大学教育部会(第27回) 議事録

1.日時

平成25年12月13日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 大学の質保証の充実について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)佐々木雄太部会長
(副部会長)黒田壽二副部会長,谷口功副部会長
(委員)高橋香代,長尾ひろみの各委員
(臨時委員)奥野武俊,金子元久,川嶋太津夫,佐藤弘毅,島田尚信,濱名篤,吉田文の各臨時委員
(専門委員)安部恵美子,鈴木典比古,長束倫夫,長谷山彰,山田礼子の各専門委員

文部科学省

布村高等教育局長,大槻総括審議官,常盤高等教育局審議官,浅田高等教育企画課長,牛尾専門教育課長,今泉大学設置室長,田中高等教育政策室長,白井大学振興課課長補佐,児玉専門教育課課長補佐,秋山高等教育政策室室長補佐 他

5.議事録

(1)届出設置制度の課題と見直しの検討について,文部科学省から資料2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  所定の時刻になりましたので,第27回大学教育部会を開会します。本日の議題のうち,資料2及び資料3に関わる届出設置制度の課題,それからインターネット等のみで授業を行う大学に関する案件,この二つについては,本日部会としての結論を頂きたいと考えております。それから資料4のジョイント・ディグリーと教学ガバナンスの問題については,本日,他の部会での審議状況を御報告いただき,次の大学分科会で審議ということになります。それぞれの報告を踏まえて御意見があれば伺っておきたいと,このように進めさせていただきます。
 では,まず資料2に基づいて,届出設置制度の課題と見直しの検討について御審議を頂きたいと思います。これは既に一度,この部会で御意見を伺っておりますが,再度説明をしていただきます。

【今泉大学設置室長】  それでは,御説明申し上げます。資料2を御覧ください。
 届出設置制度についてでございますが,まずこの制度の趣旨を申し上げさせていただきたいと思います。これは,学校教育法の中において,大学の組織の改編には文部科学大臣の認可が必要というのが原則ではあるものの,学位の種類及び分野の変更がないものについては届出ができるという形になっております。ですので,学位の種類及び分野の変更がないということについてでございますが,その意味するところは,やはりカリキュラムや教員の専門性がある程度明確であって,組織改編を通じても,学位の種類及び分野の変更がないのであれば,教育研究環境がある一定程度認可したものが移行するであろうという哲学の下でこの届出制度というものができております。
 その中において現状,その運用の中で二つ大きな課題がございます。一つが,目的養成分野の取扱いでございます。二つ目が,学際分野の取扱いでございます。
 まず,一つ目の目的養成分野の取扱いの中で,特に何が課題かと申しますと,保健衛生学という学位の分野があるのですが,これが非常に大くくりになっております。2ページ目を御覧いただいて,その下の図がありますが,現在,保健衛生学については看護師養成,保健師養成,理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,放射線技師,はり,鍼灸(しんきゅう),柔道整復,又は歯科衛生士も保健衛生学に含まれているところでございます。
 今申し上げた各目的養成分野でございますが,先生方御承知のとおり,各分野それぞれ専門性が明確であって,互換性が必ずしも相互にあるというわけではないものの,保健衛生学という学位の分野でひとくくりになっておりますので,例えば1ページ目に戻っていただいて中段にある例のようなことが可能になります。つまり,理学療法学科というものが存在していますが,これは保健衛生学に分類されますリハビリテーションでございますけれども,看護学科も保健衛生学ですので届出設置によって組織改編が可能になりますが,理学療法学と看護学,それぞれ教員に求められる専門性や教育研究設備というものが異なります。その中において,届出が認められるという仕組みになっておりますので,保健衛生学の大くくりな部分について見直しを行っていきたいと考えているところでございます。それが1点目でございます。
 3ページ目を御覧ください。もう1点目の学際分野の取扱いについてでございます。現在,学際分野として取り扱っているものは,複数の学位の分野にまたがっているものについては,これを学際分野として取り扱っております。その際,学際分野の組織改編については,既設の組織の教員数の2分の1以上が新しい組織に移行する場合においては,届出で設置が可能となっております。
 例えば,3ページ目の上段の例でございますが,法学系の組織があり,法学系と経済学系を併せた学際の政治経済学科というものを作る。これは法学系の教員が2分の1以上いれば,学際で政治経済学科が届出設置できるわけですが,設置後,今度は経済学関係が2分の1以上になれば,政治経済学科の経済学系2分の1以上の教員が移行することをもって,ここでは例で経営学科にしていますが,経済学関係の組織に届出で移行することができることになります。
 通常であれば,法学科から経営学科に移行するためには認可が必要になるところでございますが,この学際というスキームを使えば,複数回届出設置をすることによって,届出だけで組織改編が行われてしまいます。これは,冒頭申し上げた届出制度が,本来,学位の種類及び分野の変更を伴わないものにおいて届出が認められる仕組みであったことを考えれば,組織の届出制度の本質にそぐわない形になっていると考えているところでございます。
 そこにおいて,今回考えている制度改正といたしましては,学位の分野が特定できるものについては特定する。一つ目は,主となる学位の分野が特定できるものは,その主となる学位の分野として取り扱うということです。もし,この主となる学位の分野が特定できない場合,複数にまたがってフィフティー・フィフティーであるような場合については,複合分野として取り扱う。ただ,これはいずれも,学位の分野が明確である場合には,学位の分野として取り扱います。
 そして二つ目に,学位の分野が特定できないような学際分野というのがございます。その場合には,基本的には認可申請とさせていただきたいと考えています。ただ,学位の分野が特定できないような学際分野で,なおかつ既設の組織を廃止して,その中の2分の1以上の教員が移行する,そして学位の分野及び種類の変更がないような場合については,これにのみ届出設置を認めるという形の制度改正を考えているところでございます。
 今後のスケジュールでございますが,平成26年4月1日から施行を予定しておりまして,27年度開設案件からの適用を考えているところでございます。これにつきましては,制度改正を行う前にパブリックコメントを募集して,大学等に対して周知を図り,その大学等において準備を図る必要がある関係上,今回の本部会において御決定いただければ有り難いと考えているところでございます。
 なお,本件につきましては,大学設置・学校法人審議会において過去半年にわたって議論を積み重ねておりまして,今週月曜日の大学設置分科会,昨日の学校法人分科会において既に御了承いただいているところでございます。
 本件については以上でございます。

【佐々木部会長】  資料の後ろに基準の改正案も示してありますので,これを含めて少し御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

【濱名委員】  私も設置の関係の仕事をやらせていただいていたので,こういうことをやらざるを得ないのは,残念な状況だと思うのですが,一つ気になるのは,学位の分野の識別を誰がどのようにやるのかということです。現在,後ろについている設置基準の中にある学位の分野と,審査を行う専門委員会がまず一致しているのかという問題と,申請者が学位の名称について,訳の分からない,世界でそこしかないというような名称を競って付けていた時代もあり,まだ今日もそういう状況が残っていると思うのですけども,この分野の判断というのはどのように運用していくことが可能なのかという,そこのあたりについて御説明いただければと思います。

【今泉大学設置室長】  濱名委員はよく御存じの分野でございますが,御承知のとおりでございまして,この分野の判断については,まず申請者側において説明の資料を提出してまいりまして,事務局でその資料に基づいて17にわたる学位の分野の専門委員会に付託いたしまして,それぞれの専門委員会において,これは,例えば文学関係が含まれるとか含まれないとか,又は,ここは例えば教育学・保育学に回したらどうかという提案を頂いて,振り分けの調整を行っているところでございます。

【濱名委員】  大体,その御説明で分かるのですけど,問題は学位の名称の多様さをこういう機会にきちんと整理して制度化していかないと,申請書を出した段階で,申請者と大学設置室の窓口で調整していくという形でいいのかという疑問があります。
 この際,これと連動するわけではないですけど,これがもし制度化が進むとするならば,学位の名称についての具体的な例示とか,情報提供をしていかないと,申請者側は相変わらず届出設置に対する準備が非常に不十分な状態であったり,見通しが甘かったり,ろくに市場調査もしないで新しい名称で持ってくるというケースがあるわけですから,そこらについての根本的な解決を図ろうとすると,そこまで踏み込まないと難しいのではないかと思いますが,いかがでしょうか。

【今泉大学設置室長】  今回の届出制度の話とは少し次元が更に上の話でございますが,学位をどう出すのかということについて,その特定をする,どういう能力を身に付けさせるのか,それに対する学位の名称をどうするのかというところは,おっしゃるとおり,学位の質を保つために重要な観点でございますので,その整理をどうするかは,まさに先生方のお知恵を頂戴しながら,今後引き続き検討してまいりたいと思います。

【鈴木委員】  分野というのを野放図にして今まで来たという側面があるわけで,私もこのような形で非常に大くくりなものを明確なくくり方に変えていくというのはどうしても必要だと思います。
 今の濱名委員からの質問とも重複する面がありますけれども,このくくりをきちんとすることによってどの程度,今までの学位の分野の数,種類にきちんとした枠がはまるかどうかという数字的な予想のようなものは付きますでしょうか。

【今泉大学設置室長】  申し訳ありません,数字的な予想は付かないです。
 ただ,一つ言えるのは,鈴木委員御承知のとおりでございますが,最近,保健衛生学については,看護学を中心に組織改編が多く存在しております。その意味で,特にこの保健衛生学の課題としてあるのが教員の確保の部分でございまして,多くの教員がこの組織改編で専門性が異なるので,新たな教員を雇わなければいけない。でも,いろいろな大学で看護学を設けようとするので,教員の手配が付かなくなる。結果,高齢の先生方が多く集まったりとか,又は学位の資格が十分でない人が集まってきたりとか,そういう課題が生じているところでございます。
 ですので,今回こういう形で,保健衛生学については看護学とリハビリテーションとそのほかというように3分割させていただくことにしますが,これによって保健衛生学の最近上がってきている多くの案件は,きちんと質保証できる形になるのではないかと思います。
 ただ,鈴木委員の御質問であるどれぐらいの見込みかというのは,申し訳ありませんがよく分からない状況です。

【鈴木委員】  わかりました。

【谷口副部会長】  基本的な考え方はこれでいいと思いますけど,学際で分割できるものとできないもの,その辺はどう判断しますか。ある意味では,これはできると言ってもいいし,教養学部でも,やり方次第では,つまり中身によってはできないということにはならないかもしれない。その辺の判断はどうするのかというのが不明確ですが,その辺はどう判断するのでしょうか。

