計専門職大学院に入学してくる学生が全てではないこと。ですから,資格試験の受験を希望せずに入ってくる学生たちも増えてきていますので,このインターンシップ等を義務づけてしまうと,非常に問題が出てくるかなというように思っています。

また,インターンシップに参画するに当たっても,大手監査法人との間でコンプライアンスの問題がありますので,十分に徹底した指導が必要になりますので,もし導入するのであればこうした徹底した指導の要請もあればよいのではないかと思います。

【有信主査】  今の話は教育課程の組み方にもかかわってきて,インターンシップという形だけで定義をするか,あるいは具体的にトレーニングと学をどういうふうに組み合わせるかというような工夫をする,具体的にトレーニングをやるということも現実にはいろんなところでやっているわけです。

インターンシップに関しては,これは義務づけはなかなか難しいかもしれないけれども,それにかわる具体的なトレーニングのやり方を考えているところで,もう少し先にまとめのところでも議論していかれればいい。

それでは,教員組織について,御意見をよろしくお願いします。

実務家教員の問題だとか,それから,ここでいうとFDをどうしてくかというような問題だとか,それから教員数の在り方が問題という,3つ大きく課題があります。

【片山委員】  (3)のリカレント教育との関係ですが,専門職大学院の役割を考えていくときに,ビジネス系なり法律系なり,何々系専門職大学院の枠組みの中で異なる専攻を持っているということの必要性が益々増えてくるのではないかと思っておりまして,その場合,やはり教員数を現行の法令を前提として要求するとなかなか困難な面があるということであります。

【有信主査】  教員の数の見直しですね。さっき言った臨床心理師で指定大学院がなかなか専門課程に移れないというのは,この辺の問題もあるんですかね。

【松﨑委員】  そうですね。やはり教員の数の確保が問題で,それから,学部教員とのつながりの問題と両方含まれていると思います。

【有信主査】  学部教育とのつながりというと。

【松﨑委員】  やはり心理としての,つながっている専門性という問題がかなりあります。特に今度の公認心理師の国家資格などは,学部での心理学単位が指定だということが出ておりますので,学部教育との連携も入っているのかなと思います。それはこれからのことですので,まだどういうカリキュラムになるか明確ではありませんので,一番は,専門職の場合の定義,教員の確保,それとそのつなぎをどう。

【有信主査】  つなぎをどうするか。

【松﨑委員】  はい。

【有信主査】  というので,少しずつまた問題がはっきりしてきました。

はい,どうぞ。

【添田委員】  教職大学院の場合は,教職大学院の専任教員が学部の授業は4単位までと出ておりまして,教職大学院に移った先生は学部の授業を2科目しか持てないんです。ということで,学部も高度化を図れと言われているので,求められている人材は一緒なんですけれども,人数で割っていて,私がゼロで,こっちが8でもいいんですよ。でも,4単位と言われていますので,求められる先生方がどちらにも重要なんですけれども,教職大学院に移っちゃうと社会科の人がいなくなるとかいうことで,4単位ではなかなか網羅できないというようなお話が出てきたりしますので,ちょっとそのあたりが難しいかなということですが,本科の本学なんかでは少し相談に乗ってやるというふうに言われております。去年,設置審等で学部の担当科目数というのを出すんですが,そこで人数掛け4単位で,トータルのところが超えるのは超えないようにしてください,超えたらつくらせないとか,駄目ということは言いませんが,それを守ってくださいというふうに言われておりまして,それを正直に守るとそういう形になってしまうので,それ以前,去年,27年度に出す以前では,そういうことは負担軽減ということで言われていたんですが,そこまでは言われていなかったんですが,このため27年度に設置審に出したときには,1人で何科目持ちますという一覧表も設置審の書類に合わせて出させていただいております。

【有信主査】  はい,どうぞ。

【事務局】  添田先生のお話にありましたように,多くの国立大学については,教育学部の上にその修士課程を持っています。それを教職大学院に転換するなり,そういう形で組織改革をお願いしておりまして,その際においての専攻の立て方とか教員の割りつけとかいうふうな話の1つの指針として,そういうことを示させていただくという話であります。この辺は少し,今頂きましたので,まだ今,進行中でございますので,少し議論させて頂きます。

