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インターンシップについて、個々の企業にとって高専生を受け入れることにどのような良い点があるのかということも考えていかないと、いざ企業に「受け入れてください」と言っても難しい。長期間のインターンシップを実施する仕掛けが必要である。 |
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企業の方と話すと、インターンシップでは3〜4ヶ月まとまって来てほしいという要望がある。これくらいの期間があれば戦力として期待できるので、企業にも学生にもメリットがあるということを言われる。 |
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カナダでは親に頼らずとも長期インターンシップの手当のみで学部を卒業できる。企業、自治体は次世代のエンジニアを一緒に育てるメリットがあり、また当然の義務であるというコンセンサスが形成されている。このようなことは一朝一夕でできることではないが、我々も進めていかなければならない。 |
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インターンシップについては、豊橋技術科学大学も長岡技術科学大学も、開学時から国内なら4ヶ月半、海外なら6ヶ月くらい実施している。これは高専卒業後技科大へ編入学して修士までの4年間の一貫教育でなければできない。社会的にも高い評価を得ている。 |
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インターンシップの実施方法については、高専の立地条件によってだいぶ異なる。中小企業は学校に入り込んで一緒に考えることができるが、大企業ではそれはできない。 |
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現在の単位認定は一般教育科目の比率が高い。かつての大学設置基準の大綱化では、一般教育科目を弾力的にして、大学の特色を発揮するように自由裁量で単位を活用してください、ということが行われた。高専でも同じように自由裁量の単位を認め、実験・実習・インターンシップ等の単位を充当して実践的な技術者教育をやりたいという高専にはそれに使う。あるいはもう少し専攻科・大学院の方向に重点を置いた教育を行いたいという場合には、一般教養や工学の基礎科目を厚くするなど、自由な教育システムを是非高専制度の中にも取り入れていただきたい。本科5年の教育を大前提にしっかりやりつつ、実技・実習の時間数を増やしたいと考えている。 |
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東京高専が提案する新しい産学連携教育「COOP」の例として「指導社員と指導教員が共同で指導」とあるが、これが現実に機能すれば、学生だけではなく、教員が技術を知る意味で非常に効果がある。また同時に指導教員が学校へ戻った際には技術者教育の核として非常に大きな意味があるのではないかと期待している。 |
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産学連携教育「COOP」の「指導社員と指導教員が共同で指導」が実際に実施されるのはおそらくまだ先である。大学と企業の間では共同研究や連携関係があるが、高専と企業の間では2つの高専と研究所が実施している例があるだけで、高専と共同でやるところまではなかなかいかないようである。実施するためには単にインターンシップの期間を延ばしただけでは難しいので、なかなか思った通りにはいかないのではないか。 |
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共同研究を制度として定着させるための取組について、このような共同研究に歴史を持っている国では、国や自治体や産業界が、次世代のエンジニアを育てるためには当然自分たちもそこへ参画、負担しなければならないという意識があるし、仕組みも整っている。 |
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現在は高専ではなく、大学教育とどのように連携するのかという段階であって、共同研究を制度として定着させるための具体的な取組として何をするのかということまではいっていない。例えば、最先端の技術について、大学に行って講義をするという産学連携教育の例はいくつかあるが、共同で研究しながら学生も育成するということはまだ例がないし、もしあるとしてもごく少数である。例えば大学の中に会社の研究室を置く、あるいは会社の中に大学の研究室を置いてそこに学生に来てもらい、企業の人と一緒に共同研究しながら学生の育成に寄与するという例がいくつかあるだけである。 |
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まずは次世代のエンジニアを育てるのに、国や地方自治体、学校、企業が一体で何かをしなければならないというコンセンサスを作る必要がある。その上で制度づくりを含めた検討が必要である。これは多くの国では制度の構築が既に終わって活動しているが、日本だけが圧倒的に遅れている状況にある。 |
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企業にインターンシップで高専卒1万人をすべて受け入れろというのはとても無理である。モラルのしっかりした学生を送り出さないと企業に迷惑がかかるので、ヨーロッパでは選ばれた学生を送り込んでいる。そのようなことも含めた制度づくりが必要。 |