【今泉大学設置室長】  それは個々,具体事例を見ていかなければ,なかなか難しいところだと思います。
 例えば,イメージしやすいところで申し上げれば,先ほど例に挙げた政治経済学部のようなものであれば非常に明確で,法学系と経済学系を含んでいる,こういうのは非常に明確な学際だと思いますが,おっしゃるとおり,教養学部のようなものであれば,正直,学位の分野を特定するのは困難であろうと思います。実際の運用上,設置認可審査においては,それを無理やり,この分野,この分野,この分野ということで各専門委員会に割り振りをさせていただいて,それぞれの専門委員会で審査して,審査会において統合した形で学際分野を御審議いただいておりますけれども,実際問題のところは,まさにおっしゃるような教養学のようなものは,なかなか割り切れないと判断せざるを得ないと思います。

【谷口副部会長】  教養でも,ある程度数が集まれば,これは文学分野とか内容によって分野のかたまりがある。それが小さければ余り細かく分けることができないから,分けられない分野ということになってしまうのではないかという気もする。

【今泉大学設置室長】  その辺は,所属する教員の専門性とか,あとはカリキュラムの中身,そういうものを見て判断していくことになるだろうと思います。

【谷口副部会長】  抜け道を作らないという意味では,きちんとしないといけないということは正しいと思いますから,しっかりやっていただくのはいいと思います。

【佐々木部会長】  これに付随して出てくる問題が幾つかあると思います。学位の分野や,学位の名称の問題などです。ただ,本日の提案は,手続を明確にすること,つまり,設置認可を得ずに安易に新しい学部が設置されるということがないようにすること,そこが本日の提案の趣旨だと思います。これに関わる事項は文部科学省で引き続き御検討いただくことになりますが,本日のその部分についてもう少し御意見があれば伺いたいのですが,いかがでしょうか。

【長尾委員】  基本的には反対ではないし,看護系においてどんどん分野が分かれて,届出で何とか入ろうとするところを食い止めようと思ってらっしゃるのはとてもよく分かります。
 そういう状況の中で,今,谷口副部会長がおっしゃったような懸念が私にもあります。というのは,分離していこうという一方,逆に小さな大学は,学部を統合していこうという動きが出てきます。そのときに,例えば複数の学位が,リベラルアーツ,教養教育系で一つになっているときに,複数の学際,学位分野というものが,新しいものとしてないですから,そういうときの状況,新しいことに対してどのように対処したらよいのかとか,いろいろな問題が出てくると思うのですけども,そこも捨てることなく審議をしていただけたらと希望します。

【佐々木部会長】  そこはよろしいでしょうか。

【今泉大学設置室長】  はい。もちろんそういうつもりで制度設計しております。

【佐々木部会長】  それでは,本日の提案をこの部会としては了とするという結論でよろしいでしょうか。ありがとうございました。

(2)「インターネット等のみを用いて授業を行う大学における校舎等施設に係る要件の弾力化による大学設置事業」の特例措置の全国展開について,文部科学省より資料3-1及び3-2に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】 続いて,「インターネット等のみを用いて授業を行う大学における校舎等施設に係る要件の弾力化による大学設置事業」の全国展開についてという案件です。この件も一度,ここで御意見を伺った経緯がございますが,本日改めて説明をしていただきます。

【牛尾専門教育課長】  専門教育課長でございます。私から御説明をさせていただきます。
 本件につきましては,今,御紹介いただきましたように,前回も御議論いただいているところでございますが,今回は,前回の御議論なども踏まえまして,具体的な設置基準の改正内容について御提案をするというものでございます。
 まずは経緯について,簡単に御説明をしておきたいと思います。まず,資料3-1を御覧いただければと思います。問題となっておりますのは,通信制大学におきましてインターネットによる授業だけで卒業可能な大学についてのケースでございます。この点につきましては,従来ですと面接授業,いわゆるスクーリングというものが必ず必要であった部分につきまして,インターネットでも構わないという改正が平成13年3月の時点で行われております。この改正の結果,通信制大学におきましては全ての授業をインターネット等の授業で構わないと,いわゆるスクーリングを行わないで構わないということがこの時点で可能となっているということでございます。
 この改正の際には,特にスクーリングがないからといって校舎面積について従前の通信制の場合から緩和するというような措置は取っておりませんでしたけれども,この点についてその下の囲みの部分でございますが,全てインターネットで授業を行って,いわゆるスクーリングを行わない大学については面積基準を下回ってもかまわないのではないかという特区における提案がなされ,措置がされたところでございます。具体的には,平成19年4月にサイバー大学,平成22年4月にビジネス・ブレークスルー大学がこの構造改革特別区域制度を活用して,校舎面積が少ない形での開校をされているということでございます。
 その後,構造改革特別区域制度につきましては,この特例措置によって弊害があるかないかということについての評価をして,ない場合には全国展開をするという枠組みになっております。具体的には,平成23年に構造改革特別区域推進本部におきまして評価が行われまして,平成23年度中の評価結果において特段の弊害がないので,全国展開をしていいのではないかということが示されました。それを受けまして,一番下の囲みでございますが,平成24年4月9日の時点で,政府の構造改革特別区域推進本部決定としまして,教員と学生との対面性を補完し得る方策などインターネット大学に関する課題について専門的な見地から十分な検討を行った上で全国展開を行うこと,時期の目途としましては,平成25年度を目途に措置と決められたということでございます。
 この決定を受けまして,平成24年の7月以降調査研究協力者会議におきまして全国展開に当たって必要となる課題について御検討いただきまして,その結果について先般,前回の本部会で御報告をさせていただいたということでございます。その内容については,2ページに示してございます。それについてはまた後ほど御覧いただければと思います。
 具体的に,その課題等も含めて,今回御提案する省令の改正案という形で御説明をさせていただきたいと思います。資料3-2を引き続き御覧いただければと思います。こちらが協力者会議あるいは前回の本部会での御議論を踏まえての具体的な省令改正の内容についての提案でございます。1枚目の改正の趣旨はただいま説明したとおりでございますが,評価・調査委員会における評価において全国展開すべしということが決まっていること,その具体的な中身としては改正の趣旨に書いてあるような内容ということでございます。
 具体的な部分は,2枚目を御覧いただければと思います。2枚目に改正の概要としてまとめてございます。今回,これまでの協力者会議の報告書の内容,それから前回頂いた意見を整理いたしまして,省令改正として対応すべきものと,通知等で留意事項として示すというものに分けさせていただいております。
 まず,省令改正の内容としましては,(2)改正の概要の1にございますとおり,大学通信教育設置基準の中で,インターネット等を利用して教室以外の場所のみにおいて授業を履修させるものにつきましては,「インターネット等を利用して行う授業の特性を踏まえた授業の設計その他の措置を当該大学が講じている」ということ。それから,「かつ,教育研究に支障がないと認められる場合」というような条件を付した上で通信教育学部を置く大学の校舎等の施設の面積基準を満たさなくてもよいという内容の規定を置いてはどうかということでございます。
 2につきましては技術的な改正でございますが,特区の特例措置として定めていた省令の内容については削除するというものでございます。
 施行期日については,お認めいただいた場合には,平成26年4月からと予定しているということでございます。
 ただいま申し上げました,設置基準上において明記をしたいと思っておりますインターネット等を利用して行う授業の特性を踏まえた授業の設計その他の措置の内容でございますとか,教育研究に支障がないと認められる場合,これをより具体的な形で通知で示してはどうかという内容を(4)留意事項にまとめているところでございます。
 まず,1のところでございますが,これは念のためということでございますけれども,今回の措置はあくまでも面積基準について満たさなくてよいというものでありまして,大学が当然,備えるべき教室,研究室,図書室等の校舎等は備える必要が,これは省令上もございます。このことについて,念のためきちんと示してはどうかということでございます。それから,その下も念のためということでございますが,今回の基準の緩和は,あくまでも全ての授業をインターネット等で行う場合ということでございますので,卒業要件内に面接授業がある場合には当然のことながら,従来どおりの施設面積基準を確保していただく必要があるということも示してはどうかと思っております。
 以下,2,3が,教育研究に支障がないということについての具体的な内容でございますが,インターネットを利用して行うという授業,通常の面接授業とは異なる特性がございますので,学生に対するインターネット利用上の技術面,あるいは教育上の十分な支援を行うこと,それから,直接的な対面性がございませんので,心理面への十分な配慮ということを明記してはどうかと考えております。それから,中でも特に社会人経験がない,具体的には高校から直接今回の改正に該当するような大学に入られる方について,より十分な配慮が必要であること。
 それから,3でございますけれども,インターネットを用いても一定の対面性を補完するということが可能でございまして,特に個々の学生の総合的な能力や学習成果を確認すべきと考えられる場面。例えば,卒業研究や卒業要件に必須になっているような授業については,特に教員と学生本人の1対1のやりとりが可能となる同時双方向性をインターネットであっても確保してはどうかということを付してはどうかということでございます。
 以上,簡単でございますけれども,事務局としての提案の内容を御説明させていただきました。御審議のほど,よろしくお願いいたします。

【濱名委員】  お伺いしたいのは,今回の改正の概要と,留意事項というものの性格です。設置審査の場合,省令とか設置基準に書いているものに関して違反をしていれば明確な意見が付されるのですけども,こういう改正時の留意事項なるものがどの程度,申請者にきちんと周知が継続してなされていくのか,あるいは設置審査のときの一つの根拠になり得るのかということについて明確にお答えいただければ有り難いです。

【牛尾専門教育課長】  留意事項として書かせていただいた部分については,文部科学省から通知という形で出したら良いと考えておりますが,具体的には,省令の案としてお示ししておりますインターネットの特性を踏まえた措置あるいは教育研究に支障がないという部分の私どもの解釈基準として通知では示したいと思っております。ですので,ここの法令の意味はそういう意味であるということを各設置者にもお知らせしていくということを考えております。
 ただ,あくまでも私どもの通知というレベルでの解釈ですので,どこまで法的拘束力があるかという点については必ずしも完全に拘束し切れるものではないという意味で御懸念があると理解しております。

【濱名委員】  この留意事項案の2とか3というのは,本質的にインターネットのみの授業を行っていく上での必要要件だろうと思うのです。それで,緩和したはいいけれども,これに関する実現性を担保する基準なり省令がないとするならば,必ずしもそういう考慮をしていなかった,申請が行われた場合に何を根拠に設置審査をするのかということです。先ほど,今泉室長が説明されていたようなことがまた次に起こるのではないかと思います。つまり,残念ながら今の準則主義に変わった,大綱化以降については明確な法令違反のもの以外についてはそう強く言えないはずなのです。強く言えないということは,留意事項として明確にどこまで付けられるのかということです。そのあたりは大学設置室も含めてどのようなコンセンサスがあるのか,つまり,設置審査上,これでずっとクオリティーコントロールを続けていくことが可能だということなのでしょうか。だとするならば,私は明確に設置基準の中に根拠となる表現を組み込まなければ,審査をやる委員の立場としては大変やりにくいということが後で起こりそうな気がしております。