【添田委員】  趣旨は大変よくわかります。両方を持って非常に負担の大きい先生というのをつくらないという趣旨であるということ,教職大学院の方に専念するべきだということも非常にわかるんですが,なかなか今,新規採用ができない中において,そういう形で守ってくださいねというレベルでも言われると,国立大学といたしましてはなかなか難しいところではございます。

【有信主査】  この点は個別の話で,本来は専門職大学院の質をきちんと確保しつつ,本当に本来の指導時に動くように持っていくためにどうするかという話です。その中での1つの制限要綱として今のところがあるので,それはそれで可能ということだろうと思います。特にほかの教員,FDが義務づけられていないとかいろいろありますけれども,FDというのは多分,認証評価では必ず確認するはずですよね。

【事務局】  (2)の米印のところで設置基準を書いていますけれども,これはございます。ただ,ある意味で一般的な書き方になってございますので,例えば実務家と研究者教員の連携とか,そういったことまで盛り込んだ記載にする必要があるかどうかということです。

【有信主査】  そこら辺は,だから認証評価の中でFDが有効に機能しているかどうかを確認する,FDをやっていますか,やっていませんかみたいな話で聞いていたのでは認証評価になりません。そこのところはどういう問題かですね。

はい,どうぞ。

【川嶋委員】  学部の方は教育に関する研修で,大学院は教育プラス研究指導に関するFDをやりなさいということになっているので,多分,事務局の趣旨は専門職大学院として,教育プラスその実務と理論を架橋するようなことについての研修もきちんとやりなさいということを明確に規定するという,そういう御提言だろうというように思います。

【有信主査】  なるほど。これは,まず誰も異論はないつもりです。

それでは次に移りましょう。認証評価に関してということの,いわば出口側の意見を踏まえてその認証評価に入っていくべきということ,いわば国際的に通用するかということ。それから,機関評価と分野評価についてです。最後に書いてあるのは,MBA等で,アメリカの認証評価機関で評価を受けるという,その認証に対する考え方ということです。それぞれ御意見お願いします。

【川嶋委員】  前回の杉本委員の御報告で,会計専門職大学院の認証評価団体の1つの国際会計教育協会がつくった会計大学院評価機構というのは,1年前に廃止というふうに報告されていて,文科省にその廃止するという届出があったのかどうかということ。それからもう1点は,きょう,大学基準協会から,ホームページも一切消えてしまっているという指摘がありました。ということは,その認証評価結果の情報自体もほかの機関が引き継ごうにも引き継げないという状況にあると思います。これについて,どういう状況にあるかというのをお聞きしたい。

もう1点,最後に国際的な評価機関の話が出ていますが,私は別に海外の認証評価機関,特に分野別評価は,日本国内の認証評価機関の評価にかえることは特に問題はないと思うんですが,ここに矢印で書かれている意味をちょっとお聞きしたい。国際的な評価機関の認証を得た場合,国内の分野別認証評価との重複をどう考えるかということです。国際的な分野別の認証評価機関の認証を受け,その機関を文部科学大臣が認証評価機関というふうに認定すれば,もうそれで分野別の認証評価機関は終わったことになるのではないでしょうか。ここで想定しているのは,機関別認証評価機関について文科大臣が海外のものを認定すると,そういう前提で,そこを少しお聞きしたい。

【事務局】  認証評価機関が廃止をする場合は届出が必要というふうになってございますので,届出はされているはずですが,認証評価の担当ではないので,改めて事実関係を整理して御報告させていただきます。

【有信主査】  要するに国際評価機関の認証を受けた場合に,国内の認証評価機関の認証を受けなくていいのではないかというときに,これは,なぜこんなことをわざわざ書かなきゃいけないのかということですね。

【川嶋委員】  そうです。ここは本当に,例えばAACSBに認証評価を受けた場合に,ビジネススクールに課されているような分野別評価を免除するというようにしていいものかどうかという問題ですね。

【事務局】  大臣が指定した場合はもちろんそうなるんですけれども,指定していいかと。

【有信主査】  指定するためには,おそらく認証評価機関を審議する委員会で承認をしなきゃいけない。承認をするためには,承認してくださいという届出がないと承認してもらえない。だから,向こうがそんなものは関係ないといって,勝手にやっている分について,これを認めるというのはかなり国の仕組みの中では問題だ,そういう話になるんですね。

