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大学行財政部会(第7回) 議事録

1.日時

平成22年6月21日(月曜日)17時~19時

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.出席者

委員

(委員)安西祐一郎,荻上紘一,金子元久,郷通子の各委員
(専門委員)石弘光,小原芳明,草間朋子,佐々木元,柘植綾夫,田中愛治の各専門委員

文部科学省

小松高等教育局審議官,義本高等教育企画課長,藤原大学振興課長,永山国立大学法人支援課長,村田私学行政課長,樋口大学改革推進室長,水田国立大学法人評価委員会室長,圓入国立大学法人支援課課長補佐,山田高等教育政策室室長補佐 他

4.議事録

(1)大学分科会副分科会長の荻上委員が進行を行った。

 

(2)文部科学省から,「新成長戦略」について報告があり,意見交換が行われた。

【田中委員】
 「リーディング大学院」の構想ですが,工程表では世界トップ50に入る研究教育拠点を100以上構築と言われています。これはそのまま現在のグローバルCOEの継続ではないと思われますが,目指すところは国際的な競争力のある研究者,実践にも役立つような研究者の育成と考えてよろしいでしょうか。

【義本高等教育企画課長】
 研究者の育成もあわせまして,成長分野に対応した人材ということで,アカデミックの世界だけではなくて,世界の博士課程の人材の需要を考えますと,産業界,いろいろな分野で活躍される,そのリーダーたる人材を養成するような分野を考えて拠点形成を図っていこうというねらいです。もちろんグローバルCOEを今後どうするかということも視野にありますが,それだけではなくて,成長分野とか産学連携も視野においたプログラムということになろうかと思っております。具体的な中身はこれからのものです。

【石委員】
 感想として,新政権の内閣ができたから,このようなアドバルーンを上げてやりたいってよくわかります。まさにグランディオズなアイデアであって,かたや大きな固まりとしてやらないといけないっていうことがあって,現実には,多分,こんなの全部やったら財政的にパンクしてしまうわけです。その間に財源が必要です。
 それで,実際に政策を担当する文部科学省の皆さんから言うと,どう受けとめているのですか。
 田中委員がおっしゃったように,「リーディング大学院」等々みたいな,こういう個別のものは芽が出ているのでしょうが,体系全体からいうと,かなりでかい宿題みたいなもので,どこから手をつけていいのかわかりません。それで,我々の大学行財政部会にあえて絡めて言えば,我々がここでやろうとする話と,この新成長戦略との間に,かなり距離があります。だから,一番いいことは,これはこれで今の政権が言っていることだから,頭の真ん中でも隅でもいいからとめておいて,こういうことが考えられるということでいいのか。ただ,現実に我々がこれから論点整理をやっていかないといけない中,もっと個別の,極めてポイントを突いた話をしていかないといけないわけなので,その辺の絡みがよくわかりませんでした。

【小松高等教育局審議官】
 一つはこの枠組みに見合う財政構造を考えないといけないと思います。
 これは,行政とか政策というよりも,政治的な部分が多いので,今,盛んにアドバルーンを打ち出しておられます。それとの関係で政策手段は選ばなければならないということはそのとおりだと思います。
 細かい話との絡みで申し上げますと,例えば今,田中委員からお話が出ました「リーディング大学院」でも,しからば,GPとかCOEというのは,今回ご議論いただいてきております大学行財政部会のまとめでも,今までの効果は効果として積極的に評価はするが,いろいろ問題もあるということになっているわけです。そういった形での,一種のそれがグッドプラクティスであったり,拠点であったりするというような形で波及を図っていくということで今まで進められてきたものが例えば終期を迎えていくとか,終わっていくということになると,そういうものをどう活用するかとか,財源とか,そういった話に最終的には,詰めていかないといけないと思われます。
 ただ,方向としては,成長をもって戦略とするということですから,その時にどの方向にメリハリをつけるかということで言えば,工程表ですと,科学・技術・情報通信立国戦略,全体的には人文社会も含めて,第2次大学院振興政策要綱をつくって,その中で「リーディング大学院」を選んでやっていくということになります。こういった辺りは中教審としてメリハリをつけていこうということで,財源をどこまで確保するかということは,また別ですが,ある意味では地面に足をつけて,工程表にものっているところもあります。あるいは,工程表の雇用人材戦略では,二,三年以上かかるものとして大学の就業力向上プランがあります。これも設置基準を改正し,これをプラン化して効率的・効果的にやっていったらいいのではないかということで,現に立ち上がりの予算をセットしたものです。このあたりと財源のバランスを見ながら,来年の要求を考えていくということになります。

【義本高等教育企画課長】
 補足しますと,冒頭に申し上げましたようにこれは10年間を見据えた戦略を立てていこうというものです。当然,今の内閣においては施政方針演説の中で総理から財政規律をしっかりしていく。ペイアズユーゴーの原則を立てながら,税制についても抜本的な改革を並行して進めていこうという流れの中で,来年考えるもの,あるいはもう少し中長期的に考えるものも視野に入れながら取り組んでいく話になると思います。特に来年は,先ほど申しましたように限られた財源の中において優先度を判断していく上で,例えば21のプロジェクトについてはある程度,それを一つの目玉としての打ち出しをしていくことなるかと思います。それもあわせまして,全体の財政規律の中においてどの程度の財源を確保していけるかということですので,来年1年間で完結するものではなく,むしろもう少し視野を置きながら取り組んでいこうというものだと理解しています。

【石委員】
 これは,中身に関しては,全面的に文部科学省が関与しているのでしょう。

【小松高等教育局審議官】
 そうです。ただその前に,プロセスとして昨年末に骨子が出ております。その骨子の枠内で,各省からそれぞれ意見を出して,その枠にどこまで収まっているかを,かなりぎりぎりやりました。それから,政治主導で,政務三役の方が実際に出てきて議論されてということを繰り返すということがありました。そういう意味では責任があります。それで,全体の財政規模と重点の置き方の組み合わせで,どこまで迫っていくかがこれからも課題になると思います。

