大学教育部会(第44回) 議事録

1.日時

平成28年12月27日(火曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学の事務職員等の在り方について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)鈴木典比古部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長
(委員)亀山郁夫,坂東眞理子,日比谷潤子の各委員
(臨時委員)安部恵美子,勝悦子,金子元久,川嶋太津夫,小林雅之,篠田道夫,二宮皓,濱名篤,前田早苗,美馬のゆりの各臨時委員

文部科学省

(事務局)常盤高等教育局長,村田私学部長,浅田大臣官房審議官(高等教育局担当),松尾大臣官房審議官(高等教育局担当),永山文部科学戦略官,塩見高等教育企画課長,角田大学振興課長,堀野高等教育政策室長,石川大学振興課課長補佐,遠藤大学振興課課長補佐,根橋高等教育政策室室長補佐 他

5.議事録

(1)大学の事務職員等の在り方について,事務局から資料1-1,資料1-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    所定の時刻になりましたので,第44回の大学教育部会を開催いたします。御多忙な中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
  本日は,大学の事務職員等の在り方について,それから大学教育の改善について,この二つの議題について御意見を頂きたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは,事務局から本日の配布資料について確認をお願いいたします。
【堀野高等教育政策室長】    配付資料につきましては,議事次第のとおりでございます。不足の資料等ございましたら,事務局までお申し付けください。
【鈴木部会長】    よろしいですか。
  それでは,まず,大学の事務職員等の在り方について審議を進めてまいります。本件につきましては,これまで大学教育部会,大学分科会において御審議いただきました内容を踏まえまして,今後の取組の方向性についてお示しするものになります。
  では,事務局から説明をお願いいたします。
【遠藤大学振興課課長補佐】    失礼いたします。大学振興課でございます。大学の事務職員等の在り方についてということで,本日配付資料の資料1-1及び資料1-2に基づいて簡単に御説明をさせていただければと思っております。
  まず資料1-1を御覧ください。文章で書かせていただいているものでございますけれども,「大学の事務職員等の在り方について(取組の方向性案)」ということでお示しをさせていただいてございます。内容に入りますけれども,1ぽつのところ,これまでの大学教育部会及び大学分科会における審議の経緯を,ごく簡単にまとめてございます。これまで大学のガバナンス改革の推進,この審議の取りまとめですとか,更に本年の2月に大学運営の一層の改善・充実のための方策についてということで,取組の方向性について御提示いただいていたところでございます。
  この中で,大学の事務組織及び事務職員が当該大学の目標達成に向け,これまで以上に積極的な役割を担い,大学運営の一翼を担う機能をより一層発揮できるように今後のあるべき姿について更に検討を深め,その結果を法令等に反映させることが適当ではないかということで御提示いただいたという状況でございます。
  このような方向性を踏まえまして,私ども,いろいろな事例を収集させていただいたりとか,情報提供いただいたものを今回まとめさせていただいて,このような形で取組の方向性案ということでお示しさせていただいてございます。
  さらに,2ぽつのところに入ってまいりますけれども,やはり教職協働であったり,大学の事務職員の在り方,こういった方々の力が非常に重要だということはこれまでも様々な御指摘を頂いているところでございます。これをより具体的にどういう職務分野,どういった中で職員と教員がお互いに協力し合いながら取り組んでいらっしゃるのかというのを一つ一つ事例を御紹介させていただきながら見ていって,今後のあるべき姿についても議論を深めていただければと思っております。
  2ぽつの括弧の1のところでございますけれども,事務職員等の業務の変化ということで,やはり大学の教育研究が高度化・複雑化しているというようなことは,これまでも御指摘を頂いている状況でございます。具体的な事例として今回本文の中にもジョイント・ディグリー・プログラム推進ということで一つ挙げさせていただきました。やはり国際的な分野ということで,国境をまたいで大学間で様々な調整を行う必要があるプログラムでございますので,一つ取組として参考になるかと思っております。
  資料1-1と資料2を併せて御覧いただくと理解が早いかと思いますので,参考1-2のページの17ページをお開きいただけますでしょうか。こちらの方に事務職員等の業務の変化丸1ということで,ジョイント・ディグリー・プログラムの推進という形で記載をさせていただいてございます。教育研究の質を向上させるための先端的な取組をそれぞれどういった役割分担でやっているのかというのをまとめさせていただきました。
  まずジョイント・ディグリー・プログラムの経緯ですけれども,平成26年11月に我が国の大学等と外国の大学等が大学間協定に基づきまして連携して国際連携教育課程を編成・実施をして,共同で単一の学位を授与する仕組みとして制度化をされてございます。一つの学位記に大学の名前の校章が二つ付いているようなイメージの学位が出るというようなプログラムが実際ございます。
  同プログラムの設置に当たっては,当然ながら海外大学との密接な情報の共有・調整といったものが必要となってまいりますし,大学の中でも当然コンプライアンスの関係で法務,あとは教学関係,あと国際担当,さらに,当然各学部・研究科の先生方との調整を常に密接に取り合いながらプログラムを作っていくという,このようないろいろな事務作業が生じてくるというものでございます。
  さらに,新しい制度でございますので,学内だけではなくて,文部科学省等とも事前に御相談いただきながら,法令上の解釈・運用について齟齬(そご)がないか等について御相談いただきながらプログラムを作り上げていくという形になってございます。
  現在ジョイント・ディグリー(以下,「JD」という。)として認められている専攻といたしましては,スライドの右側の方にございます「開設が認められているJD専攻」というのが白い丸ごとに記載をさせていただいてございますけれども,名古屋大学の例が非常に多くございますけれども,それぞれ,名古屋大学と例えばアデレード大学,その下には東京医科歯科大学とチリ大学というような形で,それぞれ連携を実際に進めていただいているというような状況がございます。
  ここまでであれば単なるJDの御紹介ということになるんですけれども,やはり今回事務職員の在り方ということですので,こういったプログラムをより進めていって教育研究の質を高めていこうとしようとするときに,事務職員が何をしているのか,一方で教員が何をしているのかというのを主に例示として規定をさせていただいたのが,四角のピンクの囲いで規定をさせているところでございます。
  特に事務職員については,学内の担当部局,先ほど申し上げた部局等とあと担当教員との連携調整,当然必要となってまいりますし,私も様々御相談を大学から受けておりますけれども,文部科学省との法令の解釈等の実際の調整もございます。
  さらに,実際にJD課程を置こうとする場合には,国際連携学科や専攻,これ,設置の認可に関わらしめる必要がございますので,その設置のための書類をしっかり作っていかなければいけない。さらに,海外大学の状況をしっかりと把握する必要があるということで,事務職員間の人事交流を既に行っている大学もあると聞いてございます。やはり現場の方に職員が実際に行って,そこでの単位の在り方であるとかカリキュラムの組み方をしっかり学んだ上で組んでいくというような事例も生じてございます。
  さらに,学生支援の体制ということで,当然経済的な支援であるとか,海外に留学をするということになるので,その住環境であったりだとか,学ぶ体制をしっかりと事務職員の方でも調整をしているという例がございますし,一方で,教員は,JDプログラムを作るときに何をやっているかということで,当然ながら対象の学問分野であったり,教育の内容について考えたり,成績の評価の在り方のような,より教育のコアになるようなところを教員の方々が海外の教員の先生方と一緒に調整をしながらプログラムを作っているというような現状がございます。
  今申し上げてきたとおり,JDプログラム一つとってみても,大学が国境をまたいで新しい質の高いプログラムを作ろうとするときには,教員の力のみだけではなくて,やはり事務職員の方々が持っている力を十二分に発揮して,こういった方々の力をお互いに組み合わせながら一つのプログラムとしてまとめ上げていくというようなことがございます。これは当然ながら今までも制度化されていなかったものですし,今後,むしろ海外の大学とより協定を結んで,質の高いプログラムを作っていくに当たっては,このような事務職員の方々も増えていくのではないかと考えてございます。
  今申し上げたのが事務職員の方々のJDプログラムについてでございますけれども,参考資料の方で,引き続き,特に今,大学の教育改革ということで重要だと言われているような事例,五つほどを例として挙げさせていただいてございます。
  参考資料の18ページのところ,JDプログラムの次のページでございますけれども,例えば入試の改革のところで,追手門学院大学の例を挙げさせていただいておりますけれども,アサーティブ入試ということで,この特徴は,大学の事務職員の方々がこの入試に携わって学生さんを直接見て,評価をして入学をさせるというような形で,誰を選ぶのかというようなところに積極的に職員の方々が携わっていらっしゃる事例というふうに伺ってございますし,直接そうやってやりとりをするのはもちろんですし,あとは自治体との協定,ここでは教育委員会との連携みたいなものも,実際に事務職員の方々が動かれて,実際には業務としてやられている。一方で,教員の方々は,実際の入試の内容であったり,今自分たちが作っている入試の仕組みの検証であったり,ほかの研究機関との連携,こういったものを積極的にやられているという事例でございます。
  さらに,1枚おめくりいただけますでしょうか。参考資料の19ページでございます。これも大きな変化の事例ですけれども,産学官連携ということで,これまで産学官連携が,研究者の方々個人個人が実際に民間の業の方々と連携をしていたという現状があり,どうしても日本の場合は諸外国に比べて共同研究が例えば費用の面でも小振りなものが非常に多かったのではないかという御指摘がございました。そうではなくて,より大規模な産学官連携をしっかり組織対組織でやっていこうということで,大学の方もしっかり体制が整えるよう,この平成28年12月にガイドラインのような形でお示しさせていただいているような例がございます。
  特に産学官連携の例で申し上げますと,事務職員が何をしているかというところですけれども,名古屋大学の例を挙げさせていただいておりますが,リサーチ・アドミニストレーター(以下,「URA」という。)の方々が非常に積極的に御活躍されていて,ヒアリングしていろいろ聞いてみたんですけれども,明確に教員ではないと,そこにはカウントしないという職員がURAとして実際にいろいろなグループのところの統括をされていらっしゃって,各研究現場では,物品の管理であったり,簡単な知的財産の交渉みたいなものも事務職員の方々がやられていたり,更に企業等との協定をしっかり結んでいく必要があるというような段階でも,ドラフト版の協議の案文であるというようなところは,事務職員の方々が知的財産管理等の専門性のあるような方々と連携しながら作って,更にそれを先生方と調整しながら中身を詰めていってというようなプロセスで進めていらっしゃるということを伺ってございます。