【事務局】  あと,やはりここにも書いていますように,認証評価によって政策誘導していくというようなこともございますので,仮に海外でAACSBとか受ければいいですよというふうにすると,そういったことはなかなか直接的には難しくなるというようなこともあるかなと思います。単純に海外の認証評価機関を受ければ国内はいいですよというふうな,いいのかどうかという話です。

【有信主査】  そこのところは具体的に言うと各国との,例えばアメリカでも認証評価機関はおそらく教育省か何かの承認を受けているから,日本の認証評価機関がアメリカに行って認証評価をしても,それはアメリカの認証評価と同等にならない。

【事務局】  補足させていただきますと,主査がおっしゃったとおり,国際の機関のAACSBを逆に,そのほかの申請のない名前も指定するということはできない。一方,一部のMBA構想を持っておられるところについては,やっぱり国際的な評価を高めたいとかいうようなことから,かなりの負担も伴いながらでありますけれども,認証を取りに行こうかというふうな教育機関が最近ふえている。一方,先ほど,申し上げましたように,質の保証ということとか国内の議論をどう考えればいいのか。単純に免除するのか,あるいは分野別認証評価を受けると規則を維持しながら,相当程度の負担軽減をするような仕掛けとか仕組みを考えていくのか,そういうところについての論点があるのかという形でプロセスに入ってるというところです。

【有信主査】  例えば国立大学でも大学として認証評価を7年以内に1回とか,一方で6年ごとに法人評価を受けなきゃいけないということで,この両方についてはかなり相互にその結果を活用するような形で,いわゆる評価自体,大分少なくしようという気分がある。この件に関しては,1つのやり方としては,その分野別認証評価機関が決めればいい。つまり,AACSBというのを受けた場合は,その結果をもって認証評価機関が確認するとか,そういうつくり方の整理をすることも可能かなというふうに思う。

【青井委員】  慶應にいたときはAACSBとイーエフビー,両方受けましたけれども,慶應の場合には専門職じゃないので,国内の認証というのは受けなくていいですから,それで済んでいました。今,明治大学はイーエフビーのイーパスという教員25名以下のところで申請していますけれども,実際のスタッフからすると,国内には国内の資料をつくり,海外には海外の資料をつくり,もう一つは,今度は大学の機関別も出てくるとしたら,非常にマンパワーが必要だという議論が出てくるだろうと思います。それと同時に大学から言われるのは,評価を受けるために支出した金額分,ちゃんと稼いでいるのか,理事からそういう議論も出てきます。その辺が出てきて,海外の認証を受けるとしたら,やっぱり国内の認証はある程度,川嶋さんが言うような形がいいのか,ある程度,一番いいのは免除してもらうことですけれども。それで代替というのが多分,受ける方からしたらいいと思います。なぜ海外の認証評価を受けるかというと,ビジネススクールの場合には,AACSBなりイーエフビーの方が先へ走っていますし,どんどんマーケットが変わっていますから,我々としては彼らから学ぶという意味では重要になってくるんだと思います。

もう一つは,海外のビジネススクールと提携とか学生の交流となってくると,必ず先方が聞いてくるのは,AACSB取っているのかとか,イーエフビー取っているのかということが出てきます。70年代に比べるとAACSBとかイーエフビーというのはある意味で非常に確立された形になってきているので,ある意味では海外での活躍を考えるビジネススクールとしてはマストかなという感じです。

【杉本委員】  今,川嶋委員からの2つの質問のうち,最初の1つ目の会計大学院の評価機構の御質問について,この組織に直接かかわっているわけではないんですが,理解している範囲で御説明したいと思います。

前回,報告させていただいたんですが,NPOの国際会計教育協会,その協会の中に会計大学院評価機構を設置してきたという経緯があります。ただ,このNPOが財政的に非常に苦しくなって,維持することが難しくなったということで,最終的には閉鎖することになったと連絡を受けています。

それで,この間の認証評価の報告書についてですが,私もこの間に,NPOの国際会計教育協会のウェブサイトにずっとアクセスを試みたのですが,全くつながりません。ホームページがなくなっているのか,それともアクセスできない状態に今置いているのかは不明です。

