(資料3)JD等ガイドライン(構成案)

我が国の大学と外国の大学間における
ジョイント・ディグリー及びダブル・ディグリー等
国際共同学位プログラム構築に関するガイドライン
(構成案)

○基本方針

・JD制度の施行に併せ,従前のガイドライン※を廃止し新たに策定する。
・今後の大学によるJD構築に当たっての指針として,今回の制度趣旨の説明に加え,実務上の留意点等についても,これまでのJD検討委員会等の議論も踏まえ記載する。
※我が国の大学と外国の大学間におけるダブル・ディグリー等,組織的・継続的な教育連携関係の構築に関するガイドライン(中央教育審議会大学分科会 大学グローバル化検討WG,平成22年5月10日)

○構成案
第一章  総論
1.(ガイドラインの)目的
2.(背景となる)基本的考え方,意義
3.定義:JD,DD,サーティフィケート,学位記 等

第二章  制度の概要
1.制度の趣旨・基本的考え方
2.制度の仕組み
3.留意点(国際連携学科の設置上の留意点,単位互換ではないこと 等)

第三章  実際のプログラム設置に当たっての留意点
1.基本的事項
2.プログラムの基本設計
学位名称,連携先大学,学位記,協定,学生選抜,学籍,規模 等
3.カリキュラムの設計・学位審査等
人材像,使用言語,修了要件,成績評価,論文,学位審査,指導体制 等

4.その他
学費・奨学金,セーフティネット,評価・質保証 等

第四章  ダブル・ディグリー等共同教育プログラム
1.運営に当たっての留意点
2.その他

参考
1)図解1~○ (実態/法令上の運用パターン,JD学位記例 等)
2)留意事項一覧(法令上,運用上)
3)設置認可に係る審査について(基本的考え方,スケジュール案 等)
4)諸外国のJDに関する扱い
5)これまでの議論の経緯

 

第三章 実際のプログラム設置に当たっての留意点
(詳細イメージ)

JDは,我が国の大学と外国の大学とが連携して創設する1つの教育プログラムであるが,法の「属地主義」の観点から,我が国の法令においては,我が国の法の支配が及ぶ範囲内でしか規定できないため,JDプログラムの一側面を示すにすぎない。そのため,このガイドラインを通じて,JDプログラムの全体像を示すとともに,我が国の法令上の規定では示し得ない部分に係る留意点を示すこととしている。
なお,現在検討されている法令上の定義においては,JDは学科/専攻レベルでの設置としているところであるが,提携する外国の大学(以下,「連携外国大学」という)との間で実際に行われる協議の実態は,「教育プログラム」として進められることが想定されることから,ここでは「JDプログラム」という表記を用いることとする。

 

1.基本的事項
・我が国の1つの大学又は外国の1つの大学だけでは提供できない学術プログラムを,我が国の大学及び外国の大学が連携・協力し,双方の教育資源を相互に活用することにより,提供可能にするものであること
・当該プログラムは,連携する我が国の大学と外国の大学とが共同して開発し,実施するものであること
・当該プログラムをどのように編成するかについては,我が国の制度の範囲内で規定するものの他,連携外国大学及び相手国の制度によって多様な形態・要件を要し得ること

 

2.プログラムの基本設計
◇ 学位レベル,対象学問分野,名称
我が国の大学及び外国の大学が連携しつつ,それぞれの教育理念や体制に基づき編成するJD プログラムについて,以下のような点について,誤解を与えないよう明確なものとすること。
(1)我が国の大学と外国の大学とのJDであることが明確な名称となっていること。その際,関係国内において社会的通用性があるとともに,国際的にも通用性があるものとなっていること。学位記に使用する言語は,それぞれの大学が所属する国の公用語,又は国際的通用性のある第三国の言語の中から,協定によって定めることとすること。また,必要に応じて多言語併記もあり得る。
(2)提供する学位レベル(学士,修士,博士)が明確となっていること。また,専門職学位,法務博士及び教職修士については,必ずしも世界各国において共通の学位があるとは限らないことから,学士・修士・博士のどのレベルの学位に相当するのかについて明示すること。
(3)授与する学位の専攻分野が明確かつ適切なものとなっていること。