  さらに,丸4番ということで,学問分野を超えた教育研究ということで,既存の分野・専攻にとらわれない融合的な分野を実際に推進していこうということで,では,実際に事務職員,どのように動いていらっしゃるかということ,学問分野の壁を超えていくということで非常に重要だということ,これも様々なところで言われますけれども,そのために事務職員が何を動いているのかというのをリーディングプログラムの例をこちらに掲げさせていただいて御紹介をしたいと思っております。
  大阪大学の例でございますと,名前も「超域イノベーション」という形で,限定された領域ではなくて,そこを超えていこうという発想で作られていることなんですけれども,事務職員の方々は,学内外の教員の方々,あと職員の方々との連絡調整といったことをしっかりやられているということ。更に学生さんの履修の管理であるとか,予算措置を伴う学生の自発的な活動のためのコーディネートをされたりであるとか,あとは,大学の外という意味で,インターンシップ先の企業や海外大学との連絡調整といったものを積極的に担われていらっしゃって,最後に,データの収集や分析,この後IRの例も御紹介しますけれども,このようなものも事務職員の方が積極的に担われているからこそ,こういったプログラムができるのだ,むしろこの取組がなければ実際うまくいかないんだ,ということを大阪大学さんの方からは伺っているというような例がございます。
  最後,丸5ということでございますけれども,21ページ,戦略的な大学運営ということで,今まで申し上げてきたような個別の具体的な例を見ても,非常に先端的な例とすると,かなり高度化・複雑化しているという状況がございます。これは戦略的に束ねて経営にいかに生かしていこうかということを考えたときに,今注目されておるのが,インスティトゥーショナル・リサーチ(以下,「IR」という。)という取組が一つございます。もちろんIR専属でというような方々もありますし,あと,経営を担うような人材の方々がしっかりと経営者層に,どのようにそういった人材を育成していくのかであるとか,経営者層自体を育成するための取組をどういうふうにプログラムとして作っていくのか,このような取組が非常に重要でございますけれども,IRの観点で一つ申し上げますと,佐賀大学に有名な事例がございます。
  この中では,事務職員の方がIR主担当の専従の職員として配置をされてございまして,当然学内の関係部局との連絡調整,あと情報の収集。この情報の収集というのを学内でやるというのはなかなか難しいと聞いておりますけれども,しっかりと情報の収集を行って,経営者層に対して情報の提供を行う。更に学外のベンチマーキング,まだまだこれから課題が多いと聞いておりますけれども,横の大学間の評価を行う上でも,ベンチマーキングをしっかり行えるように情報の収集を行っていると。これをやはり事務職員の方々が積極的に担われているというような事例を伺っております。
  すみません。少し長くなりましたけれども,本文の方に戻っていただきまして,資料1-1の2ページ目のところをお開きいただければと思いますけれども,以上申し上げたような様々な分野で事務職員の方々が御活躍されている例があるということですので,こういった事務職員等に係る規定の見直しの必要性,今正に大学で起きている現状に即したような形で法令上の規定を何らか変えていく必要があるのではないかと考えて,今回この方向性についてまとめさせていただきました。
  ページを更に1枚おめくりいただきまして3ぽつのところを御覧いただいてよろしいでしょうか。この中で大学の職員等に係る規定の見直しというようなことで,法令上の規定の見直しというので,括弧の1,2,3というような形で方向性の案としてお示しをさせていただいてございます。
  まずは事務職員のところでございますけれども,事務職員については,その職務が学校教育法の第34条第14項というところに規定をされていて,これ,小学校とかにも規定されているものでございまして,これを準用する形で大学の事務職員と位置付けられているものですけれども,この事務職員は事務に従事するという規定について見直すこととしてはどうか。
  さらに,丸2の事務組織について。これは今までも御指摘いただいたとおり,大学設置基準のところで,第41条に大学はその事務を処理するため専任の職員を置く適当な事務組織を置くこととすると規定をされてございますので,この規定を見直すこととしてはどうかということが2点目。
  さらに,括弧3の教職協働というようなことで,先ほどまで申し上げてきたような事例,様々と生じてございますので,その実態にしっかりと適合させられるように,組織的かつ効果的な運営を図るために教員と事務職員等とが連携体制を確保し,協働して業務に取り組むことの重要性について,設置基準に規定を設けることとしてはどうかというふうに,案としてお示しをさせていただいているという状況でございます。
  すみません。駆け足になりましたけれども,事務局からの説明は以上でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。それでは,意見の交換に入りたいと思います。篠田先生,お願いします。
【篠田委員】    御提案いただきました法改正に賛成の立場から発言をしたいと思いますけれども,昨年来ずっとスタッフ・ディベロップメント(以下,「SD」という。)の義務化に関わる設置基準の改定の議論をさせていただきまして,その中でも何回か発言をさせていただきましたが,やはりSDの義務化による職員の力量の向上というのと職員が果たす役割の向上というのは両方セットでないといけない。職員が幾ら力を付けても,決められた事務処理の役割の範囲の中だけではやれることに限りがあるということで,せっかく付けた力を生かす,発揮するというためには,やっぱり職員の位置付けや役割を改定していかなければいけないと思っております。
  また,SDの義務化の条文を見てみましても,大学設置基準の第42条の第3項,これは事務処理の力を付けるということは書いていないわけですね。当該大学の教育研究活動の適切かつ効果的な運営を図るために職員にふさわしい力を付けるというふうに言っておりますので,事務処理能力ではなくて,教育や研究活動の効果的な役割を果たす,そういう力を,そういう役割を職員が持っているんだということを一方で明確にしていくということは,SDの義務付けの趣旨を更に生かすということなのではないかなと思っております。
  現実に職員がどういう役割を果たしているかというのは,今詳しく遠藤補佐の方から御説明いただきましたけれども,私も,この何年間で100近い大学をいろいろ歩いて調査をしてみましても,やっぱり職員は大学の重要な入り口から出口といいますか,学生募集のところから就職のところで中心的な役割を担っておりますし,それだけではなくて,学長のかなり重要なスタッフとしての支援だとか,大学経営,大学運営に重要な役割を果たしております。IRや企画提案や,今御説明のあったような戦略的な大学運営,特に中長期計画が厳しい大学環境の中で実現をしていく上で,やっぱり職員が教員と本当に一体になって力を発揮していかないとできないという現状になっておりますので,その意味では職員の役割を今きちんとさせるということは非常に重要だと思っております。
  学士課程教育の構築に向けて(答申)以降,職員の役割というのはかなり厳しいというか,強い言葉で役割の重要性というのは強調されてまいりましたけれども,それをすればするほど職員の法令上の位置付けというのと齟齬(そご)が来ているというようなことを感じておりました。その意味では非常に時宜を得た改定だと思いますし,教職協働ということをとっても,教員が決めた,あるいは教員の指示で職員が動くという関係ではない関係を作っていかなければ,本来的な意味での教職協働というのは実現できないと思っております。
  大学は,これから厳しい環境に立ち向かうことになると思いますけれども,その意味では,職員の役割を高めていくというのは今の時期に非常に重要な提起だと思いますし,職員に大きな励ましを与えるもの,改革推進に大きな影響力を持つものだと考えております。ということで発言をさせていただきます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。それでは,濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    基本的に職員の役割の重要性が増している,あるいは高度な業務を行う職員が出てきているという説明については,おっしゃるとおりだと思うのですけれども,それと教職協働の話がつながって聞こえないのです。例えば本当に教職協働をやるのだったら,提案の3ページ目の括弧の3で設置基準に規定を設けることとしてはどうかということを書いたって,誰がどう読むのかということだと思うのですね。設置基準第7条で,教員組織のところがあるわけですけれども,その中で,例えば第7条第2項で,大学は教員研究の実施に当たり,教員の適切な役割分担の下で組織的な連携体制を確保し,教員研究に係る責任の所在が明確になるように教育組織を編成するものとするとされています。つまり,教員研究の編成は教員の仕事だと。教育組織だと書いておきながら,教職協働と書いたって,基本的には,両立しない書き方ではないかと思うのです。
  高度な仕事をやる職員がいるから教職協働という規定を設けるというのは,これは大学によって,本日例が挙がっているのはほとんど大手大学とか国立の話で,中小大学でそんなことを書かれても,どうする必要があるのという疑問がでるだけです。別に国際化を目指していないのに,それをベースに設置基準に変な書き方をされると,プレッシャーだけ強くなる。ただし,教育研究の組織的な運営という点のところで,今まで教員しか関わっていないところに職員のことを論及すれば,これは基本的に教育研究の方針なり組織的な運営に事務職員がタッチするということまで入らなければということに繋がる。何か申し訳程度に後ろの,第41条より後ろに出てくるような読み方に聞こえたのです。けれども,そういう点では,構造的に教員組織と事務組織という分け方自体にそもそもかなり無理が来ている。そこを触らないで事務職員のことを,高度なものが要るからというのでは中途半端に映りますし,それこそ意思決定に参画するような職員の存在を是(ぜ)としていくのであるならば,設置基準の第7条を触っていかないと根本的な立場の変更にならないのではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【鈴木部会長】    事務局,どうぞ。
【遠藤大学振興課課長補佐】    御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり,教職協働について,これは今大学の現状としてもしっかりと取組が進んでいらっしゃる大学,あと,実際に取組が進んでいるとしても,様々な職務によってその程度に差があるような大学がございます。例えば,本日の参考資料の15ページを御覧いただけますでしょうか。教職協働の現状という形でスライドを1枚作らせていただいております。左側に教職協働の取組が行われている分野というようなことで,上が就職支援,進路指導があったりだとか,下は各種委員会への合同参画その他というところまであります。これを御覧いただいても分かるとおり,その職務によって非常にお互いの連携協力が進んでいる分野と,一方で例えば教育方針の立案や推進のように,教員,組織の方に取組の主体が移るような分野,様々ございますので,条文を今後規定をしていくことを検討するに当たって,一律に何が何でもこうしろというようなことにはできるだけならないように,正に今御指摘の趣旨を踏まえた形で規定について考えていきたいと思ってございますし,また,条文の規定する位置についても今御提案いただいておりますので,御指摘いただいたものをこちらで引き取らせていただいて,条文を規定する際は参考にさせていただきたいと考えてございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。坂東委員,どうぞ。