この間,文部科学省の方々とも御相談をして,今,対応している真っ最中だということですけれども,新たに会計大学院評価機構の母体をどこに置くのかということが大きな問題となっています。会計大学院評価機構は,これは閉鎖していません。機構そのものが閉鎖しているのではなくて,NPOが閉鎖されたということです。ですから,軒先を借りていたNPOにかわる母体をどこに求めるかということで,今,複数案考えられているようですが,日本公認会計士協会の会計教育研修機構ですとか,昨年10月に開設した東北大学の会計専門職大学院の中の国際会計政策大学院がありますけれども,そちらの中で新たに協会をつくるという話も出ています。

最終的にどういうふうになるかわかりませんが,母体を確立した上で改めて文部科学省の方へ申請し,その母体をもとに会計大学院評価機構をまたリンクさせるという,そういうふうな手順になっているというふうに仄聞しています。

【有信主査】  日本の場合は認証評価という法律で定められたやり方でやっていて,もともとアクレディテーションについていうと,これは特に国がどうこうするものではなくて,教育内容の評価だから,本来は国から独立しているところで認定をとらなければいけない。したがって,認証評価に関しても基本的には評価団体は,国とは独立な組織としてやっていけるという観点,それが経営上きちんと継続性があるかとか,必要な人材がそろっているかというところを国が見て承認しましょうということになっているわけですね。ただし,この国の承認とここでいう100人程度のと,それから専門職大学院の認証評価の基準で法律で定められた規定というのがあって,そこも含めて考えなくてはいけなくて,アクレディテーションというだけだったら,ここに書いてあるようにAACSBが実質的な話であればそこで認定されれば,その内容をそのまま認めていく。ただ,認証評価に関していうと,法律で決まっていて,認証評価を受けなければいけないということになっているので,これは外せない。したがって,認証評価機関は機関を文部科学大臣が一応承認するという形になっているので,承認を受けた団体が認証評価をやるということになると,基本的には認証評価団体の意向でそれをどう取り扱うかということに当面はせざるを得ない。もうちょっと突っ込んで具体的に互換性があるなということは考えると思いますけれども,少なくともきょうのこの4のは余り当たらないと思う。そこのところぐらいですね。それから,これは重複の問題をどう考えるかという話も含めて,本当は専門職大学院であれば,認証評価と機関評価をそのままダブらせてもいいかという考え方もあるし,ただ,その機関評価,機関の認証評価のときは全学での対応ですから,その中に特別に分野別の評価を入れ込むというような,そういうやり方が可能かどうかやってみないとわからない。

【事務局】  おっしゃるとおり,これは受審の時期の問題ですとか,その辺も結構,認定に絡む話でございますので,できれば,方向性については頂けましたから,私どもとしてもう少し技術的に詰めていければと思っております。

【有信主査】  この方法に対しては,各大学は別に異存はないと思います。

それでは,あと情報公開とか卒業資格試験との関係とか,専門職大学院の教員養成はともかく,教員をどう養成するかとかありますけれども,ここは全部まとめて,いろいろ御意見を伺いたいと思いますが,よろしくお願いします。

【川嶋委員】  少し松﨑委員にお聞きしたいと思います。この職員資格の2つ目のところで,公認心理師制度においても,専門職大学院が,制度的に位置づけられることが必要である。先ほど,少しお伺いした学部のコースを前提に,この新しい認定申請ができているというお話でしたよね。

【松﨑委員】  そうですね。学部で心理学の必要単位を取得という形になっていまして,それにプラス修士,若しくは学部を出まして実務経験を何年かすると。これは,まだ何年と決まっていない状態です。今それぞれカリキュラムとか,それから細かい内容が検討されているのだと思います。

【川嶋委員】  その修士2年というのは,専門職大学院も含まれると考えてよろしいですか。

【松﨑委員】  一応,そのように考えておりますが,まだ明確に書いてあるわけではありませんが,多分そういうふうになるだろうと思っております。今の専門職大学院は臨床心理に関しての専門家である臨床心理師の資格が取れるということで出しております。臨床心理師の場合は学部が心理学でなくても受験資格がございますので,そこのところで二本立ての資格が取れる仕組みにしていただきたいと考えておりますが,まだそれも公認心理師の具体的な内容が少し出てきて,検討してからになるのかなというふうに思っています。

【有信主査】  これもまた繰り返すけれども,こういう議論をやるときに専門職大学院の話が出てこないで,公認心理士の資格をどうするかというところだけで議論されています。公認心理士の資格要件をどうするかということだけで議論されていって,多分,厚労省か何かで専門家を集めて,公認心理士資格というものを検討していると思いますが,ここには専門職大学院の意識がないように感じます。