◇連携外国大学
(1)連携外国大学が,当該国の正規の学校教育制度の中に位置付けられた,我が国の大学相当の高等教育機関であって,当該国において必要となる公的な質の保証(*認証評価等)を受けている機関であること。
(2)連携外国大学が,開設するJDと同レベルの学位につき有効な学位授与権を有し,かつそのレベルの学位授与の実績があること。
(3)連携するに当たり十分な教育資源(職位資格と適切な専門性を有する教員,必要となる校地・校舎・施設・設備等)を有している機関であること。

◇ 学位記
我が国の大学と外国の大学とが連名で一つの学位を授与することについて,双方の大学内の意志決定及び学内規則の整備が行われていること。
学位記の発行手続については,JDは一枚の学位記を共同で発行するものであることから,学生に実際に学位記を手交するのがどちらの大学となるのか等,事前に一定のルールを定める等留意すること。

◇ 協定
連携外国大学との間で安定的かつ継続的な教育連携を確保するため,あらかじめ,責任ある意思決定権者間による協定等により取り決めていること。
(1)大学運営の責任者の名義等により,プログラムの運営方針について,詳細にわたり協定等により取り決めていること。
例)大学ごとのJDプログラムの対象となる学生数,プログラムの責任の所在,入学者・進学者選抜方法,教員の所属及び配置,学生の学籍上の身分取扱い及び福利厚生,教育研究の内容・方法,業務運営,経費の配分,学生に対する責任,授業料等の取扱い,知的財産権の扱い,プログラム終了(廃止)時の際の手続(学生がいる期間の経過措置及び廃止後の学籍簿の取扱いを含む),その他プログラムの編成及び実施のために必要な運営方針等
(2)協定等を設ける際は,それぞれの大学が協定を通じてどのような連携活動を展開しようとしているのかについて,その意思について十分に確認していること。(例えば,了解を得ずに各大学が自らの大学の学生に学位を授与するといった,質の保証の観点から適切に責任を果たすことが困難な事態になることのないよう留意しているか。)
(3)双方の教育資源の実際的活用が,十分に確保されたプログラムとなっていること。
(4)協定に基づき各大学との調整や重要事項について協議を行うため,権限を有する者あるいは学長,理事長等から必要な権限を委ねられている者により構成される協議会等を設け,定期的に開催することにしていること。

◇ プログラム対象者の選定,選抜等
(1)入学者・進学者選抜方法について大学間協定において決定していること。我が国の大学と連携外国大学がそれぞれ別途実施する場合と,共同で実施する場合,さらにはその組合せ等が想定されるため,どのように行うか,選抜から承認まで一連の手続について事前に連携外国大学と詳細を取り決めていること。
(2)当該プログラムへの学生の募集に当たっては,取得する学位,卒業要件,教育内容や方法,タイムスケジュールや費用,学習ワークロード,奨学金や福利厚生等の学生支援等について十分な情報を事前に周知し,疑義の生じないように配慮していること。
(3)当該プログラムへの学生の入学にあったっては,それぞれの国の学校教育制度の中における入学資格の違いに留意し,当該制度の範囲内で適切に対処すること(例:連携外国大学が所在する国の法制度上,我が国の大学への入学資格に満たない資格で当該国の大学への入学を認めている場合,我が国の大学においては,我が国の大学入学資格を満たすまでの間は,JDプログラムへの正規の課程に入学させることができないこと)。

◇ 学籍
我が国の大学と連携外国大学の両方の学籍を有することになるため,学生に対する責任等につき,遺漏がないよう適切に処理していること(プログラム廃止後の学籍簿の取扱いについて事前に決定しておくこと)。