【佐々木元委員】
 今の科学・技術・情報通信立国戦略には,非常に重要なテーマが掲げられていて,それなりの志を持ってやることは非常に大事だと思います。あと,他の府省との足並みをどうそろえていくことが必要ではないでしょうか。例えば,国立研究開発機関の問題にしましてもリーディング大学院をつくるときの地域における環境,例えば,筑波大学からしたときに産総研の存在は非常に大きい状況ですので,その辺をどう調整していくかという横の連携についても配慮していただくことが大事だろうと思います。もちろん,産学官連携も念頭に置きながら,どこから手をつけるかも,戦略的対応が必要ではないかと思います。

【義本高等教育企画課長】
 ご指摘の点は非常に重要な点だと思っていますし,既に筑波大学は,経済産業省ともリーディング大学院の構想について話をする中において議論として出ております。当然,例えば地域内部の機関の連携とか,そういうあり方についてもあわせて,考える方向も含めて,今,議論しているところです。

【柘植委員】
 この報告を聞いていて感じることは,一つ一つのアクションにしても,否定されないと思います。私,自分自身に聞いて,何かこれでほんとうに,日本全体がどんどん悪くなりかねない。負のスパイラルがプラスのスパイラルになるというメカニズムがこの中にどう書かれているかという視点で見ると,何か足りないと思います。国民の皆さんもこう思うと思います。大学の行財政の面で見れば,我々の目指しているところは世界で勝てる大学,これは国公立であるし,私学をつくることが,大学行財政部会としての我々のミッションです。そういう意味で見ると,先ほどの工程表の科学・技術・情報通信立国戦略では,それぞれ施策が挙げられていますが,この中で今の教育なり科学技術の投資,あるいは国を支えていくイノベーションのメカニズムがきちんと回っていくだろうか。マイナスのスパイラルがプラスになるだろうか。工程表を例にとってみても,あまりにもそれが見えていないと思います。
 つまり,別な言い方をすると,センターピンは何だということです。これをしっかり回せばそれぞれの施策はうまくプラスの循環で回っていくという,センターピンのデザインがされていないからではないかと思います。例え話ですが,今の工程表では組織改革,国際化,人材強化ということで,これは言うならば教育と科学技術研究,経済的な価値にするというイノベーションの視野を入れた上で,特に人ということです。それでは,センターピンができ上がっているかと見ると,工程表の科学技術イノベーション戦略本部で常にそれを回していくことがエンジンになるかと思います。ここに,教育が全然ないのです。この科学技術イノベーション戦略本部の設計が,教育も入れて毎年ローリングしていくことで,エンジンとしてたくさんの施策を生きた施策,プラスの施策になっていくメカニズムは科学技術イノベーション戦略本部プラス教育を入れた一体の戦略本部ではないかという感想をもちました。

【小原委員】
 「新成長戦略」は決まっているということですが,これを見ると理工系だけが大学で,人社系は選択から外されているという印象があります。これでは,高等教育全体としての普及についての取り上げがないような気がします。リーディング大学院といって,よく見れば自然科学とテクノロジー中心という気がします。高等教育全体として,何か成長戦略にかかわることがあってもいいのではないかと思うのです。しかし,このままですと,理工系だけでそれ以外の大学生は適当にという感じがしないでもないし,中小の大学は,2020年までに店じまいをしておいたほうがいいのではないのかという,極端な話,そういう感じがしないでもないです。実際,学生の大半は非理工系ですから,もう少し非理工系の大学にも何か一言あってもいいのではないかという気がします。

【藤原大学振興課長】
 今,理工系ばかりが強調されているのではないかというお話でしたが,今の話は科学・技術・情報通信立国戦略という部分ですので,主として理工系が中心です。工程表には雇用・人材戦略がありますが,こちらではまさに大学教育全体の人材戦略という形での記述があるわけです。そこで,世界と日本を支える人材を生み出す高等教育というテーマのもとで種々の記述があり,その中には先ほどご説明いたしました大学の就業力向上の取り組みがございますし,そのほか,社会人の学習支援など,広く大学教育に関する記述があるということで,ご理解いただきたいと思います。

【義本高等教育企画課長】
 特に,リーディングについても,店先としては科学技術ですが,今後のグローバルに活躍できる博士人材を考えますと,理工系だけではなくて文理融合も含めた新しいタイプも考えなくてはいけないという支援もあります。その辺は今後,今日のご意見も踏まえながら具体化する中で考えていきたいと思います。
 また,先ほど申し上げましたように,例えば大学間の連携によって地域を支える人材,高等教育の機会の保障,あるいは今,ご議論いただきましたような就業力の問題ですとか,社会人の受け入れ等,これは理工系・人文系にかかわらず,あるいは都市部の大学にかかわらず,地方も視野においての政策展開も考えていきたいと思っているところです。

【小松高等教育局審議官】
 今のお話ですが,昨年12月に骨子として,当面の成長戦略の軸になってこの枠内で考えようということで示されたものは,確かに科学技術という枠はあっても,人文社会という枠はないですから,そういう意味で言うと,表現的にはそういった枠組みを尊重しながら進めていくことになっております。一方で,メリハリをつけるときにこういう考え方とあわせながらやっていかないといけないとしても,今,両課長から説明いたしましたように,例えば地域との連携といったさまざまな切り口もあります。
 そこで,私どもとしてはまさしくこうした動きと,中教審などでやっていただきます大学教育そのものとしてのあり方や重点を,論点として今までのご議論をもとにきっちりまとめて,その交差点できっちりといろいろな政策を打てるように,できるだけ工夫したいと考えておりますので,その点,よろしくお願い申し上げたいと思っております。