【牛尾専門教育課長】  設置審査上の取扱いについては,具体的なところまではまだ十分詰め切れていないというのが実態でございまして,そこはまた相談したいと思っておりますが,あともう1点御説明をしておきたいと思いますのは,今回の弾力化があくまでも本来的には教室面積を少なくしていることに伴う改正でございますので,省令として書く場合には,教室面積の緩和との関係性の強い部分を省令に盛り込むというのが論理的な筋としてはあるということが一つございます。
 先生が御心配になっているのは,むしろ教室面積の緩和にかかわらず,そもそもメディア授業の質保証をどうするのかという御議論を別途しないと多分解決しない問題なのではないかと思っております。その点につきましては,本日の資料3-1の3枚目に,大学設置基準第25条第2項の規定に基づく大学が履修させることができる授業について定める件という告示がございまして,実はこれが今回の件以外のものも含めて,およそ大学が通学制であっても通信制であってもメディア授業について質保証を法令レベルで図っている内容でございます。これについて見ても,実はこれも平成13年に同じ時期にできているのですけれども,その後,見直しをされておりませんので,最近の情報通信技術の変化等も踏まえた点でも見直す必要があると思っておりますし,また,質保証という面でも,ここはもう一度検討すべき内容なのではないかと考えます。今回の件にかかわらず,もう少し広くメディア授業全体の在り方として議論をする必要があると認識しております。

【濱名委員】  申請者はこれを見て申請します。審査要覧に載っていない情報が13年前に告示であったという形では,やはり情報公開が十分できているとも言えませんし,それを逆に盾に,後で審査の留意事項がついてくるということは,本来,余りあるべき姿ではないと思いますので,やはりそういう基本的な方針に関わるものは少なくとも審査要覧に載る形態のもので規定するべきではないかと思います。御検討いただく際にはそのあたりの配慮を十分していただければと思います。

【金子委員】  この面積に関してはどうのこうの言うような問題でもないと思うのですけど,問題は設置基準で,このような新しい教育方法をどのように扱うかというのは,実は大変難しい問題がいろいろとあると思います。それから,一つ前に審議された学位と学科組織との対応関係の変化に関しても,テクニカルにやらざるを得ないという問題が出ていますし,更にもっと言うと,本日は出てこないかもしれませんけど,デュアル・ディグリーとか外国のディグリーに関しては,日本の大学設置基準では判断できないようなものもあるという問題も今出てきているわけです。設置基準は非常に重要ですけれども,適格認定というか,日本の場合,認証評価になるわけですけれども,認証評価というのを作ったのは,やはりそういう面をカバーせざるを得ないのではないかと考えて作ってきたのではないかと思うのですが,今言われたような問題をどのように認証評価に織り込むのか,それにどういう正当性があるのかということについては,ほとんど議論されていないのではないかと思います。
 ある意味では,一つの方法としては,例えば設置基準とは別に,設置基準の解釈に対して幾つか注意事項を作って,認証評価機関はそれを一応参考にするという考え方もあるかと思いますけれども,いずれにしても2段階のようなことを考えざるを得ないのではないでしょうか。これは,この場ですぐそれを検討する場ではないとは思いますが,いろいろな意味で考えざるを得なくなっていると思います。
 例えば,通信教育についてどの程度単位を認めるか,その方法については随分アメリカなどでは議論したみたいですけども,正直言うと余りはっきりした線は出ていないのです。やはりこれは,一定の法律に準ずるような書き方をするのは難しいかもしれないので,これはむしろ,認証評価機関が判断する際の一種のガイドラインという言い方をしておくのが一番適当ではないかと思います。
 以上です。

【鈴木委員】  基本的には,本日の議論は面積,校地校舎等の議論に限られるということですので,それはこのような扱いをする必要があるのではないかと思いますが,先ほど来,濱名委員,金子委員もお話のように,あるいは牛尾課長がおっしゃるように,全体として議論しなければいけない,私はその時期がもう来ている,あるいはそう遠くない時期に来ると思っておりますので,それについて議論をしていく場がどうしても必要になってくると思います。
 その場合に,イメージ的に,メディア教育というのがインターネットを通じて教員と学生,学生は目に見えない学生という感じになりますが,そういう状況だけと思っていると,基本はそうなのですけれども,もう一つ二つ,これは日本の国内だけで限られているのかということです。先ほど,金子委員からデュアル・ディグリー等についてはどうも対応できてないのではないかということが言われましたけど,いわゆるオンライン,あるいはメディアの教育では,海外との垣根が全くないということで,その辺の対応の仕方とか,それから,それとつながっているのですけれども,先生と学生とのインターネットを通じたというよりも,学生間の,いわばチャットというか,勉強に関する会話ですけれども,それがもう非常に頻繁に行われ,それはいいことなのですが,それも海外との,今,アメリカあたりでは全世界でオンラインをやっておりますので,全世界の学生たちが科目に関してチャットでやりとりしているわけです。ですから,そういう状況が来る可能性があると,歓迎すべきことなのでしょうけど,それをどう取り扱うのかということもあると思います。
 それから,教員と学生との間に,いわゆる授業補助者といいますか,TAのような人がどうしても介在しないと,構造的にこれはやっていけないということ等がこれから出てくると思いますので,やはり場を変えて,これを議論するというときには,いろいろなことを,特に国際的な広がりということまでも視野に入れて議論していく必要があるのではないかと思います。

【谷口副部会長】  この改正の条件になっているところに,インターネット等を利用して行う授業の特性を踏まえた授業の設計というのがあります。その他の措置というので,例えば,こういうものが上手に使えるように,インストラクターを入れなさいとか,インストラクショナルデザイナーを入れなさいとか,そこのところは割と分かりやすいのですが,授業の設計がこれに合っているというのはどのように判断をするのでしょうか。条件に授業の設計ということが書いてありますので,この授業の設計というのは,どのようにやっていけばこれを満たしたという判断をするのか。その辺がどうなっているか教えていただけると有り難い。こうなっていないと駄目いう心情は分かりますが,具体的にどういうことをもって,「できている」と判断するかというのが難しいのではないかと思いましたのでお尋ねします。

【牛尾専門教育課長】  授業そのものがどうなっているかというよりは,イメージしておりましたのは,この授業設計がきちんとできるような,今,谷口副部会長もおっしゃっていただいたような,このメディア授業の設計者みたいなものがアメリカなどでは広く専門家としておられますし,日本でもこういう授業に取り組まれているところでは,そういう技術者の方がいらっしゃいます。ある意味,そういう体制を整えて授業を展開しているということをイメージして,ここは書かせていただいております。

【谷口副部会長】  内容が,レベル高くきちんと組まれていますということを言っているわけでしょうか。

【牛尾専門教育課長】  そのとおりです。

【谷口副部会長】  分かりました。

【川嶋委員】  1点だけお聞きしたいのですけど,留意事項の1の校舎等の施設についての最初のところで,括弧書きで,(10条1項に規定する教室・研究室・図書室等の校舎等は備える必要があること)と書いてありますが,実際にオンラインだけで実施している大学を二つ紹介されましたけど,図書室というのはどのように定義されているのでしょうか。

【牛尾専門教育課長】  後ほど資料を確認して御報告させていただきます。

【川嶋委員】  つまり,例えばサイバー大学は全国展開しているわけです。どこか本部に図書室があっても遠隔地の学生は実際には利用できないわけです。むしろ,これだけインターネット,ICTが発達していると,むしろオンラインで電子的な図書館を設置するとか,そういうことを考えていかないと,こういう大学を認めていくということについては,先ほどの質保証とか学生の学習の機会を保証するという点では不十分だと思いますので,やはり先ほど鈴木委員からもお話がありましたが,時代が変わっている,環境が変わっている中で,本当にそれに付随する様々な基準等が十分なのかということは,検討する必要があるのではないかと思います。

【黒田副部会長】  今,大変重要な意見が出ているわけですが,この特区の全国展開についてのことは,これは何ら問題ないと思います。これは進めていただければいいと思うのですが,それよりも,インターネットを使った大学教育をやるというこのシステムについて。今,話にあったように図書室をどうするというのも,2番目の基準では全く適合できないです。教員の研究室というのも,どこかの一つのところにあればいいというのではない,全国に展開するかもしれない,また,世界中に展開するかもしれない。ネットで配信するということは,日本の国内だけでなく世界中に行き渡るわけですから,それをどのように考えるかということです。そうしますと,設置基準そのものが今までの設置基準の継ぎはぎではどうにもならなくなってくる。そのことを真剣に検討した上で,インターネットのみで行う教育というのはこれくらいの条件が必要だという,それがここでも端的に書かれているわけですが,十分な,そういう取組ができる組織を作りなさいということになっていますけれど,その組織の在り方や基準を,しっかり,国としては検討していく必要があるのではないかと思います。それが設置認可時の認可根拠ということです。自由に勝手にやっていいというなら何も決めなくていいのですけれども,国が設置を認可して認めるということであれば,国としての基準を作っておかないと,これはネットで大学教育をやるということは,日本の高等教育のレベルというものが世界中に知れ渡るわけです。何だ,この日本の大学教育はということになったら大変ですから,大学教育の質を保証する上で,その辺のことをしっかりと検討を進めていく必要があると思います。
 また,特区の全国展開,校舎,校地の施設を少し削減した程度のことは,あまり問題がありませんが,既存の大学設置基準とは違うシステム,それをしっかりと検討していただきたいと思っています。

【牛尾専門教育課長】  先ほどの件について,手元にデータがございましたので御紹介させていただきますと,サイバー大学の例だけでございますけれども,サイバー大学については,本部は福岡ですが東京にもキャンパスを持っているということで,2か所キャンパスがあるということでございます。図書館につきましては,131平米ということですので,極めて小さい図書室を備えて,蔵書数も1万冊ということでございます。ですので,もちろんそのほかにオンラインでどうなっているかとか,別の面があるかとは思いますが,物理的にある本と図書室という意味では,そういう状況であるということを御報告させていただきます。
 それから,先ほど濱名委員から御指摘のあった,メディア授業についての告示の件ですが,一応,審査要覧の93ページに載っていることは載っておりますが,ただ,これが十分周知されているかという点については,必ずしも関係者でも御存じない方がいらっしゃると思いますので,その点については,また文部科学省としても努力をしていきたいと思います。
 以上でございます。

