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大学院部会 人社系ワーキンググループ(第4回) 議事録

1.日時

平成22年1月25日(月曜日)15時~18時

2.場所

文部科学省13F2・3会議室

3.議題

  1. 各大学における取組について
  2. 「新時代の大学院教育」(平成17年中央教育審議会答申)の調査結果について
  3. その他

4.出席者

委員

(委員) 金子元久(座長)
(専門委員)伊丹敬之、小池啓一、小林雅之、佐藤彰一、角南篤、高橋和久、田中愛治、橋浦洋志、樋口美雄、本郷真紹、山田礼子、吉田研作の各専門委員
(意見発表者)古家信平筑波大学教授、常本照樹北海道大学教授、辻本雅史京都大学教授、横内正雄法政大学教授

文部科学省

(文部科学省)藤原大学振興課長、今泉大学改革推進室長、榎本高等教育政策室長他

5.議事録

 

(1)事務局より配布資料の確認を行った。
(2)各大学における取組についてヒアリング調査が行われた。

【金子座長】
 本日はヒアリングを行いますが、出席された先生方におかれましてはお忙しいところありがとうございます。先日書面調査を行ったが、書面だけではわからないところもあり、率直なところをお伺いしたい。歴史学、教育学、法学・政治学、経営学の先生にお越しいただきました。趣旨としては、日本の大学院教育は曲がり角にあり、これから大学全体としてどのような方向に行くべきか考えるために、各大学の個別の事例についてご質問したい。

〈筑波大学人文社会科学研究科歴史・人類学専攻〉
【古家教授】
 当専攻は5年一貫制である。人材養成目的については、研究科の目的があって、その下に専攻の目的がある。平成20年に改正し、2段階に分かれており、前半の学究型の研究者養成は、歴史人類学専攻ができた30年位前から一貫した目的となっている。後半の高度専門職業人養成は新たに追加したものである。学芸員、公務員、高校教員というようなものを念頭においている。何故2番目を追加したかというと、近年大学院に入学する者で、最初から学芸員になりたいという者が増えてきたことがある。また、研究対象である文化遺産等を活用していこうという社会の動きに対応するためである。この点については、公共政策的な政策を提言するというところまでは踏み込んでいない。
 これに伴って、博物館学芸員の現場体験について、長くて1年、短くて週に1、2回程度、非常勤職員として派遣することも行っている。また、市町村史の編纂など行政の仕事も分担させて、、人材養成の目的と関連させたキャリア支援や、就職を念頭においた院生の教育を行っている。
 履修支援について、受験者の進路動向として、学芸員などを希望する者が増えてきており、人材養成目的の明確化は、一定の反応がでてきていると考える。また、同時に教員の意識が、研究者養成だけでないというように変化している。一部、研究者養成しかしないという教員もいるが、この点は教員会議でも大分議論した。
 研究指導を担当できる教授と准教授が22名いて、七十数名の院生に対応している。最大で10名の院生を担当している先生もいる。教員の研究活動の支援体制は、助教は3人いるが、うち2名はテニュア・トラックで採用されている者など、全員研究者の卵であり、教員の支援をしている助教ではない。ポスドクについては、人文系には考えにくい。
 大学院の入学選抜については、進学希望者の意欲や学力を適切に把握するため、教員の意識が変わってきているということを踏まえて、2回入試等の方法により、学生をよく知ろうという意識でやっている。
 教員の意識の向上については、人材養成目的のところでも議論を行ったが、求める内容が多様化したことに対応して、二つ新しい研究領域を作ったことにつながった。従来の蛸壺型で研究を行うというのがなくなりつつあると思う。
 事務職員が定員削減されて苦しくなってきており、教員自らやらないといけない雑務が増えてきている。それから、教員の流動性を高める必要はあると考えており、実際、転出、転入、新規採用も行っている。
 大学院生の状況として、学部学生へのガイダンスはやっていない。教員がだいたい把握できているとの認識。学外への説明は必要だと思うが、過去の入試問題を取りにくる機会に、関連教員のところへ行くようアドバイスをするなど、個別対応となっている。
 定員割れについては、一時期14名としていたが、現在は12名としている。
 5年一貫制について、30年前は高い理想を持ってやっていた。だが、修論を書かなくていいという話であったが、実際には、いざ就職をすると世間から修士がないことを認めてもらえなかった。そのため中間評価論文を修士として認めることにした。また、3年次編入を認めるようになってきた。他大学で2年間の修士を終えて入学した場合、以前は1年時から履修していたが、今は編入を認めている。5年一貫制の理念が変質している。
 5年で学位を取らせるというのは、分野によって考え方が違う。5年一貫制という制度は、教員と学生に対して、一定の覚悟を促すという意味では良いと考える。実際に研究者になるためには、10年くらい耐えないといけないものであり、高いハードルではあるが入学時からその覚悟を促すというのは、メリットでもあり、デメリットにもなり得る。

