大学のグローバル化に関するワーキング・グループ(第1回) 議事録

1.日時

平成25年7月17日(水曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 主査の選任等について
  2. 大学のグローバル化の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員)長尾ひろみ委員
(臨時委員)勝悦子委員
(専門委員)市村泰男,井上洋,内田勝一,江川雅子,島田精一,二宮皓,堀井秀之,米澤彰純,吉川裕美子の各委員

文部科学省

(文部科学省)布村高等教育局長,小松私学部長,常磐大臣官房審議官,中岡大臣官房審議官,浅田高等教育企画課長,里見大学振興課長,渡辺学生・留学生課長,森私学行政課長,田中高等教育政策室長,有賀国際企画室長,北山高等教育局付,白井大学振興課課長補佐,大川学生・留学生課課長補佐

5.議事録

(1)主査の選任について

 委員の互選により二宮委員が主査に選出された。
 主査代理について,二宮主査により島田委員が指名された。

(2)大学分科会大学のグローバル化に関するワーキング・グループの会議の公開に関する規則(案)について

 事務局から,大学のグローバル化に関するワーキング・グループの公開について資料3に基づき説明があり,原案のとおり決定された。
 また,当該規則に基づき,この時点から会議が公開された。

(3)大学分科会大学のグローバル化に関するワーキング・グループの開催に当たり,二宮主査から以下のとおり挨拶があった。

【二宮主査】 それでは,本グローバル化に関するワーキング・グループの第1回の開催に当たって,一言御挨拶申し上げます。
 私自身は,第4期及び第5期の大学分科会に設置されました大学のグローバル化に伴う検討ワーキング・グループということで,ダブル・ディグリーなどについて議論させていただいたところですが,これまでの大学分科会においては,グローバル化の進展の中で,我が国の大学が国際化を進めて,国際的な競争力を向上させるための方策などについて精力的に審議されてきたと思います。その審議の結果として,平成22年にはダブル・ディグリーに関するガイドラインが策定され,そしてまた,東アジア地域を見据えたグローバル人材育成に関わる報告書もまとめられたかと思います。その後も,御案内のとおり,グローバル化は社会経済のあらゆる分野において加速する一方であり,高等教育においても,国境を越えるクロスボーダーな大学教育の提供について急速に普及してまいったかと思っています。また,その質においても,多様で斬新な取組というものも見られるようになってきたかと思います。例えば,ヨーロッパやアジア地域においても,あるいは世界各国・地域においても,国際的な教育連携活動というものが活発に展開されていますし,そのための共通のフレームワーク作りについても各国の協調の下にその取組が進展しているかと思っています。また,各国政府自体においても,あるいは国際機関,地域フォーラムなどにあっても,高等教育の国際的な質の保証に関する取組も活性化・活発化していると思います。
 こうした世界的な大学間交流や学生交流の動きが加速する中で,我が国の大学の国際化や留学生交流の促進を通じた大学の国際競争力の向上,あるいは質の向上は極めて重要な課題になっています。最近の政府の議論の動きに注目すると,とりわけ教育再生実行会議の第三次提言においては,我が国の大学のグローバル化について改めて危機的な状況にあると指摘され,大学が教育内容や教育環境の徹底した国際化を進めていかないと,世界で活躍できるグローバル・リーダーを育成することはできないのではないか,そういう観点から幾つかの取り組むべき方策を提言されています。
 このような観点から考えると,本第7期の大学分科会においては,我が国の大学のグローバル化を推進するための具体的な課題や方策について集中的に審議するため,このワーキング・グループが新たに設置されたと理解しています。大学のグローバル化への対応は,我が国の大学にとって待ったなしの課題であると認識しています。今後の審議に当たっては,制度面も含めた様々な課題を正確・的確に理解・把握していただき,各大学の先進的で意欲的な取組を後押しできるような具体的な方策を是非検討していただきたいと考えています。
 最後になりますが,委員各位の深い知見や識見をおかりして精力的な審議をお願いするとともに,委員各位の御協力をお願いして,私の挨拶とさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

(4)引き続き,文部科学省を代表して,布村高等教育局長から以下のとおり,挨拶があった。

【布村高等教育局長】 まず,委員の先生方には,この第7期の中央教育審議会大学分科会の大学のグローバル化に関するワーキング・グループの委員をお引き受けいただきまして,まことにありがとうございます。また,御多忙の中,本日も御出席を頂きまして本当にありがとうございます。
 今,主査の二宮先生からもお話がありましたが,社会経済のグローバル化が大きく進展する中にあり,我が国の大学のグローバル化が喫緊の課題と幅広く御指摘を頂いているところです。文科省としても,これまでも大学のグローバル化,大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業,いわゆるグローバル30をはじめとして,学生の双方向の交流促進,あるいは教育環境のグローバル化に取り組んでいただく全国の大学を支援する施策に取り組んできたところです。
 後ほど詳細に御説明をさせていただきますが,最近の大学のグローバル化に関する議論の状況については,まずは6月14日に閣議決定されました第2期の「教育振興基本計画」において,日本人の海外留学者数の倍増及び優秀な外国人の受入れ促進,あるいは海外大学との共同プログラムの構築などの多様な連携,大学の徹底した国際化の促進など,グローバル人材育成の強化のための取組が求められているほか,同日に閣議決定されました「日本再興戦略」などにおいても,大学の国際化の推進が幅広く盛り込まれているところです。
 また,官邸に置かれている教育再生実行会議においても,グローバル化を含めた大学改革に関する議論を重ねていただき,5月28日には第三次提言が取りまとめられています。そこではグローバル化に関する内容として,国が、徹底した国際化を進める大学に対する重点支援,あるいは日本の大学による海外大学との積極的な連携の拡大・促進,そして学生の双方向交流拡大のための支援の強化を行うということを御提言いただいたところです。
 こうした昨今の政府の方針,あるいは経済界をはじめとした各界からの御議論を踏まえて,この第7期の大学分科会においては,大学のグローバル化を促進する専門的な調査・審議を行うために,大学のグローバル化に関するワーキング・グループの設置を決定したところです。そして,本ワーキング・グループにおいては,大学のグローバル化の在り方について,専門的な御見地から幅広く御議論いただき,制度の在り方も含めた具体的な方策を御提言いただくよう,精力的な御審議をお願いしたいと考えています。

(5)事務局より,大学のグローバル化の在り方等について,資料4から資料6に基づき説明があり,意見交換が行われた。

【二宮主査】 本日は第1回なので,委員各自からそれぞれ意見,要望,コメントなど,お考えをお知らせいただいて,全体でどのように議論を整理していき,求められている答えを出していくかということを考えていきたいと思っています。