【坂東委員】    ありがとうございます。私も事務職員の方々の活躍できる機会を広げる,あるいは,事務職員の方々の能力を涵養(かんよう)するということをここで取り上げていただけるのは大変有り難いことだなと思っております。
  私はいつも自分の大学で言っているんですけれども,教員はいわば教育と研究の専門家であると,プロフェッショナルである。マネジメントするのは職員である。経営,企画,具体的に申しますと,そのほかにも広報ですとか,企業や自治体との連携ですとか,海外の大学との国際連携ですとか,アドミッションの例は挙げてありましたけれども,キャリア支援についても事務職員が大変大きな役割を果たしておりますし,学生支援,そのような専門的な大学運営に関わる様々な仕事をマネジメントする能力を事務職員が持たなければいけないんだと。先ほど濱名委員がおっしゃいましたように,教育や研究を効果的に運営するために教職協働をする。組織的な運営を行うために協力するというだけではなしに,教育研究以外の分野,とりわけ私立大学においては経営分野,学生支援,そのようなところが大変重要な役割を期待されておりますので,そうしたことができる職員を育てなければならないということは大変重要に考えております。
  ただ,問題は,どのようにしてそういう職員を養成するのか。新しい分野ですし,それほど知見が積み上がっているわけではありませんので,私どもでは,学生たちにもアクティブラーニングで,実際のプロジェクトに関わることによって学生が成長するように,職員もプロジェクトに関わることによっていろいろな経験を積んで,知識を得るだけでは能力の涵養(かんよう)はできませんので,いかにして職員の方たちの能力を涵養(かんよう)するのかということについても,もっといろいろな経験,知見を積み上げていくことが必要かと思っております。どうもありがとうございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。そのほか,いかがでしょうか。川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】    ありがとうございます。先ほど濱名委員の次の10条のところで授業科目の担当というのがあって,授業の担当は教員に限るという条文なんですけれども,例えば初年次教育などは,実際に,かなり図書館の職員とか,学生支援の人たちとかが,特にアメリカなんかでは,そういう方たちが教員に代わって授業を担当したりしているという例もありますし,日本も実際にはそういう例があります。ですから,先ほどの濱名委員の御指摘との関連で言えば,特定の条項を新たに付け加えることは必要かもしれませんけれども,全体の設置基準の中での整合性を持ったような形での作りにしていただきたいというのが1点目です。
  2点目は,先ほど御紹介いただいた五つの事例について言うと,大阪大学も含めていただいて有り難いと思いますけれども,これは従前より議論してきた,専門的職員に関わる事例がほぼそうなんですね。IRとか,アドミッションとか,URAとか,あるいはコーディネーターですか。ですから,こういうタイプの職員というのは,今のところ,設置基準上具体的な位置付けがされていないので,大阪大学の例を見ますと,IR,URAなんかは,基本的には教員としての位置付けなんですね。教授とか准教授,講師,助教,あるいは研究員といった形で雇用しておりますので,前回少し時期尚早ということで議論は止まっておりましたけれども,いわゆるアドミニストレーターと言われるような人たちの位置付けをもっと議論を尽くして,明確にしていく必要があるのではないかと思います。
  基本的にはこういう人たちは,むしろ本当に教員と職員との間の中間的な第3の職種とずっと十何年にわたって言われてきた職種の例でありまして,坂東委員からも御指摘ありましたけれども,それ以外にも様々な事務職員の仕事,マネジメントに関わる職種がありますので,そういう人たちも視野に含めた説明資料なり法律改正ということを是非考えていただきたいと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    勝委員,どうぞ。
【勝委員】    ありがとうございます。私も大学の事務職員等に係る規定の見直しというのは非常に重要な部分だと考えております。といいますのも,国際化を8年ほどやらせていただいた経験から言わせていただきますと,やはり教員というのはかなり異動というのがあって,例えば国際化,あるいは研究,あるいは先ほどのIR等についても,ずっと同じような専門性,それから連続性ということを考えると,職員の方にそういったことを担っていただくというのが非常に重要だろうと考えます。ただ,先ほどお話がありましたけれども,教員と職員との線引きがかなり曖昧で,我々は例えば特任教員という形でお雇いするという形で対応したりしたわけですけれども,ただ,どういう技能,あるいはどういった形でそれを規定するかというのは,やはりそれぞれの大学で行うべきなのか,あるいは法令上規定を見直すべきなのか,この辺はよく考えていく必要があるのではないかと思います。
  もう一つは,この事務組織,先ほど3ページ目の規定の見直しの括弧の2番の事務組織というのがあるのですが,もう一つ我々が非常にやりづらかったのが,大学の組織というのは非常に縦割りになっておりまして,横の中での業務のやりくりというのがなかなかできないと。というのは,職員それぞれに職務規定というのがあって,それに縛られてなかなか自由にできないというのがありますので,括弧の2の事務職員の第41条の規定を見直すことによって,そのようなことも可能になるのか,第41条の規定の見直しというのは具体的にはどういったことを考えているのか,その辺についてちょっと教えていただければと思います。
【鈴木部会長】    事務局,どうでしょうか。
【遠藤大学振興課課長補佐】    今御質問いただきました具体的な条文は,今どういうふうになるかというのはお示しはできないんですけれども,実際,今,学校の大学設置基準の事務組織に関する規定は,ここの事務組織として事務を処理するということが規定されておりますので,具体の事務職員がどういう職務規定で,どういうことをやらなければいけないのかというところまでは,法令上では規定されていない状況でございます。さらに,今回のお示しさせていただいた方向性というのは,今まで単純に事務に従事するであるとか,事務を処理するという形で,言われたことを粛々とやっていくというような,昔からの伝統的な事務処理をやるだけの事務職員の在り方ではなくて,より新しい教育研究のニーズが正に生じてきている状況でございますので,こういったところに積極的に事務職員の方々が携われるような趣旨を何らか法令上に明記していきたいという趣旨で今回の事務方の案としてまとめているという状況でございます。
  ですので,余り設置基準のところに,事務職員はこれをやる,あれをやるみたいなことを細かく書いていくのではなく,今申し上げたような教育研究の質を一層高めていくための事務職員の在り方として,どのような位置付けが適当なのかといった観点で,条文の案のようなものも考えていきたいと考えてございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    設置基準を見直されるおつもりがあるのなら,いろいろ見直していただきたいことは山ほどあるので,それはまた別途聞いていただきたいという思いがありますが,この部分に限定して言わせていただくと,現在の設置基準の第41条には事務組織という言葉と事務職員という言葉しかないのですが,設置認可申請の書式の中には事務職員と技術職員,図書館司書という3種類の職員区分があるわけですね。つまり,もうこの段階で整合性はない。逆に言うと,技術職員はどういう職務内容なのかという規定を具体的に私は見た覚えがないのですね。
  逆に言うと,規定を改正しなくても,そのような形で申請の段階で職員の区分をどのように捉えていくのかというところでも対応は可能であり,役割の高度化等々に対するものは対応していくことができると思うのです。本来高度化の話と教職協働の話は次元が違うと思うのですね。より高度な職員を育成していくということと,教員と職員がある程度,イコールパートナーシップとまでは言いませんけれども,それに近い形のものを作っていくということでは,施策としても同じではないと思います。今回用意された資料が,職員の高度化が論拠になって,それで教職協働と言うのだけれども,話が飛んでいるのですね。だから,教職協働をやっていかなければいけない分野というのは,むしろ,そのような高度化しているところではなくて,学生募集であるとか,坂東委員がおっしゃったようなキャリア支援であるとか,そういうところではないでしょうか。逆に言うと,キャリア支援は事務職員の仕事で教員の仕事ではないと思っている教員も山ほどいるわけです。ですから,そういうところを考えていくと,教職協働という考え方を定着させるということと職員の高度化対応ということは施策として分けて考えられるべきだろうと思います。今の事務組織,これは認証評価では多分管理運営組織という言葉を使っているはずなのですが,設置基準は事務組織と言っている。だから,法令であるとか仕組みの整合性を少しとって,管理運営という言葉に事務組織という用語を改めれば,それだけでも大分インプリケーションは増えていく。様々なタイプの職員が存在し得る,つまり,設置認可申請にある技術職員がどこに当たるのかということについて,現在の設置基準上の規定がないものがより明確になっていくのではないかと思います。
  そのような整理をしていただいて,方向性として高度化を必要とされる大学もあると思います。そういう有能な方も出てきておられることも事実だし,それらに対する大学組織の中で,扱い,処遇を変えていかないと,なかなか事務職員の給与で優秀な人が採れないから,先ほど川嶋委員が言われたような現象が出ているので,枠付けを変えていくということも一つですし,教職協働の在り方は,高度化部門に限ったことではない。管理運営全般に対する,先ほど財務の話とか,いろいろ出てまいりましたけれども,そこを入れようとすると,事務組織というカテゴリーから管理運営組織というふうに変えていった方がより現実的ではないかと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。そのほかございますか。二宮委員,どうぞ。
【二宮委員】    ありがとうございます。2点ほど申し上げます。確かに職員の人たちが非常に高度なことをしなければいけない,あるいは仕事量がどんどん増えてきている。ついてはということで,量的な拡充と力量の向上という2点が議論になるだろうと思いますけれども,その点に関して言えば,例えばJDですけれども,もっと簡素化できるはずではないだろうかと思います。基本的には研究科はもうそこに設置してありますし,それから,各大学も各国の設置認可を受けて成立しているわけですので,既存の組織をもっと信頼すれば,ある先生に言わせれば,非常に煩雑な書類が求められといった部分をもっと簡素化する。つまり,行政の大学等に対する事務量の簡素化を図っていく。特に設置審なんかの要求についてももっともっと簡素化。質保証というのはやれば切りがなくて,どんどんどんどん気にもかかりますし,一つ二つの例外的な問題ということについて,やはりこれを未然に防ぎたいということであれば,当然に力が入っていくというのは理解できますけれども,その結果の量とか,Q&Aとか,すごい分量になってきているという点はやっぱり見直さないと,幾ら研修で追いつこうとしても,研修だけでは,あの高度な,あるいは複雑な作業量というのは理解できないという現実があると思います。