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高等教育と社会的なニーズの関わりについて、企業では現実にどのようなことが問題になっていて、それがどのように応用できるかということを、学生に勉強してはどうか、ということを募集をしたところ、80名の学生が参加し、中小企業400社くらいを回ったことがある。ここではまず、中小企業が抱えている問題について我々がオリエンテーションをする。その問題意識、着眼点をもって学生が中小企業でヒアリングを行い、中小企業が困っている問題点や技術の問題、後継者の問題、資金の問題などを持ち帰ってくる。そして、企業の色々な経験者と大学の教員、商工会議所などが一緒になって、その企業に対して学生と一緒にゼミナール方式で討論して答えを出す。その答えを企業に持って行き、ディスカッションし、フォローも行い、最終的に1年間かかってその企業を経営改善の軌道に乗せる。これをある県立大学に紹介したところ、正規の授業として単位を与えることになった。 |
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中小企業でのインターンシップであれば経営者が直接対応してくれて、その会社で行っていることについて直接話が聞けるので、まず会社全体のマネジメントというトータルのものが見えてくる。よって、企業の色々な問題について、企業全体との関わりをもって対応することができるので、モチベーションが高まると同時に実践的なプラクティカルな知識も得ることができる。これが大企業でのインターンシップの場合、会社としてどのような問題があるのか、なぜこれをやるのかということがわからない。 |
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団塊の世代がこれから700万人出てくるが、そのうちの6割は給料はもらわなくてもいいから、これまでの知識や経験を社会に還元したいと言っている。そういう人を引っ張ってくるという方法が高専でもできるのではないか。 |
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インターンシップについて、大企業であれば主任クラスと話す機会がある程度だが、中小企業なら社長と話ができる。ある大企業では入社後3年で3割が辞めてしまうが、その理由は、自分がやりたいことをやらせてくれない、あるいは話が違うということである。よって、在学中に実際に中小企業に行って目を開かせるということが大事である。 |
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COOPを実際に進めるにあたって、4月からコーディネーターを1人雇って周りにどんどん御用聞きをするようなシステムをつくったところ、現在では10〜15社くらいがCOOPをやろうと言ってきている。よって、そのような人材の手当もしていただく必要がある。これを教員にやってもらう場合は、教員の労働は少し増えるが自分にとってもキャリアアップになるのでよい、と思えるように意識を変える必要がある。また、本科である程度基礎を学んで、専攻科で少し時間的余裕ができて、色々なことができるようになるので、そういった面での財政的、人材的な手当てもいただきたい。 |
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15歳の脳には適切な教え込みと発達の過程が必要で、それを「勝手にやれ」といってもうまくいかない。ある程度のキャリアパスで指導が必要。高専は教えたり、わからなくてもどったりといった、内容のスイッチバックをしながらの指導をしている。大学は出来ていることが前提の指導をせざるを得ず、この点で、専攻科は(大学との対比において)学びなおしが利く仕組みである。 |
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教育心理学の分野で「熟達曲線」という用語があるが、高専教育システムはそれにフィットしている。 |
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高専から大学へ編入学する者は概して優秀。高専教育では、卒業研究が効いている。座学でなく身についた知識が、大学に編入学した後も研究ですぐに応用できる。 |
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高専から大学を志向するのか、高専教育で完結型を目指すのかであるべき教育内容は異なってくる。 |
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進路の転進の機会の確保も必要。例えば高専から芸大に進学した者もいる(デザイン系)。 |
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学生を満足させるためには、ホームルームやキャリア教育など、教育の仕方に工夫が必要。また、教員の質についても重要であるが、教育手法の改善によってある程度解消できるのではないか。 |
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複合的な分野の教育を行うには2つのタイプがあってよいと思う。最初は単独の分野を学んで、途中のどこかのタイミングで融合・複合に移るのが一つ。又は最初から複合分野を選択するのが一つ。それは適材適所とか学校のコンセプトとかがあり、それでいくんだ、ということであればどちらもうまくいく可能性はある。 |
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複合教育では、機械も電気も両方やったメカトロ、というところもやって、ロボットを造れるというところまではいくが、それを使いこなすというところまではいかないし、単独分野に比べるとやはり学生の負担は大きい。しかし学生の8割近くが複合教育を受けて良かったかと答えている。学生のときはきついが、カリキュラムの組み方をうまくやって、必要な部分だけを取り出してうまく教えることができれば、学生が社会に出たときに役にたつ。 |
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徳山高専は30年以上前から複合教育を行っているので、そのくらい経つとうまく消化されて効果が出てくるのだろう。 |