【佐々木部会長】  私もただ今の御意見を伺っていて,国際展開など,もう少し大きな,根本的に考えなくてはならない課題もあると思います。同時に,本日の提案に直接沿って申しますと,校舎等の面積基準を緩和するということ自体はいいのですが,それには,特性を踏まえた授業の設計,その他の措置とか,教育研究に支障がないなどの条件が付いているわけでしょう。先ほどのお話ではこれらの条件は通知でもって示すということでした。私も何らかのガイドラインが必要であると思います。その点が,諸先生方から出てきた御懸念だと思うのです。例えば文部科学省の通知,あるいは現行の告示という形でガイドラインを示すことは可能かどうか。これがお聞きしたい一つ。二つ目に,そこに示すべきガイドラインについては,具体的に御検討がなされているのかどうか。もし原案があれば,それをお示しいただきたいということ。三つ目に,この通知とか告知というものの拘束力という点,つまり,認可の判定のときにこれを根拠にして,否と言える通知,告示なのか,そこらあたりをお伺いしたい。

【牛尾専門教育課長】  具体的な通知の内容は,本日お示ししているものは非常に簡素な書き方をしておりますが,実際,通知等にする場合にはもっと詳しく丁寧なものにしていきたいとは思っておりますが,現状ではまだそこまでの案はできておりませんので,それはまた別の機会に,準備ができたところでお示しはしたいと考えております。
 それから,告示,通知の違いでございますけれども,告示までは法令としての性格を持っている,拘束力があるというのが私どもの解釈でございまして,通知であれば,ある意味,解釈のガイドラインを示しているにすぎない。我々としてはそういう方向で,お問合せなどがあれば御指導はさせていただきますけれども,それは絶対嫌だとか,別の解釈もできるはずという場合にどこまで言えるかといいますと,そこまでの強制力はないのが通知という世界でございます。

【金子委員】  先ほど申し上げたことと繰り返すようですけど,インターネットを使った授業については,実はかなり,いろいろとフレキシブルなやり方が可能でありまして,図書館も電子的に作ろうと思えば,実際,アメリカの大学で作っているところもありますが,ある意味で普通の図書館よりも効率的な図書館があるわけですが,しかし,そういうものは,言ってみればこれくらいの箱くらいで,あるいは,どこかクラウドでしたら全部分散的に置いておけるようなものでありまして,あるいは,例えば授業供給などについても,かなり多くの授業は特定の大学から発信されているだけではなくて,いろいろなところから発信されたものを一定のところで一回引き受けて,それをもう一回配信し直してもう一回発信するということも相当やっていたりしていまして,相当フレキシブルなものです。
 先ほども申し上げましたけど,10年前ぐらいからアメリカでもオンラインの教育が発展してきたときに,何らかの形で規制しようという動きもいろいろとありましたが,結局,私が見ていた範囲では,何らかの形で,特に数量的といいますか,外形的に否定することは非常に難しいという結論だと思います。今唯一あるのは,セールスマンが学生を獲得してはいけないというのだけはあるのですけれども,それ以外はほとんどないというところで,結果として,設置基準は,基本的には外形的基準でもって,誰にでも見えるように客観的に物事を規定するという考え方で来ていますし,それに伴う症例等々についても,基本的にはその考え方を大きく超すものではないと思うのですね。ですから,こういう結果を出さなければいけないという言い方は,多分,設置基準ではできないのではないかと思います。そうしますと,やはり私は,認証評価制度に移ったわけですから,認証評価の段階で一定の教育目的を達しているか,いないかという,その判断の基準の中に今のようなレポートが組み込まれることが望ましいと思います。
 ただその際に,個々の認証評価機関がそれぞれ独自に全部そういうものをできるかどうかといえば,少し問題あるかもしれませんから,そのときに文部科学省が直接か,あるいはその下の何らかの機関でもって,統一的な基準のようなものを設定するといいますか,そういうことをするということが必要になってくるのではないでしょうか。

【濱名委員】  話が出てきている中で一番気になっているのは,例えば,質的転換答申の22ページに,文部科学省が対応するべきことの中に,TA等の教育サポートスタッフの充実とか,ICTを活用した双方向授業,自修支援や教学システムの整備などが挙がっております。先ほどの趣旨を見ると,インストラクショナルデザインのことを言っているとおっしゃるのですが,職種としてもインストラクショナルデザイナーとか,そういうものを設置基準なりに規定するとか,そういう体制をとらなければならないようにしなくていいのか。これだけですと,開設時にそういうものをデザインしましたというだけで,継続的にやっていくことを求めているかどうかも分からないので,お話が出ているように,設置基準自体の見直しであるとかが必要ではないでしょうか。逆に,質的転換答申を受けて一番変化しているところから着手していただき,今の状態でいうと,審査要覧を見ていても,どのようにして遠隔のみの,メディアを通してのみの教育を設計するのかという情報は余りにも材料が少ない。そこらについては,是非本格的な検討をしていただき,規定なり省令等々の整備をしていただく必要があるのではないかということをお願いしたいと思います。

【鈴木委員】  私も同じ意見で,先ほど課長から,告示と通知の違いの説明がありましたが,恐らく,通知だけでは不十分なのではないかと思います。
 もう一つ,金子委員が先ほど来お話になっている認証評価を利用するというのは,やはりそうせざるを得ないだろうと私は思います。それで,何らかのガイドラインを,告示という形であればガイドラインということではないと思いますが,そういうものがあって初めて,認証評価もやっていける面がありますので,それが必要だと思います。
 それから,私も大学基準協会にいたことがございますので,その経験からしますと,もう既にこういうオンラインの大学の認証評価についてはやっておりますので,そのあたりも参考にしていただければと思います。

【佐々木部会長】  ほかにいかがでしょうか。
 それでは,ただいま非常に重要な御意見が幾つもございましたので,これは引き続き文部科学省で受けとめていただいて,再度提案をお願いすることとして,本日は資料3-2に示されている省令案,設置基準の一部改正については,部会として承認したこととさせていただき,その他の点についての宿題を預けたいと思います。そういうことでよろしいですか。
 それでは,よろしくお願いいたします。

【牛尾専門教育課長】  はい,ありがとうございます。

(3)大学設置基準の在り方について,文部科学省から資料4-1~4-4に基づき説明があり,その後,意見交換が行われた。

【佐々木部会長】  同じように大学設置基準の改正に関わる事項として,ほかの部会で審議されている問題がございます。一つは,大学のグローバル化に関するワーキング・グループで御議論いただいている,いわゆるジョイント・ディグリーの導入の問題。それからもう一つは,組織運営部会で御議論を頂き,また,審議のまとめが既に用意されておりますが,資料4-4,大学のガバナンス改革の推進について,こういう二つの案件です。本日は,それぞれの部会での御検討,御議論の経過及び現状を御報告していただくことにいたしたいと思います。これはいずれも次回以降の大学分科会に報告されて,そこで議論をすることになりますが,本日は,それに先立って,本部会の案件と深く関わっている問題でもありますので,御意見を頂きたいということです。まず,文部科学省からこの二つの案件について説明を願います。