【金子委員】
 今の点ですが,「新成長戦略」の中で高等教育に関連しているところがあると思います。
 一つは,ハイテク,それから国際化,あるいはエコ。そういった先端分野で成長が期待されています。それに対して,そういったことに直接役に立つ人材をつくるためにリーディング大学院があるというこの筋が一つあります。
 もう一つは,特に健康関連等々を中心として,福祉関係全般にかなり具体的な職業に対する需要ができているはずであるということです。そこに人材が吸収されるという観点から,職業教育というのは一つ,筋になるだろうということで,この観点から,NVQといったことも言われているわけです。ただ,この2つの筋だけですと,先ほどのご意見のようにどうも抜けているところが,量的には非常に大きいところが抜けてしまうということになると思います。ただ,そこはほんとうに成長戦略と関係ないのかと言えば,私は非常に成長戦略と関係あると思いますし,特に一般的な大学の卒業生がどのような形で就業していくかということは非常に重要な観点で,それは必ずしも,例えば先端技術分野でもないだろうし,健康関連だけでそれだけ全部吸収されるわけではないと思います。そこをどう考えていくのかというところは非常に重要な論点だと思いますが,成長戦略と言いながら実はかなりそこが抜けているのではないかと思います。
 もう一つ,つけ加えたいことは,労働関係に関してはかなり具体的なことがあちこちに書かれていて,教育の論理で考えていたことと必ずしも整合性があるわけではないことがかなり述べられていると思います。雇用・人材戦略の「出番」と「居場所」のある国・日本というところですが,何だかよくわからないのですが,ここだけ突出して具体的な目標が掲げられています。これは雇用戦略対話について合意されたものだということでしたが,この中で例えば大学のインターンシップ実施率100%ですとか,大学への社会人入学者9万人とか,何でこんな数字が勝手に出てくるのでしょうか。大学の立場から見て可能であるか,必要であるか,そういった観点が全然なくて,こういった数字が突然出てくるということは,私としては非常におかしいことだと思います。
 同時に,これに関連しますが,NVQはイギリスのものを参考にすると書いてありますが,NVQってどうしてできたかというと,イギリスは基本的に職業訓練の体系とフォーマルな教育の体系が複線型になっていまして,その間の職業資格の関係が全く連絡がつかなかったので,それを同一のフレームワークに入れようという試みでありまして,これはこれで,一つの論点であるかとは思いますが,イギリスでも決してうまくいっているわけではありません。結局,アカデミックな訓練と職業訓練を同じ枠組みに入れることは可能であるという前提になっているのですが,それはそんなに簡単にいくとは思えない。これは,やると書いてあるのですが,具体的にどのような形で高等教育に持っていくのか。
 しかも,高等教育関係でこれについて議論したことはほとんどないだろうと思います。こういったものも,異様に労働関係のところが数字が細かく,既に出てきてしまっていて,高等教育のコンテクストからほとんど,議論されていないことが出てくるのは,個人的に言えば非常に不満に思います。

【義本高等教育企画課長】
 基本方針を決めた枠組みとしては雇用人材戦略の切り口から入っていますので,なかなか教育が立てられなかったという制約もありました。結果として,雇用戦略の中において労働関係の数字が多く散りばめられているのは否めないところです。その中においても,先ほどキャリア教育・職業教育特別部会ですとか,質保証システム部会で創業力・就業力をご議論いただいたりとか,大学規模・大学経営部会で社会人入学という話があった場合,特に職業とのかかわりですとか,高等教育の機会を大学間が連携して,今までの18歳以外の層に対して提供し,広げていくという観点からも,私どもとしては一定の記述を盛り込みたいことがありました。その中で,結果としてこういう形になりました。ただ,先ほどこの審議会で申し上げましたように,あくまでも切り口ですので,本線としては中教審でご議論いただきましたような線にのっとって施策として展開したいということは,改めて強調したいと思います。

【荻上副分科会長】
 これは,閣議決定ということですから,これをもとにしてこれから進めていかれるということだと思いますが,我々としては中教審の議論などを最大限生かして取り組んでいっていただきたいと思います。

【安西分科会長】
 決まったことだからって感じなのですが,今までなかなかやれなかったことがいっぱい書いてありまして,そういう意味ではほんとうにできるのかという感は拭えません。多分,皆さんそう思われるのではないでしょうか。何か一つだけとっても,随分,声を枯らして言ってきたことがさらっと書いてありまして,それがほんとうにできるのかなということがどうしてもくるんです。でも,これは閣議決定されて,やるというのだから,私は今,金子委員が言われるように,この中からここは高等教育の議論の場ですので,高等教育のあり方というものを少なくとも取り出していただいて,こういう像をもう一回再構築していただきたいと思います。それぞれ散りばめられておりまして,みんないい言葉で散りばめられていますが,そういうことを是非,やっていただけないかと思います。
 また,大学生のマスが何十年も前に高等学校を出て就職していた人たちが今,大学に来ていて,それが大体,1年で40万人ぐらいではないかと思います。その人たちの質を上げることが,高等教育の大きな課題の一つだと思われます。これは閣議決定したものだからしようがないのですが,その上で,さっき申し上げました高等教育の将来像をこの中からつくっていただいた中に,そういうことを考えていただけないかということです。
 あと,今まで声を枯らして叫んできたけれどもなかなかできないではないかと言っておりますことは,博士課程人材の100%就職ということです。こういうこともさらっと書いてありますが,やろうと思ったらかなりしんどいことです。その一つ一つ,これ,どうやってやるのかなということが多いので,ぜひ,中教審側もそうでありますし,文部科学省側も頑張っていただければと思います。よろしくお願い申し上げます。

 

(3)文部科学省から,資料1について説明があり,意見交換が行われた。

【小原委員】
 前回も言ったと思いますが,「教育研究」と一言で言っている場合と,高等教育と言っている場合と,大学教育改革と言っている場合など,使い方がぶれていて,読んでいてわからない面があります。ですから,高等教育でいくのか,大学教育でいくのか,大学の教育研究なのか,もう少しはっきりさせる必要があるのではないかと思います。特に私学の場合,研究(リサーチ)よりも教育(ティーチング)を主としている大学が多いです。又,教育の場合は成果が出しやすいですが,研究の場合はすぐに成果が出ない。「教育研究活動の成果」という表現を使うと,どっちの成果を問うとしているのかわかりにくいのではないかと思います。この辺の使い方をはっきり区別したほうが,中小の大学にとってはわかりやすい文章になると思います。
 アメリカの高等教育のある学者から聞いたのですが,アメリカとの比較で,日本では研究活動を重視し,教育活動が軽視されているということでした。日本の大学の先生は,研究が主で教育が従であると良く言います。それに対して,アメリカの大学教員は教育が7で研究3の活動をしている。教育研究って一言で言ってしまうと,先生方は格の上の研究のほうへ流れていってしまって,ティーチングがおろそかになるという日本の大学が抱える問題から解決されないと思います。教育改革と言いながら,教育改革が進まないような枠組みになってしまっているのではないかと思います。
 これだけ大学生がふえた昨今,30,40年前のような研究主体の大学から,ティーチング主体の大学がふえてきているのですから,社会の変化,大学マス化,あるいはユニバーサル化に即した使い方をすべきだと思います。