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国立高専として、徳山と八代の2つが初めての複合学科の設置だった。その分、教員もたくさんいる。実験校的に始まったものだがうまくいっている。これらの高専がある程度うまく行っているという背景があるので、他の高専もスタッフを増員したい、ということにつながっているのではないか。 |
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高専教育を議論する場合は、高専だけで完結するのではなく、大学との役割分担やネットワークとかも考える必要がある。また、本科の入学生には、色々な選択肢がありうる、大学と連携していけるんだ、ということを十分PRする必要があるのではないか。 |
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総合化については、色々なことを広く勉強することによって新しい発想の知識・モチベーションを高くもつことになり、伸びていける。中小企業にいくと、マーケティングもあるし経理も財務もあるし人事もあるし、色々なことがあって勉強になる、即ち総合化である。中小企業にどんどん行って、大学で縦割りで習ったことを自ら学ぶ。総合化は必ずしも学校でやらなくても、特に高専はモチベーションがしっかりしているので、身につけることは可能。 |
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大学の先生には教育と研究は分けてほしいと思っており、お互いに連絡し合って学問の総合化を目指して学生に教えてほしいが、それはなかなかできない。 |
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技術者と科学者は基本的に違うが、技術者を育成する仕組みが日本では複雑に混乱している。高専はそれをある程度クリアにしているとは思うが、社会ではこの仕組みがあまり明確ではなく、それぞれ目標の設定が明確にしきれていない。例えばドイツではTechnische Fachhochschuleという、いわゆる高等工業高校が工科大学になったところの学位は、Ph.Dではなく、Dr.Ingという職位である。これは昔からあるマイスターの職位として認められているので、企業ではPh.Dとは全く違う受け入れられ方をしている。日本では、工学博士といってもPh.DとDr.Ingの区別が全くないので、技術者と研究者という、サイエンスをやる部分があまり明確でない。日本の大学では、旧帝大のような非常に限られたところを除いては、工学部といえどもほとんどサイエンスをやっているような構造になっている。それに対して、技術科学大学が独自の技術者育成を行うというスタンスを明確にして、そのために高専からの教育をきちんと継続的にやっていくということは非常に重要なことである。そしてこのような仕組みをどのように生かすかというと、その一つは、高度の専門性をもった者に、ある種の資格を認めることである。日本には技術士という資格があるが、技術士の資格をもう少し明確に位置づけて、例えば技術科学大学の学位との連動性を明確にする。日本では専門性というものに対する評価が非常にあいまいなままであることについて、社会的に認められる資格と連動した形の職位や学位という構造にすることを考えていく必要があるのではないか。そうすると教育の目的が明確になり、学生のモチベーションも変わってくる。受け入れる側の企業としても、役に立つことが明らかな人を受け入れられるという意味で、非常にありがたいことになる。 |
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問題は、それを社会がそれをきちんと理解して扱っているのかということである。具体的には、技術士はある領域では非常に高く評価されているが、ある領域ではほとんど意味がないような状態である。よって、社会の職位に対する評価の在り方が定まっていけば、また社会的なステータスとしての位置づけが明確であれば、それを志向する学生が出てくるのではないか。中教審はこのような考え方の基盤をつくることについて議論ができるほぼ唯一の場であるから、是非今回はそこまで議論を深めて、何か社会に発信するものを固めていきたい。両技術科学大学については、高専と技術科学大学の間の学生、あるいは教員の交流をもっと密にして、ともに学士水準の技術者を育成していく。また、学位授与機構は学問体系で学位を出すのであって、技術者教育に対して学位を出すという考え方ではない。学位をどの機関が出すのかということは別問題として、この辺の整理をしながら議論する必要がある。 |
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大手企業や関連企業では、歴代のトップは入社試験が下位の者が就任している例がある。よって学校秀才と生きる力、経営力は相関関係がない。PISAの件についても、問題は順位ではなく、勉強がおもしろいとか将来の夢を持っているかという質問に対して、他国では7〜8割が該当すると回答しているのに比べて、日本では2〜3割の学生しか該当すると回答していない点である。これはペーパー秀才ばかりをつくっているからである。 |
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宮城高専では、2つの専門を修めて卒業させる、2専修課程という課程を正式に実施した唯一の高専であり、電気工学科を卒業後、更に2年間、今度は機械を勉強して社会に出すというコースを4年間くらい行った。このときは、前の学科では下位の成績であった学生が、入り直した学科ではトップクラスになっている。これは電気工学科を卒業してからすぐに機械工学科に入学したわけではなく、一旦企業へ出てから、再度高専へ入学した例であり、勉強する上で押さえなければならないポイントを承知した上で勉強しているので非常に成果もあがった。高専はもともと中学校での成績の上位3分の1くらいが入学しているので資質はある。あとはやる気、インセンティブがあれば、それだけのびる能力が十分にある。 |
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ある大学では、キャリアガイダンスができる人を、教授のポストを使って導入した。それによって学生の就職分布が全く変わったという。 |