【島田委員】 グローバルな人材の育成については,私自身もいろいろな観点からいろいろな考えがありますが,一言で申し上げると,この1990年代から2000年に入って,世界の経済と政治のグローバル化が物すごい勢いで進んだと,それはよく言われるように,90年代の加速した経済のグローバリゼーション,政治経済のグローバリゼーションとICT革命,これによってコミュニケーションの手段が大変な勢いでリアルタイム化したということもあり,世界の政治・経済・社会全ての面でのグローバル化が,1995年以降,急速に加速しました。これは私が企業で長い間仕事をし,20代,30代では海外へ駐在して,20代でヨーロッパの大学に,40代でアメリカのハーバード大学のシニアコースに留学しましたが,その当時から感じていました。今申し上げた昨今の世界のグローバル化の加速という視点だけでなく,どうもアメリカやヨーロッパの大学に比べて日本の大学が非常にクローズドであり,どちらかというと学問の象牙の塔というのはいいが,学者を育てるというような,国の発展のためには基礎の学問も大事ですが,私がハーバードに行ったときは,特に経営大学院でしたので,その授業が非常に現代の世界の状況を踏まえたプラクティカルな内容で,大変刺激を受けました。当時,1980年代の後半でしたが,ハーバードでは,IT戦略と経営戦略は同期化しなければいけない。IT,情報システムというのは手段であるが,これからは経営の中核になるという,当時の私としては大変インプレスされる授業を受けたわけですが,そこで感じたことは,大学の中で個性を持って自分の主張を自己発信し,ディベートすることで互いに成長していくと感じました。これはヨーロッパの大学に若い頃留学したときも全く同じ感じを持ったわけですが,この日本の大学の在り方あるいは大学生自身の自覚の問題は,これからいろいろな厳しい状況下,少子高齢化や経済面でも,ありとあらゆる面で閉塞感が強いですが,こういうときこそ若い世代が堂々と世界に向かってグローバルに活躍できるということが日本の活性化のためにも再生のためにも必須の条件だと思います。そのためには,あらゆる制度,特に大学を中心とした教育現場が変わらなければいけないと強く思います。
 ヨーロッパやハーバードでも同じことを感じましたが,学生が徹底的に勉強するということが一種のショックでした。日本人の一般的な学生の,今もちろん大変勉強する学生もいるわけですが,平均的なレベルは,このアメリカの学生やヨーロッパの学生の勉強ぶりから見ると,日本の学生はとても太刀打ちできないのではないかという危機感も当時から持っていました。
 いずれにしても,このグローバルな社会の中で若者がいかに自分のアイデンティティーを保ちながら情報を発信し,コミュニケーションをして世界の国々の人とうまくやっていけるかが日本生き残りの唯一の条件ではないかと思っています。

【二宮主査】 大学のグローバル化の在り方を考える基本の一つが,私たちが絶えず気にし続けてきた日本の大学の持っている閉鎖性といった視点の御指摘だったと思います。ありがとうございました。

【勝委員】 このワーキング・グループは,大学のグローバル化に関するワーキング・グループということで,かなり幅広い物事を議論していくと認識しており,今の日本においては,大学のグローバル化,大学の国際化,グローバル人材の育成は非常に重要であるという認識は,社会的に共有されていると思っています。 今,安倍政権は3本の矢ということで構造改革をしていますが,特に3番目の矢の成長戦略,その下でグローバル人材育成は非常に重要な課題になっており,企業でも,行政でも,政治の世界でも,様々な面でそういった人材のニーズというものは高まっていると考えています。そのグローバル人材の定義,これも長年議論されていることですが,英語力,専門性,タフさ,教養,異文化理解等,様々なファクターが考えられていますが,このグローバル人材というのは,自分で考え自分で行動し自分で決められるような人材であるということを考えると,昨年の中教審の答申にありましたように,学士課程においては主体的な学びというのが非常に重要だろうと考えています。主体的な学び,つまり,日本人の学生は余り勉強しない。アメリカに行くと,学生が課外で勉強漬けになっている。我々もUCバークレー等に学生を送り出し,彼らはアメリカで単位を取ってきますが,非常に勉強した,周りの学生もみんな勉強していた,と異口同音に言います。翻って日本に帰ってくると,何で日本の大学はぬるいんだと。日本では勉強しなかったにもかかわらずです。学生の学修時間が短いことについては,構造的な問題,特にシステムとしても考えていかなければならないと思っています。例えば,GPAというものが日本の大学では形骸化しており,これ自体が採用等では余り重きを置かれていないですし,卒業するにおいても,進学するにおいてもGPAは問われません。そういった,構造的な問題を考えていかなければならないと考えています。
 スチューデント・モビリティー,学生が国境を越えて移動することは,学生自身の変化だけでなく,実は教員にも返ってくる。つまり,教員の授業の在り方も変えていかなければならないと認識せざるを得ないということもあるので,その意味からも,教育のグローバル化は非常に重要だと思っています。
 もう1点は大学の国際化です。大学の国際化というと,ここにいる方も一人一人それぞれ違う定義をするかもしれません。ただ,それは共有しなくてはいけない。大学の国際化というのは構造改革にほかならない。つまり,教育それから研究の高度化であるということを共有することが重要なのではないかと考えています。本学の場合,グローバル30の13大学の一つになったわけですが,グローバル30自体は仕分けにも遭いましたが,グローバル30は,日本の大学の国際化においてのインフラ整備でかなり大きな貢献をしたと私自身は考えています。大学が第一線で,例えばインドネシア,ベトナム,ドイツ,イギリスの大学との間で学長会議等をする。つまり,フェイス・トゥ・フェイスで様々な国の大学と様々な議論を行うことにより,日本の大学も変わらなくてはいけないという認識が共有できたのではないかと考えています。
 3番目として,教育再生実行会議で第三次提言が出ましたが,ここでもグローバル化に非常に大きなページが割かれており,なおかつ,非常に大胆な提言がなされています。これは,大学自体にさらなるグローバル化あるいは国際化が突き付けられており,もちろん大学の機能分化等にも関わりますが,800ある大学が全てこういう形でグローバル化をするというわけではなく,その大学の機能に合わせて,それぞれの場面でグローバル化していくことが重要であろうということが1点です。
 海外高等教育機関の丸ごと誘致というのは,それにより教育の在り方,FD,SDに資するという意味では非常に有用だと考えますが,ある意味で,日本の大学の自己否定にもなりかねません。むしろジョイント・ディグリーや,単位互換,学事歴などの国際標準化が,日本の社会にとっては非常に大きなメリットをもたらすと考えます。日本の企業というのは,例えばハーバードの学部を出たとしても,そういった学生をなかなかリクルートしないというところもあるので,日本の大学と海外の大学と,そういったジョイント・ディグリー等あるいはダブル・ディグリーの制度を構築することは,学生にとっても,社会にとっても,そして,大学の教職員にとってもメリットがあるのではないかと考えます。