【小松高等教育局審議官】
 前回,そのご指摘をいただいておりまして,今までのいろいろなご議論と踏まえますと,そのご指摘について2つぐらい,表現の上で考えないといけないということがあります。
 一つは,今のような人材育成なり教育について,ウエートを非常に強く置いておられる大学,それから,地域での人材育成なのか,それとも全国なり世界的な大学なのかとか,目指すところが違うので,そこを柔軟に読めるようにしないと先生がおっしゃったとおりの問題があると思います。片方で,大学の行財政を考えますと,公的な制度で,法的にも目的規定等がありまして,その中でどうするかということにも表現上,配慮が必要な部分があります。そういった面からいきますと,どちらに力を入れているかということはいろいろありますが,専ら教育だけをやる大学というのは法令上,考えられないということもあります。しかも研究と言っても,世界最先端のイノベーションをやるという意味での研究ではなく,学会に属したりして知識・技能の大学教育を保つための裏づけとしての研究,あるいは授業研究に当たるようなものを含んでいるところもありますので,教育と研究を一概に分けきれないところもあります。
 そこで,これはそういう解釈が許されればということですが,今回,その点については,資料1の「2 我が国の大学システムとそれに応じた政策展開」にかけまして,諸外国の状況という平面的な比較と,歴史的な比較をしております。3つ目の○で,明治以降の近代化,戦後の経済発展における人材養成,ここでは,教育か研究かを分けてしまうということを人材養成という形で,少し緩やかに書いています。その後の○に,大学は自分の自主性・自律性の理念に基づいて行い,その研究に裏付けられた教育は必要であるということを書いています。しかし,大学の中でも設置形態も異なれば,同じ私立大学なら私立大学であってもさまざまであり,非常に違うことを強調する形で,ご指摘の教育研究活動という言葉を入れて,そこを大事にしたらどうかと考えたということです。
 同じような形で,その下の中教審の答申のところに,平成17年の中教審の答申からここ数年間のことがもともと書いてありますが,この1行目か2行目の機能別分化についても,このような我が国の実情を踏まえてということで,実情に即した形で政策を展開することを少し強調して,その辺のバランスをとったらどうかと考えました。

【石委員】
 我々の大学行財政部会において,この種の議論をして,ここで論点整理までこぎつけたわけです。受け取る側,世間に対して,メッセージを発信するわけですが受け取る側から見ると,これは一体何が言いたいのかと,多分迷うと思います。メッセージの明確性という点から言うと,おそらく,期待している側から言えば,今,非常に国家財政が厳しく,教育費も削られていて,国立大学は絶えず,運営費交付金の削減に反対し続いています。私学も,補助金削られています。削られていく中で,それに対しての何か,ある種の明確な答えを期待しているのではないかという気がします。例えて言えば,デュアル・サポートをこのまま維持したほうがいいのかという話など,国公私立の3つに分かれる中で,一体,政府はどのような支援を続けていこうかということなど,その辺は,言いにくいのだけれど,何かある方向性を出してくれればいいのですが,そんなところのメッセージ性がどうも,伝わってこないと思います。
 これが,行き着く先は,大学教育をどういう形で国家財政で支援するかという形でなく,大学が自主的に自分たちで努力して機能別分化という形で特色を出して頑張りなさいというメッセージですね。議論しているからいいと思いますが,もう少し2つ,3つ,クリアカットなメッセージが伝わるようなのがいいという気はします。
 私は気になっているのが,前回から大分,修文があった箇所の,「現状と課題」です。基盤的経費への支援のところで,ここにきてにわかに,すべての文末のトーンが狂ってくるのです。「指摘もある」という文言が,やたらとここだけ目立ちます。これは,現状の認識ですから,何も指摘があるじゃなくて,及ぼしているで切っていいわけです。例えば,(ア)現状と課題の上から3つ目の○の,国立大学云々というところ,深刻な影響を及ぼしつつあるとの指摘もあるとか,その下に,影響が出ているとの指摘もあるとか。これは,腰砕けですよ。指摘があるとか,指摘されているなんていうのは全部取っても十分,文章は通じるし,そのほうがはるかにいいと思います。