【松﨑委員】  今度の公認心理師の資格は医療領域から心理領域,いろんなものを含んで検討されております。専門職大学院関係の方には入っておりませんが。

【有信主査】  そうすると,また別の資格が幾つもできると,こういう感じですけれども,具体論で見て,我々素人から見ると,臨床心理士と公認心理士の違いが余りよくわかりませんので,そういう状況の中で臨床心理士の専門大学院を考えるということなのかという。

【事務局】  既にお話がありましたけれども,もともと厚労省系のお医者さんを中心とする精神保険医の資格と,それから臨床心理師,文科省がこれでかかったところ,一本化してどうするかというところの議論があって,その枠組みをつくるというのを国会議員の先生方で望んだということなので,余りその役所の中の審議会でかなり詳細なところを詰めてやったというふうな経緯のものではないというのが1つございます。

ですから,今,松﨑先生がおっしゃいましたように,その辺の細かいところも含めて,どういうふうな形で進むのが一番いいのかについて,私ども煮詰めていきたいと思います。

【有信主査】  わかりました。ほかに。

【上西委員】6番目の教員養成のところですが,MOTも教員の後継者養成というのは非常に重要な課題です。実務性と学術性の両立というのは,従来の大学院ではなかなか難しい状態にあります。すぐには難しいのかもしれませんけれども,博士後期課程相当の専門職学位課程というか,専門職学位課程の上に博士まで行けるようなものを創設するというのが後継者養成という意味でも大きいのかなと思います。従来の大学院に進学できる道はありますけれども,どうしてもそこは学術性が重視されます。そこはそれで重要なことですけれども,一方,実務性も重視する,ちょっと別のタイプの博士号というのもあって良いのではないかと思います。そういうものをつくると非常に有効ではないかと思っています。

【有信主査】  宮脇先生の関係でいう公共政策の中で公共政策大学院が専門職大学院ですけれども,例がないわけではないということではあります。

はい,どうぞ。

【青井委員】  上西委員が言われたように専門職大学院を出て,博士課程,後期課程に進みたいという学生はちらほら出ています。なかなか難しいのは,既存の学術大学院になってくると,入った時点で後期課程にいくという想定のもとで論文指導,何かをしないとなかなかよその学術大学院の後期課程には編入は認めてもらえません。その意味では上西委員が言われたように,東大の公共政策のように専門職の中で後期課程をするのも1つの手かもしれません。ただ,個人的に上西委員と違うのは,やはり教員になる人は,専門職大学院を出てそのまま上に上がった方が適任かどうかという部分で,もちろん人によって違いますけれども,個人的にはやっぱり専門的なトレーニングを受けてから来た人の方がいいかなと思います。ただ,中に出てくるのは専門職のビジネススクールを出て,自分の今までやってきたことを博士論文としてまとめたいという,そういう人もおられるので,いろんな形の後期課程が出てくる。個人的には教員になるのであれば,ちゃんとどこかのPh.D.となるのが筋だというのは私の私見です。いろんなパターンがあっていいのだと思います。

【有信主査】  ほかに御意見ありますか。

はい,どうぞ。

【片山委員】  今のところと若干関連しますが,これまで,専門職大学院の独自性をいかに出していくかということで議論がされていて,そういう意味で,アカデミックな大学院との差別化を図っていくという点に力点が置かれてきましたが,教員養成に関していいますと,やはりむしろ接合・融合が必要でないかというように思っております。私自身もやはり,Ph.D.の取得が世界で活躍するためのパスポートという面もありますし,その枠の中で教員養成というのをしっかりやっていく方がいいのではないかなと思っているところであります。

【有信主査】  大体,それぞれの教員としては,基本的にはそれぞれ学問のディシプリンにきちんと精通していて,そこで新たな人たちが研究をする。経験を持ち研究が続けられていく人たちが教えるのがいいだろうという意見で,それをカバーするために実務化教員に対して研究者教員の人数をある程度確認している。ところが問題があって,実務家教員といっても,もう5年もたつと業界の知識的にも問題があるので,これについては多分,後で少し議論していただくといいと思いますけれども,それぞれの出口である業界団体の人で人事的なローテンションを考えると,常にお互いに教育を一定期間受ける経験を持って,特に教員の人たちと一緒に研究をやった後またその関係の業界の方に戻すということで,業界に行く人たちにとっても共通とか,実質の拠点としても意味があるのではないかという可能性もあります。ほかに,情報公開等についていうと,情報公開は学教法で規定されていて,基本的に公開しなければいけない情報はもう明示をされていて,それなりにちゃんとやっている。