◇ 規模
プログラムの実施規模が,双方の大学及び関係組織にとって,運営可能でありかつ適切な範囲のものであること(どの程度の学生数で当該プログラムを運営するのか,その際,当該プログラムの運営により既存の教育研究体制に与える影響等を考慮しているかなど)。

 

3.カリキュラムの設計・学位審査等
◇ 人材像
育成すべき人材像が明確となっており,我が国の大学と連携外国大学の双方の関係者間で十分に共有されていること。

◇ 使用言語
カリキュラムの調整や交流の促進が円滑に行われるよう,
(1)我が国の大学と連携外国大学の双方において,英語又は国際的通用性のある言語など共通言語による課程や授業を提供するなどの工夫が講じられていること。
(2)各大学それぞれの言語で教育が提供される場合は,学生の円滑な学習が確保されるよう,言語教育課程の充実等が十分な支援体制が構築されていること。

◇ 修了要件
我が国の大学と連携外国大学とにおいて,それぞれの学位プログラムの修了要件を満たすとともに,JDプログラムとしての要件を満たす必要があること。
(1)【単位】それぞれの大学において修了要件として取得すべき単位数(我が国の場合は学士課程124 単位,修士・博士課程30 単位)及び修業年限(我が国の学部の場合は4年以上)とともに,JDプログラムとしての要件(我が国の大学(学部レベル)では62単位以上,連携外国大学で31単位以上等)を満たすこと。
(2)【論文】それぞれの大学において修了要件として作成しなければならない論文(我が国の場合は博士課程及び修士課程(特定課題研究でよい場合を除く)で必要)。論文指導は共同で行うことが想定される。

◇ 単位の修得
(1)カリキュラムの編成の際,連携外国大学の単位制度(授業時間を含めた学習量や単位の換算方法等)について確認するとともに,学位取得に向けたタイムスケールや履修の順序,単位互換の手続,アカデミックカレンダーの相違等について十分に確認していること。
(2)コースワークを重視し,授業内容を反映した科目名によるプログラムの構成に留意していること。連携外国大学において修得した単位の我が国の大学の単位への換算については,当該連携外国大学の1単位あたりの標準的な学修時間を,我が国の1単位あたりの標準的な学修時間に当てはめて行うこと。

◇共同実施科目
(1)共同実施科目は,大学設置基準第19条第1項の規定(必要な授業科目を自ら開設すること)に関わらず,JDプログラムにおいてのみ適用される我が国の大学と連携外国大学とが共同で開設・実施する特例的な授業科目であるため,どちらかが既に開設・実施している授業科目を自らの授業科目とみなすような仕組みとはならないようにすること。
(2)共同実施科目の開設に当たっては,事前に関係する大学間で,教育内容・方法・使用教材・成績評価方法・実施に要する経費負担等について合意するとともに,適切に役割分担をしていること。

◇ 成績評価
(1)カリキュラムの国際通用性の観点から,学位を取得するに当たり達成すべき能力基準を明確にするとともに,例えばGPAの導入や評価に係る教員間の相互チェックなど,透明性,客観性の高い,厳格な成績評価を行えるよう留意していること。
(2)成績評価の観点及び基準等については,それぞれの大学の関係者間で事前に協議し,合意していること。

◇ 論文
論文指導における我が国の大学と連携外国大学による共同指導の在り方など,連携外国大学及び当該国の制度や実情も踏まえつつ,質の保証が適切に図られるよう,十分に検討していること。

◇ 学位審査
(1)連携外国大学と十分に協議をした上で,共同で学位を審査する際の基準を設ける等により,適切な学位審査が確保されていること。
(2)学位審査を行う教員の資格及び専門性については,連携外国大学が所在する国の教員資格が,必ずしも我が国の教員資格と同じであるとは限らないことから,審査員となる教員のレベルの同等性が確保されていること。