【佐藤委員】
 5年一貫制という当初始めた方法が、現実にあわせて修正を加えながら今日に至っているという実態がよくわかった。5年一貫制で博士号はこれまで何人くらい取得しているのか。専攻によってばらつきはあるのか。

【古家教授】
 課程博士で年間1~5名程度。西洋史はほとんどいない。日本史と東洋史、民俗学が比較的多い。

【佐藤委員】
 その状況に対して、西洋史の先生は何か考えているか。

【古家教授】
 修士を取った後は、学生に留学を勧めている。最初は2重学籍であっても、途中で筑波大学を退学して、海外だけになる事例もある。

【佐藤委員】
 戻ってきて、筑波大学で学位を取るようなことはあるのか。

【古家教授】
 西洋史は毎年0~1名なので、なかなかデータが出ない。

【佐藤委員】
 2年終わったところでマスター論文を作るのであれば目標を設定しやすいが、5年間与えられるとどのような感じか。教える方も難しいと思うが。

【古家教授】
 2年でマスターを書くこと自体難しくなってきており、最近は3年でマスターをとってからフィールドワークということが多い。

【金子座長】
 入学定員12名で、最終的に課程博士を取る者が2割くらいだとすると、それ以外の者はどうなっているのか。例えば、論文博士を取っているのか、違うキャリアへ進んでいるのか。

【古家教授】
 論文博士は課程博士の2倍くらい人数がいる。満期退学した後、論文を提出しても課程博士としては扱わない。

【伊丹委員】
 普通は満期退学後も、2年くらいは課程博士を出せるようになっている。

【今泉大学改革推進室長】
 その点は、各大学の規定により課程博士として出せるようになっている。

【金子座長】
 筑波大学は自ら課程博士を少なくしているということか。論文博士をなくそうという議論も過去にあったが。また、論文博士は卒業生が多いのか。

【古家教授】
 個人的には論文博士はなくしても良いと思っている。なお、論文博士の者は卒業生もいるし、年配の方もいる。論文博士も含めると、入学者のうち学位を取得できたのは4割くらいだと思う。

【伊丹委員】
 人材養成目的の変更により、カリキュラムは変更したのか。

【古家教授】
 変更していない。

【伊丹委員】
 不都合は生じていないか。従来の研究者養成のプログラムの中で、高度専門職業人の養成に対応できるのか。

【古家教授】
 平成20年度に変更したばかりであり、入学者の状況はまだ検証できない。

【高橋委員】
 研究科全体と専攻との関係について、例えば人材養成目的を定める場合、専攻はどのように係わるのか。

【古家教授】
 研究科全体の細則があって、その下に専攻毎の人材養成目的がある。

【高橋委員】
 研究者養成が本分であると考えている教員もいると思うが、研究科全体としての取り決めと齟齬が生じるのではないか。

【古家教授】
 博士論文に近づくと、専門領域の内容については、副査で入っても口を出しにくい状況ではある。ただ、特に若手教員の間では、今後は研究者養成のみでは立ち行かないという共通認識が生まれてきている。

【高橋委員】
 語学系の専攻の場合、片方では自大学で学位を出したい、もう片方では海外で学位を取得した方が良い、という齟齬が生じていないか。

【古家教授】
 確かにあるが、学生本人のことを考えた場合、自大学の課程博士の数にこだわることは良くない。

【本郷委員】
 高度専門職業人の養成を人材養成目的の一つに掲げた場合、5年一貫制と結びついていないような気がする。例えば学芸員資格は学部でも取れるもので、5年一貫制の博士に入ることと結びつかない。研究科全体としてそのような方向性を出すのであれば、学芸員には考古学や文化人類学などの実験的なことを求めることになるが、文献史学の人間に対してそのような道があるというのは、どの程度の訴求力があるのか。

【古家教授】
 例えば県史レベルであれば10年スパンの仕事になり、博士の能力が必要になることもある。人間関係を広げていくこともあり、修士でもできるかもしれないが、さらに深めていくという観点から意味がないとはいえないと思う。