【井上委員】 企業の人事の方々にお聞きすると,まさに今,企業のグローバル化は,単に日本の生産設備を外へ持っていく,東京の本社で全てコントロールをして,そこから新たなサプライチェーンを作る,バリューチェーンを作るということだけではなく,新たに海外で採用された人材,グローバルな人材が現地で様々な戦略を練って,そこでバリューチェーン,サプライチェーンを作っていく,付加価値を生み出していく,その方向に大きくかじを切りつつあるということを強調されております。要するに,日本国内で,日本人の若者の中にグローバル対応ができない者が多ければ,海外で採ればいいという考え方が強くなってきているわけです。実際に,海外の方が従業員数が多い日本のグローバル企業は多数ございます。単純に言えば5割以上が海外の外国籍の方々で占められているような,グループトータルで見るとそういう企業が日本のグローバル企業の中にはかなり増えてきておりますので,そうなりますと,日本の若者にとっては,グローバル化されていない日本の大学で学ぶことがリスクになる可能性があるわけです。ここは先ほど勝先生もおっしゃったのですが,800校全部がグローバル化対応できる学生を育てていく必要は全くございません。もちろん国内にも様々な重要なサービス業もあるし,もちろん製造業でも国内で成り立っているものもたくさんあります。地域に根差した行政というのもあるかと思います。そういったところはともかくとして,世界のどこかで付加価値をとらないと日本はこれから大きなグローバル化の流れに立ち後れていくわけでございますので,そこに日本の若者を何とかそれに対応させていく努力を日本の大学が担っていかなければいけないということでございます。
 経団連では,そういう発想から,既にグローバル30の13校の皆様と連携をして様々な取組をしているわけですけれども,一つは奨学金事業を2012年度から始めました。対象は13校を超えて四十数校に応募をかけておりますので,ほぼグローバル化に熱心だと思われる大学からは応募がきていると思います。ただ,結果的に申し上げますと,三十数名の合格者は十数校になっています。必ずしも13校とはイコールではございませんが,やはり企業の方に面接をしていただいて選ぶと,大体十数校の学生が選ばれる。四十数校のところにチラシを配って,結果的に言うと選ばれるのは十数校であるという実態がございます。ある意味で,やはりグローバル化に熱心な大学に重点化して,そこに資源を投入してやっていく方が,やはり今の時代の流れ,スピードの速さということを考えますと,現実的なのかなという感じがいたします。
 それから二つ目は,企業と大学が連携してカリキュラムを作っていこうという取組をしております。これはまだ私どもにとっては実験的なものでございますが,今までのいわゆる寄附講座,出前授業的なものではなく,企業人が学生と語り合い,そしてレポートを読んで評価をする,そこまでのカリキュラムを,今,上智大学と一緒に開発をしており,これもある程度ひな形ができれば横展開できるのではないかと思っています。その中で大きな課題は,理工系の学生のグローバル化への意識の弱さです。昨年の秋から今年の冬にかけておこなった最初の講座では,理工系の学生はゼロでございました。三十数名のうち1人も理工系の学生は応募されなかった。今日実は秋からの導入講座の説明会を企業の方にしていただいたのですが,50名くらいの学生に集まっていただきましたが,理工系は2名でした。これは先ほどどこかの資料に書いてございましたが,研究,実験という大変なスケジュールの中で留学するのは,背中を押すぐらいのものではなくて,みこしに乗せるぐらいでないと難しいのですが,勝先生がおっしゃったように自分で考え決めていくということがグローバル人材の要件だとすれば,やはり何とか理工系人材が自分の決心で気持ちを固め,海外に挑んでいくというようなシステムを大学の中に作っていただかなればならないという感じがしております。

【江川委員】 私は,2009年から東京大学の理事をしていますが,バックグラウンドが教育ではなく,先ほど御発言された島田委員がちょうどハーバードにいらっしゃる頃,私自身はまだ20代でMBAのコースにいました。その後,金融の仕事をしばらくやっており,ハーバード・ビジネス・スクールのリサーチセンターのセンター長を8年ほどやりまして,2009年から今の仕事をしています。そういう意味で,全くの外部からきましたので,東京大学に来た当初は宇宙人のような感じでしたが,ただ,その中で感じたことを本日3点ほど申し上げたいと思います。
 まず一つが,大学に来て大きな危機感を持ちました。それは以前にハーバードのスタッフとしてハーバードがどういうふうに運営されているか,あるいは国際化をどういうふうに進めているか,見てきましたが,そういったものと比べたときにいろいろな格差があるということです。いろいろな面があるのですが,例えば学生の送り出しひとつとってみても,いろいろな意味で時間がかかっており,2010年に全ての学生を送り出したいという目標を掲げてやっていますが,なかなかそれが進まない。あるいは,例えばランキングに関しても,今外国の政府が国の競争力を強化するため,重点大学に投資をするという状況が生じているので,海外の有力大学はかなりふんだんなリソースを持ち,研究,教育に大きな投資をしています。その中で,東京大学はいろいろな意味で不利な立場にあります。もちろん予算は国内のほかの大学よりもたくさん頂いているということは重々自覚していますが,競争相手と比較すると,竹やりとバズーカ砲のような感覚を持っています。
 2点目として申し上げたいのは,大学による役割の違いをしっかり明確にした上で,それぞれの大学の強みを生かすような形での競争力を高めていく,あるいはグローバル化を図っていくということがとても重要だと思います。
 三つ目に申し上げたいことは,これまでのグローバル化の施策というのは,プロジェクトや拠点作りという面があったと思っていまして,そういう意味では個別の施策という感じがしています。しかし,今求められているのは,大学を根こそぎグローバル化する,つまりインフラを変えていくということだと思います。ですから,英語の授業や外国人教員をどうするかということを突き詰めていくと,英語を公用語化ぐらいしないと間に合わないのではないか,そういう議論も私たちの中に当然出てきていますし,教職員含めてどのように対応できるか,あるいは英語力をアップするかということもあります。今までと違うレベルでインフラごと変えるということを覚悟してやっていかないと,竹やりとバズーカの問題は解決できないのではないかと思います。
 グローバル化に関して申し上げたいことは3点ですが,それに関連して,私が外から入って感じたことを1点だけ付け加えると,外から大学を見ていたときには,国立大学は法人化されたので,随分大学の独立性が高まって経営の自由度も増したと思っていましたが,中に入ってみて,大学の独立性あるいは経営のインフラの整備などでまだまだ課題が多いというふうに感じています。これらの点についても,グローバル化の問題と歩調を合わせていろいろ考えていくことが必要かと思います。

【堀井委員】 本日の資料を拝見して,サマープログラムの重要性が少し抜けているのではないかと感じました。オックスフォード大学に転出された教育学の苅谷先生が,頭脳流出で少し話題になっていましたが,よく言われているのは,オックスフォード大学へ行って初めてワールドクラスの大学の実態というのを見せ付けられたということです。それは何かというと,全ての学生が世界的な課題を解決する志を持って集まってきているということを書いていて,日本の大学もみな国際化を目指していますが,一番の違いはここではないかとおっしゃっていて,私も問題は,知識の問題でも,語学力の問題でもなく,志,動機付け,モチベーションの問題なのではないかと思っています。どうしたら日本の学生に志を持たせることができるのかということを考えたときに,志を持った海外の同学年の学生と一緒に活動するという経験をさせることがすごく重要なのではないかと考えています。
 そのサマープログラムの重要性を実証するために,この8月に東京大学でサマープログラムを実施しました。2週間のプログラムですが,9日間東京でワークショップを行い,それから岩手県の大槌町で3日間ワークショップをするということで,海外からの学生30人と東大生30人と社会人10人程度で実施しますが,海外の30人の学生を募集したところ,850名の応募があり,UCバークレーから21名,オックスフォード大学から9名,デルフト工科大学が7名,スタンフォード大学から6名,ハーバード大学から5名,中国の清華大学からは何と100名が応募してきました。世界的にはこういう国際競争をしているのだと,言葉の上では分かっていた気がしますが,やってみて初めて分かりました。学部時代にサマープログラムを経験させ,大学,大学院はここに行こうと考えさせる機能を果たしているのではないかと思います。そういう国際競争があることすら気付かず,国際競争に参画すらしていなかったということで,私自身非常に反省するところが大きいのですが,海外からの学生を呼んできて,日本にいながらそういう体験ができるようにすることはすごく大切だと思います。今回,東京大学の職員にも参加していただくことができるようになり,職員の研修の機会としても重要なのではないかと思います。正規課程で留学させるのも,それはもちろんすごく良いのですが,いきなりすぐにできるのかという問題はあると思います。
 バークレーの教養学部長が東京大学に来られたときに意見交換しましたが,バークレーの学生を是非日本に送り込みたい,そしていろいろな体験をさせたいとおっしゃっていました。しかし,正規課程のときに留学させるのは,なかなか難しいともおっしゃっていました。日本でサマープログラムが開かれたらバークレーの学生をたくさん送り込みたいとおっしゃっていたので,それはどこの大学においても本音だと思います。まずできるところからどんどんやるという観点からすると,サマープログラムのような機会を充実していくということがまず大事なのではないかと思います。