【荻上副分科会長】
 全体が抽象的であるというご指摘は,今後の議論を進めていく上で生かしていくという理解でよろしいかと思います。

【柘植委員】
 今,石委員のおっしゃった話と根っこがつながっていますが,さっき,新成長戦略で高等教育分野について議論がされたわけですが,逆に,先ほどの新成長戦略はいいことがきちんと書いてありますけど,今までできなかったことがそう簡単にできるような設計図になっていないという,包括的な見方と同時に,それを高等教育,特に大学行財政部会のミッションに照らしてみて,この新成長戦略を一度,再構築したほうがいいのではないかという議論がされたわけです。つまり,それが今回の論点整理の中にビルトインされていないから,石委員の指摘があった。それは,我々が今まで積み上げてきた議論が欠けているということかもしれません。ぜひ,そういう視点で論点を充実させるべきです。
 具体的に言いますと3カ所ありまして,例えば,論点整理の「1 大学を支える基盤的経費への支援」の「(イ)今後の改善の方向性」ですが,最初の○で,次代を担う人材を養成するなど,本来的な使命を持っているとありますが,これは,当たり前の話で,何を今更と思ってしまいます。これをどういうふうに実行するかの設計図が「今後の改善の方向性」の中に書かれるべきで,それは全部が全部ではなく,高等教育は全部,新成長戦略に関係している話ではないことは,もう十分認識した上で,例えば,新成長戦略の中から引っ張ってきて,これを回して実行しようとすると,こういう設計図になるという話になっていく。それは,実はその下の○で,現下の厳しい財政状況とあります。このパラグラフの最後に結局,その資源を適正に管理し,かつ,最大限有効に活用すべきことに留意する必要があるとあります。結局,これも方向性ですが,ここのところに,教育と研究に対する投資,それが社会的な貢献をしていく,イノベーションなど,好循環をもたらす一種のセンターピンの設計図のところが明確にされて,実はその部分は新成長戦略の高等教育の部分の設計図でもあるという見方になると思います。
 2番目は,「2 国公私立大学を通じた大学教育改革の支援」の(課題)のところで,今のところを避けてしまっているなと思います。4つ目の黒ポツに,成果の把握・分析等々がありますが,ここのところは教育と研究と社会貢献,イノベーションへの参画というリンケージの好循環という面ができていないという課題を,私は指摘したいと思います。それは,実はその中には学生への生きた経済的な支援というのが(2)学生への経済的な支援のところの検討課題にリンクしているわけです。優秀な学生が,経済的な不安を抱えずに大学院進学を果たし,自立して教育研究活動に参画し云々と書いてありますが,ここの部分はもう少し工夫したほうがいいのではないかと思います。つまり,教育面でも生きた経済的な支援。単なるパン代に消えるのではなく,大学院にいる間に社会の中で生きていける能力を与える一つの手段としての経済的な支援ということを,もう少しエクスプリシットに書き込まないと,真意が伝わらないのではないかと思います。
 もう一つ,「2 国公私立大学を通じた大学教育改革の支援」の「(イ)今後の改善の方向性」のマル2で,「世界レベルの卓越した教育研究拠点形成への支援」とありますが,ここも今までと同じではないかと思います。欠けているのは,イノベーションへの参画とかイノベーションへの貢献という評価も,教育と研究とあわせた拠点形成への支援ということの,今後の検討課題だと思います。先程,小原委員がおっしゃったように,すべての高等教育がイノベーションにつながるなんて,そんなことを私は決して主張しておりません。それと切り離して,イノベーションと全く関係ない教育は当然あるわけで,研究もある。それは,十分理解しておりますが,それを理解した上でもマル2の中に,イノベーションへの参画,貢献が当然,指針,評価軸の中にも書かれるべきだと思います。

【田中委員】
 この論点整理では,私立大学のあり方,その財政が厳しいということを指摘いただいています。先ほど,石委員もおっしゃっていた,現象する影響が出ているという厳しいことは,国公私ともに3つともあります。その中で,大学生のうちの7割は私立大学の学生で,大学の数の7割は私大であるということで,基本的に私立大学がなくなれば,我が国の高等教育は支えきれないということが現実だと思います。それは,前にも申し上げたことです。
 それで,大学を支える基盤的経費の話ですが,現在の政権を支えている政党の国会議員の方たちの中には,経常費補助でありますとか運営費交付金も減少していますが,その私立大学の経常費補助はいらないのではないかとおっしゃる方もいらっしゃいます。その考え方の裏には,それは学生個人に奨学金を払えばいいんだということをおっしゃるわけですが,個別の消費者に支援するだけでは済まないということはあります。インフラストラクチャーをきちんと整えることが必要なわけですので,それがもしほんとうに行われれば,私大は授業料を1.5倍ぐらい上げないと多分,生き残れないわけです。ですから,幾ら奨学金が出したとしてもそんなに高い授業料でやれるかという問題も出てきます。そのことを考えていくと,奨学金を出せば済むという問題で,やはり経常費補助というのは非常に重要であると思います。ここで,減っているということを指摘していただいていて,そのあと,「今後の改善の方向性」として,現下の厳しい財政状況であってもというところで,大学の継続的・安定的な教育研究活動を維持し,発展させるために必要な基盤的経費を確保することが求められるということはおっしゃっていただいていますが,もう少し踏み込んでいただきたいという気がしております。
 それから,設置形態を問わず,役割・機能分化というものはかなり出てきている。国立大学の中でも,かなり機能分化がありますし,私立大学の中にもある。地域を発展させるところとか,職能教育をする大学であるとか,高度な研究者の要請をする大学というのは,やはり国公私を問わず分かれてきていると思います。それにあわせたイコールフッティングにおける評価が必要で,経常費補助もそれにあわせてしていく必要があります。ですから,運営費交付金の補助も同じだと思いますが,同じ基準で見ていく必要があるのではないでしょうか。国立大学では,世界最先端の研究をする大学と,職務教育をして一般的な教養人を輩出する大学とに分かれるでしょうし,私立でも同じだろうと思います。地域発展に貢献する大学も,国公私ともにあると思います。それぞれについてのそれなりの評価と支援があってもいいんではないかということはあると思います。
 ここにきて,あまり大きく変えることはできないと思いますが,もう一歩だと思っています。それは何かと言うと,国公私ともに大学は主体的にどのカテゴリーで,どの方針で生き抜くかということを自覚的に見つけるべきで,自分たちで選ぶべきであって,選んだところのカテゴリーに合わなければ支援が受けられなくてもしようがないと思いますが,選んだところで生き抜いていき,その選んだカテゴリーでの支援が必要ではないかと思います。設置形態問わず,あるべき機能分化の担うべき機能を目指したところに対しては,その尺度で評価して支援していただくということが必要ではないかという気がします。
 それがないと,今後の日本の私立大学は淘汰もできなければ生き残ることもできず,全滅するような感じがします。生き残るところは生き残って,淘汰されるところは淘汰されるということは,国公私ともにあるんだろうと思っております。