〈京都大学教育学研究科教育科学専攻〉
【辻本教授】
 人材養成目標については、大学院答申と大学院設置基準の改正を受けて、平成20年に人材養成目的を内規として作成した。目的だけでなく、カリキュラム・ポリシー、ディプロマ・ポリシーも公表している。
 前期と後期を分けて目標は策定していないが、専攻・コースで分けている。人材養成目的を明確化したことのメリットとして、研究者養成コースの前期の学生はほぼすべて後期に進学しているため、前期1年目の段階で博士論文を目標に研究計画を立てることができることである。ただし、結果として後期に進めない学生もおり、ここのフォローが課題となる。
 履修支援については、平成17年以降、3つの新しい科目を導入した。また、外部資金はGCOE、大学院GP、特別研究経費をとっており、外国留学費用等を助成している。また、研究科内で科研費のようなものを設けている。
 新入生や編入生には、学位授与プロセスを周知、理解させるため、かなり詳細な論文作成要領を配布している。
 なお、人材養成目的の明確化が、学生が大学院に進学する際に、どの程度参考になっているかは、客観的なデータがないため不明である。
 教育内容の見直しについては、すべて少人数教育で徹底している。従前の研究科目や特論に加えて、前述した、新規の科目も開設している。132名の学生に対して教員26名。うち5名が協力講座の教員である。また、助教については、8名は外部資金等で雇用されており、どう継続するかが問題。
 論文審査または成績評価の基準であるが、修士論文は指導教員と研究領域が近い副指導教員の2名の指導体制である。審査にあたっては、それに他講座の教員1名を加えて3名で審査を行い、さらに研究科会議において、全教員の合議で評価を行っている。このプロセスにより、評価の客観性と透明性を確保し、全教員に評価基準を体感的に共有させている。
 アドミッションポリシーは見直していないが、今見直しの準備を進めているところ。
 教員の意識向上については、確実に変わってきている。学生の授業評価を2年に1度行っているほか、12月にも緊急で学生アンケートを行っており、学生に相当評価されていることが判明した。また、頭ではわかっているが、課程博士を3年以内に出すことは、教員の中で学位の質を下げるという抵抗感があることは否めない。
 事務職員の支援体制については、寒い状態であるが、GCOEにより再雇用職員を雇用している。いくつかの講座で時間雇用職員がいるだけで、あとは厳しい。
 教員の流動性は高めたほうがよいと思う。外部の視点で見ることが重要。自大学出身者の教員は少なくなっている。他大学に移動する例もある。
 大学院生の状況について、ガイダンスは毎年行っており、他大学の学生も参加している。学部生にも説明を行っているほか、大学院生と学部生が同時に受ける講義もあり、そこで学んでいる。定員割れは一度もない。
 産業界との連携については、研究者養成コースは研究者志望のため、産業界への配慮はしていないというのが現状である。「専修コース」は別であるが。
 経済支援について、学生支援機構の奨学金は、申請者はほぼ100%もらえるようである。学振の特別研究員が5、6名、その他授業料免除を受けているものがいる。

【山田委員】
 専修コースのカリキュラムは別になっているか。また、専修コースの学生でも、学んでいるうちに研究者になりたいと考える学生もいると思うが、博士後期課程との接続状況はどうか。

【辻本教授】
 カリキュラムは、専修コース専用の科目が2つあるほかは、同じである。高度専門職業人養成といいながら、カリキュラムが対応できていない部分は確かにある。ただし、アンケートによれば、今の指導体制に一番満足しているという結果が出たのが専修コースであった。もう少し悪い数字が出てくると思ったが。博士課程への進学については、10人中1~2人希望して、博士後期への編入試験を受ける者もいる。

【金子座長】
 「専修コース」「第2種」とは何か。

【辻本教授】
 第2種は臨床教育学専攻のみで、現職教員の再教育を行っている。専修コースは、研究者養成コースに対して、高度職業人を養成するコース。

【小池委員】
 GCOEや大学院GPをとったときに新しいカリキュラムを作るのだと思うが、事業が終了した後、それは維持できるのか。GPを採択することで、教員の意識に影響を及ぼすのか。

【辻本教授】
 建前からというと、終わった後も継続することが重要で、続けなくてはいけない。継続するためには、概算に切り替えるなど努力が必要である。今は走っている最中であり、先のことはわからないが、絶対に維持しないといけないカリキュラムはあり、そこは運営費交付金で続けていくことが必要である。教員の意識変化については、リンクして説明しにくいが、院生が活性化し、思った以上に成果を出している。それによって、教員は早い段階で学位論文に意識を向けるのではないか。