【白井大学振興課課長補佐】  よろしくお願いいたします。
 それでは,先に資料4-1のジョイント・ディグリーに関しまして,御説明を申し上げたいと存じます。このジョイント・ディグリーについては,前回も少し御説明させていただきましたけれども,なぜこのジョイント・ディグリーということが必要になっているのかということでございますけれども,国内の共同実施制度,既に開かれているところでございますけれども,国内でも各大学の強い部分というのがございますので,強い部分同士を生かして,よりすぐれた教育プログラムを作っていくということがございます。
 また,特に海外の大学との連携ということになりますと,例えばナンバリングの在り方,成績評価の在り方,そういうものについて,我が国の大学はより国際的標準に近いものになっていけるのではないかという積極的な理由が考えられるところでございます。
 また一方で,現在,文部科学省ではジョイント・ディグリー型のダブル・ディグリーと仮に呼んでいるところでございますけれども,ダブル・ディグリーの制度がかなり活発に行われているところでございますけれども,その中には,例えば4年間で124単位しか取らないのに二つの学位が出るというような,ある意味,学位のインフレ的なダブル・ディグリーも見られるところでございまして,そういうものについては本来ジョイント・ディグリーに移行してもらうのが筋ではないかと考えてございます。そのジョイント・ディグリー型のダブル・ディグリーに的確に対応していくためにも,このジョイント・ディグリーという制度を開いていくということもございます。
 そのような観点から,現在,グローバルワーキング・グループにおきましてジョイント・ディグリーの議論を行っているところでございまして,こちら,本部会から長尾委員にもお入り頂いて,御審議を頂いているところでございます。
 それでは,資料でございますけれども,基本的な考え方ということでございます。このジョイント・ディグリーに関しましては,現在,ダブル・ディグリーは大変活発に行われているところでございますけれども,学位に関する各国の法制度が異なるというところから,国際的に確立した制度ということまでは,現在,見当たらないというところでございます。その一方で,特にEUを中心に,ジョイント・ディグリーを活発にやろうというところもございまして,我が国が国際的な制度の確立を待っていると,その流れに乗り遅れてしまう,また,我が国にとって必ずしも望ましくないルールができてしまうということもある中で,積極的に制度設計を打ち出していくことにしてはどうかということでございます。
 その際に,大きく二つの考え方が,この1ページの下の方でございますけれども,想定されると考えてございます。外国の大学に関する学位の授与を,国内の学位制度においてどのように整理するのかということが各国に共通するジョイント・ディグリー制度の課題でございます。その際,一つの考え方としては,(ア)でございますけれども,外国にある外国の制度に基づく外国大学を,我が国の制度においても認可の対象としていくという考え方。あるいは,外国大学による学位授与については,あくまでも我が国の大学が授与する学位として見ていくという考え方,二つございます。この(ア)の方については,例えば国際条約,2国間,あるいは多国間の条約等で,各国間の学位授与を相互に認め合うということが成立すれば,これはジョイント・ディグリーに非常になじむ制度になり得る可能性はあるとは存じますけれども,現在,残念ながらそこまでの国際情勢にないというところがございます。そうなりますと,現在,各国の法制度の違い,また,属地主義による制約,例えば仮に我が国の制度に基づいて外国の大学に対して改善命令を行うとか,そういうことはできないわけでございまして,そういう制約はある中で,基本的にはこの(イ)の考え方に立脚をしまして,あくまでも我が国,日本の大学の制度に基づく学位という形で整理をして,このジョイント・ディグリーという制度を作っていってはどうかという考え方で,考えてございます。
 次の2ページにお進みいただきたいと存じます。現在,各大学から内々にヒアリング等を行っているところでは,特に大学院の修士課程,特に多いのは理学・工学分野において国際的なジョイント・ディグリーをやりたいという要請が強いようでございます。ここでは,A大学,日本の大学の工学研究科,定員200人という事例を置いてございます。その200人の中で,仮にジョイント・ディグリーを結んだ場合にどのような制度設計にするかというイメージを描いておるものでございます。機械工学専攻,こちらは50名の学生がいる中で,今回はその中の,例えば内数5名程度,5名程度について,国際連携機械工学専攻という組織に置き直していただきまして,この国際連携機械工学専攻が外国大学とのジョイント・ディグリーに基づくプログラムを行っていだくという形にしてはどうかと考えてございます。
 こうしますと,現在はあくまでも全体の収容定員,入学定員の中の内数の一定割合が,このジョイント・ディグリープログラムができるということにしてございますので,また後ほど述べますけれども,校地校舎基準等については,基本的には既存の枠内でできると。また,専任教員についても基本的には既存の枠内でできるのではないかということで整理をしていきたいと考えてございます。また,専攻をまたがるような場合,左側の方にございますけれども,例えば建築と土木の専攻をまたがるようなことについても当然あり得ることだと考えてございます。
 それぞれのプログラムやそれぞれの大学と,大学間協定を結んでいきますので,場合によっては大学間協定が幾つも出てくるということも想定されるところでございます。
 次の3ページでございますけれども,3ページについては,今回のジョイント・ディグリーの制度設計に当たりまして,基本理念を四つほど整理してございます。また,この各基本理念から導かれる具体的な制度について御説明したいと思いますけれども,基本理念の1番が,外国大学との協議連携を通じて設計された,そもそも体系的な教育プログラムを履修して所定の学位授与要件を満たしたことで得られる学位にしたいということでございます。ここはある意味当然の話かと思います。また,このジョイント・ディグリーの議論をする中で,非常に少ない単位,例えば外国の大学に少し行って,4単位とか6単位を取ったということについてもジョイント・ディグリーで評価すべきではないかという御意見も中にはあったのですけれども,やはり学位の授与に加えるからには,一定の期間,あるいは内容についての責任を持った教育をしていただいて,学位の審査にも共同で加えるぐらいの体制が必要なのではないかという基本理念に基づいて考えたいと思います。
 また,基本理念の2番でございますけれども,ジョイント・ディグリー,外国大学とパートナーシップを結ぶわけでございますけれども,その外国大学が当該国において適切な学位授与要件を満たしている,持っているということは当然の前提になろうかと思います。また,相手国においても学位授与要件を満たす,具体的には,外国からの留学生がこのジョイント・ディグリーを学んで,その当該国に帰った場合に,その本国で有効性がないと,有効な学位として認められないということになりますと,日本のプログラムの信頼性にも関わりますので,両国での学位授与要件を満たすということが必要ではないかと考えてございます。
 また,基本理念の3番でございます。今回,先ほどの資料の2ページでも御説明しましたけれども,国際連携機械工学専攻というような一定の組織という形で設定してはどうかと考えております。なぜかと申しますと,教育プログラムの運営でありますとか,あるいは学生の研究指導,在籍の管理と,恐らく様々なことが生じてくると思います。そういう意味では,責任をもって管理,対応ができる組織体制の整備というものが必要なのではないかということでございます。
 また基本理念の4番でございますけれども,適切な質保証と活用できる制度設計の両立ということがございます。制度設計,厳しくすれば,やはりなかなか活用するのは難しくなるということもございます。ここは非常に厳しいバランスをとっていくことが求められるわけでございますけれども,できる限り,各大学が実際に活用しやすいような制度で,かつ,質保証についてもきちんと見ていくというバランスを狙っていきたいと考えてございます。今回は,先ほど申し上げましたように,あくまでも収容定員全体の一部を活用していだたくという考え方に立脚しておりますので,ハードウエアの面でありますとか,専任教員数ということについては,より活用しやすい制度設計にしたいと思っております。一方で,プログラム,教育課程の内容でありますとか,それを担保する教員組織というものについては,しっかりと審査をしていきたいと思っています。また,大学設置・学校法人審議会にも御協力いだきまして,ジョイント・ディグリーに関する専門の審査組織,国際化対応の委員会を作っていただきまして,より迅速な設置認可手続を,今御検討いただいているところでございます。
 4ページからは,各基本理念に基づくもう少し具体的な制度の内容でございます。4ページが,基本理念の1番に基づくものでございますけれども,体系的な教育プログラムを作っていただくということは当然でございますけれども,特に学位の授与に関する上での単位の修得要件でございますけれども,やはり今回は,日本の制度に基づく日本の学位という整理をしておりますので,日本の大学で一定以上の単位,具体的には学部段階では62単位,大学院では10単位以上を修得していだたくということを求めたいと思っております。また,外国大学の方も,少し単位を出したからすぐ学位授与ということではいけないと思いますので,同様に一定以上の単位,ここら辺は国内の共同実施制度とも軌を一にするところでございますけれども,学部では31単位,大学院では10単位以上を求めたいと思っております。
 また,今回新しい概念としまして,共同実施科目という概念を入れたいと思っております。従前の共同実施制度,国内の共同実施制度につきましても,各大学がそれぞれの授業科目,既存の授業科目を持ち寄った中で全体を制度設計していくというやり方が中心にあったかと思いますけれども,より共同性が高い,共同性の融合を進めるためにも,今回,共同実施科目というものを作りまして,例えばティームティーチングのような形であったり,あるいはオムニバス形式のような形であったり,外国の大学と一緒に授業を作って,かつ,成績の評価などについても,それぞれの大学が協議をして行うような融合性の高いものについては,共同実施科目と位置付けをしまして,それぞれが単位の扱いについてもフレキシブルに取り扱うことができるようにしたいと思っております。
 また,特に大学院の方ですけれども,研究指導,学位審査についても,各構成大学に指導教員を設定していただくとともに,学位の審査に当たっては,それぞれの大学が審査に加わっていだたくということにしたいと考えてございます。
 次の5ページが,先ほどの話を少し図示させていただいたものでございます。お手元の資料,全体では学部段階,124単位の全体を図示しておりますけれども,全体が各大学間の協議による共同のプログラム,練られたものであるという前提でございます。その中で,日本の大学の授業科目,あるいは外国,ここではB大学と呼んでいますけれども,その授業科目があると。そして,共同実施科目については,今回は任意設定ということにしたいと思っておりますけれども,もしそれが設定されるのであれば,単位の扱いについては非常にフレキシブルになるということにしたいと思っております。
 例えば,キャンパス・アジアの場合には日中韓で,4年間で2年,1年,1年と回っていただくようなことがございますけれども,例えば日本で2年間62単位を取って,中国で31単位,韓国で31単位ということになりますと,三つの大学の学位が出ます。それも,日本の学位授与要件を満たした形で出るということになろうと思います。もしその際に,例えば日本に2年間いたけれども62単位に満たないというような場合も,場合によっては生じるかもしれません。そのような場合には,この共同実施科目を活用していただくことで,単位の調整,もちろん,それ以上取っていただくことが望ましいと思いますけれども,これを使って単位の調整を図るということもできるのではないかと思ってございます。
 次の6ページにお進みいただきたいと存じます。
 6ページは,学位の国際的通用性に関する部分でございます。外国大学に関しましては,当然,その国において適切な質保証を受けているということが前提になると思います。また,例えば学士段階の学位授与要件しかないのに修士課程のジョイント・ディグリーを組むということは当然あり得ないと考えてございますので,同レベルの学位について,既に有効な学位授与要件を持っていて,学位授与の実績も出しているということを求めたいと思っております。また,必要に応じて大使館に当該事実を確認できることも盛り込んでいきたいと思っております。
 また,相手国における学位授与要件の充足と書いてありますけれども,これも先ほど申し上げたように,留学生がその国に持ち帰った場合に学位が認められないということがあってはいけないということで,特に学位の専門の先生方からの御意見を踏まえて入れた要件でございます。例えば韓国の場合であったかと思いますけれども,140単位が学士課程の卒業要件ということでございます。その場合,124単位を取って,韓国の学生が本国に帰った場合に,本国では通用しないという可能性がございますので,そういう場合には,プログラム全体として140単位まで卒業要件を上げていただくようなことが,それぞれのプログラム,あるいはそれぞれの国の法制度に基づいて必要になってこようかと思います。
 次の7ページにお進みいただきたいと思います。上の基本理念は省略させていただきますけれども,下の設置認可,あるいは認証評価の部分でございます。今回,責任をもって教育プログラムを管理する組織を作っていただくということでございますけれども,その際の要件については,先ほど申し上げましたように,校地校舎基準でありますとか専任教員の要件については,基本的には最小限のものにしていきたいと思っております。特に中心になりますのが,教育課程,あるいは教育課程を担保できる教員組織が適切に整備されているのかということと,また,大学間協定を結んでいただくことになりますけれども,その大学間協定に必要な事項が適切に記載されているのかというようなことを,この大学設置・学校法人審議会では御審議を頂きたいと思っております。
 今回は,この収容定員の一部,具体的には収容定員の2割ということを想定してございますけれども,2割以内の学生について,このJD課程に行くというような場合については,教育研究上,支障がない限りにおいては,基本的には収容定員に基づく専任教員数,校地校舎基準の充足ということは求めないということにしたいと思っております。ただし,このプログラムを作る場合には,当然,外国大学との頻繁な協議でありますとか,プログラム変更,あるいは学生の在籍管理等,様々なことが生じてくる可能性がございますので,一定数の専任教員の追加的な配置だけは求めていきたいと思っております。想定しておりますのは,収容定員40名に対して1名程度ということを考えてございます。ただ,現実的にもかなり多くの大学では,特に理学・工学系においては,既に設置基準を大きく超えて教員を配置されているような事例も多いようでございますので,そういう場合には,追加的な配置ということは,必ずしも設置基準上は必要ないということにしたいと思っております。また,認証評価においても,このジョイント・ディグリーについて,国内の教育課程と同様に認証評価を実施していきたいと考えてございますが,具体的な運用方法については,またお詳しい先生方と相談をして作り上げていきたいと思っております。
 最後,8ページでございますが,大学間協定のイメージでございます。大学間協定については,この告示におきまして,具体的に必要記載事項を列挙していきたいと思っております。この8ページに書いてございますが,教育課程の編成,教育指導体制,学位審査から学生納付金,教職員の身分等々,たくさんございます。これらについては国内の共同実施におきましても,留意事項の中で求めているところでございますけれども,こういうことは,一見多いように見えるかもしれませんけれども,ある意味,責任を持って学生に対して教育研究を行っていくためには,当然,規定していだたくべきことかと思っておりますので,こういうことがきちんと書かれているのかということを大学設置・学校法人審議会でも御確認を頂きたいと考えてございます。
 この件についての説明は以上でございます。