【佐々木委員】
 先ほど,柘植委員が新成長戦略との関連について言及されましたが,私もその点については同感でした。迫力を出すという意味から,新成長戦略に取り上げられている内容は,共通に使われる言葉にすることが1点です。
 あと,具体論的な話ですが,大学を取り巻く環境の変化への対応の上から3つ目の○のところで,産業構造の転換に幅広く対応できる知識・技術という文言は,具体的にどういうことかということもあるんですが,私の考えでは,理系・文系という垣根がそろそろ低くなってきたのではないかと思います。例えば,当社の場合,ソリューション事業への募集をする場合には理系・文系をとらないのです。今,そういう分野のニーズは非常に多いので,そういった意味合いもこの中に含ませておく必要があるんではないかと思います。
 あと,検討課題というのが枠に入っておりますが,その中の(例)というのは,まだこのほかにもありますという意味なのか,その辺は。(例)って,必要しょうか。
 また,検討課題の2の上から2つ目のポツ,大学院博士課程教育の実施についてですが先ほど安西委員がおっしゃった100%就職ということと非常に関係してくるところです。具体的にどうやって進めるかというと。やはり,多様性というものを考えていく必要があると思います。研究者としてやっていく人と,高度な研究技術者として企業に行く人。むしろ,経営というものにより特化していく人など。この前ご紹介しましたが,4月にNECの社長に就任した遠藤は,博士課程の出身者です。そういうキャリアパスもあり,そういう多様性をどう,担保していくかということでの産学官連携だと思います。ここに書かれていることの下のところが非常に重要ではないかという気がしておりまして,そこをどう表現していくかということです。それは,さっきの新成長戦略との関係をどう結んでいくかということではないかと思います。

【小松高等教育局審議官】
 委員の先生方のお考えにもよりますが,例というのは少なくとも,ここに掲げてあることは皆様のお話からしますと当然,検討課題です。けれども,もうこれだけですかということになると,かなりご意見もありそうなので,少なくとも今の論点だということです。これをやっていかないといけないんだと言えるのは,ここまでだけれども,まだほかにもあるかもしれないという意味は,かなり皆様のご議論にかかっていると広がりがありそうだなということで,例としたところです。これは例だから,これはなしでもいいのでないかという意味でもないと思っております。

【佐々木元委員】
 大体この項目を考えておけば,ほぼ必要なことはカバーできているのかという感じでしょうか。

【小松高等教育局審議官】
 後ほどまたいろいろ,おまとめがあるかもしれませんが,(例)としておくのは一つの方法で,かなり広がりを持たせるという方法と,もう一つ,一番はっきりしているのは,検討課題はこれだと決めていく方法と,例えば,「主な検討課題」とする方法もあろうかと思いますし,その辺は今日のご意見をよく踏まえながら,ご判断いただきたいと思います。

【荻上副分科会長】
 佐々木元委員,もっと重要な検討課題があるではないかというご指摘でしょうか。

【佐々木元委員】
 いや,私の感じでは,ほぼ検討課題は出し尽くされたのではないかと受けとめております。

【小松高等教育局審議官】
 今,幾つかご意見が出ている中で申し上げますと,これは,論点なので,かなり幅広く,まだこの先がありそうな感じのところで,とりあえずあまり拡散してしまわないように,今までご議論いただいたことを,審議経過報告もあるようですからまとめていただいていますので,若干あいまいなところがあります。例えば今,お話のあったところで申し上げますと,さっき,石委員からお話がありましたが,成長戦略といったときに何を取り上げていくのか,それも,成長ということに一つの焦点を当てることになりますと,政策的にどういう重点を取り込んでやっていくかという意味ではいろいろ考えながらやらなければいけませんが,大学なら大学教育のあり方,人材養成を全部カバーする戦略でもないということになりますから,おのずと,重なる部分と重ならない部分があります。
 ただ,先ほど石委員がおっしゃられた点で申し上げましたように,骨子ができてから肉づけをするのは各省庁でいろいろ考えろと言われたとき,私どもとしてはこういうふうにすべきではないかということをいろいろと政府の中で議論していくときには,具体的な分野などについてはまさに中教審とか,科学技術学術審議会とか,総合科学技術会議などでいろいろ言われているようなことを整理してみまして,大体,コンセンサスが得られているメインなところ,ここを追記しないといけないと思われるようなところを主張するわけです。特に,大学教育ですから,ここで今までいろいろ出ているような議論を,実はメインに主張しておりますので,そういう意味で今,佐々木元委員や柘植委員がおっしゃられましたように,必ずしも新成長戦略とコラボしていないわけでもなく,むしろ逆に,検討課題(例)とは,文言は多少違うかもしれません。例えば,中教審でご議論されているところなどをずっとひっくり返してみますと,「環境」とか「医療」を表に出しておりますが,これは新成長戦略的に言えばグリーン・イノベーションとかライフ・イノベーションと言われているものに近いと思っております。そういう議論を,ここでもいろいろな中で,東アジアのこともそうだと思います。随分,国際関係の部会でご議論いただいております。
 そういった意味では,かなりの程度,新成長戦略に取り入れられていることの項目のほうが,中教審の議論を下敷きにしているところがありますので,先ほど,尽きているのではないかとおっしゃっていただきましたが,実はこっちのほうが先に進んでいましたので,出てきた最終案を見ますとそんなに食い違っていないと思っています。
 長くなって申しわけありませんが,先ほど,小原委員からも絡むご指摘のありましたことでございますが,ある一定の,理科系なら理科系の分野だけで,トップだけをということになってもまずいと思いますが,新成長戦略の枠の関係などでそう見えるところもあります。例えば,前回のご議論を踏まえて書き加えましたが,最初の総論の3つ目の○のところです。前から書いてあります2つ目の○の中で,「国際社会においても」というところで,「東アジア地域の経済活動の一体化」ともありますが,グローバル化,その他の中で,人類全体で取り組まなければいけない問題が深刻化しているということを踏まえて,そういう時代にふさわしいリーダーシップの育成というところはある意味で世界的なものですし,人社・理工系は関係ないだろうと思いますので,政策とすると,新成長戦略で言えばリーディング大学院とか,そういうところへも吸収していくであろうと思います。
 一方で,産業構造がどんどん変わっていくという中で,必ずしも世界のリーダーとして大学生になっているわけではありませんが,産業構造に対応して,就業もきちんとするし,貢献もしていくという幅広い人材が全国的に必要だろうという,小原委員がおっしゃられた部分について,前回,その辺をきちんと書くべきではないかという話がありましたので,かたやリーダーシップの話,かたや幅広い知識・技術を習得できる機会ということを,時代の変転にあわせて書かないといけないというご意見は,ここで何とかあらわせないかと思っております。そういったバランスの中で,今日のご議論も踏まえて,論点をまとめることができればと思います。