【小林委員】
 社会人対象のコースとそれ以外のコースを分けて、違うカリキュラムでやるのは難しいだろうが、社会人はもともと職をもっている人が多い。いただいた資料を見ると、修士終了後、企業や公的機関に就職した学生は、進学できなかった学生なのか。それともそもそもマスターまでと考えていたのか。それによって教え方も達成目標も変わってくる。

【辻本教授】
 実態として、修士終了後に就職する者もおり、達成目的が破綻している部分があることは理解しているが、挫折して就職したのか自ら就職したのかは、半々くらいだと思う。研究科の中でも、講座によって状況は違う。不本意でない就職も大いにあるとは思う。

【金子座長】
 課程博士は年間どれくらい出しているのか。

【辻本教授】
 18年6人、19年8名。論文博士の方が若干多い。博士課程を最終的に取れるのは3人に1人程度である。

【佐藤委員】
 修士論文の審査の丁寧さが印象深かった。この方法は教授会で反対されないのか。

【辻本教授】
 かなり前からこの状況。反対はないわけではないが、文句はあまり出なかった。修士課程の水準が低いという認識に基づくもの。博士課程に対する意識は、教員の考えがついていっていないところがある。

〈北海道大学法学研究科法学政治学専攻〉
【常本教授】
 他の人文社会科学と違い、法学政治学専攻の特徴は、一つの教員組織が、法学研究科(研究大学院)、法科大学院、さらに北大の場合は公共政策大学院を担当している。実定法関係の教員は法科大学院の専任教員となっており、博士後期は担当できるが、修士は担当できない。教授、准教授55名のうち、法科大学院専任を除くと18名で、その18名で研究大学院の100名程度の学生を担当している。法科大学院も含めて教員の負担は大きい。また、GCOE等の大型プロジェクト遂行にかかるエネルギーは相当であり、実感として、自らの研究の時間すらまったくない中で、どうやって答申に書かれているような教育を実現していくことができるのか、という印象。
 人材養成目的は、法学政治学専攻(研究大学院)と法律実務専攻(法科大学院)が一緒になっている。2つの履修パターンがあり、これはいわゆる定員のある「コース」ではなく、履修の仕方で分けたコースである。研究志望と専修的学習志望の2つがあり、それぞれに対応して指導方法を変えている。社会人学生が入学するにあたっては、入学前に作成した論文やレポートを単位化している。長期履修制度も設けている。
 体系的な教育内容については、主履修科目と副履修科目を選択し、幅広い知識を身に付けさせるようにしている。また、段階的に履修ができるように、「ステップ履修ガイドライン」を設けて指導を行っている。
 就職のサポートについては、専修的学習志望の学生は、毎年一定数が官庁や民間企業に就職していることもあり、就職説明会を実施している。
 教員の支援体制については、留学生に対してTAを付けるようにしている。また、事務職員の必要性は、法科大学院や大型プロジェクトの遂行のため、年々高まっているのに対し、今は間接経費で雇用している状況である。彼らは非正規雇用職員で3年間しか雇用できず、継続性、安定性の点で問題である。
 学生の状況について、毎年ガイダンスを実施し、教員だけでなく大学院生や助教から説明を行っている。定員割れはしていないが、外国人留学生に頼っている状況である。在学者数53名中28名が留学生である。科目等履修生や研究生も含めると、合計83名の留学生がいる。教育活動に相当手間がかかるが、TAとして雇用できる学生は限られており苦労が多い。

【橋浦委員】
 修士課程において、就職志望者は専修的学習志望として扱うとのことだが、ガイダンスはどの時点で行うのか。

【常本教授】
 入学説明会の場で説明する他、入学願書等の書類に記載している。出願の段階で選択する。厳密に言えば、これはコースではなく、博士後期課程への進学を希望するか否かで分けている。例えば、進学を希望しない場合は修士論文ではなく、リサーチペーパーでも良いことになっている。

【角南委員】
 公共政策大学院は入り口のところでは実務家志向が強いと思うが、途中で研究者を目指したいとなった場合、どのくらいの割合で研究大学院の方に進学するのか。入り口が分かれているが、柔軟に運用されているのか。学生の行き来や教員の融通はどうなっているか。

【常本教授】
 公共政策大学院は独立部局になっている。また、文理融合であり、法学研究科、経済学研究科、工学研究科の3部局が教員を出している。大半が法学であり、教員はローテーションしている。学生に関しては、詳細を把握していないが、公共政策大学院を修了してから研究大学院に進学する学生はいない。