【二宮主査】 これまでこういう会議などでも,世界から優秀な留学生,頭脳をどう引き付けるか,こういう議論がたくさんありました。我が国の大学が国際化しなければいけない,国費外国人留学生制度の在り方を少し魅力的なものにしなくてはいけない,直接留学生を呼ぶことができるようにしなくてはいけないなどと議論してきましたが,そのイメージができていませんでした。世界中どこからでもアプライできるようなプログラムを提案し,インターネットでも世界中の人たちが東京工業大学大学院の国費留学生のプログラムをアプライすることができる。アメリカにいるインドネシアからの留学生でさえそのまま東京工業大学にアプライできるという,そういうモデルが我が国にもありますが,この引き付けるという意味がすごく,たった10日間のプログラムにもかかわらず,800名もが魅力を感じて来る,このイメージを是非今後も大切にしながら,具体的な方策を考えていくということを大変印象深く聞きました。

【米澤委員】 私はここに呼んでいただいたのは二つの理由があるのではないかと思います。一つは,私自身が大学自体を専門の研究対象としておりまして,単純に理論的なことだけではなく,実践面での政策あるいは大学経営のお手伝いをしてきたことがあります。
 もう一つは,今私が勤めております名古屋大学大学院国際開発研究科では,毎日サマープログラムをやっているような感じで,30か国以上の,主に途上国からの学生が学んでおり,その中に日本人が少し混じって,100%英語で授業するということをしております。私も40歳を過ぎてからそういうところに放り込まれて苦闘しているのですが,具体的に国際的な環境において英語でどのように教えていくのかということについて,ある程度経験があります。
 まず,私の後者の国際的なプログラムで教える教員の観点から申し上げたいと思います。大学のグローバル化あるいはグローバル競争への対応についてですが,ここで日本の大学が世界最高を目指していくということは,これは政府の方針でもありますし,同時に,現在世界には1億8,000万という本当にすごい数の学生が大学などの高等教育機関に在学しているのですが,彼らの多くは途上国や新興国で学んでいます。そして,こうした途上国や新興国の大学が非常に大きな制約の中で世界最高を目指していたり,自分の立ち位置の向上を目指していたりするのです。グローバル化の議論をする上では,そういう中にある大学や学生の必死さを理解する必要があり,全ての人が世界を俯瞰するような役割を果たしているわけではないのだと思います。我々が苦闘しながらグローバル化とは何を意味しているのかを理解しようとしているように,各国の大学や学生がそれぞれの多様な立場から,今の世界とはどういうものなのか,あるいはアジアであればアジアというリージョンが何を意味しているのかについて手探りで把握しようとしており,我々は彼らと一緒に,新しい世界を作り上げていく過程にあるということを理解することが大切だと思います。
 もう1点は,前者の高等教育の専門家としてのコメントとなりますが,政府ができることと大学ができることを峻別した上で議論をしていく必要があると考えています。本ワーキング・グループの役割は,具体的に政府ができることを考えていくことだと理解しておりますが,大学の方も,既に他の委員の方々からいろいろなお話がありましたように,経済界と同様に,非常に大きく変化しているというのが私の実感です。10年前,20年前に比べると,当然ながら相当に今の大学は,国際化しています。場合によっては後退している部分もありますが,学生の意識も教員の意識も非常に変わってきているのではないかと思います。これは日本だけではなく,例えばアメリカはまさにそういう国ですし,それからヨーロッパも地域として高等教育圏を形成してきていますが,大学教育,大学の学術交流を実質的に意味がある形で行おうと思えば,大学自身が主体となって,責任感をもって取り組む中で実現できることの方が圧倒的に多いと思います。
 その中で,例えば非常に面白い取組としては,MOOCsがあります。御存じのように,例えばハーバード大学に行けば,我々は年間500万から600万という授業料やその他の費用の出費を覚悟しなければいけません。日本の大学と直接比較可能な値段ではなくなっていますが,そういう大学が無料で,オンラインで授業を用意し,場合によってはテストを行い単位まで取れるかもしれないということを今始めています。大学自体が,その持っているコンテンツを活用しながら変化している。そういうところに日本も乗っていこうとしているし,その中でいろいろな制約にぶつかっているのだと思います。
 他方で,では国がやることは何もないのかというと,やはり大変重要な役割を担っていると思います。逆に言えば,国が放っておいて国際的に対抗できるまでの力を持った大学というのは,残念ながら,半分くらいは文化や言語の問題もありますが,日本の現状では様々な制約があってなかなか難しい。日本を含めいろいろな国が非常に努力をして大学のグローバル化対応を支援しているのだと思います。一つの大きな役割は,質保証です。どのような形であれ,大学が行う様々な活動が,最終的に学生にとって不利になるということは絶対にあってはいけないというような観点から,質の悪い教育は認めないことが非常に大事な点ではないかと思います。
 同時に,国際化を支援していく,これは大学やそれぞれのプログラムによって伸びるところと伸びないところがあるので,それを見極めてどのように支援していくのか,あるいは大学がモチベーションを高めていくためにどのように支援していくか,いい頃合いの見極めが必要であり,刺激し過ぎても,刺激を与えなさ過ぎてもよくないことになります。国の役割というのはセンシティブであり,かつ大胆にやらなければいけないという,非常に難しいところに入っているのではないかと思います。
 最後に,NAFSAという留学生交流を支援するスタッフを中心とした会議があり,その中で,コンプリヘンシブ・インターナショナリゼーションという言葉が現在話題になっていることを御紹介したいと思います。我々はいろいろな形で大学のグローバル化や国際化を常に議論していますが,その中心に大学教育をもう一回置き直すべきではないかという議論です。
 もちろん,研究は大学にとって非常に大きな役割ですし,社会貢献も大事です。しかし,特にこのワーキング・グループにこだわらず,中教審全体の議論を概観すれば,現在発信されている一番大きなメッセージは,日本のみならず全ての国で,学生が学びの主人公であって,学生が大学の中で今最も支援しなければいけない対象だということが我々のコンセンサスに近いと考えています。その観点からこのグローバル化の問題を,もちろん国の社会を発展させるために人材育成は大事な観点ですが,もう一歩引いたところで,教育の問題としてどのように考えるかを議論していただければと考えています。

【二宮主査】 我が国の大学の国際展開の一つの在り方論としては,MOOCsをどのように制度的に位置付け,質の保証をどうするか,あるいは顔認証により試験が本当にできるのかといった様々なこと,それからコースで単位を出す場合,あるいは学位にまでつながるというときの設置委員会の在り方,質の保証というのは,大変多くの課題が残ったままですが,今後は,一種のプロバイダーで,避けて通れない議論になるのではないかと思います。英語で授業ができるようになり,日本語で行う授業の強みというものを国際留学生市場の中でいかに特化し海外展開をするかという議論は避けては通れないのではないかと思います。