【濱名委員】  2点,お伺いしたいのですけれども,一つは,こちらの資料4-1の3ページ目,大学設置・学校法人審議会の設置認可という話ですけれども,既存の収容定員の一部を使って行う場合に何を審査するのかというイメージです。例えば,教員組織をするのか,教員の資格審査をやっていくとなると,相手側で教える人たちも含めて,どの範囲を考えておられるのか。あるいは,学位要件を満たしているかとか,カリキュラムの内容を審査されるのか,そこのイメージが少し分からなかったので教えていただきたいということです。もう一つは,6ページ目に相手国においても学位授与要件を満たしていることが必要と書かれているのですけど,これをどう確認するかということです。
 例えば,このジョイント。ディグリーのように,日本の定員だけではなくて,当然,相手側のパートナー大学はパートナー大学で,恐らく定員を設定してやるようなことを想定しておられるのでしょうか。例えば,国によっては,時間がかかる,例えば中国などを例にとれば,そういうコースを作るとなると,中央政府までもちろん行くので,かなりの時間とか要件について準備しなければならない。それを,日本の場合は定員の枠内でといっているのですけれども,向こうは定員を新たに設けないと,こういう審査は多分しないのではないかと思うのです。ここらの確認とは一体何を意味するのかという具体的な方法のイメージがあれば教えていただきたい。総論的には,大変よく考えられたということを付け加えておきます。

【白井大学振興課課長補佐】  今の濱名委員からの御質問でございますけれども,初めに審査の対象でございますけれども,具体的には教育課程,それからそれを支える教員組織,そして,先ほどの大学間協定の内容ということが審査の主な対象になってこようと考えております。その際,おっしゃるとおり,これは既存の組織をベースにしてございますので,まだ検討中の部分もございますけれども,基本的に,またゼロベースで教員の個人調書をとって調べるというようなことは,必ずしも必要ないのではないかと考えてございます。プログラムの中での授業科目,それぞれを担当する教員の基本的な資質が確認できれば,それで足りるのではないかと考えてございますし,また,特に外国大学の部分については,これを日本の設置指針で審査するというのは,現実的にも困難な部分がございます。また,ある意味,そこは相手方の政府において適切な質保証が既に行われているということが要件になっておりますので,外国の大学の教員の資格というようなものを個別に調べるということは考えていないところでございます。
 それから,外国大学の学位授与権の確認という部分でございますけれども,これらについても,具体的な手法についてはまだ検討中でございますけれども,基本的には,各申請大学でその相手大学と協議の中で情報をとっていただいて,それを提出いただくことにしたいと思っています。また,必要があれば文部科学省で,例えば大使館を通じて確認するというようなことを考えていきたいと思っております。

【濱名委員】  ありがとうございました。

【吉田委員】  1点お伺いしたいのですが,6ページに相手国においても学位授与権を満たすことが必要だとあり,これは確かだと思いますが,その下の,日本の場合124単位だと,例えば,相手国が140単位であれば140単位修得というのですけど,これは,単位数だけ見て多い方に合わせるという考え方のように見えるのですが,果たしてそうなのかと思います。単位数というのは,単に単位だけではなくて,そこに,セメスターなのか,クオーターなのかによっても規定単位が変わってきますし,そのベースになる時間の考え方があって単位数はできていると思うので,時間に基づき互換するような,そういう方策というのをとれるのかどうなのかということについて教えてください。

【白井大学振興課課長補佐】  ここでは,便宜上,日本の単位制と同じように書かせていただいておりますけれども,基本的には,そこは各大学,単位互換の仕組みの中で日本の各大学において,それぞれの授与権を満たせればそれでいいと考えてございます。なので,機械的に日本の124単位がそのままその国において同じように単位制が通用するかどうかというのはまだ分からない部分がございますので,そこも確認した上での制度設計にしたいと思っています。

【川嶋委員】  もちろん,ジョイント・ディグリーというのは過去何年か議論してきた課題でありますし,また,最近ですと,教育再生実行会議でもその実施を強く求められているので,こういう方向に持っていくのは,日本の学位の国際通用性という点からも必要だろうと思うのですが,二,三確認したいと思います。一つは,先ほど,例に挙げたキャンパス・アジアは,基本的に3国間での国レベルでの協定に基づく取組だったので問題はないと思うのですが,例えば,2ページ目の例で,フランスとアメリカ,多分これは具体的に既に動き始めている大学だと思うのですけれども,相手大学,あるいは相手の国から見て今ここでプロポーズされている内容というのは,フィージブルで,かつ妥当性を持っているのかということを文部科学省において,ここに出ている想定されている相手のアメリカの大学,あるいはフランスの大学に確認された上でこういう提案をされているのかどうかということです。先ほどの御発言ですと個々の大学が責任を持って確認するということをおっしゃっていましたけれども,こういうスキーム自体が,相手国,相手大学から見てどういう評価をされているのか,その確認はされた上でこういうことを提案されているのかというのが1点です。
 それから二点目として,5ページの図について,黄色のところが多分ダブル・ディグリーと違うところかとも思いますが,ただ,これは任意設定であるとなっています。ここだけを取り出してみても,共同実施科目というときは,先ほどの一つ前の課題とも関連するのですけど,オンライン,つまり相手の大学に行かなくても履修が可能なのかどうか。つまり,極言すると共同プログラムだから,相互がインターネットを使って,学生が動くことなく,今示されている要件を満たせば学位授与を認めるという方向なのか,あるいは,キャンパス・アジアのレジデンス要件というか,必ずジョイント・ディグリーというのは相手国,相手大学に留学して学習しないといけないのか,そのあたりはどのようにお考えか,この2点について少しお聞きしたい。

【白井大学振興課課長補佐】  最初の1点目の御質問ですけれども,相手大学から見て妥当性があるのかということについては,直接,文部科学省が外国大学の御意見等を確認したということはまだございません。今,お聞きしている声は,ジョイント・ディグリーをお考えになっている日本の大学から間接的にお伺いしているところでございますけれども,今お考えになっているところからは,特にこれで何か支障があるというようなことは今のところお伺いしていないところでございますけれども,そこは,おっしゃるとおり外国大学の御意見も文部科学省でももう少し確認したいと思います。
 それから,オンライン等で実際に外国に行かないようなジョイント・ディグリーでございますけれども,今の制度上はおっしゃるようなレジデンシャル・リクワイアメントのようなものについては現状では検討してございません。もちろん,そこを考えるということも選択肢としてはあり得ると思うのですが,一方でオンラインの活用,まさにMOOCsのようなものの活用も言われている中で,そこを法令上で縛っていくのかどうかということについては,慎重になっているというところでございます。

【山田委員】  二つ質問がありまして,1点目は,川嶋委員から出された御質問にも関係するのですけれども,相手国の中で日本の大学のこういうプログラムがどう取り扱われていくのかということは確認が必要だと思うのですけれども,その際,非常に多様でありますので,例えば,国によって時間軸から見たら随分変わってくることがあると思うのです。そうすると,日本の方で認可されていたとしても,向こうは,現在進行中というようなことがあったときに,例えば,日本で学位を取得したとして,それが相手国ではまだ認可されていないというようなことが起こってくる可能性も多分あると思います。そういうところの時間軸ということも視野に入れていただきたいということが一つ。
 もう一つは,たまたま2ページで出されている例は,工学研究科の例でありまして,工学研究科等のところでしたら,今までもデュアル・ディグリーは比較的進みやすいし,ジョイント・ディグリーになったとしても,国際的な成果に関する基準が,ABETにしてもJABEEにしてもありますから,比較的質の保証に向けて調べやすいという点があると思います。ただし,他の分野というのは意外に国際的な基準が全くないので,そういうところで余りにもばらばらであったときに,どのようにして統一して見ていくのかということです。
 もう一つは,例えば,国によっても,日本でもそうだと思うのですけど,国家資格に関係する医学の分野であるとか,そういうものもあると思うのです。そういう分野,もちろん医学部ということはあり得ないのでしょうけれども,医学に関連した新しい研究みたいなものが出てきたときに,それが果たして,国家間の中でどうやって移動ができるのかというのも教えていただければと思います。

【白井大学振興課課長補佐】  最初の時間軸,タイムスケジュール的なところにつきましてはおっしゃるとおりかと思いますので,ここはまだ我々も十分確認していない部分ですので,また,外国の状況なども確認をしてみたいと思っております。
 それから,工学以外の分野については,実は,御要望というのは聞いていないところではございますけれども,こちらについても,今,特に聞いていない理工分野,あるいは医学とか,そういう分野について,御希望,御要望は多いということは聞いておりますけれども,特に,今,人文社会系など固有の課題があると思いますので,そこら辺についてももう少し検討していきたいと思っております。
 また,国家資格に直結する分野も当然ございまして,諸外国の状況などを見ますと,例えば,イタリアなどでは,国家試験に直結するような部分でもジョイント・ディグリーについては認めないということもされているところもあるようでございます。
 また,日本においても,例えば,法科大学院を共同で外国でやった場合に,そこを卒業した方が司法試験の受験資格を得られるのかとか,そういう問題は当然生じてくることでございますので,そこら辺についても,各資格を所管されている省庁との調整が必要になる部分もございますし,その中で制度設計をどう作っていくのかということについて,また考えていきたいと思ってございます。

【金子委員】  よく分からないところが一つあるのは,このジョイント・ディグリーでは,我が国の学位要件は満たすということはこれは自明であるとされているわけですが,しかも,既に,設置基準自体で,ほかの当該機関ではないところで取得した単位を,60単位以上を認めるということですから,これは今までの設置基準の間でもできないことはないということになると思うのですが,もう一つ,条件として,外国の大学で,やはり,卒業の要件を満たすということになっているというのは目標でしょうか。外国の大学で,それが自国の卒業要件を満たすということになるのでしょうか。これを見ていると,かなり日本の卒業要件は見通せるけれども,外国の大学での卒業要件は満たしにくいケースが出てくるのではないでしょうか。