【田中委員】
 法科大学院との関係で、修士課程は法学政治学専攻と法科大学院の兼任はできない。そうすると法学政治学専攻のカリキュラムは、基礎法、比較法が主となり、実定法の研究者養成はどうなっているのか。法科大学院から法学政治学専攻に進むのか。

【常本教授】
 この点は学会でも大問題になっている。3つのパターンがあって、実定法であろうが基礎法であろうが、どの分野でも修士から博士に継続させる(北大)、法律に関する限りは法科大学院に進学させて、修了者を博士後期課程に進学させる(大手でいくつかある)、実定法のうち憲法は修士から研究大学院に、民法等は法科大学院を経由して博士後期に(東大)、という3つがある。どれもうまくいっていないようである。法科大学院にいる間は研究者に向いていると思っていても、いざ司法試験に合格して司法修習をすると、そちらの方が魅力的に感じ戻ってこない学生が多い。また、法科大学院から博士後期課程に進学すると、授業料が高く、経済的に相当苦しくなるという状況もある。

【吉田委員】
 留学生に対して、どのように支援しているのか。

【常本教授】
 担当する学生が留学生の生活の立ち上げから支援する。サポーターといっている。授業が始まると、チューターが一緒に授業を受けて質問等に対応している。大学院の場合は、論文チューターを配置して日本語の指導等を行っている。これらはすべて有給で、交付金では対応できず、寄付金で支給している。適正を持っている大学院生は限られているため、学部生も活用しているが、特定の者に仕事が集中しがちである。

【橋浦委員】
 これらの学生をバックアップしている事務局組織はあるのか。

【常本教授】
 留学生の指導教員がコントロールしている。また、事務の留学生担当もフォローしている。生活面については、最初はサポーターが対応しているが、学習サポートをやっているチューターが、教員や事務へ仲立ちしている。また、保証人の問題もあって、以前は受入教員が個人的に保証人となっていて問題であったが、今は機関保証である。

〈法政大学経営学研究科経営学専攻〉
【横内教授】
 法政大学の大学院の規模は中ぐらいである。92年に経済学専攻から分かれるときに、社会人大学院を作ろうという動きがあってそれに乗った形である。「法政ビジネススクール」といって、社会人教育を行う、14条特例を活用した夜間大学院である。昼間の大学院でありながら社会人を教えるという基礎があったため、社会人教育といえども、単なる技能だけでなく研究能力を身につける、という点に重点をおいた研究志向の社会人大学院である。そのために、経営学の専門性を重視した5つのコースを設置し、専門性にあわせた講義を行っている。
 人材養成目的は、最初から教員の中で共通認識があった。2007年に明文化し、学則に盛り込んだ。こういうことをやり始めたきっかけは、社会人の場合は職場での問題意識が強く、研究志向も強い。アカデミックな部分で基礎的な研究をしたいという人が多く、昼間の課程を夜間にも拡張し、社会人が研究したいというニーズをくみ上げた。カリキュラム上も研究上必要な基礎的な科目を重視している。
 アドミッションポリシーについては、問題意識の強い人を入れたいので、研究計画書を重視し修士論文に結びつくかを判定している。英語のできる人を集めている。
 カリキュラムには、基礎的な分野における理論的な科目を並べている。実践的な科目としてワークショップを置いて、ケーススタディのように学んでいる。最重要なのは修士論文を書くことで、個別指導及び集団指導を少人数で行っている。そうすると博士後期課程に行きたいという人が増える。95年に博士後期課程を設置した。
 課題は定員の未充足で、志願者がどんどん減ってきている。今はほぼ定員と同じくらいの志願者数である。これは専門職大学院制度ができたことによる影響と推測される。法政大学でもコンセプトの違う専門職大学院を設置したが、社会人にとって分かりにくく、共倒れを起こしている。学内で組織の再編を議論しているところ。専門職大学院とのすみわけは大きな課題である。また、留学生のニーズに対応できていない点なども課題としてある。
 博士課程についても専門職との関係が課題となっており、修士論文を書いていない人が博士に進学を希望するが、博士号をとるのが大変なのでお断りする場合もある。社会人が博士号を取りたい分野もたくさんあるが、対応しきれていない。
 課程博士の学位授与を促進するために、集団指導や学生にプレゼンテーションをさせたりしている。