  それからもう1点は,これまでの大学というのはやはり教員中心だったことは間違いなくて,学生でさえもお客さんであるという時代があったわけでございます。もう一度職員のことを信頼して頑張っていただきたいと思うんですが,そのために教員は一体を何をすべきなのかという,そもそものところをきちんと議論していかないといけない。教授会があれもこれも,自分たちの承認がないと認められないというような,旧態依然たる教授会もあるやに聞いていますが,やはり先生というのは本来そんなことで雇っているわけじゃないんですね。交通整理をするために入試の日に雇っているわけじゃないので,先生は先生としてもっともっと限定的な,質を深めていただくという,そういう在り方論をきちんとやりながら,他方で,職員だけでマネジメントができる,若しくはやるべきだと。特に経営の問題というのは,職員の人たちがもっともっと力量を形成して,理事長の下に,あるいは学長の下に経営についてはきちんと自分たちで決めていって,学生のためになることをやるといったような,職員と教諭が協働ではなくて,相互に信頼できる,それぞれが権限を持った人たちであるということをやっていかないと,いつまでも日本型大学は先生が中心で,いつまでも先生がうんと言わない限りは何もできず,いつまでも世界では通用しない大学をずっと維持し続けているとなってしまいます。そのうち,先生も疲弊してきて,また新しい先生が出るまでは当分その分野はストップといったことを繰り返すんじゃないかという心配がありますので,教員というサイドからも,もしできることなら見ていただいて,そして職員の本来の力を発揮してもらう。そこでの権限や役割が明確であるべきだということを改めてまた議論すればよろしいんじゃないかなと。以上,印象でございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。金子委員,どうぞ。
【金子委員】    私,趣旨としては非常に結構だと思うんですけれども,設置基準に書くときに,現在は小中学校との並びで事務組織としか規定していないものをもう少し具体的に規定するということですけれども,その際の規定の仕方がかなり難しいなと思うんですね。個々の業務は実はかなり多様なものが生じているわけです。歴史的に見ましたら,大学の教員以外の人たちは何をやっていたかというと,一つは総務系で,法令遵守とか,予算配分とか,要するにそういう管理の問題というのが総務系ですね。2番目は,学生支援,学生規模の保存というのは,もともとレジストラーというのが事務局長ですけれども,それに始まって,あと,今,現代的なところですと,就職関係,あるいは学生相談,奨学金等々があるわけですね。3番目が研究教育支援で,図書館,それこそURAとか,そういったものがあると。三つぐらいに整理できると思うんです。
  そこで,大学設置基準は,事務組織というのをかなり広く捉えていて,狭く捉えれば総務系といいますか,管理運営部門のことなんですが,もうちょっと広く捉えていて,私が2番目だと思う学生支援のところは,厚生補導という名前で第42条に入っているわけです。それから研究教育支援のところは,図書館だけが入っていて,第38条に今入っている。こういう状況になっているわけです。ですから,一応一部は入っているわけですけれども,それぞれの機能がかなり拡大してきているということだと思うんですけどね。でも,その個々の機能を全部入れていくのはかなり難しいので,どのような整理の仕方をするかということはかなり重要な問題としてあると思います。
  それから,それと同時に,先ほど申し上げた厚生補導というのは,前に議論になったときに,大体厚生補導という言葉自体が30年前ぐらいの概念なので,変えた方がいいんじゃないかという議論もあったんですが,それは結局沙汰やみになってしまっていますけれども,この部分をどう整理するのかということと,図書館が今抜け出ているところをどのように処理するのか。専門的職員というのは図書館の規定一つだけに入っているんですね。これは,前に専門的職員の規定を入れるというときに,それがちょっと引っかかって,専門的職員という言葉を入れるんだったら,図書館とかやっぱり整理しないと駄目だという問題が生じていたということもあるので,これまでの規定にあるところをどうしても整理せざるを得ないというところが出てくると思うんです。そうすると,どのように整理するのかということをやはり考えていただくということは必要ではないかと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。
  非常に幅広く御意見いただきましたので,これも非常に難しい面があるんですけれども,本日の内容に関する最終の調整につきましては私に御一任いただきたいと思いますが,よろしいですか。
(「異議なし」との声あり)
【鈴木部会長】    はい,ありがとうございます。それでは,そのようにさせていただきます。熱心な御議論をありがとうございました。


(2)大学分科会における今後の高等教育政策の在り方に関する議論について,事務局から資料2-1~資料2-4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【鈴木部会長】    次に進ませていただきます。最初に申し上げましたが,大学教育の改善について議論を進めてまいります。現在大学分科会におきましては,今後の高等教育政策の在り方に関する議論が進められております。議論の進捗状況を報告させていただいた上で,大学教育部会におきましても,今後の高等教育政策の在り方に関して御意見を頂ければと思っております。
  それでは,事務局から資料について説明をお願いいたします。
【石川大学振興課課長補佐】    大学振興課の石川でございます。今御紹介ありましたとおり,今後の高等教育政策の在り方に関する議論の進捗状況について御報告させていただきます。鈴木部会長から御案内ありましたとおり,現在,大学分科会において,次期中央教育審議会において今後の高等教育政策の在り方について本格的に議論をするための論点整理を行っているところでございます。本日お集まりの委員の方々におかれましては,大学分科会本体の方に御所属の委員,また特に今後の各高等教育機関の役割・機能の強化という観点については,作業チームも設けて集中的に御議論いただいておりまして,そちらに御所属の委員もいらっしゃるところではございますけれども,もちろんこの大学教育部会のみに所属されている委員も多くおられることから,重なっている委員の先生方におかれましては,繰り返しの議論であるところがございますけれども,簡単にこの秋以降議論されている内容について御紹介をさせていただきたいと思います。
  本日はお手元には資料といたしまして,直近の大学分科会,12月14日に開催されました大学分科会で配付いたしました資料について,資料2-1から2-4及び参考資料の1,2を用意しておりますので,そちらを使いながら説明をさせていただきたいと思います。
  まず資料2-1でございますけれども,こちら,「大学分科会(132回)における今後の高等教育政策の在り方に関する論点」とございますけれども,この間,ここに挙げられた点に沿って議論が行われておりますので,こちらに沿いまして説明をさせていただきたいと思います。
  まず1ぽつの高等教育の将来像を検討するために踏まえるべき観点といたしまして,まず将来像答申以来の高等教育改革の動向について簡単に御紹介いたします。参考資料1の1ページ目から4ページ目になりますけれども,1ページ目にございますとおり,平成17年の将来像答申以降の高等教育改革の動向をざっと紹介をしております。平成17年の将来像答申におきましては,18歳人口が約120万人規模で推移していくという状況,及び大学や学部の設置に関する抑制方針が基本的に撤廃されたという状況を踏まえまして,かつてのような右肩上がりの時代ではない高等教育計画の策定という点。それに加えて,各種規制という時代から将来像の提示と政策提案の時代へ移行していくといった方向性を示したところでございます。
  そして,新時代の高等教育としては,全体として多様化し,学習者の様々な需要に的確に対応するということで,学校ごとの個性,特色を一層明確化するという方向を示したところでございます。
  そして,各大学においては,自らの選択によりまして,緩やかに機能別に分化するといった方向性を提示いたしました。
  このような方向性を踏まえて,その後,ここに紹介されているような制度改正であるとか,あるいは各種予算事業の実施といったことを進めてきたというところでございます。詳細なそれぞれの施策については,説明は割愛させていただきますが,御参考にしていただければと思います。
  続きまして,資料2-1の二つ目でございますけれども,高等教育を取り巻く状況の変化。この間の議論の前提,背景という点につきまして,参考資料の5ページ目以降を簡単に紹説明をさせていただきたいと思います。
  まず参考資料1の5ページ目,大学に関係してくるデータとしまして,一つ目に,人口の変化ということでございますけれども,高等学校を卒業する18歳人口の減少につきましては,2005年に137万人であったところ,2015年には120万人までに減少しているというところでございます。また,日本の将来推計人口によりますと,2030年には101万人,2040年には80万人という推計が出ておりまして,少子高齢化が進んでいるという状況でございます。
  下の2ぽつの産業構造の変化につきましては,よく引用されているところではございますけれども,AIやロボットの発達等によりまして,代替可能性が高い職業,日本では49%というようなデータも出ているところでございます。
  続いて6ページ目でございますけれども,AIやロボットによる効率化・自動化の進展によりまして,製造・調達やバックオフィスなどの職業が減少し,新たなビジネスを担う中核人材や,IT業務,高付加価値サービスに関わる仕事が増加するという予測が出ているところでございます。
  続きまして,6ページ目の下の方,大学の状況の変化でございます。まず高等教育機関の数については,総数はこの10年間で減少しているわけでございますけれども,学士課程については増えているという状況でございます。
  下から7ページ目にかけまして,学生数の推移につきましては,7ページ目に行きまして,大学入学者数は60.4万人から61.8万人に増加している一方で,短期大学入学者数は9.9万人から6.1万人に減少をしております。また,専門学校の入学者数についても,32.7万人から26.9万人に減少しているという傾向がございます。大学院につきましては,修士課程については2005年の7.8万人から7.2万人へやや減少。博士課程についても,1.8万人から1.5万人に減少しているという傾向がございます。
  1個飛ばしまして,社会人の入学者につきましては,2005年,1.3万人だったものが,これも2015年は1.1万人と,やや減少をしております。ただ,社会人入学者数については,短期大学については3.7%と,割合としては学士課程より高いという特徴がございます。
  続いて,8ページでございますけれども,高等教育機関の大きさという点でございます。1大学あたりの在籍者数,2015年では日本は約3,300人ということで,欧米諸国と比較しますと1大学当たりの規模は小さいということでございます。
  また,その下,進学率については,2005年,全体として76.2%だったものが2015年には79.8%と,やや伸びているところでございます。OECD諸国と比較いたしますと,学士課程への進学率は低いけれども,高等教育機関全体としての進学率は高いという傾向がございます。