【金子委員】
 その点でメッセージ性ということですが,このまとめは2つのトーンがあると思います。一つは,今までの大学財政はかなり不十分であるということです。これは我々がずっと言ってきたことです。それと,これまでの施策の中でも考え直さないといけないところもあります。そこも,しっかりやりましょうという形のトーンが一つあります。もう一つは何か,転換しつつあるわけで,新しい転換に向けて一定の投資をしなければいけないことです。そういう意味での投資として,新しい役割になるというトーンがあります。
 2つ目は,さっきからの話で,トーンをもう少し出したほうがいいのではないかという話だと思います。実際に,小松審議官がおっしゃるように既に今までそういうところも議論しているとは言えるかもしれませんが,文書自体のメッセージ性という観点からは,そういったトーンがライトを受け取ってもらえないといえますので,そこも非常に重要です。ただ,そこはかなり議論が必要なところもあるわけで,言ってみれば,例えば国立大学に対する補助金とか,経常費補助金を,もう少し目的を明確にしたような補助金に切りかえていくことも,もしかしたら少し入ってくるのかもしれません。1点目は明確なトーン,2点目はトーンを少し出していってもいいのではないかという議論だと思います。
 今,小松審議官がおっしゃっていた冒頭部分ですが,これはこの間も言ったのですが,2番目の○のところは問題が深刻化しているということを指摘していますが,深刻化しているところだけで切れるのではありません。今出されている新経済成長戦略をそのまま使う必要はないと思いますが,これに対応して新しい産業構造の転換,新しい社会の構築が課題になっているということを,もう少し積極的にいくことはできるのではないかと思います。それに対応して,高等教育の役割は非常に重要になっているので,それに向けて社会的な資源を振り向けていくことは重要であるというスタンスにすれば,今言ったようなニュアンスが少し出てくるんではないかと思います。
 私は,新しい産業構造に向けて大学教育の質的転換,これも何回も出ていますが研究だけではなくて教育のほうでの質的転換が非常に重要だというのが出てくればいいと思います。言葉づかいも,ここの新しいリーダーシップの育成,産業構造の転換に幅広く対応できるというのは,消極的ですね。「支える」とか,「推し進める」とか,そういうニュアンスをもう少し入れていくことはできないものでしょうか。

【小松高等教育局審議官】
 今のご指摘の,冒頭の3つ目,4つ目の○は,前回の金子委員のご指摘に何かこたえる文言を入れるのかなと思っていますが,要するに十分あらわれていないということだと思いますから,それもまた,表現などいろいろ検討いたします。

【田中委員】
 今,金子委員の話を聞いていて私が思ったのは,7回のこの部会の会合を経て,私たちはかなりわかることが共有してあるわけです。例えば,機能分化が必要であるということ。設置形態問わず機能分化が必要ということは,何となくわかっているわけです。ところが,読む方にはそれが何と何の機能分化かは,この論点整理からでは明確に伝わらないかもしれない。すなわち,先端研究を支える人材を育成するとか,地域の活性化を支える人材を育成するとか,日本全体の職能人を育成する,もしくはその教養人を育成するとか。海外に輸出するとか,様々あると思うのですが,どういう機能分化かということは,あまり具体的に言っていないのです。こういう人材が必要だということはおっしゃっていますが,大学が機能分化を目指して,どこを目指すかということを選択するところまで踏み込んでいない。なので,我々では何となくわかっていますが,これを読んだ方にはそこまで,大学が変わっていく必要があるというふうに問われているとは受け取らないかもしれないという気がします。
 私も,先ほど申し上げたのは,私立大学でもそういう機能分化を自覚的に選びながら生き延びなければならないし,淘汰されるときは淘汰させなければならないと思っています。それでこそ,ご支援いただく価値もあるので,経常費補助が必要なのは,何でもかんでもくださいということではなくて,自覚的に選んだものが生き残っていく中で,それに値するものが支援を受けるべきなんだということぐらいまで踏み込まないと,なかなか大学行財政部会の本来の目的に到達しないのではないかという気がしています。

【小原委員】
 教育の問題を考えていく上で,私立大学は財政的な問題に直面しています。しかし,その根底にあるのは,大学が提供するイスの数が志願者を上回ってきているところから出ていると思います。この需要と供給のアンバランスを行政上,どう解決していくのか。ここも,触れておく必要があると思うのです。要するに,子どもの数が減っていますから,マーケットが小さくなってきている。しかし,全体としてはもっと大きなマーケットを想定しているのです。
 ですから,財政の問題の根本にある需要と供給アンバランスを考える必要があると思います。その上で,頭はいいけれどもお金がない子供たちには奨学金という手があるということです。それに対して,お金はあるが頭が軽い人はどうするのかということですが,それは,経営上いいから取り入れてしまう。それは,高等教育だけの問題ではなくて中等教育,初等教育にも影響を及ぼしてくる問題です。高等教育だけが教育改革をやったって,12年間の教育に対し何もやっていなければ,お金で学位を買うという構造ができ上がってしまいます。
 大学教育をやるのであれば需要と供給がアンバランスになってきたと同時に,小学校から高等学校までの教育をきちんとさせなければならないというところを含めて,大学教育の改革ができるのではないかと思います。行政上,どのようにしていくのかも課題として触れておくと,私立としてはここから10年考えていく上で,どうすべきであるかがはっきりわかってくると思います。それが,何となく教育が消費的なものになってくると,金のある連中に提供するということになってしまうということになります。一方成長戦略との絡みになってくると,教育を投資として見ていかないと教育を推進していくことはできません。そうでないと,大学が持っている投資的な機能が薄れてきてしまうのではないかなと思います。人数のアンバランスを,行政上,どう解決しようとしているのか触れていただけるといいのではないかと思います。