特に何かご意見ありますか。はい,どうぞ。

【片山委員】  このペーパーの最初に書いていることとも関連しますが,やはりそもそも専門職大学院の立ち上げ時に国際的に通用するという点が強調されております。その点は今日的にもかわらず,社会のニーズとしてそれぞれの専門職大学院がいかにグローバル化対応をしていくかということが1つの大きな課題ということになっているかと思いますので,例えば先ほどの国際認証の話にしても,むしろ積極的に国際認証を受けやすいような環境を整備するとかいう議論をしていくべきかと思います。その他のところでその点を強調していただくということでもいいのかもしれません。

【事務局】  情報公開についてですが,確かに学校教育法上は書いてはいるんですけれども,結局ワンショット就職のどこに決まったかということもそうなんですけれども,それ以降どう活躍するかについての把握がなかなかできていないし,また逆に,大学に御負担を強いる話ですので,その辺をどう考えるかという点はあります。一方,日本の場合について,やっぱり特にこの趣旨の場合については,出口についてどれだけ活躍しているのか,あるいは学部卒と違って,どれだけの差異があるのかについての積極的な情報を公開しないと,なかなか出口のことを評価いただけないと,そういうジレンマがありますので,その辺をどう考えて求めていくのか検討しなければいけません。

【有信主査】  大学は教育機関であるから,自分たちがやった教育の結果は10年たたないとわからないと言って何も見ていないのは不適格ですね。つまり,教育機関の場合は自分たちがやっている教育の結果は,その教育をした学生が社会で当初の目的どおり活躍しているか,目標どおりの人材として育っているかというのをフォローアップする責任があるんだけれども,今までの大学は全くそれをやってきていないというところの反省はない。だけど,専門職大学院に関しては,より強くそれが求められるはずで,しかもより明確にこの専門分野で活躍をするという方向で教育をしているので,当然そこはやっぱり見ていかないといけない。それぞれ,きょうの論点に関して,具体的な方向性がある程度,見えてきたような気がしますので,整理してもらいます。専門職大学院の今の在り方が本当に当初の目的にかなって,あるいは専門職大学院の17年答申に書いてあるような,高度に特定分野で活躍できる人材を育てるという,このとおりの形に持っていくために具体的にそのそれぞれの課題できょう議論された方向性の中で,国としては何をやるか,大学で分担してどういう努力を求めるかという方向で整理をしていければと思います。具体的には努力を求める方向で記述して,具体的にやることは何かということを考えていくということだと思います。だんだんと,でも,方向性は出てきているように見えます。ただ,少し個別に詰めなければいけないのは,さっきの教職大学院の問題だとか,それからMOTだとか公共政策だとかですね。あと,実際に現地視察というのも一応考えてくれているようなので,是非現地を見ながら検討したいと思います。ほかに何か言い残したことはありますか。大竹委員はありますか。

【大竹委員】  途中,インターンシップの議論もたくさん出たので,もう企業から特にお伝えするとことは特に持っていないと思ってまいりました。基本的にはやはり社会人の方を     というところは対応するお話と,あと,青井委員が途中おっしゃっていた,やはり専門性プラスマそのマネジメントの融合,ビジネススクールとの連携というのは,いわゆる企業の立場からは是非御検討いただきたいなというふうに思っていました。

やはりどの法務とか財務,経理の部長クラスと話をしていても,やはり専門性だけじゃ駄目ということなので,やはりそのマネジメント要素がないと駄目ということはどの部長も申しておりましたので,特に新卒にそれを求めるかというのはもちろんあるので,ただ,こういったポテンシャルみたいなものを大学の時代のときにどうやって身につけるかという難しさはあると思うんですけれども,ここはちゃんと課題としてあるのかなというふうに感じております。

【有信主査】  ということで,きょうの議論はここまでにして,少し事務局とも相談しながら整理をしていきたいと思いますので,よろしくお願いします。それでは,遅くまで本日はどうもありがとうございました。




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