【白井大学振興課課長補佐】  その可能性はおっしゃるとおりあるかと思います。ただ,諸外国から見ると,割合,日本の今の単位互換制度も,日本の場合は64単位までは日本の大学で純粋に取得しなければいけないという要件がありますけれども,多くの大学ではそういう要件がなかったりしますので,ある意味,全てを単位互換でも認められるような制度もあるようでございます。そういう意味では,一定の制約があるのは金子委員がおっしゃるとおりだと思うのですけれども,やりやすさという面では,日本ほどは厳しくないということになろうかと思います。

【金子委員】  少なくとも,アメリカの場合は,124単位のうち半分も外で出すというのは,特に,比較的名門のところはかなり厳しい,州立大学はもともとそういう制度で,下から上がって,短大から上がってくる人たちを前提として制度ができていますので,比較的緩やかですが,特に名門と言われるような私立大学では,それは私は厳しくなる可能性もあるのではないかと思います。現在の段階のそれだから駄目という必要はありませんけれども,これは,課題として少し考えておいた方がいいのではないかと思います。
 それと,やはり,最後のところの条件に,こういうことを認める際に,大学設置・学校法人審議会に条件を審議する機関を作るということが書いてありますが,こういうことを各大学で相手側大学と交渉するということは相当重要な機能になると思いますので,大学内でそういう管理をする機関を作るということは一つの重要な条件として加えておくべきだと私は思います。アメリカの大学の留学担当部署というのを見ていますと,やはり,外の大学のカリキュラムをずっと調べていたりしていまして,危ないところは駄目と言ったりするというような機能を備えているので,単に英語でしゃべれるとかいう問題ではなくて,相当の交渉能力が必要ですし,それから,余り今まで日本は外と付き合う場合に,ほかのことは言わなかったですけれども,かなり,欧米系の英語をしゃべるところの大学は,とにかくお金をとろうという気が非常にありますから,そういう意味で,かなり厳しい条件での交渉も必要になると思いますし,そういう意味では,学内の交渉機関のようなものもきちんと位置付けた方がいいと思います。
 以上です。

【濱名委員】  一つだけ。これは,確認というか,お願いにもなるのですけど,この交渉を各大学にやらせるのであれば,設置基準であるとか,こういう内容を英語で文部科学省は作るべきだと思うのです。それがないと,各大学が誤って誤訳したもので交渉していくと,国際的信用性を損なうことになると思いますので,その点は少し含んでおいていただければと思います。

【佐々木部会長】  では,頂いた御意見については,文部科学省で咀嚼(そしゃく)していただいて,原案の改善に生かしていただきたいと思います。
 もう一つ,組織運営部会で大学のガバナンス改革について議論が進んでおりまして,中間まとめに近づいております。これについて報告を頂いて,時間の許す限り御意見を頂きたいと思います。では,お願いいたします。

【白井大学振興課課長補佐】  それでは,資料の4-2から4-4まででございますけれども,大学のガバナンスに関して,大学分科会の組織運営部会で御議論を頂いてまいりました,資料4-2に組織運営部会の委員の名簿,また,これまでの検討のスケジュールを書かせていただいております。本部会からも委員にお入りいただいている先生方もいらっしゃいますけれども,これまで,6月から議論を始めまして,12月5日まで組織運営部会では7回の集中的な議論を行ってまいりました。今後でございますけれども,12月24日の大学分科会にこの審議まとめを御報告し,御了承いただければと考えてございます。その審議まとめの中では,特に,学校教育法でありますとか,あるいは大学設置基準に関するような事項も含んでございますので,本日,本部会にも御報告をさせていただく次第でございます。
 資料4-3でございますけれども,資料本体については46ページと大変大部でございますので,本日は,この資料4-3を中心に御説明をさせていただきたいと存じます。
 大学のガバナンスについてでございますけれども,基本的には,各大学それぞれの歴史と伝統,また,文化がある中で一律的にやっていくということはなかなか難しい部分がございます。あくまでも,各大学において主体的,自律的に見直しを行っていただくということが必要かと思います。ガバナンスについては,あくまでも,ガバナンス改革自体が目的であるのではなくて,教育,研究,社会機能を最大化していくということが目的であろうかと思います。ただ,今,社会が大きく変わりつつある中で,この大学のガバナンスにつきましては,経済界等からもなかなか大学は十分に機動的に変われないのではないかというような御指摘も頂いたりもしてございます。そもそも大学自身がこの社会の変化に応じて自律的に変わっていくということが一番望ましい姿であると思いますので,基本的にはその方針でいきたいと思ってございます。
 また,同時に,もし大学自身が変わりきれない部分があるのであれば,国としても効果的な制度改正であるとか,あるいはめりはりある支援を行わせていただいて,それを御支援していきたいと思ってございます。
 また,社会,特に企業等についても,大学と積極的に前向きに関わっていただいて,学長のリーダーシップの発揮というものを後押ししていただきたいと考えてございます。
 資料4-3の現状のところでございますけれども,これは,既に,委員各位は御案内かと思いますけれども,教学面と経営面,それぞれで大学についてガバナンスの仕組みがございます。特に教育面では学校教育法が,また,経営面では国立大学法人法であったり,あるいは私立学校法というような法律が適用されてくるところでございます。その中で,例えば,教授会の役割などについては,教授会が,学校教育法に基づいて設置される機関ではございますけれども,例えば,経営的なことについても審議を行っているのではないかというような御批判も中にはあったところでございます。
 その中で学長がなかなか十分なリーダーシップを発揮できないのではないかというような御意見も頂いているところではございますけれども,ただ,現在の法令を確認してみますと,学長には大学の最高責任者としての決定権があったり,あるいは教授会は教育,研究に関する審議機関であったりというような性格もございます。今回,これらについて,法令上の整理について確認をさせていただきながら,大学が社会の急激な変化に対応して,また,同時に社会からの期待により一層応えられるような仕組み作り,それから,大学における自律的な内部規則,慣行の見直しというようなことをしていきたいと考えてございます。
 具体的には,この下の方でございますけれども,主に,5点挙げてございます。一つ目は学長のリーダーシップの確立ということでございます。現在,学長の先生方非常に頑張られている方もたくさんいらっしゃると思うのですけれども,一方では補佐体制が非常に弱いというような御指摘も頂いております。例えば,アメリカでは「プロボスト」と言われるような総括副学長がいらっしゃって,実質的に学長は対外的なファンドレイジング等の活動に専念されているような場合も多いようでございますけれども,そういう方を設置したりとか,あるいは特にIRとか,そういうところに精通する高度専門職というものを創設してはどうか,さらに,SDの規定なども現在設置基準にないところでございますけれども,こういうものを入れてはどうかというような御意見も頂いております。
 また,人事に関してでございますけれども,特に人事のコストに関しては,選考の問題と廃止の問題について分けて考えるべきではないかということを御提言させていただきたいと思います。選考については,当然,各専門分野の先生方の知見というものが重要でございますので,そこは先生方,教授会等に委ねるとしても,一方で,どの分野にどういうポストを置いていくのかということは,学内全体での強み,弱みを的確に把握した上で学長が判断されるのではないかというようなことをここに書かせていただいております。
 あるいは,予算面でも,学長のビジョンに沿った,メリハリある予算編成,それを可能にするための学長裁量経費の充実というようなことを提言させていただいております。特に,間接経費についても,一部には,各それぞれの競争的資金を取得された先生方の個人的な経費というような理解もあるようでございますけれども,本来,間接経費の趣旨というのは,大学全体の教育研究,施設等の充実に充てていただくというものが間接経費の趣旨であるということも審議まとめの中で再確認をさせていただいております。
 組織再編においても,学長自身がぶれない改革方針を持つということに加えまして,やはり,客観的なデータがないと,なかなか学内での理解を得るということも難しいと思いますので,IR等を活用しながら,学長先生が責任を持って改革を推進していただきたいということが書いてございます。
 それから,2点目,3点目が,学長,学部長の選考,あるいは業績評価に関することでございます。現在,国立大学法人においては,学長選考会議,公立大学法人については学長選考機関,さらに,私学の場合には理事会でありますとか,あるいは特別の学長選考委員会などにおいて学長選考が行われていることが多いかと思いますけれども,ただ,必ずしも,選考組織において主体的に考えている場合,考えていない場合もあるのではないかということでございます。場合によっては,教職員による選挙の結果をそのまま使っているというようなこともあろうかと思いますので,そもそも選考組織はどういう学長が欲しいのか,学長像を明確にしていただいて,その人のビジョンを確認した上で決定していただきたい。そのための方法として,現在行われている選考の在り方が本当に適切なのかどうかということについて,再確認していただきたいということを書いてございます。
 また,任期についても非常に多様でございますけれども,余り短すぎるような任期についてはやはり安定的な運営ができないのではないか,そこについても,特に欧米のリサーチ・ユニバーシティについては,非常に10年とか,15年という長期にわたるような方も多いようですので,そこら辺も踏まえながらお考えを頂きたいと書いてございます。
 また,同時に,学長に対するチェックも必要になってきます。学長選考組織もそこの一過性の選考だけの業務だけではなくて,選考した後についても,本当にその方が適切だったのかということについては,当然,支援も行いながら,どうしても駄目な場合には,解任をしていただくというようなことも必要ではないかということでございます。学部長についてもおおむね同様でございます。
 それから,4点目の教授会についてでございますけれども,教授会については,これまで教授会の所掌範囲が,学校教育法においては重要な事項を審議するというシンプルな規定しかございませんでしたので,なかなか明確に伝わっていない部分があろうかと思います。ただ,本来,専門性を有する教員による合議制の機関であるという教授会の趣旨に照らしますと,例えば,教育課程の編成でありますとか,学生の入退学,卒業判定というような身分に関すること,あるいは学位の授与に関すること,あるいは教員の専門性の審査に関するようなこと,こういうことが本来の教授会の役割ではないかと,そういうことについて,法令上明確にしていくことはできないかということを御提言いただいております。
 また,教授会も一般には学部教授会,あるいは研究科教授会と同義で捉えられるような場合もございますけれども,ただ,教授会について,具体的な設置単位の規定というのは学校教育法上はございません。例えば,横串の教員人事委員会というようなものであるとか,あるいは全学教授会というような多様な制度がなっておりますので,そういうことについても再確認をお願いしております。
 さらに,今,審議事項についても,教授会が何をやっているのかというのが社会的にもなかなか伝わらないような部分もございます。当然,教授会の内容については,人事とか,あるいは学生の成績に関するような秘密性の高いものもございますけれども,ただ,一方では,一部の大学,例えば東京工業大学などでは,教授会がどういうことを審議されているのかということを,ホームページでもその議事をオープンにされていらっしゃるような事例もございますので,どういうことを教授会がしているのかと透明化をしていくことも大事ではないかということを書かせていただいております。
 それから,最後,5点目ですけれども,監事の役割でございます。監事については,これまで特に財務,会計を中心に監査が行われてきたような部分もあると思いますけれども,教育研究についてもしっかりチェックしていただく,それが学長先生の業績評価にもつながってくる部分があろうと思います。また,同時に,適切な教育評価,教育研究の評価が行われているのかどうかということから,今のガバナンスの在り方が,それは適切なのかというようなことについても監査をしていただきたいと思っております。また,特に一定規模以上の大学については,できる限り常勤監事を配置していただきたいということもお願いをしております。
 こういうことを大学に基本的には自主的,自律的にお願いしたいと思っておりますけれども,特に国においても所要の法令改正,更に予算面での支援とか,そういうことについて行っていただきたいと思っております。特に法令に関しますこととしては,教授会の審議事項を明確化していくということ,それから,高度専門職という新しい第3の職種を作っていくというようなこと,さらには,SD,スタッフ・ディベロップメントについての規定を作っていくというようなことを考えていきたいと思っております。
 また,国立大学法人に関しましては,国立大学改革プランが先般公表されたところでございますけれども,今後,第3期の中期計画期間において,ガバナンスについてしっかりと中期目標に明記をしていただいて,その進捗について見ていきたいと考えてございます。
 また,制度面でも,監事の機能について,現在,独法の通則法でも監事の機能を法令上充実されるというようなことがございますので,これにキャッチアップしたより充実した監事の職務規程を制度的にも担保していきたいということでございます。社会,特に企業等を中心に学長のビジョンに理解をしていただいて,理解を得て,物心両面の支援をお願いしたいというような内容になってございます。
 この中で,特に本部会との関連性でいいますと,大学設置基準に関しまして,高度専門職という新しい職種を設置するということ,それから,現在,既にFDの規定は正式に入っているところでございますけれども,SDに関する規定について,これを入れていきたいということがございます。この大学設置基準に関しましては,先生方御案内のように,中央教育審議会への諮問が必要な事項でございますので,できましたら,大学分科会に御審議をお願いしたいと考えているところでございます。
 こちらからの報告は簡単でございますが,以上でございます。