◇ 指導体制
十分な学生指導体制を確保していること。
(1)特に,構成するプログラムが修士課程又は博士課程の場合,学位に責任を持つ全ての大学の教員から学生が研究指導を受けることができるよう,研究指導教員については,それぞれの学生について学位に責任を持つ全ての大学から教員を主担当又は副担当として定めるなど,適切な措置をしていること。
(2)留学先の大学においても,派遣元大学の教員の指導をオンラインで受けられる等の工夫を講じることとしていること。

◇ 教員
(1)我が国の大学でJDプログラムを展開する国際連携教育課程(以下,JD学科)に,設置基準上必要とされる専任教員が基準数以上配置されていること。その場合において,当該JD学科が所属する学部等の他の学科の教員が,JD学科の教員を兼ねることができること。ただし,プラス1名の専任教員については,他学科等の教員と兼ねることができないこと。当該1名の専任教員は,自らの教育研究活動の遂行の他,連携外国大学との調整等を専属に行うこと。
(2)それぞれの大学の教員は,飽くまで雇用関係がある大学に帰属する教員として位置付けられ,JDプログラムに参加することがあっても,必ずしも,どちらかの大学に兼任が必要となるものではないこと。(*今回のJDプログラムの実施に当たって,法令上,我が国の大学との雇用関係を持つことは求めない。)

◇校地・校舎・施設・設備等
JDプログラムに係る校地・校舎・施設・設備等については,学内の施設・設備等を共用することが可能であるが,JDプログラムの円滑な実施に支障が生じないものであるとともに,既存の学科等の教育研究活動に支障を生じさせるものではないこと。

◇ 学生の移動等(留学・在学期間)
双方の大学に一定期間滞在し,教育機会を得ることが確保されていること。
(1)それぞれの大学において一定期間まとめて授業を受けることができるようなカリキュラム編成などになっていること。
(2)国内と外国の大学の間を移動することに伴う学生の負担を,可能な限り軽減するものとなっていること。
(3)学生の授業科目の履修や,就職活動を含めた授業外の各種活動に過度な負担を生じさせることのないよう配慮していること。
(4)それぞれの大学から参加する学生数について,偏りを避けバランスの取れたモービリティが,可能な限り確保されていること。

◇ 学習環境
全体を通じて適切な学習環境が確保されるよう,関係する全ての大学と十分検討していること。


4.その他
◇ 学費・奨学金
(1)複数の大学に在籍することに伴って生じる授業料等の取扱いにつき,価値の対価として過度な授業料等の負担がないよう学生の便益に配慮がなされていること(*例:授業料を重複して徴収する等のことがないこと)。
(2)双方の大学の学生間で公平が図られるよう,留意していること。
(3)学生の留学に伴う経済的負担について,相応に配慮されていること(*特別な経済的支援等)。

◇ セーフティーネット
何らかの事情で学生が履修を断念した場合や,プログラムの修了要件を満たさなかった場合,さらにはいずれかの大学がプログラムの継続が困難となった場合(天災や騒乱等)等の対応について,例えば,当該大学の責任の下に,他学科・専攻等への転籍や既修得単位の読替え,又は補完的に授業科目を提供することができるようにしておくなど,あらかじめ必要な対処方針や方策が定められていること。

◇ 評価・質保証
(1)常設の運営委員会等で,随時連携外国大学と協議を行うこととしていること。
(2)具体的には,日本の当該大学において,JDプログラムを共同で実施する連携外国大学とともに,学内に常設の委員会等を設置し,プログラムの質保証を行うこととしていること。
(3)当該常設委員会等の委員には,当該学問分野,あるいは隣接・関連する分野において,博士課程を持ち博士学位授与の実績のある我が国の大学の教授を含めていること。
(4)認証評価の際の自己点検評価に,JDプログラムについて盛り込んでいること。
(5)カリキュラムの編成に当たり,連携外国大学がどのような分野別質保証や職業資格団体による認証等を受けているか確認していること。

◇社会における認知・評価
学生本位の視点に立ち,JDが就職先となる企業等社会的に認知されかつ評価されることは極めて重要との観点から,JDプログラムの有為性等について社会に対し広く広報・説明し周知を図っていること。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課