  9ページ,次に学科等の分野別の状況でございますけれども,学部段階で見てみますと,社会科学が最も高く,次いで工学,人文科学という構成比になっておりますが,他方,修士課程になりますと,人文科学や社会科学の割合は低く,工学や理学の割合が高いという傾向がございます。
  短期大学に関して見ると,幼稚園教諭や保育士等の資格養成である教育系の割合が高いという傾向がある一方,一つ飛ばして,専門学校に関して見ると,同じ資格系でも医療関係の割合が高いという傾向がございます。
  9ページ目から10ページ目にかけての高等教育機関進学者の属性という点でございますけれども,普通科の高等学校においても,普通科以外の高等学校でも大学への進学率は高まっているという状況がございます。
  少し飛ばしまして,11ページ目,研究に関する状況については,諸外国の論文数の増加に比べて,日本の論文生産数は減少している,停滞しているという状況でございます。
  最後に12ページ目でございますけれども,民間企業など,そのほかの社会との連携という点について,共同研究については,研究費受入額は2014年に初めて400億円を超えたという状況が出ているところでございます。一方で,1件当たりの受入額は依然として200万円程度で,国際的には小規模という傾向がございます。
  13ページから19ページ以降は,各高等教育機関についての分野別の状況,それから,20ページ,21ページにおいては,分野別の科研費の状況,22ページから28ページにかけては,産業構造,就業構造に関する状況予測の詳細なデータを掲載しておりますけれども,説明の方は割愛させていただきまして,議論の中で御参考にしていただければと思います。
  また,少し戻りまして,資料2-1,このような観点を前提といたしまして,まず2ぽつ,「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の創設について,中央教育審議会答申が出されたことを踏まえまして,各高等教育機関はどのような役割を担い,どのような機能を強化するべきかという点についてでございます。
  実践的な職業教育を担う新機関の創設につきましては,御案内のとおり,答申が出ているわけではございますけれども,特に新たな機関ができたということで,大学,大学院,短期大学,高等専門学校,専門学校,これらとの関係で,学校種ごとにどのような役割,機能を果たし,またそれぞれの振興方策としてどのようなことを考えるべきかといったことで,特に作業チームにおいて議論をしているところでございます。
  この点につきまして,資料2-2,2-3,また作業チームでの主な意見として2-4を準備しているところでございますけれども,資料2-2の1ページ目については,おおむね今説明させていただきました動向,状況の変化というところでございますけれども,先に資料2-3として,まさしく大学,短期大学,高等専門学校といった既存の高等教育機関も含めた,それぞれの機能強化の方向性ということについて今議論している途上のもの,こちらの紹介をさせていただきたいと思います。
  資料2-3でございますけれども,まず各学校種共通の要素としましては,18歳人口の減少を踏まえた教育の質の向上と多様な学生の受入れ,また,産業構造の変化に伴う成長分野の人材育成や社会人の学びに対する教育の強化,それから,各高等教育機関の強みを生かしていくための高等教育機関間の連携,また高等教育機関による地方創生,地域との連携といった観点があるかと思います。
  それに加え,各学校種別という点につきまして,まず大学についてですけれども,機能強化の在り方の観点として,一つは,多様化した学生を迎えるための大学が自ら持つ特色,強化すべき機能を明確化することにより,多様化を一層進めるという点。
  それから,進学率上昇が続く中,教育機能をしっかり強化するという点。
  それから,博士課程への進学率が減少する中で,優秀な学生が博士課程に進学やすいような体制をどのように強化していくかという点。
  またグローバル化に対応した教育の強化や学位や単位の国際性を踏まえた質の保証という点。
  それから,産業界と連携した高度に実践的な教育の充実という点。
  それから,学術研究機能の強化といった観点があるかと思います。
  こうした機能強化を支える基盤といたしまして,学位プログラム等の教育課程の改善,大学経営に関するガバナンスの強化,学生の学修時間の把握,大学での学修成果の可視化といった点,それから,教育研究の基盤となる経費の確保,このような点について今後検討が必要であろうということでございます。
  続きまして,短期大学でございますけれども,機能強化の観点としましては,1点目として,幅広い教養教育を踏まえた地域の産業を支える人材を養成する職業教育の充実・強化という点。
  大学との体系的な接続により,多様な進路の選択肢を充実させるファーストステージ機能の充実という点。
  それから,職場復帰を目指す女性やブラッシュアップを求める社会人への再教育機能の強化といった点。
  それから,外国人留学生の受入れや海外大学への留学の促進といった点。
  こういった観点を踏まえて,変化する学修ニーズに対応するため,小規模な学科の設置を可能とする仕組みの検討,あるいは幅広い学修ニーズに対応するため,大学等の連携による専攻科の教育の強化という点,それから社会人に向けました短期の非学位プログラムの充実のための方策といった点,こういった点について検討が必要であろうということでございます。
  それから,高等専門学校につきましては,機能強化の観点としては,実践的・創造的な技術者を養成する機能の充実という点,産業構造の変化に応じた新たな分野の人材育成機能の強化という点,専攻科や大学への進学者の増加に対応した教育の充実という点,地域の産業界との連携の強化という点,それから国際化に対応した教育の強化と高等専門学校システムの海外展開の推進という方向性。
  これを踏まえまして,15歳という早期からの技術者教育という特色を活用する方策の検討,それから大学等の連携による専攻科の教育の強化という点,それから高等専門学校全体としての一定規模の確保と,このような点について検討が必要ということでございます。
  最後に専門学校でございますけれども,機能強化の観点といたしましては,社会・産業ニーズに対応しつつ,多様な教育を柔軟に展開する強みを生かした人材養成機能の充実・強化という点。
  地域の産業を支える多様な職業人材を養成する機能の充実・強化という点。
  それから,復職やキャリアアップを目指す社会人等への再教育機能の強化という点。
  それから,他の教育機関との接続の強化といった方向性を踏まえて,地域の多様な中核的産業人材養成機能の強化方策,社会人の学び直しニーズに一層応えていくための方策,それから実践的な職業教育を行う専門学校教育の質保証・向上の方策,このような点について検討が必要だということで現在まとめているところでございます。
  参考資料29ページには答申の概要,また33ページから35ページまでには作業チームでの主な意見も掲載しておりますので,御議論の中で参考いただければと思います。
  少し長くなって恐縮でございますけれども,最後に,資料2-1の部分で,今後の教育研究の展開方策と高等教育機関の規模等の検討するために踏まえるべき観点という点につきまして,特に作業チーム及び大学分科会でも,この一番上にあります学位プログラムの検討という点について多く意見が出ているところでございますので,改めて議論の前提としまして共通認識を持ちたいということで御説明をさせていただければと思います。
  参考資料1の37ページをお開きください。学位プログラムを中心とした大学制度ということでございます。まず学位プログラムというものはどういうことかということでございます。学位プログラムとは,学生が短期大学士・学士・修士・博士・専門職学位といった学位を取得するに当たりまして,当該学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力が明示され,それを修得するように体系的に設計された教育プログラム,このようなものというふうに認識をしているところでございます。
  この学位プログラムを中心とした大学制度といったときには,2ぽつ目になりますけれども,従来のような学部や研究科等の組織に着目した大学制度ではなく,学位の取得を目指す学生の学修の視点に立って,学位のレベルと分野に応じて達成すべき能力を修得するように体系的に設計された学位プログラムの実施に着目した大学制度にするものというふうに認識をしているところでございます。
  他方で,現行の設置認可や認証評価の仕組みに目をやりますと,学部・学科等の組織を置くことを前提に組織ごとの学生数に応じて必要な教員数や校舎面積等の基準を定めることによって,教育環境の質を図っているという形になっております。
  最初はこの組織と教育プログラム,学位プログラムというものが一致しているわけではございますけれども,上記のとおり,所属する学生数に応じた学部・学科等の組織を設置認可する仕組みであることから,学部・学科等の組織と学生の所属,教育プログラムというのは一体的なものとして捉えられ,学部・学科等の組織と分離して,柔軟に学位プログラムを設定するということについてはなかなか進まないという現状があると考えているところでございます。
  3番の学位プログラムを中心とした大学を進める上での課題ということで,このほかにもいろいろ課題等はあるかとは思いますけれども,現行制度の中で進める上での主な課題といたしましては,現行の仕組みでも,例えば筑波大学のように教員組織と教育組織,これを分離することによって,学位プログラムに合わせて複数の組織から担当教員を配置することは可能と考えているところでございます。
  一方で,例えば学際融合的な分野で,学位の分野の変更を伴うような新たな学位を授与する学位プログラムを設定するためには,設置認可の仕組み上,別途,学部・学科等を組織しまして,設置認可あるいは届出が必要となるということでございます。
  さらに,学位プログラムを中心とした大学制度に転換するための課題といたしましては,教員や学生が所属する組織に着目して,組織ごとの学生数に応じた教員数や校舎面積の基準を定めるという設置基準から,学位プログラムに着目した制度設計とする場合,やはり何を基準としてどのように教育環境の質の確保を図るべきか,尺度を何に変えていくかというのは大きな課題になると思っております。
  また,学位プログラムの導入による,明確化された教育目標と体系的な教育課程の実施ということが,学生であるとか,社会,あるいは出口である企業といったところから見まして,何が改善されるのか,何がよくなるのかということも,明らかにしていく必要があろうと考えております。
  この学位プログラムを中心とした大学制度につきましては,これまでも何度となく議論がされてきたところでございますけれども,参考資料においても,40ページ以降で,第4期の大学分科会では学位プログラム検討ワーキンググループというものを設けまして,こちら,最終的にこれを何か取りまとめて制度改正につなげるという形にはなりませんでしたけれども,ここでかなり議論をして,様々な論点の洗い出し,整理というのはされてきているところでございますので,そちらの資料を参考までに付けております。また,議論の中で参考にしていただければと思います。
  少し長くなりましたけれども,この秋以降,大学分科会で議論している状況の報告をさせていただきました。本部会におきましても,いろいろな御意見を頂きまして,次の議論につなげていきたいと考えておるところでございます。