【金子委員】  私は組織運営部会に出ておりましたが,大学のガバナンス改革の推進についての議論は初めから参加しておりましたときから考えてみますと,だんだん変質してきたと思います,非常に率直に申し上げてです。そもそもは大学教育部会の問題で,特に大学教育を更に効果的にするためには,現在の縦割りの学部,また,それに対応する意思決定というのが非常に大きな制約になっていくのではないか,したがって,ガバナンスについての見直しがやはり必要ではないかというような議論の流れがあったと思うのですが,組織運営部会ができましたらば,その議論とより一般的に大学は古い,何もしない,したがって,学長はもっと権力を持っていろいろなことができるようにしなければならないという非常に一般的な議論ができまして,この間,ここが同じような議論にまとまってしまったわけですけれども,本日のこの1枚ものを見ますと,ほとんど教育に関する部分はなくなってしまって,報告書を見ますとあちこちに書いてはあるのですが,基本的にこれは大学の中でどのようにパワーが分配されて,それをもう少し効率的にするために,SDをしたり,FDをしたり,監事を強化したり,そういう話にほとんどなってしまっていて,大学の本来の社会的機能である教育を強化するために,なぜどのようなガバナンスが必要であるかという論点がほとんど失われてきてしまっていると私は思います。これは誰の責任というわけではなくて,やはり,社会的にもそういうような圧力が非常に強いということだろうと思うのですが,しかし,具体的に考えてみれば,ここで書いてあるようなことは,書くのはよろしいのですが,具体的にそこで問題になって,これですぐ簡単に変わるというものではないと思います。むしろ重要なのは,具体的に大学教育を変えていくときにどのようなことが制約になって,その際にどのようなリーダーシップが必要で,どのような先生たちの協力が必要であるのか。特に,例えば,プログラム型の教育組織を作っていくときに,具体的には何が問題であるのか,あるいは例えば,先ほど国際化の問題が問題になりましたが,国際的な教育をするときに,どういう組織を作らなければ学生を受け入れられないのか,そういう非常に具体的な,組織的な問題はあると思います。これはこれで,私はガバナンスについては,お話があったようなそれで結構だと思いますが,私は大学教育の改善という観点から言えば,むしろ,それを超えた議論が必要になってくると思います。
 以上です。

【佐々木部会長】  実は,私も同様の感想を持っています。もともとこの大学のガバナンス改革の課題は,教育の質的向上,あるいは質の保証を進めるための教学ガバナンスの在り方の問題として,大学分科会の,特にこの大学教育部会のアジェンダであったわけです。ただ,非常に重たい課題でもありますから,事務局の判断で組織運営部会を独自に立ち上げて今日まで審議が進められてきているわけです。けれども,そもそも問題意識は教育改革をどう進めるか,そのために大学のガバナンスの見直しが必要ではないのかということであった。金子委員と私は感想を同じくいたします。
 もちろん,これを機会に大学の組織運営の在り方全般を見直そうということはあって全く構わないのですけれど,ただ,教育,研究という大学のミッションや,何のためのガバナンス改革かという側面を見落としてはいけない,見失ってはいけないという感想を持ちます。

【川嶋委員】  報告書の9ページに国立大学が法人化した場合には,教育公務員特例法は適用されないと書かれています。確かに,非公務員型になりましたらそういうことなのかもしれませんけれども,一方で,給与等の待遇面については,非公務員化されているにもかかわらず,文部科学省は強制はしていないとおっしゃるのですけれども,国家公務員等の給与改革,退職金削減等が非公務員である国立大学法人の教員にも適用されているわけです。ですから,公務員か公務員ではないということは一方では,言い過ぎかもしれないけど,都合よく使われているような気がするというのが国立大学に勤める一教員の感想です。
 コメントですけれども,先ほどの部会長と金子委員のお二人とも重なるところがありますけれども,今回は,議論を踏まえて必要な場合は,制度改革,法律改正するということですが,例えばSDを設置基準で義務化とされています。しかし,考えてみると,FDも設置基準改正で,平成20年でしたか,義務化されたのですが,それで本当に大学教員の教育能力が向上したり,改善されているかというと必ずしもそうではない。ですから,FDと同じようにSD,職員の職能開発を法律で定めたからといって,本当にそれが実現するかどうかというのは疑わしいわけです。
 それから,高度専門職を明確に,職位として位置付けるというお話がありましたけれども,これについては,例えば,インスティテューショナル・リサーチャー等について,あるいは国際関係の専門職というのは,平成20年の学士課程答申,あるいは国立大学が法人化するときも,第3の職種は非常に重要だということがずっと言われてきたわけです。それにもかかわらず,現在,それが十分にそういう職種が確立されていないということがあるわけです。ですから,今回,いろいろと提言をされているのですが,先ほど金子委員がおっしゃったように,では,それを実現するための具体的な方途は何かということがほとんど書かれていないのです。
 ですから,逆に言うと,この報告書の最後の方,43ページに,大学が行うべき改革と,国が行う改革支援と書いてあるのですが,今,二つの例を挙げましたけれども,こういうものが実際になぜ,実施,実現,実行されなかったのかという阻害要因,問題点というのをきちんと分析した上で,こういう提言をされたのかということについて,私は非常に疑問に思います。
 そういう意味では,先ほどの教育充実のためのガバナンス改革という点でいえば,これも,私も,黒田副部会長も何回もこういう場で指摘させていただいておりますけれども,もともと大学の設計図が学部学科というところから始まって,教員も,学生も,予算も全部そこを基準に配置されているわけです。そういう仕組みを変えていかない限り,幾ら学長に上乗せでお金を与えても,根本的な教育改革,あるいは大学全体のガバナンス改革にはならないのではないかと感じています。
 以上です。

【濱名委員】  川嶋委員と重複しますけど,やはり,設置基準が学部学科ベースでしか作られていない,学位プログラムがやっているときに,全学共通教育を分けて議論しろと言っているのですけど,学位プログラムの中には当然のことながら,共通教養教育の30単位程度が入っているわけですから,これがいいのかというときに,本質的なところは,川嶋委員が言われるところで,ガバナンスの問題で,学部教授会を仮想的にするだけではなくて,その大学のフレームワーク自体に対して議論がなされなかったのは非常に残念というのが1点です。
 それともう1点は,これは今からでも直せるので,僕は金子委員のおっしゃるのに大変賛成で,このアジェンダは大変まずいと思います。やはり,報告書を見ると,41ページにはっきり書いてあるのは,二つ目の丸に,ガバナンス改革の目的は,教育,研究,社会貢献機能の最大化であると書いてあるわけです。そういうことを考えれば,更に言うと,45ページの一番下の○にも,「大学の教育・研究機能の充実なくして国際社会に生きる日本社会の発展はなく」と書いているのにそのことが何も出てこないというのは,やはり,メッセージとしてはまずいのではないかと。だから,このオレンジ色で書いている,大学の自主的・自律的なガバナンス改革を,国が制度改正,予算等で強力に後押しするのではなくて,ここにはそういうことがあって,この部分は別のところ,図の下の方に書かれるのであればまだ分かるのですが,これだと,何か,手段が目的化しているように受け取られるので,やはり,これは金子委員がおっしゃるとおりで,何のためにガバナンス改革をするのかということに対するメッセージの,一番目立つのはここのオレンジの部分ですから,これを修正していただくことを検討していただければと思います。

【常盤高等教育局審議官】  今,いろいろ御意見を頂いて,そのことを踏まえて,これからまた審議もありますので適切に受け止めさせていただきたいと思いますけれども,その中で,特にこの審議のまとめには書かれておりますけれども,ここに必ずしも十分反映されていないことがあるのはおっしゃるとおりなので,そこは見直しを検討したいと思っております。

【佐々木部会長】  ありがとうございました。
 それでは,所定の時刻になりましたので,本日の審議はこれまでとさせていただきたいと思います。先生方におかれては,引き続き御多忙のことと思いますが,それぞれにつつがなくよい年をお迎えくださるようにお祈り申し上げます。では,本日はありがとうございました。

── 了 ──

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