【伊丹委員】
 入学定員60名のうち55名が夜間、5名が昼間とのことだが、学生の志願状況はどうか。

【横内教授】
 どちらも来ない。専門職大学院を設置した際に激減した。

【伊丹委員】
 専門職大学院も夜間に開講しているから、完全にバッティングしている。

【横内教授】
 当初は昼のみであったが、社会人は夜間に開講しないと来ない。

【田中委員】
 社会人学生で研究志向が高いとのことだが、その就職先はどこになるのか。

【横内教授】
 社会人は職に就いたままの者が多いが、博士課程を修了した後、転職して大学教員になった者も何人かいる。

【田中委員】
 教鞭をとっている者は、実務者と研究者どちらもいるのか。

【横内教授】
 両方いるが、研究者の方がやや多い。

【伊丹委員】
 同じ大学の中で類似のコースがあることの整理はどうするのか。

【横内教授】
 いろいろ議論しているが、動いていない。

【伊丹委員】
 社会人で夜間通学している人で、研究者志向はどの程度いるのかということを考えると、自分の経験では少ないと思う。そもそものコンセプトが厳しかったのではないかという議論はあったのか。

【横内教授】
 そこまで細かい議論はしていない。ただ、博士課程に進学しないまでも、修士論文を書くことは重要であると考えている。

【橋浦委員】
 社会人が大学院を修了して職場に戻った際、職場にとってどのような意味合いがあるのか。また、「研究する」という行為がどう捉えられているのか。

【横内教授】
 いろいろな人に聞いてみたが、待遇に変化はないとのこと。「研究する」ことが職場でどう捉えられているかは、分からない。

【金子座長】
 社会人が大学院に興味を持つ理由は、単に知識を得るためではなく、自分の仕事に対する視野や位置付けを知るために大学院に行く人が多いが、これは研究者志向といっていいのか。

【横内教授】
 研究者を志向するのではなく、修士論文でアカデミックなものに触れて、自分の置かれている状況を客観的に確認したいという意味である。

【金子座長】
 先生方におかれましては、お忙しいところありがとうございました。次に各委員から分野ごとの調査結果の分析の報告をお願いしたい。

【伊丹委員】
(経営学)
 この10年ほどの最大の課題は、社会人に対する高度専門職業人教育をどういう形で大学院教育に取り入れるかということである。日本全体として取組は進んでいるが、研究者養成と高度職業人養成を一つの大学院が持つ場合に、教育内容をどう仕分けるかという大問題がある。そこを意図的に仕分けている大学院はかなり少ない。その社会的ニーズがどのくらい大きいか疑問であるが、2つを分けてカリキュラムを作らざるを得ない。そのため、専門職大学院もできたが十分ではなく、高度職業人養成コースに入った学生の不満がたまりつつある状況であると感じた。

【橋浦委員】
(文学)
 分野間でそれ程ずれていないと感じた。国文学なので海外との連携や共同研究はやや遅れているが、学問の性質上によるものであり、慎重な見極めが必要である。それから、教育体制が横断的とあるが、漢文学や国語学との交流で、果たしてそれだけで横断的と言えるのか疑問がある。ただ、領域が広いので、カリキュラムで横断的に設定するのは難しい。コースワークでも自分の専門性を設定するのが難しい。文系全体の話で、産業界とは関係ないという意見が多かったが、産業界へのアプローチ、産業界がどう見ているのかを議論することは必要であると思う。文学は行き詰っているという意見も出てきたが、必要であり、盛り返さないといけない。

【佐藤委員】
(史学)
 修士論文の位置づけが、課程博士授与のための潜在的なネックになっている印象を持った。修士論文のテーマがあまりに壮大になりすぎている。これをクリアした後、博士論文を3年間でかさ上げするのは非常に大変である。修士論文と博士論文の関係を見直さないといけない。西洋史の場合、語学の修得が必要で負担となっている。国際的に見ても日本の修士論文はレベルが高いと思うが、修士論文の位置づけを見直すことが必要であろう。また、西洋史の話をすれば、教育のシステムに教育のツールが欠けている。生の研究文献やギリシャ語、ラテン語が必要になるが、言語や文書学等の必要な講座がほとんどなく、ヨーロッパへ留学しないといけない。そうでないと研究者を育てられない。海外とも競争できない。高度な補助科学的な分野を大学の講座に設定しないといけない。また、多くの大学で口述諮問を公開しているが、良いことであると思う。審査される側が、シビアな状況に追い込まれることにより、その知的緊張感の涵養は重いものである。審査を行う専門の部屋が必要である。