【草間委員】
 大変読みにくいと思いつつ読ませていただきました。例えば,「(1)大学の組織的活動に対する支援」ですが,まず一つとして,大学に対する財政的な支援として,競争的資金と基盤的資金がありますということをきっちり書いたほうがわかるのではないかと思います。それで,そこの中で大学教育改革の支援と言っておきながら,先ほどもご意見がありましたように「教育研究活動」とあります。教育研究なのか,教育なのか,研究なのかといったところはわかりにくいと思います。だから,そういう意味では国の支援としては基盤的な経費と競争的な資金があって,競争的資金の事業としてこんなのがありますという形で書かないとわかりにくいと思いました。
 先ほどの検討課題(例)とあったりすると,一体私たちがどういうメッセージを世の中に送ろうとしているのかもわからなかったりするので,もう少し,大学行財政部会であることを意識して書いてもいいのではないかと思いました。

【荻上副分科会長】
 大学行財政部会というのは大学分科会の下に設けられている部会ですので,ここでの議論は整理をして,大学分科会に報告をするという位置づけだと理解しております。その意味では,次の第4次報告が大学分科会としてまとめられるのかと思いますが,そこに我々が,この段階までの検討の結果を報告して,第4次報告の中に取り入れられて世の中に出ていくという理解でよろしいでしょうか。その意味で,もちろんこれは会議の資料としては世の中に出ますが,大学分科会としては全体でまとめて出していただくことになるのではないかと思っております。安西分科会長,そういう理解でよろしいでしょうか。

【安西分科会長】
 よろしいでしょう。

【小松高等教育局審議官】
 そのとおりですが,現時点で大学分科会全体としての最終的な答申が出てくるという段階は理解していなくて,いろいろな部会によって議論の進み方もまだ精粗があります。そうすると,かえってわかりにくいので,この第1四半期が過ぎた時点で一応,精粗はあってもこのあたりまで議論が進んでいるということを,ある意味,部会ごとの姿をとどめながら進行状況を世の中にお知らせをするとりまとめと理解しております。
 そうしますと,これについてもそういう意味では同じで,結論には至っていないが,行財政って大変難しいところですので,論点も多岐にわたりますが,現時点での論点整理としてはこういう方向で論点が大体整理できるのではないかという段階のものがまとまって,他の部会との間もいろいろ精粗がありますが,行われているということを,一応,全体像でくくりながら,大学分科会として報告していただくということになります。そういう意味で,おまとめいただいたものが,おおむねこういう形でその一部として,現時点での審議状況の報告ということで出ていくという理解かと思っております。

【荻上副分科会長】
 それから,今日いただいたご意見も,この論点整理に対する文言修正といったようなレベルのものから,この先議論していくについてどういう論点が抜けている,あるいは重要であるからさらに深めていくべきであるというご意見まで,さまざま幅があったかと思います。これは,今度の大学分科会に報告することになります。まず最小限必要な文言修正等は施して,大学分科会に報告することになるかと思いますが,そういうものについては,時間もあまりないかと思いますので,分科会長,あるいは副分科会長と相談をしながら,整理して報告させていただきたいと思います。さらに,その先の議論につなげていくべきものについてはまた事務局で整理して,次に何を議論していくべきかを明らかにしていただければと思います。

【義本高等教育企画課長】
 今のことに関連しまして,もう既にご案内のとおり,大学分科会の中には幾つかの部会がございます。情報公開ですとか,キャリア教育を含めた就業力を議論しました質保証システム部会,それから,先ほど小原委員からご意見がありましたような私学の受給の問題,あるいは今後の問題と社会人も含めた展開を図っていこうという議論していました大学規模・大学経営部会。あるいは,博士課程の就業者のキャリアパスの問題も含めて議論しています大学院部会。それぞれで,問題意識を含めてご議論しておりますので,荻上委員もおっしゃったように,全体のパッケージとしまして第4次報告,審議経過報告としてまとめさせていただきますので,文言等についてはそれぞれどういう形で埋めればいいのか,先生方のご議論も含めて,全体として考えていきたいと思っております。

【郷副分科会長】
 今日の議論の中で,大事なことは教育と研究を,大学が改革しないといけないという,そこが弱まってしまっているという印象です。それをもう少しはっきり謳わないと,何を言っているのかが伝わりにくいと思いました。我が国の大学システムとそれに応じた政策展開の国立大学の役割のところに,少しそういう改革を牽引する役割が書いてありますが,これは必ずしも国立大学だけがやるわけではなくて,大学全部が国公私立を通じて改革をしないといけないという,太い筋を通す必要があるのではないかと思いました。

【安西分科会長】
 郷副分科会長がおっしゃっていたので,私も一言申し上げるとすると,日本の大学は危機的な状況にあると思います。そのことをもう少しはっきり出していただきたい。それぞれの旧帝大,国立大学を見ていると,それぞれに課題が非常に大きくありますが,そのことが極めて,あまり目立たずにふんわりしているような気がします。論点整理ですから,今までのものをまとめたという形だと思いますが,もう少しはっきり出していただけないかと思います。と申しますのは,現場ではまだまだそういう感じではない。大学というのは長期にわたってゆっくりやっていくものだという感覚はあると思います。それは一理ありますが,世界の潮流はそうではないということをはっきり出していただいて,改革をやらないといけない状況にあるということではないかと思います。郷副分科会長のフォローでありますが,私もまったく,そう思います。

【荻上副分科会長】
 ありがとうございました。分科会長,副分科会長から明確なご指示をいただきましたので,そういった方向でできるだけ明確な報告をまとめて,分科会に報告したいと思います。
 それでは,まとめ方などについてはお任せいただけますでしょうか。もちろん,これで議論が終わりということではなくて,この先につながっていくという意味で,できるだけわかりやすい報告をしたいと思います。

 

(4)次回は,各委員の日程を調整の上,後日事務局から連絡することとなった。

─ 了 ─

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-- 登録:平成22年08月 --