【吉川委員】 私は,高等教育を受けた人が最終的に手にする資格である学位と,その授与機関である大学を中心に研究したり考えたりしております。このたびジョイント・ディグリーを審議の項目として挙げられるということで,この場に入れていただいたと考えています。
 グローバル化が進むと,当然,学生並びに労働力が国を越えて移動しますが,そのときに学位が他国できちんと認められるか,あるいは外国で学位を得た人が日本においてどのように認められるかは切り離せない問題であると思います。ジョイント・ディグリーは,異なる国の大学が連携して一つの学位を出すという意味ではとても魅力的であり,日本が今後グローバル化を進める上で一つのシンボル的なものになるかもしれませんが,質を伴った教育であるかという教育の内容がより厳しく問われる点で,自己責任も伴うものであろうと考えています。共同プログラムによって出されるジョイント・ディグリーの各国での取扱いや認められ方を見ていますと,各国とも非常に苦慮していることがうかがえます。あくまでも共同プログラムにより出される学位であっても,当該国の大学1校が単独で出す学位と同等でなければ他国においても認められないであろうということが共通の考え方になっていると思います。
 ジョイント・ディグリーについてはこれから審議されるということですので,日本においての設置認可との関わり,日本では認証評価も取り入れられていますから,そちらとの関係,さらに諸外国においてアクレディテーション(適格認定),エバリュエーション(評価)がどのようにその共同プログラムに対して行われているかということにも配慮しながら,今後の制度設計をしていただければと考えています。

【二宮主査】 大学分科会の方からも,ジョイント・ディグリーについては項目が取り出してあり,それについては必ずここで検討しなければいけないと受け止めておりますので,是非お力をおかしいただきたいと思います。

【内田委員】 早稲田大学の内田です。私の専門は法律の民法ですが,早稲田大学で国際担当の常任理事として7年目になります。その前には,英語で全て授業をする国際教養学部を作る中心となり,最初の学部長になりました。多分,こういうことで私がここに入っているのだろうと思います。
 様々の個別的な論点が出ていましたけれども,それと少し違うことを二つだけお話させていただきたいと思います。一つは大学の国際化については,基本的には,三つの段階があって,三つの段階に応じて,内容や政策の在り方が違うと理解をしています。第1段階は,その国が近代化していくときに,国の近代化,国民の指導者を作り,国民の独立を達成することを目的としてナショナル・ユニバーシティーを作る,これが第1の段階。その段階では外との関係はそんなにたくさんはない。研究者が行ったり,あるいはお雇い外国人が来たりする,こういう段階が一つ目です。
 二つ目は大学のグローバル化という時代だと思います。これは国境を越えて企業活動が動いていく,それと同じように大学も国境を越えていく。これはどういうことかというと,学生と教員が動くこと,つまりモビリティーが中心になる。そうすると,どうやって受け入れるか,どうやって送り出すかということが中心の政策となる。例えば文部科学省であれば国費留学生をどうするかとか,外国から留学生をどうやって入れるか,そのためにはグローバル30のような英語で授業をした方がたくさん入るのではないかとか,あるいは日本からどうやって学生を外へ出すか,これらが課題となります。これは第2段階の時代だと思います。第3段階は,企業が,先ほど井上委員がおっしゃったように,国内と国外の区別がなく活動し,地球全体をネットワーク化していく。そうすると,そこでは国境がなくなる。そして,大学であれば,全ての大学が国境のないところで競争と協力と世界の課題解決のために貢献をすることになる。つまり,英語で言えばコンペティション,コラボレーション,コントリビューション,この三つをすることが現代の大学の課題だと思います。
 その場合に必要になることは,モビリティーを高めるということではなく,大学の内なる改革をすること。つまり,海外の大学と同じ標準を基礎としつつも,しかし日本の大学ですから,日本の大学としての特色をどう打ち出すか。あるいはアジアの大学として,アジアの主導的,リーディング大学としてどういうことを考えるかということになります。グローバルな大学だけれども,ローカル,日本のある地域,例えば東北地方のあるところに大学があるとすれば,そこのローカルな課題というものを解決しなければいけない。つまり,グローバルな大学だけれども,同時にリージョナルで,ナショナルで,そしてローカルな視点というものを常に持たなければいけないということです。そして大学の多様化ということに応じて,そのどこに重点を置くかというのは大学によって違うのです。それは国の政策もどこに力を置くかというのは変わってくる。という意味で,第3段階の今の段階においては,内なる大学改革,そのための様々な制度改革が必要になってくる。これが一つの事柄です。
 それからもう一つの事柄は,学生のモビリティーというのは,今の段階でも重要なのですけれども,モビリティーには二つ違うモデルがあると考えてきました。例えばバイラテラルでAとBの国の間で,学生の行き来をする場合には,どういう場合にその行き来をする量が多くなるかについては,二つ全然違うパターンがあると思います。一つは,教育水準に格差があるときに,上から下か,下から上か,分かりませんけれども,上下間のモビリティーが高まる。この場合には,受け入れる国のプル要因と送り出す国のプッシュ要因,例えば,それぞれの国の高等教育のレベル,それから大学に入る難しさ等々,要因はいろいろあると思います。こういう格差があるときにモビリティーが高まるというモデルです。もう一つは,平等な段階でモビリティーが高まる,これは全然違うモデルです。例えばかつての日本は格差型のモデルが適しており,下から吸い上げられていたわけです。今の日本は一方では確かにアジアとの関係で吸い上げていますけれども,しかし同時に今重要なのは,平等型のモデルになってきていることです。これは日本の大学の,特に科学技術の面で言えばいろいろ問題はありますけれども,しかし,例えば過去10年,20年のノーベル賞の受賞者をとれば,アメリカの次は日本です。そういう意味で日本の科学技術は非常に高いレベルに達している。そうすると,アメリカやヨーロッパの国と競争しながら学生と研究者のモビリティーを高めることが必要となる。平等な力があるときに,モビリティーが高まるのは,やはりそれぞれの大学に一旦所属をしておいて,それで他国へ行ったり来たりをするということです。最初から日本の学生がアメリカに行くということは格差型のモデルのときに起こるのです。しかし,平等型のときには起こらないのだと思います。
 ほかにも,いろいろなモデルを考えつつ,早稲田大学のグローバル化を進めてきたわけです。今ここで少しだけお話をしたのは,二つの事柄,国際化の段階というものを考えて政策を考える必要があるということと,それから学生のモビリティーについては,平等型・水平型と格差型で議論の立て方が全然違うのだということの2点についてだけ説明させていただきました。