【本郷委員】
(史学)
 修了後の進路を見据えた場合、博士後期課程と博士前期課程までとを、カリキュラムも含めて分けて考える必要があるが、明確になっていない。修士課程の位置づけと修士論文の意義も大学によってばらつきがある。自分の経験から照らすと、修論の作成が大変で、課程博士は誰も取らなかった。そういう旧態依然とした価値観は今でもあって、修士論文できちんとしたものを書いて、博士課程で公表論文を2本くらい書いて、それに加えて2~3本の論文をまとめて博士論文を書くのが、一般的な指導方法であると思う。そういう意味では、修士課程は研究者育成という観点でも重要な役割となっている。
 昨今の高度職業人養成コースなどの大学院の新しいあり方が、必ずしも5年制を前提としてしないので、それに合った修士課程のバリエーションを考えていく必要がある。今回の調査を見る限り、全体的には研究者養成のことしか書かれていなかった。
 リベラルアーツ的な専門に特化しない教育を大学院で展開すべきという指摘があったが、学部でやるべきものであり違和感を持ったが、多様化している中で研究者養成だけに特化しないのであれば、そういう視点も必要になるであろう。修了後の進路をにらんだ上で、カリキュラムやコースの内容を作り、それを外部評価と自己検証により常に確認するシステムが重要であると考える。残念ながら、前期課程の到達度の検証は、修士論文でしか確認できていない。ドクターは手放しであり、学生の検証ができる大学はほとんどない。検証する仕組みについて検討が必要である。

【吉田委員】
(言語学)
 国内で博士号を取る確率が低い。言語学は大学院に在学中に留学して、そのまま海外で学位をとる人がかなり多い。もう少し国内の大学が内容を充実させて、体制を確立する必要がある。分野の特性として、理論と応用が混在しているので、産業界との結びつきについて、半数以上の大学は分野の特殊性から関係ないといっているが、個人的にはそうではないと思う。認知科学など必要な分野もあるが、認識されていない。言語学だけの問題ではないかもしれないが、海外に学生を連れて行く取り組みを行うには資金的な問題が大きい。また、留学生の受け入れは比較的少ない。日本に来るのではなく、出て行くことが多い。幅の広い複数領域から成る分野なので、言語学の分野とはいったい何なのか、という体制の再構築が必要。

【小池委員】
(教育学)
 人社系と理工系との違いは、課程の内容というより、時間との戦いがあるかないかであると思う。例えば、生命科学は時間との戦いで、研究者、教員、学生のいずれも時間が遅れた仕事に価値はなくなってしまう。どこまで専門性を持っているかということで評価されない。その中で課程制の大学院に問題が生じている。つまり、教員からすれば大学院生がいないと研究が進まないシステムの中で、博士が量産されている。就職はむしろ理系のポスドクの方が厳しいかもしれない。
 今回の議論を聞いて思ったが、人社系は時間的な余裕がありうらやましい。就職の問題はあるが、研究職という意味では、時間に追われない中身の濃い議論ができる。ただし、現在の教育システムの中では、他の分野や高度専門職業人との接点をどんどん遠くしてしまっている。人社系のいくつかの分野は、課程制という仕組みがなじむのか疑問がある。修業年限も無視されている。
 課程博士と論文博士との関係で言うと、大学教員を採用する側としては、出来上がった業績をもった人間より、教員養成の場で活躍できるか否かを考える。専門の勉強を極めると応用が利きにくいという矛盾がある。
 時間軸を除くと、人社系と理工系は同じ問題を抱えている。課程博士において、期限内で学位の基準を決めて、社会に送り出すシステムを作らない限り、問題は解決しない。教育学では、博士論文の水準についていろいろな考え方があり、課程博士の概念を取り込めていない。もう少し時間との戦いを意識した方がいいかもしれない。