  以上になります。どうぞ御議論のほど,よろしくお願いいたします。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。それでは,御意見を頂きたいと思います。特に次期中央教育審議会で議論すべき論点等について御意見を頂ければと思います。川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】    ありがとうございます。2点あります。一つは,機能分化とか大学の個性化ということは随分言われてきて,ある意味,横ですね,大学間,短期大学間,高等教育機関の機能分化,役割の分担ということなんですけれども,やはり縦の機能分化というのを今後議論していく。つまり,課程ごとの役割分担ですね。これも将来像答申以降,いろいろなところで,例えば学士課程というのは教養教育に専門の基礎で,更にその上の高度な専門は大学院でということが繰り返し指摘されてきたんですけれども,実態はますます学士課程で専門教育が多様化しているという現状が起きており,一方で,先ほど御紹介もありましたけれども,修士課程や大学院課程の進学者が減っているということを鑑みますと,やはり学士課程ではどういう教育をするのかということを明確にして,より高度な専門教育を受けたい,提供したいという場合は,修士課程や大学院で更に学問を深めていくというような縦の課程ごとの役割の在り方を今後改めて検討すべきだろうというのが1点であります。
  それから,もう1点は,これまでもずっと言われてきて,学生の学修時間が,特に課外の学修時間が少ないということが質的転換答申以降言われてきております。いろいろな調査によりますと,一つは,教室内と教室外の学修時間を合わせると,それほど日本の学生が劣っているわけではない。ただ,その中の内訳を見ると,日本の学生は授業内の学修時間が極めて多くて,授業外の学修時間が少ない。例えば,余り大きな声で言えないのかもしれませんけれども,大阪大学でやっている国際調査によると,大阪大学の学生もバークレーの学生もトータルの学修時間は変わらないんですね。でも,バークレーの学生は,授業内学修時間と授業外学修時間が半分半分なんです。ところが,大阪大学の学生は8割ぐらいが授業内学修時間で,2割が授業外学修時間ということが分かっております。
  これはどうしてかというと,結局,日本の大学は履修科目数が多いからなんですね。ですから,そのために例えば1年の間に,あるいは1学期に10科目ぐらい履修していると。でも,その分,授業には出ているけれども,授業外で学修する時間が少なくなっているという実情があるかと思います。設置基準上では,第27条第2項で,いわゆるキャップ制について,努力目標になっているんですけれども,本日最後の資料として配付されている改革状況の調査によっても,8割以上の大学がキャップ制を導入しているんですけれども,全く実効性のない,1年間50単位とかを認めていて,何のためのキャップ制なのかよく分からないというような事情もありますので,やはり今後はこれをきちんと義務化することも考える。アメリカの大学生はなぜ半々になっているかというと,結局,授業料と単位数が連動しているからですね。たくさん単位数を履修しようと思ったら,その分,プラスアルファで授業料を払わなければいけない。日本の場合は,国立大学であれば54万弱の授業料の中で,キャップ制がなければ何単位でも何科目でもとれるという,非常にジェネラスな仕組みなんですけれども,学生の学修の深化にはつながっていないということで,先ほどの縦の機能の話とはちょっと違って,少しマクロな話なんですけれども,もう少しきちんと学びが実効化できる,深めることができるような仕掛けを,単に単位数の問題だけではなくて,授業料の問題なども含めて,もう少し体系的に検討していただければと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員。
【濱名委員】    川嶋委員の御指摘と若干近いところあるのですけれども,キャップ制の話で言いますと,目的養成分野との調整,他省庁との調整というのをやらない限りにおいてはキャップ制の問題は解決しません。教員養成制度が変わっていく中で,今度はまたどう変わるのか。中学校,高等学校の教員養成が開放制の歴史を長らく保持してきましたが,近年,行政指導を見ていると,どうも開放制に見えない。当該学科のカリキュラムでないと駄目で,共通教育は認定科目の対象から外すとか,そのような形でやっていくと,教員免許を取るという開放制の原理とキャップ制はどう関わってくるのかという問題が出てくるだろうと思うのですね。
  学位プログラムという考え方でいくとするならば,今川嶋委員が言われたような学修時間の総量をどういう形で担保していくのかという問題は大きな課題であろうと思います。設置基準の話でいうと,学位プログラムの考え方で三つのポリシーを入れたのですけれども,三つのポリシーを,設置審査等でどう見ていくのかというようなことも考えておかないと,結局,設置審査の中で三つのポリシーがあればいいという話になると,三つのポリシーを義務化する前の段階でも九十何%が取り組んで,できていたわけですから,学位プログラムとして進めていくのであったら,全体のフレームワークに係るところをしっかり構築しておかないと,実効性が上がらないのではないかと思います。建前としてのキャップ制であるとか,建前としての学位プログラムごとのポリシーというのであるならば,結果的にはまた次の問題が引き起こされるのではないかと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。坂東委員,どうぞ。
【坂東委員】    今後の高等教育の方向性について大変網羅的にいろいろな問題提起がされておりますが,是非加えていただきたいのは,今までも教育に当たって,どういう資格を持っている教員が何人必要であるとか,設備がこうであるとか,授業時間数が必要であるとか,そのようなインプット系についてはしっかり規定されているんですけれども,アウトカムについては,相変わらず日本の高等教育については測る基準がありません。
  例えば専門職大学院ですと,ロースクールで明らかになったように,司法試験の合格率によって教育成果が上がっているかどうかということが白日の下にさらされるわけです。普通の大学の場合はそのような基準がありませんので,例えば先ほども話が出ましたけれども,授業に出てさえいればいいのか,授業に出てぼーっと寝ていても,きちんと出席時数を獲得していれば,それで大学教育を受けたということになるのか。質というのはそういうことを測らなければいけないのではないかと思うのです。どれだけのことを教えれば,それがそのまま学生がストレートに100%それによって変わる,成長するというものではないんだ,その受け入れ方,学び方によって差が出てくるんだという現実から目をそらさないで,どのようにして教育効果を測るのかという観点を入れていただきたいと思います。
  OECDの方で,大学学士教育の結果を測るという試みがされているというふうに聞いておりますが,それについて日本ではどのようにフォローされているかということも併せて聞かせていただければと思います。
【鈴木部会長】    金子委員,どうぞ。
【金子委員】    OECDはAHELOというプロジェクトが4年ぐらい前にありまして,私,テクニカルアドバイザーのボードに入っていましたので,そのときの経緯を知っているので申し上げます。これは全部で十数か国が参加しまして,日本では工学部において調査をやりました。これは分野別と,それから分野を超えた思考能力の試験問題を作って,それでテストをしたわけです。ただ,分野を超えた能力については,CLAというアメリカの機関の行ったテストを原形として試行したんですけれども,最終的にはOECDでこのままでは実施不可能という結論になりました。
  理由は幾つかあるんですが,まず第1は,やはり総合的な思考能力をテストで測るのはかなり難しいということが分かったこと。それからもう一つは,これはかなり微妙な問題なんですけれども,CLAという団体がテストを作ったんですが,企業秘密で中身を公開しないんですね。これはオーナーシップがあるので,高大接続の場合でも問題になる可能性があると思いますけれども,より基本的な思考能力のようなものをテストしようと思えば,アルゴリズムみたいなものが複雑になって,このような特殊なもの,みんながアグリーするような問題に実は必ずしもなり得ないという問題が,かなり根本的な問題としてある。
  それから,3番目は,そのような非常に広い範囲のテストを行うために,テストの内容が全員同じものを使わないのです。そうしますと,これも高大接続のときに議論になりましたけれども,人によって問題が違っていて,それを組み合わせて判断するというような方法をとるので,これは一つの国全体について判断するにはそれが一番合理的なんですが,個々の学生については効果をテストできない。
  したがって,この大学ではどういうことをこれからすれば今後はもっと学生が学修するようになるかということの結論を得られない,そこから示唆が得られないという構造的な問題がありました。そこで,そのままでは実施できないという結論になりましたが,私が知っていますのは,OECDの本部はまたやりたいと言っているらしいのです。要するに,これは私個人の感想ですが,PISAでもってOECDは非常に有名になったわけで,いまだにあれが一番売れているわけですね。それの大学版をやりたいという動機が非常に強いようで,今,新しい計画を作って,日本も参加を打診されているというふうに私は理解しております。文部科学省がそれをどう扱っているかは知りませんが,一応そういう状況だと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。川嶋委員,どうぞ。
【川嶋委員】    金子委員の方から日本は工学分野で参加したという話が出ましたけれども,工学分野について引き続きテストバンクを作るという作業を,国立教育政策研究所を中心にして,チューニング・プロジェクトというのもあるんですが,この分野では引き続き共通のテスト問題を作るという作業を現在継続中です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。前田委員,どうぞ。
【前田委員】    いろいろな方のお話を聞いていてだんだん頭が混乱しつつあるんですが,例えば認証評価をやっていますと,設置基準を遵守していることというのはどうしてもチェックをしていかなきゃいけないということがありまして,本当に教員組織がそれで十分なのかどうか,まず数字で見ただけでは分からないんですね。特に大学全体で必要とする数というのがあって,規模が増えていくと,400人増えるごとに3人増やせばいいということになってしまう。
  そのような点からいうと,あるプログラムの学生を卒業させるために,どれだけの教員がきちんと責任を持って教えているのか。頭数ではなく,特任とかではなく,本当にどれだけの人がきちんと携わっているのかということが非常に知りたくなるというところがあります。
  それと,さっき三つのポリシーのお話が出ましたけれども,あれに関しましても,機関別認証評価では非常に限界がありまして,DP・CPとの関連性は見えるけれども,CPとカリキュラムというのは分からないわけですね。これはある程度専門が近くないと分からないという面がありまして,こういうことを総合して考えていったときに,外部の評価の限界から,内部質保証というのを大学がきちんとやるということが定着するのが非常に重要なのではないかなと思います。学位プログラムとどうつながるかって,少し自分の中ではうまく説明はできないんですけれども,やはり学生を中心に置いて,その学生を責任を持って卒業させることができるんだということを大学側が証明していくというのが内部質保証だと思いますので,このあたりのところを徹底していくということが必要かと思います。