【市村委員】 私の方からは,まず,日本貿易会の位置付けをお話してからコメントをした方がいいと思います。まず貿易会ですが,総合商社並びに貿易商社で構成されていますが,業界団体です。私たちのビジネスは,7割以上が海外なので,グローバル企業を目指すという中での位置付けで日夜頑張っているということですが,本日は,産官学連携の重要性について申し上げたいと思います。
 3月14日に,貿易会が中心となり,経済3団体に共催をお願いし,経済3団体プラス貿易会で「産学官連携によるグローバル人材育成」というテーマでシンポジウムを開催しました。協賛には文部科学省はじめ経済産業省,外務省,厚生労働省に協力いただき,国立大学協会,私立大学協会,公立大学協会の方にも協賛いただきましたが,東京大学の濱田総長と経団連の川村副会長に基調講演していただいた後のパネルディスカッションで,産官学が連携していくことがいかに重要かについて議論していただきました。
 それぞれの役割を明確にした上で実行していかなければ,グローバル化,あるいはグローバル人材の育成というものは推進できないであろうというのが最終的な結論になっていますが,例えば産業界では何をしたらいいのだということになると,留学生の支援,支援といっても奨学金の問題もありますし,留学生が戻ってきたときの就職の受入れの問題もあります。そういうところの協力,あるいは学生にインターンシップで海外でのビジネス経験をさせる,こういう協力ができるわけです。また,企業のOBを活用して大学へのグローバル化のお手伝いをするということも可能です。そういうものを企業の役割ということでまとめていますが,では一方,官の方,行政の方でお願いするのは,財政面での支援であるとか,あるいは制度面での改革であるとか,こういうものが挙げられると思います。大学の方は,今回のテーマであるグローバル化の推進が圧倒的に重要なことになりますが,その中でも,いわゆる学生の学習環境の整備や,あるいは学生のグローバル化に対する意識の改革,認識,志をもう少し持たせなければいけない,こういう点も大分議論されたと認識しています。
 例えばその産学官がいかに重要であり,これが達成できるかということは,一例を申し上げると,私どもは2年半前から,大学生の就職活動の採用問題に関して後ろ倒しの運動をしてきました。これも2年以上,これは文部科学省や経済産業省の御協力も得,大学からも要請があったので,同友会と一緒になって動いたのですが,最終的には政治主導ということで,私も官邸に呼ばれてプレゼンテーションをし,その結果,経団連の方で採用問題の見直しが正式決定された,こう伺っています。このように産官学が一緒に動くことが,いかに一つのテーマを実現していく上で重要な役割を持つかということを認識しています。
 学生の意識の改革も非常に重要ですが,いわゆる全体の枠組みということを考えたときに,テーマが大学のグローバル化やグローバル人材を育てるということであっても,最終的には,それを実行するに当たって必要なものは,これはビジネスと全く同様で,人と物と金と情報,これがそろわなければできません。これをそろえるには,大学だけ,行政だけ,あるいは経済界だけでやるということは不可能なので,知恵を出し合って産官学が連携する枠組みを進めていかなければ,議論だけは活発化しても,実現に向けていろいろとまた問題が出てくるという可能性もありますので,議論をこれから交わしていく上で,最後はどういう枠組みでやっていくかを考えていく必要があると思います。
 例えば,留学生を増やしていくという中で,これを政府の予算だけでやっていくということには限界があるので,産業界も協力していくことも考える必要があるのではないかと思います。今の大学生が海外留学経験なく就職し,例えば商社ですが,言葉は英語と第2外国語を学ぶのが今は普通になっているので,1年間会社のお金で留学させるわけです。そうなると,このお金と時間は非常に無駄であり,むしろ大学でやっていただいた方が効率的です。そのかわり,お金はある程度出そうという考え方は十分成り立つので,そういう中で議論をしながら産官学の連携というものを議論したらいかがでしょうか。

【二宮主査】 企業の方からR&Dやイノベーションのための産官学連携という形で,資金や機械を提供いただいたり,研究室も提供いただいたり,あるいは企業からの人が大学の教員として実際に大学の中で共同研究されるという,それに加えて今心強い御発言は,大学教育における人材養成について企業が産官学連携の中で役割を果たしていこうということについて検討したらどうかということです。学生を育てるのに企業が何をどう考えて何ができるかということを市村委員が今言ってくださったのだと思いますので,是非重要な視点として今後も継続的に,大学だけではできないという視点を持ちながら検討できればと思っています。

【長尾委員】 私は3点のことを申し上げたいと思います。まず一つは,先ほど堀井先生がサマープログラムのことをおっしゃいましたが,私の広島女学院でも,Peace and Leadership Seminar,英語で全て行う10日ほどのプログラムですが,8月6日を中心に,原爆といったことを世界中の若者がしっかりと把握し,そしてそれぞれの国に持ち帰り平和を考えるというプログラムを行っています。今年はまずウェブサイトに載せました。そうしましたら,学生,教員それぞれの関係者が,フェイスブックで関係しているところに呼び掛け,また友達が友達をということで,実は127か国1万人がこれを見たというカウントができました。そして50人の枠しか外国から受け入れられないのですが,400人の申込みがありました。バングラデシュ,ロシア,アフガニスタン,ヨルダン,ミャンマー,カンボジア,ケニア,アメリカ,パキスタン,世界中から学生たちが興味を持って日本に来たいという反応を示しました。学生を出すばかりではなく,本当にいいプログラムを日本で持つことにより,魅力のあるものであれば,全世界から簡単にウェブサイトを見て,能力,財力のある人たちはやってきます。また,できれば今度はスカラシップをいろいろなところに協力をいただきながら出して,世界中の学生を集めることができると思っています。ただ,これは単独でやっているので,これを単位化して,参加した学生たちにサーティフィケートを渡すためには,どのようなところでどういう機関決定をしていけばいいのか,世界の認証はどのようにすればいいのかという大きな動きができれば,世界展開できるのではないかと実感しました。
 先ほど800の大学が全てグローバル化する必要はないという御指摘もありましたが,特定の大学だけを指定して支援するのではなく,自助努力をし,地域の特色を出すところにはそれなりの支援の手を差し伸べられるような制度を作っていけたらと思います。
 二つ目です。教育再生実行会議から第三次提言が出され,その中で,具体化できればすばらしい提言が幾つか出ています。例えば,先ほども指摘がありました,海外の教育ユニット丸ごと誘致や,それは全部でなくても一部を何かで提携しながら誘致して向こうのものを持ってこられないかということと併せて,ここの会議ではそのような提言をいかに具体的なシステムとして作っていくかということ,可能にするかということだろうと思います。howという,ここで最後に制度面,環境面での環境整備を行うという提言ですが,それを行うには,how,どのようにしたらいいのかという具体的な議論が効率よくできたらと思っています。
 最後のもう1点は,資料6にあります留学生の双方向交流促進です。海外のインターンシップやフィールドワークにどんどん学生たちを行かせたいと思っていても,管理栄養であるとか看護学科であるとか幼児教育であるとかというところは,どうしても厚生労働省の管轄,制限が加わります。文部科学省の方は15時間ということでまとめて,それをクオーター制であるとか秋入学であるとか,いろいろな国際化に対応した学事歴の柔軟性というものを議論して採り入れることができてきて,フレキシブルになっていますが,同じ大学でも厚生労働省絡みのところはそうはいかず,学生たちを大学全体で出す制度といっても,どうしてもそこでストップがかかってしまう。今後厚生労働省と文部科学省の連携がなければ,大学全体,大学生全体としての動きがとれないと思いますので,そういう議論も提案できたらと思います。

【二宮主査】 機能別分化とグローバル化,あるいはグローバル展開はどう関わるかという問題提起かと思います。

【江川委員】 私がこれまでのプロジェクトベース,あるいは拠点作りではなく丸ごと国際化が必要であると申し上げたのは,丸ごと誘致をするというよりは,むしろインフラを整える必要があり,特区的に大学の一部を国際化するというよりは,土台から考える必要があるということです。ですから,先ほど内田先生がおっしゃった内なる国際化と同じような問題意識かと思います。