【樋口委員】
(経済学)
 中教審の答申を受けて改革を進めている大学は多いと感じた。人材養成目的の明確化等の制度改革を進めている。ただし、学生数の多い大学にはコースワークは有効であるが、小さい大学は教員の数の問題もあり、限界がある。教育についても規模による格差がある。小さいところが生き残るためには、社会人を受け入れる。経済学の社会人の受け入れは、行政の人間を受け入れているのが多いと思うが、同じ学科の中で違うタイプのコースが設けられていて、果たして上手くいっているかどうかわからない。これらの改革によって、質的には高まっているかもしれないが、志願者、進学者の増加にはつながっていない。
 大学院を終わっての就職が魅力的でないので、この点を何とかしないと問題の解決にはつながらない。産業界との連携は分野が限られており、例えばシンクタンクや行政とのインターンシップはほとんど見られない。海外のシンクタンクと比べて、日本は院卒が少ない。学部卒で十分とされているが、高度専門職の能力を評価する仕組みを作り、その評価に耐えられる人材を育成することが求められている。
 大学教員のポストが減っている中、若手研究者の雇用が不安定になっており、学生に進学を勧められない状況である。一方、全ての調査大学で、博士課程の標準修業年限内の学位授与率が50%以下になっており、これを引き上げるとすると、審査基準を下げることになるので、基準を担保しながら授与率を上げるのは至難の業である。
 博士論文の審査について、多くは指導教授が主査となっているが、フェアレスなので複数の教員で見るような仕組みを設ける必要がある。経済的支援を受給している学生が減少している大学の方が、増加している大学より多いのも問題である。海外と競争できない。

【山田委員】
(社会学)
 中教審の答申について、外形的には、産業界との連携の部分までは比較的取り組みが進んでいる。社会学は、コア科目と周辺科目が分けやすいので、コースワークが比較的しっかりしている。博士の学位取得までのプロセスも明確化してきている。ただし、学位授与率は低い。旧来ながらの考え方があり、時間がかかると感じた。産学連携はあまり関係ないが、企業ではなくとも、市民など社会との連携が必要になる領域であり、フィールドワークをしながら実践的な知を磨くことができる。ただし、その点はまだ弱い。
 高度職業人を意識して、入学後に前期課程で職業人養成コースに行くよう指導している大学もあるが、多くの大学では企業でも使えそうな人材養成目的を掲げている。こういう点からいうと、前期課程を「高度職業人育成」と明確にすることができると思うが、できていない。前期課程から後期課程に進学する学生は40%未満であり、企業への就職者が増えてきていることを考慮しても、前期課程を明確化できるのではないか。

【角南委員】
(政治学)
 中教審の答申では国際的な大学院教育ということが言われているが、グローバルスタンダードを考えると、サンプルのばらつきが大きい。政治学として博士課程が成り立つための適正規模に達していない大学もある。アメリカでの経験から言うと、博士課程を成り立たせるためには、3つから4つのサブフィールドがあって、適正試験を行うなど、そこまでスケールで取り組んでいる大学は1つか2つしかない。
 ある程度の規模がないと、学生同士のディスカッションも成り立たない。社会との接点については、シンクタンク等のキャリアのマーケットが大きくないので、なかなか難しい面もあるが、いくつかの大学は社会人と研究者コースで分けているところもある。ただし、これは一般的な傾向にはまだなっていない。
 一人の先生がいろいろなことを教えている状況で、苦労している現場が多いと思う。一人で厳しいのであれば、複数大学で連携(単位互換など)をした方がよい。

【田中委員】
(政治学)
 外形的には取り組みが進んでいるが、中身を見ると疑問がある。学問の特徴として、政治哲学など人文科学に近い分野がある。一方、国際政治学のように国際的なパラダイムに乗らないと業績が上がらない分野もある。そこでの教育の体系性は大学によってばらばらである。 2つ程度の大学はコースワークがしっかりしているが、それがないと方法論があるかも分からない。あとは徒弟制度で、非常に優れた教員によって成功する例がまばらにあるだけである。標準化はまだまだされていない。
 大学院生の活気があると言われている専攻は、複数教員による研究指導、公開の論文中間発表、合同審査など、教員同士の対話があり議論しているところである。個人だけでやると単にアメリカのパラダイムに乗って頭脳流出するだけなので、教員同士が話し合うことにより体系性を高め、日本の政治学が発展する。

【金子座長】
 大学院の学術的な教育と職業能力の養成という2点について、具体的に教育課程で組み合わせることは、複雑で困難である。専門職大学院が隣接領域である場合も難しい。
 また、修士・博士論文の標準の設定について、多様な考え方がある。先端的な優れたものでないと出せないとするのか、あるいは基礎的なものとするのか。人文系の特色として、外国の大学の学位をどう考えるのかということも、分野によって必要である。
 さらに、中教審で議論されてきた大学院改革の方向性に、外形的には趣旨どおりに進んでいる。ただし、各大学独自の条件があり、必ずしも抜本的な解決には至っていない。個々の教員の意識の変革には差がある。
 事務局と相談して、次回以降どのような議論をしていくかお伝えしたい。

○事務局より、今後の日程等について説明があった。

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-- 登録:平成22年07月 --