  その際に,アウトカムなんですけれども,アメリカがもう20年ぐらいやっていると思うんですけれども,これは絶対に取り組んでいかなければいけないと思うんですが,その一方で,例えば連邦政府の奨学金にアウトカムを結び付けたという話は聞いたことがないですので,やはり成果そのものまではなかなかまだ追えない。でも,そこに向かってどういう努力をしているのかというところは,やっぱり内部質保証と非常によく関わることなので,そのあたりというのが今後鍵になっていくのかなという気がしております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。では,美馬委員,お願いします。
【美馬委員】    今後の高等教育の改革について,私は高等教育の機会均等ということを是非考えていただきたいと思います。これは,10年後,20年後,仕事の質がどのように変化していくか,あるいは少子化の問題を考えれば,できるだけ多くの人が高等教育に進学していくということは必要だと思います。
  特に今,子供の貧困が問題になっている中で,そのような子供たちにも高等教育に進学する機会を与えていく。そのような教育格差というのを埋めていかないと,ますますこれはみんなの問題として社会的な損失になっていくわけですね。健全な労働者,納税者ということ,それから労働生産性を上げていくということでは,いろいろな問題がもう既に地方都市では生じています。そのような中で,高等教育も,地域格差,つまり家から通えるところに大学があるということ,それから,子供たちにとって,大学生というのが身近にいるということはとても大事なことだと思います。
  また,先ほど,短期大学とか専門学校の役割というのが出てきましたけれども,例えば一度社会に出た後も4年制大学に編入するとか,社会ニーズに合わせた内容に対応していくために,短期大学や専門学校が割合早くに社会ニーズに対応できるとするならば,教員が本当にそこに合わせていけるのかどうか,教員の質をどのように保証していくのかという問題も出てくるように思います。
  それから最後に,先ほどの学修時間の総量の担保というお話ありましたけれども,今,単に学生たちが勉強したくなくて学修を怠けていて,時間外で学修していないというだけの問題ではなくて,アルバイトをしている学生が多いんですね。かなりアルバイトが毎日きつい状態になって,結局勉強する時間も圧迫している。そうすると,今,奨学金を付与するということでありますけれども,今度は,お金の使い方が個人によってしまうんですね。そのようなところもうまく管理できないような学生もいたりする。ならば,もしかしたらこれは一人一人にお金を配るよりも,授業料というところをもう少し制度的に,国公私立大学を含めて,今後検討していく必要があるのではないかと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    幾つか出た論点と重なってくるかと思うのですけれども,今後の高等教育政策の在り方の論点ということであれば,これは私も日経に書いたことありますけれども,地方と中央の問題で,知事会が申入れをして,当然文部科学省も対応されていると思いますけれども,私は,ある意味で,実員の定員化を戦後3度目,急増期に過去にあったスキームを急減期に実質的にやってしまったというのは物すごく大きなダメージになるだろうと思います。定員超過云々(うんぬん)の話ですと,例えばさっき設置基準の話が出ていたのですけれども,現行の設置基準は完全にスケールメリットです。近年の大手大学の定員増を見ていると,明らかに学科ごとに10人ずつの定員増とかが見受けられる。何故あんなやり方をとっているかというと,その方式で定員増を行えば,ほとんど教員増やさないで済むというやり方で,教育の質というのはどう考えての構想なのか。基本的にはST比というのは重要な指標だと思うのです。アメリカと日本の高等教育で決定的に違うのはその教育条件の違いですから,そういう観点を入れて,なおかつ首都圏に更に学生が集まってくるような問題をどう改善するのか。要するに,スケールメリットと都市と地方の問題を視野に入れておられるとは思いますけれども,その重要性についてはしっかり認識してほしい。これは深刻な話だと思うのですね。
  今起こっていることは,地方で公立大学作りのブームで,これは私の聞いているだけでも多数あります。何故そういうことをやるかというと,結局,公立大学になると地方交付税が入ってくるので,学生が何百人か増えるだけで,4学年で1,000人増えたら交付税が全体として増えるからというような話です。設置主体の問題も踏まえてどう考えていくのか。恐らく文部科学省だけでは済まない話でしょう。国土政策全体に関わってくる問題だと思うのですけれども,この公立大学ブームでやっていって,文部科学省から見れば私学助成の対象校が減り,所管が総務省に移るというふうに考えていらっしゃるとは思いませんが,基本的に地方から大学がなくなっていくということの持っている影響というのは多大なものがあるわけで,せっかく奨学金を整備されたとしても,東京に出てこないと,地方に大学がないという状態を考えていくと,やっぱり文部科学省に考えていただかなきゃいけないことは,地方に大学があることの効果みたいなものを実証データで証明をしていかなければいけない。要するに,エビデンスがなければ,社会に対してとか他省庁に対して説明し切れないというところがあると思うので,そこらのことを踏まえた議論を次期中央教育審議会ではやっていただきたい。今回もかなりデータは出ているのですけれども,肝腎要の私が気になっているスケールメリットであるとか,ST比であるとか,要するに教育環境に関わる条件がどう担保されるのかという視点は非常に弱いような気がしますので,これは是非検討していただきたいと思います。
【鈴木部会長】    どうぞ,二宮委員。
【二宮委員】    今,美馬委員と濱名委員が言われたことに8割ぐらいは重なることなんですが,あと2割の部分で,資料2-3を検討していただいたときに,一種のグランドデザインに準ずるぐらいのものになっていくんだろうと思うんですけれども,設置者別という観点をどこまで入れていただいたのか。
  特に,我が国の経済,あるいは所得等々,美馬委員が言われるように考えていくと,前期高等教育,短期高等教育が果たす役割ってますます大きくなっていくと思うんですね。短期大学が4年制大学にシフトしていって,9万人が6万人まで下がってきたと。今度は,ニーズに応えてないからという議論があるようですけれども,しかし,これは新たなニーズ,地域の産業とか,サービス産業とか,あるいは学び直しとか,そのようなもの考えるときには,やはりコストを考えてもらわないと,今の国民には負担できないという状態ですね。
  ですから,短期大学が4年制大学になって公立化,あるいは大学になっていくということじゃなくて,ショートサイクルの高等教育の機関がもっともっと充実される。しかし,それはパブリックセクターが責任を持って考えてもらうと。プライベートセクターの方の役割というのは,少しそこからシフトして,大学教育,あるいは大学院教育とか,そういうことにシフトしていくことが,これまで何回も中央教育審議会もコミュニティカレッジとか議論されていますので,重なることは分かっているんですけれども,今こそ改めてこの格差社会の中で,地域に必要なのは,2年制のコストの低い,もし設置基準が一時的に弾力的にでももう少し緩めていただくのなら,短期大学でもコストは安くできますけれども,今のままだと,美術で7人も先生を抱えながら,2年間の学生の学費で先生を維持しろと言われても,それは不可能なことなんですね。幾ら才能を生かしたいという県民の方がいらっしゃってもね。私も,私立大学,今,扱ってみて,本当につくづく思うようになりましたので,そういう観点を次は考えて。機会は,アメリカと同じように,最初の2年間と高等教育の2年間は全ての人に提供できるんだと,そういう気概を持って日本の国民のための大学作りをしていただきたいという感じがいたします。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。坂東委員,どうぞ。
【坂東委員】    この中には書き込まれていないんですが,もう一つの問題提起としては,今,アメリカではミネルバ大学にみられるようなe-ラーニングを活用した大学教育,あるいは短期大学教育が成長しております。日本でも社会人教育が非常に低調であるということは先ほどのデータでも示されましたが,そのコストを誰が負担するのか,授業料を負担するのは誰なのかと。恐らく18歳の学生に対しては,親が中心に,アルバイトももちろんあるんですけれども,奨学金や,特に親のサポートがあるからこれだけのコストを負担できるわけですが,社会人の場合はなかなか自分のためにそれだけの投資ができない。先ほどおっしゃった,より安いコストで教育を受けるための方策というのを,新しい学びのスタイルとして検討の方向だけでもお出しになった方がよろしいのではないかなと思います。ありがとうございます。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。どうぞ,川嶋委員。
【川嶋委員】    どなたもおっしゃらないので,一言記録に残していただきたいと思って。一つは,もう既に論点としては挙げられておりますけれども,今の授業料の負担を誰がするのかということを含めて,高等教育におけるファンディングですね,財政的支援の在り方については,是非御配慮願いたいということです。特に学術研究の進展という点からいきますと,これは国立大学協会をはじめ,いろいろなところから基盤的経費がどんどん削減されることによって,若手教員の雇用の不安定化とか,そもそも研究のアウトプット,アウトカムが少なくなっているというようなこともありますので,是非ファンディングについても十分な,それで国公私を超えた全体のシステムの中でどういうファンディングをしていくのかということについて是非議論をお願いしたいと思います。
  それからもう1点はもう少し細かな話なんですけれども,留学生が15万人まで増えているという御指摘をされていますけれども,しかし一方で,昨今,先ほどの設置審査に関わって,設置審査の際は定員超過していると新たな設置が認められないという。その中には,国費留学生や,これまでほかの調査では例外と認められてきた留学生も全て含んだ形で定員超過を測定するんだということになっていますが,一方で,スーパーグローバル大学創成支援事業等を通じて留学生を増やしたいと思いつつも,一方で,新たな学部・学科なり,大学院専攻を設置しようと思うと,学生定員を抑えなきゃいけない。そうすると,どうしても留学生と日本人学生,どっちを採るんだという話になって,留学生を増やすことについての非常にためらいが,特に現場の学部の先生方,非常に強いんですね。ですから,同じ文部科学省の高等教育局の中でも異なったベクトルの政策がこれまでも多々見られてきたので,整合性のある高等教育政策に今後はしていただきたいということを強く要望したいと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。勝委員,どうぞ。
【勝委員】    今の留学生のこととも少し関連するのですけれども,今回の資料2-3にいろいろな方向性が書いてあると思うのですが,特に大学においてグローバル化に対応した多言語による教育の強化というのがあると思うのですけれども,これは何かと言えば,やはり英語でのプログラムだと。先ほど来,学位プログラムを中心とした大学制度について議論されているということで,学位プログラムを中心としたものに移行していくということであるかと思うのですが,その中においても,分野に応じた,特に国際標準化されている学問というのはいろいろあって,工学系もそうだし,医学,あるいは経済学等もそうだと思うんですけれども,そういったものについては,そこの部分での英語でのプログラム構築というのはこれから非常に重要になっていくだろうと思っています。