【米澤委員】 非常にテクニカルなことですが,日本の大学のキャンパスやプログラムを海外に出していく,あるいは逆に日本に海外の大学のキャンパスをもってくるときに大きな問題になるのは,誰がそこで教えるのかという問題ではないかと思います。具体的には,例えばオーストラリアやアメリカもそうですが,大学を海外に出したときに,そこの本校で教える人たちが教えている場合もあるし,そうでない場合もあります。その中で,その大学として教育の質をどう保つかですが,例えば今まで以上に質の保証システムを強化していくことでそれをカバーしていくなど,いろいろなパターンが出てきています。我々はそういう意味で,80年代から外国大学日本校を受け入れてきましたので,日本の中ではいろいろな意味で経験があるつもりでいます。しかし,こうした国境を越えた教育サービスの提供の在り方は,世界レベルではその後相当に変化してきていますので,エビデンスの部分できちんと押さえていく必要があると思います。
 逆に,現在の課題として,では日本の大学が出ていくときに,どこまで日本の今いる教員が教えていくべきなのかということも,実は大きな課題になっているのだと思っています。単純にただ日本の教員や教材を持っていくだけでは通用しないと思います。場合によっては,早稲田大学がシンガポールのナンヤン工科大学と行ってらっしゃるダブルディグリープログラムのように,パートナーの大学と一緒にカリキュラムを作るなどの何か工夫が必要です。一方で非常に大胆に,柔軟に,もう一方で譲らないところは譲らないというような制度設計が必要であると考えています。

【勝委員】 大学が丸ごと変わっていくことが必要だというお話がありましたが,大学全体で変わっていくことは非常に難しい。私は国際化を担当していますが,恐らくどの大学でも国際化を担当している先生は非常に大変だろうと思います。それも全学で国際化を構造的に変えていこうというのはかなりの力仕事だろうと思います。ある部分,部局だけの国際化ではなく,江川委員が言われたように,全て丸ごと変わっていくというのは実は非常に大変で,力仕事で,これはガバナンス改革と大きく関わっているのではないかと思います。今の大学では学部の力は非常に強いですし,全体で変えていこうといっても,なかなか教授会の力が強いといった意味での部分が多いので,グローバル化というのはガバナンス改革とも非常に大きく関わっているのではないかと思います。

【堀井委員】 先ほどはサマープログラムという観点でお話しましたが,今度は留学生教育という観点で発言したいと思います。私どもの学科専攻では,1982年から特別コースをしており,文部科学省から奨学金枠を頂いたこともあり,非常に優秀な学生を集めることができ,大学院の教育は全て英語でやっていますが,これまでに約800名の卒業生を送り出しています。当初は,母国に帰って母国の発展のために寄与するような人材を育てるという方針でやってきて,それはそれで大切ですが,現状を考えたときに,日本企業に就職をして日本企業の中で活躍し,例えば日本企業のメンバーとしてその母国の経済活動の中で重要な貢献をするような在り方もあっていいのではないかという感じがしてきております。留学生の就職支援,キャリアパス,企業との上手な連携についても視野に入れていいと思います。日本に留学した学生に活躍の道を作ってあげることが,優秀な学生が日本にやってくることにもつながってくると思います。言い方ややり方は非常に微妙な問題もあるので,慎重な検討が必要だと思いますが,論点の一つに加えてもよいのではないかと思います。

【井上委員】 今の御発言に対してお話をしたいと思うのですが,私どもも海外から来る留学生と直接お話をするような機会を持っているのですが,やはり日本の大学に留学する最大のメリットは,日本の企業に就職するチャンスが出てくるということでございます。皆様よく御存じのとおり,欧米の国々も,それからアジアの新興国でも,大学卒の就職率が非常に悪いのです。20代の失業率が年代別に見ると一番高い。しかも,大学卒という形で非常に所得水準が高い職が得られるはずの職が少ないということで,それに比べますと日本は,これだけ「失われた20年」とは言いながらも,毎年かなりのフレッシュマンが採用されている実態があり,その中でグローバル化対応している企業に就職できるチャンスがあることが留学生にとって魅力になっているということでございます。そうなりますと,当然ながら,今ここで議論されています大学の国際化,特に英語教育の充実も必要ですが,私どもは,やはり日本語の能力というものも留学生は相当高めないといけない。やはり日本の企業は公用語が英語になっているわけではございませんので,そういった留学生が,英語はもちろんかなりの水準になるよう日本の大学で学ぶことも重要なのですが,日本語を使う能力というものも大学の中で鍛えてあげると日本企業への就職のチャンスは広がります。今,経団連は夏にキャリアミーティングを始めましたが,去年1人,その会で内定を受けた学生は,4年間の留学で中国から来て,日本の大学に籍を置きながら1年間交換留学でアメリカ出た学生です。こういう学生は,英語,日本語,中国語全部できるということで,これは鬼に金棒で,一流の企業からの内定を得ることができます。そういう事例を見ますと,やはり日本で学ぶメリットとしては,日本語ができるようになり,英語ができるようになり,それに加えて母語か他の言語となると,最低限のグローバル人材の要件,ヨーロッパなどではこれが当たり前のようなのですが,それをもって日本の企業に就職しグローバルに仕事ができる,そういう形になるわけです。

【二宮主査】 かつて文部科学省のプログラムの中にアジア人財資金というのがあり,例えば留学生に日本語も教えるのですが,根回しであるとか,日本的な文化をビジネス日本語として教えていきながら,日本の企業に就職できるようにというプログラムが組まれたことがありますが,それだけでは今のグローバル企業は不十分であり,それにプラス英語力等を付けてもらいたいということではないかと思います。その点では,例えば国費留学生として我が国に呼んだ場合に,中国人の方は難しいかもしれませんが,半年間,アメリカに留学させることができるかという問題は,未解決かもしれません。自国に帰って調査をすることは国費留学生の場合でも可能ですが,第三国に行けるか。この発想は,アジア・ゲートウェイ戦略構想の中で,日本がゲートウェイになり,日本に来てまた世界につながり,日本へ帰ってきて,あるいはアジアで働く,そういったある種のモビリティーを活用した人材育成像が描かれていたわけですし,日本の大学の役割も少しかいま見たかと思います。
 それからキャンパス・アジアで今,後ほどまた御紹介があると思いますが,日本語はもちろんのこと,中国語,韓国語が三つの国の学生全員ができる,そういうプログラムが学士課程のプログラムとして開発実施されつつあるので,英語は個人的な努力でできるだろうと思いますし,そういったグローバル人材に求められるコミュニケーション能力のイメージ,大変難しい,ぜいたくな注文ですが,そういう考え方で大変興味深いかと思っています。

【堀井委員】 約10年以上になりますが,国際プロジェクトコースというものを作り,国際社会で活躍する人材を育てる。これは主に国際社会で活躍する日本人の人材を育てるというコースを作り,比較的東京大学の中で人気が高く,優秀な学生が来てくれていますが,10年間ずっと,どういう教育をしたら本当に国際社会で活躍できる人材を育てられるかということを考え続けてきました。一つは,フィリピンのマニラに本店があるアジア開発銀行に長期のインターンを送り出し,毎年2名か3名の修士の学生を半年間預かってもらうということをやっていますが,半年間英語の組織の中で自己主張をきちんとしてもまれてくると,見違えるように育ってきます。
 もう一つは,ケースメソッドを使いグローバルな環境における問題の解決能力を高めるという教育を行ってきました。これは非常に効果的だと思います。グローバルな人材を育てるときに,すぐ語学力という話になりますが,語学力は確かに大切ですが,語学力があればそれでグローバルな人材になるのかというと,そうではありません。本質的には何かというと,国内ではなく国外の問題を解決する能力を身に付けさせる,それがグローバルで活躍したいという気持ちにつながっていくと思います。私どもこれを10年間やってきて,それなりの成果が出てきたのですが,それから考えると,大学の中で分野横断的な教育で国際的な文脈において問題解決能力を高めるというような,分野によらない,基礎的な能力を付けるような教育が今大学には欠けているのではないかと思います。それぞれの分野でやるのもいいですが,そこは全体,違う分野の人が集まり一緒に問題解決するような経験をさせることも必要なので,分野横断的な共通的な教育を,教養教育だけではなく,問題解決力を付けさせるという観点から導入することが大切ではないかと思っています。