  このプログラムの質を考えた場合,先ほど来,学修成果,特に学生のアウトカムを測るのは非常に難しいという話があると思うのですけれども,むしろプログラムの質というのはある程度測れるわけで,これは教員がどういったメンバーで構成されているかとか,あるいは,例えばもし良いプログラムであれば,海外からも多様な学生たちが来るであろうし,そういったものを重視していくことが必要なのではないかと。
  今,例えばSGU等でも,英語,あるいはTOEICスコアであったりとか,あるいは留学モビリティの数とか,そういったものが問われているわけですが,そうではなくて,プログラムの質というものが非常に重要で,プログラムの質を目的変数にすることが重要だと思います。先ほどの話では,例えば学士プログラムで,日本の場合は教養ではなくて専門性が高いという話がありましたけれども,私のところに来ている学生を見る限りでは,外国の留学生よりもむしろ日本人の学生の方が実は専門性においては長(た)けている部分も非常にあるので,そういった日本の強みも認識をしながらプログラムの質強化というものをこれから考えていくべきなのではないかと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    日比谷委員,どうぞ。
【日比谷委員】    午前中の作業チームにも出ていて,そこで少し議論になりましたが,午後は誰からも出ないので,一応補足ということで申し上げますと,学位プログラムをきちんと作っていくということは全ての段階で大変に重要と午前中もさんざん主張したんですが,特に大学院で人文社会系のところの学位プログラムがもっとずっとしっかりしなければいけないという意見が強く出ていましたので,そのことをここでも共有したいと思います。特に国際的な質保証というような観点から,これは学部にも言えることですけれども,きちんとした体系的な学位プログラムを作ることが非常に大事だと思いますので,それは一言付け加えたいと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員,お願いします。
【濱名委員】    定員の問題について言い忘れたことがありまして,定員超過率1.1倍というメルクマールがすごく強調されているのですけれども,恐らく作られたときは,定員超過する大手私大の話を想定して作られたと思うのですけれども,逆に考えてみると,中退率との関係をどう考えているのか。教育の質保証ということを考えていくと,マスメディアの中には中退率が高いことをどう捉えるのかということについてのいろいろなものの見方があるようなのですけれども,現在OECDに日本が出している中退率はたしか10%程度だと思うのですね。10%中退したら,定員超過率を1.1倍未満に抑えたら,定員割れになるわけです。そうすると,そこらの考え方をどうするのか。質保証するということと定員を遵守するということをどうバランスをとるのかということについての考え方が,政策ごとの整合性が果たしてあるのかと思うのですね。1.09倍だと,全国平均で日本の大学は,留年者が大勢出ない限りにおいて,大体収容定員が割れるという計算があり得る。少なくとも全てでなかったとしても,かなりの大学がそういう状態になってくる。
  今度は,逆に言うと,定員を充足していない大学はという世論が他方であるわけですから,今のスキームのままで言うと,質保証を一定やって,10%程度の中退率というのが仮に出たとするならば,定員を割れて,そういう大学はネガティブな評価しか得られないという形になってしまうと,これは定員の問題として,定員と質保証の関係という点では問題が出てくるだろうと思うので,その点についてはどう考えていくのかということについては是非御検討いただければと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。小林委員,どうぞ。
【小林委員】    私も午前中,同じような議論をずっとしていたので,新しい観点というのをいろいろ考えていたんですけれども,一つ抜けていると思ったのは,今までの議論というのは大体,今までは規制緩和でずっと来たので,規制を強めるという話が非常に多いんですね。それに対して,大学の自主性とか公共性というのをどのように担保していくかという議論というのが余りここでは入っていないので,その辺のことを少し考える必要があるんじゃないかということで,特に大学の説明責任をどう果たすかというので,前の大学教育部会でもかなり認証評価の在り方について議論して,3月にまとめを出したわけですけれども,それと設置基準の関係をどうするかという話がこれから非常に重要になってくると思います。
  それに関連してもう一つは,大学の情報公開をどうするかという議論を大学教育部会でやったと思うんですけれども,大学ポートレートを含めて,そのあたりの議論がここには実は入っていないので,それは観点として入れていただければと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。どうぞ,安部先生。
【安部委員】    私も午前中にいろいろ言っていたんですけれども,一つ言い忘れたことがあって,先ほどから地方の小規模の短期大学や大学の教育の機会均等とか,地方の地方創生とか,そういう役割のためには残しておくべきだというような御意見があったんですけれども,それでも小規模の大学というのはスケールメリットにおいて非常に不利な状況にある。それを解消するために,例えばe-ラーニングの大学などの授業を一部取り入れるような,JDとまではいかないけれども,それに近いことを協働でやったりとか,あるいは地域大学間のコンソーシアムを形成して,教育課程を協働でやるようといったものの促進ができないか。地方の大学を残すというか,適正配置をするためにできないかという観点,そういうことも書いていただければと思います。
  以上です。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】    度々で申し訳ないのですが,一つ目の議題との関係でいうと,私も最近アメリカのコンピテンシー・ベース・エデュケーション(CBE)というプログラムを調べに行ったのですけれども,方式は遠隔教育なんですけれども,遠隔教育が余り成功し過ぎると,地方の大学が要らなくなるかも分からないというリスクはもちろんあるのです。けれども,見ていったときに,学習支援のプロフェッショナルの存在が物すごく大きいということに気がついたのですね。それは恐らく日本でいうとオーバードクターとか,そのあたりの人たちがノンテニュアでやっている。それで,驚いたのは,我々から考えると,アメリカの高等教育では遠隔教育で社会人を対象にして満足度が物すごく高いので,どれだけ手厚いサポーティブスタッフがいるのかと思って聞いたら,1人のスタッフが大体300人とか400人の遠隔教育のサポートをしているのですね。それはかなり専門性の高いトレーニングと,それと,ほかにテニュアがアメリカの大学でどんどん減っていっているから,テニュア職がないからそういう仕事でもやらなければいけないということだと思うのですけれども,だから,そういう点からいうと,専門性の高い職員を育成していくというときに,職員なのか,教員なのか,分かりませんけれども,やっぱり学習支援の専門的なスタッフ養成ということは,次のことを考えていくときに,多様化をどんどんすくっていくわけですから,少し視野に入れておく必要があるのではないかと思います。それと,今のオーバードクターの問題等々をどうつなげてソリューションが見つけられるか,あるいは有効に働いていただくことができるのかというようなことも視野に入れていただいてはどうかと思っています。
【鈴木部会長】    篠田委員,どうぞ。
【篠田委員】    既に濱名先生や前田先生が発言されましたので,思っていたんですが,三つのポリシーを実質化して大学の質向上を実現する。この部会でもガイドラインを出して指針を示しているわけですけれども,このあたりのところが,認証評価制度の評価基準もそれに伴ってかなり変えていく。今私が所属している日本高等教育評価機構でも質向上に視点を合わせた評価基準に変えようとしているわけですけれども,やっぱり今後5年とか10年,大学が目指す方向の中で,教育の質向上の実現をいかにしていくのかというのは本当に大きな問題だと思っております。
  学部・学科ごと,あるいは学位プログラムごとの質向上,これはポリシーをきちんと示してやっていく,マネジメントサイクル,教学PDCAを回していくということなんですけれども,それをやっていくには,やはりガイドラインのところでも示したように,教員一人一人のところが,シラバスや教育目標や授業科目で達成目標をいかに実現をしていくのか,そのためにどういうふうに授業評価なり学生の評価をして,成長を確認しながら取り組んでいくのかという,このシステムを作っていく,あるいはそれをきちんと大学ごとに回していくというのはなかなか難しいというか,簡単にできるものではないですし,学長先生を軸とした大学全体としてその環境を整えていくとか,さっき出たようなST比だとか,きちんと質向上ができるような条件なり環境を整えていく。補助金の制度もあると思いますけれども,かなり全体の仕掛けをして大学のマネジメントを変えていかなきゃいけない。このあたりのところも,実際に三つのポリシーをただ作るだけでは意味がないわけですので,いかに本当に実行していくのかというあたりのところも政策の一つの柱にしていただければ有り難いなと思っております。
【鈴木部会長】    ありがとうございます。金子先生,どうぞ。
【金子委員】    先ほど小林委員がおっしゃったことと重なっているのかもしれませんが,機関の機能を強化するというのは,考えてみれば非常に重要な概念なのではないかと思うんですね。今までは高等教育に進学需要が非常に強くて,それを規制するという形で,その中で質が低下するのを規制するという形で設置基準が作られてきて,それが今まで質維持の主なメカニズムになってきたわけですけれども,これから強化するということになると,今までの設置基準を基にした質維持の体制では十分ではないというのがやはり基本だと思うんですね。で,強化するにはどうしたらいいのか。しかもこれは,今大学教育が非常に多様化していて,私は多様化していいと思うんですけれども,ですから,一律的な基準みたいなのを適用するのは非常に難しい。その中で何を,どうしたら機能が強化されていくのかということが課題になってくるわけですが,先ほどからアウトカムの話が出ていましたが,私はアウトカムも重要だと思いますが,なかなかこれを把握するのは難しくて,インプットとアウトカムの中間にある例えば学生の学修時間とか,どう授業を受けているのかとか,授業に対してどういう感想を持っているのかとか,プロセスに関する情報がかなり今でも集められますし,この間御報告があった国立教育政策研究所の報告でもかなり面白い結果が出ていたと思います。
  私,国立大学に関する集まりのときに,国立大学,決して結果がよくないと申し上げたんですが,それはやはりかなり厳しく捉える必要がある。ただ,少なくともそういう情報はかなり得られるようになってきているので,問題は,それをどの程度どのようにして公開するのか。それを前向きの競争,大学間の競争につなげていくのか。それから,認証評価のプロセスでもってそれをどのように使っていくのかということは具体的な問題に既になっていると思います。そのようなことはこれから次の期で具体的に検討していただければと思います。
【鈴木部会長】    ありがとうございました。非常に広範囲にわたる御意見を頂きました。これにて御意見を承るのを終了させていただきます。
  大学教育の改善に関する御議論につきましては,以上とさせていただきます。頂いた御意見に関しましては,次期の中央教育審議会の議論に役立てていただきたいと考えておりますので,よろしくお願いいたします。
  それでは,本日の議事は終了いたします。
  どうもありがとうございました。

――  了  ――

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