【内田委員】 先ほど国際化の三つの段階に触れましたが,今はグローバルな大学になるというところにあります。そこで重要なのは大学のインフラが変わるということで,それはガバナンスが変わるということですし,それから大学の制度を変えるには,先ほど勝先生がお話されていた力仕事が必要なのです。恐らく,第3段階になると,国際化や国際部というのはなくなるのだろうと思っています。つまり全てが変わってしまうからです。それから,この段階では,教育の中身や方法が,今,堀井先生からお話あったように,対話型,双方向型,課題解決型,学際型というふうに変わっていくと思います。そういう意味で,世界のどこに出しても競争できるような内容と中身にしなければいけないのですが,しかし,同時にどうやって日本的なものを作るか,残すかという,そこが非常に難しいところになるだろうと思っています。
 そのこととの関係で英語について非常に難しい問題があります。というのは,英語圏で英語で授業することには余り問題はないのですけれども,非英語圏の大学が英語で授業するということは,幾つかの矛盾を抱えているわけです。国民教育という点からすれば,日本語が学術的な言葉であるためには日本語で高等教育をやらなければいけない,それは前提なわけです。しかし,海外からの学生を引き付ける,あるいは日本の学生が英語を使って外に行けるというためには英語で授業することも必要です。英語でたくさん読むことが今必要であり,今はインターネットの時代ですから,書くことが必要です。しかし,教育の面ではそうだとして,では研究の面で,日本人の研究者が英語で書くということ,これは例えば文系の非常にドメスティックな学問の場合に,英語で書かないとランキングなどで評価されないというような,ちょっと倒錯した状況もあるわけですけれども,そういう分野ではどう考えるか。それから逆に,科学技術の理系の分野で,日本語で大学生相手に教科書を書いたり日本語で授業したりすることは本当にどういう意味があるのかということはやはり考えなければいけない。例えば,マレーシアやシンガポールでは,英語教育とその国の国民言語での教育をどうするかという難しい問題があります。それが日本では,教育の部分については日本語でということできて,同時にバイリンガル的な形で英語であるとか,さらには中国語ができるように足していけば。足し算でいいわけです。しかし研究という点からしたときに,理系の分野などで世界共通のところで何で日本語で書くのか。また,日本のことをやっている人文・社会科学系の分野で,何で英語で書くのかということがあります。研究にとっては,英語は少し難しい問題を引き起こしている。大学にとっては,ランキング,英語で出てくるものに基づいて作られている世界のランキングで評価されるということとの矛盾というか問題を,日本の大学は抱えていることも,理解をしておく必要があると思います。

【米澤委員】 この問題をどれくらいの期間を視野に入れて取り組んでいくべきかという,時間軸をどう設定するかは非常に大きな論点です。私も45歳くらいで初めて英語で授業をやってみましたが,本当に大変です。それまで学会発表は英語でたくさんしておりましたが,やはり非常に大変なことでした。東京大学のいろいろな改革や,名古屋大学の自分の研究科の20年を超える英語での学位プログラムの取組を考えても,早期から取り組まれていた英語でのプログラムが時間をかけて徐々に人気が出てきて,先生も慣れてきて,システムとして確立していく過程というのは相当の時間がかかるということを実感しています。同時に,日本の大学のグローバル化対応を考えたとき,大学教員になるかもしれない今の若い学生たちが20年後に先生になったときに,全く英語で授業できなくていいのかと考えたときには,これはできてくれないと困るというのが本音に近いところです。シンガポールなど,今英語で授業をやっている国や大学は,20年,30年あるいは50年以上かけてそのような文化を創ってきたということを考えたときに,この取組は日本にとって緊急な課題ではないかと考えています。

【江川委員】 今のグローバル化の中で,英語である程度読み書きをして他者と関わっていく力は,未来の世代にどうしても授けなければいけない力だと思います。教育に携わる者としては,日本語だけではなく英語でしっかり教育をしていかなければいけないと思います。しかし,日本では完璧な英語を話さなければいけないみたいなところがあり,それが日本人の英語力を伸ばせない大きな理由ですが,リンガ・フランカとしての英語というのは,今世界で英語を操っている人の7割くらいは英語を母国語としていないので,そういう意味での割り切りは必要だと思います。私がアメリカで教育を受けたときに,インド人の先生やシンガポール人の先生がいましたが,完璧な言葉で話していたわけではありません。そういう意味では,リンガ・フランカとしての英語による教育というのは,大変だけれどもやっていかなければいけないと思います。
 もう一つ,では日本語をどうするのかというと,私は,日本語教育はとても重要だと思いますし,日本語が上手な学生の方が英語も伸びます。今,学生の日本語を書く力が昔に比べて弱まっているので,その辺はきちんとやらなければいけない。日本語も英語もとても重要だと思いますし,一方をやったから他方ができないというよりは,相関関係もあるので,大変だけれどもやはり両方やっていかなければいけないと思います。
 最後に,堀井先生がおっしゃった,言葉よりも中身が大切だというのは,私がグローバルな企業で働いていたときに,切に感じていたことです。もちろん語学はやらなければいけませんが,グローバル人材というのは中身で問われる,そういう厳しい世界なのだということもしっかり頭の中に入れておく必要があると思います。

【二宮主査】 ありがとうございました。貴重な御意見を頂きまして,感謝申し上げたいと思います。頂きました御意見は,資料6に論点例が示されておりますが,その中に書き加えていただけるのだろうと思っています。もちろん,書き加えていただいた全てを議論しなければいけないというわけではありませんが,意見ですので,リストにしてみるということかと思います。
 次回は,少しずつ制度的なことも含め,いろいろな提言を受けながら具体的に調査検討するようにということですので,一例として,我が国の大学が直面している非常に難しい国際連携,国際展開のシンボリックな制度,プログラムでありますこのジョイント・ディグリーについて,少し詳細に研究,調査,検討していけば,先ほどのような英語の問題や,あるいは教育の中身の問題,ジョイント・ディグリーでは一体どのようなケーパビリティーを付けるのか,それから日本とどこの大学とがパートナーになることで何を達成しようとしているのか,それからこのジョイント・ディグリーの中身論としても,世界から優れた人を引き付けることができるか,本日御議論いただき,そしてまたこのジョイント・ディグリーを行うのは国の大学設置基準の問題にも関わりますし,加えて,大学のインフラの問題もあり,学位というのは専門の中で判断していくので,研究科の教授会等の問題と世界の大学とのダイアログの問題など,一つはこれを取り上げることで様々な面を逆にたどっていくことができるのではないか,こう考えるので,例えばですが,事務局の方で検討する第一歩として,このジョイント・ディグリーを手掛かりとして,様々な議論をその中に映し込んでいくというアプローチの仕方もあるかと思うので,御検討いただければと思っております。

(6)事務局から,大学のグローバル化に関するワーキング・グループの次回以降の日程について資料7に基づき説明があった。 

── 了 ──

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